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タイトル:特許公報(B2)_ヘルペスウイルスの潜伏感染に関与する因子及びその利用
出願番号:2009534359
年次:2012
IPC分類:C12N 15/09,G01N 33/53,G01N 33/15,C07K 14/03,A01K 67/027,G01N 33/569


特許情報キャッシュ

近藤 一博 小林 伸行 JP 4920084 特許公報(B2) 20120210 2009534359 20080925 ヘルペスウイルスの潜伏感染に関与する因子及びその利用 株式会社ウイルス医科学研究所 506056240 特許業務法人原謙三国際特許事務所 110000338 近藤 一博 小林 伸行 JP 2007250461 20070927 20120418 C12N 15/09 20060101AFI20120329BHJP G01N 33/53 20060101ALI20120329BHJP G01N 33/15 20060101ALI20120329BHJP C07K 14/03 20060101ALN20120329BHJP A01K 67/027 20060101ALN20120329BHJP G01N 33/569 20060101ALN20120329BHJP JPC12N15/00 AG01N33/53 NG01N33/15 ZC07K14/03A01K67/027G01N33/569 J C12N 15/00-15/90 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq UniProt/GeneSeq PubMed DOMINGUEZ,G. et al,Human herpesvirus 6B genome sequence: coding content and comparison with human herpesvirus 6A,J. Virol.,1999年,Vol.73, No.10,pp.8040-8052 近藤一博 他,神経疾患及び消化器疾患の起因ウイルスの解明,特定疾患の微生物学的原因究明に関する研究,2007年 3月,平成18年度 総括・分担研究報告書,pp.13-18 近藤一博 他,神経疾患及び消化器疾患の起因ウイルスの解明,特定疾患の微生物学的原因究明に関する研究,2006年 3月,平成17年度 総括・分担研究報告書,pp.19-23 近藤一博,ヘルペスウイルス感染と疲労,ウイルス,2005年,Vol.55, No.1,pp.9-18 近藤一博,ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)とCFS,Prog. Med.,2005年,Vol.25,pp.1315-1319 近藤一博,ウイルスの潜伏感染タンパク質と疲労,Molecular Medicine,2004年,Vol.41, No.10,pp.1216-1221 KONDO K. et al.,Recognition of a novel stage of betaherpesvirus latency in human herpesvirus 6,J. Virol.,2003年,Vol.77, No.3,pp.2258-2264 KONDO K. et al.,Identification of human herpesvirus 6 latency-associated transcripts,J. Virol.,2002年,Vol.76, No.8,pp.4145-4151 15 JP2008067300 20080925 WO2009041501 20090402 38 20110913 吉森 晃 本発明は、ヘルペスウイルスの潜伏感染に関与する因子とその利用に係り、特に、ヘルペスウイルスの潜伏感染時に特異的に発現する新規タンパク質、及び該タンパク質をコードする遺伝子、並びにその利用に関するものである。 ヘルペスウイルス科のウイルスは、コアタンパク質のまわりに分子量80〜150×106ダルトンの複鎖線状DNAが162個のカプソメアからなる直径約100nmの20面体のカプシドの中に入っており、このヌクレオカプシドをエンベロープがとり囲み全体として約150〜200nmの大きさのウイルスである。ヘルペスウイルスは、ほとんどすべての哺乳動物や両生類において見出されており、特に、ヒトを宿主とするヘルペスウイルス科のウイルスは、ヒトヘルペスウイルス(HHV;human herpesvirus)と称される。HHVは、それぞれα(単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状ヘルペスウイルス等)、β(サイトメガロウイルス等)、及びγ(EBウイルス等)亜科に分類される。 このようなヘルペスウイルスは、「潜伏感染(latent infection)」を特徴とする。「潜伏感染」とは、ウイルスが宿主細胞内で感染性のウイルス粒子を産生せずに存続し続ける感染状態をいうが、この潜伏感染においても、ウイルス遺伝子及び該ウイルス遺伝子の存在を補助する遺伝子産物は宿主細胞内に保持されている。潜伏感染を示すヘルペスウイルスは、宿主に何らかの原因(例えば、加齢、体調不良(疲労を含む))により異常が発生した場合に、ウイルス粒子の産生が再開され多量のウイルスが複製されることが知られている(再活性化)。 すなわち、ヘルペスウイルスは、宿主に異常がなければ潜伏感染を続けるが、ひとたび宿主の身体に変調が生じ、宿主の危機を察知すると、別の健常な宿主を探すべく再活性化するという特異な性質を有する。 このようなヘルペス科のウイルスの生態を検討するためには、ウイルスの潜伏感染・再活性化に関する理解が不可欠である。しかし、ヘルペスウイルスのなかで、潜伏感染に関する知見が多いのはγ−ヘルペスウイルスに属するEBウイルスのみであり、その他のものに関しては不明な点が多い。 特に、β−ヘルペスウイルスの潜伏感染に関与する因子については、本発明者らが以前に明らかにした知見以外の情報は得られていないのが実情である。例えば、非特許文献1には、HHV−6は末梢血中の比較的分化度の高いマクロファージにおいて潜伏感染することが開示されており、宿主におけるHHV−6の潜伏感染部位が明らかにされている。また、非特許文献2には、HHV−6は初感染時に非常に高率に脳内に移行し、持続感染・潜伏感染を生じることが記載されている。非特許文献3には、HHV−6の潜伏感染時に発現する遺伝子(潜伏感染遺伝子)について開示されており、該遺伝子がウイルスの潜伏感染と再活性化を制御する働きを有することが示唆されている。 また非特許文献4には、HHV−6の潜伏感染状態には、比較的安定で遺伝子発現が活発な状態である「中間段階:intermediate stage」が存在し、潜伏感染遺伝子とこの遺伝子にコードされるタンパク質(潜伏感染タンパク質)がこの中間段階において多量に発現することが示されている。さらに非特許文献5では、慢性疲労症候群患者の血清中に中間段階で発現が亢進する潜伏感染タンパク質に対する抗体が存在することが記載されている。Kondo. K et al. Ltatent human herpesvirus 6 infection of human monocytes /macrophages (J Gen Virol 72:1401-1408, 1991)Kondo. K et al. Association of human herpesvirus 6 infection of the central nervous system with recurrence of febrile convulsions. (J Infect Dis 167:1197-1200, 1993.)Kondo. K et al. Identification of human herpesvirus 6 latency-associated transcripts. (J Virol. 76: 4145-4151, 2002)Kondo K et al. Recognition of a Novel Stage of Beta-Herpesvirus Latency in Human Herpesvirus 6. (J Virol. 77: 2258-2264, 2003)近藤一博著、「ヘルペスウイルス感染と疲労」、ウイルス、第55巻 第1号 p9-18 2005 しかしながら、疾患と特異的に関係する潜伏感染遺伝子及び潜伏感染タンパク質は同定されておらず、その機能や慢性疲労症候群の発症メカニズムとの関係も不明であった。さらに、HHV−6は、慢性疲労症候群以外の疾患にも関与している可能性がある。 それゆえ、HHV−6の感染と疾患との関連性を明らかにするとともに、疾患の客観的な診断やモデル動物の成立に資する技術を開発することが強く求められていた。 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、HHV−6の潜伏感染に関与する因子を特定するとともに、その利用法を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、HHV−6は潜伏感染・再活性化という特徴的な性質を有するゆえに、この潜伏感染・再活性化に関与する因子を同定することで、HHV−6の感染と精神障害との関連性について知見が得られるのではないかとの独自の考えに基づき、複雑高度な実験を繰り返したところ、HHV−6の潜伏感染に特異的な遺伝子が活発に発現する中間段階(intermediate stage)において発現する新規の遺伝子と、そこにコードされる新規のタンパク質Small protein encoded by the Intermediate Transcript of HHV-6 -1(SITH−1)を同定した。そして、これら遺伝子及び該遺伝子がコードするタンパク質SITH−1の機能解析を行ったところ、(i) SITH−1タンパク質は細胞内カルシウム濃度を上昇させる機能を有すること、(ii) またこれらSITH−1タンパク質に対する抗体が、気分障害患者では有意に検出される一方、健常者ではほとんど検出されない、という新事実を見出し、本願発明を完成させるに至った。本発明は、かかる新規知見に基づいて完成されたものであり、以下の発明を包含する。 (1)以下の(a)又は(b)に記載のタンパク質をコードする遺伝子。(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(b)配列番号1のアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性を有するタンパク質。 (2)配列番号2に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。 (3)配列番号2若しくは3に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。 (4)(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子にコードされるタンパク質。 (5)以下の(a)又は(b)に記載のタンパク質。(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(b)配列番号1のアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性を有するタンパク質。 (6)(4)又は(5)に記載のタンパク質を認識する抗体。 (7)(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子を含む組換え発現ベクター。 (8)(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子又は請求項7に記載の組換え発現ベクターを導入してなる形質転換体。 (9)(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子における少なくとも一部の塩基配列又はその相補配列をプローブとして用いた遺伝子検出器具。 (10)(4)又は(5)に記載のタンパク質における少なくとも一部のアミノ酸配列を有するポリペプチドをプローブとして用いた検出器具。 (11)被験対象生物において、(6)に記載の抗体が存在するか否かを判定する判定方法。 (12)上記判定方法は、(4)又は(5)に記載のタンパク質若しくはその部分断片を用いて、免疫学的に(6)に記載の抗体が存在するか否かを検出する(11)に記載の判定方法。 (13)上記判定方法は、被験対象生物から分離された生物学的試料を用いて行われる(11)又は(12)に記載の判定方法。 (14)(11)〜(13)のいずれかに記載の判定方法を行うための判定キット。 (15)以下に示す(i)〜(iii)から選択される物質のうち、少なくとも1つの物質を含む(14)に記載の判定キット。(i)(4)又は(5)に記載のタンパク質(ii)(i)の部分断片(iii)(i)又は(ii)を固定化した器具 (16)被験者が精神障害を有するか否かを診断する診断方法であって、(11)〜(13)のいずれかに記載の判定方法を用いて、該被験者において(6)に記載の抗体が存在しているか否かを判定する判定過程と、上記判定過程にて、(6)に記載の抗体が存在していると判定された場合、該被験者が慢性疲労症候群を罹患していると判断する判断過程と、を含む診断方法。 (17)上記診断方法は、被験者から分離された生物学的試料を用いて行われる(16)に記載の診断方法。 (18)被験動物が精神障害を有するか否かを診断する診断方法であって、(11)〜(13)のいずれかに記載の判定方法を用いて、該被験動物において請求項6に記載の抗体が存在しているか否かを判定する判定過程と、上記判定過程にて、(6)に記載の抗体が存在していると判定された場合、該被験動物が精神障害を有すると判断する判断過程と、を含む診断方法。 (19)(16)〜(18)のいずれかに記載の診断方法を行うための診断キット。 (20)以下に示す(i)〜(iii)から選択される物質のうち、少なくとも1つの物質を含む(19)に記載の診断キット。(i)(4)又は(5)に記載のタンパク質(ii)(i)の部分断片(iii)(i)又は(ii)を固定化した検出器具 (21)被験動物が精神障害のモデル動物として有用であるか否かを判定するモデル動物の判定方法であって、(18)に記載の診断方法により、上記被験動物が精神障害を有するか否かを診断する診断過程と、上記診断過程において、被験動物が精神障害を有することを指標として、上記被験動物が精神障害のモデル動物として有用であると判定する判定過程と、を備えるモデル動物の判定方法。 (22)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子、当該遺伝子産物、または上記(7)に記載の組換え発現ベクターを導入してなるモデル動物。 (23)向精神薬の候補物質をスクリーニングするスクリーニング方法であって、精神障害のモデル動物に被験物質を与える過程と、(18)に記載の診断方法により、上記モデル動物の精神障害が治癒又は改善されたか否かを診断する過程と、上記モデル動物の精神障害が治癒又は改善していることを指標として、上記被験物質が向精神薬の候補物質であると判定する過程と、を備えるスクリーニング方法。 なお、上記(23)のスクリーニング方法では、(18)に記載の診断方法に合わせて、例えば、(これまでに知られている)動物の行動異常や驚愕反応などを用いた診断方法を行うことがさらに好ましい。 本発明に係る遺伝子又はタンパク質は、ヘルペスウイルスの潜伏感染時に特異的に発現するものであって、潜伏感染と再活性化とを制御する機能を有する。また、後述するように、本発明に係るタンパク質の抗体は精神障害患者にて有意に存在していることが明らかとなったため、該抗体の有無を検出することにより、精神障害について客観的に診断することができるという効果を奏する。 また、本発明に係る遺伝子又はタンパク質は、ここに記載した以外にも、種々の疾患の診断への利用可能性があり、また、薬剤のスクリーニング方法、モデル動物の作成方法、各種キット等への利用も可能である。 本発明の他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明によって明白になるであろう。潜伏感染特異的遺伝子の構造と解析用プライマーの位置を模式的に示す図である。HHV−6遺伝子産物のPCR法による増幅の結果を示す図である。新規潜伏感染特異的遺伝子mRNAのRACE法による解析の結果を示す図である。Yeast Two-hybrid法により、タンパク質SITH−1に結合する宿主タンパク質を同定した結果を示す図である。タンパク質SITH−1によってアストロサイト様グリア細胞株内CAMLの増加を示す図である。SITH−1によるグリア細胞内カルシウム濃度の上昇を示す図である。精神障害をもつ患者のSITH−1に対する抗体価を示す図である。尾懸垂テストによるSITH−1の効果の検討結果を示す図である。強制水泳テストによるSITH−1の効果の検討結果を示す図である。驚愕反応(Prepulse inhibition)によるSITH−1の効果の検討結果を示す図である。SITH−1をアデノウイルスベクターによりマウスのグリア細胞にて発現させ、3週間後に滑車回しにて自発運動量を測定した結果を示す図である。SITH−1をレンチウイルスベクターによりマウスのグリア細胞にて発現させ、8週間後に滑車回しにて自発運動量を測定した結果を示す図である。SITH−1を指標として、うつ病を併発する他の疾患について診断した結果を示す図である。 本発明の実施の一形態について以下に詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。 まず、本発明の理解の一助とすべく、本発明者らが本発明を完成させるに至った経緯を簡単に説明する。本発明者らは、ヒトヘルペスウイルスのうち、HHV−6の感染が精神障害、特に気分障害を伴う精神障害の一原因である可能性が高いと推測した。その理由は、(i) 以前からHHV−6が原因の一つであると言われる慢性疲労症候群(CFS;chronic fatigue syndrome)の症状のなかに、うつ症状など、精神障害によくみられる症状が認められること、(ii) HHV−6が脳内で潜伏感染を生じること、(iii) さらにCFS患者の血清に、これまでに同定してきたHHV−6の潜伏感染特異的遺伝子のタンパク質に反応する抗体や、未だ遺伝子やタンパク質は同定していないものの、HHV−6の潜伏感染細胞で発現している未知のタンパク質に反応する抗体が高率に検出されること、等による。 また、本発明者らは、HHV−6が脳内では、ヒトの思考や感情をつかさどる前頭葉や海馬領域などに主として潜伏感染しているという事実や、脳内に潜伏感染を生じるウイルスはHHV−6を含めてほんの数種類しかないという事実から、HHV−6と精神障害との関係を推測した。さらに、HHV−6は、セロトニンなどのうつ病と関係する脳内物質の代謝に重要な働きをするアストロサイトなどのグリア細胞で潜伏感染を生じることが知られており、この点からもHHV−6が気分障害などの精神障害と関係する可能性があると本発明者らは独自の考えに至った。 このため、CFS患者のなかにHHV−6の脳への潜伏感染が原因となって精神症状を生じるものが相当の率で含まれているのではないかと本発明者らは推察した。なかでも、本発明者は、特にHHV−6と、うつ病や躁うつ病などの気分障害との関連性を疑っている。 気分障害は、うつ病や躁うつ病などの精神障害に見られる症状で、うつ症状のみが現れる“うつ病”と、躁状態とうつ状態を繰り返す“躁うつ病”がその代表である。原因として、ストレス、遺伝子異常、感染などの様々なものが挙げられているが未だ確定したものはない。気分障害は最近増加傾向にあり、大きな社会問題となってきており、早急な病因・病態の解明、診断方法、及び治療方法の開発が望まれている。なかでも、気分障害の診断は定性的になりがちであり、客観的な診断が困難であるという問題もある。また、気分障害の研究や治療法の開発に寄与できるモデル動物の開発も不十分であり、原因究明や治療法の開発を遅らせる原因となっている。 このため、HHV−6の感染と気分障害・精神障害との関連性を明らかにするとともに、気分障害・精神障害の客観的な診断やモデル動物の成立に資する技術を開発する必要があると本発明者らは考えた。 なお、言うまでもないことであるが、これらの推測は本発明者らが長年本研究分野において鋭意検討を行ってきた結果たどり着いた独自の推測であり、通常の当業者が容易に想到できる類のものではない。 以下、本発明に係るタンパク質、遺伝子等に関して、順に詳説していく。 (1)本発明に係るタンパク質、遺伝子 (1−1)構造 本発明は、ヘルペスウイルスの潜伏感染に関与する因子、より詳細にはヘルペスウイルスの潜伏感染時に特異的に発現するタンパク質及び該タンパク質をコードする遺伝子を提供するものである。ここで「ヘルペスウイルスの潜伏感染時に特異的に発現する」とは、ヘルペスウイルスが感染している宿主において、ヘルペスウイルスが潜伏感染している(増殖感染していない)際に、特異的に、ヘルペスウイルス由来の遺伝子又は遺伝子産物が発現することをいう。 かかるタンパク質及び遺伝子としては、例えば、(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、及びこのタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、後述する実施例に示すように、ヒトヘルペスウイルス−6(HHV−6)の潜伏感染時に特異的に発現するタンパク質として単離・同定されたものであり、以下Small protein encoded by the Intermediate Transcript of HHV-6-1 (SITH−1)タンパク質と称する。SITH−1タンパク質は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、159アミノ酸からなる、分子量約17.5kDaのタンパク質である。 SITH−1タンパク質は、SITH−1遺伝子によってコードされている。このSITH−1遺伝子のcDNAは、配列番号3に示すように、1795塩基対(約1.79kbp)のサイズを有しており、954番目から956番目の塩基配列が開始コドン(Kozak ATG)であり、1431番目から1433番目の塩基配列が終止コドン(TAA)である。したがって、上記SITH−1遺伝子は、配列番号3に示す塩基配列のうち、954番目から1430番目までの塩基配列をオープンリーディングフレーム(ORF)領域として有しており、このORFは、477塩基対(約0.48kbp)のサイズを有している。SITH−1のcDNAのうち、ORF領域を表す塩基配列を配列番号2に示す。なお、配列番号2に示す塩基配列は、ストップコドンの3塩基を含んで記載している。 また、本発明に係るタンパク質及び遺伝子として、(b)配列番号1のアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつヘルペスウイルスの潜伏感染時に特異的に発現するタンパク質、及び該タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。 上記「1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ペプチド作製法により置換、欠失、挿入、及び/又は付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されることを意味する。このように、上記(b)のタンパク質は、上記(a)のタンパク質の変異タンパク質であるといえる。なお、ここでいう「変異」は、主として公知の変異タンパク質作製法により人為的に導入された変異を意味するが、天然に存在する同様の変異タンパク質を単離精製したものであってもよい。 さらに、本発明に係るタンパク質として、(c)配列番号2に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつヘルペスウイルスの潜伏感染時に特異的に発現するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。 上記「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ」するとは、少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97%の同一性が配列間に存在するときにのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」の具体的な例として、例えば、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する条件を挙げることができる。また、上記ハイブリダイゼーションは、J.Sambrook et al. Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができ、特に限定されるものではない。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなる(ハイブリダイズし難くなる)。 なお、本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「核酸」又は「核酸分子」と交換可能に使用される。「ポリヌクレオチド」はヌクレオチドの重合体を意味する。したがって、本明細書での用語「遺伝子」には、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAやRNA(mRNA等)を包含する。アンチセンス鎖は、プローブとして又はアンチセンス薬剤として利用できる。「DNA」には、例えばクローニングや化学合成技術、又はそれらの組み合わせで得られるようなcDNAやゲノムDNA等が含まれる。すなわち、DNAとは、動物のゲノム中に含まれる形態であるイントロンなどの非コード配列を含む「ゲノム」形DNAであってもよいし、また逆転写酵素やポリメラーゼを用いてmRNAを経て得られるcDNA、すなわちイントロンなどの非コード配列を含まない「転写」形DNAであってもよい。さらに、本発明に係る遺伝子は、上記(a)又は(b)に記載のアミノ酸をコードする配列以外に、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。また、これらのmRNAまたはcDNAの翻訳領域の末端及び/又は内部に調節配列やポリアデニル配列等の任意のポリヌクレオチドが含まれていてもよい。また、本発明に係るタンパク質が複数の対立遺伝子によってコードされ得る場合には、全ての対立遺伝子、それらの転写産物、およびcDNAがかかる核酸に含まれる。なお、本明細書において、「核酸」なる語には、任意の単純ヌクレオチド及び/又は修飾ヌクレオチドからなるポリヌクレオチド、例えばcDNA、mRNA、全RNA、hnRNA、等が含まれる。「修飾ヌクレオチド」には、イノシン、アセチルシチジン、メチルシチジン、メチルアデノシン、メチルグアノシンを含むリン酸エステルの他、紫外線や化学物質の作用で後天的に発生し得るヌクレオチドも含まれる。 用語「塩基配列」は、「核酸配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(それぞれA、G、C及びTと省略される)の配列として示される。また、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドの「塩基配列」は、DNA分子又はポリヌクレオチドに対してのデオキシリボヌクレオチドの配列を意図し、そしてRNA分子又はポリヌクレオチドに対してのリボヌクレオチド(A、G、C及びU)の対応する配列(ここで特定されるデオキシヌクレオチド配列における各チミジンデオキシヌクレオチド(T)は、リボヌクレオチドのウリジン(U)によって置き換えられる)を意図する。 例えば、デオキシリボヌクレオチドの略語を用いて示される「配列番号2又は4の配列を有するRNA分子」とは、配列番号2又は4の各デオキシヌクレオチドA、G又はCが、対応するリボヌクレオチドA、G又はCによって置換され、そしてデオキシヌクレオチドTが、リボヌクレオチドUによって置き換えられる配列を有するRNA分子を示すことを意図する。また、「配列番号2又は4に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド又はそのフラグメント」とは、配列番号2又は4の各デオキシヌクレオチドA、G、C及び/又はTによって示される配列を含むポリヌクレオチド又はその断片部分を意図する。 また、本発明に係る遺伝子の断片(部分配列)は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマー、又はハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。かかる断片(ポリヌクレオチド)は、本発明に係る遺伝子のホモログ、オルソログを特異的にPCR増幅できるし、また本発明に係る遺伝子のホモログ、オルソログに特異的にハイブリダイズするハイブリダイゼーションプローブとしてもまた利用可能である。すなわち、好ましい実施形態において、本発明に係る遺伝子の断片は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による標的配列の増幅のためのプライマーとして、又は従来のDNAハイブリダイゼーション技術に従ったプローブとしてのいずれかで診断的に有用であるといえる。 また、本発明に係る遺伝子の断片の他の用途としては、Vermaら、Human Chromosomes: a Manual of Basic Techniques, Pergamon Press, New York (1988) に記載の、正確な染色体位置を提供するための分裂中期染色体展開物に対するインサイチュハイブリダイゼーション(例えば、FISH);及び、特定の組織における本発明に係るmRNA発現を検出するためのノーザンブロット分析が挙げられる。 また、本発明に係る遺伝子には、以下の物が含まれ得るがこれらに限定されるものではない:それ自体によって、成熟タンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド;成熟したタンパク質のコード配列及びさらなる配列(例えば、リーダー配列をコードする配列)(例えば、プレタンパク質配列又はプロタンパク質配列又はプレプロタンパク質配列);イントロン、非コード5’配列及び非コード3’配列(例えば、転写、mRNAプロセシング(スプライシング及びポリアデニル化シグナルを含む)において役割を担う転写非翻訳配列);さらなる機能性を提供するようなさらなるアミノ酸をコードするさらなるコード配列。 したがって、例えば、タンパク質をコードする配列は、マーカー配列(例えば、融合されたタンパク質の精製を容易にするペプチドをコードする配列)に融合され得る。本発明の好ましい実施態様において、マーカーアミノ酸配列は、ヘキサ−ヒスチジンペプチド(例えば、pQEベクター(Qiagen, INC.)において提供されるタグ)であってもよい。Gentzら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 821-824 (1989) において記載されているように、ヘキサ−ヒスチジンペプチドは、融合タンパク質の簡便な精製に有用である。また、これ以外にも、多くの公的及び/又は商業的に入手可能なマーカーアミノ酸配列を利用可能である。例えば、Wilsonら、Cell 37: 767 (1984) によって記載されているように、「HA」タグは、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タンパク質由来のエピトープに対応する精製のために有用なペプチドである。他にも、本発明に係るタンパク質のN末端又はC末端にFcを融合させた融合タンパク質も精製のために有用であろう。 また、本発明には、本発明に係る遺伝子の変異体も含まれる。かかる変異体は、天然の対立遺伝子変異体のように、天然に生じ得る。「対立遺伝子変異体」によって、生物の染色体上の所定の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの交換可能な形態の1つが意図される。また、天然に存在しない変異体は、例えば当該分野で公知の変異誘発技術を用いて生成され得る。このような変異体は、上述したように、1又は数個のヌクレオチド置換、欠失、又は付加によって生成される変異体を含む。置換、欠失、又は付加は、1つ以上のヌクレオチドを含み得る。変異体は、コードもしくは非コード領域、又はその両方において変化され得る。コード領域における変異は、保存的もしくは非保存的なアミノ酸置換、欠失、又は付加を生成し得る。 また、本発明に含まれる好ましいタンパク質としては、成熟タンパク質の他、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメイン、又は膜貫通ドメインの全て又は一部を欠失した細胞外及び細胞内ドメインを含むタンパク質が挙げられる。本明細書中で使用される場合、用語「タンパク質」は、「ポリペプチド」又は「ペプチド」と交換可能に使用される。さらに、本発明は、配列番号2に示される塩基配列によってコードされるタンパク質の1又は数個のアミノ酸が置換、付加又は欠失したポリペプチドを提供する。保存的もしくは非保存的なアミノ酸置換、欠失、又は付加が好ましく、特に好ましいものは、サイレント置換、付加、及び欠失であり、これらは、本発明に係るタンパク質又はその一部の特性及び活性を変化させない。これらの点において特にまた好ましいものは、保存的置換であるといえる。 さらに、本発明に係るタンパク質は、天然から分離されたものだけでなく、化学合成されても組換え生成されてもよい。つまり、本発明に係るタンパク質は、細胞、組織などから単離精製された状態であってもよいし、タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞に導入して、そのタンパク質を細胞内発現させた状態であってもよい。また、本発明に係るタンパク質は、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。 また、本発明は、本明細書中に記載のタンパク質のエピトープ保有部分のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。本発明に係るタンパク質のエピトープ保有部分のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、少なくとも6個、7個、8個、9個、10個のアミノ酸を有するポリペプチドの部分を含んでいればよいが、さらに、配列番号2又は4に示される塩基配列によってコードされるタンパク質や配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の全アミノ酸配列の長さまでの任意の長さ(全体を含む)のエピトープ保有部分ポリペプチドもまた含まれる。 すなわち、本発明は、本発明に係るタンパク質のエピトープ保有ペプチドを提供する。後述する実施例に示すように、本発明に係るタンパク質は免疫原性である。したがって、本発明に係るタンパク質において、抗体応答を惹起するエピトープ部分は、当該分野で公知の方法により同定することができる。例えば、Geysen, H. M. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3998-4002 (1984) には、酵素−結合免疫吸着アッセイにおける反応に利用可能な程度に、十分に純粋な何百というペプチドの固体支持体上の迅速な同時合成の手順が開示されている。合成ペプチドの抗体との相互作用は、次いで、それらを支持体から除去することなく容易に検出可能である。この様式において、所望のタンパク質の免疫原性エピトープを保有するペプチドは、当業者により日常的に同定され得る。例えば、口蹄疫ウイルスのコートタンパク質における免疫学的に重要なエピトープは、タンパク質の213のアミノ酸配列全体を覆う全ての208の可能なヘキサペプチドの重複セットの合成による7アミノ酸の解明によりGeysenらによって位置付けされた。次いで、全ての20アミノ酸が順にエピトープ内の各位置で置換されたペプチドの完全な置換セットが合成され、そして抗体との反応のための特異性を与える特定のアミノ酸が決定された。したがって、本発明のエピトープ保有ペプチドのペプチドアナログは、この方法により日常的に作製され得る。Geysen (1987) の米国特許第4,708,781号には、所望のタンパク質の免疫原性エピトープを保有するペプチドを同定するこの方法がさらに詳細に記載されている。 「免疫原性エピトープ」は、タンパク質全体が免疫原である場合、抗体応答を誘発するタンパク質の一部として定義される。これらの免疫原性エピトープは、分子上の2、3の焦点に制限されると考えられている。一方では、抗体が結合し得るタンパク質分子の領域は、「抗原性エピトープ」と定義され得る。タンパク質の免疫原性エピトープの数は、一般には、抗原性エピトープの数よりも少ない。例えば、Geysen, H. M. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3998-4002 (1984) を参照のこと。 本発明の抗原性エピトープ保有ペプチドは、本発明に係るタンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体を含む抗体を惹起するのに有用である。したがって、抗原エピトープ保有ペプチドで免疫化されたドナーからの脾臓細胞の融合により得られるハイブリドーマの大部分は、一般に天然のタンパク質と反応性がある抗体を分泌する。抗原性エピトープ保有ペプチドにより惹起された抗体は、模倣タンパク質を検出するのに有用であり、そして異なるペプチドに対する抗体が、翻訳後プロセシングを受けるタンパク質前駆体の種々の領域の末路を追跡するために使用され得る。免疫沈降アッセイにおいて、短いペプチド(例えば、約9アミノ酸)でさえ、より長いペプチドに結合しそして置換し得ることが示されているので、ペプチド及び抗ペプチド抗体は、模倣タンパク質についての種々の定性的又は定量的アッセイ、例えば、競合的アッセイにおいて使用され得る。例えば、Wilson, I. A. ら、Cell 37: 767-778 (1984) 777を参照のこと。本発明の抗タンパク質抗体もまた、模倣タンパク質の精製(例えば、当該分野で周知の方法を使用して、吸着クロマトグラフィーにより)に有用である。 上記のガイドラインにしたがって設計された本発明の抗原性エピトープ保有ペプチドは、好ましくは本発明に係るタンパク質のアミノ酸配列内に含まれる少なくとも7、より好ましくは少なくとも9、そして最も好ましくは約15〜約30アミノ酸の間の配列を含む。しかし、本発明に係るタンパク質のアミノ酸配列の約30〜約50アミノ酸又は全体までの任意の長さ及び全体を含む、本発明のタンパク質のアミノ酸配列のより大部分を含むペプチド又はポリペプチドもまた、本発明のエピトープ保有ペプチドであると考えられ、そしてまた模倣タンパク質と反応する抗体を誘導するのに有用である。好ましくは、エピトープ保有ペプチドのアミノ酸配列は、水性溶媒中で実質的な溶解性を提供するように選択され(すなわち、その配列は、比較的親水性残基を含み、そして高度な疎水性配列は好ましくは回避される);そしてプロリン残基を含む配列が特に好ましい。 本発明のエピトープ保有ペプチドは、本発明に係る遺伝子を使用する組換えタンパク質を作製するための任意の従来の手段により産生され得る。例えば、短いエピトープ保有アミノ酸配列は、組換え体産生及び精製の間、並びに抗タンパク質抗体を産生するための免疫化の間、キャリアとして作用するより大きなポリペプチドに融合され得る。エピトープ保有ペプチドはまた、化学合成の公知の方法を使用して合成され得る。 また、本発明には、翻訳されたタンパク質の小胞体の管腔内へか、周辺質空間内へか、又は細胞外環境内への分泌のために、適切な分泌シグナルが、発現されるタンパク質中に組み込まれたものが含まれ得る。かかる分泌シグナルは、ポリペプチドに対して内因性であってもよいし、それらは異種シグナルであってもよい。 したがって、本発明に係るタンパク質は、融合タンパク質のような改変された形態で発現され得、そして分泌シグナルだけでなく、付加的な異種の機能的領域も含み得る。例えば、付加的なアミノ酸、特に荷電性アミノ酸の領域が、宿主細胞内での、精製の間の、又は続く操作及び保存の間の、安定性及び持続性を改善するために、タンパク質のN末端に付加され得る。また、ペプチド部分が、精製を容易にするためにタンパク質へ付加され得る。そのような領域は、タンパク質の最終調製の前に除去され得る。とりわけ、分泌又は排出を生じるため、安定性を改善するため、及び精製を容易にするためのペプチド部分のタンパク質への付加は、当分野でよく知られており、そして日常的な技術である。 好ましい融合タンパク質は、タンパク質の可溶化に有用な免疫グロブリン由来の異種領域を含む。例えば、EP A 0 464 533(また、カナダ対応出願2045869)は、別のヒトタンパク質又はその一部とともに免疫グロブリン分子における定常領域の種々の部分を含む融合タンパク質を開示している。多くの場合、融合タンパク質中のFc部分は、治療及び診断における使用に十分に有利であり、従って、例えば改善された薬物動態学的特性を生じる(EP A 0232 262)。一方、いくつかの使用について、融合タンパク質が、記載される有利な様式で、発現され、検出され、及び精製された後にFc部分が欠失され得ることが望ましい。これは、Fc部分が、治療及び診断における使用の妨害であると判明する場合(例えば、融合タンパク質が免疫のための抗原として使用されるべき場合)である。薬物スクリーニングにおいて、例えばhIL−5のようなヒトタンパク質は、hIL−5のアンタゴニストを同定するための高処理能力スクリーニングアッセイの目的でFc部分と融合されている。D. Bennettら、Journal of Molecular Recognition Vol. 8: 52-58 (1995) 、及びK. Johansonら、The Journal of Biological Chemistry Vol. 270,No. 16, 9459-9471頁 (1995) を参照のこと。 (1−2)機能 本発明に係るタンパク質の機能について、上述のSITH−1タンパク質を例に挙げて詳細に説明する。 SITH−1遺伝子は、後述する実施例に示すように、HHV−6が潜伏感染している細胞の細胞質において常に発現している一方、増殖感染細胞では発現が認められなかった。SITH−1タンパク質をコードする遺伝子は、これまでに報告したHHV−6潜伏感染特異的遺伝子(H6LT)と相補鎖の関係にあるDNAにコードされ、その発現は、HHV−6の潜伏感染の中間段階において増強する。 これらの事実から、SITH−1タンパク質は、HHV−6の潜伏感染時に特異的に発現するタンパク質であると考えられ、これまで同定されているHHV−6の潜伏感染に関与するタンパク質とは明確に異なるものであることがわかった。 さらに、本発明者は、SITH−1タンパク質の機能解析を進めた結果、SITH−1タンパク質は、宿主タンパク質であるCAML(calcium-modulating cyclophilin ligand、Accession #; U18242、)と結合し、アストロサイトなどのグリア細胞の細胞内カルシウム濃度を上昇させることがわかった。CAMLは宿主生体内において、脳とリンパ球に多く存在し、細胞内のカルシウム濃度を上昇させることが知られているタンパク質である。また、SITH−1タンパク質の発現による細胞内カルシウム濃度の上昇は、潜伏感染細胞内の全般的なシグナル伝達の活性化をもたらし、HHV−6の効率的な再活性化に寄与するものと考えられる。 ここでいう「グリア細胞」とは、アストロサイト(astrocyte)、オリゴデンドロサイト(oligodendrocyte)、マイクログリア(microglia)及び上衣細胞(ependymal cell)といった中枢神経系のグリア細胞の成熟細胞、前駆細胞を含むあらゆるグリア細胞を意図するが、その他にも末梢神経系における外套細胞(satellite cell)、シュワン細胞(Schwann cell)及び末梢グリア細胞(terminal gliocyte)を含めることができる。 HHV−6は脳内のアストロサイトなどのグリア細胞で潜伏感染することが知られており、潜伏感染時や活性の高い潜伏感染状態である中間段階にあるHHV−6がSITH−1を発現させると、アストロサイトなどのグリア細胞内のカルシウム濃度が上昇するものと考えられる。最近の精神科学領域の研究により、脳の細胞における細胞内カルシウム濃度を上昇は、気分障害などの精神障害と大いに関係するものと考えられている。 また、実際に、実施例で示す様に、SITH−1タンパク質をマウスのアストロサイトなどのグリア細胞で発現させると、精神障害である気分障害様の症状と過敏性の亢進が生じることが判った。このことは、アストロサイトなどのグリア細胞で潜伏感染しているHHV−6がSITH−1タンパク質を介して精神障害を引き起し得ることを強く示唆している。 また、HHV−6は、アストロサイトだけでなく、ミクログリア等の他のグリア細胞にも潜伏感染し得ることから、うつ病や躁うつ病等の精神障害の原因が、アストロサイトのみならず、他のグリア細胞が原因である可能性があるといえる。 以上の知見より、本発明に係るタンパク質は、宿主のタンパク質であるCAMLと結合する活性を保持し、細胞内カルシウム濃度を上昇させる機能を有するものである。また、本発明に係るタンパク質を、このタンパク質が最も強く発現すると考えられるアストロサイトなどのグリア細胞で発現させることにより、精神障害を誘導できることが判明した。それゆえ、本発明に係るタンパク質は、ヘルペスウイルスの潜伏感染時または再活性化初期に発現し、宿主に精神障害を生じさせる機能を有すると考えられる。 (1−3)遺伝子及びタンパク質の取得方法 本発明に係る遺伝子及びタンパク質の取得方法(又は生産方法)は特に限定されるものではないが、代表的な方法として次に示す各方法を挙げることができる。 <タンパク質の取得方法> 本発明に係るタンパク質を取得する方法(又はタンパク質の生産方法)は、上述したように特に限定されるものではないが、まず、本発明に係るタンパク質を含有する生物学的試料(例えば、細胞、組織、生物個体等)などから単純精製する方法を挙げることができる。また精製方法についても特に限定されるものではなく、公知の方法で細胞や組織から細胞抽出液を調製し、この細胞抽出液を公知の方法、例えばカラム等を用いて精製すればよい。例えば、細胞又は組織より抽出した粗タンパク質画分を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけ、本発明に係るタンパク質の精製・分離を行うことができる。 また、その他の本発明に係るタンパク質を取得する方法として、遺伝子組み換え技術等を用いる方法も挙げられる。この場合、例えば、本発明に係る遺伝子をベクターなどに組み込んだ後、公知の方法により、発現可能に宿主細胞に導入し、細胞内で翻訳されて得られる上記タンパク質を精製するという方法などを採用することができる。遺伝子の導入(形質転換)や遺伝子の発現等の具体的な方法については後述する。 なお、このように宿主に外来遺伝子を導入する場合、外来遺伝子の発現のため宿主内で機能するプロモーターを組み入れた発現ベクター、及び宿主には様々なものが存在するので、目的に応じたものを選択すればよい。産生されたタンパク質を精製する方法は、用いた宿主、タンパク質の性質によって異なるが、タグの利用等によって比較的容易に目的のタンパク質を精製することが可能である。 変異タンパク質を作製する方法についても、特に限定されるものではない。例えば、部位特異的突然変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, Gene 152,271-275(1995)他)、PCR法を利用して塩基配列に点変異を導入し変異タンパク質を作製する方法、あるいはトランスポゾンの挿入による突然変異株作製法などの周知の変異タンパク質作製法を用いることができる。これら方法を用いることによって、上記(a)のタンパク質をコードするcDNAの塩基配列において、1又は数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されるように改変を加えることによって作製することができる。また、変異タンパク質の作製には、市販のキットを利用してもよい。 本発明に係るタンパク質の取得方法は、上述に限定されることなく、例えば、市販されているペプチド合成器等を用いて化学合成されたものであってもよい。またその他の例としては、無細胞系のタンパク質合成液を利用して、本発明に係る遺伝子から本発明に係るペプチドを合成してもよい。 <遺伝子の取得方法> 本発明に係る遺伝子を取得する方法(又は遺伝子の生産方法)も上述したように特に限定されるものではないが、例えば、ディファレンシャルスクリーニング(サブトラクションクローニング)を利用する方法を挙げることができる。この方法では、公知の技術に従って、試験管内での直接的ハイブリダイゼーションを繰り返し、目的のcDNA(本発明に係る遺伝子)を濃縮すればよい。 上記ディファレンシャルスクリーニングにおける各ステップについては、通常用いられる条件の下で行えばよい。これによって得られたクローンは、制限酵素地図の作成及びその塩基配列決定(シークエンシング)によって、さらに詳しく解析することができる。これらの解析によって、本発明に係る遺伝子配列を含むDNA断片を取得したか容易に確認することができる。 また、本発明に係る遺伝子を取得する方法として、公知の技術により、本発明に係る遺伝子を含むDNA断片を単離し、クローニングする方法が挙げられる。例えば、上記cDNA配列の一部配列と特異的にハイブリダイズするプローブを調製し、ゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーをスクリーニングすればよい。このようなプローブとしては、上記各cDNA配列又はその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプローブであれば、いずれの配列・長さのものを用いてもよい。 また、本発明に係る遺伝子を取得する方法として、PCR等の増幅手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、本発明に係る遺伝子のcDNA配列のうち、5’側及び3’側の配列(又はその相補配列)の中からそれぞれプライマーを調製し、これらプライマーを用いてゲノムDNA(又はcDNA)等を鋳型にしてPCR等を行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明に係る遺伝子を含むDNA断片を大量に取得できる。 また遺伝子配列情報をもとにして、該配列を持つポリヌクレオチドを、公知の化学合成を用いて合成してもよい。 (2)本発明に係る抗体 本発明に係る抗体は、本発明に係るタンパク質、例えば前記(a)又は(b)に記載のタンパク質、又はその部分ペプチドを抗原として、公知の方法によりポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体として得られる抗体である。公知の方法としては、例えば、文献(Harlowらの「Antibodies : A laboratory manual(Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1988))、岩崎らの「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA、講談社(1991)」」に記載の方法が挙げられる。このようにして得られる抗体は、本発明に係るタンパク質の検出・測定などに利用できる。 例えば、上記(1−1)欄に記載した、本発明のエピトープ保有ペプチドは、当該分野に周知の方法によって抗体を誘導するために使用される。例えば、Chow, M. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 910-914; 及び Bittle, F. J. ら、 J. Gen. Virol. 66: 2347-2354 (1985) を参照のこと。一般には、動物は遊離ペプチドで免疫化され得る;しかし、抗タンパク質抗体力価はペプチドを高分子キャリア(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又は破傷風トキソイド)にカップリングすることにより追加免疫され得る。例えば、システインを含有するペプチドは、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)のようなリンカーを使用してキャリアにカップリングされ得、一方、他のペプチドは、グルタルアルデヒドのような、より一般的な連結剤を使用してキャリアにカップリングされ得る。ウサギ、ラット、及びマウスのような動物は、遊離又はキャリア−カップリングペプチドのいずれかで、例えば、約100μgのペプチド又はキャリアタンパク質及びFreundのアジュバントを含むエマルジョンの腹腔内及び/又は皮内注射により免疫化される。いくつかの追加免疫注射が、例えば、固体表面に吸着された遊離ペプチドを使用してELISAアッセイにより検出され得る有用な力価の抗タンパク質抗体を提供するために、例えば、約2週間の間隔で必要とされ得る。免疫化動物からの血清における抗タンパク質抗体の力価は、抗タンパク質抗体の選択により、例えば、当該分野で周知の方法による固体支持体上のペプチドへの吸着及び選択された抗体の溶出により増加され得る。 また、本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、IgM及びこれらのFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fcフラグメント)を意味し、例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体、抗イディオタイプ抗体及びヒト化抗体が挙げられるがこれらに限定されるものではない。 本明細書中で使用される場合、用語「本発明に係るタンパク質を認識する抗体」は、上述の本発明に係るタンパク質に特異的に結合し得る完全な分子及び抗体フラグメント(例えば、Fab及びF(ab’)2フラグメント)を含むことを意味する。Fab及びF(ab’)2フラグメントは完全な抗体のFc部分を欠いており、循環によってさらに迅速に除去され、そして完全な抗体の非特異的組織結合をほとんど有し得ない (Wahlら、J. Nucl. Med. 24: 316-325 (1983)) 。したがって、これらのフラグメントが好ましい。 あるいは、本発明に係るタンパク質を認識し得るさらなる抗体が、抗イディオタイプ抗体の使用を通じて二工程手順で産生され得る。このような方法は、抗体それ自体が抗原であるという事実を使用し、したがって、二次抗体に結合する抗体を得ることが可能である。この方法に従って、本発明に係るタンパク質特異的抗体は、動物(好ましくは、マウス)を免疫するために使用される。次いで、このような動物の脾細胞はハイブリドーマ細胞を産生するために使用され、そしてハイブリドーマ細胞は、本発明に係るタンパク質特異的抗体に結合する能力が本発明に係るタンパク質抗原によってブロックされ得る抗体を産生するクローンを同定するためにスクリーニングされる。このような抗体は、本発明に係るタンパク質特異的抗体に対する抗イディオタイプ抗体を含み、そしてさらなる本発明に係るタンパク質特異的抗体の形成を誘導するために動物を免疫するために使用され得る。 Fab及びF(ab’)2並びに本発明に係る抗体の他のフラグメントは、本明細書中で開示される方法に従って使用され得ることが明らかである。このようなフラグメントは、代表的には、パパイン(Fabフラグメントを生じる)又はペプシン(F(ab’)2フラグメントを生じる)のような酵素を使用するタンパク質分解による切断によって産生される。あるいは、本発明に係るタンパク質結合フラグメントは、組換えDNA技術の適用又は合成化学によって産生され得る。 ヒトにおける診断のために、in vivoでのイメージングを用いて、上昇レベルの本発明に係るタンパク質を検出する場合、「ヒト化」キメラモノクローナル抗体を使用することが好ましくあり得る。このような抗体は、上記のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞由来の遺伝構築物を用いて生成され得る。キメラ抗体を生成するための方法は、当該分野で公知である。総説については、Morrison, Science 229: 1202 (1985) ; Oiら、BioTechniques 4: 214 (1986) ; Cabillyら、米国特許第4,816,567号; Taniguchiら、EP 171496; Morrisonら、EP 173494; Neubergerら、WO 8601533; Robinsonら、WO 8702671; Boulianneら、Nature 312: 643 (1984) ; Neubergerら、Nature 314: 268 (1985) を参照のこと。 (3)本発明に係る組換え発現ベクター 本発明に係る組換え発現ベクターは、上記(a)又は(b)に記載のタンパク質をコードする本発明の遺伝子を含むものである。例えば、cDNAが挿入された組換え発現ベクターが挙げられる。組換え発現ベクターの作製には、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどを用いることができるが特に限定されるものではない。また、作製方法も公知の方法を用いて行えばよい。 ベクターの具体的な種類は特に限定されるものではなく、宿主(ホスト)細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、ホスト細胞の種類に応じて、確実に遺伝子を発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明に係る遺伝子を各種プラスミド等に組み込んだものを発現ベクターとして用いればよい。かかる発現ベクターは、例えば、ファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、染色体ベクター、エピソームベクター、及びウイルス由来ベクター(例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体エレメント、ウイルス(例えば、バキュロウイルス、パポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、トリポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス及びレトロウイルス)、並びにそれらの組合せに由来するベクター(例えば、コスミド及びファージミド)を利用可能である。 一般的に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物のような沈殿物中か、又は荷電された脂質との複合体中で導入される。ベクターがウイルスである場合、ベクターは、適切なパッケージング細胞株を用いてin vitroでパッケージングされ得、次いで宿主細胞に形質導入され得る。また、レトロウイルスベクターは、複製可能か又は複製欠損であり得る。後者の場合、ウイルスの増殖は、一般的に、相補宿主細胞においてのみ生じる。 また、目的の遺伝子に対するシス作用性制御領域を含むベクターが好ましい。適切なトランス作用性因子は、宿主によって供給され得るか、相補ベクターによって供給され得るか、又は宿主への導入の際にベクター自体によって供給され得る。この点に関する好ましい実施態様としては、ベクターは、誘導性及び/又は細胞型特異的であり得る特異的な発現を提供するものであることが好適である。このようなベクターの中で特に好ましいベクターは、温度及び栄養添加物のような操作することが容易である環境因子によって誘導性のベクターである。 細菌における使用に好ましいベクターの中には、例えば、pQE70、pQE60、及びpQE−9(Qiagenから入手可能);pBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratageneから入手可能);並びにptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Phrmaciaから入手可能)が含まれる。また、好ましい真核生物ベクターの中には、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、及びpSG(Stratageneから入手可能);並びにpSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVL(Phrmaciaから入手可能)が含まれる。 本発明に係る遺伝子が宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認するために、各種マーカーを用いてもよい。すなわち、発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このような選択マーカーとしては、例えば、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼ又はネオマイシン耐性、E.coli及び他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子又はアンピシリン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。また、その他にも宿主細胞中で欠失している遺伝子をマーカーとして用い、このマーカーと本発明に係る遺伝子とを含むプラスミド等を発現ベクターとして宿主細胞に導入する。これによってマーカー遺伝子の発現から本発明に係る遺伝子の導入を確認することができる。あるいは、本発明に係るタンパク質を融合タンパク質として発現させてもよく、例えば、オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質GFP(Green Fluorescent Protein)をマーカーとして用い、本発明に係るタンパク質をGFP融合タンパク質として発現させてもよい。また、本発明に係る遺伝子は、宿主細胞における増殖のための選択マーカーを含むベクターに結合されてもよい。 また、DNAインサートは、適切なプロモーター(例えば、ファージλPLプロモーター、E.coli lacプロモーター、trpプロモーター、及びtacプロモーター、SV40初期プロモーター及び後期プロモーター、並びにレトロウイルスLTRのプロモーター)に作動可能に連結されることが好ましい。他の適切なプロモーターとしては、当業者に公知のものを利用可能である。 本発明において、使用に適した公知の細菌プロモーターの中には、E.coli lacI及びlacZプロモーター、T3プロモーター及びT7プロモーター、gptプロモーター、λPRプロモーター及びλPLプロモーター、並びにtrpプロモーターが含まれる。適切な真核生物プロモーターとしては、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期SV40プロモーター及び後期SV40プロモーター、レトロウイルスLTRのプロモーター(例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター)、並びにメタロチオネインプロモーター(例えば、マウスメタロチオネインIプロモーター)が挙げられる。 組換え発現ベクターは、さらに、転写開始、転写終結のための部位、及び、転写領域中に翻訳のためのリボゾーム結合部位を含むことが好ましい。ベクター構築物によって発現される成熟転写物のコード部分は、翻訳されるべきポリペプチドの始めに転写開始AUGを含み、そして終わりに適切に位置される終止コドンを含むことになる。 また、高等真核生物によるDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増大させ得る。エンハンサーは、所定の宿主細胞型におけるプロモーターの転写活性を増大するように働く、通常約10〜300bpのDNAのシス作用性エレメントである。エンハンサーの例としては、SV40エンハンサー(これは、複製起点の後期側上の100〜270bpに位置される)、サイトメガロウイルスの初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側上のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。 また、上記宿主細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。適切な宿主の代表的な例としては、菌体(例えば、E. coli細胞、Streptomyces細胞、及びSalmonella typhimurium細胞);真菌細胞(例えば酵母細胞);昆虫細胞(例えば、Drosophila S2細胞及びSpodoptera Sf9細胞);動物細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、及びBowes黒色腫細胞);並びに植物細胞が挙げられる。より具体的には、ヒトやマウス等の哺乳類の細胞だけでなく、例えば、カイコガ由来の細胞をはじめとして、キイロショウジョウバエ等の昆虫、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeや分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、線虫Caenorhabditis elegans、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。上記の宿主細胞のための適切な培養培地及び条件は当分野で公知ものを利用可能である。 上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換方法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染等の従来公知の方法を好適に用いることができる。このような方法は、Davisら、Basic Methods In Molecular Biology (1986) のような多くの標準的研究室マニュアルに記載されている。 なお、本発明は、本発明に係るタンパク質の部分断片(フラグメント)を組換え的に生成するための、本発明に係るタンパク質の部分断片をコードするポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクター、組換え発現ベクターで遺伝子操作された形質転換体(宿主細胞)を提供することもできる。 さらに、本発明には、上述の組換え技術によって本発明に係るタンパク質、又はそのフラグメントの産生に関する発明も含まれ得る。すなわち、本発明には、組換え技術を利用して本発明に係るタンパク質やそのフラグメントを生産する方法も含まれ得る。かかる秘術によって生産された組換えタンパク質は、硫安沈殿又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法によって組換え細胞培養物から回収され、そして精製され得る。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製のために用いられる。 (4)本発明に係る形質転換体 本発明に係る形質転換体は、本発明に係る遺伝子が導入された形質転換体、すなわち、上記(3)欄に記載の組換え発現ベクターが導入された形質転換体である。ここで、「遺伝子が導入された」とは、公知の遺伝子工学的手法(遺伝子操作技術)により、対象細胞(宿主細胞)内に発現可能に導入されることを意味する。また、上記「形質転換体」とは、細胞・組織・器官のみならず、生物個体を含む意味である。 本発明に係る形質転換体の作製方法(生産方法)は、上述した組換え発現ベクターを形質転換する方法を挙げることができる。また、形質転換の対象となる生物も特に限定されるものではなく、上記宿主細胞で例示した各種微生物や動物(例えばトランスジェニックマウス)を挙げることができる。また、プロモーターやベクターを選択すれば、植物も形質転換の対象とすることが可能である。 (5)本発明に係る遺伝子検出器具 本発明に係る遺伝子検出器具は、本発明に係る遺伝子における少なくとも一部の塩基配列又はその相補配列をプローブとして用いたものである。遺伝子検出器具は、種々の条件下において、本発明に係る遺伝子の発現パターンの検出・測定などに利用することができる。 本発明に係る遺伝子検出器具としては、例えば、本発明の遺伝子と特異的にハイブリダイズする上記プローブを基板(担体)上に固定化したDNAチップが挙げられる。ここで「DNAチップ」とは、主として、合成したオリゴヌクレオチドをプローブに用いる合成型DNAチップを意味するが、PCR産物などのcDNAをプローブに用いる貼り付け型DNAマイクロアレイをも包含するものとする。 プローブとして用いる配列は、cDNA配列の中から特徴的な配列を特定する従来公知の方法によって決定することができる。具体的には、例えば、SAGE:Serial Analysis of Gene Expression法(Science 276:1268, 1997; Cell 88:243, 1997; Science 270:484, 1995; Nature 389:300, 1997; 米国特許第5,695,937 号)等を挙げることができる。 なお、DNAチップの製造には、公知の方法を採用すればよい。例えば、オリゴヌクレオチドとして合成オリゴヌクレオチドを使用する場合には、フォトリソグラフィー技術と固相法DNA合成技術との組み合わせにより、基板上で該オリゴヌクレオチドを合成すればよい。一方、オリゴヌクレオチドとしてcDNAを用いる場合には、アレイ機を用いて基板上に貼り付ければよい。 また、一般的なDNAチップと同様、パーフェクトマッチプローブ(オリゴヌクレオチド)と、該パーフェクトマッチプローブにおいて一塩基置換されたミスマッチプローブとを配置して遺伝子の検出精度をより向上させてもよい。さらに、異なる遺伝子を並行して検出するために、複数種のオリゴヌクレオチドを同一の基板上に固定してDNAチップを構成してもよい。 以下、本発明に係る遺伝子検出器具について、より詳細に説明する。 <基板> 本発明に係る遺伝子検出器具に用いる基板の材質としては、オリゴヌクレオチドを安定して固定化することができるものであればよい。例えば、ポリカーボネートやプラスチックなどの合成樹脂、ガラス等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。基板の形態も特に限定されるものではないが、例えば、板状、フィルム状等の基板を好適に用いることができる。 <基板表面に固定化されるオリゴヌクレオチド> 本発明に係る遺伝子検出器具の基板表面に固定化されるオリゴヌクレオチドは、本発明に係る遺伝子の少なくとも一部分の塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドであればよい。当該オリゴヌクレオチドとサンプル由来の核酸との間にハイブリダイゼーションが成立することにより、サンプル中に含まれている遺伝子を検出することが可能となる。なお、上記本発明に係る遺伝子の少なくとも一部分の塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドを、以下「キャプチャーオリゴ」と称する場合もある。 キャプチャーオリゴは本発明に係る遺伝子の塩基配列に基づいて設計すればよい。したがって、上記塩基配列そのものであってもよいし、検出対象の試料(サンプル)から調製した核酸と特異的なハイブリダイゼーションが成立する限りにおいて、変異が含まれていてもよい。変異の位置は特に限定されるものではない。 キャプチャーオリゴの長さ(塩基数)は特に限定されるものではないが、短すぎるとハイブリダイゼーションの検出が困難になり、長すぎると非特異的ハイブリダイゼーションを許容してしまう。本発明者は、キャプチャーオリゴの長さの最適化について検討を重ね、標準的な長さを12〜50塩基長とした。好ましくは、12〜40塩基長、より好ましくは12〜30塩基長、さらにより好ましくは、13〜22塩基長であるが、これらに限定されない。塩基長は主として配列特性(特定の塩基の含有率,同一塩基のリピート)に依存するものであり、結合性の良いものは短鎖でも特異的ハイブリダイゼーションが可能であることが、発明者らにより確認されている。 キャプチャーオリゴが、サンプル由来の核酸とのハイブリダイゼーションを妨害するヘアピン構造、ループ構造、またはそれ以外の立体構造を持つ場合、キャプチャーオリゴを構成する1またはそれ以上のヌクレオチドをイノシンまたはいずれのヌクレオチドとも対合しない核酸に置換することにより、その立体構造を解除することができる。 キャプチャーオリゴの合成法は特に限定されるものではなく、公知の方法(例えば、Maniatis, T. et al., Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載の方法等)により合成すればよい。一般的には、市販のDNA合成機を用いて化学合成することができる。 本発明に係る遺伝子検出器具において、上記本発明に係る遺伝子の少なくとも一部分の塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドのみではなく、それらに加えて、いわゆるコントロール・キャプチャーオリゴを基板表面に固定化することが好ましい。コントロール・キャプチャーオリゴには、陽性コントロール・キャプチャーオリゴおよび陰性コントロール・キャプチャーオリゴが含まれる。陽性コントロール・キャプチャーオリゴは、後述するプローブ調製工程において増幅反応がうまくいっているかどうかを判定するために用いるものである。陰性コントロール・キャプチャーオリゴは、非特異的ハイブリダイゼーションが生じていないこと、すなわち擬陽性のハイブリダイゼーションシグナルが生じていないことを確認するために用いるものである。これらの陽性コントロール・キャプチャーオリゴおよび陰性コントロール・キャプチャーオリゴが基板表面に固定化された遺伝子検出器具も本発明に含まれる。 陽性コントロール・キャプチャーオリゴは検出対象の試料から調製するプローブに含まれる塩基配列に基づいて設計されるものであればよい。また、複数の検出対象試料を同時に同一の遺伝子検出器具を用いて検出する場合には、各検出対象の試料について陽性コントロール・キャプチャーオリゴを設計してもよいが、複数の検出対象の試料から調製するプローブに共通する塩基配列に基づいて設計してもよい。すべての検出対象の試料から調製するプローブに共通する塩基配列がない場合は、いくつかのグループごとに陽性コントロール・キャプチャーオリゴを設計してもよい。あるいは、プライマー配列部分が同じで、対象となる細菌の配列とは異なる人工的な配列を設計し、この配列の一部を陽性コントロール・キャプチャーオリゴとすることもできる。上記人工的な配列を鋳型としてプローブを調製し(本明細書では、このようなプローブをコントロールプローブと称する。)、サンプルから調製したプローブに添加することにより、ハイブリダイゼーションの特異性を検証することが可能となる。なお、上記プローブについては後述する。 陰性コントロール・キャプチャーオリゴは、陽性コントロール・キャプチャーオリゴの塩基配列において、1塩基以上であり、かつ、当該配列の有する塩基数の20%未満の範囲内で人為的な塩基の置換を含む塩基配列を有するように設計することが好ましい。塩基置換を行う塩基数は、ハイブリダイゼーションの条件との関係で決定され、検出対象の試料由来のプローブがハイブリダイゼーションを生じないような塩基数を選択すればよい。 検出対象の試料は特に限定されるものではない。また、1つの基板上に固定化するキャプチャーオリゴは、少なくとも1種類以上であればよく、特に上限はない。本発明に係る遺伝子検出器具も、1つの基板上に、本発明に係る遺伝子の部分断片(それぞれ異なる塩基配列を有するもの)をキャプチャーオリゴとして複数固定化した、いわゆるマイクロアレイ型の器具とすることが最も好ましい。 <オリゴヌクレオチド(キャプチャーオリゴ)の固定化> オリゴヌクレオチドの基板表面への固定化法は特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜選択して用いればよい。例えば、物理的吸着、電気的結合または分子共有結合などの一般的なハイブリダイゼーション法に用いられる手法が利用可能である。本発明に係る遺伝子検出器具においては、表面にカルボジイミド基又はイソシアネート基を有する基材を使用し(米国特許:US5,908,746、特開平8−23975号)、固定化することが好ましい。 オリゴヌクレオチドをスポッティングする際に、オリゴヌクレオチドのスポット量が少なすぎると、オリゴヌクレオチドとプローブとの間の反応性を十分に確保することができず、判定が困難になることがある。また、高集積度のスポッティングは技術的な問題と同時にコストがかかり、さらにプローブの蛍光標識や化学発色などを用いたハイブリダイゼーションシグナルの検出にもより精密で高額な検出装置(例えば、スキャナー)が必要となる。したがって、オリゴヌクレオチドは、基板の表面に径10〜1,000μmのサイズに固定することが好ましい。オリゴヌクレオチドの基板上へのスポッティング方法は特に限定されるものではない。例えば、スポッティングマシンを使用して基板上にオリゴヌクレオチド溶液をスポッティングすることにより行うことができる。これによりオリゴヌクレオチド溶液は、通常ほぼ円形にスポッティングされる。 (6)本発明に係るタンパク質又はその部分断片を用いた検出器具 本発明に係る検出器具は、本発明に係るタンパク質における少なくとも一部のアミノ酸配列をプローブとして用いたものである。すなわち、本発明に係るタンパク質又はその部分断片(フラグメント)を固定化した検出器具と換言できる。かかる検出器具は、種々の条件下において、本発明に係るタンパク質と相互作用する物質(ポリペプチド、核酸、抗体など)の検出・測定などに利用することができる。 本発明に係る検出器具としては、例えば、本発明のタンパク質を認識する抗体と特異的に結合する上記プローブを基板(担体)上に固定化したもの等が挙げられる。プローブとして用いるアミノ酸配列は、本発明に係るタンパク質のうち、本発明に係る抗体と特異的に相互作用する部分、つまり、本発明に係るタンパク質のエピトープ保有ペプチドを用いることが好ましい。 本発明に係る検出器具に用いる基板の材質としては、オリゴペプチドを安定して固定化することができるものであればよい。例えば、ポリカーボネートやプラスチックなどの合成樹脂、ガラス等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。基板の形態も特に限定されるものではないが、例えば、板状、フィルム状等の基板を好適に用いることができる。 また、オリゴペプチドを基板に固体化する方法は、従来公知の方法を利用可能であり、特に限定されるものではない。例えば、不溶性担体に共有結合法や吸着法でオリゴペプチドを結合させる方法、オリゴペプチドのまわりを高分子物質で囲む包括固定化法、架橋化剤等を用いてオリゴペプチドを支持体に固定化する方法等が挙げられる。なお、固定化したい基板とオリゴペプチドの相性、固定化物の利用の目的に応じて、最適の固定化法を選択することができよう。 (7)本発明に係る遺伝子、タンパク質等の有用性 本発明に係る遺伝子及びタンパク質は、上述のごとくヘルペスウイルスの潜伏感染時に特異的に発現するものであって、該タンパク質は、脳内アストロサイトなどのグリア細胞で発現させることにより宿主の精神障害を誘導できる機能を有すると考えられる。 さらに、興味深い知見として、本発明に係る遺伝子及びタンパク質は、精神障害患者との関連性を有するという現象が明らかになった。より詳細には、後述する実施例に示すように、気分障害を中心とする各種精神障害患者の約5割にて、抗SITH−1抗体が検出される一方、健常者ではこの抗SITH−1抗体がほとんど検出されなかった(健常者において抗SITH−1抗体が検出される割合は約2%未満)。 このように、本発明に係るタンパク質の特異的抗体は、気分障害を中心とする精神障害患者でのみ有意に存在し、健常者ではほとんど検出されないという現象を本発明者は独自に見出した。なお、本発明でいう「精神障害」とは、精神障害とは意識、知能、記憶、感情、思考、行動といった精神機能の障害のため、日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態のことを意図する。また、「気分障害」とは、持続的な気分あるいは感情の変化で、異常に抑うつ的な、または高揚した感情を体験し、日常生活機能や社会機能に障害をもたらす状態のことを意図する。 このような「本発明に係るタンパク質の特異的抗体は、精神障害患者でのみ有意に存在し、健常者ではほとんど検出されない」という現象の詳細な理由は、解明に向けて現在鋭意検討中であるが、本発明に係るタンパク質は、潜伏感染が再活性化に向けて誘導される中間段階で活発に産生される性質を有している。ヘルペスウイルス(例えば、HHV−6)は、ストレスによって再活性化が誘導され、本発明に係るタンパク質を作製するものと考えられる。精神障害患者の約5割にあたる、本発明に係るタンパク質に対する抗体を有する者は、ストレスや何らかの遺伝的要因によって、本発明に係るタンパク質がHHV−6の潜伏感染細胞である脳内アストロサイトなどのグリア細胞で多量に長期間発現していると考えられる。この結果、アストロサイトなどのグリア細胞内でのカルシウム濃度の上昇が長期間継続し、セロトニンの代謝などのアストロサイトなどのグリア細胞の重要な機能が障害されることにより、精神障害が発症すると考えられる。また、慢性疲労症候群(CFS)患者の精神障害で本発明に係るタンパク質に対する抗体の保有率が高い理由は、CFS患者では健常人よりも多数のHHV−6が体内に潜伏感染している場合が多く、本発明に係るタンパク質(SITH−1タンパク質)も産生されやすいことを表すものと考えられる。なお、CFS患者では健常人よりも多数のHHV−6が体内に潜伏感染しているという事実は、これまでに報告してきた潜伏感染特異的遺伝子産物とCFS患者の抗体反応の結果からも示される(非特許文献5参照) このように、精神障害患者でのみ本発明に係るタンパク質に対する抗体が検出されるという現象の詳細な機構は未だ明らかではないが、かかる現象を利用することにより、精神障害を客観的に判断するのに資する判定方法や診断方法を提供することができる。また、同時に本発明は、判定キット、診断キット、モデル動物の作成方法、薬剤スクリーニング方法にも関するものである。以下、各方法について詳細に説明する。 (7−1)本発明に係る判定方法 本発明に係る判定方法は、本発明に係るタンパク質を認識する抗体、つまり上記(a)又は(b)に記載のタンパク質を認識する抗体が、被験対象生物中に存在するか否かを判定する方法であればよい。なお、用語「被験対象生物」とは、ヒト及びヒト以外の哺乳類の動物を意味する。 抗体に対するアッセイは、例えば、該抗体が認識するタンパク質又はその部分断片との結合反応によって検出可能である。つまり、本判定方法では、該抗体が認識するタンパク質又はその部分断片を用いて、免疫学的に(抗原抗体反応を利用して)、該抗体が存在するか否かを判定することが好ましい。なお、「部分断片」とは、少なくともエピトープ保有ペプチドを含むことが好ましい。 本判定方法の一例を挙げると、本発明に係るタンパク質又はその部分断片を固定化した不溶性担体と、被験対象生物から採取した生物学的試料とを接触させた後、洗浄し、この不溶性担体上のタンパク質又はその部分断片と特異的に結合した抗体を検出する方法を挙げることができる。そして、この不溶性担体上のタンパク質又はその部分断片と特異的に結合した抗体は、例えば、被験対象生物由来の抗体であるため、被験対象生物の抗体に対する特異的抗体、いわゆる2次抗体を用いて、容易に検出可能である。その際、2次抗体に染料、酵素または放射性または蛍光標識を含み、検出を増強することにより、検出がより一層容易になる。 つまり、本判定方法に用いられる抗体アッセイとしては、蛍光抗体法、ドットブロットアッセイ法、ウエスタンブロット法、酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA、サンドイッチELISA法を含む)、放射性イムノアッセイ法(RIA)、及び免疫拡散アッセイ法のような伝統的な免疫組織学的方法を利用したアッセイ法が挙げられる。これらのアッセイは、分子の固定化及び検出のためにアビジン及びビオチンのような分子を用いるが、これらの試薬を調製する技術及びそれを使用する方法は、当業者に公知の技術を利用可能である。なお、本判定方法の結果として、病理学試験のための組織切片の免疫組織学的染色が得られる。 また、本判定方法は、被験対象生物から分離された生物学的試料を用いて行われることが好ましい。用語「分離された生物学的試料」とは、被験対象生物から採取された細胞、組織またはその破片等を含む試料であればよく、末梢血、唾液、尿、便の他、細胞サンプル等、特に限定されないが、ヘルペスウイルスが末梢血中のマクロファージにおいても潜伏感染するという事実より、被験対象生物より採取した末梢血を用いることが特に好ましい。この場合、さらに被験対象生物の侵襲度が低いという利点もある。 生物学的試料(サンプル)中に存在する抗体の量は、例えば、直線回帰コンピューターアルゴリズムを使用して、標準的な調製物(例えば、健常者の標準試料若しくは典型的な精神障害患者の標準試料)中に存在する量との比較によって簡易に算出され得る。抗体を検出するためのこのようなアッセイ法は、例えば、ELISAについて、Iacobelliら、Breast Cancer Research and Treatment 11: 19-30 (1988) に記載されている。 適切な酵素標識としては、例えば、基質との反応による過酸化水素の生成を触媒するオキシダーゼ群由来のものが挙げられる。グルコースオキシダーゼは、それが良好な安定性を有し、そしてその基質(グルコース)が容易に入手できるために、特に好ましい。オキシダーゼ標識の活性は、酵素−標識抗体/基質反応によって形成される過酸化水素の濃度を測定することによってアッセイされ得る。酵素に加えて、他の適切な標識として、放射性同位元素(例えば、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)、およびテクネチウム(99mTc))、ならびに蛍光標識(例えば、フルオレセインおよびローダミン)ならびにビオチンが挙げられる。 被験対象生物から得られる生物学的試料中の抗体(本発明に係るタンパク質に対する抗体)レベルは、上述のイムノアッセイ法以外にも、例えば、画像解析によってin vivoで検出され得る。つまり、本発明に係るタンパク質に対する抗体もタンパク質であるという事実のため、該抗体を特異的に認識する抗体を用いることにより、被験対象生物から得られる生物学的試料中の抗体(本発明に係るタンパク質に対する抗体)レベルを画像解析によってin vivoで検出することができる。 抗体のin vivoでの画像解析のための抗体標識またはマーカーとして、X線撮影法、NMR、またはESRによって検出可能なものが挙げられる。X線撮影法については、適切な標識として、検出可能な放射線を放射するが、被検体に対して明らかには有害ではない、バリウムまたはセシウムのような放射性同位元素が挙げられる。NMRおよびESRのための適切なマーカーとして、関連のハイブリドーマの栄養分の標識によって抗体中に取り込まれ得る、重水素のような検出可能な特徴的な回転を有するものが挙げられる。 放射性同位元素(例えば、131I、111In、99mTc)、放射性不透過体(radio-opaque)基質、又は核磁気共鳴によって検出可能な物質のような適切な検出可能な画像解析部分で標識されている、本発明に係るタンパク質に対する抗体の特異的抗体または抗体フラグメントが、障害について試験される哺乳動物中に(例えば、非経口的、皮下、または静脈内)導入される。被検体の大きさおよび使用される画像解析システムによって、診断用の画像を生じるために必要とされる画像解析部分の量が決定されることが、当該分野で理解される。放射性同位元素部分の場合、ヒト被検体については、注射される放射活性の量は、通常約5〜20ミリキュリーの範囲の99mTcである。次いで、標識抗体または抗体フラグメントは、本発明に係るタンパク質に対する抗体を含む細胞の位置に優先的に蓄積する。なお、in vivoでの腫瘍の画像解析については、S. W. Burchielら、「Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments」 (Tumer Imaging 第13章: The Radiochemical Detection of Cancer, Burchiel, S. W. およびRhodes, B. A. 編、Masson Publishing Inc. (1982)) に記載されている。 本発明において利用可能な標識について、具体的な例を以下に示す。適切な酵素標識の例としては、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。 適切な放射性同位体標識の例としては、3H、111In、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pdなどが挙げられる。111Inは、in vivoでのイメージングが用いられる場合に好ましい同位体である。なぜなら、これは、125Iまたは131Iで標識したモノクローナル抗体の肝臓による脱ハロゲン化の問題を回避するからである。さらに、この放射性核種は、イメージングのためにより好ましいγ放出エネルギーを有する (Perkinsら、Eur. J. Nucl. Med. 10: 296-301 (1985) ; Carasquilloら、J. Nucl. Med. 28: 281-287 (1987)) 。例えば、1−(P−イソチオシアネートベンジル)−DPTAを用いてモノクローナル抗体にカップリングした111Inは、非腫瘍性組織(特に肝臓)における取り込みをほとんど示さなかった。それゆえ、腫瘍局在化の特異性を増強する (Estebanら、J. Nucl. Med. 28: 861-870 (1987)) 。 適切な非放射性同位体標識の例としては、157Gd、55Mn、162Dy、52Tr、および56Feが挙げられる。 適切な蛍光標識の例としては、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリトリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、o−フタルアルデヒド標識、およびフルオレサミン標識が挙げられる。 適切な毒素標識の例としては、ジフテリア毒素、リシン、およびコレラ毒素が挙げられる。 化学発光標識の例としては、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識、およびエクオリン標識が挙げられる。 核磁気共鳴コントラスト剤の例としては、Gd、Mn、およびFeのような重金属原子核が挙げられる。 上記の標識を抗体に結合するための代表的な技術は、Kennedyら (Clin. Chim. Acta 70: 1-31 (1976)) およびSchursら (Clin. Chim. Acta 81: 1-40 (1977)) により提供される。後者において言及されるカップリング技術は、グルタルアルデヒド方法、過ヨウ素酸方法、ジマレイミド方法、m−マレイミドベンジル−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル方法であり、これらの方法は全て本明細書中に参考として援用される。 (7−2)診断方法 本発明に係る診断方法は、上記の判定方法を用いていればよく、その他の具体的な構成、条件等は特に限定されない。例えば、被験対象の患者又は被験動物において、本発明に係る抗体が存在することを指標として、当該被験対象の患者又は被験動物が精神障害に罹患していると判定することができる。また、本発明に係る抗体の定量値を指標として診断する場合、健常者における定量値(正常値)や典型的な精神障害患者の定量値(疾患値)を参考にして適切な閾値を設定し、該閾値を上回っているか、又は下回っていれば、精神障害である可能性が高いと診断することもできる。本発明では、精神障害の発症によって上記抗体の量が増加するため、例えば、健常者における定量値(正常値)を閾値として設定する場合、被験者の測定値がこの閾値を上回っていれば、精神障害である可能性が高いと判定し得る。 なお、本明細書において、用語「被験者」とはヒトを意味し、「被験動物」とはヒト以外の動物を意味し、例えばマウス、ラット、及びサル等が含まれるが、ヒト以外の動物であれば、任意の動物が「被験動物」になり得る。 したがって、本診断方法によれば、簡便かつ正確に被験対象生物が精神障害であるか否か、または被験対象生物が精神障害に罹患する可能性があるか否かを診断することができる。また、被験動物に対する診断方法は、例えば、精神障害の治療薬を開発する際の薬剤スクリーニングや薬剤効果を試験するための動物実験等に非常に有用であろう。 (7−3)判定キット、診断キット 本発明に係る判定キット又は診断キットはそれぞれ、上記(7−1)欄で説明した判定方法又は上記(7−2)欄で説明した診断方法を実施するためのものであればよく、これに含まれる具体的な構成、材料、機器等は、特に限定されるものではない。具体的には、本発明に係る抗体を、免疫学的に検出するために、以下の(i)〜(iii)のいずれかの物質が含まれていることが好ましい。(i)本発明に係るタンパク質、(ii)(i)の部分断片(エピトープ保有ペプチドを含むことが好ましい)、(iii)(i)又は(ii)を固定化した検出器具。 上記のような構成のキットによれば、本発明に係る判定方法又は診断方法を簡便かつ確実に実施することができるため、非常に有用である。 また、上記の構成以外にも、上記判定方法又は診断方法の各工程を実施するための物質が含まれていてもよい。例えば、被験対象生物から試料を採取するために、例えば、末梢血を採血するための機器として、シュリンジ(注射器)等が含まれていてもよいし、また、本判定方法や診断方法を実施するために必要な物、例えば、各種試薬(例えば、ELISA等の免疫学的反応を行うために用いる試薬類など)や実験器具が挙げられる。また、上記判定をより簡便かつ正確に行うために必要な各種演算装置(例えば、コンピュータ等)やソフトウェアが含まれていてもよい。 (7−4)モデル動物の作成方法、判定法、スクリーニング方法、評価方法 本発明の診断方法は、ヒトを除く精神障害のモデル動物の作成法、有用性を判定する方法、及びこのようなモデル動物を用いた薬物スクリーニングにおいて、薬物の有効性を判定する方法に応用し得る。すなわち、精神障害のモデル動物の作成の場合には、実施例にもある様に、ベクターなどを用いて動物の脳内にSITH−1タンパク質を導入して作成することができる。また、精神障害のモデル動物の有用性を判定する場合には、前記判定方法や診断方法と同様に、本発明に係る抗体の有無に基づいて、被験動物が精神障害を発症しているか否かを判断し、該動物が精神障害を発症していれば、精神障害のモデル動物として有用であると判定することができる。 上記各種方法においては、これまでに知られている動物の行動異常や驚愕反応などを用いた診断方法をあわせて評価手法として用いることがさらに好ましい。具体的には、動物実験の診断は、尾懸垂テストや強制水泳テストなどの行動異常に関する試験や、驚愕反応などの、既知の脳機能試験を使用することができる。 また、ここでいう「被験動物」とは、ヒト以外の動物であればよいが、特に実験動物として好適なマウス、ラット、モルモット、イヌ、ウサギ、サル、チンパンジー等が好ましい。ヒト以外の動物では、精神障害の判定(診断)は、さらに困難であったので、該方法は極めて有用であるといえる。さらに、このようなモデル動物に、向精神薬または抗精神病薬(精神障害を治療又は改善する薬剤)の候補物質を投与した後、行動異常の検査に加えて、上記のごとく本発明に係る抗体を検出し、精神障害が治癒又は改善されていれば、前記候補物質は抗精神障害作用を有していると判断し得る。すなわち、本発明の診断方法を利用すれば、向精神薬の候補物質を容易かつ確実にスクリーニングすることができる。ここでいう「向精神薬の候補物質」は、試験者が所望する任意の物質であり得る。 なお、本発明の判定方法又は診断方法等の主題は、ヘルペスウイルスの潜伏感染時に特異的に発現するタンパク質に対する抗体を検出することによって、精神障害の罹患の有無を判定するための客観的な判定方法を提供することに存するのであって、本明細書中に具体的に記載した個々の操作に存するのではない。したがって、上記各操作以外の操作を用いた判定方法や診断方法も本発明の範囲に属することに留意しなければならない。 加えて、ヘルペスウイルスの感染は、実施例にもあるCFSなどの免疫不全を伴う疾患(例えば、クローン病などの自己免疫疾患等)や薬剤性過敏症症候群などのHHV−6が関係すると言われている皮膚疾患やHHV−6による脳炎・脳症との関連性も考えられるため、これらの疾患についても客観的に診断・評価することもできると考えられる。 すなわち、本発明に係るタンパク質及び遺伝子等を利用することにより、これをHHV−6の関与が示唆される様々な疾患の疾患マーカーとして利用することができる。 また、本発明には、上述した本発明に係る遺伝子、当該遺伝子産物(例えば、遺伝子にコードされるタンパク質)または当該遺伝子を有する組換え発現ベクターを導入してなるモデル動物も含まれる。上述したように、本発明に係る遺伝子は、精神障害と関連するものであるため、本遺伝子,本遺伝子産物(例えば、遺伝子にコードされるタンパク質等)、または本遺伝子を有する組換え発現ベクターを導入してなるモデル動物は、精神障害の症状を示す。かかる精神障害の症状としては、例えば、精神障害の症状は、躁鬱病様症状、躁病様症状、鬱病様症状の他、検査法によっては統合失調症(精神分裂病)様の症状を挙げることができる。 対象となる動物は、実験動物として利用可能なものであれば特に限定されるものではなく、特に哺乳動物が好ましく、例えば、マウス、ラット、サル等を挙げることができる。 また、上記遺伝子、遺伝子産物及び組換え発現ベクターの導入方法は従来公知の手法を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、当該タンパク質の脳内への発現方法は、アデノウイルスベクターを用いた方法もレトロウイルスベクターを用いた方法も可能(後述する実施例参照)であるし、勿論、これ以外のベクターを用いる手法も可能である。また、一般的なトランスジーン(トランスジェニックマウス作成)による遺伝子導入を用いてもよい。さらに、当該タンパク質を直接脳内に接種する方法でもよい。 このような精神障害のモデル動物は、精神障害の治療法の検討、薬剤の効果の検討、判定、薬剤以外の治療方法(温熱療法など)の評価等に好適に利用することができ、非常に有用である。 さらに、精神障害の発症要因に関する要因の検討も可能である。例えば、疲労やストレスがどの程度精神障害の誘導に寄与するかを検討することにより、精神障害の発症予防の研究にも利用できる。 以下実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。 <1.潜伏感染タンパク質SITH−1をコードする遺伝子産物(mRNA)の同定> 非特許文献1に示したHHV−6が潜伏感染しているマクロファージからメッセンジャーRNA(mRNA)を分離し、ランダムプライマーおよびsense transcriptsの逆転写用プライマーとしてIE4RBを、anti-sense transcriptの逆転写用にプライマーIE2FBを用いて逆転写反応を行った。その後逆転写産物(cDNA)を、プライマーIE4RBとIE2FBを用いてPCR法にて増幅し、その産物を内側のプライマーIE4RAとIE2FAを用いてdouble-nested PCR法にて増幅した。図1に、公知である増殖感染時のmRNAとSense transcript (H6LT)と、新規潜伏感染特異的遺伝子の位置関係および潜伏感染特異的タンパク質SITH−1のopen reading frameを示す。SITH−1および新規潜伏感染特異的遺伝子のシークエンス情報は、配列表参照。 その結果、HHV−6が増殖感染しているMT−4細胞で発現しているmRNAから増幅される351bpの産物とも、非特許文献3に表した、HHV−6のマクロファージ(MΦ)での潜伏感染時に検出される潜伏感染特異的遺伝子産物(HHV-6 latency-associated transcript:H6LT)から増幅される351bpの産物とも異なる925bpの産物が増幅された。 これは、HHV−6 DNAからの増幅産物1241bptとも異なり、HHV−6潜伏感染細胞のanti-sense transcriptの逆転写産物のみから増幅されることから、これまでに知られていなかった新規の潜伏感染特異的遺伝子産物であることが示された(図2参照)。図2中、“R”はランダムプライマーを示し、“S”はsense transcriptを示し、“anti−S”はanti-sense transcriptを示す。 この新規潜伏感染特異的遺伝子mRNAの構造を決定するために、5’-rapid amplification of cDNA ends (RACE)法と3’−RACE法を実施して、5’−末端と3’−末端を決定すると共に、全体の塩基配列も決定した(図3参照)。IE4RB: 5‘GATGCTCCTTCTTCCACATTACTGG 3’IE2FB: 5’ CATCCCATCAATTATTGGATTGCTGG 3’IE2FA: 5' GAAACCAC- CACCTGGAATCAATCTCC 3'.IE4RA: 5' GACACATTCTTGGAAGCGATGTCG 3'N1: 5' GCTGGGTAGTCCCCACCTTTCTAGA 3'.αF1: 5' CTGAAGCATGTAAGCACATCTCTTGC 3'αR1: 5' GCTTCGAGATCAGTAGTGGTACG3' <2.新規潜伏感染特異的遺伝子タンパク質SITH-1の機能解析> タンパク質SITH−1の機能を検討するために、タンパク質SITH−1が細胞内で結合する宿主タンパク質の同定を行った。方法としては、タンパク質SITH−1をbaitとして、Yeast Two-hybrid法にてヒト胎児脳cDNAライブラリーのスクリーニングを行った。この結果を図4に示す。図4中、Aは、SITH−1とCAMLの結合により、強いβ−ガラクトシダーゼ発現のみられたyeastのクローンである。Bは、in vitroのpull-down assayにより、大腸菌で発現させたGST−SITH−1融合タンパク質により、大腸菌で発現させたCAMLが共沈させることができたことを、ウエスタンブロットと抗CAML抗体の染色により確認した図である。Cは、293T細胞にFLAGタグをつけたSITH−1とCAMLを、発現ベクターを用いて導入し、抗CAML抗体によってSITH−1を共沈させることができたことを、ウエスタンブロットと抗FLAG抗体の染色により確認した結果を示す図である。図4に示すように、タンパク質SITH−1がCalcium-signal modulating cyclophilin ligand (CAML)と強く結合することが示された(図4)。 CAMLは、リンパ球や脳内で強く発現することが報告されているタンパク質で、細胞内カルシウム濃度を上昇させる機能をもつことが知られている。そこで、タンパク質SITH−1がCAMLを介して細胞内カルシウム濃度を上昇させるかどうかを検討した。具体的には、SITH−1を発現させたアストロサイト様グリア細胞株(U373)と未処理のU373細胞を抗SITH−1抗体と抗CAML抗体を用いて蛍光抗体法で染色した。その結果、アストロサイト細胞株(U373)にタンパク質SITH−1を発現させると、未処理のU373細胞に比してCAMLの量が増加することが観察された(図5)。なお、U373細胞におけるCAML発現レベルは、未処理ではあまり強くないが、SITH−1を発現させることにより、CAMLの量が増加することが観察された。 また、SITH−1を、レトロウイルスベクターを用いてアストロサイト様グリア細胞株(U373)に導入したものと、ベクターのみを導入したものを、タプシガルギン(TG)で刺激し、Fura2を用いて細胞内カルシウム濃度を測定した。その結果、実際に細胞内カルシウム濃度を測定すると、SITH−1を発現しているアストロサイトの細胞内カルシウム濃度がタプシガルギン(TG)刺激によって、ベクターのみを導入した細胞に比べて著しく上昇することが判った(図6)。 これらのことから、タンパク質SITH−1は、タンパク質HHV−6の潜伏感染時に発現し、細胞内CAMLの量を増加させることにより、アストロサイト様グリア細胞株の細胞内カルシウム濃度を上昇させる機能を持つことが判った。 <3.SITH−1と精神障害との関係> 次に、SITH−1と精神障害との関係を調べた。その結果を図7に示す。SITH−1に対する抗体は、非特許文献5などで報告してきた潜伏感染遺伝子タンパク質とは異なり、慢性疲労症候群患者そのものとの関連性は低かったが、精神障害を持つ患者では高率に抗体保有者が存在した。精神症状を伴う慢性疲労症候群(CFS)患者は、主として鬱症状を、小児のCFS患者は主として異常な興奮性を示す場合が多かった。双極I型は、症状の強い躁鬱病患者を表す。また、健常成人はSITH−1に対する抗体をほとんど保有していなかった。なお、抗体価は、SITH−1を発現させた293T細胞を抗原として、蛍光抗体法にて測定した。 <4.SITH−1発現による精神障害モデルマウスの作成> SITH−1のopen reading frame上流にアストロサイトなどのグリア細胞で特異的に発現するglial fibrillary acidic protein (GFAP)プロモーターを付加したものを、アデノウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターを用いて、生後間もなくマウスの脳内に注射した。約4〜5週後にマウスの行動を観察し、SITH-1導入による精神障害モデルマウスの成立を確認した。 精神障害に関するテストは、うつ病や躁うつ病などの観察に良く用いられる、尾懸垂テストと強制水泳テストによる検討を行った。具体的には、まず、SITH−1を、アデノウイルスベクターを用いて導入したマウスの尾懸垂テストを行った。その結果、SITH−1導入マウスでは、無動時間が著しく減少しており、このマウスが躁状態であることが判った(図8)。次いで、SITH−1を、レトロウイルスベクターを用いて導入したマウスの強制水泳テストを行った。その結果、SITH−1レトロウイルスベクターを高力価(high)で導入したものでは、コントロールとしてenhanced green fluorescence protein (EGFP)遺伝子を導入したものに比して無動時間が延長しており、うつ状態になっていることを示す。これに対し、SITH−1レトロウイルスベクターを低力価(low)で導入したものでは、無動時間が短縮しており、躁状態になっていることが判った(図9)。すなわち、尾懸垂テストで躁状態が、強制水泳テストによって躁状態とうつ状態が観察された。また、SITH−1を導入した際のレトロウイルスベクターの力価によって躁状態とうつ状態の両方が観察されることは、このモデルがうつ病と躁うつ病の両方のモデルになり得ることを示すだけでなく、SITH−1の発現量が精神障害の症状に影響を与えることも示唆された。 さらに、躁うつ病や統合失調症において異常がみられる驚愕反応の異常をPrepulse inhibitionを測定することで検討した。具体的には、SITH−1を、アデノウイルスベクターを用いて導入したマウスの驚愕反応(Prepulse inhibition)を調べた。その結果、図10に示すように、SITH−1導入マウスでは、Prepulse inhibitionが著しく減少しており、マウスが刺激に対し非常に過敏になっていることが判った。したがって、驚愕反応においても著しい異常が観察され、SITH−1が精神障害に関係する脳機能に大きな影響を与えることが示された。 <5.SITH−1発現による精神障害モデルマウスの作成2> 次に、SITH−1のopen reading frameを、GFAPプロモーター下につなぎ、アデノウイルスベクターを用いて、マウスのグリア細胞で発現させ、3週間後にWheel running activity(滑車回し)にて自発運動量を測定した。結果を図11に示す。 同図に示すように、SITH−1を発現させたマウスは、コントロールとしてEGFP(enhanced green fluorescence protein)を発現させたマウスに比して自発運動が亢進し、躁状態となる傾向を示した。 <6.SITH−1発現による精神障害モデルマウスの作成3> 続いて、SITH−1のopen reading frameを、GFAPプロモーター下につなぎ、レンチウイルスベクターを用いて、マウスのグリア細胞で発現させ、8週間後にWheel running activity(滑車回し)にて自発運動量を測定した。その結果を図12に示す。 同図に示すように、SITH−1を発現させたマウスは、コントロールとしてEGFP(enhanced green fluorescence protein)を発現させたマウスに比して自発運動量が抑制され、うつ状態となる傾向を示した。 これら図11と図12に示すように、同じSITH−1が躁状態とうつ状態という逆の現象を示すことがわかった。この理由としては、1)アデノウイルスベクターではSITH−1の発現量がレンチウイルスベクターよりも多い、2)レンチウイルスベクターの方がSITH−1を長期間発現させることができるため、SITH−1が長期間発現した影響を観察している、という違いが考えられる。 これらSITH−1発現によって躁状態とうつ状態のモデルマウスを作成できるという事実は、SITH−1に対する抗体が躁鬱病患者とうつ病患者の両者から検出されるという臨床的な結果と、良く一致する結果であるといえる。 <7.SITH−1を指標とした診断> SITH−1による診断が、うつ病を併発する他の疾患の診断にも有用であることを調べた。その結果を図13に示す。 同図に示すように、抗SITH−1抗体による診断は、うつ病、躁鬱病、慢性疲労症候群といった気分障害に非常に特異的であるが、これまでの検討で、例外的に、クローン病患者においても高い陽性率を示す。類似の疾患である潰瘍性大腸炎では陽性を示さなかった。 ただし、クローン病は、非常に「うつ症状」の合併が多い疾患であるということが知られており、図13中の抗SITH−1抗体陽性者は、クローン病自体が重症で、うつ症状の合併を生じた例である。この例は、自己免疫疾患に分類される慢性疾患であるクローン病患者で、うつ症状を示す重症例でも、SITH−1による「うつ病」の診断が出来ることを示す例であり、抗SITH−1抗体による検査が、「本来精神科疾患でない他の疾患によってもたらされる、うつ病の診断にも有用である」ことを示すものであると考えられる。 以上のように、本発明に係る遺伝子及びタンパク質は、ヘルペスウイルスの潜伏感染に関与する因子であり、これを指標とすることにより、精神障害の罹患の有無について客観的な判定を行うことができる。このため、本発明は、学術的・基礎研究的に価値があるだけでなく、臨床医学的にも非常に有意義なものである。したがって、様々な面で産業上の利用可能性がある。 被験者が精神障害を有するか否かを診断するためのデータ取得方法であって、 被験者から分離された生物学的試料中において、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質を認識する抗体レベルを検出する検出過程、を含むことを特徴とする診断のためのデータ取得方法。(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(b)配列番号1のアミノ酸配列において、10個以下のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質。(c)配列番号2に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する核酸にコードされるタンパク質。(d)配列番号2に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質をコードする核酸にコードされるタンパク質であって、上記ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下とは、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する条件である。 上記検出過程は、上記(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質若しくはその部分断片を用いて、免疫学的に上記抗体レベルを検出することを特徴とする請求項1に記載の方法。 非ヒト被験動物が精神障害を有するか否かを診断する方法であって、 上記非ヒト被験動物において、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質を認識する抗体が存在しているか否かを判定する判定過程と、 上記判定過程にて、上記抗体が存在していると判定された場合、該非ヒト被験動物が精神障害を有すると判断する判断過程と、を含むことを特徴とする診断方法。(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(b)配列番号1のアミノ酸配列において、10個以下のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質。(c)配列番号2に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する核酸にコードされるタンパク質。(d)配列番号2に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質をコードする核酸にコードされるタンパク質であって、上記ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下とは、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する条件である。 該非ヒト被験動物から分離された生物学的試料を用いて行うことを特徴とする請求項3に記載の診断方法。 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を行うためのキット。 以下に示す(i)〜(iii)から選択される物質のうち、少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする請求項5に記載のキット。(i)上記(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質(ii)(i)の部分断片(iii)(i)又は(ii)を固定化した検出器具 非ヒト被験動物が精神障害のモデル動物として有用であるか否かを判定するモデル動物の判定方法であって、 請求項3又は4に記載の診断方法により、上記非ヒト被験動物が精神障害を有するか否かを診断する診断過程と、 上記診断過程において、非ヒト被験動物が精神障害を有することを指標として、上記非ヒト被験動物が精神障害のモデル動物として有用であると判定する判定過程と、を備えることを特徴とするモデル動物の判定方法。 向精神薬又は抗精神病薬の候補物質をスクリーニングするスクリーニング方法であって、 以下の(a)〜(d)のいずれかに記載の核酸を含む組換え発現ベクターを導入してなる精神障害非ヒトモデル動物に被験物質を与える過程と、 請求項3又は4に記載の診断方法により、上記精神障害非ヒトモデル動物の精神障害が治癒又は改善されたか否かを診断する過程と、 上記精神障害非ヒトモデル動物の精神障害が治癒又は改善していることを指標として、上記被験物質が向精神薬又は抗精神病薬の候補物質であると判定する過程と、を備えることを特徴とするスクリーニング方法。(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸。(b)配列番号1のアミノ酸配列において、10個以下のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質をコードする核酸。(c)配列番号2に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する核酸。(d)配列番号2に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質をコードする核酸であって、上記ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下とは、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する条件である。 被験者が精神障害又はクローン病を有するか否かを診断するためのデータ取得方法であって、 被験者から分離された生物学的試料中において、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質のレベル又は当該タンパク質をコードする核酸のレベルを検出する検出過程、を含むことを特徴とする診断のためのデータ取得方法。(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(b)配列番号1のアミノ酸配列において、10個以下のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質。(c)配列番号2に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する核酸にコードされるタンパク質。(d)配列番号2に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質をコードする核酸にコードされるタンパク質であって、上記ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下とは、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する条件である。 非ヒト被験動物が精神障害又はクローン病を有するか否かを診断する方法であって、 上記非ヒト被験動物において、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質又は当該タンパク質をコードする核酸が存在しているか否かを判定する判定過程と、 上記判定過程にて、上記タンパク質又は核酸が存在していると判定された場合、該非ヒト被験動物が精神障害又はクローン病を有すると判断する判断過程と、を含むことを特徴とする診断方法。(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(b)配列番号1のアミノ酸配列において、10個以下のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質。(c)配列番号2に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する核酸にコードされるタンパク質。(d)配列番号2に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質をコードする核酸にコードされるタンパク質であって、上記ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下とは、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する条件である。 被験者がクローン病を有するか否かを診断するためのデータ取得方法であって、 被験者から分離された生物学的試料中において、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質を認識する抗体レベルを検出する検出過程、を含むことを特徴とする診断のためのデータ取得方法。(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(b)配列番号1のアミノ酸配列において、10個以下のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質。(c)配列番号2に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する核酸にコードされるタンパク質。(d)配列番号2に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質をコードする核酸にコードされるタンパク質であって、上記ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下とは、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する条件である。 上記検出過程は、上記(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質若しくはその部分断片を用いて、免疫学的に上記抗体レベルを検出することを特徴とする請求項11に記載の方法。 非ヒト被験動物がクローン病を有するか否かを診断する方法であって、 該非ヒト被験動物において、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質を認識する抗体が存在しているか否かを判定する検出過程と、 上記検出過程にて、上記抗体が存在していると判定された場合、該非ヒト被験動物がクローン病を有すると判断する判断過程と、を含むことを特徴とする診断方法。(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(b)配列番号1のアミノ酸配列において、10個以下のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質。(c)配列番号2に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する核酸にコードされるタンパク質。(d)配列番号2に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質をコードする核酸にコードされるタンパク質であって、上記ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下とは、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する条件である。 非ヒト被験動物がクローン病のモデル動物として有用であるか否かを判定するモデル動物の判定方法であって、 請求項13に記載の診断方法により、上記非ヒト被験動物がクローン病を有するか否かを診断する診断過程と、 上記診断過程において、非ヒト被験動物がクローン病を有することを指標として、上記非ヒト被験動物がクローン病のモデル動物として有用であると判定する判定過程と、を備えることを特徴とするモデル動物の判定方法。 以下に示す(i)〜(iii)から選択される物質のうち、少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする、被験者が精神障害を有するか否かを診断するための診断キット。(i)下記(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質(ii)(i)の部分断片(iii)(i)又は(ii)を固定化した検出器具(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(b)配列番号1のアミノ酸配列において、10個以下のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質。(c)配列番号2に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する核酸にコードされるタンパク質。(d)配列番号2に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性あるいはcalcium-modulating cyclophilin ligandと結合する活性を有するタンパク質をコードする核酸にコードされるタンパク質であって、上記ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下とは、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する条件である。配列表


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