タイトル: | 公開特許公報(A)_無水エタノールの製造方法 |
出願番号: | 2010028676 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 29/80,C07C 31/08,B01D 3/14,B01D 3/40 |
堀添 浩俊 北島 明 JP 2011162502 公開特許公報(A) 20110825 2010028676 20100212 無水エタノールの製造方法 堀添 浩俊 510040891 日陽エンジニアリング株式会社 000226518 北野 好人 100087479 三村 治彦 100114915 久保田 智樹 100120363 堀添 浩俊 北島 明 C07C 29/80 20060101AFI20110729BHJP C07C 31/08 20060101ALI20110729BHJP B01D 3/14 20060101ALI20110729BHJP B01D 3/40 20060101ALI20110729BHJP JPC07C29/80C07C31/08B01D3/14 AB01D3/40 5 2 OL 16 特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人化学工学会、「化学工学会 第41回秋季大会 研究発表講演要旨集」、第149頁、平成21年8月16日 4D076 4H006 4D076AA12 4D076AA13 4D076AA16 4D076AA22 4D076AA24 4D076BB03 4D076BB10 4D076BB23 4D076EA08Z 4D076EA14Z 4D076GA02 4D076HA20 4D076JA04 4H006AA02 4H006AD11 4H006BB11 4H006BC52 4H006BD21 4H006BD40 4H006BD53 4H006BD60 4H006BD84 4H006FE11 本発明は、エタノール及び水を主成分とする原料から無水エタノールを製造する無水エタノールの製造方法に関し、より詳しくは、バイオマス発酵法エタノールや合成法エタノールで製造されるエタノール水溶液、各種用途で使用後に回収されたエタノール水溶液、輸送過程で水分が混入した高濃度エタノール水溶液のような原料を、少ないエネルギーで濃縮又は脱水して、無水エタノールを製造する無水エタノールの製造方法に関する。 近年、環境意識の高まりと共に、二酸化炭素排出量を低減するために、化石燃料ではなくバイオマスをエネルギー源として積極的に活用しようとする動きが活発である。その代表例としてバイオマスを糖化発酵してエタノールを製造する方法がある。 発酵で得られるエタノールは低濃度のエタノール水溶液であり、そのエタノール濃度は6〜10wt%程度で、残りは殆ど水分であり、僅かな不純物を含んでいる。 このバイオエタノールをガソリンに添加する場合は水分トラブル防止のため、エタノ−ル濃度99.6wt%以上の無水エタノールにする必要がある。 また、イソブチレンと反応させてETBE(エチルターシャリーブチルエーテル:Ethyl Tertiary-Butyl Ether)を合成してガソリンに添加する場合も、合成反応触媒の被毒防止のため、エタノール濃度99.99wt%以上の無水エタノールにする必要がある。 特許文献1(特開平3−27336号公報)には、炭化水素溶媒(プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン又はそれらの混合溶媒)を用いた向流抽出塔と塔頂冷却還流を組み合わせた方法が開示されている。低濃度エタノール水溶液からエタノール濃度約94wt%の濃縮エタノールを分離回収し、炭化水素溶媒を用いた溶媒抽出蒸留塔により、エタノール濃度が約99.9wt%以上の無水エタノールを分離回収する方法が開示されている。 特許文献2(特開平3−157340号公報)には、炭化水素溶媒(プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン又はそれらの混合溶媒)を用いた溶媒抽出蒸留塔と溶媒回収塔からなる統合プロセス(溶媒抽出蒸留法)が開示されている。この統合プロセスにより、濃縮エタノール水溶液から無水エタノールを分離回収する方法が開示されている。特開平3−27336号公報特開平3−157340号公報 特許文献1(特開平3−27336号公報)に開示された方法は、低濃度エタノール水溶液原料を、少ないエネルギーでエタノール濃度約94wt%に濃縮した後、エタノール濃度99.9wt%以上に脱水し、99%以上の高い回収率で濃縮脱水できる技術である。しかしながら、向流抽出塔(濃縮)の運転圧力は約10MPa(超臨界圧力)と高く、また、溶媒抽出蒸留法(脱水)の運転圧力は向流抽出塔との圧力差を小さくするために約2〜3MPaである。いずれも運転圧力が高圧であるため、高圧ガス保安法の適用を受け、その運転には熟練を要する。このため、濃縮脱水の際の圧力の低減が望まれている。 また、特許文献1(特開平3−27336号公報)に開示された方法では、溶媒抽出蒸留法の水分離槽から出る排水には排水処理が必要な濃度のエタノールが溶解する場合があり、その対策が求められている。 特許文献2(特開平3−157340号公報)に開示された方法は、濃縮エタノール原料から少ないエネルギーで99.9wt%以上の高純度の無水エタノールを、99%以上の高回収率で脱水できる技術である。この方法では、運転圧力は0.2〜lMPaと比較的低圧であるが、高純度の炭化水素溶媒を大量に必要とする。このような高純度の炭化水素溶媒は高価で大量入手は困難なため、安価で入手容易な炭化水素溶媒が望まれている。 本発明の目的は、低い運転圧力により、エタノール及び水を主成分とする原料から無水エタノールを製造することができる無水エタノールの製造方法を提供することにある。 本発明の他の目的は、安価で入手容易な炭化水素溶媒を用いて、エタノール及び水を主成分とする原料から無水エタノールを製造することができる無水エタノールの製造方法を提供することにある。 本願発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、エタノール水溶液の原料の濃縮には低い圧力で運転可能な蒸留法を用い、炭化水素溶媒には安価で入手容易なものを用いることにより、少ないエネルギーで99.9wt%以上の高純度の無水エタノールを99%以上の高回収率で脱水できることを見出した。また、水分離槽の水相から抜き出した排水をエタノール水溶液の原料に戻すことにより、排水処理を不要にできることを見出した。 したがって、本発明の一態様による無水エタノールの製造方法は、エタノール及び水を主成分とする原料を、第2蒸留塔の中部に供給し、前記第2蒸留塔の上部に炭化水素溶媒を供給し、前記第2蒸留塔の塔頂から、実質的にエタノールが含まれない炭化水素溶媒と水分とからなる第2蒸留塔蒸気を取り出し、前記第2蒸留塔の塔底から、実質的に水分が含まれない炭化水素溶媒とエタノールとからなる第2蒸留塔混合液体を取り出す工程と、前記第2蒸留塔の塔底から取り出された前記第2蒸留塔混合液体を、第3蒸留塔の中部に供給し、前記第3蒸留塔の上部に炭化水素溶媒を供給し、前記第3蒸留塔の塔頂から、実質的にエタノールと水分とが含まれない炭化水素溶媒からなる第3蒸留塔蒸気を取り出し、前記第3蒸留塔の塔底から、実質的に炭化水素溶媒が含まれない無水エタノールを取り出す工程とを有し、前記第2蒸留塔蒸気と前記第3蒸留塔蒸気とを混合して第2圧縮機で圧縮し、前記第2圧縮機で圧縮された第2加圧蒸気を、前記第2蒸留塔のリボイラーの加熱源として利用した後に、分離槽に供給し、前記分離槽で分離された炭化水素溶媒を前記第2蒸留塔の塔頂及び前記第3蒸留塔の塔頂に再循環利用し、前記炭化水素溶媒は、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、又は、それらの混合溶媒であることを特徴とする。 上述した無水エタノールの製造方法において、前記炭化水素溶媒は、ノルマルブタン、イソブタン、又は、それらの混合溶媒であり、前記第2蒸留塔と前記第3蒸留塔の圧力が、0.3〜1.0MPaの範囲内の圧力であるようにしてもよい。 上述した無水エタノールの製造方法において、前記炭化水素溶媒は、ノルマルブタンであり、前記第2蒸留塔と前記第3蒸留塔の圧力が、0.3〜0.6MPaの範囲内の圧力であるようにしてもよい。 上述した無水エタノールの製造方法において、前記炭化水素溶媒は、プロパン、プロピレン、又は、それらの混合溶媒であり、前記第2蒸留塔と前記第3蒸留塔の圧力が、1.1〜1.4MPaの範囲内の圧力であるようにしてもよい。 上述した無水エタノールの製造方法において、エタノール及び水を主成分とする原料を、第1蒸留塔の中部に供給し、前記第1蒸留塔の塔頂からエタノールからなる第1蒸留塔蒸気を取り出し、前記第1蒸留塔の塔底から実質的にエタノールが含まれない水を取り出し、前記第1蒸留塔蒸気を第1圧縮機で圧縮し、前記第1圧縮機で圧縮された第1加圧蒸気の一部を、前記第1蒸留塔のリボイラーの加熱源として利用した後に、前記第1蒸留塔の塔頂に還流すると共に、前記第1加圧蒸気の残りを前記第2蒸留塔の中部に供給する工程を更に有するようにしてもよい。 上述した無水エタノールの製造方法において、前記分離槽で炭化水素溶媒を分離した水相を、前記第1蒸留塔の中部に供給するようにしてもよい。 以上の通り、本発明によれば、エタノール及び水を主成分とする原料を、第2蒸留塔の中部に供給し、第2蒸留塔の上部に炭化水素溶媒を供給し、第2蒸留塔の塔頂から、実質的にエタノールが含まれない炭化水素溶媒と水分とからなる第2蒸留塔蒸気を取り出し、第2蒸留塔の塔底から、実質的に水分が含まれない炭化水素溶媒とエタノールとからなる第2蒸留塔混合液体を取り出す工程と、第2蒸留塔の塔底から取り出された第2蒸留塔混合液体を、第3蒸留塔の中部に供給し、第3蒸留塔の上部に炭化水素溶媒を供給し、第3蒸留塔の塔頂から、実質的にエタノールと水分とが含まれない炭化水素溶媒からなる第3蒸留塔蒸気を取り出し、第3蒸留塔の塔底から、実質的に炭化水素溶媒が含まれない無水エタノールを取り出す工程とを有し、第2蒸留塔蒸気と第3蒸留塔蒸気とを混合して第2圧縮機で圧縮し、第2圧縮機で圧縮された第2加圧蒸気を、第2蒸留塔のリボイラーの加熱源として利用した後に、分離槽に供給し、分離槽で分離された炭化水素溶媒を第2蒸留塔の塔頂及び第3蒸留塔の塔頂に再循環利用し、炭化水素溶媒は、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、又は、それらの混合溶媒であるようにしたので、低い運転圧力により、エタノール及び水を主成分とする原料から無水エタノールを製造することができる。本発明の第1実施形態による無水アルコールの製造方法を説明するための図である。本発明の第2実施形態による無水アルコールの製造方法を説明するための図である。本発明による無水アルコールの製造方法の考案のために使用したプロセスシミュレータの精度を示すグラフ(その1)である。本発明による無水アルコールの製造方法の考案のために使用したプロセスシミュレータの精度を示すグラフ(その2)である。本発明の統合プロセスによる各発酵エタノール濃度における所要エネルギーの計算結果を示すグラフである。実施例1の結果を示すグラフ(その1)である。実施例1の結果を示すグラフ(その2)である。実施例2の結果を示すグラフである。 (第1実施形態) 本発明の第1実施形態による無水アルコールの製造方法について、図1を参照して説明する。 本実施形態における「低濃度エタノール水溶液原料」とは、エタノール濃度が約80wt%以下のエタノール及び水を主成分とする原料である。例えば、発酵エタノール(とうもろこしやサトウキビなどのバイオマスから得られる糖分を酵母で発酵したもので、エタノール濃度が約4〜10wt%の原料)、合成エタノール(触媒を用いて水とエチレンを反応させることによりエタノールを合成するもので、エタノール濃度が約20wt%の原料)、廃エタノール溶剤(エタノールにより各種無機物に付着の水分を洗い流したもので、エタノール濃度が約1から80wt%の原料)等である。 本実施形態における「高濃度エタノール水溶液原料」とは、エタノール濃度が約80〜99wt%のエタノール及び水を主成分とする原料である。例えば、後述する蒸留法により濃縮されたエタノール水溶液原料、含水エタノールや無水エタノールを輸送中に水分が混入したエタノール水溶液原料、ETBE(エチルターシャリーブチルエーテル:Ethyl Tertiary-Butyl Ether)の合成工程で未反応のエタノール水溶液原料、等である。 本実施形態において「無水エタノール」とは、エタノール濃度が約99.6wt%以上のものである。 図1は、本発明の第1実施形態による無水アルコールの製造方法を行うためのプロセスの一例である。 本実施形態のプロセスでは、3台の第1蒸留塔T1と、第2蒸留塔T2と、第3蒸留塔T3と、1台の水分離槽V1と、4台のリボイラーE1A、E1B、E2A、E3Aと、3台の熱交換器E1C、E2B、E3Bと、2台の第1圧縮機C1と、第2圧縮機C2とを用いる。 第1蒸留塔T1により低濃度エタノール水溶液を濃縮し、第2蒸留塔T2と第3蒸留塔T3により高濃度エタノール水溶液を脱水し、無水エタノールを生成する。 まず、低濃度エタノール水溶液原料は、熱交換器E2Bと、熱交換器E1Cとにより予熱されて、ライン3により第1蒸留塔Tlの中部に供給される。 低濃度エタノール水溶液原料は第1蒸留塔T1により蒸留され、第1蒸留塔T1の塔頂から、約88〜94wt%程度の濃縮エタノール蒸気が取り出され、ライン4に送出される。 ライン4に送出された濃縮エタノール蒸気は、第1圧縮機C1により圧縮され、ライン7に送出される。 第1圧縮機C1では、濃縮エタノール蒸気を、第1蒸留塔T1の塔底温度より約10℃〜30℃高い温度で凝縮するように圧縮する。第1蒸留塔T1の塔底温度との温度差が10℃以下では多大の伝熱面積を必要とするので好ましくない。また、第1蒸留塔T1の塔底温度との温度差が30℃以上では、圧縮に必要となるエネルギーが増大するので好ましくない。 なお、第1圧縮機C1の圧縮により熱量が不足する場合には、リボイラーE1Bに加熱蒸気などを供給するようにしてもよい。 第1圧縮機C1により圧縮され、ライン7に送出された第1加圧蒸気は、リボイラーE1Aにより熱を奪われて第1液体となり、ライン8に送出される。 ライン8に送出された第1液体の一部は、ライン9により、第1蒸留塔Tlの上部に還流する。ライン8に送出された第1液体の残りは、第1濃縮エタノール水溶液原料として、ライン10により、ポンプ(図示せず)により第2蒸留塔T2の中部に供給される。 第1蒸留塔T1の塔底からは実質的にエタノ−ルが含まれない水が抜き出され、熱交換器E1Cにより冷却されて、ライン6から排水として取り出される。 第1蒸留塔T1の操作圧力は大気圧近傍でよい。第1蒸留塔T1の段数と還流量は通常の化学工学的手法で設計される。 次に、第2蒸留塔T2の上部に、液体の炭化水素溶媒をライン21Aから供給する。 第2蒸留塔T2の塔頂からは、炭化水素溶媒と水分からなり実質的にエタノールを含まない第2蒸留塔蒸気が取り出され、ライン11に送出される。 第2蒸留塔T2の塔底からは、実質的に水分を含まない無水エタノールと炭化水素溶媒からなる塔底混合液体が取り出され、ライン12に送出される。 ライン12に送出された塔底混合液体は、熱交換器E3Bにより予熱され、ライン13から、第3蒸留塔T3の中部に供給される。 液体の炭化水素溶媒をライン24に送出し、第3蒸留塔T3の上部に、ライン22から供給する。 第3蒸留塔T3の塔頂からは、実質的にエタノールと水分が含まれない炭化水素溶媒の第3蒸留塔蒸気が取り出され、ライン16に送出される。 第3蒸留塔T3の塔底からは、実質的に炭化水素溶媒が含まれない無水エタノールが取り出され、ライン14に送出される。ライン14に送出された無水エタノールは、熱交換器E3Bにより冷却され、ライン15に送出される。ライン15から製品の無水エタノールを回収する。 また、ライン14に送出された無水エタノールは、リボイラーE3Aにより加熱されて第3蒸留塔T3に下部に供給される。リボイラーE3Aの熱源には過熱蒸気等を用いる。 なお、リボイラーE3Aは第3蒸留塔T3における蒸留のための熱源である。 次に、第2蒸留塔T2の塔頂から取り出されライン11に送出された第2蒸留塔蒸気と、第3蒸留塔T3の塔頂から取り出されライン16に送出された第3蒸留塔蒸気とは、ライン17により第2圧縮機C2に供給される。この蒸留塔蒸気は、第2圧縮機C2により圧縮されて第2加圧蒸気としてライン18に送出され、リボイラーE2Aの熱源に用いられる。 第2圧縮機C2では、これら蒸留塔蒸気を、第2蒸留塔T2の塔底温度より約10℃〜30℃高い温度で凝縮するように圧縮する。第2蒸留塔T2の塔底温度との温度差が10℃以下では多大の伝熱面積を必要とするので好ましくない。また、第2蒸留塔T2の塔底温度との温度差が30℃以上では、圧縮に必要となるエネルギーが増大するので好ましくない。 ライン18に送出された第2加圧蒸気は、リボイラーE2Aにより熱を奪われて凝縮して第2液体となり、ライン19に送出される。ライン19に送出された第2液体、熱交換器E2Bにより更に冷却されて完全に液体となり、水分離槽V1に供給される。 第2蒸留塔T2の塔底温度は、リボイラーE2Aに供給する熱量により、塔頂温度より約10〜20℃高くなるように制御される。これにより、第2圧縮機C2により圧縮された第2加圧蒸気の圧力を過度に圧縮する必要がなくなり、第2圧縮機C2の動力低減が可能である。 水分離槽V1では液体の比重差により、水相は下部に、炭化水素溶媒相は上部に相分離する。 水分離槽V1により相分離された水は、通常は、水分離槽V1の下部から水を抜き出して排水すればよい。 しかし、本実施形態では、水相にエタノールが溶解して排水濃度基準を満たさない場合があることを想定して、水分離槽V1の下部から抜き出した水を、ライン23を介してライン2に送出し、低濃度エタノール水溶液として再利用する。これにより、第2蒸留塔T2と第3蒸留塔T3の塔頂から取り出された蒸気は、最終的に、第1蒸留塔T1の塔底からエタノールを含まない排水として取り出される。 水分離槽V1により相分離された炭化水素溶媒は、ライン21に送出され、第2蒸留塔T2の上部及び第3蒸留塔T3の上部に供給され、循環再利用される。 なお、この循環再利用される炭化水素溶媒中にエタノールが同伴されて、循環毎にそのエタノール濃度が増加することになると、このプロセスは運転不可能となる。 本実施形態で用いる炭化水素溶媒は、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、又は、これらの混合溶媒である。 しかし、これらの純溶媒は高価で大量入手は困難なので、本願発明者等は、安価で大量入手可能な原油精製工程中間製品のノルマルブタンとイソブタンの混合溶媒に着目した。 この混合溶媒は、一例として、ノルマルブタン対イソブタンの比が約7対3であり、数%以下のペンタンやプロパンなどを含有しているが、鋭意検討した結果、本実施形態の炭化水素溶媒として機能することを本願発明者らは見出した。 第2蒸留塔T2と第3蒸留塔T3の圧力は、使用する炭化水素溶媒の臨界圧力以下で、炭化水素溶媒の飽和温度が、各蒸留塔の塔頂で水分が凍らない温度である約5℃となる飽和蒸気圧力以上であることが望ましい。 更に好ましい第2蒸留塔T2と第3蒸留塔T3の圧力は、第2圧縮機C2とリボイラーE3Aで使用するエネルギーが小さく、ライン15から回収する無水エタノール純度と回収率が高く、ライン21の循環炭化水素溶媒中のエタノ−ルが循環とともに増加しないことが必要十分条件である。 そのような条件を満たす第2蒸留塔T2と第3蒸留塔T3の圧力は、炭化水素溶媒が、ノルマルブタンの場合、0.3〜0.6MPaの範囲内の圧力であり、イソブタンの場合0.3〜1.0MPaの範囲内の圧力であり、ノルマルブタンとイソブタンの混合溶媒での場合はその混合比率により0.3〜1.0MPaの範囲内の圧力であり、プロパン、プロピレン、又は、それらの混合溶媒である場合には、1.1〜1.4MPaの範囲内の圧力であることを、本願発明者等は見出した。また、ノルマルブタン、イソブタンを炭化水素溶媒として用いる場合に、圧力は0.5MPa以上とすることが好ましい。 (第2実施形態) 本発明の第2実施形態による無水アルコールの製造方法について、図2を参照して説明する。 廃エタノール溶剤や、含水エタノールや無水エタノールを輸送中に水分が混入したエタノール水溶液原料、ETBE(エチルターシャリーブチルエーテル:Ethyl Tertiary-Butyl Ether)の合成工程で未反応のエタノール水溶液原料、等のエタノール濃度が約80wt%以上の高濃度エタノール水溶液原料を用いる場合には、低濃度エタノール水溶液を濃縮する第1蒸留塔T1を用いる必要はない。 図2に示すプロセスは、図1に示すプロセスから第1蒸留塔T1とそれに関連する構成を除いたものである。図2に示すプロセスにおける第2蒸留塔T2及び第3蒸留塔T3とそれらの関連する構成については、図1の示すプロセスと同様であるので、詳細な説明を省略する。 本実施形態のプロセスでは、2台の第2蒸留塔T2と、第3蒸留塔T3と、1台の水分離槽V1と、2台のリボイラーE2A、E3Aと、2台の熱交換器E2B、E3Bと、1台の第2圧縮機C2とを用いる。 本実施形態では、第2蒸留塔T2と第3蒸留塔T3により高濃度エタノール水溶液を脱水し、無水エタノールを生成する。 高濃度エタノール水溶液原料は、熱交換器E2Bにより予熱されて、ライン10により第2蒸留塔T2の中部に供給される。 液体の炭化水素溶媒は、ライン21Aにより第2蒸留塔T2の上部に供給され、ライン22により第3蒸留塔T3の上部に供給される。 製品の無水エタノールは、第3蒸留塔T3の塔底から取り出され、ライン14、熱交換器E3B、ライン15を介して供給される。水分離槽V1により相分離された水は、水分離槽V1の下部から排水として回収される。 (プロセスの最適化の検討) 本願発明者等は、発酵エタノールを濃縮・脱水して無水エタノールを得るプロセスの最適化を行った。 そのプロセスは、濃縮工程に自己蒸気圧縮蒸留法を用い、脱水工程にブタン溶媒抽出蒸留法を用い、3つの蒸留塔T1、T2、T3からなる図1に示すプロセスである。 各工程で使用できる相平衡推算式を検討し、その推算式を用いて各工程における操作条件の検討をInvensys社製のプロセルシミュレータPRO/IIで行った。次に、それらの結果を元に統合プロセスの最適化を行い、プロセスの所要エネルギーを求めた。 濃縮工程の検討において、相平衡推算式はNRTL(Non Random Two Liquids Model)を用いた。多重効用蒸留法及び自己蒸気圧縮蒸留法を検討した結果、濃縮工程ではエネルギーの少ない自己蒸気圧縮蒸留法を用いることとした。操作条件は、蒸留塔T1の圧力0.1MPa、回収部15段、濃縮部15段、第1圧縮機C1の出口圧力は0.5MPaとした。塔頂のエタノール濃度は90wt%、塔底のエタノール濃度は10ppmとした。 脱水工程の検討において、n-C4H10(1)に対するC2H5OH(2)及びH2O(3)の比揮発度α21(=K2/K1、Ki=yi/xi、xi、yiは各々液相、気相のi成分のモル分率)、α31(=K3/K1)及び各2成分系の相平衡について相平衡推算式を評価した。 UNIFACによる計算式と文献値との比較を図3及び図4に示す。 図3は、n-C4H10(1)−C2H5OH(2)−H2O(3)に対するUNIFACの計算式での値と、文献1)(堀添ら、三菱重工技報、Vol.3, No.6, 527-530(1993))の値と比較を示す図である。 図4は、n-C4H10(1)−C2H5OH(2)に対するUNIFACの計算式での値と、文献2)(T.Holderbamn, A.Utzig and J.Gmehling, Fluid Phase Equilibria, 63, 219-226(1971)の値との比較を示す図である。 図3及び図4に示すように、計算式の値と文献の値とはよく一致しており、使用したプロセスシミュレータが適切であることがわかる。 統合プロセスの最適化のため、熱回収条件、蒸気圧縮条件を考慮して統合プロセスを構築した。 操作条件は、抽出蒸留塔T2の圧力0.6MPa、回収部30段/濃縮部20段、溶媒回収塔T3の圧力0.6MPa、回収部10段/濃縮部20段、第2圧縮機C2の出口圧力は0.85MPaとした。 また、第2圧縮機C2にかかるエネルギーを小さくするため、抽出蒸留塔T2の塔底組成比により、塔頂と塔底の温度差を調整した。 図5に統合プロセスの各発酵エタノール濃度における所要エネルギーの計算結果を示す。いずれの場合も製品エタノール濃度99.9wt%、エタノール回収率99.8%を満たす条件とした。 自己蒸気圧縮蒸留法と抽出蒸留法を組み合わせた方法によれば、発酵エタノール濃度が低い場合には濃縮・脱水エネルギーが大きいが、発酵エタノール濃度が10wt%では濃縮・脱水エネルギーを2.5MJ/L−EtOH以下にすることができることがわかった。しかも、発酵エタノール濃度が10wt%での多重効用蒸留法による濃縮・脱水エネルギーよりも低くできることがわかった。 このように、新たな濃縮・脱水プロセスの最適化を行えば、濃縮・脱水エネルギーを2.5MJ/L−EtOH以下にできることがわかった。 本発明の実施例及び比較例について説明する。 (実施例1) 図2に示すプロセスを用い、炭化水素溶媒として、プロパン、ノルマルブタンを用い、濃度90wt%の濃縮エタノール原料、濃度94wt%の濃縮エタノール原料から、1リットルの無水エタノールを製造するのに必要なエネルギーMJを、各塔の運転圧力を変化させて、プロセスシミュレータで推算した。 なお、このプロセスシミュレータの推算精度は、図3及び図4に示すように、十分な精度を有することを確認した。 図6及び図7に示すように、濃度90wt%の濃縮エタノール原料、濃度94wt%の濃縮エタノール原料のいずれの場合も、次のような結果が得られた。 炭化水素溶媒がノルマルブタン(n−C4H10)の場合には、圧力が0.3〜0.6MPaの範囲のみ収束した。即ち、圧力0.7MPa以上では循環溶媒中のエタノールが増加し、運転不能であることが見出された。他方、圧力が0.2MPa以下では塔頂の温度が約5℃以下となり水分が凍る可能性があるので運転困難である。 これらの結果から、炭化水素溶媒がノルマルブタン(n−C4H10)の場合には、圧力が0.3〜0.6MPaの範囲で、1.7MJ以下と低い所要エネルギーで無水エタノールを製造できることがわかった。 また、図6及び図7に示すように、炭化水素溶媒がプロパン(C3H8)の場合には、全て収束したが、圧力が1.2MPaでは所要エネルギーが1.3〜1.4と低いが、それよりも低圧又は高圧では、所要エネルギーが急激に大きくなることがわかった。 すなわち、炭化水素溶媒がプロパン(C3H8)の場合には、圧力が1.1〜1.4MPaの範囲で、1.7MJ以下と低い所要エネルギーで無水エタノールを製造できることがわかった。 なお、いずれの場合も無水エタノールの濃度は99.9wt%以上、エタノール回収率99.8%以上が得られた。 (実施例2) 図2に示すプロセスを用い、炭化水素溶媒として、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、混合溶媒、原油中間製品相当溶媒を用い、濃度90wt%の濃縮エタノール原料から、1リットルの無水エタノールを製造するのに必要なエネルギーMJを、各塔の運転圧力を変化させて、プロセスシミュレータで推算した。 図8に示すように、炭化水素溶媒が、ノルマルブタンの場合には、圧力が0.3〜0.6MPaの範囲のみ収束した。即ち、圧力0.7MPa以上では循環溶媒中のエタノールが増加し、運転不能であることが見出された。他方、圧力が0.2MPa以下では塔頂の温度が約5℃以下となり水分が凍る可能性があるので運転困難である。 炭化水素溶媒が、イソブタンの場合には、圧力によらず収束したが、圧力1.0MPaを超えるとエタノール回収率が99.8%以下となり好ましくなかった。 炭化水素溶媒が、ノルマルブタンとイソブタンの混合溶媒の場合には、その混合比率に依存するが、実施例の混合比率の場合には圧力が0.3〜0.7MPaの範囲で収束した。 これらの結果から、炭化水素溶媒がノルマルブタンの場合には、圧力が0.3〜0.6MPaの範囲で、1.7MJ以下と低い所要エネルギーで無水エタノールを製造できることがわかった。 また、炭化水素溶媒がイソブタン、混合溶媒、原油中間製品相当溶媒の場合には、圧力が0.3〜1.0MPaの範囲で、2.2MJ以下と低い所要エネルギーで無水エタノールを製造できることがわかった。 また、図8に示すように、炭化水素溶媒が、プロパン、プロピレンの場合には、全て収束したが、圧力が1.2MPaでは所要エネルギーが1.3〜1.4と低いが、それよりも低圧又は高圧では、所要エネルギーが急激に大きくなることがわかった。 すなわち、炭化水素溶媒が、プロパン、プロピレンの場合には、圧力が1.1〜1.4MPaの範囲で、1.7MJ以下と低い所要エネルギーで無水エタノールを製造できることがわかった。 なお、いずれの場合も無水エタノールの濃度は99.9wt%以上、エタノール回収率99.8%以上が得られた。 (実施例3) 実施例3として、図1に示すプロセスを用い、炭化水素溶媒として原油中間製品相等溶媒(n−ブタン:i−ブタン=66.5:28.5)を用い、濃度10wt%の低濃度エタノール原料と濃度90wt%の濃縮エタノール原料から、1リットルの無水エタノールを製造するのに必要なエネルギーMJをプロセスシミュレーションにより求めた。濃縮工程は常圧での蒸気再圧縮蒸留であり、脱水工程は圧力0.6MPaでの抽出蒸留である。 実施例3において、脱水工程の操作条件は、実施例1、2の最適条件(低圧で低エネルギーの条件)を用いた。脱水工程のエネルギーが、図6、図7の値より低いのは、濃縮工程の予熱を有効利用しているためである。 なお、いずれの場合も無水エタノールの濃度は99.9wt%以上、エタノール回収率99.8%以上が得られた。 比較例として、脱水工程は実施例3と同じで、濃縮工程を変更した場合について、無水エタノールを製造するのに必要なエネルギーMJを求めた。 比較例1は濃縮工程が常圧での蒸留である。比較例2は、濃縮工程が圧力0.05〜0.51MPaでの多重効用(原料分配型)蒸留である。比較例3は、濃縮工程が圧力6MPaでの超臨界抽出である。 比較例1〜3のその他の条件は実施例3と同じとした。 表1に示すように、実施例3は濃縮工程の所要エネルギーが1.3MJ/Lであり、比較例1の6MJ/L、比較例2の2MJ/L、比較例3の1.4MJ/Lと比較して、最も所要エネルギーが低いことがわかった。 表1に示すように、実施例3は濃縮工程の圧力が常圧であり、比較例1の常圧、比較例2の0.05〜0.51MPa、比較例3の6MPaと比較して、圧力が比較的低いことがわかった。 したがって、実施例3は、比較例1、比較例2、比較例3と比較して、圧力が低く、かつ、所要エネルギーが最も少ないことがわかった。T1…第1蒸留塔T2…第2蒸留塔T3…第3蒸留塔V1…水分離槽E1A、E1B、E2A、E3A…リボイラーE1C、E2B、E3B…熱交換器C1…第1圧縮機C2…第2圧縮機 エタノール及び水を主成分とする原料を、第2蒸留塔の中部に供給し、前記第2蒸留塔の上部に炭化水素溶媒を供給し、前記第2蒸留塔の塔頂から、実質的にエタノールが含まれない炭化水素溶媒と水分とからなる第2蒸留塔蒸気を取り出し、前記第2蒸留塔の塔底から、実質的に水分が含まれない炭化水素溶媒とエタノールとからなる第2蒸留塔混合液体を取り出す工程と、 前記第2蒸留塔の塔底から取り出された前記第2蒸留塔混合液体を、第3蒸留塔の中部に供給し、前記第3蒸留塔の上部に炭化水素溶媒を供給し、前記第3蒸留塔の塔頂から、実質的にエタノールと水分とが含まれない炭化水素溶媒からなる第3蒸留塔蒸気を取り出し、前記第3蒸留塔の塔底から、実質的に炭化水素溶媒が含まれない無水エタノールを取り出す工程とを有し、 前記第2蒸留塔蒸気と前記第3蒸留塔蒸気とを混合して第2圧縮機で圧縮し、前記第2圧縮機で圧縮された第2加圧蒸気を、前記第2蒸留塔のリボイラーの加熱源として利用した後に、分離槽に供給し、前記分離槽で分離された炭化水素溶媒を前記第2蒸留塔の塔頂及び前記第3蒸留塔の塔頂に再循環利用し、 前記炭化水素溶媒は、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、又は、それらの混合溶媒である ことを特徴とする無水エタノールの製造方法。 請求項1記載の無水エタノールの製造方法において、 前記炭化水素溶媒は、ノルマルブタン、イソブタン、又は、それらの混合溶媒であり、 前記第2蒸留塔と前記第3蒸留塔の圧力が、0.3〜1.0MPaの範囲内の圧力である ことを特徴とする無水エタノールの製造方法。 請求項1記載の無水エタノールの製造方法において、 前記炭化水素溶媒は、プロパン、プロピレン、又は、それらの混合溶媒であり、 前記第2蒸留塔と前記第3蒸留塔の圧力が、1.1〜1.4MPaの範囲内の圧力である ことを特徴とする無水エタノールの製造方法。 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無水エタノールの製造方法において、 エタノール及び水を主成分とする原料を、第1蒸留塔の中部に供給し、前記第1蒸留塔の塔頂からエタノールからなる第1蒸留塔蒸気を取り出し、前記第1蒸留塔の塔底から実質的にエタノールが含まれない水を取り出し、前記第1蒸留塔蒸気を第1圧縮機で圧縮し、前記第1圧縮機で圧縮された第1加圧蒸気の一部を、前記第1蒸留塔のリボイラーの加熱源として利用した後に、前記第1蒸留塔の塔頂に還流すると共に、前記第1加圧蒸気の残りを前記第2蒸留塔の中部に供給する工程を更に有する ことを特徴とする無水エタノールの製造方法。 請求項4記載の無水エタノールの製造方法において、 前記分離槽で炭化水素溶媒を分離した水相を、前記第1蒸留塔の中部に供給することを特徴とする無水エタノールの製造方法。 【課題】低い運転圧力により、エタノール及び水を主成分とする原料から無水エタノールを製造する。【解決手段】エタノール及び水を主成分とする原料を、第2蒸留塔T2の中部に供給し、第2蒸留塔の上部に炭化水素溶媒を供給し、塔頂から、実質的にエタノールが含まれない炭化水素溶媒と水分とからなる第2蒸留塔蒸気を取り出し、塔底から、実質的に水分が含まれない炭化水素溶媒とエタノールとからなる第2蒸留塔混合液体を取り出す工程と、第2蒸留塔混合液体を第3蒸留塔T3の中部に供給し、第3蒸留塔の上部に炭化水素溶媒を供給し、塔頂から、実質的にエタノールと水分とが含まれない炭化水素溶媒からなる第3蒸留塔蒸気を取り出し、塔底から、実質的に炭化水素溶媒が含まれない無水エタノールを取り出す工程とを有する。炭化水素溶媒は、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、又は、それらの混合溶媒である。【選択図】図2