生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ジュース又は果実酒の製造方法
出願番号:2009525249
年次:2013
IPC分類:A23L 2/02,C12G 3/02


特許情報キャッシュ

山元 正博 JP 5271906 特許公報(B2) 20130517 2009525249 20070802 ジュース又は果実酒の製造方法 株式会社源麹研究所 505165756 山元 正博 596045926 山元 紀子 501188812 園田 吉隆 100109726 小林 義教 100101199 山元 正博 20130821 A23L 2/02 20060101AFI20130801BHJP C12G 3/02 20060101ALI20130801BHJP JPA23L2/02 AC12G3/02 118 A23L 2/00 − 2/84 C12G 3/02 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2004−121134(JP,A) 特開2005−058132(JP,A) 特許第0071257(JP,B2) 特許第114865(JP,C2) 特開平01−257462(JP,A) 特開2005−021032(JP,A) 米国特許第06015699(US,A) 特公昭48−006800(JP,B1) 特開2007−124960(JP,A) 特開昭63−79551(JP,A) 12 JP2007065136 20070802 WO2009016758 20090205 8 20100716 藤井 美穂 本発明は、ジュース又は果実酒の製造方法に関する。 バナナは世界で最も消費量の多い果実である。免疫抵抗力増強効果や制癌効果が発見され、バナナは健康果実としても注目されている。 特に熟して黒ずんだバナナほどその免疫抵抗力増進効果が優れていると言われるが、熟したバナナほど腐りやすい。またバナナはサイズの差が大きいため等外品も多く大量に廃棄されている。 従来ワインの原料としてはブドウが主流である。これは、ブドウに含まれる果実酸、主に酒石酸及びリンゴ酸がブドウのアルコール発酵の際にその腐敗を防止する効果がある為にアルコール発酵が順調に進行することと、さらに、ブドウの酸味がワインに独特の風味を与えることが主な要因であると考えられる。 一方、バナナやマンゴーのような果実酸の含有が少なく酸味を持たない果実においては、アルコール発酵が不安定になる為、果実酒の製造が普及していない。これらの果実は高い粘性も有する。従って、アルコール発酵に用いる酵母の拡散が妨げられるという問題があり、効率的なアルコール発酵が行われず生産効率の面から果実酒製造に限界があった。 特許文献1には、リンゴ、梨、桃等の酸度の比較的低い果実から調製した果汁に酵母を接種して発酵させ、その醪に白麹を添加して酸度と糖度を高める、アルコール飲料を得る方法が開示されている。 特許文献1に記載される方法は、果実から調製した果汁を使用する。この方法では酵母によるアルコール発酵の後に麹菌による発酵を行うか、あるいは酵母アルコール発酵と麹菌発酵とを同時進行させる方法であり、従って、原料が果汁のような液体でないと酵母によるアルコール発酵を実施することができないのである。従って、バナナやマンゴーのように果汁が搾りにくい果実で、特許文献1に記載される方法を用いることはできない。特開2001−29061号公報 本発明は、上記問題を解決し、バナナ又はマンゴーからジュースあるいは果実酒を製造する新規な手段を提供することを主たる目的とする。 本発明は、バナナの果実にAspergillus属の麹菌を添加してバナナを糖化する工程、糖化物を濾過する工程を含むジュースの製造方法に関する。 本方法は、麹菌のもつペクチナーゼ活性、アミラーゼ活性等の種々の活性を利用して、従来困難とされていたバナナ果汁の濾過を可能とするものである。 また、本発明は、バナナ及びマンゴーから選択される果実にクエン酸生成能を有する麹菌を添加し、果実を糖化する工程、及び、糖化物をアルコール発酵させる工程を含む、果実酒の製造方法にも関する。 本発明によれば、腐りやすい果実を貯蔵に適した飲料とすることができ、収穫、輸送又は販売などの段階で廃棄されててしまうバナナも有効利用することができる。 また、未熟バナナは糖度が低いために商品価値が低い。しかし、本発明によれば、未熟なバナナを利用した場合にも、未熟なものに多く含まれる澱粉質を糖にかえて、消化性の高い高品質の飲料とすることができる。 バナナやマンゴーのような果実は酸味が少なく、特にバナナは酸味成分をほとんど含んでいないが、本発明に係る果実酒の製造方法によれば、酸が配合され、嗜好性の高い飲料とすることができる。 本発明で使用する果実は粘度も高い。例えば、ペクチン等の食物繊維を100g当たり1.0g以上含み、特にバナナは澱粉も多く含むために粘り気が非常に強い(砕いた場合でも、5000mPa・s以上の粘度を有しうる)。例えば、バナナは100gあたり5.0g以上の澱粉を含み、とりわけ未熟バナナは12%から21%といった高い澱粉含量となっている。さらに糖度15度未満、特に10度未満の未熟なバナナは、果実が固く果実酒製造(即ちアルコール発酵)に十分な糖度を有していない。更に、バナナの水分は60〜70%と低くそのまま搾ってジュースにすることは不可能である。 本方法では、麹菌に含まれるペクチナーゼを利用して果実の粘度を低くし、更にアミラーゼを利用して澱粉質を液化ならびに糖化することでろ過を容易ならしめるため、水分が少なく粘度の高い果実でも、他の果汁や加糖液体を添加することなく高品位のジュース又は果実酒に加工することができるのである。 従って、果実を固液分離せずにそのまま果実酒原料として使用することも可能である。 さらに、麹菌発酵によって糖度も上がるため、原料の果実に水を混合して製造した場合であっても、味が薄くなりすぎることはない。 本発明では、特にAspergillus属の麹菌が使用される。麹菌の例には、Asp.oryzae、Asp.awamori、Asp.sojae,特に、Asp.oryzae.kawachii、Asp.awamori.kawachii(株式会社河内源一郎商店)が挙げられる。特に、米麹、とりわけ白米麹の形態で使用するのが好ましい。 本発明の方法では、特にクエン酸生成能を有する麹菌が使用される。クエン酸生成能を有する麹菌は、好ましくはAspergillus. awamori、より好ましくはAspergillus. awamori. kawachiiである。クエン酸は、レモンやパイナップルのような果実にも含まれる酸であり、新鮮さのあるさわやかな酸味を付与する。従って、クエン酸を含有する糖化液をそのままアルコール発酵させ果実酒とすることにより、飲みやすくさわやかな風味の果実酒となる。 例えば、本発明に従ってバナナを糖化することで、酸濃度が21%から28%に上昇したことを確認した。 従って、本発明の果実酒の製造方法では、クエン酸生成能を持つ麹菌で果実を発酵させることにより、1.クエン酸が豊富となるため、アルコール発酵処理中の腐敗が防止できる、2.麹菌がペクチナーゼ、セルラーゼ等の繊維分解酵素を生成するため、果実汁の流動化を促進することができる、3.麹菌が糖化酵素を生成するため、果実中のデンプンを糖化しアルコールの生産効率を上げることができ、粘度も低下させることができる、という効果により、安全に効率よく各種果実から果実酒を生産することができる。発明の実施の形態 以下に本発明の好適な実施の形態を説明する。1.バナナジュースの製造 バナナは、皮をむいてミキサー等で砕いておくことが好ましい。果実は未熟であっても構わない。本方法では、麹菌の作用によって糖度が増し果肉が柔らかくなるため、未熟バナナのような甘みが乏しく固い果実からでも甘い果汁を得ることか可能である。逆に、熟度の高い果実も使用できる。一般に熟した果実は腐りやすいが、本方法では麹菌が生成する酸により、雑菌による汚染が抑えられ、糖化中の腐敗を防ぐことができる。 麹菌は、米麹、特に白米麹を使用するのが好ましい。また、酸生成能のある麹菌、例えばAspergillus.awamoriを使用すれば、酸を配合させることができる。添加する麹菌の乾物量は、バナナの乾物量の10%以上でありうる。好ましくは、米麹の形態で果実全重量の5〜20%程度添加する。例えば果実10Kgに対して米麹を約1Kg添加する。 混合物に水を添加してもよく、例えば混合物全体の水分を60〜90%、好ましくは65〜80%、より好ましくは70〜80%、さらに好ましくは70〜75%にする量である。果実は、砕いておくことが好ましい。 次に、混和物を糖化処理する。 糖化処理中の温度は、好ましくは55℃以上であり、好ましくは70℃未満、より好ましくは65℃未満である。処理時間は、好ましくは5〜20時間、より好ましくは10時間以上である。 糖化物を濾過し、液部を回収する。2.果実酒の製造 先ず、果実を麹菌と混和する。 本方法では、果実酸含量が少ない種類の果実、特にバナナ及びマンゴーを原料として果実酒を製造することが可能である。本願発明において、果実酸とはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸のような果実に含まれる有機酸を意味し、特に果実の酸味成分である。 果実は未熟であっても構わない。本方法では、麹菌の作用によって糖度が増し果肉が柔らかくなるため、未熟バナナのような甘みが乏しく固い果実からでも果実酒を製造できる。逆に、熟度の高い果実も使用できる。一般に熟した果実は腐りやすいが、本方法では麹菌が生成する酸により、雑菌による汚染が抑えられ、糖化及びアルコール発酵中の腐敗を防ぐことができる。 麹菌は米麹の形態が好ましいが、他の形態でも構わない。本方法では、クエン酸生成能を有する麹菌が使用され、例えばAspergillus. awamori、好ましくはAspergillus. awamori. kawachii(株式会社河内源一郎商店)である。特にペクチナーゼ活性も有する麹菌が好適である。さらに好ましくは、麹菌はセルラーゼ活性を有する。バナナ酒の製造では、麹菌の添加量及び水分については、上記のバナナジュースの場合と同様である。マンゴー酒の製造では、添加する麹菌の乾物量は、マンゴーの乾物量の10%以上でありうる。好ましくは、米麹の形態で果実全重量の3〜20%程度添加する。例えば果実10Kgに対して米麹を約0.6Kg添加する。マンゴーは、バナナに比較して高水分であるため、基本的には加水せずに糖化を行う。例えば混合物全体の水分を70〜90%、好ましくは75〜85%。果実は、砕いておくことが好ましい。 また、必要に応じて麦芽を加えてもよい。 次に、混和物をバナナジュースにおける方法と同様にして糖化処理する。 糖化液に、酵母を添加する。好ましくは糖化液を濾過し、得られた液部に酵母を添加する。酵母は、例えばSaccharomyces属の酵母である。 常法によりアルコール発酵を行う。 例えば、アルコール発酵中は、約10℃に保ち、7日以上、好ましくは10日以上の発酵を行う。バナナジュースの製造例 皮をむいた未熟バナナ140Kg(水分65%)に米麹(Asp.awamori.kawachii)14Kg(水分14%)、更に水を60リットル加えて60℃で12時間糖化した(製品1)。 一方、この対照として未熟バナナ140Kgと水60リットルを加えて60℃で12時間糖化した(製品2)。 この各々を濾過機を用いて固形分と液部に分離した結果を以下に示す。 製品1(発明):液部140リットル、糖度19% 製品2(対照):液部20リットル、糖度6% 対照では、バナナに水を添加してもスラリー状となりバナナの細胞全体が膨潤するのみで、その抽出液を殆ど得ることができなかった。 また使用したバナナが未熟であったこともあり、60℃での糖化処理の後も対照区では液部への糖分の移動は殆ど認められない。 さらに、発明品の液部には甘く濃厚なバナナ風味が移行していた。 従って、バナナにその乾物量の10%以上の乾物量の麹を加え、55℃から70℃の範囲で12時間以上糖化することにより、バナナからバナナジュースを生産することができる。バナナ酒の製造例 砕いたバナナ10Kgに対して、Asp.awamori.kawachiiを使用して常法で生産された米麹1Kg及び水4リットルを混和する。 60℃で15時間、糖化を行う。 糖化前の混和液の糖度は16%であったが、糖化処理後20%に上昇した。 その後、糖化液を濾過し、液部に酵母を加えて10℃にて2週間発酵を行った。 アルコール度7%のバナナ風味のワインが完成した。白米麹のバナナ糖化物における粘度低下作用の実験 バナナと米麹を混合し、高温糖化することにより、混合物の粘度が低下することを確認した。実験方法 バナナ、白米麹、水を下記の配合で混合し、60℃で糖化した。 糖化液組成 バナナ: 66.5% 白米麹: 5.7% 水 : 27.8% 合計 : 100% 12時間糖化後、冷却し、B型粘度計により、粘度を測定した。 対照として、同じ配合で材料を混合した直後に、同様の方法で粘度を測定した。実験結果 粘度測定の結果を次の表に示す。 糖化前と糖化後の粘度には、優位な差があった(P<0.01)。考察 バナナと米麹を混合し、高温糖化することにより、顕著に混合物の粘度が低下した。 米麹のアミラーゼ、ペクチナーゼにより、バナナのデンプン、ペクチン等が分解されたためと考えられる。マンゴー果実酒製造例(甘口) マンゴー94.3kgと米麹(Asp.awamori.kawachii)5.7kgを混合し、60℃で12時間処理した。 冷却後ろ過し、酵母を添加して10℃で発酵させた。 アルコール濃度1%になった時点で発酵を終了させ、再度ろ過し、酵母を除去した。マンゴー果実酒製造例(辛口) マンゴー94.3kgと米麹(Asp.awamori.kawachii)5.7kgを混合し、60℃で12時間処理した。 冷却後ろ過し、酵母を添加して10℃で発酵させた。 アルコール濃度3%になった時点で発酵を終了させ、再度ろ過し、酵母を除去した。白米麹のマンゴー糖化物における粘度低下作用の実験 マンゴーと米麹を混合し、高温糖化することにより、混合物の粘度が低下することを確認した。実験方法 マンゴー、白米麹を下記の配合で混合し、60℃で糖化した。 糖化液組成 材料(水分) 配合 マンゴー(84.7%): 94.3% 白米麹(12.4%) : 5.7% 水 : 0.0% 合計 : 100% 12時間糖化後、冷却し、B型粘度計により、粘度を測定した。 対照として、同じ配合で材料を混合した直後に、同様の方法で粘度を測定した。実験結果 粘度測定の結果を次の表に示す。 糖化前と糖化後の粘度には、優位な差があった(P<0.01)。考察 マンゴーと米麹を混合し、高温糖化することにより、顕著に混合物の粘度が低下した。 米麹のアミラーゼ、ペクチナーゼにより、マンゴーのペクチン等が分解されたためと考えられる。 バナナの果実に、Aspergillus属の麹菌を使用して常法で生産した米麹を添加して、温度55℃から70℃で果実を糖化する工程、及び糖化物を濾過する工程を含むジュースの製造方法。 バナナ及びマンゴーから選択される果実に、クエン酸生成能を有するAspergillus属の麹菌を使用して常法で生産した米麹を添加して、温度55℃から70℃で果実を糖化し、低粘性の糖化液を得る工程、及び、低粘性の糖化液をアルコール発酵させる工程を含む、果実酒の製造方法。 アルコール発酵物を濾過し、液部を果実酒とする工程を更に含む、請求項2に記載の果実酒の製造方法。 果実が、バナナである、請求項2又は3に記載の方法。 バナナが、未熟である、請求項1ないし4の何れか1項に記載の方法。 バナナが、100gあたり5.0g以上の澱粉を含む、請求項1ないし5の何れか1項に記載の方法。 果実が、100gあたり1.0g以上の食物繊維を含む、請求項1ないし6の何れか1項に記載の方法。 糖化前の果実が固液分離されていない、請求項1ないし7の何れか1項に記載の方法。 糖化前に更に水を添加することを含む、請求項1ないし8の何れか1項に記載の方法。 麹菌が、Aspergillus. awamoriである、請求項1ないし9の何れか1項に記載の方法。 麹菌が、Aspergillus. awamori. kawachiiである、請求項10に記載の方法。 糖化を12時間以上行う、請求項1ないし11の何れか1項に記載の方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る