| タイトル: | 特許公報(B2)_アミノ酸メチルエステルの調製方法 |
| 出願番号: | 2009552221 |
| 年次: | 2013 |
| IPC分類: | C07C 227/18,C07C 229/36,C07B 61/00 |
ムーディー, ハロルド, モンロー JP 5374795 特許公報(B2) 20131004 2009552221 20080310 アミノ酸メチルエステルの調製方法 ディーエスエム シノケム ファーマシューティカルズ ネザーランズ ビー.ヴイ. 512092553 山田 行一 100094318 ムーディー, ハロルド, モンロー EP 07103851.7 20070309 20131225 C07C 227/18 20060101AFI20131205BHJP C07C 229/36 20060101ALI20131205BHJP C07B 61/00 20060101ALN20131205BHJP JPC07C227/18C07C229/36C07B61/00 300 C07C 227/18 C07C 229/04 C07C 229/36 特開平01−165560(JP,A) 特公昭32−001319(JP,B1) 特開昭55−105649(JP,A) 5 EP2008052814 20080310 WO2008110529 20080918 2010520870 20100617 8 20110308 今井 周一郎発明の詳細な説明 本発明は、アミノ酸メチルエステルの調製方法に関する。 触媒として硫酸を用いてアミノ酸をエステル化する方法は、米国特許第4,680,403号明細書から分かる。この方法は、硫酸の存在下においてアルコール中でアミノ酸を加熱することを伴う。この方法の重大な欠点は、収率がかなり低いことである。欧州特許出願公開第A−0544205号明細書においてはこの方法は、より高い収率を得るように改変されている。この改変された方法ではアルコールの主要な部分はアミノ酸、少量のアルコール、および硫酸からなる反応混合物に液体または気体として加えられ、同時に同量のアルコールが反応混合物から蒸留により除去される。この発明者等は、米国特許第4,680,403号明細書による方法と比べて高い収率を報告している。欧州特許出願公開第A−0544205号明細書に開示された方法の主要な欠点は、米国特許第4,680,403号明細書の方法と比べてアルコールの消費量が高い(8倍まで)ことである。このアルコールの高い消費は、この方法を経済的に非常に魅力のないものにしている。 本発明の目的は、アミノ酸のメチルエステルの合成の費用対効果が大きい方法を提供することであり、この合成はアルコールの低消費量だけでなく高い収率を有する。 本明細書中では「アミノ酸」は、少なくとも1個のカルボン酸基COOHと、1個のアミノ基(NH2)とを有する有機分子として定義される。これらの基は、アルファアミノ酸の場合のようにその有機分子の同一の炭素原子に付着してもよく、またベータアミノ酸、ガンマアミノ酸などの場合のように異なる炭素原子に付着してもよい。アミノ酸は任意の光学異性体、すなわち右旋性(D)、左旋性(L)、またはラセミ(D、L)体であることができる。アルファアミノ酸は、成分、すなわちカルボン酸基COOHと、アミノ基(NH2)と、水素(H)と、式 R−HC(NH2)−COOHによる基Rとが付着している中心炭素原子を有する。このようなアルファアミノ酸の例は、自然界に見出され、タンパク質を作る20種類のL−アルファアミノ酸、すなわちグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、プロリン、ヒスチジン、セリン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アルギニン、リシン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸である。他の例は、D−フェニルグリシン、D−ジヒドロ−フェニルグリシン、D−4−ヒドロキシ−フェニルグリシン、および他のアミノ酸などの半合成ベータ−ラクタム抗生物質の合成に使用されるアミノ酸である。 本明細書中では「遊離アミノ酸」は、非エステル化形態のアミノ酸、すなわち遊離カルボキシル基を有するアミノ酸として定義される。 本明細書中では「アミノ酸メチルエステル」は、アミノ酸のカルボキシル基がアルコールとエステル結合しているメチルエステル形態のアミノ酸、例えばD−フェニルグリシンメチルエステル、D−ジヒドロ−フェニルグリシンメチルエステル、またはD−4−ヒドロキシ−フェニルグリシンメチルエステルとして定義される。 本明細書中では「比」は、(ただし、量はモルの単位で表わされる)として定義される。 一態様において本発明は、a.遊離アミノ酸、メタノール、および強酸を含む反応混合物を還流させるステップと、b.ステップ(a)で得られる混合物を濃縮するステップと、c.メタノールを加えるステップと、d.ステップ(a)〜(c)を1回または複数回以上繰り返すステップとを含むアミノ酸メチルエステルの合成方法を提供する。 最初の反応混合物は、適切な量の遊離アミノ酸、メタノール、および強酸を混合することによって作られる。この最初の混合物の体積を、本明細書中では初期反応体積と呼ぶ。 本発明の方法におけるアミノ酸は、本明細書中で定義した任意のアミノ酸であることができる。アルファアミノ酸、具体的にはそのメチルエステルを、D−フェニルグリシン、D−ジヒドロ−フェニルグリシン、D−4−ヒドロキシ−フェニルグリシン、および他のものなど、半合成ベータラクタム抗生物質の合成に使用することができるアルファアミノ酸が好ましい。 好ましくは3から25の間、より好ましくは5から25の間、最も好ましくは6から10の間のメタノール対遊離アミノ酸のモル比が、最初の反応混合物において使用される。強酸は、塩酸、硫酸、アルキルスルホン酸、またはアリールスルホン酸などの任意の強酸であることができ、硫酸、メタンスルホン酸、およびパラ−トルエンスルホン酸が好ましく、硫酸が最も好ましい。好ましくは0.9から10の間、より好ましくは1から5の間、最も好ましくは2から3の間の強酸(単位は当量、例えば塩酸の1モルは1当量であり、硫酸の1モルは2当量である)対遊離アミノ酸鎖のモル比が使用される。当業者は、選択されるアミノ酸に応じて必要以上の実験なしに反応条件を最適化することが可能なはずである。 還流のステップは、一定の時間、例えば0.5から5時間の間、好ましくは1時間から3時間の間、より好ましくは1.5から2.5時間の間、好ましくは20から100℃、より好ましくは40から100℃、より好ましくは60から100℃、最も好ましくは60から80℃の間の温度で行うことができる。 濃縮のステップ(b)の間ずっとメタノールおよび水は、蒸発によって除去する。このステップの間の圧力は、初めは大気圧であることができ、また濃縮のステップの間に、例えば真空ポンプによって好ましくは50ミリバール以下まで、より好ましくは40ミリバール以下まで、より好ましくは30ミリバール以下まで、最も好ましくは20ミリバール以下まで低下させることができる。このメタノールおよび水の蒸発の結果として温度は最初、例えば40℃に低下し、濃縮のステップ(b)の間に再び上昇する。一般に濃縮のステップ(b)は、40から100℃の間、好ましくは60から90℃の間、より好ましくは70から80℃の間の温度で行うことができる。濃縮のステップは、その濃縮のステップの前に存在した水の30%超が除去される、好ましくは水の40%超が除去される、好ましくは水の50%超が除去される、好ましくは水の70%超が除去される、好ましくは水の80%超が除去される、最も好ましくは水の90%超が除去されるまで続けられる。 濃縮のステップの後、適切な量のメタノール、好ましくは反応混合物の初期体積を得るための量、または反応混合物の初期体積未満の量、例えば、反応混合物の初期体積の≦90%、または≦80%、または≦70%、または≦60%、または≦50%、または≦40%、または≦30%、または≦20%の量をステップ(c)に加える。。この加えられるメタノールの量はまた、反応混合物の初期体積を超えてもよい。ステップ(a)、(b)および(c)を1回または複数回、少なくとも1回、好ましくは2回、より好ましくは3回、より好ましくは4回、より好ましくは5回、より好ましくは6回、より好ましくは7回、より好ましくは8回、より好ましくは9回、より好ましくは10回繰り返す。これらのステップを繰り返すことによって、本明細書中でさきに定義したアミノ酸メチルエステルの形成の「比」が著しく増加することが分かった。例えば、ステップ(a)〜(c)を1回だけしか行わなかった後では75〜85%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を1回繰り返した後には85〜95%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を2回繰り返した後には95〜97%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を3回繰り返した後には97〜98%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を4回繰り返した後には98〜99%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を5回繰り返した後には99〜99.5%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を6回以上繰り返した後には99.5%を超える「比」を得ることができる。 任意選択で、ステップ(b)またはステップ(c)の後に得られる混合物を、本明細書中でさきに定義した高い「比」を有する混合物を得るためにさらに精製することもできる。混合物の比は、好ましくは≧85%、より好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%、より好ましくは≧96%、より好ましくは≧97%、より好ましくは≧98%、より好ましくは≧99%、より好ましくは≧99.5%、最も好ましくは≧99.8%である。 精製のステップの一実施形態は、アミノ酸エステルからの遊離アミノ酸の沈殿および除去を伴う。これは、ステップ(a)で得られた混合物のpHをNaOH、アンモニア、KOHなどの適切な塩基を加えることによって2から6.5の間、好ましくは2.5から5の間、最も好ましくは3から4の間の値に調整することによって達成することができる。別の実施形態ではステップ(a)で得られた反応混合物を、適切な量の水に、またはアルコールに、または水とアルコールの混合物に加え、続いてpHをNaOH、アンモニア、KOHなどの適切な塩基を加えることによって2から6.5の間、好ましくは2.5から5の間、最も好ましくは3から4の間の値に調整することができる。pHを所望の値に調整した後に、適切な塩基を加えることによってpHをその所望の値に保つことができる。これらの条件下で遊離アミノ酸を含む沈殿物を形成することができる。適切な時間の後、既知の手法を用いて沈殿物を濾過して取り除くことができる。その濾液はアミノ酸メチルエステルを含む。濾液のpHを、1から6の間、好ましくは1から4の間、最も好ましくは1.5から3の間のpHにした後に、既知の手法を用いて蒸発によりアルコールを除去してもよい。 精製のステップの別の実施形態は、アミノ酸メチルエステル誘導体および少量の遊離アミノ酸を含有する有機相と、遊離アミノ酸を含有する水相と、場合によっては塩とを含む二相または多相系の形成を伴う。これは、ステップ(a)で得られた混合物のpHをNaOH、アンモニア、KOHなどの適切な塩基を加えることにより7.5から10の間、好ましくは8.5から9.5の間、最も好ましくは8.8から9.2の間の値に調整することによって達成することができる。別の実施形態ではステップ(a)で得られた反応混合物を、適切な量の水、またはアルコール、または水とアルコールの混合物に加え、続いてpHをNaOH、アンモニア、KOHなどの適切な塩基を加えることにより7.5から10の間、好ましくは8.5から9.5の間、最も好ましくは8.8から9.2の間の値に調整することができる。pHを所望の値に調整した後に、適切な塩基を加えることによってpHをその所望の値に保つことができる。任意選択で水は、塩(例えばNaCl)の水溶液の形態であることもできる。遊離アミノ酸もまた、沈殿物を形成することができる。多相系中の様々な相は、既知の手法を用いて分離することができる。任意選択で有機相は、水または塩水溶液で洗浄することができる。収率の減損を避けるために、洗液の水相を適切なプロセスの流れに再利用することができる。このプロセスの流れは、ステップ(a)後または上記pH調整後に得られる反応混合物であることができる。 精製のステップの高度に好ましい実施形態は、さきの2つの実施形態を組み合わせる、すなわち先ずステップ(a)で得られた混合物のpHを2から6.5の間、好ましくは2.5から5の間、最も好ましくは3から4の間の値に調整し、形成される沈殿物を濾過して除き、次いで得られた濾液のpHを7.5から10の間、好ましくは8.5から9.5の間、最も好ましくは8.8から9.2の間の値に調整し、得られた多相系中の様々な相を既知の手法を用いて分離する。[実施例][比較例][メタノールの連続添加および蒸留によるD−フェニルグリシン−メチルエステル(PGM)溶液の合成] この実験は、本質的には欧州特許出願公開第A−0544205号明細書の記載と同様だが次の修正を加えて行った。すなわち欧州特許出願公開第A−0544205号明細書における場合のL−フェニルアラニンまたはL−アスパラギン酸またはL−バリンの代わりにD−フェニルグリシンを使用し、また温度はより低い(欧州特許出願公開第A−0544205号明細書における85〜90℃の代わりに73℃)。 D−フェニルグリシン135gをメタノール252mL(200g)中に懸濁させ、濃硫酸107gを加えた。この混合物を2時間還流状態で約73℃に保った。このリアクターは、タップ付き還流/蒸留装置を備える。還流の条件下ではタップを閉じ、一方、蒸留の間はタップを開く。乾燥メタノールを110g/時の投入速度でリアクター中へ投入した。同じ流量で蒸留除去する(タップ開)ことによってリアクター内の水位を一定に保った。結果を表1に示す。メタノール708gの添加後、比(本明細書中でさきに定義した)は91.0%であった。メタノール2400gを加えた後でさえ、比は94.7%に増加したに過ぎなかった。[実施例1][D−フェニルグリシン−メチルエステル(PGM)溶液の合成] D−フェニルグリシン135gをメタノール252mL(200g)中に懸濁させ、濃硫酸107gを加えた。この混合物を還流状態で約73℃に2時間保ち、真空ポンプを用いて減圧下で濃縮した。圧力は大気圧から20ミリバールまで低下し、同時に反応混合物の温度は40から80℃に上昇した。 第二部分のメタノール126mL(100g)を加え、その混合物を還流状態で約81℃に1時間保ち、上記の減圧下でさらに濃縮した。この手順をさらに3回繰り返した(メタノールの添加、還流、および濃縮)。最後にメタノール126mL(100g)を加え、その溶液をさらに1時間還流し、周囲温度まで冷却した。結果を表1に示す。最終の比は99.2%であり、メタノール700gが消費された。 その後、pHが2.3〜2.4になるまでアンモニア15mLを一定速度で35分のうちに加えた。次いで水75mLを加え、50℃未満の温度を保ちながらメタノールを減圧下で蒸留して除いた。最終PGM溶液のpHは2.0であった。 実施例1を比較例の結果と比較した場合、従来技術の方法(メタノールの連続的な添加および蒸留)の比較例は、実施例1で用いた方法(99.2%)と比べてずっと低い「比」(94.7%)を与える。さらに従来技術の方法は、同じ「比」を得るのにずっと多量のメタノールを消費する。例えば、93%の(低い)「比」を得るために比較例では約1400gのメタノールが使用され、一方、実施例1では21%に過ぎない300gが使用されるのみである。[実施例2][D−フェニルグリシン−メチルエステル(PGM)溶液の合成] D−フェニルグリシン90gをメタノール170mL中に懸濁させ、濃硫酸73.2gを加えた。この混合物を還流状態で約73℃に2時間保ち、真空ポンプを用いて減圧下で濃縮した。圧力は大気圧から20ミリバールに降下し、同時に反応混合物の温度は40から80℃に上昇した。 メタノール170mLを加え、その混合物を再び還流状態で2時間保ち、減圧下で濃縮した。さらに、メタノール170mLを加え、その混合物を還流状態で2時間保ち、減圧下で濃縮した。最後にメタノール125mLを加えた。本明細書中でさきに定義した「比」は、この段階で95%であった。 この溶液を、メタノール20mLを予め装入した第二リアクター中へ20℃で1時間のうちに投入した。pHをアンモニアで3.5に保った。固形物が形成され、それを濾過により取り除いた。得られた母液を水25mLで希釈し、減圧下で濃縮した(p=20mmHg、T=40〜45℃)。最後にD−フェニルグリシン−メチルエステル(PGM)溶液207.5gが得られた。得られた溶液の「比」は99%であった。[実施例3][D−ヒドロフェニルグリシン−メチルエステル(DHPGM)溶液の合成] D−ジヒドロフェニルグリシン(DHPG)90gをメタノール200mL中に懸濁させ、濃硫酸73.2gを加えた。この混合物を還流状態で73℃に2時間保ち、真空ポンプを用いて減圧下で濃縮した。圧力は大気圧から20ミリバールに降下し、同時に反応混合物の温度は40から80℃に上昇した。 メタノール170mLを加え、その混合物を再び還流状態で2時間保ち、減圧下で濃縮した。さらに、メタノール170mLを加え、その混合物を還流状態で2時間保ち、減圧下で濃縮した。最後にメタノール125mLを加えた。本明細書中でさきに定義した「比」は、この段階で94.8%であった。 この溶液を、メタノール20mLを予め装入した第二リアクター中へ20℃で1時間のうちに投入した。pHをアンモニアで3.5に保った。固形物が形成され、それを濾過により取り除いた。得られた母液を水25mLで希釈し、木炭(活性炭)3gで脱色し、減圧下で濃縮した(p=20mmHg、T=40〜45℃)。最後にDHPGM溶液217.6gが得られた。得られた溶液の「比」は99.2%であった。 a.遊離アミノ酸、メタノール、および強酸を含む反応混合物を還流させるステップと、 b.ステップ(a)で得られる前記混合物を濃縮するステップと、 c.メタノールを加えるステップと、 d.ステップ(a)〜(c)を2回以上繰り返すステップとを含むアミノ酸メチルエステルの合成方法。 ステップ(a)〜(c)が少なくとも2回繰り返される、請求項1に記載の方法。 前記アミノ酸は、アルファアミノ酸である、請求項1または2に記載の方法。 前記アルファアミノ酸が、D−フェニルグリシン、D−ジヒドロ−フェニルグリシン、またはD−4−ヒドロキシ−フェニルグリシンである、請求項3に記載の方法。 前記強酸が硫酸である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。