タイトル: | 特許公報(B2)_アビバクテリウム・パラガリナラム抗体の検出方法およびキット |
出願番号: | 2009552548 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 33/569,C07K 14/195,C07K 16/12 |
牛島 稔大 今村 孝 坂元 隆一 坂口 正士 JP 5379698 特許公報(B2) 20131004 2009552548 20090206 アビバクテリウム・パラガリナラム抗体の検出方法およびキット 一般財団法人化学及血清療法研究所 000173555 田村 恭生 100068526 鮫島 睦 100100158 品川 永敏 100126778 森本 靖 100150500 山中 伸一郎 100156111 牛島 稔大 今村 孝 坂元 隆一 坂口 正士 JP 2008029589 20080208 20131225 G01N 33/569 20060101AFI20131205BHJP C07K 14/195 20060101ALN20131205BHJP C07K 16/12 20060101ALN20131205BHJP JPG01N33/569 FC07K14/195C07K16/12 G01N 33/569 C07K 14/195 C07K 16/12 CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開平10-84969(JP,A) 特開昭64-467(JP,A) 特開2002-154983(JP,A) 徳永英治, 坂口正士, 園田憲悟, 横川顕治, 岡村宏, 松尾和夫, 時吉幸男, Haemophilus paragallinarum A 型菌の感染防御抗原遺伝子のクローニング, 日本獣医学会学術集会講演要旨集, 1998,Vol.126th, Page.229 PS50-4 野呂太一, 大石英司, Haemophilus paragallinarum A 型菌に対して強いHI 活性を有する単クローン抗体が認識する抗原をコードする遺伝子領域の検討, 日本獣医学会学術集会講演要旨集, 2005,Vol.139th, Page.212 EP-193 20 JP2009052091 20090206 WO2009099204 20090813 18 20111107 三木 隆 本願発明は、アビバクテリウム・パラガリナラム抗体の検出方法および検出キットに関する。詳細には、アビバクテリウム・パラガリナラム(Avibacterium paragallinarum:以下、A.pgと称することもある。旧名はヘモフィルス・パラガリナラム(Hemophilus paragallinarum))A型菌および/またはC型菌の菌体外膜蛋白(以下、「HMT p210ポリペプチド」と称することもある)により誘導される抗体を、当該外膜蛋白の非相同領域またはその一部のアミノ酸配列からなるペプチドを固相抗原としたELISA法により検出することからなる、アビバクテリウム・パラガリナラム抗体の検出方法、および該方法に用いる検出キットに関する。なお、ペプチドはそれを構成するそのアミノ酸残基数により、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドなどの名称で呼ばれるが、本願発明では、これらを区別することなく単にペプチドと定義する。 鶏の重要な呼吸器官系疾病としてA.pgの感染によって発症する鶏伝染性コリーザがある。鶏伝染性コリーザを発症した鶏は、主な症状として鼻汁の漏出、顔面の腫脹あるいは流涙を呈する。鶏伝染性コリーザは、鶏の育成率の低下、産卵開始の遅延、産卵率の低下あるいは産卵停止をもたらすため、その経済的損失は大きい。 Pageらは、A.pgをA、BおよびC型の3つの型に分類し(非特許文献1)、Sawataらは、1型および2型の2つの型に分類した(非特許文献2)。その後、Kumeらにより、PageらのA型はSawataらの1型に、PageらのC型はSawataらの2型に相当することが報告された(非特許文献3および4)。今日では、A.pgのA型(1型)菌(以下、「A.pg-A型菌」と称することもある)とC型(2型)菌(以下、「A.pg-C型菌」と称することもある)が鶏伝染性コリーザの主要な原因菌とされている。 鶏伝染性コリーザの予防に関しては、従来、A.pg-A型菌やA.pg-C型菌の菌体をホルマリン、チメロサール等で不活化したワクチンが広く使用されてきた。しかしながら、これらのワクチンを投与した場合、接種鶏の局所に壊死病巣を形成する(非特許文献5)など副作用が問題となっており、安全性の高いワクチンの開発が強く待望されている。 このような状況下、菌体あるいは培養上清から感染防御抗原すなわち有効な成分(コンポーネント)のみを取り出してワクチンとするコンポーネントワクチンや遺伝子組換え技術により感染防御抗原をコードする遺伝子をクローニングし、該遺伝子を細菌、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞等に発現させ、大量に発現させた発現産物を精製し、これをワクチンとする組換えワクチン、あるいは感染防御抗原をコードする遺伝子をウイルスベクター等に挿入したベクターワクチンなどの開発が行われている。 例えば、徳永らは、A.pg-A型菌の培養液から、赤血球凝集抑制抗体(HI抗体)の産生を誘導し、A.pg-A型菌による鶏伝染性コリーザを防御する該A型菌に由来する分子量約130 kDaのポリペプチドを精製することに成功した(特許文献1)。さらに、この130 kDaポリペプチドをコードするDNA断片をクローニングし、大腸菌で発現させた該組換え蛋白が、アビバクテリウム・パラガリナラムA型菌による鶏伝染性コリーザの感染を防御することを見出した。さらには130 kDaポリペプチドをコードするDNA断片をプローブとして2,042個のアミノ酸からなるA型HMT p210ポリペプチド(赤血球凝集活性を有する菌体外膜蛋白)をコードするHMT p210遺伝子を同定した。また、C型菌からも同様に該DNA断片とハイブリダイズするDNA断片をクローニングし、C型菌由来のC型HMT p210遺伝子を取得した(特許文献2)。そして、A型菌とC型菌のHMT p210遺伝子のオープンリーディングフレームの塩基配列を比較し、両者の相同性は全体で約80%であること、5'側の約3.4kbpの領域(以下、領域1と呼ぶ)と3'側の約1.2kbpの領域(以下、領域3と呼ぶ)は、非常に高いホモロジーを有すること、2つの領域に挟まれた約1.5kbpの領域(以下、領域2と呼ぶ)はホモロジーが低いことを報告した(特許文献2)。 徳永らの発見したHMT p210遺伝子が型特異的なワクチンのターゲット領域として重要であることは、野呂らによっても報告されている。野呂らは、A.pg-A型HMT p210ポリペプチドをコードするHMT p210遺伝子の一部である、4,801bpから5,157bpのDNA断片にコードされるペプチドを鶏に免疫することにより、該ペプチドにA.pg-A型菌に対するHI抗体の誘導およびワクチン効果があることを報告した(特許文献3)。また、野呂らは、第143回日本獣医学会(平成19年4月3〜5日開催、日本)において、C型HMT p210ポリペプチドをコードするHMT p210遺伝子の一部である、5.5kbpのDNA断片HPC5.5にコードされるペプチドを鶏に免疫することにより、同様に、A.pg-C型菌に対するHI抗体の誘導およびワクチン効果を報告した。 A.pgに感染した鶏は、急性の経過に加えて、発病後においても抗体を誘導しにくいので、これまで鶏伝染性コリーザの血清診断は行われていない。一方で、ワクチン投与した鶏では、A.pgの菌体表面に存在する赤血球凝集素(Hemagglutinin;以下、「HA」と称することもある)に対する抗体が誘導され、ワクチン効果をin vitroで評価する場合には、抗HA抗体を利用した赤血球凝集抑制試験(以下、「HI試験」と称することもある)が行われている。HI試験には、新鮮鶏赤血球やグルタルアルデヒド固定鶏赤血球が使用されるが、(1)A.pg-A型菌のワクチン効果の評価には新鮮な鶏赤血球を必要とするため、供血用鶏の確保(病原体から隔離した状態での飼育管理)、採血および血液の処理等、煩雑で手間がかかる、(2)鶏赤血球のロットによる影響を受けることがあり、且つ抗体価の判定は測定者の主観によるため安定した成績が得にくい、等の欠点が指摘されている。 一方、Sunらは、HI試験に変わる血清診断法として、型特異的モノクローナル抗体を利用したブロッキングELISA(B-ELISA)ついて報告している(非特許文献6)。B-ELISAは、A型菌またはC型菌体を超音波破砕したものを抗原とし、それぞれの血清型に反応するモノクローナル抗体を用いて、血清中の抗体を競合的に検出するELISA法である。本方法は、HI試験に較べ、感度が高く、多検体に対応できるというメリットがある。しかしながら、血清の添加、モノクローナル抗体の添加、抗マウスIgG-HRP標識抗体の添加および発色基質の添加という4つのステップが必要であり、通常のELISA術式と較べると1ステップ多く、操作が煩雑となっている。また、本法のためには型特異的モノクローナル抗体を確保する必要がある。キットを製造する上においても、抗原固相化プレート、参照血清に加え、モノクローナル抗体を製造し添付する手間も必要である。さらに、当該B-ELISAは、各血清型において一つのモノクローナル抗体が認識する抗原エピトープのみに対する抗体を検出する系である。一個のエピトープに対する抗体を検出する系では、菌の変異により当該エピトープが失われた場合に、菌の感染あるいはワクチン接種抗体を検出できなくなる危険性がより高いものとなる。特開平10-84969WO98/12331特開2005-218414Am. J. Vet. Res., 23:85-95, 1962Jpn. J. Vet. Sci., 40:645-652, 1978Am. J. Vet. Res., 41:757-760, 1980Am. J. Vet.Res., 41:1901-1904, 1980Avian Dis., 15:109-117, 1971Int. Ass. Bio. (IABS), 35:317-320, 2007 本願発明の課題は、A.pgのA型菌およびC型菌に対する抗体をそれぞれ区別し得る抗体検出方法を提供することにある。詳細には、A.pgのA型菌およびC型菌に対する抗体をそれぞれ区別し得る、組換え抗原ペプチドを用いることを特徴とする抗体検出方法を提供する。より詳細には、A.pgのA型菌およびC型菌の外膜タンパク質間において相同性の低い領域内のアミノ酸配列を含む組換え抗原ペプチドを用いることを特徴とする抗体検出法を提供する。 本願発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ワクチン抗原として重要なHMT p210遺伝子によりコードされるp210ポリペプチドの、領域2のアミノ酸配列中の離れた場所にA.pg-A型菌とA.pg-C型菌間に相同なアミノ酸配列が含まれること(配列番号1記載のA.pg-A型菌の243〜273番目のアミノ酸配列と配列番号2記載のA.pg-C型菌の38〜68番目のアミノ酸配列の31アミノ酸中29アミノ酸が一致する;図3参照)を見出し、かつ当該アミノ酸配列がエピトープを形成することを発見した。加えて、本願発明者らは徳永らが定義した領域2のC末端領域の一部に、A.pg-A型菌とA.pg-C型菌の間で相同性の高いアミノ酸配列が含まれることを見出した。そこで、A.pg-A型菌とA.pg-C型菌それぞれのHMTp210ポリペプチドにおいて、上記2つの相同なアミノ酸配列を含まないペプチドを調製し、得られたペプチドを用いてマイクロプレートに固相化したELISA法による抗体測定を行った。その結果、A.pg-A型菌由来のワクチンとA.pg-C型菌由来のワクチンにより誘導される抗体が各々特異的に識別できることが確認され、本願発明を完成するに至った。したがって、本願発明は、以下の通りである。(1)下記のペプチドAまたはBの少なくとも一つの抗原と検体を反応させる抗体測定法からなることを特徴とする、アビバクテリウム・パラガリナラム抗体の検出方法。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部であって、6アミノ酸以上のペプチド鎖からなり、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列の243〜273番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。ペプチドB:配列番号2で示されるアミノ酸配列の一部であって、6アミノ酸以上のペプチド鎖からなり、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列の38〜68番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。(2)ペプチドAまたはBが、10アミノ酸以上のペプチド鎖であることを特徴とする上記1記載の検出方法。(3)ペプチドAまたはBが、20アミノ酸以上のペプチド鎖であることを特徴とする上記1記載の検出方法。(4)ペプチドAまたはBが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、上記1記載の検出方法。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部であって、配列番号1で示されるアミノ酸配列の8〜236番目のアミノ酸配列を含有し、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列の243〜273番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。ペプチドB:配列番号2で示されるアミノ酸配列の一部であって、配列番号2で示されるアミノ酸配列の69〜452番目のアミノ酸配列を含有し、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列の38〜68番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。(5)ペプチドAまたはBが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、上記1記載の検出方法。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の8〜236番目のアミノ酸配列からなるペプチド。ペプチドB:配列番号2で示されるアミノ酸配列の69〜452番目のアミノ酸配列からなるペプチド。(6)ペプチドAが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、上記4記載の検出方法。ペプチドA: 配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部であって、配列番号1で示されるアミノ酸配列の274〜445番目のアミノ酸配列を含有し、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列の243〜273番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。(7)ペプチドAが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、上記5記載の検出方法。ペプチドA: 配列番号1で示されるアミノ酸配列の274〜445番目のアミノ酸配列からなるペプチド。(8)ペプチドAまたはBが、1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失、付加、あるいは置換されたアミノ酸配列を有するペプチドであることを特徴とする、上記1ないし7の何れか一つに記載の検出方法。(9)抗体測定法が、ELISA法、ウェスタンブロット法およびドットブロット法からなる群より選ばれることを特徴とする、上記1ないし8記載の検出方法。(10)検体が、アビバクテリウム・パラガリナラム感染鶏血清またはアビバクテリウム・パラガリナラムワクチン投与鶏血清であることを特徴とする、上記1ないし9の何れか一つに記載の検出方法。(11)下記のペプチドAまたはBの少なくとも一つを抗原として用いることを特徴とする、アビバクテリウム・パラガリナラム抗体測定キット。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部であって、6アミノ酸以上のペプチド鎖からなり、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列の243〜273番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。ペプチドB:配列番号2で示されるアミノ酸配列の一部であって、6アミノ酸以上のペプチド鎖からなり、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列の38〜68番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。(12)ペプチドAまたはBが、10アミノ酸以上のペプチド鎖であることを特徴とする上記11記載の抗体測定キット。(13)ペプチドAまたはBが、20アミノ酸以上のペプチド鎖であることを特徴とする上記11記載の抗体測定キット。(14)ペプチドAまたはBが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、上記11記載の抗体測定キット。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部であって、配列番号1で示されるアミノ酸配列の8〜236番目のアミノ酸配列を含有し、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列の243〜273番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。ペプチドB:配列番号2で示されるアミノ酸配列の一部であって、配列番号2で示されるアミノ酸配列の69〜452番目のアミノ酸配列を含有し、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列の38〜68番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。(15)ペプチドAまたはBが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、上記11記載の抗体測定キット。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の8〜236番目のアミノ酸配列からなるペプチド。ペプチドB:配列番号2で示されるアミノ酸配列の69〜452番目のアミノ酸配列からなるペプチド。(16)ペプチドAが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、上記14記載の抗体測定キット。ペプチドA: 配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部であって、配列番号1で示されるアミノ酸配列の274〜445番目のアミノ酸配列を含有し、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列の243〜273番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。(17)ペプチドAが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、上記15記載の抗体測定キット。ペプチドA: 配列番号1で示されるアミノ酸配列の274〜445番目のアミノ酸配列からなるペプチド。(18)ペプチドAまたはBが、1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失、付加、あるいは置換されたアミノ酸配列を有するペプチドであることを特徴とする、上記11ないし17の何れか一に記載の抗体測定キット。(19)抗体測定法が、ELISA法、ウェスタンブロット法およびドットブロット法からなる群より選ばれることを特徴とする、上記11ないし18の何れか一に記載の抗体測定キット。(20)検体が、アビバクテリウム・パラガリナラム感染鶏血清またはアビバクテリウム・パラガリナラムワクチン投与鶏血清であることを特徴とする、上記11ないし19の何れか一に記載の抗体測定キット。 本願発明に従えば、アビバクテリウム・パラガリナラム抗体の検出方法およびキットが提供される。本願発明に使用されるA.pg-A型菌およびA.pg-C型菌由来のペプチドは、互いに相同なアミノ酸配列を含まないので、例えば、A.pg-A型菌由来のワクチンおよびA.pg-C型菌由来のワクチンにより誘導された抗体とそれぞれ特異的に結合する。したがって、本願発明の検出方法およびキットは、各ワクチンを単独で鶏に投与した場合だけでなく、両者を混合したワクチンを投与した場合においても、鶏血清中に存在する各々の菌に対する抗体価をそれぞれ識別して測定できる。 また、本願発明によれば、精製組換え抗原を用いる結果、A.pg菌体の破砕物を用いる従来技術に比べてより高濃度の抗原を固相化することが可能であり、従って抗体の検出感度がより高い抗体測定系を構築することが可能であると考えられる。また、本願発明の抗体検出方法は、抗原ペプチドにA.pgの血清型を識別する能力があるため、型特異的モノクローナル抗体を用いるB-ELISAと比べるとより簡便かつ、菌の抗原変異という観点からはより確実にA.pgに対する抗体を検出することが可能である。 さらに、本願発明の検出方法により、ワクチン投与後の鶏血清だけでなく、A.pg感染鶏血清中の抗体をも識別することができる。図1は、HMTp210ポリペプチドおよびその断片並びに各断片の位置関係を示す図面である。黒塗り部分は領域2内の相同配列を示し、網掛け部分は領域2のC末端相同領域を示す。図中に記載のアミノ酸配列番号は、特許文献2の配列表配列番号1(A型菌)および配列表配列番号5(C型菌)に開示されているアミノ酸配列番号に相当する。図2は、大腸菌より精製された各々のポリペプチドのSDS-PAGEの結果を示す図面である:M:マーカー、レーン1:P-AΔ6b-1b、レーン2:P-CΔ6b-1b図3は、HMT p210遺伝子によりコードされるアミノ酸配列の非相同領域における相同なアミノ酸配列とその位置を示す図面である。図中に記載のアミノ酸配列番号は、特許文献2の配列表配列番号1(A型菌)および配列表配列番号5(C型菌)に開示されているアミノ酸配列番号に相当する。図4は、A型菌攻撃前血清のポリペプチドP-AΔ6b-2#を抗原とした ELISA値と、A型菌攻撃後の発症防御との相関をみた図面である。図中●は発症しなかった鶏を示し、○は発症した鶏を示す。図5は、C型菌攻撃前血清のポリペプチドP-CΔ6b-1bを抗原とした ELISA値と、C型菌攻撃後の発症防御との相関をみた図面である。図中●は発症しなかった鶏を示し、○は発症した鶏を示す。 本願発明は、A.pg由来のHMT p210遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の非相同領域中にわずかに存在するA.pg-A型菌とA.pg-C型菌間の相同なアミノ酸配列を除去したペプチドを抗原とした抗体測定法によるアビバクテリウム・パラガリナラム抗体の検出方法およびキットによって特徴付けられる。 本願発明のアビバクテリウム・パラガリナラム抗体の検出方法には、抗原としてA.pg-A型菌および/またはA.pg-C型菌由来のHMT p210遺伝子によりコードされるアミノ酸配列の非相同領域またはその一部が使用される。ここで、非相同領域とは、5'側の約3.4kbpのDNA領域によりコードされるアミノ酸配列(領域1)と3'側の約1.2kbpのDNA領域によりコードされるアミノ酸配列(領域3)の2つの領域に挟まれた約1.5kbpのDNA領域(領域2)によりコードされるアミノ酸配列からC末端側の相同配列を除いた約1.3kbpの領域(配列番号1(A型菌)および配列番号2(C型菌))として定義される(図1参照)。以下、この非相同領域のアミノ酸配列をコードする遺伝子を「A.pg-1.3遺伝子」と称し、A型菌およびC型菌の両者を区別していう場合は、それぞれ「A.pg-A1.3遺伝子」、「A.pg-C1.3遺伝子」と称することもある。 A.pg感染鶏より分離したA型菌3株(221株、O53株およびW株)のHMT p210遺伝子の非相同領域に相当する塩基配列は、O53株およびW株間で完全に一致し、両株と221株間ではわずか1塩基が変異している。一方、C型菌3株(53-47株、モデスト株およびNK-1株)間の同領域の塩基配列は、モデスト株およびNK-1株は、53-47株に対して3塩基(1アミノ酸)が欠失しているだけである。したがって、同一血清型間の非相同領域は高度に保存されていると言え、本願発明においては、同一血清型内の何れの株を使用してもよい。 A.pg-1.3遺伝子およびこれを含むDNA断片は、以下の方法に従って取得することができる。A.pgの増殖には、ポリペプトン、ブドウ糖、カザミノ酸、グルタミン酸ナトリウム、酵母エキス、塩化ナトリウム、鶏肉水、βNAD、鶏血清等を適当に含有する培地が使用される。本願発明では、小・中容量の菌体増殖のために、鶏血清加鶏肉汁培地(培地1000mL中、ポリペプトンS 5g、カザミノ酸1g、塩化ナトリウム5g、L-グルタミン酸ナトリウム5g、グルコース 1g、酵母エキス10g、鶏肉水175mL、鶏血清25mL、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(β-NAD)0.025%を含む)を使用した。培養条件は、通常、温度37℃、期間16〜24時間の範囲で設定されるが、使用目的、培養形態、植え付けた菌量、培地スケール等に応じて適宜調節すればよい。 培養液中の菌体は、遠心分離(8,000rpm,20分間)により沈渣に回収される。HMT p210遺伝子は、菌体から抽出した全RNA、mRNAまたはゲノムDNAを出発材料として、Sambrookらが述べている一般的な遺伝子組換え技術(Molecular Cloning, A Laboratory Manual Second Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., 1989)に従って調製することができる。実際には、市販のキットが使用される。例えば、RNAの抽出には、TRIzol試薬(インビトロジェン社)、ISOGEN(ニッポンジーン社)、StrataPrep Total RNA Purification Kit(東洋紡)などの試薬、染色体DNAの抽出には、セパジーンキット(三光純薬)、ISOPLANT(和光純薬)、mRNAの精製には、mRNA Purification Kit(アマシャムバイオサイエンス社)、Poly(A) Quick mRNA Isolation Kit(東洋紡)、mRNA Separator Kit(クロンテック社)などのキット、cDNAへの変換には、SuperScript plasmid system for cDNA synthesis and plasmid cloning(インビトロジェン社)、cDNA Synthesis Kit(宝酒造)、SMART PCR cDNA Synthesis & Library Construction Kits(クロンテック社)、Directionary cDNA Library Construction systems(ノバジェン社)、GeneAmp PCR Gold(アプライドバイオシステムズ社)などが使用される。 より具体的には、遠心分離により回収された菌体からセパジーンキット(三光純薬)等を用いて染色体DNAを抽出し、これを適当な制限酵素(好ましくはEcoRIが使用される)で切断し、市販のクローニングベクター(例えば、λgt11;ニューイングランドバイオラブス(NEB)社)に挿入し、DNAライブラリーを調製する。得られたDNA断片を鋳型(テンプレート)として、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いて、添付のプロトコールに従い、PCR法により種々のサイズのDNA断片が増幅される。PCRに用いるプライマーは、徳永らが開示したA.pg-A型菌およびA.pg-C型菌由来のHMT p210遺伝子の塩基配列(特許文献1)に基づいて設計される。PCR用プライマーは、DNA合成受託機関(例えば、シグマジェノシスジャパン社)などに依頼すれば容易に入手可能である。このとき上流側Primerの5’末端および下流側Primerの5’末端に適当な制限酵素切断部位の塩基配列が付加される。PCR増幅産物は、遺伝子クローニングベクター、pCR-XL-TOPO(インビトロジェン株式会社)にクローニングし、種々のDNA断片が挿入されたプラスミドpCRDNTが取得される。得られたDNA断片の塩基配列は、一旦pBluescript II SK+(ストラタジーン社)またはpCR2.1-TOPO(インビトロジェン社)にクローニングした後、DNAシークエンサー(ABI Prism 377アプライドバイオシステムズ社)により決定される。 後述するように、感度の低下や非特異反応の増大をきたさない限り、一部にアミノ酸変異を加えたペプチドも本願発明の抗体測定法における抗原として使用することができる。ペプチド中の特定のアミノ酸に変異を入れる場合は、そのペプチドをコードするDNA断片の塩基配列に変異を入れるサイトダイレクティドミュータジェネシス法を使用するのが一般的である。実際には、本技術を応用したTakara社のSite-Directed Mutagenesis System (Mutan-Super Express Km、Mutan-Express Km、Mutan-Kなど)、 Stratagene社のQuickChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit、QuickChange XL Site-Directed Mutagenesis Kit、Invitrogen社のGeneTailor Site-Directed Mutagenesis Systemなどの市販のキットを用い添付のプロトコールに従って行われる。 A.pg-A型菌とA.pg-C型菌の間で相同なアミノ酸配列を含まない種々のペプチドのアミノ酸配列をコードするDNA断片を取得するときは、上記相同配列を含まないように非相同領域(それぞれ、配列番号3で示される塩基配列(A型菌)および配列番号4で示される塩基配列(C型菌))の中からプライマーを設計し、上記のA.pg-1.3遺伝子およびこれを含むDNA断片を鋳型として一般的なPCR法により行えばよい。また、短いアミノ酸配列であるならば、人工合成によりそのDNA断片を作製してもよい。本願発明において調製したDNA断片およびプライマーを表1に示した。 こうして得られたDNA断片を適当な発現ベクターに組み込み、これを宿主に導入することによって、各DNA断片の発現が行なわれる。発現ベクターとしては例えば、pQE30(キアゲン社製)やpET22b(ノバジェン社またはタカラバイオ株式会社製)などが使用されるが、適宜選択すればよい。外来蛋白やペプチドの発現には細菌、酵母、動物細胞、植物細胞および昆虫細胞などが常用されるが、使用目的にあわせて選択すればよい。宿主細胞を形質転換するときには公知の方法を利用すればよい。例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、リポフェクチン系のリポソームを用いる方法、プロトプラストポリエチレングリコール融合法、エレクトロポレーション法などが利用でき、使用する宿主細胞により適当な方法を選択すればよい。本願発明の各DNA断片を発現させる場合は、大量に発現させることができる大腸菌が使用される。大腸菌発現用に、trpプロモーター、T7プロモーター、cspAプロモーターなどを有する種々の発現ベクターが開発・市販されているのでこれらの中から適宜選択して使用すればよい。発現ベクターに合わせて適当な大腸菌、例えば、BL21, HMS174, DH5α, HB101, JM109などが宿主として選択される。大腸菌の形質転換は、市販のコンピテントセルを用い、添付の方法に従って行うことができる。こうして目的のポリペプチドを産生する組換え大腸菌が得られる。大腸菌の培養に使用される培地(例えば、LB、SOC、SOBなど)、形質転換体の選択に用いられる試薬(例えば、アンピシリンなど)および発現誘導に使用される試薬(例えば、インドール酢酸(IAA)、イソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド(IPTG))は、一般に市販されているものを使用すればよい。また、培地のpHは、大腸菌の増殖に適した範囲(pH6〜8)で用いられる。 目的のペプチド(目的物)を発現している組換え大腸菌のスクリーニングは、以下のように行われる。発現誘導剤(本発明に使用した発現システムではIPTGを使用)の存在下に、培養・増殖した菌体を遠心分離(10,000rpm、5分間)により回収し、これに一定の蒸留水を加え懸濁した後、超音波処理、またはフレンチプレス、マントンゴリン等のホモジナイザーにより菌体を破砕し、遠心分離(15000rpm、15分間)により沈渣または上清に分離・回収する。蒸留水に、適宜界面活性剤(例えば、Triton X100)、キレート剤(例えば、EDTA)、リゾチーム等を添加してもよい。上清および沈渣に回収した発現産物の一定量をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、クマシーブリリアントブルーで染色した後、分子サイズおよび染色像から目的物の発現を確認する。なお、目的物の確認(または検出)には、上記の分子サイズに基づく方法以外に、ELISA法、ウェスタンブロット法、ドットブロット法などの抗原抗体反応に基づく方法が取られることもある。いずれも大腸菌で発現させた外来蛋白やポリペプチドを検出する際の一般的な方法であり、目的に応じて適宜選択すればよい。 組換え大腸菌から目的物を精製する際には、一般に、蛋白質化学において使用される精製方法、例えば、遠心分離、塩析法、限外ろ過法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換クロマト法、ゲルろ過クロマト法、アフィニティークロマト法、疎水クロマト法、ハイドロキシアパタイトクロマト法などの方法を組み合わせた方法が使用される。得られた蛋白質やポリペプチドの量は、BCA Protein Assay Reagent Kit(Pierce Biotechnology, Inc)、Protein Assay Kit (BIO-RAD, Inc)などの蛋白測定試薬を用いて測定される。 目的物の精製を容易にするために他のポリペプチドやペプチドと融合させた形で発現させてもよい。このような融合蛋白を発現させるベクターとして、オリゴヒスチジンを付加することができるHis-tag発現システム(ノバジェン社)、FLAGタグを付加した融合蛋白を発現させることができるシステム(シグマ社)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白を作製することができるGST融合タンパク質精製システム(アマシャムファルマシア社)、MagneHis Protein Purification System(プロメガ社)などが挙げられる。例えば、本発明の実施例で行なわれたようにオリゴヒスチジンとの融合蛋白として発現させた後、ニッケルアフィニティーカラム(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用いて目的のポリペプチドが特異的に精製される。 こうして得られたA.pg-A型菌とC型菌間の相同なアミノ酸配列を含まない領域の種々のペプチドは、鶏伝染性コリーザワクチン抗体の検出やA.pg感染鶏の血清学的診断を行うための抗体測定に使用される。具体的には、ELISA法、ウェスタンブロット法、ドットブロット法等の抗体測定法が適用される。多数の検体を取り扱う場合は、ペプチドを固相化したマイクロプレート法によるELISA法が好ましい。 マイクロプレートに固相化するペプチドとしては、A.pg-1.3遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の非相同領域からなるペプチドおよびその一部が使用できる。一般的に6〜10個程度のアミノ酸で抗体に認識されるエピトープを形成できるとされている(抗体に認識されるエピトープとしては3〜6アミノ酸で十分であることがオンライン上に公開されている(http://www.genosys.jp/products/spots/spots_faq.html)ため、非相同領域の一部であって、連続した6アミノ酸以上のアミノ酸配列からなるペプチドが本願発明に使用できる。また、特異性を高めるために、好ましくは非相同領域中の連続した10アミノ酸以上からなるペプチド、更に好ましくは、連続した20アミノ酸以上からなるペプチドでエピトープを形成することが望ましい。 最も好ましくは、AΔ6b-2♯によりコードされるポリペプチド(P-AΔ6b-2♯)、CΔ6b-1bによりコードされるポリペプチド(P-CΔ6b-1b)およびAΔ7b-1bによりコードされるポリペプチド(P-AΔ7b-1b)、並びにこれらを含むA.pg-1.3遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の非相同領域からなるペプチドの一部が使用される。また、抗体検出上の支障となるような感度の低下や非特異反応の増大をきたさない限り、これらのペプチドの一部にアミノ酸変異を加えた変異ペプチドも使用することができる。これらのペプチドは、目的にあわせて2つ以上のペプチドを種々組み合わせて使用することができる。例えば、鶏伝染性コリーザの原因菌を特定する場合は、それぞれ単独のペプチドを用いるか、A.pg-A型菌由来のペプチド同士あるいはA.pg-C型菌由来のペプチド同士を混合した混合物をそれぞれ独立して使用することが好ましい。単に鶏伝染性コリーザ感染の疫学や鶏伝染性コリーザワクチンの効果を調査することを目的とする場合は、A.pg-A型菌およびA.pg-C型菌由来の混合物を更に混合して用いてもよい。 ワクチン投与後の免疫血清は、上記のペプチドとアジュバントとの混合物を適当な動物の皮下、皮内、腹腔内等に通常1〜3回、2〜4週間隔で投与し、その後採血した血液を遠心分離(14,000rpm、5分間)することにより取得することができる。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウム(例えば、ImjectAlum (ピアース社)、などが使用される。アビバクテリウム・パラガリナラム感染動物の血清も、同様に血液を遠心分離することにより得られる。 より具体的には様々な方法によるELISAが行われるが、何れの方法であってもよい。例えば、最初に検体(免疫血清またはA.pg感染血清)がペプチドの固相化されたマイクロプレートに添加され、洗浄後、二次抗体として標識した抗鶏抗体が添加される。また、抗ペプチド特異抗体と組み合わせることにより、検体と標識抗ペプチド(固相抗原)抗体を同時あるいは別々にペプチドの固相化されたマイクロプレートに添加あるいは、抗ペプチド抗体が標識されていない場合は、抗ペプチド抗体に対する標識二次抗体を添加する、競合法によるELISAも実施可能である。 ペプチドのマイクロプレートへの固相化は、通常抗原量1〜10μg/ml、室温(25℃前後)で30分〜2時間または低温(4℃前後)で12〜24時間放置することにより行われる。非特異反応を抑えるためのブロック試薬として、ブロックエース(雪印社)、ELISA用ブロッキング試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス社)、牛血清アルブミン溶液、スキムミルク溶液などが挙げられるが、適宜選択し使用すればよい。各反応後の洗浄にはPBS、TBS若しくはこれらにポリソルベイト(ツイーン20)や保存剤(アジ化ナトリウム)等の含まれるもの等が使用され、反応停止には、2〜3モルの硫酸が使用される。二次抗体としては、HRP、蛍光標識、RI、ビオチン化により標識された抗鶏IgGモノクローナル抗体、例えば、抗鶏IgG-HRP(ベッチル社)等が市販されているのでこれらを使用すればよい。例えば、HRPの基質としてはOPD(オルトフェニレンジアミン)およびTMBZ(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)があり、それぞれ492nm、450nmで吸光度を測定する。 最初にマイクロプレートにペプチドに対する抗体を固定し、この抗体に前記ペプチドを結合させた二抗体サンドイッチによるELISA法を用いてもよい。この場合、ペプチドに対する抗体はポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれも使用できる。ポリクローナル抗体は、上記の免疫血清と同様の方法により取得される。免疫に用いる動物としてはニワトリ、ラット、モルモット、ハムスター、イヌ、サルなどが挙げられる。また、モノクローナル抗体は、A.pg菌体あるいはポリペプチドで免疫した動物から脾細胞もしくはリンパ球等の抗体産生細胞を採取し、Milsteinらの方法(Method Enzymol., 73, 3-46, 1981)に従って、ミエローマ細胞株等と融合し、本願発明に使用されるペプチドに対する抗体を産生するハイブリドーマを作製することにより得られる。また、ファージディスプレイ技術を利用した抗体作製技術(Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual Edited by Brian K. Kay et al.、Antibody Engineering: A PRACTICAL APPROACH Edited by J.McCAFFERTY et al.、ANTIBODY ENGINEERING second edition edited by Carl A. K. BORREBAECK)により本願発明に使用されるペプチドと結合する抗体を作製することもできる。 こうして確立されたELISA法による抗A.pg抗体の測定方法は、ワクチン抗体やA.pg感染により誘導された抗体の検出に利用される。以下、実施例に従い、本願発明を更に詳細に説明するが、下記の実施例に何ら限定されるものではない。A.pg-1.3遺伝子およびその領域内DNA断片の調製 A.pg-A型菌221株およびA.pg-C型菌53-47株のゲノムDNAライブラリーを徳永らの方法(特開平10-84969)により調製した。簡単には、遠心分離(8,000rpm、20分間)により回収された菌体からからセパジーンキット(三光純薬)を用いて染色体DNAを抽出し、制限酵素Sau3AIで消化し、DNAライブラリーを調製した。このDNAライブラリーのDNA断片を鋳型(テンプレート)として、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いて、添付のプロトコールに従い、PCR法によりA.pg-1.3遺伝子の一部からなる断片を増幅した。PCR反応は、LA PCRキットver2(宝酒造製)を用い、96℃で1分反応の後、96℃で40秒間、56℃で60秒間、72℃で120秒間の反応を30サイクル、その後72℃で10分間の反応を行った。図1に、各DNA断片の位置関係を示す。また、各DNA断片の増幅とそれに用いたPCRプライマーを表1に示す。各プライマーには、制限酵素認識配列を付加した。各DNA断片の発現 実施例1で得た各DNA断片を適当な制限酵素で消化し、0.8%アガロース電気泳動で分離後、増幅フラグメントをQuantum Prep Freeze N Squeeze DNA Gel Extraction Spin Coキットを用い溶出、回収した。得られた断片を、予め、同じ制限酵素で消化し、5'末端を脱リン酸化したプラスミドpQE30(キアゲン社製:6個のHis-tag配列が開始コドン直下に存在)またはpET22bに連結し、これを用いて大腸菌JM109株を形質転換した。更に増幅フラグメントを含む大腸菌を、アンピシリン含有サークルグロー培地(フナコシ株式会社)で1夜培養し、翌日IPTGを終濃度1mMとなるように加え、更に2.5時間培養した。遠心分離(10,000rpm、5分間)後、上清を捨て、沈さを培養液の1/10量のLysis Buffer A(8M尿素, 100mM NaH2PO4, 10mM Tris, 10mM Imidazole, pH8.0)に懸濁し、菌体を溶解した。遠心分離(15,000rpm、15分)後、セルライセイト上清を回収した。回収したセルライセイト上清をNi-NTAアガロースゲル1mLと混合し、ゲルに吸着させた後、ボトム栓付きカラムに充填した。カラムを洗浄後、溶出液(8M尿素, 100mM NaH2PO4, 10mM Tris, 100mM Imidazole, pH8.0)で溶出画分を回収し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)を行った。A型、C型、それぞれの断片中、ELISA抗原として用いたAΔ6b-1bおよびCΔ6b-1bの発現産物の泳動パターンを図2に示す。抗ポリペプチド鶏血清の作製 実施例2で得たポリペプチドP-AΔ5-1を10μg/doseとなるようにPBSで希釈し、更に水酸化アルミニウムゲルを終濃度20%になるように加えたものを、5週齢SPF鶏の頸部皮下に3週間隔で2回免疫した。他のポリペプチドP-AΔ3-0, P-AΔ5-0, P-CΔ5-1およびP-CΔ6-0については、10μg/doseとなるようにPBSで希釈した後、オイルアジュバントと乳化したものを調製(1ドーズ(0.5mL)あたり、抗原0.01g、ホルマリン0.001mL以下、ポリソルベート80 0.01mL、セスキオレイン酸ソルビタン0.04mL、軽質流動パラフィン0.36mL、リン酸緩衝液残量)し、5週齢SPF鶏の頸部皮下に1回投与した。9〜11週齢時に採血し、各ポリペプチドに対する免疫血清を得た。ELISAによる各ポリペプチド免疫血清との反応性の確認 実施例2で得たポリペプチドP-AΔ6b-1b, P-AΔ6b-2♯, P-AΔ7b-1bおよびP-CΔ6b-1bを1.0〜2.5μg/mLとなるように50mM重炭酸バッファーで希釈し、96 wellプレートに100μLずつ入れ固相化した。室温で1時間吸着後、反応液を捨て、200μLのPBS-T(8.1mMリン酸水素2ナトリウム、1.5mMリン酸2水素1カリウム、137mM塩化ナトリウム、2.7mM塩化カリウム、0.05%ツイーン20)で洗浄後、200μLの5%スキムミルク加 PBS-Tを入れブロッキングした。ブロッキング液を捨て、血清を1%スキムミルク加 PBS-Tで50〜100倍希釈し各wellに100μLずつ添加し、室温で1時間反応させた。反応液を除去後、PBS-Tで3回洗浄し、抗鶏IgG-HRP標識抗体を1%スキムミルク加 PBS-Tで10,000〜20,000倍希釈し100μLずつ添加した。暗所で室温、1時間反応させた。反応液を除去後、PBS-Tで3回洗浄し、発色基質液(100mMクエン酸、200mMリン酸水素2ナトリウム、0.004%オルトフェニレンジアミン、過酸化水素)を100μLずつ添加し、室温で30分間反応させた。3M硫酸を100μLずつ添加し、発色を停止させた。96wellプレートリーダー(日本モレキューラーデバイス社製)で492nmの波長を測定した。その結果を表2に示す。※1:実施例5の方法により測定(ただし、血清希釈100倍、抗鶏IgG-HRP標識抗体希釈50,000倍で実施)※2:Not done A.pg-A型菌の領域2の配列番号1記載の243〜271番目のアミノ酸配列とA.pg-C型菌の領域2の配列番号2記載の38〜68番目のアミノ酸配列(31アミノ酸中30アミノ酸が一致;図3参照)の相同なアミノ酸配列を含むポリペプチド(P-AΔ6b-1b)は、領域2を含むポリペプチド(P-AΔ3-0, P-AΔ5-1, P-AΔ5-0, P-CΔ5-1, およびP-CΔ6-0)で免疫した血清の何れにも反応した。これに対して、上記の相同なアミノ酸配列を含まないポリペプチド(P-AΔ6b-2♯, P-AΔ7b-1bおよびP-CΔ6b-1b)は、それぞれ菌特異的に反応した。ポリペプチドP-AΔ6b-2♯およびP-AΔ7b-1bは、A.pg-A型菌感染血清とも結合した。ELISAによるワクチン血清と防御との相関 不活化菌体を用いた市販のオイルアジュバントワクチン(オイルバックス7、財団法人化学及血清療法研究所)およびオイルバックス7のA.pg抗原(A型菌およびC型菌の不活化菌体)の替わりに実施例2で得たポリペプチドAΔ5-1およびCΔ5-1を加えた同組成ワクチンを調製し、5週齢SPF鶏の頸部皮下に1回注射した。市販ワクチンは1ドースのほかに1/100および1/1,000に希釈したものも投与し、ポリペプチドはそれぞれが 3, 0.3および0.03μg/羽となるように希釈したA型C型混合ポリペプチド含有ワクチンを投与した。9週齢時に採血後、A.pg-A型菌211株(1.5 x 109 CFU/mL)またはA.pg-C型菌53-47株(5.0 x 109CFU/mL)の菌液0.2mLを鼻腔内投与し、1週間、顔面腫脹、鼻汁漏出、流涙などの臨床症状を観察した。 得られた血清は以下の方法でELISA測定に供した。実施例2で得たポリペプチドP-AΔ6b-2♯およびP-CΔ6b-1bを1.0μg/mLとなるように50mM重炭酸バッファーで希釈し、96wellプレートに50μLずつ入れ固相化した。4℃で一夜吸着後、反応液を捨て、300μLのPBS-T(8.1mMリン酸水素2ナトリウム、1.5mMリン酸2水素1カリウム、137mM塩化ナトリウム、2.7mM塩化カリウム、0.1%ツイーン20)で洗浄後、300μLの5%スキムミルク加PBS-Tを入れブロッキングした。ブロッキング液を捨て、血清を5%スキムミルク加PBS-Tで1,000倍希釈し各wellに50μLずつ添加し、室温で1時間反応させた。反応液を除去後、PBS-Tで3回洗浄し、抗鶏IgG-HRP標識抗体を5%スキムミルク加PBS-Tで25,000倍希釈し50μLずつ添加した。暗所で室温、30分間反応させた。反応液を除去後、PBS-Tで3回洗浄し、発色基質液(TMB+substrate-chromogen; DAKO社)を100μLずつ添加し、室温で15分間反応させた。3M硫酸を100μLずつ添加し、発色を停止させた。96wellプレートリーダー(日本モレキューラーデバイス社製)で450nmの波長を測定した。 図4および図5に示すように、A型菌およびC型菌攻撃のいずれの鶏においても、攻撃前の血清ELISA値が0.1を下回った鶏はすべて発症し感染が確認された。一方、攻撃前の血清ELISA値が0.1を超えた鶏には、発症したものは認められなかった。このことから、本ELISA系を使用することにより、ワクチン抗体の発症防御レベルの評価が可能であると考えられた。 本願発明の検出方法は、本願発明に使用されたアミノ酸配列を含むポリペプチドで構成されるワクチンで免疫した鶏の免疫状態の検査に利用される。また、本願発明の検出方法は、A.pgの感染により鶏伝染性コリーザを発症した鶏の血清を測定することにより、発症メカニズムや疫学の研究に利用される。 下記のペプチドAまたはBの少なくとも一つの抗原と検体を反応させる抗体測定法からなることを特徴とする、アビバクテリウム・パラガリナラム抗体の検出方法。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部であって、6アミノ酸以上のペプチド鎖からなり、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列の243〜273番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。ペプチドB:配列番号2で示されるアミノ酸配列の一部であって、6アミノ酸以上のペプチド鎖からなり、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列の38〜68番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。 ペプチドAまたはBが、10アミノ酸以上のペプチド鎖であることを特徴とする請求項1記載の検出方法。 ペプチドAまたはBが、20アミノ酸以上のペプチド鎖であることを特徴とする請求項1記載の検出方法。 ペプチドAまたはBが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、請求項1記載の検出方法。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部であって、配列番号1で示されるアミノ酸配列の8〜236番目のアミノ酸配列を含有し、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列の243〜273番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。ペプチドB:配列番号2で示されるアミノ酸配列の一部であって、配列番号2で示されるアミノ酸配列の69〜452番目のアミノ酸配列を含有し、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列の38〜68番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。 ペプチドAまたはBが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、請求項1記載の検出方法。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の8〜236番目のアミノ酸配列からなるペプチド。ペプチドB:配列番号2で示されるアミノ酸配列の69〜452番目のアミノ酸配列からなるペプチド。 ペプチドAが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、請求項4記載の検出方法。ペプチドA: 配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部であって、配列番号1で示されるアミノ酸配列の274〜445番目のアミノ酸配列を含有し、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列の243〜273番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。 ペプチドAが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、請求項5記載の検出方法。ペプチドA: 配列番号1で示されるアミノ酸配列の274〜445番目のアミノ酸配列からなるペプチド。 ペプチドAまたはBが、1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失、付加、あるいは置換されたアミノ酸配列を有するペプチドであることを特徴とする、請求項1ないし7の何れか一項記載の検出方法。 抗体測定法が、ELISA法、ウェスタンブロット法およびドットブロット法からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1ないし8記載の検出方法。 検体が、アビバクテリウム・パラガリナラム感染鶏血清またはアビバクテリウム・パラガリナラムワクチン投与鶏血清であることを特徴とする、請求項1ないし9の何れか一項に記載の検出方法。 下記のペプチドAまたはBの少なくとも一つを抗原として用いることを特徴とする、アビバクテリウム・パラガリナラム抗体測定キット。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部であって、6アミノ酸以上のペプチド鎖からなり、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列の243〜273番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。ペプチドB:配列番号2で示されるアミノ酸配列の一部であって、6アミノ酸以上のペプチド鎖からなり、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列の38〜68番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。 ペプチドAまたはBが、10アミノ酸以上のペプチド鎖であることを特徴とする請求項11記載の抗体測定キット。 ペプチドAまたはBが、20アミノ酸以上のペプチド鎖であることを特徴とする請求項11記載の抗体測定キット。 ペプチドAまたはBが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、請求項11記載の抗体測定キット。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部であって、配列番号1で示されるアミノ酸配列の8〜236番目のアミノ酸配列を含有し、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列の243〜273番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。ペプチドB:配列番号2で示されるアミノ酸配列の一部であって、配列番号2で示されるアミノ酸配列の69〜452番目のアミノ酸配列を含有し、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列の38〜68番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。 ペプチドAまたはBが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、請求項11記載の抗体測定キット。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の8〜236番目のアミノ酸配列からなるペプチド。ペプチドB:配列番号2で示されるアミノ酸配列の69〜452番目のアミノ酸配列からなるペプチド。 ペプチドAが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、請求項14記載の抗体測定キット。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部であって、配列番号1で示されるアミノ酸配列の274〜445番目のアミノ酸配列を含有し、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列の243〜273番目のアミノ酸配列を含有しないペプチド。 ペプチドAが、下記のペプチド鎖であることを特徴とする、請求項15記載の抗体測定キット。ペプチドA:配列番号1で示されるアミノ酸配列の274〜445番目のアミノ酸配列からなるペプチド。 ペプチドAまたはBが、1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失、付加、あるいは置換されたアミノ酸配列を有するペプチドであることを特徴とする、請求項11ないし17の何れか一項に記載の抗体測定キット。 抗体測定法が、ELISA法、ウェスタンブロット法およびドットブロット法からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項11ないし18の何れか一項に記載の抗体測定キット。 検体が、アビバクテリウム・パラガリナラム感染鶏血清またはアビバクテリウム・パラガリナラムワクチン投与鶏血清であることを特徴とする、請求項11ないし19の何れか一項に記載の抗体測定キット。配列表