タイトル: | 特許公報(B2)_グルタチオンベースデリバリーシステム |
出願番号: | 2010007125 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C08G 65/334,A61K 47/34,A61K 38/00,A61P 25/00,A61K 47/22 |
王 藹君 簡 啓恆 黎 世達 林 一峰 呂 欣芝 JP 5394944 特許公報(B2) 20131025 2010007125 20100115 グルタチオンベースデリバリーシステム 財團法人工業技術研究院 390023582 河村 洌 100098464 藤森 洋介 100149630 王 藹君 簡 啓恆 黎 世達 林 一峰 呂 欣芝 US 11/303,934 20051219 20140122 C08G 65/334 20060101AFI20131226BHJP A61K 47/34 20060101ALI20131226BHJP A61K 38/00 20060101ALI20131226BHJP A61P 25/00 20060101ALI20131226BHJP A61K 47/22 20060101ALI20131226BHJP JPC08G65/334A61K47/34A61K37/02A61P25/00A61K47/22 C08G 65/334 A61K CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 特表2001−503396(JP,A) 特開平08−034779(JP,A) 特表2001−523221(JP,A) 特開2004−323486(JP,A) 仏国特許出願公開第2627385(FR,A1) KIWADA,H. et al,Application of synthetic liposomes based on acyl amino acids or acyl peptides as drug carriers. I. T,Chem Pharm Bull (Tokyo),1987年,Vol.35, No.7,p.2935-2942 Lung Uptake of Liposome-entrapped・・・,J. Pharmacy&Pharmacology,1991年 1月,43 No.1 p6-10 1 2005374896 20051227 2010150264 20100708 13 20100115 光本 美奈子 本発明は、生体デリバリーシステムに関し、より具体的には、グルタチオンベースデリバリーシステム(glutathione based delivery system)に関する。 血液脳関門(BBB)は、それらの間の密着結合(tight junction)のために例えば毒素などの異物をブロックできる脳内皮細胞からなる。しかし、疎水性または低分子量分子は、受動拡散によりBBBを通過することが可能である。 ところが、例えば脳または神経疾患を治療するための親水性タンパク薬や中枢神経系に作用する鎮痛ペプチド薬などの活性化合物(active compound)は、その大きな分子量または親水性のために脳組織に入ることができずに酵素によって分解されてしまう。 近年の研究では、薬物の疎水性を高めるための構造修飾、正に帯電したキャリアを電荷吸収により通過させる吸着介在型トランスポート(absorption-mediated transport、AMT)、例えばNa+とK+、ジペプチド、トリペプチドまたはグルコースなどの親水性金属イオンをトランスポーターにより通過させる担体介在型トランスサイトーシス(carrier-mediated transcytosis、CMT)、および例えばインシュリン、トランスフェリンまたは低密度リポタンパク(LDL)などの高分子をトランスサイトーシスにより通過させる受容体介在型トランスサイトーシス(receptor-mediated transcytosis、RMT)を含む、活性化合物をBBBに通過させるための各種方法が進められている。 グルタチオン(GSH)は内生の抗酸化剤である。その血清中の濃度が不十分であると、例えば慢性疲労症候群(CFS)などの神経疾患が引き起こされる可能性がある。 1988年、特許文献1においてKiwada Hiroshiは、例えばN−パルミトイルグルタチオン(N-palmitoylglutathione)であるN−アシルグルタチオン(N-acylglutathione)と例えばホスファチジルコリンであるリン脂質とを含み、ターゲッティングして肝臓疾患を治療する、肝臓に蓄積可能なリポゾームを提示した。 1994年にBerislav V.Zlokovicにより、グルタチオン(GSH)が例えばGSH−トランスポーターなどの特殊な経路を介して分解することなくモルモットのBBBに到達し通過するということが示された。 1995年にBerislav V.Zlokovicにより、脳星状細胞および内皮細胞中にグルタチオン(GSH)がミリモル濃度で存在するということが示された。 1995年にRam Kannanにより、GSHの取り込みがNa+の濃度に依存することが示された。Na+の濃度が低いと、脳内皮細胞のGSHの取り込みが抑制され得る。彼はまた、BBBの管腔側(luminal side)に位置するNa依存型GSHトランスポーターはGSHの取り込みを担当し、BBBの管腔側に位置するNa非依存型GSHトランスポーターはGSHの排出を担当するということも示した。さらにKannanは、マウスおよびモルモットの脳を用いてラット肝細管GSHトランスポーター(rat hepatic canalicular GSH transporter、RcGSHT)システムを確立し、cDNAフラグメント5、7、および11を分析した。その結果より、フラグメント7がNa依存型GSHトランスポーターに相当し、フラグメント5および11がNa依存型GSHトランスポーターに相当するということがわかった。 1999年にRam Kannanは、BBBの状況をシミュレートするマウス脳内皮細胞株(MBEC−4)モデルを作製した。このモデルにより、Na−依存型GSHトランスポーターがMBEC−4細胞の管腔側に位置することが証明された。 2000年にRam Kannanによって、ヒト脳血管内皮細胞(HCEC)においてGSHがNa−依存型GSHトランスポーターによりBBBを通過すること、およびHCECの管腔原形質膜(luminal plasma membrane)にNa−依存型GSHトランスポーターが存在することが示された。 2003年、特許文献2においてZhao Zhiyangは、スルホンアミド共有結合によりグルタチオンs−トランスフェラーゼ(GST)/グルタチオン(GSH)を結合させた制癌プロドラッグであって、特定の癌細胞にターゲティングすると共にスルホンアミド結合切断後に治療作用をあらわす、制癌プロドラッグを提示した。この改質は、薬物のアミノ基を保護し、その溶解性を高め、かつその体内における吸収と分布を変えることができる。特開昭63−2922号公報米国特許出願公開第2003/109555号明細書 本発明は、キャリアまたは活性化合物、およびこれにグラフトされたグルタチオンまたはグルタチオン誘導体を含むデリバリーシステムを提供する。 本発明はさらに、ビタミンE誘導体またはリン脂質誘導体を含む部分(moiety)、これに結合されたポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレングリコール誘導体、および該ポリエチレングリコールまたは該ポリエチレングリコール誘導体に結合されたグルタチオン(GSH)またはグルタチオン誘導体を含む化合物を提供する。本発明のデリバリーシステムを示している。本発明の各種met−エンケファリンキャリアの最大可能効果(MPE)を示している。本発明の各種met−エンケファリンキャリアの曲線下面積(AUC)を示している。本発明の各種ガバペンチンキャリアの最大可能効果(MPE)を示している。本発明の各種ガバペンチンキャリアの曲線下面積(AUC)を示している。フリーmet−エンケファリンおよびリポゾーム中のmet−エンケファリンの血清安定性を示している。 添付の図面を参照にして、実施形態により以下に詳細に説明する。 添付の図面を参照とし以下の詳細な説明および例を読めば、本発明をより理解することができるであろう。 本発明は、キャリアまたは活性化合物、およびこれにグラフトされたグルタチオンまたはグルタチオン誘導体を含むデリバリーシステムを提供する。キャリアには、ナノ粒子、高分子ナノ粒子、固体脂質ナノ粒子、高分子ミセル、リポゾーム、マイクロエマルジョン、または液体ベースナノ粒子が含まれ得る。リポゾームは、少なくとも、例えば大豆レシチン(soy lecithin)であるレシチン、および例えば水素化大豆レシチン(hydrogenated soy lecithin)である水素化レシチンのうちの1種を含む。 リポゾームは、血清耐性または電荷量が高まるように、コレステロール、水溶性ビタミンE、またはオクタデシルアミンをさらに含んでいてもよい。リポゾームのモル組成比は、レシチンまたは水素化レシチン0.5〜100%、コレステロールまたは水溶性ビタミンE0.005〜75%、オクタデシルアミン0.001〜25%とすることができる。 さらに、キャリアは約0.5〜100%の封入効率で活性化合物を封入させることができる。活性化合物には、例えばガバペンチンである小分子化合物、例えばエンケファリンであるペプチド、タンパク質、DNAプラスミド、オリゴヌクレオチド、または遺伝子フラグメントが含まれ、かつそのキャリア中におけるモル比は約0.0005〜95%とすることができる。 上述の標的指向化キャリアまたは活性化合物は、例えば心臓、肺、肝臓、腎臓、または血液脳関門などの器官のグルタチオントランスポーターへのターゲティングが可能である。 特に、活性化合物は、標的指向化キャリアによって、例えば脳内皮細胞である血液脳関門(BBB)を通過することができ、かつ、細胞透過率が約0.01〜100%になる。 本発明はさらに、ビタミンE誘導体またはリン脂質誘導体を含む部分(moiety)、これに結合されたポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレングリコール誘導体、および該ポリエチレングリコールまたは該ポリエチレングリコール誘導体に結合されたグルタチオン(GSH)またはグルタチオン誘導体を含む化合物を提供する。 ビタミンE誘導体には、トコフェロール誘導体またはトコトリエノール誘導体が含まれ、かつ該ビタミンE誘導体は、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、α−コハク酸トコフェロール、β−コハク酸トコフェロール、γ−コハク酸トコフェロール、δ−コハク酸トコフェロール、α−コハク酸トコトリエノール、β−コハク酸トコトリエノール、γ−コハク酸トコトリエノール、δ−コハク酸トコトリエノール、α−酢酸トコフェロール、β−酢酸トコフェロール、γ−酢酸トコフェロール、δ−酢酸トコフェロール、α−酢酸トコトリエノール、β−酢酸トコトリエノール、γ−酢酸トコトリエノール、δ−酢酸トコトリエノール、α−ニコチン酸トコフェロール、β−ニコチン酸トコフェロール、γ−ニコチン酸トコフェロール、δ−ニコチン酸トコフェロール、α−ニコチン酸トコトリエノール、β−ニコチン酸トコトリエノール、γ−ニコチン酸トコトリエノール、δ−ニコチン酸トコトリエノール、α−リン酸トコフェロール、β−リン酸トコフェロール、γ−リン酸トコフェロール、δ−リン酸トコフェロール、α−リン酸トコトリエノール、β−リン酸トコトリエノール、γ−リン酸トコトリエノール、またはδ−リン酸トコトリエノールであり得る。 リン脂質誘導体は次の公式を備え得る。 公式(I)のうち、A1はスフィンゴシンであり、かつ、R1はオクタノイルまたはパルミトイルを含む。公式(II)のうち、A2はホスホエタノアミン(phosphoethanoamine)であり、かつ、R2はミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、またはオレオイルを含む。 ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレングリコール誘導体の重合数(n)は約6〜210である。ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレングリコール誘導体の分子量は、それぞれ異なるビタミンE誘導体またはリン脂質誘導体によって変えることができる。例として、PEGまたはその誘導体がビタミンE誘導体に結合する場合、その分子量は約300〜10000であり、PEGまたはその誘導体が公式(I)で示されるリン脂質誘導体に結合する場合は、その分子量は約750〜5000であり、さらに、PEGまたはその誘導体が公式(II)で示されるリン脂質誘導体に結合する場合には、その分子量は約350〜5000とすることができる。 ポリエチレングリコール誘導体には、カルボン酸、マレイミド、PDP、アミド、またはビオチンが含まれる。 図1を参照すると、本発明のデリバリーシステムが示されている。このデリバリーシステム10は、リポゾーム20、およびこれにグラフトされたリガンド30を備える。リガンド30は、ビタミンE誘導体またはリン脂質誘導体を含む部分(moiety)40、これに結合されたポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレングリコール誘導体50、および該ポリエチレングリコールまたは該ポリエチレングリコール誘導体に結合されたグルタチオン(GSH)またはグルタチオン誘導体60を備える。 本発明が提供する新規なグルタチオン(GSH)リガンドを用いた標的指向化キャリアに運ばれる、例えばタンパク質、ペプチド、または小分子などの活性化合物は、担体介在型トランスサイトーシス(CMT)または受容体介在型トランスサイトーシス(RMT)によって血液脳関門を有効に通過して、脳または神経疾患を治療することができる。実施例1TPGS−グルタチオンの調製 N−Cbzアミノ酸ベンジル(N−Cbzグルタミン、1.0当量)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(HoSu、1.0当量)をDME(15mL)中にて攪拌し、その溶液を0℃に冷却した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(DIC、1.0当量)を加えてから、この温度で4時間攪拌した。その反応混合物を冷凍室に2時間置いたのち、濾過した。 予期したとおりに、形成されたジシクロヘキシルウレア(DCU)の濾去および溶剤の蒸発後、純粋な化合物が高い収率(98%)で得られた。その残留物をET2O/ヘキサン中にて粉砕し濾過してから、真空中で乾燥させて白色の固体を得た。 (+)−S−トリチルシステインリチウム塩(H−Cys(STrt)−OLi、1当量)および炭酸ナトリウム(Na2CO3、5.0当量)を水(15mL)中に溶解してから、アセトニトリル(CH3CN)を加えてステップ2の中間産物を得た。その混合物を、TLC分析によりステップ2の中間産物の消失が示されるまで、室温で3〜6時間激しく攪拌した。その溶液を水(2×100mL)で洗浄してから、有機相をNa2SO4で乾燥、濾過し、真空中で濃縮して化合物2を得た。 化合物2およびN−ヒドロキシスクシンイミド(HoSu、1.0当量)をDME(15mL)中にて攪拌し、その溶液を0℃に冷却した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(DIC、1.0当量)を加えてから、この温度で4時間攪拌した。その反応混合物を冷凍室に2時間置いたのち、濾過した。 DCUおよび溶剤を除去したのち、グリシンリチウム塩(H−Gly−OLi、1.0当量)および炭酸ナトリウム(Na2CO3、5.0当量)を水(15mL)中に溶解し、次いでアセトニトリル(CH3CN)を加えてステップ4の中間産物を得た。その混合物を、TLC分析によりステップ4の中間産物の消失が示されるまで、室温で3〜6時間激しく攪拌した。その溶液を水(2×100mL)で洗浄してから、有機相をNa2SO4で乾燥、濾過し、真空中で濃縮して化合物3を得た。 d−アルファコハク酸トコフェリルポリエチレングリコール1000(d-alpha tocopheryl polyethylene glycol 1000 succinate、TPGS−OH)を、エステル化により化合物3と結合させて化合物4を得た。 メタノール(100mL)中の化合物4に、10%Pd−C(保護トリペプチド−TPGSの重量の0.2倍)を加えた。その懸濁液を、水素を充満させた風船中で室温下16時間攪拌した。その懸濁液をセライトで濾過してから蒸発させ、その残留物をエタノールから結晶化させた。これにより化合物5を得た。 CH2Cl2の存在下、トリエチルシラン(ET3SiH)およびTFAを用いた化合物5の脱保護を行って化合物6(つまりGSH−TPGS)を得た。met−エンケファリンキャリア溶液の調製 大豆ホスファチジルコリン(SPC)を83.2%、α−コハク酸トコフェロールPEG1500(TPGS)を4.2%、グルタチオン−TPGS(GSH−TPGS)を4.2%、およびコレステロールを8.4%含有する脂質0.5gを、12.5mLのZrO2乳鉢に入れた。適量のmet−エンケファリンをpH7.4のリン酸塩溶液10mM中に溶解して4%薬物溶液を作った。次に、その乳鉢に薬物溶液0.5mLおよびZrO2ビーズ(直径10mm)5個を加えて500rpmで1時間粉砕し、粘性クリーム状物にした。続いて、粘性クリーム状物0.2gおよびリン酸塩溶液(10mM、pH7.4)1.8mLを10mLフラスコに加え室温下で1時間水和させて、met−エンケファリン封入リポゾームを含むキャリア溶液を作った。リポゾーム中のmet−エンケファリンの濃度は0.56mg/mLであった。その封入効率は33.3%であった。キャリアの平均径は173.1nmであり、かつその多分散性指数(polydispersity index、PI)は0.243であった。実施例2〜6 実施例2〜6の調製手法は実施例1に類似する。これらの間の差違はそれぞれ異なるキャリアの組成にある。表1および2を参照されたい。実施例7ガバペンチンキャリア溶液の調製 大豆ホスファチジルコリン(SPC)を83.2%、α−コハク酸トコフェロールPEG1500(TPGS)を4.2%、グルタチオン−TPGS(GSH−TPGS)を4.2%、およびコレステロールを8.4%含有する脂質0.5gを、12.5mLのZrO2乳鉢に入れた。適量のガバペンチンをpH7.4のリン酸塩溶液10mM中に溶解して10%薬物溶液を作った。次に、その乳鉢に薬物溶液0.5mLおよびZrO2ビーズ(直径10mm)5個を加えて500rpmで1時間粉砕し、粘性クリーム状物にした。続いて、粘性クリーム状物0.2gおよびリン酸塩溶液(10mM、pH7.4)1.8mLを10mLフラスコに加え、室温下で1時間水和させて、ガバペンチン封入リポゾームを含むキャリア溶液を作った。リポゾーム中のガバペンチンの濃度は1.08mg/mLであった。その封入効率は35.7%であった。キャリアの平均径は147.7nmであり、かつその多分散性指数(PI)は0.157であった。比較例1met−エンケファリンキャリア溶液の調製 大豆ホスファチジルコリン(SPC)を83.2%、α−コハク酸トコフェロールPEG1500(TPGS)を8.4%、およびコレステロールを8.4%含有する脂質0.5gを、12.5mLのZrO2乳鉢に入れた。適量のmet−エンケファリンをpH7.4のリン酸塩溶液10mM中に溶解して4%薬物溶液を作った。次に、その乳鉢に薬物溶液0.5mLおよびZrO2ビーズ(直径10mm)5個を加えて500rpmで1時間粉砕し、粘性クリーム状物にした。続いて、粘性クリーム状物0.2gおよびリン酸塩溶液(10mM、pH7.4)1.8mLを10mLフラスコに加え室温下で1時間水和させて、met−エンケファリン封入リポゾームを含むキャリア溶液を作った。リポゾーム中のmet−エンケファリンの濃度は0.57mg/mLであった。その封入効率は31.1%であった。キャリアの平均径は164.1nmであり、かつその多分散性指数(PI)は0.281であった。比較例2〜3 比較例2〜3の調製手法は比較例1に類似する。これらの間の差違はそれぞれ異なるキャリアの組成にある。表3および4を参照されたい。比較例4ガバペンチンキャリア溶液の調製 大豆ホスファチジルコリン(SPC)を83.2%、α−コハク酸トコフェロールPEG1500(TPGS)を8.4%、およびコレステロールを8.4%含有する脂質0.5gを、12.5mLのZrO2乳鉢に入れた。適量のガバペンチンをpH7.4のリン酸塩溶液10mM中に溶解して10%薬物溶液を作った。次に、その乳鉢に薬物溶液0.5mLおよびZrO2ビーズ(直径10mm)5個を加えて500rpmで1時間粉砕し、粘性クリーム状物にした。続いて、粘性クリーム状物0.2gおよびリン酸塩溶液(10mM、pH7.4)1.8mLを10mLフラスコに加え室温下で1時間水和させて、ガバペンチン封入リポゾームを含むキャリア溶液を作った。リポゾーム中のガバペンチンの濃度は1.17mg/mLであった。その封入効率は38.5%であった。キャリアの平均径は155.8nmであり、かつその多分散性指数(PI)は0.186であった。met−エンケファリンリポゾームのインビトロ透過率試験1 BBBの状況をシミュレートしたRBE4/グリオーマ細胞モデルを用い、met−エンケファリンの透過率を測定した。実施例1〜2(グルタチオン含有)と比較例1(グルタチオンを含まない)の試験結果を表5において比較する。 この結果より、実施例1および2の透過率(9.8%)は比較例1(3.4%)の約2.82倍もあり、明らかに高いということが示された。met−エンケファリンリポゾームのインビトロ透過率試験2 BBBの状況をシミュレートしたRBE4/グリオーマ細胞モデルを用い、met−エンケファリンの透過率を測定した。実施例3(グルタチオン含有)と比較例2(グルタチオンを含まない)の試験結果を表6において比較する。 この結果より、実施例3の透過率(6.99%)は比較例2(3.55%)の約1.96倍もあり、明らかに高いということが示された。また、実施例3を実施するに先立って細胞を30分間グルタチオンで培養した場合には、かかる付加されたグルタチオンが細胞のグルタチオントランスポーターを占有してキャリアの結合を阻止してしまうことでBBBの薬物透過率が低下するため、その透過率は0.25%まで低下した。この結果は、本発明により提供されるグルタチオンキャリアが、グルタチオンリガンド/トランスポーターの結合により担体介在型トランスサイトーシス(CMT)または受容体介在型トランスサイトーシス(RMT)が誘発されることでBBBを通過する、ということを証明している。met−エンケファリンリポゾームのホットプレート試験 55℃のホットプレート上で実験用マウスに静脈注射をしたのち、熱誘発の疼痛に対する鎮痛効果を評価した。図2を参照されたい。グルタチオンを含まないキャリア(比較例3)の場合、注射90分後、その投与量30mg/kgの最大可能効果(maximal possible effect、MPE)は13%であった。グルタチオン含有キャリア(実施例5)の場合は、注射60分後、その投与量30mg/kgの最大可能効果(MPE)は37%であった。図3を参照されたい。曲線下面積(AUC)によると、実施例5は、比較例3の3.2倍、そしてmet−エンケファリン溶液の14.7倍の鎮痛効果を実現していた。よって薬物は、グルタチオンリガンドを有するキャリアに安全に運ばれてBBBを通過し、鎮痛効果を発揮することができる。ガバペンチンリポゾームのホットプレート試験 55℃のホットプレート上で実験用マウスに静脈注射をしたのち、熱誘発の疼痛に対する鎮痛効果を評価した。図4を参照されたい。グルタチオンを含まないキャリア(比較例4)の場合、注射270分後、その投与量10mg/kgの最大可能効果(MPE)は3.15%であった。グルタチオン含有キャリア(実施例7)の場合は、注射180分後、その投与量10mg/kgの最大可能効果(MPE)が4.47%であった。図5を参照されたい。曲線下面積(AUC)によると、実施例7は、比較例4(p<0.005)の鎮痛効果の1.54倍、そしてグルタチオン溶液(p<0.0005)の2.76倍であった。よって薬物は、グルタチオンリガンドを有するキャリアに安全に運ばれてBBBを通過し、鎮痛効果を発揮することができる。met−エンケファリンリポゾームの血清安定性試験 実施例5で作製したキャリアとウシ胎仔血清(FBS)とを1:1(v/v)で混合して溶液を作った。37℃の水浴中に0、1、2および4時間それぞれ放置したのちに、その溶液をゲル濾過(Sephrox CL-4B、75mm×120mm)によって分析し、次いでリポゾーム中におけるmet−エンケファリンの残留濃度を測定した。図6にその結果が示されている。 上記結果から、リポゾーム中のmet−エンケファリン濃度は93%以上を維持していることがわかる。一方、フリーmet−エンケファリンの残留濃度は2%まで低下している。本発明により提供されるキャリアが高血清耐性を有することは明らかである。 本発明を実施例により、そして好ましい実施形態の点から説明したが、本発明はこれには限定されないと理解されなければならない。それとは反対に、(当業者には明らかであるような)各種変更や類似のアレンジメントがカバーされるよう意図されている。よって、添付の特許請求の範囲は、かかる変更や類似のアレンジメント全てが含まれるように、最も広い解釈が与えられるべきである。 10 デリバリーシステム 20 リポゾーム 30 リガンド 40 ビタミンE誘導体またはリン脂質誘導体を含む部分(moiety) 50 ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレングリコール誘導体 60 グルタチオン(GSH)またはグルタチオン誘導体式:を有する化合物であって、式中、TPGSはd−アルファコハク酸トコフェリルポリエチレングリコール1000である化合物。