生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_海産魚白点病予防治療剤
出願番号:2010016279
年次:2011
IPC分類:A61K 45/00,A23K 1/18,A23K 1/17,A01K 61/00,A61K 31/35,A61P 31/00


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良永 知義 西田 早予子 林 賢貞 JP 2011153103 公開特許公報(A) 20110811 2010016279 20100128 海産魚白点病予防治療剤 国立大学法人 東京大学 504137912 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 良永 知義 西田 早予子 林 賢貞 A61K 45/00 20060101AFI20110715BHJP A23K 1/18 20060101ALI20110715BHJP A23K 1/17 20060101ALI20110715BHJP A01K 61/00 20060101ALI20110715BHJP A61K 31/35 20060101ALI20110715BHJP A61P 31/00 20060101ALI20110715BHJP JPA61K45/00A23K1/18 102AA23K1/17 BA01K61/00 BA61K31/35A61P31/00 171 6 OL 8 2B005 2B104 2B150 4C084 4C086 2B005GA01 2B005MB01 2B104AA05 2B104BA14 2B150AA08 2B150DG03 2B150DG04 2B150DG05 4C084AA17 4C084MA52 4C084NA14 4C084ZB37 4C084ZB371 4C084ZB372 4C084ZC65 4C086AA01 4C086AA02 4C086CA02 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZB37 4C086ZC65 本発明は、海産魚に寄生するCryptocaryon irritansによる白点病の予防治療剤に関する。 ヒラメやタイ等の海産魚の感染症の一つに白点病がある。養殖場で白点病が発生すると、大量死が発生し、その被害は甚大である。 海産魚白点病の原因は、淡水魚白点病の原因寄生虫と同じく繊毛虫ではあるものの、全く異なる分類群に属するCryptocaryon irritansという寄生虫である。Cryptocaryon irritansの生活史は以下のようなものである。すなわち、水中に漂っているセロント(感染幼虫)が魚体の体表、鰭、鰓に接触すると、これらの鰓や体表の上皮の細胞層の中に侵入し、トロホント(感染期虫体)として成長する。成長したトロホントは魚体から離脱し、プロトモントとなり、水底に沈む。水底に沈んで数時間たつと、シスト化したトモント(シスト期虫体)となる。このトモントの中で細胞分裂を繰り返して仔虫が形成され、セロントとして水中に放出される。魚体内で成長して離脱するまでの日数、シストからセロントが放出されるまでの日数は、温度に左右されるが、水温25度では、それぞれ、3から4日ならびに4から10日間ほどである。 白点病の特徴は、魚体に虫体が侵入しただけで魚が死亡するのではなく、魚体内で虫体が成長する際および魚体から虫体が離れる際に魚体を傷害すること、及びその傷害に基づいて死亡することである。 白点病の原因であるCryptocaryon irritansは、多くの魚類寄生虫と同様、試験管内で成長させることができないため、その予防治療剤の開発は極めて困難である。 海産魚白点病予防治療剤としては、塩化リゾチーム、ラクトフェリン、中鎖脂肪酸などが知られている(非特許文献1、2、3)が、前者二つは虫体に直接作用するのではなく、その効果は魚類の粘液分泌促進や生体防御能の向上によるものと考えられている。また、中鎖脂肪酸は、魚体侵入前の虫体に対する殺虫効果は知られているが、魚体内の虫体への作用機序は不明である。 白点病に対する対策としては、水槽などの閉鎖的な環境にある鑑賞魚用としては、飼育水へ銅イオン、メチレンブルー、マラカイトグリーンなどを長期間添加することにより魚体外の発育段階の虫体を殺すという手法が用いられている。網いけすなどの開放的な環境に飼育されている魚類ではこれらの飼育水への薬剤の添加という手法を採ることはできない。また、これらの薬剤は、食品衛生上の問題から食用魚には使用できない。食用魚に対しては、潮流の早い海域への生簀の移動、塩化リゾチームの薬剤としての投与あるいは中鎖脂肪酸(カプリック酸)の添加物として餌料への投与が行われているが、その効果は限定的で、さらに有効な予防治療法が求められている。Fish Pathology,30,4,289−290Fish & Shellfish Immunology,18,2,109,124Aquaculture,198,3−4,219−228Disease of Aquatic Organisms,78,2,155−160 本発明の課題は、海産魚の魚体に寄生しているCryptocaryon irritansの虫体に対する殺虫効果を示す白点病予防治療剤を提供することにある。 そこで本発明者は、Cryptocaryon irritans虫体の試験管内培養手段について検討し、魚類の培養細胞層の上に細胞培養用の培地で作られたアガロースゲルを重層して培地とし、細胞層とアガロースゲル層の間にセロントを挿入する方法を採用することにより、この虫体の発育に成功した(非特許文献4)。そして、この系を用いて種々検討したところ、イオノフォア抗生物質が虫体に対する殺虫効果を示し、その効果が魚に寄生している虫体に対して殺虫効果と成長抑制効果を有することを見出した。さらに、海産魚を用いて実際にCryptocaryon irritansの感染実験を行った結果、イオノフォア抗生物質が、白点病による死亡を有意に抑制することを確認し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、イオノフォア抗生物質を有効成分とする海産魚白点病予防治療剤を提供するものである。 また、本発明は、イオノフォア抗生物質を海産魚に投与することを特徴とする海産魚白点病の予防治療方法を提供するものである。 本発明によれば、海産魚の魚体に寄生しているCryptocaryon irritans虫体に対する殺虫効果と成長抑制効果を有し、海産魚の白点病による死亡数を顕著に抑制することができる。C.irritansのトロホントの生残率に対するサリノマイシンナトリウムの効果を示す。C.irritansのトロホントの生残率に対するモネンシンナトリウムの効果を示す。C.irritansのトロホントの生残率に対するナラシンの効果を示す。C.irritansのトロホントの生残率に対するセンデュラマイシンナトリウムの効果を示す。サリノマイシンナトリウムの経口投与(餌料中濃度200ppm)により白点病に対する生残率を示す。 本発明の海産魚予防治療剤の有効成分は、イオノフォア抗生物質である。該イオノフォア抗生物質としては、サリノマイシン、モネンシン、ナラシン、センデュラマイシン、ラサロシド、それらの塩等が挙げられるが、安全性及び有効性の点からサリノマイシン、モネンシン、ナラシン、センデュラマイシン及びそれらの塩がより好ましく、サリノマイシン又はその塩が特に好ましい。ここで、塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が好ましい。 後記実施例に示すように、イオノフォア抗生物質は、海産魚の魚体に寄生したCryptocaryon irritans虫体に対する殺虫効果及び成長抑制効果を有し、かつ海産魚の白点病による死亡を防止する作用を有する。従って、イオノフォア抗生物質を海産魚に投与すれば海産魚の白点病が予防治療できる。 イオノフォア抗生物質の投与手段は、特に限定されないが経口投与が簡便かつ安全であることから好ましい。イオノフォア抗生物質を経口投与するには、飼料(餌)中に混合して投与するのが好ましい。当該飼料又は飼料添加物中のイオノフォア抗生物質の濃度は、4質量百万分率以上、さらに4〜500質量百万分率、特に10〜500質量百万分率とするのが好ましい。また、イオノフォア抗生物質の海産魚の体重1kgあたりの投与量としては、1日あたり0.1〜50mg、さらに0.25〜25mgが好ましい。 また、本発明の白点病予防治療剤は、飼料中に混合せず別途投与してもよい。その場合の形態としては粉体、粒状物、ペレット等が挙げられる。 前記の飼料、飼料添加物、その他の形態にする場合には、イオノフォア抗生物質以外に、例えば、炭酸カルシウム、りん酸カルシウム、硫酸カルシウム、小麦粉、デンプン、デキストリン、飼料用酵母や飼料用原料の穀類、そうこう類、粕類と混合して希釈したり、あるいはビタミン、ミネラル等のプレミックス又はこれらプレミックスを配合した魚類用餌料に添加して使用してもよい。また生餌の場合、アルギン酸ナトリウム、グアーガム等の添加剤を同時に使用してもよい。 本発明の白点病予防治療剤の対象海産魚としては、全ての海産真骨魚であれば限定されないが、例えばマダイ、イシダイ、イシガキダイ、スズキ、イサキ、マアジ、シマアジ、マサバ、クロマグロ、カンパチ、ブリ、ヒラマサ、マハタ、クエ、キジハタ、スギ等のスズキ目及びオニオコゼ、カサゴの属するカサゴ目、ヒラメ、マコガレイ、ホシガレイ、マツカワ等の属するカレイ目、トラフグの属するフグ目の海産魚が挙げられる。 本発明の白点病予防治療剤の投与時期は、Cryptocaryon irritansが寄生する前から投与することもでき、白点病の症状が発見された時点で投与することもできる。 次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。実施例1(方法) 非特許文献4の記載に準じて、魚類培養細胞層の上に細胞培養用培地とアガロースゲルを重層した海産魚白点虫用培地のアガロースゲルの中にイオノフォア抗生物質を各種薬剤を様々な濃度で添加し、魚類細胞層とアガロースゲル層の間に海産魚白点虫のセロント懸濁液をマイクロピペットを用いて挿入し、挿入直後のセロントを数え、さらに、セロントが成長して得られるトロホントの数を毎日数えて生残率を求めた。(結果) 図1〜図4に、各種イオノフォア抗生物質を添加した培養内におけるCryptocaryon irritansのトロホントの生残率の変化を示す。図1〜図4から明らかなように、サリノマイシンナトリウム、モネンシンナトリウム、ナラシン及びセンデュラマイシンナトリウムのいずれもトロホントの生残率を顕著に抑制した。実施例2 ヒラメ稚魚(全長約5cm)にサリノマイシンナトリウムならびにセンデュラマイシンナトリウムを添加した飼料(濃度200ppm)を飽食給餌し、セロント懸濁液の中に浸漬して攻撃して、ヒラメを離脱したプロトモントの数とプロトモントがシスト化して形成されたトモントの直径を計測した。 5日間薬剤を投与したのち、C.irritansのセロントで攻撃したヒラメから回収されたトロホント数と回収されたトロホントがシスト化して形成されたトモントの直径を表1に示す。 C.irritansによる攻撃前の5日間と攻撃後の3日間薬剤を投与したヒラメから回収されたトロホント数と回収されたトロホントがシスト化して形成されたトモントの直径を表2に示す。 表1及び表2の結果からサリノマイシンナトリウムでは、回収された虫体の数、トモントの直径ともに有意に小さくなった。センデュラマイシンナトリウムでは、有意差はなかったものの回収虫体数は少なくなり、得られたトモントの直径は有意に小さくなった。このことから、イオノフォア抗生物質は魚に寄与しているCryptocaryon irritans虫体に対して、殺虫効果と成長抑制効果を有することが確認された。実施例3 サリノマイシンナトリウム(200ppm)を添加した飼料を5日間飽食給餌したヒラメ稚魚をセロント懸濁液で攻撃し、その後もサリノマイシンナトリウムを毎日給餌し、死亡までの時間と観察した。 その結果、図5に示すように、サリノマイシンナトリウム投与区では明らかにヒラメの白点病による死亡までの時間が抑制された。 イオノフォア抗生物質を有効成分とする海産魚白点病予防治療剤。 イオノフォア抗生物質が、サリノマイシン、モネンシン、ナラシン、センデュラマイシン及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の海産魚白点病予防治療剤。 投与形態が、経口投与である請求項1又は2記載の海産魚白点病予防治療剤。 イオノフォア抗生物質を海産魚に投与することを特徴とする海産魚白点病の予防治療方法。 イオノフォア抗生物質を経口投与するものである請求項4記載の予防治療方法。 イオノフォア抗生物質を餌に混合して投与するものである請求項4又は5記載の予防治療方法。 【課題】海産魚の魚体に寄生しているCryptocaryon irritansの虫体に対する殺虫効果を示す白点病予防治療剤を提供する。【解決手段】イオノフォア抗生物質を有効成分とする海産魚白点病予防治療剤。【選択図】なし


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特許公報(B2)_海産魚白点病予防治療剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_海産魚白点病予防治療剤
出願番号:2010016279
年次:2014
IPC分類:A61K 31/351,A23K 1/18,A23K 1/17,A01K 61/00,A61P 31/00,A61K 45/00


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良永 知義 西田 早予子 林 賢貞 JP 5553337 特許公報(B2) 20140606 2010016279 20100128 海産魚白点病予防治療剤 国立大学法人 東京大学 504137912 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 良永 知義 西田 早予子 林 賢貞 20140716 A61K 31/351 20060101AFI20140626BHJP A23K 1/18 20060101ALI20140626BHJP A23K 1/17 20060101ALI20140626BHJP A01K 61/00 20060101ALI20140626BHJP A61P 31/00 20060101ALI20140626BHJP A61K 45/00 20060101ALN20140626BHJP JPA61K31/351A23K1/18 102AA23K1/17 BA01K61/00 BA61P31/00 171A61K45/00 A61K 31/35 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2001−081034(JP,A) 特開2009−108004(JP,A) 養殖,2009年,Vol.46,p.22-25 2 2011153103 20110811 7 20121130 深草 亜子 本発明は、海産魚に寄生するCryptocaryon irritansによる白点病の予防治療剤に関する。 ヒラメやタイ等の海産魚の感染症の一つに白点病がある。養殖場で白点病が発生すると、大量死が発生し、その被害は甚大である。 海産魚白点病の原因は、淡水魚白点病の原因寄生虫と同じく繊毛虫ではあるものの、全く異なる分類群に属するCryptocaryon irritansという寄生虫である。Cryptocaryon irritansの生活史は以下のようなものである。すなわち、水中に漂っているセロント(感染幼虫)が魚体の体表、鰭、鰓に接触すると、これらの鰓や体表の上皮の細胞層の中に侵入し、トロホント(感染期虫体)として成長する。成長したトロホントは魚体から離脱し、プロトモントとなり、水底に沈む。水底に沈んで数時間たつと、シスト化したトモント(シスト期虫体)となる。このトモントの中で細胞分裂を繰り返して仔虫が形成され、セロントとして水中に放出される。魚体内で成長して離脱するまでの日数、シストからセロントが放出されるまでの日数は、温度に左右されるが、水温25度では、それぞれ、3から4日ならびに4から10日間ほどである。 白点病の特徴は、魚体に虫体が侵入しただけで魚が死亡するのではなく、魚体内で虫体が成長する際および魚体から虫体が離れる際に魚体を傷害すること、及びその傷害に基づいて死亡することである。 白点病の原因であるCryptocaryon irritansは、多くの魚類寄生虫と同様、試験管内で成長させることができないため、その予防治療剤の開発は極めて困難である。 海産魚白点病予防治療剤としては、塩化リゾチーム、ラクトフェリン、中鎖脂肪酸などが知られている(非特許文献1、2、3)が、前者二つは虫体に直接作用するのではなく、その効果は魚類の粘液分泌促進や生体防御能の向上によるものと考えられている。また、中鎖脂肪酸は、魚体侵入前の虫体に対する殺虫効果は知られているが、魚体内の虫体への作用機序は不明である。 白点病に対する対策としては、水槽などの閉鎖的な環境にある鑑賞魚用としては、飼育水へ銅イオン、メチレンブルー、マラカイトグリーンなどを長期間添加することにより魚体外の発育段階の虫体を殺すという手法が用いられている。網いけすなどの開放的な環境に飼育されている魚類ではこれらの飼育水への薬剤の添加という手法を採ることはできない。また、これらの薬剤は、食品衛生上の問題から食用魚には使用できない。食用魚に対しては、潮流の早い海域への生簀の移動、塩化リゾチームの薬剤としての投与あるいは中鎖脂肪酸(カプリック酸)の添加物として餌料への投与が行われているが、その効果は限定的で、さらに有効な予防治療法が求められている。Fish Pathology,30,4,289−290Fish & Shellfish Immunology,18,2,109,124Aquaculture,198,3−4,219−228Disease of Aquatic Organisms,78,2,155−160 本発明の課題は、海産魚の魚体に寄生しているCryptocaryon irritansの虫体に対する殺虫効果を示す白点病予防治療剤を提供することにある。 そこで本発明者は、Cryptocaryon irritans虫体の試験管内培養手段について検討し、魚類の培養細胞層の上に細胞培養用の培地で作られたアガロースゲルを重層して培地とし、細胞層とアガロースゲル層の間にセロントを挿入する方法を採用することにより、この虫体の発育に成功した(非特許文献4)。そして、この系を用いて種々検討したところ、イオノフォア抗生物質が虫体に対する殺虫効果を示し、その効果が魚に寄生している虫体に対して殺虫効果と成長抑制効果を有することを見出した。さらに、海産魚を用いて実際にCryptocaryon irritansの感染実験を行った結果、イオノフォア抗生物質が、白点病による死亡を有意に抑制することを確認し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、イオノフォア抗生物質を有効成分とする海産魚白点病予防治療剤を提供するものである。 また、本発明は、イオノフォア抗生物質を海産魚に投与することを特徴とする海産魚白点病の予防治療方法を提供するものである。 本発明によれば、海産魚の魚体に寄生しているCryptocaryon irritans虫体に対する殺虫効果と成長抑制効果を有し、海産魚の白点病による死亡数を顕著に抑制することができる。C.irritansのトロホントの生残率に対するサリノマイシンナトリウムの効果を示す。C.irritansのトロホントの生残率に対するモネンシンナトリウムの効果を示す。C.irritansのトロホントの生残率に対するナラシンの効果を示す。C.irritansのトロホントの生残率に対するセンデュラマイシンナトリウムの効果を示す。サリノマイシンナトリウムの経口投与(餌料中濃度200ppm)により白点病に対する生残率を示す。 本発明の海産魚予防治療剤の有効成分は、イオノフォア抗生物質である。該イオノフォア抗生物質としては、サリノマイシン、モネンシン、ナラシン、センデュラマイシン、ラサロシド、それらの塩等が挙げられるが、安全性及び有効性の点からサリノマイシン、モネンシン、ナラシン、センデュラマイシン及びそれらの塩がより好ましく、サリノマイシン又はその塩が特に好ましい。ここで、塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が好ましい。 後記実施例に示すように、イオノフォア抗生物質は、海産魚の魚体に寄生したCryptocaryon irritans虫体に対する殺虫効果及び成長抑制効果を有し、かつ海産魚の白点病による死亡を防止する作用を有する。従って、イオノフォア抗生物質を海産魚に投与すれば海産魚の白点病が予防治療できる。 イオノフォア抗生物質の投与手段は、特に限定されないが経口投与が簡便かつ安全であることから好ましい。イオノフォア抗生物質を経口投与するには、飼料(餌)中に混合して投与するのが好ましい。当該飼料又は飼料添加物中のイオノフォア抗生物質の濃度は、4質量百万分率以上、さらに4〜500質量百万分率、特に10〜500質量百万分率とするのが好ましい。また、イオノフォア抗生物質の海産魚の体重1kgあたりの投与量としては、1日あたり0.1〜50mg、さらに0.25〜25mgが好ましい。 また、本発明の白点病予防治療剤は、飼料中に混合せず別途投与してもよい。その場合の形態としては粉体、粒状物、ペレット等が挙げられる。 前記の飼料、飼料添加物、その他の形態にする場合には、イオノフォア抗生物質以外に、例えば、炭酸カルシウム、りん酸カルシウム、硫酸カルシウム、小麦粉、デンプン、デキストリン、飼料用酵母や飼料用原料の穀類、そうこう類、粕類と混合して希釈したり、あるいはビタミン、ミネラル等のプレミックス又はこれらプレミックスを配合した魚類用餌料に添加して使用してもよい。また生餌の場合、アルギン酸ナトリウム、グアーガム等の添加剤を同時に使用してもよい。 本発明の白点病予防治療剤の対象海産魚としては、全ての海産真骨魚であれば限定されないが、例えばマダイ、イシダイ、イシガキダイ、スズキ、イサキ、マアジ、シマアジ、マサバ、クロマグロ、カンパチ、ブリ、ヒラマサ、マハタ、クエ、キジハタ、スギ等のスズキ目及びオニオコゼ、カサゴの属するカサゴ目、ヒラメ、マコガレイ、ホシガレイ、マツカワ等の属するカレイ目、トラフグの属するフグ目の海産魚が挙げられる。 本発明の白点病予防治療剤の投与時期は、Cryptocaryon irritansが寄生する前から投与することもでき、白点病の症状が発見された時点で投与することもできる。 次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。実施例1(方法) 非特許文献4の記載に準じて、魚類培養細胞層の上に細胞培養用培地とアガロースゲルを重層した海産魚白点虫用培地のアガロースゲルの中にイオノフォア抗生物質を各種薬剤を様々な濃度で添加し、魚類細胞層とアガロースゲル層の間に海産魚白点虫のセロント懸濁液をマイクロピペットを用いて挿入し、挿入直後のセロントを数え、さらに、セロントが成長して得られるトロホントの数を毎日数えて生残率を求めた。(結果) 図1〜図4に、各種イオノフォア抗生物質を添加した培養内におけるCryptocaryon irritansのトロホントの生残率の変化を示す。図1〜図4から明らかなように、サリノマイシンナトリウム、モネンシンナトリウム、ナラシン及びセンデュラマイシンナトリウムのいずれもトロホントの生残率を顕著に抑制した。実施例2 ヒラメ稚魚(全長約5cm)にサリノマイシンナトリウムならびにセンデュラマイシンナトリウムを添加した飼料(濃度200ppm)を飽食給餌し、セロント懸濁液の中に浸漬して攻撃して、ヒラメを離脱したプロトモントの数とプロトモントがシスト化して形成されたトモントの直径を計測した。 5日間薬剤を投与したのち、C.irritansのセロントで攻撃したヒラメから回収されたトロホント数と回収されたトロホントがシスト化して形成されたトモントの直径を表1に示す。 C.irritansによる攻撃前の5日間と攻撃後の3日間薬剤を投与したヒラメから回収されたトロホント数と回収されたトロホントがシスト化して形成されたトモントの直径を表2に示す。 表1及び表2の結果からサリノマイシンナトリウムでは、回収された虫体の数、トモントの直径ともに有意に小さくなった。センデュラマイシンナトリウムでは、有意差はなかったものの回収虫体数は少なくなり、得られたトモントの直径は有意に小さくなった。このことから、イオノフォア抗生物質は魚に寄与しているCryptocaryon irritans虫体に対して、殺虫効果と成長抑制効果を有することが確認された。実施例3 サリノマイシンナトリウム(200ppm)を添加した飼料を5日間飽食給餌したヒラメ稚魚をセロント懸濁液で攻撃し、その後もサリノマイシンナトリウムを毎日給餌し、死亡までの時間と観察した。 その結果、図5に示すように、サリノマイシンナトリウム投与区では明らかにヒラメの白点病による死亡までの時間が抑制された。 サリノマイシン、モネンシン、ナラシン、センデュラマイシン及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のイオノフォア抗生物質を有効成分とする海産魚白点病予防治療剤。 投与形態が、経口投与である請求項1記載の海産魚白点病予防治療剤。


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