タイトル: | 特許公報(B2)_siRNA検出方法 |
出願番号: | 2009552447 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12Q 1/68,C12N 15/09 |
二見 和伸 古市 泰宏 JP 5544173 特許公報(B2) 20140516 2009552447 20090129 siRNA検出方法 株式会社ジーンケア研究所 502028430 清水 初志 100102978 刑部 俊 100119507 井上 隆一 100142929 新見 浩一 100128048 小林 智彦 100129506 渡邉 伸一 100130845 大関 雅人 100114340 二見 和伸 古市 泰宏 JP 2008024156 20080204 20140709 C12Q 1/68 20060101AFI20140619BHJP C12N 15/09 20060101ALI20140619BHJP JPC12Q1/68 AC12N15/00 A C12Q 1/68 C12N 15/09 CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2006−166907(JP,A) 特表2007−532100(JP,A) ANALYTICAL BIOCHEMISTRY,2009年 2月,vol. 385, no. 2,p.386-388,[Available online 6 Dec. 2008] CANCER SCIENCE,2008年 6月,vol. 99, no. 6,p.1227-1236,[online publication April 14, 2008] 5 JP2009051405 20090129 WO2009098988 20090813 12 20120125 吉田 知美 本発明は、siRNAの検出方法に関する。 RNA干渉(RNA interference:RNAiと略)は小分子の二本鎖RNA(small interfering RNA: siRNAと略)が引き金となって起こる生物現象であり、塩基配列特異的にメッセンジャーRNA(mRNA)を分解することにより、そのmRNAがコードするタンパク質の産生を抑制し、この結果、特定の遺伝子の発現が抑えられる。細胞の細胞質内で起こるこの生物現象は、分子生物学的な研究ツールとして、また、医薬品の標的タンパクを探索する創薬研究などの目的のために広く使われている。一方、細胞内に人為的に送り込まれた二本鎖RNAは、たとえ低濃度であっても、厳密に特定するタンパク質のコピー数を抑えることが出来ることから、合成した2本鎖RNAを核酸医薬品として利用しようとする医薬品開発が進められている。この目的のためには、21−25merからなる短いsiRNAが充分な効果を発揮するが、siRNA合成に係わる技術的理由、並びに経済的理由から、最も短い21merのsiRNAが医薬品候補として選ばれることが多い。実際、これらのsiRNAは、適切に塩基配列を選べば、細胞内においてナノMレベルの低い濃度で、特定のタンパク質の産生を抑制するため、副作用の少ない医薬品となることが予想され、抗体医薬に次ぐ次世代医薬品として期待されている。抗体医薬品は細胞の外で薬理効果を発揮するが、siRNA医薬は細胞中の細胞質という限られた場所でのみ働き、核質内で遺伝子DNAと不必要な接触をしないという安全性も期待できる。また、siRNA医薬には、スクリーニングなどの手がかりとなる生化学的活性を示さないタンパク質を対象とするsiRNA医薬や、構造的に良く似たタンパク質に対する選択性の高いsiRNA医薬など、従来の低分子医薬品では困難であった医薬品の開発が可能になり、創薬の幅が増えるという利点も指摘されている。 微量のsiRNAを定量するために、従来から使われている方法のひとつとして、放射性同位元素でラベルしたsiRNAキャリアを合成して使用することは、必ずしも不可能ではない。しかしながら、以下に指摘するような多くの課題があり賢明な方法ではない。即ち、(1) 合成する場所や機械・機器に制限があること、(2) 合成する製造者にも制限があること、(3) 放射性同位元素を含むヌクレオチドが高価につくこと、(4) 放射性同位元素を含むヌクレオチドの純度について疑問がある場合が多く、この結果、合成されるsiRNAの純度を真に信頼できないこと、(5) 放射性同位元素を含む微量のsiRNAの精製には、場所、器具、人などの面で制限がかかり、真に純度の高いsiRNAキャリアが得られるか否か信頼できないこと、(6) 放射性同位元素を含むsiRNAができたとしても、その使用は特定の場所と実験動物への使用に留まり、最も重要な点は、ヒトへの投与が出来ないことが挙げられ、不都合は、数えれば枚挙に絶えないところである。それだけに、放射性同位元素を使わないsiRNA定量技術の開発が強く求められている。 また、近年盛んなRNA研究では、上に述べたsiRNAに加え、mRNAの3'UTRに結合しタンパクの翻訳を制御する働きを有するmiRNAも注目されるようになってきた。miRNAは、siRNA同様にRISCの働きで一本鎖化して存在し、22ヌクレオチドの鎖長をもつ成熟体となることが知られている。このmiRNAの検出の場合、すべてがRNAで構成されているため、ポリアデニレーションなどをRNAに行い、生じたポリA部分にアニールするオリゴdTをプライマーとした逆転写反応によりcDNA合成を行い、この後PCRを行ってmiRNAを増幅する方法が開発されている。 QIAGENでは、miRNAの検出にあたり、以下のような方法を開発している(miScript system)。この方法は、(1) 生体内から抽出してきたmiRNAを含むスモール非コーディング(small noncoding) RNAに、PolyAポリメラーゼにより、ポリ(A)テールを付加し、(2) ポリAを含む全RNAを鋳型にして、ユニバーサル・タグ(universal tag)配列を含むpoly(T)で逆転写反応をさせcDNAを合成させる。(3) ユニバーサル・タグ配列及び、miRNA特異的なプライマー間でリアルタイムPCRを行う (SYBR green法)。リファレンス遺伝子の増幅率との差異より定量化が可能となる。 そのほかに、ABI社のTaqMan MicroRNA Assayでは、(1) 各miRNAに対して最適化された高次(loop)構造を持つRT-プライマーをmiRNAの末端にハイブリ結合させ、cDNA合成をおこなう、(2) その後、特異的プライマーとループ構造内の配列間でPCRを行う、内部の蛍光標識プローブ (TaqMan probe)から遊離される蛍光で定量する手法である。 両社の方法ともに、miRNAが純粋なRNAであるという特徴を利用している。QIAGEN社の手法では、RNA依存性のポリ(A)ポリメラーゼ(polymerase)を使ってテイリング(tailing)するので、鋳型はRNAである必要がある。ABI社の手法では、それぞれのmiRNAに特異的にデザインされた高次構造プライマーが必要となる。これは、生体内のmiRNAの種類が限定されているからこそ利用できる技術である。一方、化学合成され、外部から導入して利用するsiRNAの場合、その多くが、例えば、末端にd(TT)のDNAオーバーハングを持つキメラ構造であり、用いられる配列も多様である。そのため、上記の手法共、応用することは出来ない。 siRNAの医薬品としての優れた特性については、これまでの多くの研究から予想できるものの、siRNAは人類がこれまでに直面したことのない全く新しい医薬品素材であるために、医薬品化するためのプロセスとして必要な薬物動態の解明などには、これまでの技術では不十分であるという問題がある。つまり、微量なsiRNAの、組織への集積、血中濃度の推移、経時的な代謝といった薬物の生体内における動態を、正確かつ迅速に、さらには安価に測定するための有効な方法がいまだ無いため、siRNA医薬品を開発する際の大きなハードルの一つとなっている。 数々の優れた特性を持つsiRNA医薬を開発するためには、是非ともこの壁は乗り越えなければならないため、siRNA測定技術の開発は大きな課題となっている。今後、世界中で多くのsiRNA医薬の臨床試験が行われるが、投与されるsiRNAの血中や臓器・組織での薬物動態、細胞内での挙動を鋭敏に追える方法が強く求められている。 なお、先行技術文献を以下に示す。WO 2005/021800 A2WO 2005/098029 A2WO 2004/085667 A2Lee DY. et al., MicroRNA-378 promotes cell survival, tumor growth, and angiogenesis by targeting SuFu and Fus-1 expression., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 2007 Dec;51: 20350-5Chen C, et al., Real-time quantification of microRNAs by stem-loop RT-PCR., Nucleic Acids Res., 2005 Nov 27;33(20):e179.Ro S, Park C, Jin J, Sanders KM, Yan W., A PCR-based method for detection and quantification of small RNAs., Biochem Biophys Res Commun. 2006 Dec 22;351(3):756-63.Overhoff M, Wunsche W, Sczakiel G., Quantitative detection of siRNA and single-stranded oligonucleotides: relationship between uptake and biological activity of siRNA., Nucleic Acids Res. 2004 Dec 2;32(21):e170Raymond CK, Roberts BS, Garrett-Engele P, Lim LP, Johnson JM., Simple, quantitative primer-extension PCR assay for direct monitoring of microRNAs and short-interfering RNAs., RNA. 2005 Nov;11(11):1737-44.Chen C, Ridzon DA, Broomer AJ, Zhou Z, Lee DH, Nguyen JT, Barbisin M, Xu NL, Mahuvakar VR,Andersen MR, Lao KQ, Livak KJ, Guegler KJ., Real-time quantification of microRNAs by stem-loop RT-PCR., Nucleic Acids Res. 2005 Nov 27;33(20):e179. 化学合成されたsiRNA、例えば末端にDNAオーバーハングを有するキメラ構造のsiRNAを効率的に検出する方法の提供を課題とする。 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。本発明者は、末端にd(TT)のDNAオーバーハングを持つキメラ構造よりなるsiRNAの検出を想定し、以下の順序による反応を行い、微量siRNAの検出ならびに定量化に成功した。(1) まず、化学合成されたsiRNAの一般的な構造に着目し、siRNAのd(TT)オーバーハングに対して、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Terminal deoxynucleotidyl transferase)でdGTPを基質とするポリdGのテイリングを付加させる。この操作は、他のmRNAのポリrAテイリングと区別し、タグ化させる意味もある。また、ポリdCやポリdTでは、テイリングされる鎖長の制御が不能であるため、ポリdGであることが望ましい。(2) 続いて、タグ配列を付加したポリdC配列のプライマーをアニールさせ、cDNAを合成する。タグ配列は、以下の操作でPCRをする際のプライミング部位として用いるので、一般のプライマー程度の長さが望ましい。(3) タグ配列と同じ配列を持つプライマーと、検出したいsiRNA配列と同じ配列(ただしU→T)のプライマー間で、定量PCRを行う。定量PCRの手法としては、公知の手法を利用することができる。例えば、市販されたSYBR Green(dsDNAにのみインターカレート)を利用した系を用いることができる。(4) 既知量の短鎖dsDNAで作成した検量線から、目的のsiRNA量を知ることが可能となる。(5) SYBR green検出系を利用する場合、上記 (2)までの反応は、同一チューブ内で反応が進められるため、RNAの抽出の過程や、cDNA合成過程に既知量の内部標準(siRNA)を予め加えておき、その値よりsiRNA量を補正することが可能である。 上記の反応スキームを図1に示す。 上述の如く本発明者は、末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNA、特に、化学合成されたsiRNAを効率的に検出する方法を開発することに成功し、本発明を完成させた。 なお、本発明者は、検出すべきsiRNAのオーバーハングを構成する塩基に対して、ターミナルデオキシトランスフェラーゼ等によって付加される塩基としてグアニン(dG)を使用することにより、目的のsiRNAの検出を効率的に実施できることを発見した。当該発見は、当業者であっても従来の知見からは容易に想到できない有利な効果と言える。 本発明は、3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNA、例えば、化学合成されたsiRNAを効率的に検出する方法に関し、より具体的には、〔1〕 3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNAを検出する方法であって、以下の工程(a)〜(d)を含む方法、 (a)siRNAの3'末端側オーバーハングに対してポリデオキシグアニン(ポリdG)を付加させる工程 (b)前記工程によって生成される分子を鋳型として、タグ配列を5'側に有するポリデオキシシトシン(ポリdC)プライマーで逆転写反応をさせ単鎖DNAを合成する工程 (c)前記単鎖DNAを鋳型として、前記タグ配列の相補鎖とアニールするプライマー、および前記siRNAの一方の鎖とアニールするプライマーを用いたPCRを行う工程 (d)前記PCR産物を検出する工程〔2〕 3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNAを構成する配列を選択的に増幅する方法であって、以下の工程(a)〜(c)を含む方法、 (a)siRNAの3'末端側オーバーハングに対してポリデオキシグアニン(ポリdG)を付加させる工程 (b)前記工程によって生成される分子を鋳型として、タグ配列を5'側に有するポリデオキシシトシン(ポリdC)プライマーで逆転写反応をさせ単鎖DNAを合成する工程 (c)前記単鎖DNAを鋳型として、前記タグ配列の相補鎖とアニールするプライマー、および前記siRNAの一方の鎖とアニールするプライマーを用いたPCRを行う工程〔3〕 前記ポリデオキシグアニン(ポリdG)の付加が、ターミナルデオキシトランスフェラーゼによって行われる、〔1〕または〔2〕に記載の方法、〔4〕 3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNA検出用試薬であって、前記〔1〕(b)または(c)に記載のプライマー(例えば、タグ配列を5'側に有するポリデオキシシトシン(ポリdC)プライマー、前記タグ配列の相補鎖とアニールするプライマー、siRNAの一方の鎖とアニールするプライマー等)を含んでなる試薬、を提供するものである。本発明のsiRNA検出方法の一例を模式的に示す図である。検出したい配列に依存するプライマーを作成することにより、定量PCRが可能である。またSYBR Greenによる定量PCRも可能である。検量線用の既知量siRNA由来の増幅曲線を示す図である。(A)左から1500, 1000, 500, 100, 50, 20, 10, 5 fmolに相当する。検量線を下図(B)に示す。本発明の方法により実際のサンプルを用いて測定した際の増幅曲線を示す図である。〔発明を実施するための形態〕 本発明は、試料中に存在するsiRNAを検出する方法(本明細書において「本発明の方法」と記載する場合あり)に関する。 本発明の方法によって検出されるsiRNAは、通常、3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNAである。該siRNAの末端のオーバーハングを構成する塩基は、通常、DNAである。そのDNAの塩基種は特に制限されず、任意の塩基がオーバーハングした構造のsiRNAについて、本発明の方法を用いて検出することが可能である。 一般に化学合成されたsiRNAは、3'末端に(デオキシ)チミン(dT)がオーバーハングした構造であることが多く、本発明の方法においては、例えば、3'末端に(デオキシ)チミン残基がオーバーハングした構造のsiRNAを好適に検出することができる。また、オーバーハングを構成する塩基の長さも特に制限されないが、通常は、1〜2塩基長であり、好ましくは2塩基長である。本発明において好ましくは、3'末端に(デオキシ)チミンが2残基オーバーハングした構造のsiRNAを検出する方法である。 本発明の方法の好ましい態様としては、3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNAを検出する方法であって、以下の工程(a)〜(d)を含む方法が挙げられる。 (a)siRNAのオーバーハング(DNA)に対してポリデオキシグアニン(ポリdG)を付加させる工程 (b)前記工程によって生成される分子を鋳型として、タグ配列を5'側に有するポリデオキシシトシン(ポリdC)プライマーで逆転写反応をさせ単鎖DNAを合成する工程 (c)前記単鎖DNAを鋳型として、前記タグ配列の相補鎖とアニールするプライマー、および前記siRNAの一方の鎖とアニールするプライマーを用いたPCRを行う工程 (d)前記PCR産物を検出する工程 なお、本発明の方法の好ましい態様を、図1に模式的に示す。しかし、本発明は必ずしも図1で示された方法に制限されない。 上記工程(a)においてオーバーハングを構成する塩基へ付加させるポリdGの長さは特に制限されないが、通常は、10〜20mer程度の長さである。 ポリdGの付加は、例えば、ターミナルデオキシトランスフェラーゼ(Terminal-deoxy-transferase)とdGTPを使用し、実施することができる。該付加の反応を行う酵素は、オーバーハングを有する二本鎖核酸の末端へdGTPを付加させる活性を有するものであれば特に制限されない。 なお、本発明においては、通常、3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNAを検出対象とするが、例えば、オーバーハングを有さないsiRNAについても、該siRNAの3'末端にDNAもしくはリボポリGを付加させることによって、本願の方法により該siRNAを検出することが可能である。 オーバーハングを有さない平滑末端のsiRNAへDNAを付加させるためには、例えば、テンプレート非依存的に働くDNAポリメラーゼを用いることができる。また、本発明は、平滑末端を有するsiRNAに対してリボポリGを付加した上で、本発明の方法を実施することが可能である。この手法の場合においてリボポリGの付加は、例えばrGDPとポリヌクレオチドフォスフォリラーゼ(PNPase)を使用し、実施することができる。あるいはリボポリGの付加のために、プライマー依存的PNPaseを使用することも考えられる。なおごく短い塩基の末端付加であれば、Taq polymeraseを使用することができる。 上記工程(a)は、他のmRNAのポリdAテイリング(tailing)と区別し、タグ化させる効果がある。なお、ポリdCやポリdTでは、テイリングされる鎖長の制御が困難であるため、ポリdGであることが望ましい。 また、予め合成されたポリdG(例えば、10〜20mer程度の長さ)を、オーバーハングを有する二本鎖核酸の末端へ付加させてもよい。 上記工程(b)において、タグ配列の鎖長および塩基の並びは特に制限されないが、該配列は、上記工程(c)においてプライマーとして使用されることから、通常、PCR用プライマーとして利用可能な程度の長さであることが好ましい。例えば、5〜30mer、好ましくは10〜20mer程度の長さである。 上記「タグ配列を5'側に有するポリデオキシシトシン(ポリdC)プライマー」のポリdC領域は、上記工程(a)で付加させたポリdG領域と相同性を有することから、該dG領域とアニールし、逆転写反応のプライマーとして機能する。 上記工程(b)の逆転写反応は、当業者であれば、逆転写酵素を利用した一般的な手法によって適宜実施することが可能である。逆転写酵素は当業者が一般的に使用する市販されたものを適宜利用することができ、その種類は特に限定されない。逆転写反応のための市販の試薬またはキット等も適宜利用することができる。 上記工程(b)の逆転写反応により、ポリdGが付加されたsiRNAは、単鎖DNAへ変換される。該工程によって、タグ配列を5'側に有するポリdCと、siRNAの一方の鎖に対応するcDNAとが結合した構造の単鎖DNAが合成される。該単鎖DNAは、さらに該DNAを増幅するための反応へ供される。 本発明の工程(c)は、工程(b)によって合成される単鎖DNAを鋳型として、該DNAに相当する配列を増幅する工程である。上記工程(c)においては、工程(b)において合成された単鎖DNAを増幅するための手法であれば特に制限されないが、通常は、該単鎖DNAを鋳型とするPCR(ポリメラーゼ連鎖反応;polymerase chain reaction)を実施する。該PCRは公知の手法であり、市販された種々の試薬あるいはキット等を適宜利用することができる。 該PCRは、通常、鋳型となるDNAの末端領域にアニールする一組のプライマーを用いて行う。鋳型となるDNAが単鎖であっても問題なく行うことができる。単鎖DNAを増幅するためのプライマーは、当業者であれば鋳型となる単鎖DNAの配列情報に基づいて容易に設計および合成することが可能である。 本発明の方法においては、検出したいsiRNAの一方の鎖(アンチセンス鎖もしくはセンス鎖)とアニールするプライマーを用いることにより、目的のsiRNA特異的なPCR増幅産物が検出される。該PCR産物が検出された場合に、被検試料中に目的のsiRNAが存在するものと判定される。 上記工程(c)において利用されるプライマーとしては、例えば、(1)上記タグ配列に相当する領域からなるプライマー、および、(2)該単鎖DNAにおいてsiRNAに相当する領域(siRNAの一方の鎖のcDNAに相当する領域)とアニールするプライマーを挙げることができる。例えば、上記タグ配列と検出したいsiRNA鎖のセンス鎖間でPCRを行う。 上記(1)のプライマーは、通常、上記工程(b)で使用した「タグ配列を5'側に有するポリdCプライマー」からポリdCを除いた配列からなるプライマーであるが、適宜、プライマー長を短くあるいは長くすることができる。また、上記(1)のプライマーは、前記タグ配列の相補鎖とアニールするプライマーと表現することができる。本発明の上記プライマーは、タグ配列の相補鎖とアニールするものであれば、必ずしも、タグ配列そのものと完全に一致する必要はない。 上記(2)のプライマーは、例えば、siRNAにおけるアンチセンス(AS)鎖に相当する配列を検出したい場合には、通常、アンチセンス鎖(AS)に相当する配列(ただし、AはdA、GはdG、CはdC、UはdT)であり、siRNAにおけるセンス鎖に相当する配列を検出したい場合には、通常、センス鎖に相当する配列である。 また、上記工程(c)においては、定量PCRを行うことができる。定量PCRの手法としては、公知の手法を利用することができる。例えば、市販されたSYBR Green(dsDNAにのみインターカレート)を利用した系を用いることができる。 工程(d)においては、工程(c)によって増幅された産物(PCR産物)を検出する。PCR産物は通常二本鎖DNAであり、公知の方法、例えば、電気泳動法等によって検出することができる。PCR産物を検出するためには、市販された試薬およびキット等を適宜利用することができる。 また、既知量の短鎖dsDNAで作成した検量線から、目的のsiRNA量を知ることが可能である。即ち、本発明の方法によって、目的のsiRNAを定量的に測定することができる。例えば、既に量が判明しているsiRNAを対照とすることにより、目的のsiRNAの量を測定することができる。 例えば、SYBR green検出系を利用した場合、同一チューブ内で反応が進められるため、RNAの抽出の過程や、cDNA合成過程に既知量の内部標準(siRNA)を予め加えておき、その値からsiRNA量を適宜補正することが可能である。 また本発明は、3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNAを選択的に増幅する方法を提供する。通常、化学合成されたsiRNAは、例えば、dTTのようなオーバーハングを有するsiRNAであることが多いことから、本発明の方法により、化学合成されたsiRNA(siRNAを構成する塩基配列)を選択的に増幅することが可能である。 本発明の上記方法の好ましい態様としては、3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNAを構成する配列を選択的に増幅する方法であって、以下の工程(a)〜(c)を含む方法である。 (a)siRNAのオーバーハング(DNA)に対してポリデオキシグアニン(ポリdG)を付加させる工程 (b)前記工程によって生成される分子を鋳型として、タグ配列を5'側に有するポリデオキシシトシン(ポリdC)プライマーで逆転写反応をさせ単鎖DNAを合成する工程 (c)前記単鎖DNAを鋳型として、前記タグ配列の相補鎖とアニールするプライマー、および前記siRNAの一方の鎖とアニールするプライマーを用いたPCRを行う工程 さらに、本発明の方法のために用いられるプライマー、酵素等もまた本発明に含まれる。即ち本発明は、上記(1)もしくは上記(2)のプライマー、ターミナルデオキシトランスフェラーゼ、または逆転写酵素を有効成分とする、3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNA検出用試薬を提供する。 また、上記(1)もしくは上記(2)のプライマー、ターミナルデオキシトランスフェラーゼ、および逆転写酵素からなる群より選択される複数の物質を組み合わせて成る、siRNA検出用キットを提供する。 また、本発明の方法を利用することにより、個体へ投与されたsiRNAの体内動態を検査(モニター)することができる。siRNAは20mer程度の短い二本鎖であるため、また血中並びに臓器中に分布する濃度が低いため(nMレベル)、これまでに好適な検出方法が存在しなかった。本発明の方法によって、個体へ投与されたsiRNAについて、血中もしくは臓器中に分布する濃度を定性的あるいは定量的に測定することが可能である。 本発明の好ましい態様としては、以下の工程を含む、個体へ投与されたsiRNAの体内動態をモニターする方法に関する。 (a)siRNAの存在量を測定すべき生体部位(血液、組織など)から被検試料を取得する工程、 (b)該被検試料について、本発明の方法により目的のsiRNAを検出する工程 なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。 以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。〔実施例1〕siRNAの測定 RecQL1-siRNA (5'- GUUCAGACCACUUCAGCUUdTdT -3'/配列番号:1)を内部標準にして、細胞に導入したGL3-siRNA (5'- CUUACGCUGAGUACUUCGAdTdT -3'/配列番号:2)の濃度を測定した。A549細胞に、50 pmolのGL3-siRNAをトランスフェクション(導入)し、経時ごとに細胞をサンプリングし、全RNAを抽出した。全RNA抽出には、QIAGEN社のmiRNAeasy Mini kitを使い短鎖RNAまで回収した(〜18mer)。 以下、一連の反応を行い定量PCRに供した。既知量のsiRNAで検量線を求め、操作過程で混入させた既知量のRecQL1-siRNAで補正を行った。 検量線用の既知量siRNA由来の増幅曲線を図2に示す。この結果、5フェムトモルから1.5ピコモルのsiRNAが測定できることがわかった。この測定域は通常の定量的RT-PCRと同等であった。また、実際のサンプルで測定したデータを図3に示す。 操作標準に加えたsiRNA量で補正すると、以下の通りである。 同様に、GL3-siRNA (5'- CUUACGCUGAGUACUUCGAdTdT -3'/配列番号:2) を内部標準にして、マウスに投与したRecQL1-siRNA (5'- GUUCAGACCACUUCAGCUUdTdT -3'/配列番号:1)の濃度を測定した。50μgのsiRNAをマウスに全身投与し、経時ごとに血液をサンプリングし、全RNAを抽出した。全RNA抽出には、QIAGEN社のmiRNAeasy Mini kitを使い短鎖RNAまで回収した(〜18mer)。 以下、一連の反応を行い定量PCRに供した。既知量のsiRNAで検量線を求め、操作過程で混入させた既知量のGL3-siRNAで補正を行った。結果を表2に示す。 本発明の方法は、従来、逆転写酵素によりcDNAに変換することが難しいとされる短い二本鎖RNA(例えば、21mer)を、その特徴を活かした種々の新しいアイデアによりDNAへ変換し、塩基配列特異的な測定・定量化が可能であるという特長を有する。 この方法は、特に制限されないが、例えば、3'末端にデオキシTTの2ベースがオーバーハングした形の構造を有する合成キメラsiRNAの定量に好適に使用することができる。 dGTPとターミナルデオキシトランスフェラーゼ(Terminal deoxytransferase)を用いるポリdGの付加反応はDNAのオーバーハングした形の3'dTTにのみ可能であり、このことは、完全長を有するsiRNAのみが定量・検出されるという本方法の特徴といえる。このことはまた、生体試料からsiRNAを抽出する場合、サンプル中に混在が予想されるRNAやDNAを非特異的に定量操作へ取り込むことはないという本方法の長所といえる。 また、dGTP以外のヌクレオチド3リン酸とターミナルデオキシトランスフェラーゼの組み合わせでは、3'末端への付加反応の制御が困難であり、以後の諸反応は可能であるが、定量性を欠くものであった。 本発明の方法は、上述のようにして修飾されたsiRNA-dTT-ポリdGキメラ分子を、タグ配列を含むポリdC(タグ-ポリdC)をプライマーとする逆転写反応により単鎖DNAへ変換し、この単鎖DNAをsiRNA塩基配列内にセットしたキメラ塩基配列特異的プライマーにより、増幅・定量する方法である。以上の操作により完全長siRNAの定量が可能となった。 3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNAを検出する方法であって、以下の工程(a)〜(d)を含む方法であり、ここで、該オーバーハングはデオキシジヌクレオチドである、方法。 (a)siRNAのオーバーハングに対してポリデオキシグアニン(ポリdG)を付加させる工程 (b)前記工程によって生成される分子を鋳型として、タグ配列を5'側に有するポリデオキシシトシン(ポリdC)プライマーで逆転写反応をさせ単鎖DNAを合成する工程 (c)前記単鎖DNAを鋳型として、前記タグ配列の相補鎖とアニールするプライマー、および前記siRNAの一方の鎖とアニールするプライマーを用いたPCRを行う工程 (d)前記PCR産物を検出する工程 3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNAを検出する方法であって、以下の工程(a)〜(d)を含む方法であり、ここで、該オーバーハングはデオキシジヌクレオチドである、方法。 (a)siRNAのオーバーハングに対してポリデオキシグアニン(ポリdG)を付加させる工程 (b)前記工程によって生成される分子を鋳型として、タグ配列を5'側に有するポリデオキシシトシン(ポリdC)プライマーで逆転写反応をさせ単鎖DNAを合成する工程 (c)前記単鎖DNAを鋳型として、前記プライマー、および前記siRNAの一方の鎖とアニールするプライマーを用いたPCRを行う工程 (d)前記PCR産物を検出する工程 3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNAを構成する配列を選択的に増幅する方法であって、以下の工程(a)〜(c)を含む方法であり、ここで、該オーバーハングはデオキシジヌクレオチドである、方法。 (a)siRNAのオーバーハングに対してポリデオキシグアニン(ポリdG)を付加させる工程 (b)前記工程によって生成される分子を鋳型として、タグ配列を5'側に有するポリデオキシシトシン(ポリdC)プライマーで逆転写反応をさせ単鎖DNAを合成する工程 (c)前記単鎖DNAを鋳型として、前記タグ配列の相補鎖とアニールするプライマー、および前記siRNAの一方の鎖とアニールするプライマーを用いたPCRを行う工程 3'末端にDNAのオーバーハングを有するsiRNAを構成する配列を選択的に増幅する方法であって、以下の工程(a)〜(c)を含む方法であり、ここで、該オーバーハングはデオキシジヌクレオチドである、方法。 (a)siRNAのオーバーハングに対してポリデオキシグアニン(ポリdG)を付加させる工程 (b)前記工程によって生成される分子を鋳型として、タグ配列を5'側に有するポリデオキシシトシン(ポリdC)プライマーで逆転写反応をさせ単鎖DNAを合成する工程 (c)前記単鎖DNAを鋳型として、前記プライマー、および前記siRNAの一方の鎖とアニールするプライマーを用いたPCRを行う工程 前記ポリデオキシグアニン(ポリdG)の付加が、ターミナルデオキシトランスフェラーゼによって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。配列表