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タイトル:特許公報(B2)_乳房内乳首シーラント製剤、およびこれを用いて、熟成チーズの視覚的欠陥を抑制または除去する方法
出願番号:2009532548
年次:2013
IPC分類:A61K 33/24,A61D 1/00


特許情報キャッシュ

ランキン,スコット,エー JP 5318770 特許公報(B2) 20130719 2009532548 20071010 乳房内乳首シーラント製剤、およびこれを用いて、熟成チーズの視覚的欠陥を抑制または除去する方法 ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファンデイション 506097988 伊東 忠彦 100070150 大貫 進介 100091214 伊東 忠重 100107766 ランキン,スコット,エー US 60/850,572 20061010 20131016 A61K 33/24 20060101AFI20130926BHJP A61D 1/00 20060101ALI20130926BHJP JPA61K33/24A61D1/00 Z A61K 31/00 − 33/44 A61D 1/00 − 1/16 特表2001−506648(JP,A) 特開昭63−203628(JP,A) 特開平03−052691(JP,A) 米国特許出願公開第2006/0094777(US,A1) 特開2004−196758(JP,A) 国際公開第2003/057233(WO,A1) 22 US2007080911 20071010 WO2008045920 20080417 2010505595 20100225 14 20100830 森林 宏和 本発明は、乾乳期の牛の乳房炎を予防するための、ビスマスを含まない、金属含有乳房内乳首シーラントに関する。乳房内乳首シーラントでは、処置された動物の乳(ミルク)から製造された酪農食品(特にチーズ)において、視覚的欠陥が生じない。また、本発明は、チーズの「黒点欠陥」(BSD)を抑制する方法に関する。 酪農用家畜の乳房炎は、酪農業者において、最も費用のかかる厄介な病気の一つである。乳房炎の治療を目的とした、従来の処置法は、乳房内抗細菌療法を含む。多くの市販の乳房内抗細菌製品があるにも関わらず、臨床乳房炎の治療率は、驚くべき程低い:スプレプトコッカスsppの場合、46%であり、ブドウ球菌sppの場合、21%であり、ブドウ球菌アウレウス乳房炎の場合、わずか9%である。WilsonらのNational Mastitis Council Proceedings、164-165(1996年)、およびCrandallらのNMC Annual Meeting Proceedings、215-216(2005年)参照。従って、酪農業者は、しばしば、乳房炎に罹りやすい動物を、群から間引きすることにより、疾病を管理する。 乳房炎を処置することの困難性のため、酪農業者にとって、新たな乳房内感染症の防止は、大きな関心事である。乾乳期の間の新たな感染の率は、泌乳期の間の新たな感染に比べて、有意に高い(例えば、ある研究では、全ての新たなグラム陰性の乳房内感染症の61%は、乾乳期の間に生じることが示されている)。乾燥直後の3週間、および出産前の2週間は、特に、新たな感染が生じやすい期間である。従って、近年、酪農業者は、これらの乾乳期の間、牛の「予防管理」に、相当の努力を行っている。 2003年の4月に、米国市場に、乾乳期の牛に使用される、内部(または「乳房内」)乳首シーラント(ITS)が導入された。米国の市場では、「ORBESEAL」(登録商標)(米国商標登録第2,772,198号、および第3,120,693号)の名称であり、この製品は、ニュージーランドで開発されたものである。米国市場に導入された「ORBESEAL」ブランドのITSは、粘性ペースト中に分散された、65wt%のビスマスサブ窒化物を含む。ITS製品は、いかなる抗生物質も含まず、いかなる活性抗菌剤も含まない。ITSは、乾乳期の牛に抗生物質を適用する方法と同じ方法により、管状塗布注射器を用いて、乳首の先端に注入される。ITS製品は、亀裂および乳首管の襞を充填し、これにより、病原体に対する物理的なバリアが形成される。2001年7月3日に特許され、本願の参照として取り入れられている米国特許第6,254,881号参照。 ニュージーランドにおける「ORBESEAL」ブランドの製品の初期の研究では、製品は、広域スペクトル長期持続乳房内抗生物質のように機能し、産期に、新たな乳房内感染症を抑制し、最初の5ヶ月の分泌乳期間にわたって、乳房炎の臨床外観を抑制すると結論付けられている。WoolfordらのNew Zealand Veterinary Journal、46:1(1998年)参照。より最近USでは、このITS製品は、クロキサシリンベンザチンにより既に感染した牛の健康状態を改善すると結論づけられている。GoddenらのJ.Dairy Sci.86:3899-3911、(2003年)参照。従って、「ORBESEAL」ブランドのITSは、乳牛の乾乳期の間、乳牛の新たな乳房炎の数を抑制する、有効なツールとなることが示されている。その比較的最近の米国導入にも関わらず、「ORBESEAL」ブランド製品は、市場が大きく広がっており、米国における家畜群に、広く使用されている。簡単に言えば、「ORBESEAL」ブランド製品は、乳房炎を防止する目的において、極めて有効なものである。 米国における「ORBESEAL」ブランドITS製品の導入の後、熟成乳製品、最も顕著な例では、熟成チェダーチーズにおいて、視覚的欠陥が認められ始めている。視覚的欠陥は、小さな(直径約0.5から5mm)黒点の形態で生じ、この黒点は、熟成チーズの全体に認められる。黒点は、全く美的な視覚的欠陥であり、問題のチーズの品質(さらには市場価値)を低下させる。黒点は、チーズのいかなる感覚反応検査による欠陥(官能欠陥)も、伴わない。黒点の影響を受けたチーズは、影響を受けていないチーズよりも品質が低いにも関わらず、よく売れる。欠陥は、「黒点欠陥」(BSD)と称されている。米国特許第6,254,881号明細書 本発明では、人間以外の動物の乳頭管に物理的バリアを形成し、動物の乾乳期の間、乳房の疾患を予防処置すると同時に、動物のミルクで製造された酪農製品のBSDを防止する方法を提供することを目的とする。 本発明の第1の態様は、人間以外の動物の乳頭管に物理的バリアを形成し、動物の乾乳期の間、乳房の疾患を予防処置すると同時に、動物のミルクで製造された酪農製品のBSDを防止する方法に関する。この方法は、動物の乳頭管内に、乳首シール製剤を注入するステップを有する。乳首シール製剤は、ビスマスを含まない。製剤は、乳首に微生物が侵入する際の物理的なバリアを形成するのに十分な量だけ投与されるが、これにより、動物のミルクで製造される酪農製品に、黒点は生じない。本方法の好適実施例は、ビスマスを含まず、ゲル状の無害な重金属塩を含む乳首シール製剤を注入するステップを有する。好適には、乳首シール剤は、抗感染剤を含まない(すなわち、乳首シール剤は、抗生物質、または他の抗感染活性剤を含まないことが好ましい)。本方法は、少なくとも約30wt%の、ビスマスを含まない無害重金属塩を含む乳首シール製剤を注入するステップを有することが好ましく、乳首シール製剤は、約50wt%から約75wt%の、ビスマスを含まない無害重金属塩を含むことがより好ましく、約65wt%の、ビスマスを含まない無害重金属塩を含むことがさらに好ましい。この塩の目的は、主として、組成物に十分な密度を提供することであり、これにより、ITSは、乳頭管に「定着」する。本方法のある態様では、無害な重金属塩は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、およびこれらの塩の混合物からなる群から選定される。 ゲルベースは、いかなる適当なゲル製剤であっても良く、多くのものは、薬学の分野では、良く知られている。好適なゲルベースは、ステアリン酸アルミニウム、および液体パラフィンを含む(例えばミネラルオイル、白色ワセリン、黄色ワセリン等)。通常のゲルベースは、ある種のワックスまたはオイルと、ステアリン酸アルミニウムまたはマグネシウムのような塩とを含む。 本発明の別の態様は、乳房内乳首シーラントに関し、このシーラントは、ゲルベース、および該ゲルベースに分散された無害重金属塩の組み合わせを有し、重金属塩は、ビスマスを含まない。前述のように、乳首シーラントは、少なくとも約30wt%の重金属塩を有することが好ましく、より好ましくは、約50wt%から約75wt%、さらに好ましくは約65wt%の重金属塩を有する。重金属塩は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、またはこれらの混合物であることが好ましい。ゲルベースは、ステアリン酸アルミニウムと、液体パラフィンとを有することが好ましい。 本発明のさらに別の態様は、乳房内乳首シーラントの改良に関する。特に、人間以外の動物の乳頭管に、物理的なバリアを形成し、動物の乾乳期の間、乳房の疾患を予防処置する方法であって、この方法は、抗感染剤を含まないシール薬剤を、動物の乳頭管に注入するステップを有し、本発明の改良は、ビスマスを含まず、ゲルベース中に無害な重金属塩を含む乳首シール薬剤を注入するステップを有することである。本発明の改善により、処置された動物のミルクから製造された酪農製品において、黒点欠陥の形成が抑制される。熟成白チェダーチーズの18kgのブロックにおける、通常の黒点欠陥の写真である。熟成白チェダーチーズの18kgのブロックにおける、通常の黒点欠陥の写真である。黒点欠陥の電子顕微鏡写真である。黒点欠陥領域からの単一のロッド状構造の電子顕微鏡写真である。実験室で生じた黒点欠陥の画像を示す。実験室で生じた黒点欠陥の画像を示す。 図1Aおよび1Bは、熟成白チェダーチーズの18kgのブロックにおける、通常の黒点欠陥の写真である。図1Aには、ブロックの表面が示されており、黒点欠陥が容易に認識される。図1Bは、拡大図(定規を重ね合わせている)であり、欠陥の寸法が示されている。そのようなスポットは、チーズ全体に等しく分布している。 図2は、黒点欠陥の電子顕微鏡写真であり、特徴的な髪の毛状またはロッド状の硫化ビスマス(III)ナノロッド構造が示されている。いかなる非BSDチーズ、または被検査非BSDチーズ領域においても、そのような構造は、認められない。図2に示すロッドは、直径が37.09nmから129.33nmの範囲である。 図3には、黒点欠陥領域からの単一のロッド状構造の電子顕微鏡写真を示す。示されたロッドは、直径が130.88nmであり、ロッドの全長を2分割する直線が示されている。 図4Aおよび4Bは、実験室で生じた黒点欠陥の画像である。図4Aにおいて、「ORBESEAL」ブランドの乳房内乳首シーラント(ITS)の各種部材は、チーズと混合され、その直後に、各スポットが撮影されている。図4Bには、熟成チェダーチーズからの揮発成分、または硫化水素ガスに対する暴露後の、同様のスポット写真が示されている。サイト4および5は、それぞれ、ビスマス次硝酸塩および元の状態のままの「ORBESEAL」ブランドのITS製剤を含む。 2003年の後半に開始されて以来、ウィスコンシン−マジソン大学、食物科学省、および酪農研究センター(CDR)に対して、チーズ業者により、熟成チーズ、特に熟成チェダーチーズにおける、新たな「黒点欠陥」の外観に関する情報について、多くの質問が行われてきた。歴史的に、チーズの灰色から黒色の変色は、いくつかの異なる明確な理由によるものであり、これには、特定の微生物(例えば、ある環境のプロピオニバクテリアまたはカビ)の成長、あるいは食物グレードの潤滑片によるチーズの汚染が含まれる。しかしながら、チーズ業者によって把握された特定のBSDは、バクテリア汚染、または他の微生物損傷のプロファイルには適合せず、さらには、ミルクの流れ内に認められる潤滑片や、チーズ製造工程の間に導入された他の破片にも見えない。 従って、第1のステップでは、黒点欠陥の化学構造が定められた。初期に、大きな労力により、BSDチーズの影響領域が抽出された。極性、疎水性等が変化する有機溶媒の幅広いスペクトルを用いた抽出作業は、チーズマトリクスから、いくつかの種類の有機顔料を分離する手段としては、有効ではないことが判明した。有機溶媒を用いたBSDの抽出は、うまくいかなかったが、抽出作業により、有益なデータが得られた。特に、顔料は、そのような溶媒には溶解せず、あるいは拡散せず、同様に、黒点顔料も、チーズマトリクス自身には、溶解せずまたは拡散しないことが(高い可能性で)結論づけられた。 欠陥を示すチーズサンプル(市販のチーズ業者から集められたサンプル)の多数の目視検査では、この結論が確認された−黒点顔料は、適正に収容されており、チーズマトリクスへの拡散は、認められない。図1Aおよび1Bを参照すると、図には、BSDに影響された、通常の熟成白本チェダーチーズの18kgのブロックの写真が示されている。図1Aは、チーズブロックの外表面の写真である。図1Bは、単一の黒点の拡大図であり、画像には、定規が重ねて示され、スポットの寸法が示されている。図1Aおよび1Bに示すようなスポットは、通常、チーズブロック全体に、等しく分布しており、1mm未満から、5mmの直径寸法の範囲にある。18kgのチーズブロック内のスポットの頻度は、大きく変化し、単位ブロック当たり10未満から、100以上である。 特定の熟成方法および貯蔵方法は、ポイントへのスポットの溶解または拡散を助長し、これにより、スポットが視認できなくなるという、チーズ業者から得られた、いくつかの事例報告がある(欠陥は、いかなる官能欠陥も伴わず、スポットの「減衰」は、状況を改善する)。しかしながら、そのような効果は、抽出作業に使用される有機溶媒に対する顔料の安定性を、大きく損なう。簡単に言えば、乳脂肪と同様の親水性を有する溶媒を用いて、本願発明者らによって、抽出実験が行われた。黒点顔料がチーズマトリクス自身に溶解しまたは拡散すれば(熟成または貯蔵手順を介して)、同様に、顔料は、乳脂肪と同等の物理的特性を有する有機溶媒中に、容易に溶解し、拡散するはずである。そのような結果は、実験室では生じなかった。また、チーズの所与の通常のpH/酸環境、および多くの熟成チェダーチーズに関連する通常の熟成/貯蔵寿命期間(0.5乃至2年)では、熟成または貯蔵方法を介して、欠陥が改善されるという事例的証拠は、有益ではない。 しかしながら、ある実験では、多くのことが示されている:黒点顔料は、硝酸に容易に溶解する。このことは、顔料は、無機塩であることを強く示唆するものである。欠陥の最初の出現のタイミングと関連して、ITSは、BSDに影響する原因物質である(または少なくともBSDに関係する)という仮説が示された。黒点顔料が酸に容易に溶解することの発見は、顔料は、ビスマスIIIの硫化物で構成されているという更なる仮説を支持する。従って、米国では、65wt%のビスマス含有塩を含む「ORBESEAL」ブランド製品は、不注意で、ミルク流に導入される傾向にあると結論づけられた。前述のように、「ORBESEAL」ブランド製品は、乳頭管への病原体の侵入に対して、強固な物理的バリアを形成するため、商業的に成功している。しかしながら、処理された動物から製品を除去する際、動物の乳首の露出が必要となる。一部のITSは、露出後の乳首に残り、チーズ乳に見出されることは明らかである。 研究の次の段階では、ビスマスIII硫化物は、実際にBSDの原因剤であるかという仮説に基づいて行われた。ビスマスの次硝酸塩自身は、白色であり、化学的に比較的不活性である。従って、流体乳、モツァレラチーズ、およびヨーグルト内のその存在を、視覚的に視認することは難しい。しかしながら、臭いが強い熟成チーズでは、黒点欠陥は、明確に認められる。従って、ビスマスIII硫化物(黒く、比較的難溶性の塩)は、微小植物、酵素、およびチーズのタンパク質/アミノ酸成分に作用する、ある共同因子の熟成作用によって、熟成チーズ内で生成された硫化水素と、(ITSからの)ビスマスの次硝酸塩との間の反応生成物であると仮定される。 簡単に言えば、仮説は、乳搾前のITSの不完全な除去により、ミルク流内にビスマスの次硝酸塩が形成されたというものである。その後、ビスマスの次硝酸塩は、硫化水素と反応して、式1により、ビスマスIII硫化物が生じる。生成物であるビスマスIII硫化物(または単なるビスマス硫化物)は、比較的難溶性の黒色塩である。 特定の元素ターゲット、すなわちビスマスに加えて、チーズマトリクス内に存在する条件または化学的環境の下、Bi2S3分子は、文献を参照して、ナノロッドまたはナノウィスカのような結晶構造を形成するものと仮定された。W.Zhangら、Sol.State Comm.119:143-146、(2001年)、およびB.Zhangら、J.Phys.Chem.110:8978-8985、(2006年)参照。従って、これらのビスマス含有ナノロッドは、光回折粒子を構成し、黒点欠陥において、灰色から黒色の色調を示すことが認められる。 次に、以下のことが確認された:1)黒点欠陥におけるビスマス元素の存在、2)黒点欠陥内のビスマスIII硫化物ナノロッド構造の物理的存在。 黒点内におけるビスマスの存在は、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICPMS)を用いて検討された。AOAC国際(公認分析団体)法993.14が使用された。第1の検討は、複数の黒点をふるい分けし、BSDに寄与するいくつかの元素の存在を確認することである。最初の実験では、ミルクおよびチーズの処理/運搬機器中に認められる、典型的な金属塩/酸化物、ならびに食品品質処理中に含まれる他の残留金属派生物が対象とされた。制御の指標として、チーズ組成の解析が行われた。特に、タンパク質、灰分、水分が、それぞれ、公的分析方法AOAC第17版の方法2001.14、935.42および926.08を用いて、測定された(著作権2000、ISBN:0935584-67-6)。脂肪は、公的分析方法AOAC第17版に示された方法により、測定された。 以下のようにして、透過型電子顕微鏡(TEM)の研究が行われた:サンプルに、約100μlの二回蒸留水を添加し、ガラス棒を用いて、サスペンション中で混合物を細かく粉砕した。懸濁サンプルの約5μlを、ポリビニルアルコール−ホルムアルデヒドアセタールがコートされた300メッシュの銅TEMグリッド(Ted Pella社、Redding、カリフォルニア)上に設置した。余分なサンプルをフィルタ紙の小区画を用いて除去し、残りのサンプルは、室温で、グリッド表面上で乾燥させた。あるケースでは、乾燥サンプルの上に、NANO-WブランドのTEMネガティブ染色(ナノプローブ社、Yaphank、ニューヨーク)を設置し、コントラストおよび視認性を改善した。試料は、フィリップスCM120電子顕微鏡を用いて、観察し、画像は、MegaView3デジタルカメラ(SIS、Ringoes、ニュージャーシー)に収めた。測定は、SISブランドの解析ソフトウェア(Ringoes、ニュージャーシー)で行い、既知の長さの照合サンプルで較正した。 ICPMSの結果、BSD領域に、クロム、銅、鉄、ニッケル、およびビスマスの元素の存在が確認された。クロム、銅、鉄、およびニッケルの元素では、僅かな増加が認められたが、BSD領域でのビスマス濃度は、非BSD領域で検査された同じチーズに比べて、おおよそ3桁大きかった。これらの結果は、ビスマスは、着色反応において析出し、十分な量で存在する、唯一の元素であることを示すものである。 チーズサンプルのBSD領域の数百のTEM画像が取得され、一つの満足のいく結論が得られた。前述の文献に記載の典型的なナノロッドは、BSDチーズ領域に独自に存在する。そのような画像の一例を、図2に示す。図2に示すナノロッド構造は、極めて小さく、光学顕微鏡では、検出することは難しい。図2に示すナノロッドは、直径が約69nmから約130nmの範囲にある。ナノロッドは、TEMの厳しい条件に対して、極めて安定である。ナノロッドは、僅かに色むらのある表面を有するように見え、これらのナノロッドは、ナノロッドの全長に沿った、特徴的な線を示す。図3を参照すると、この図には、単一のナノロッドの拡大図が示されている。そのような構造の存在は、チーズマトリクス中に存在する条件下で形成された、ビスマス硫化物ナノロッドの存在に対応している。 ビスマスIII硫化物ナノロッドが形成される際の反応体としての、ビスマス次硝酸塩の反応性を確認するため、実験室内でBSDが自発的に反応するかどうかを確認する、追加の分析を実施した。簡単に言えば、チーズは、既知の量のITS化合物を含むように製造され、チーズを成熟させることにより、生成された揮発性ガスに晒され、または直接、仮定されたビスマス次硝酸塩共反応体、硫化水素ガスに暴露される。両方の状況において、反応は、常時、同じである:ビスマス次硝酸塩を含むチーズサンプル、または完全なITS製剤が、実際のチーズ揮発物、または「化学標準」グレードのH2Sガスに暴露されると、各々には、ナノロッド構造の存在を伴う同一の黒色化が生じた。これにより、ビスマス次硝酸塩がBSDの原因であることが、より一層確認される。この結果は、図4に示されている。他のITS化合物は、暴露によって、黒点を形成しない。また、影響を受けやすいサイトは、チーズの揮発成分または硫化水素ガスに暴露された際に、同様の黒色を形成し、これにより、硫化水素ガスが疑わしい共反応体であることが確認された。 チーズ製造、および古いまたは熟成チーズの見地から、BSD制御の手段として、硫化水素ガス生成物の除去を対象とすることは好ましくはない。硫化水素は、香り活性化合物であり、微生物、酵素、およびシステインのような硫黄含有アミノ酸に対する共因子活性体の生成物である。ArfiらのAppl.Microbiol.Biotechnol.58:503-510、(2002年)参照。硫化水素ガスは、必要成分であり、および/または通常の熟成チーズの風味の重要な成分であるという主張を支持する、多くの研究がある。BurbankおよびQianのJ.Chrom.1066:149-157、(2005年)参照。(多数の複合メタボリック経路の遮断により)硫化水素の生成を除去する方法が提案されたとしても、最終的に得られる製品は、風味がチーズ検査者および消費者に受け入れられない危険性がある。 従って、本発明では、ITSの製剤が変更され、ビスマス含有塩が排除される。前述の実験で示されているように、市販のITS内のビスマス次硝酸塩は、BSDの発生につながる。従って、ビスマスを含まず、さらに、硫化水素と反応して、暗い不溶性の顔料が生じるいかなる他の重金属塩をも含まない、ITSを使用することにより、BSDが排除される。 以下の実施例により、特許請求の範囲に記載の本発明のより完全な記載が提供される。実施例は、本発明を限定するものではない。 (例1) 本発明による試験用ITSを構成した。試験用ITSは、「ORBESEAL」ブランドの製剤と同様であるが、これは、いかなるビスマスまたはビスマス含有塩も含んでいない点が異なっている。試験用ITSは、酸化亜鉛、二酸化チタン、天然油(30-40%)、およびステアリン酸アルミニウムで構成される。 ITSのバッチを調製するため、混合器を備える適当な容器に、液体パラフィン(例えば天然油)を供給した。ステアリン酸アルミニウムを追加し、この混合物を撹拌し、均一になるまで、約160℃に加熱した(約2時間)。 次に撹拌しながら、混合物中に、無害な、ビスマスを含まない塩を少量添加し、所望の量の金属塩を添加した。次に、混合物を、均一になるまで撹拌した。その後、生成物を、内部乳首投与用の従来の注入管に移した。 (例2) この例2の目的は、本発明によるITSの、非泌乳期の牛の乳首内の保存率を、「ORBESEAL」ブランドの製品と比較することである。 試験は、ウィスコンシン州、Arlingtonのウィスコンシンマジソン大学(UW)のブレイン酪農場で実施した。16頭の牛(n=64乳首)を、乾乳期の日に登録した。登録された牛には、4つの機能的な宿舎が必要であり、乳房炎の兆候は、認められなかった。全ての牛は、乾乳期にあり、標準的なUWの酪農家畜の群れの手続により、乳房内抗生物質による乾乳牛治療(DCT)を受診している。各牛について、出産経歴および(ドライオフでの)牛乳量が記録された。初期の登録の際、乳首の形状、長さ、直径、および乳首の端部の過角化症の状況が記録された。各牛の中で、「ORBESEAL」ブランドのITSを受容する2つの乳首が割り当てられ、試験用ITSを受ける2つの乳首が割り当てられた。投与方法は、乳首配置内で、各製品が均一に投与されるように計画され、各配置内で、単位投与製品当たり、8つの乳首が割り当てられた(右後方、右前方、左後方、左前方)。シーラント管は、投与前後で重量測定され、正味の投与堆積が求められた。DCTおよび初期の乳首シーラントを受ける前に、乳首の端部は、単一の70%イソプロパノールアルコールで洗浄され、さらに部分挿入技術を用いて、乳首の皮膚に病原体が侵入する可能性が抑制された。内部シーラントの投与の後、乳首は、外部乳首殺菌剤に浸漬された。 乳首は、1、2、3、4、5、6、7、14、28、42日目、および出産のときに、検査され、赤み、腫れ、および/またはシーラントのリークが評価された。14、28、42日目、および出産のときには、手作業で、各牛の一つの乳首からシーラントが除去された(単位除去日にち当たり、各シーラントに対して、8つの乳首)。除去されたシーラントは、目盛り付きの50mlのプラスチック瓶に、最初のミルクとともに回収された。瓶は、遠心分離され(3000rpm×5〜7分)、上澄みが洗い流され、回収されたシーラントの重量が測定された。回収シーラントの量は、各時点で、試験用ITSで処理された乳首と「ORBESEAL」ブランドのITS処理された乳首の間で比較された。引き続きサンプルは、同じ手順で、産後1日目に回収された。全てのサンプリング期間で、シーラントの除去の後、乳首は、外部乳首殺菌剤に浸漬された。産後、宿舎のミルクサンプルは、全ての宿舎から無菌回収され、乳房内感染を確認するため、培養された。 (群特性−乳首の長さと体積) 全16頭の牛、全部で64個の乳首を研究用に登録した:32個の乳首は、試験用ITSに利用され、32個の乳首は、「ORBESEAL」ブランドのITSに利用された。試験の母集団における乳首の長さおよび体積を、表1に示す。 群Aまたは群Bにおいて、乳首の長さまたは体積に、顕著な差異は、認められなかった(p>0.36)。全体の乳首の全長は、5.11cmであり、3.3cmから7.3cmの範囲であった。平均乳首長さは、群Aでは、5.12cmであり、群Bでは、5.11cmであり、群Aの範囲は、3.3cmから7.3cmであり、群Bの範囲は、3.5cmから7.10cmであった。2つのサンプル組tの試験を、2つの処置群において、平均乳首長さは異なっていないという仮説を評価するため実施した。いずれの製品を受けるか無秩序に定められた乳首間で、乳首の長さに、大きな差異は認められなかった(p=0.95)。 全体の乳首の体積は、24.66cm3であり、12.47cm3から54.34cm3の範囲であった(標準偏差9.17cm3)。群Aでは、平均乳首体積は、23.6cm3であり、範囲は、12.54cm3から54.34cm3であった(標準偏差8.60cm3)。群Bでは、平均乳首体積は、25.71cm3であり、範囲は、12.47cm3から48.25cm3であった(標準偏差9.73cm3)。2つのサンプル組のt試験を、2つの群において、平均乳首体積は異なっていないという仮説を評価するため実施した。いずれの製品を受けるか無秩序に定められた乳首間で、乳首の体積に、大きな差異は認められなかった(p=0.95およびp=0.35;対数変換分析)。 過角化症:過角化症の評価のため、以下の指標を用いて、乳首端部の健康状態を記録した:リングなし(N)、平滑リング(S)、荒れ(R)、激しい荒れ(VR)。乳首の記録分布は、N(n=21;32.8%)、S(n=31;48.4%)、R(n=11;17.2%)、およびVR(n=1;2%)であった。過角化症の分布を確認するX2試験結果は、処置群に対応していなかった(p=0.13)。 投与、回収、および紛失したシーラントの量:処置群に基づいて、投与、回収または紛失した(非回収の)シーラントの量が異ならないことを判断するため、組t試験を用いた統計分析を実施した。 各管において、重量が4gの場合、投与シーラントの全体の量は、3.62gであった。「ORBESEAL」ブランドのITS(3.46g)と、投与試験用ITS(3.62g)の量に、顕著な差異は、認められなかった(P=0.12)。 全体的に、回収されたシーラントの量は、0.82gであり、処置に基づく有意な差異は、見られなかった(P=0.89)。損失シーラントの全量は、2.88gであり、処置群による差異は、認められなかった(P=0.40)。回収されたシーラントの量は、回収日に関連する傾向を示し(P=0.08)、14日目には、他の期間に比べて、シーラントの回収がより多くなった(14日目、回収=1.6g;28日目、回収=0.68g;42日目、回収=0.65g;出産日、回収=0.33g)。 単純な直線回帰を用いて、投与シーラントの量と、乳首体積の間に有意な関係がないことを判定した(p=0.59、p=0.53)。 回収シーラントに関して、回収シーラント量と、乳首体積との間に、顕著な直線関係はないという、無効な仮説を評価するため、簡単な直線回帰評価を実施した。6%の回収シーラントのみが、乳首体積によって占められた(P=0.05)。 投与シーラントの特性は、乳首体積にあまり関係しなかったが、回収シーラントは、乳首体積に対して有意な相関を示した。ただし、相関は、ごく小さな割合であった(6%)。 一方向のANOVAを用いて、投与および回収シーラント量と、乳首位置、製品、牛との間の、一変量の関係を求めた。 本願は、2006年10月10日に出願された仮出願60/850,572号の権利を主張するものであり、この内容は、本願の参照として取り入れられている。 本発明は、以下の政府機関による米国政府支援の元で行われたものである:USDA/CSREES2005-35503-16328。米国は、本発明の一部の権利を有する。 人間以外の動物の乳頭管に、物理的バリアを形成し、前記動物の乾乳期の間、乳房の疾病を予防処置するとともに、前記動物のミルクから製造される酪農製品の黒点欠陥を防止するための方法であって、 ある量の乳首シール製剤を前記動物の乳頭管に注入するステップを有し、 前記乳首シール製剤は、ビスマスを含まない、無害な重金属塩を有し、 前記量は、微生物の前記乳頭管への侵入に対して、物理的なバリアを形成するのに十分な量であり、 前記乳首シール製剤では、前記動物のミルクから製造される酪農製品に、黒点欠陥が生じないことを特徴とする方法。 抗感染剤を含まない乳首シール製剤を注入するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。 ビスマスを含まず、ゲルベース中に無害な重金属塩を含む、乳首シール製剤を注入するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。 ビスマスを含まず、少なくとも約30wt%の無害な重金属塩を含む、乳首シール製剤を注入するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。 ビスマスを含まず、約50wt%から約75wt%の無害な重金属塩を含む、乳首シール製剤を注入するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。 ビスマスを含まず、約65wt%の無害な重金属塩を含む、乳首シール製剤を注入するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記無害な重金属塩は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記ゲルベースは、ステアリン酸アルミニウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記ゲルベースは、液体パラフィンを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 乳房内乳首シーラントであって、組み合わせとして、 ゲルベースと、 前記ゲルベースに分散された無害な重金属塩と、 を有し、 前記重金属塩は、ビスマスを含まないことを特徴とする乳房内乳首シーラント。 抗感染剤を含まないことを特徴とする請求項10に記載の乳房内乳首シーラント。 少なくとも約30wt%の重金属塩を含むことを特徴とする請求項10に記載の乳房内乳首シーラント。 約50wt%から約75wt%の重金属塩を含むことを特徴とする請求項10に記載の乳房内乳首シーラント。 約65wt%の重金属塩を含むことを特徴とする請求項10に記載の乳房内乳首シーラント。 前記重金属塩は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選定されることを特徴とする請求項10に記載の乳房内乳首シーラント。 前記ゲルベースは、ステアリン酸アルミニウムを含むことを特徴とする請求項10に記載の乳房内乳首シーラント。 前記ゲルベースは、液体パラフィンを含むことを特徴とする請求項10に記載の乳房内乳首シーラント。 人間以外の動物の乳頭管に、物理的バリアを形成して、前記動物の乾乳期の間、乳房の疾病を予防処置するための方法において、 前記方法は、シール製剤を前記動物の乳頭管に注入するステップを有し、 該ステップは、ビスマスを含まない、ゲルベース中の無害な重金属塩を含む、乳首シール製剤を注入するステップを有することを特徴とする方法。 ビスマスを含まず、少なくとも約30wt%の無害な重金属塩を含む、乳首シール製剤を注入するステップを有することを特徴とする請求項18に記載の方法。 ビスマスを含まず、約50wt%から約75wt%の無害な重金属塩を含む、乳首シール製剤を注入するステップを有することを特徴とする請求項18に記載の方法。 ビスマスを含まず、約65wt%の無害な重金属塩を含む、乳首シール製剤を注入するステップを有することを特徴とする請求項18に記載の方法。 前記重金属塩は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選定されることを特徴とする請求項18に記載の方法。


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