生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_硬さ試験方法、硬さ試験機、及びプログラム
出願番号:2010006587
年次:2011
IPC分類:G01N 3/42


特許情報キャッシュ

澤 健司 JP 2011145190 公開特許公報(A) 20110728 2010006587 20100115 硬さ試験方法、硬さ試験機、及びプログラム 株式会社ミツトヨ 000137694 荒船 博司 100090033 荒船 良男 100093045 澤 健司 G01N 3/42 20060101AFI20110701BHJP JPG01N3/42 Z 4 6 OL 12 本発明は、硬さ試験方法、硬さ試験機、及びプログラムに関する。 従来、試料の表面に所定の荷重を負荷した圧子を押込んで形成されたくぼみに基づいて試料の硬さを評価、測定するビッカースなどの押込み硬さ試験機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。 また、押込み後に形成されたくぼみを観察する代わりに、その押込み過程において、試験力(圧子に負荷される力)(F)と、押込み深さ(圧子の変位量)(h)とを連続して計測し、得られた押込み曲線(F−h曲線)を解析することにより、材料の機械的性質を求めるナノインデンテーション(計装化押込み試験)と称される試験方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。 ナノインデンテーションは、くぼみのサイズが小さい等の要因からくぼみ観察が困難な材料に対する評価方法として有効である。このため、様々な機械や構造物において不可欠な構成素材であるプラスチックや薄膜材料の機械的性質を評価するのに適しているとして注目されている。特開2005−326169号公報特開2009−47427号公報 ナノインデンテーションでは、国際規格ISO14577により、押込み硬さ(HIT)と呼ばれる硬さのパラメータが規定されており、最近では薄膜材料等の評価においてこの押込み硬さ(HIT)が使用される事例が増加してきており、押込み硬さ(HIT)は、ビッカース硬さと相関がある値として扱われている。 ここで、ISO14577に規定されている押込み硬さ(HIT)の解析方法を示す。 図7は、F−h曲線の模式図であり、縦軸が試験力(F)、横軸が押込み深さ(h)である。 押込み硬さ(HIT)は、最大試験力(設定試験力)(Fmax)を最大押込み時の圧子の試料の接触投影面積(Ap(hc))で除した値として下記式(1)で定義される。 HIT=Fmax/Ap(hc) (1) そして、例えばベルコビッチ圧子に対して、Ap(hc)は圧子の幾何学形状から下記式(2)のように表わされる。 Ap(hc)=23.96hc2 (2) また、hcは接触深さと呼ばれ、最大押込み深さ(hmax)及び荷重除荷曲線初期部の接線と押込み深さ軸との交点(hr)を用いて下記式(3)で表わされる。 hc=hmax−0.75(hmax−hr) (3) 上記のような、ISO14577規定の押込み硬さ(HIT)の解析方法は、OliverとPhartによって提唱された手法であって、彼らの研究では押込み硬さ(HIT)をビッカース硬さ(HV)と相関があることが確認されている。 しかしながら、彼らの研究で用いられた試料は、金属などの塑性挙動を示す傾向が強いものや、石英ガラスといった弾性変形と塑性変形が混在するもの、即ち明確に弾塑性挙動を示すものであり、ゴム材料やアモルファス材料などの弾性挙動を示す傾向が強いものに対しては検討されておらず、それらも対象としているナノインデンテーションにおいてISO14577規定の押込み硬さ(HIT)をビッカース硬さ(HV)と等価として扱うことは困難であった。 例えば、図8は、銅(Copper)、ベリリウム銅(Cu-Be)、工具鋼(SK85)、石英ガラス(Fused Silica)、アクリル樹脂(Acrylic resin)、ポリプロピレン(PP)、DLC(Diamond-like Carbon)膜について、押込み硬さ(HIT)とビッカース硬さ(HV)との関係を示した図であり、縦軸が押込み硬さ(HIT)、横軸がビッカース硬さ(HV)である。 図8の直線は、HITとHVとを係数Cを用いて下記式(4)で表わしたものである。 HIT=C1・HV (4) 具体的に、図8の直線は、C1=1.25としたときの式(4)を表わしている。なお、C1=1(HIT=HV)とならない理由として、例えば、HITの算出に表面積ではなく投影面積を用いている点や、圧子先端形状や表面検出誤差といったナノインデンテーション特有の誤差要因等のいくつかの原因が考えられるが、いずれにせよ、DLC膜以外の試料は、HITとHV値は等しくはないが相関があるといえる。 一方、DLC膜は直線から大きく逸脱しており、このことは、DLC膜に対しては、ISO14577規定の押込み硬さ(HIT)をビッカース硬さ(HV)と等価として扱うことに問題があるということを示している。 つまり、ゴム材料やアモルファス材料などを試料として用いた場合、ナノインデンテーションにおいてビッカース硬さ(HV)に相当する値を得る手法は確立されていない。 本発明の課題は、ナノインデーションにおいて、ビッカース硬さに相当する値であるビッカース硬さの推定値を求めることのできる硬さ試験方法、硬さ試験機、及びプログラムを提供することである。 前記課題を解決するために、 請求項1に記載の発明にかかる硬さ試験方法は、 所定の荷重を負荷した圧子を試料の表面に押込んでくぼみを形成し、当該くぼみの形成時の前記圧子の変位量と前記圧子に負荷された試験力とを検出して押込み曲線を計測する計測工程と、 前記計測工程により得られた押込み曲線の面積から塑性変形による仕事量(Wp)を算出する仕事量算出工程と、 前記仕事量算出工程により算出した仕事量(Wp)と予め決められた係数(K)とを用いて、 HVe=(K/Wp)2によりビッカース硬さの推定値(HVe)を算出する推定値算出工程と、 を有することを特徴とする。 また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の硬さ試験方法において、 前記試料は、ダイヤモンドライクカーボン、シリコンゴム、又は天然ゴムによって形成されていることを特徴とする。 また、請求項3に記載の発明にかかる硬さ試験機は、 所定の荷重を負荷した圧子を試料の表面に押込んでくぼみを形成する硬さ試験機において、 前記くぼみの形成時の前記圧子の変位量と前記圧子に負荷された試験力とを検出して押込み曲線を計測する計測手段と、 前記計測手段により得られた押込み曲線の面積から塑性変形による仕事量(Wp)を算出する仕事量算出手段と、 前記仕事量算出手段により算出した仕事量(Wp)と予め決められた係数(K)とを用いて、 HVe=(K/Wp)2により、ビッカース硬さの推定値(HVe)を算出する推定値算出手段と、 を備えることを特徴とする。 また、請求項4に記載の発明は、 コンピュータを、 所定の荷重を負荷した圧子を試料の表面に押込んでくぼみを形成し、当該くぼみ形成時の前記圧子の変位量と前記圧子に負荷された試験力とを検出して押込み曲線を計測する計測手段、 前記計測手段により得られた押込み曲線の面積から塑性変形による仕事量(Wp)を算出する仕事量算出手段、 前記仕事量算出手段により算出した仕事量(Wp)と予め決められた係数(K)とを用いて、 HVe=(K/Wp)2により、ビッカース硬さの推定値(HVe)を算出する推定値算出手段、 として機能させるためのプログラムである。 本発明によれば、押込み曲線を計測した後、押込み曲線の面積から塑性変形による仕事量(Wp)を算出し、算出した仕事量(Wp)と予め決められた係数(K)とを用いて、HVe=(K/Wp)2の関係式によりビッカース硬さの推定値(HVe)を算出するようになっている。 塑性変形による仕事量(Wp)は、試料の種類に因らずビッカース硬さと相関のある値であるため、ゴム材料やアモルファス材料など弾性挙動が顕著なものも対象としているナノインデンテーションにおいて、ビッカース硬さ(HV)に相当する値であるビッカース硬さの推定値(HVe)を求めることができる。本発明における硬さ試験機を示す模式図である。図1の硬さ試験機の制御構成を示すブロック図である。塑性変形による仕事量(Wp)を算出する方法を説明するための図である。(a)〜(g)は、それぞれ、銅、ベリリウム銅、工具鋼、石英ガラス、アクリル樹脂、ポリプロピレン、DLC膜を計測した押込み曲線の一例である。塑性変形による仕事量(Wp)とビッカース硬さ(HV)の関係を示した図である。図1の硬さ試験機による硬さ試験方法を説明するためのフローチャートである。押込み曲線を示す模式図である。押込み硬さ(HIT)とビッカース硬さ(HV)の関係を示した図である。 以下、図を参照して、本発明に係る硬さ試験機及び硬さ試験方法について、詳細に説明する。 本実施形態における硬さ試験機100は、圧子3に付与する試験力と圧子3の押込み深さとを連続してモニター可能な計装化押込み試験機である。 また、本実施形態における硬さ試験機100は、例えば、DLC、シリコンゴム、天然ゴム等を試料Sとして使用可能である。即ち、硬さ試験機100は、蒸着膜、半導体材料などの薄膜、表面処理層、各種プラスチック、各種ゴム、微細繊維、ガラス、セラミックスなどの脆性材料、微小電子部品、等に対して測定を行うことができるものである。 硬さ試験機100には、例えば、図1及び図2に示すように、制御部10と、各構成部材が配設される硬さ試験機本体1と、が備えられており、この試験機本体1は、試料SをX、Y、Z方向に移動させるXYZステージ2と、試料Sにくぼみを形成する圧子3を一端に有する荷重レバー4と、荷重レバー4に所定の荷重(試験力)を負荷(付与)する荷重負荷部5と、圧子3の変位量を検出する変位計6と、試料Sの表面に形成されたくぼみ等を撮影する撮影部7と、表示部8と、操作部9と、などを備えて構成される。 XYZステージ2は、制御部10から入力される制御信号に従って、X、Y、Z方向(即ち、水平方向及び垂直方向)に移動するよう構成されており、試料Sは、XYZステージ2によって前後左右及び上下に移動されて、圧子3に対する位置が調整されるようになっている。 また、XYZステージ2は、試験測定中に上面に載置された試料Sがずれないように試料保持台2aにより試料Sを保持している。 圧子3は、例えば、ベルコビッチ、ビッカース、ヌープ、ブリネル等の、くぼみ形成による硬さ試験に用いられる圧子である。圧子3は、所定の荷重が負荷されて試料Sの表面に押込まれた際に、当該試料Sの表面にくぼみ(圧痕)を形成する。 荷重レバー4は、例えば、略棒状に形成されており、中央部付近を十字バネ4aを介して台座上に固定されている。 荷重レバー4の一端には、試料保持台2a上に載置された試料Sの上方から試料Sに対して接離自在に設けられ、試料Sの表面に押し付けて試料Sの表面にくぼみを形成する圧子3が設けられている。 また、荷重レバー4の他端には、荷重負荷部5を構成するフォースコイル5aが設けられている。 荷重負荷部5は、例えば、フォースモータであり、荷重レバー4に取り付けられたフォースコイル5aと、フォースコイル5aに対向するように固定された固定磁石5bと、などを備えて構成される。 荷重負荷部5は、例えば、制御部10から入力される制御信号に従って、固定磁石5bがギャップにつくる磁界と、ギャップの中に設置されたフォースコイル5aに流れる電流と、の電磁誘導により発生する力を駆動力として用い、荷重レバー4を回動させる。これにより、荷重レバー4の圧子3側の端部は下方に傾き、圧子3は試料Sに押し込まれることになる。 変位計6は、例えば、静電容量式変位センサであり、荷重レバー4の圧子3側の端部に設けられた可動極板6aと、可動極板6aと対向するように固定された固定極板6bと、などを備えて構成される。 変位計6は、例えば、可動極板6aと固定極板6bとの間の静電容量の変化を検出することによって、圧子3が試料Sにくぼみを形成する際に移動した変位量(圧子3を試料Sに押し込んだ際の押込み深さ)を検出し、この検出した変位量に基づく変位信号を制御部10に出力する。 なお、変位計6として、静電容量式変位センサを例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、光学式変位センサやうず電流式変位センサであっても良い。 撮影部7は、例えばカメラ等を備え、制御部10から入力される制御信号に従って、例えば、試料保持台2a上において、圧子3により試料Sの表面に形成されたくぼみ等を撮影する。 表示部8は、例えば液晶表示パネルであって、制御部10から入力される制御信号に従って、撮影部7により撮影された試料Sの表面画像や、各種試験結果等の表示処理を行う。 操作部9は、例えば、キーボードなどの操作キー群であって、ユーザにより操作されると、その操作に伴う操作信号を制御部10に出力する。なお、操作部9は、マウスやタッチパネルなどのポインティングデバイスやリモートコントローラなど、その他の操作装置を備えるようにしてもよい。 この操作部9は、ユーザが試料Sの硬さ試験を行う指示入力を行う際、圧子3に負荷する試験力すなわち荷重を設定する際、などに操作される。 制御部10は、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、記憶部13と、等を備えて構成され、システムバスなどを介して、XYZステージ2と、荷重負荷部5と、変位計6と、撮影部7と、表示部8と、操作部9と、等と接続されている。 CPU11は、例えば、記憶部13に記憶されている硬さ試験機用の各種処理プログラムに従って、各種制御処理を行う。 RAM12は、例えば、CPU11によって実行される処理プログラムなどを展開するためのプログラム格納領域や、入力データや処理プログラムが実行される際に生じる処理結果などを格納するデータ格納領域などを備えている。 記憶部13は、例えば、硬さ試験機100で実行可能なシステムプログラムや、そのシステムプログラムで実行可能な各種処理プログラム、これら各種処理プログラムを実行する際に使用されるデータ、CPU11によって演算処理された各種処理結果のデータなどを記憶する。なお、プログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形で記憶部13に記憶されている。 具体的には、記憶部13には、例えば、係数データ記憶部131、計測プログラム132、仕事量算出プログラム133、推定値算出プログラム134、等が格納されている。 係数データ記憶部131は、例えば、ユーザにより予め設定登録された係数(K)を記憶する。係数(K)とは、後述の式(6)を満たす所定の定数であって、ユーザにより事前に求められて予め登録される。 具体的に、例えば、石英ガラス、工具鋼、ベリリウム銅、銅、等のいくつかのサンプルに関して、ビッカース硬さ(HV)及びある試験力における後述の式(5)による塑性変形により仕事量(Wplastic:以下、Wpという。)を求め、求めた2つの値を後述の式(8)に当てはめて得られた値を係数(K)として用いることができる。 また、この係数(K)は、圧子3に負荷される試験力によって異なる値が用いられる。一度登録しておけば、改めて設定登録する作業は不要である。 計測プログラム132は、例えば、くぼみ形成時の圧子3の変位量と圧子3に負荷された試験力とを検出して押込み曲線を計測する機能を、CPU11に実現させるプログラムである。 具体的には、CPU11は、例えば、操作部9から、測定を行うよう指示する操作信号が入力されると、試料保持台2a上に載置された試料Sに所定の試験力を与えるよう、荷重負荷部5を制御する。そして、CPU11は、例えば、くぼみ形成時における圧子3の試料Sへの押込み深さと、くぼみ形成時における試験力と、を連続的に計測して、図3に示すような試験力−押込み深さ曲線(押込み曲線)を測定する。 より具体的には、先ず、試料Sが試料保持台2a上に載置され、操作信号が入力されると、CPU11は、荷重負荷部5に制御信号を出力し、荷重負荷部5の固定磁石5bがギャップにつくる磁界と、ギャップの中に設置されたフォースコイル5aに流れる電流と、の電磁誘導により発生する力を駆動力として用い、荷重レバー4を回動させることにより、荷重レバー4の圧子3側の端部は下方に傾き、圧子3は試料Sにくぼみを形成させる。 くぼみの形成時においては、設定した最大試験力に到達するまで圧子3に負荷する荷重を漸増させていく(荷重負荷工程)。なお、この荷重負荷工程では、図3の荷重負荷曲線に示すように、圧子3に負荷する試験力を増加させることで、圧子3の試料Sへの押込み深さも増加する。 次いで、CPU11は、圧子3に負荷された荷重が最大試験力に到達したと判断すると、駆動コイルへの電流の供給量を制御して荷重負荷部5を動作させ、圧子3に負荷する荷重を漸減させる(荷重除荷工程)。なお、この荷重除荷工程では、図3の荷重除荷曲線に示すように、圧子3に負荷する試験力を減少させることで、圧子3の試料Sへの押込深さも減少する。 図4(a)〜(g)は、それぞれ、銅(Copper)、ベリリウム銅(Cu-Be)、工具鋼(SK85)、石英ガラス(Fused Silica)、アクリル樹脂(Acrylic resin)、ポリプロピレン(PP)、DLC膜に対して押込み曲線を計測した一例を示している。 CPU11は、かかる計測プログラム132を実行することによって、計測手段として機能する。 仕事量算出プログラム133は、例えば、計測プログラム132の実行により得られた押込み曲線の面積から、塑性変形による仕事量(Wp)を算出する機能を、CPU11に実現させるプログラムである。 ここで、図3に示すように、圧子の試料Sへの押込み中に生じる機械的仕事量(Wtotal:以下、Wtという。)、機械的仕事量(Wt)に占める弾性変形による仕事量(Welastic:以下、Weという。)及び塑性変形による仕事量(Wp)は、押込み曲線より、以下のように求めることができる。 Wt=点B、Gを通る曲線と、点Hで囲まれた部分の面積 Wp=点B、G、Jを通る曲線で囲まれた部分の面積 We=点J、Gを通る曲線と、点Hで囲まれた部分の面積 また、各仕事(Wt、Wp、We)、即ち各部分の面積は、下記式(5)のように、押込み深さの微小区間における試験力と押込み深さの積の和で表わされる。 CPU11は、仕事量算出プログラム133を実行することにより、上記式(5)の演算を実行し、押込み曲線における点B、G、Jを通る曲線で囲まれた部分の面積、即ち塑性変形による仕事量(Wp)を算出する。 CPU11は、かかる仕事量算出プログラム133を実行することにより、仕事量算出手段として機能する。 推定値算出プログラム134は、例えば、仕事量算出プログラム133の実行により算出した仕事量(Wp)と予め決められた係数(K)とを用いて、下記式(6)より、ビッカース硬さの推定値(HVestimation:以下、HVeという。)を算出する機能を、CPU11に実現させるプログラムである。 HVe=(K/Wp)2 (6) 具体的に、CPU11は、上記式(5)の演算により算出した塑性変形による仕事量(Wp)と、係数データ記憶部131に予め設定登録された係数(K)とを用いて、上記式(6)の演算を実行し、ビッカース硬さの推定値(HVe)を算出する。 CPU11は、かかる推定値算出プログラム134を実行することによって、推定値算出として機能する。 ここで、式(6)がどのようにして導き出されたものであるかを説明する。 上記式(5)において、一定の試験力を負荷した場合、塑性変形による仕事量(Wp)は、その塑性変形の深さ、即ちくぼみの深さ(h)に比例する。 ビッカース試験におけるくぼみ面積(A)は、塑性変形の深さの2乗に比例するので、ある係数(C2)、塑性変形による仕事量(Wp)及びくぼみ面積(A)の間には、下記式(7)が成立する。 さらに、ビッカース硬さは試験力(F)をくぼみ面積(A)で除したものなので、式(7)をビッカース硬さ(HV)で表わすと、下記式(8)が成立する。 そして、式(8)のビッカース硬さ(HV)を、ビッカース硬さの推定値(HVe)に置き換えると、式(6)が成立することとなる。 HVe=(K/Wp)2 (6) 図5は、図4(a)〜(g)の押込み曲線から解析した塑性変形による仕事量(Wp)とHV値との関係を示した図である。なお、図5において、縦軸は塑性変形による仕事量(Wp)であり、横軸はビッカース硬さ(HV)である。 また、図5の直線は、WpとHVとを係数(K)を用いて式(8)で表わしたものである。 図5から、DLC膜を含む全ての試料Sに対して、塑性変形による仕事量(Wp)とビッカース硬さ(HV)とが相関が見られることがわかる。 即ち、ビッカース硬さとの相関を評価する際、塑性変形による仕事量(Wp)を用いると有効であることがわかる。 図6は、硬さ試験機100による硬さ試験方法を示すフローチャートである。 まず、ステップS1において、CPU11は、操作部9の操作によって、ユーザが試料Sの硬さ試験を行うよう指示したか否かを判断し、指示がないと判断した場合(ステップS1;No)、CPU11は、ステップS1の処理を繰り返す。 一方、指示ありと判断した場合(ステップS1;Yes)、続くステップS2において、CPU11は、計測プログラム132を実行して押込み曲線を計測する。 次いで、ステップS3において、CPU11は、仕事量算出プログラム133を実行して、押込み曲線から、塑性変形による仕事量(Wp)を算出する。 次いで、ステップS4において、CPU11は、推定値算出プログラム134を実行して、塑性変形による仕事量(Wp)及び予め決められた係数(K)を用いてビッカース硬さの推定値(HVe)を算出して、本処理を終了する。 以上のように、本実施形態の硬さ試験機100及び硬さ試験方法によれば、押込み曲線を計測した後、押込み曲線の面積から塑性変形による仕事量(Wp)を算出し、算出した仕事量(Wp)と予め決められた係数(K)とを用いて、HVe=(K/Wp)2の関係式によりビッカース硬さの推定値(HVe)を算出するようになっている。 塑性変形による仕事量(Wp)は、DLC膜などを試料とした場合でもビッカース硬さと相関のある値であるため、ゴム材料やアモルファス材料などの弾性挙動が顕著なものも対象としているナノインデンテーションにおいて、ビッカース硬さ(HV)に相当する値であるビッカース硬さの推定値(HVe)を求めることができる。 また、本実施形態の硬さ試験機100及び硬さ試験方法によれば、試料Sは、ダイヤモンドライクカーボン、シリコンゴム、又は天然ゴムによって形成されている。 このため、硬さ試験機100は、蒸着膜、半導体材料などの薄膜、表面処理層、各種プラスチック、各種ゴム、微細繊維、ガラス、セラミックスなどの脆性材料、微小電子部品、等に対して測定を行うことができる。 なお、本発明は、上記した実施の形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。 例えば、硬さ試験機の構成は、圧子軸を駆動コイルに駆動電流を供給して発生した駆動力によってその軸方向に移動するよう構成された硬さ試験機であってもよい。1 硬さ試験機本体2 XYZステージ2a 試料保持台3 圧子4 荷重レバー4a 十字ばね5 荷重負荷部5a フォースコイル5b 固定磁石6 変位計6a 可動極板6b 固定極板7 撮影部8 表示部9 操作部10制御部11 CPU12 RAM13 記憶部131 係数データ記憶部132 計測プログラム(計測手段)133 仕事量算出プログラム(仕事量算出手段)134 推定値算出プログラム(推定値算出手段)S 試料100 硬さ試験機 所定の荷重を負荷した圧子を試料の表面に押込んでくぼみを形成し、当該くぼみの形成時の前記圧子の変位量と前記圧子に負荷された試験力とを検出して押込み曲線を計測する計測工程と、 前記計測工程により得られた押込み曲線の面積から塑性変形による仕事量(Wp)を算出する仕事量算出工程と、 前記仕事量算出工程により算出した仕事量(Wp)と予め決められた係数(K)とを用いて、 HVe=(K/Wp)2によりビッカース硬さの推定値(HVe)を算出する推定値算出工程と、 を有することを特徴とする硬さ試験方法。 前記試料は、ダイヤモンドライクカーボン、シリコンゴム、又は天然ゴムによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の硬さ試験方法。 所定の荷重を負荷した圧子を試料の表面に押込んでくぼみを形成する硬さ試験機において、 前記くぼみの形成時の前記圧子の変位量と前記圧子に負荷された試験力とを検出して押込み曲線を計測する計測手段と、 前記計測手段により得られた押込み曲線の面積から塑性変形による仕事量(Wp)を算出する仕事量算出手段と、 前記仕事量算出手段により算出した仕事量(Wp)と予め決められた係数(K)とを用いて、 HVe=(K/Wp)2により、ビッカース硬さの推定値(HVe)を算出する推定値算出手段と、 を備えることを特徴とする硬さ試験機。 コンピュータを、 所定の荷重を負荷した圧子を試料の表面に押込んでくぼみを形成し、当該くぼみ形成時の前記圧子の変位量と前記圧子に負荷された試験力とを検出して押込み曲線を計測する計測手段、 前記計測手段により得られた押込み曲線の面積から塑性変形による仕事量(Wp)を算出する仕事量算出手段、 前記仕事量算出手段により算出した仕事量(Wp)と予め決められた係数(K)とを用いて、 HVe=(K/Wp)2により、ビッカース硬さの推定値(HVe)を算出する推定値算出手段、 として機能させるためのプログラム。 【課題】ナノインデーションにおいて、ビッカース硬さに相当する値であるビッカース硬さの推定値を求めることのできる硬さ試験方法、硬さ試験機、及びプログラムを提供する。【解決手段】所定の荷重を負荷した圧子を試料の表面に押込んでくぼみを形成し、当該くぼみの形成時の圧子の変位量と圧子に負荷された試験力とを検出して押込み曲線を計測する計測工程(ステップS2)と、計測工程により得られた押込み曲線の面積から塑性変形による仕事量(Wp)を算出する仕事量算出工程(ステップS3)と、仕事量算出工程により算出した仕事量(Wp)と予め決められた係数(K)とを用いて、HVe=(K/Wp)2によりビッカース硬さの推定値(HVe)を算出する推定値算出工程(ステップS4)と、を有する。【選択図】図6


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