タイトル: | 特許公報(B2)_ペプチドの製造方法 |
出願番号: | 2009524509 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07K 1/02,C07K 1/06,C07K 1/08 |
高橋 大輔 JP 5212371 特許公報(B2) 20130308 2009524509 20080724 ペプチドの製造方法 味の素株式会社 000000066 高島 一 100080791 土井 京子 100125070 鎌田 光宜 100136629 田村 弥栄子 100121212 山本 健二 100122688 村田 美由紀 100117743 高橋 大輔 JP 2007193331 20070725 20130619 C07K 1/02 20060101AFI20130530BHJP C07K 1/06 20060101ALI20130530BHJP C07K 1/08 20060101ALI20130530BHJP JPC07K1/02C07K1/06C07K1/08 C07K 1/00−1/36 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) Tetrahedron Letters, 1974, No.19, pp.1785-1786 Organic Process Research & Development, 2003, Vol.7, pp.28-37 11 JP2008063280 20080724 WO2009014176 20090129 20 20110217 名和 大輔 本発明は、ペプチドの液相合成法、特にワンポット合成可能な方法に関する。 ペプチドの有機化学的合成法は、N−保護アミノ酸とC−保護ペプチド(ジペプチド形成反応時には、C−保護アミノ酸)とのカップリング反応とそれに引き続くN末端脱保護反応とからなるペプチド伸長反応の繰り返しから構成され、C−保護ペプチド(またはC−保護アミノ酸)の態様により固相法と液相法が挙げられる。 固相法では、ペプチド(またはアミノ酸)のC末端を固体支持体に結合した状態でペプチド伸長を行ない、最終段階で目的のペプチドは固体から切り離される。したがって,過剰または未反応により残留した試薬や副生成物は固体支持体の洗浄により容易に淘汰することができる。しかしながら、反応が固体表面に限定されるためスケールアップや反応性などに課題がある。 それに対して、液相法はスケールアップが容易であり、反応性も相対的に良好となるため、ペプチド医薬品などの工業的製造に利用されている。しかし液相法は、カップリング反応および脱保護の各工程において、残留試薬や副生成物を除去するために結晶化などの単離操作が必要であり、製造工程が複雑化し、製造期間が増大するという問題があった。 かかる状況から、液相法の各工程において種々の手段で残留試薬や副生成物を淘汰し、結晶化などの単離操作をすることなく次工程のペプチド伸長反応を行うことによって、ワンポットで目的とするペプチドまで合成する試みがなされている。 非特許文献1および2では、カップリング反応の後に希塩酸および炭酸ナトリウム水溶液による洗浄、および脱保護の後に炭酸ナトリウム水溶液および中性水溶液による洗浄を行うことにより、酸性および塩基性の残留試薬や副生成物を淘汰する方法が記載されている。しかしこの方法では、中性残留物であるN−保護アミノ酸活性エステルを淘汰することが出来ず、それが次工程以降で不純物ペプチド副成の原因となってしまうという問題がある。 特許文献1および非特許文献3には、N−Zアミノ酸やN−Fmocアミノ酸を用いてカップリング反応を行い、反応混合物中に残留するN−保護アミノ酸活性エステルをβ−アラニンエステル(ベンジルエステルまたはフルオレニルメチルエステル)でクエンチングさせ、次いでN−末端保護基の脱保護反応を行うことにより、クエンチングにより生成したN−保護アミノ酸−β−アラニンエステルのZ基又はFmoc基などのN−保護基、およびベンジル又はフルオレニルメチルなどのカルボン酸保護基を同時に脱保護して水溶性物質に導いて水層に淘汰する方法が記載されている。この方法では、脱保護した後でなければ淘汰性のある水溶性物質には導くことはできず、脱保護させた後に塩基性の高い炭酸ナトリウム水溶液で洗浄して、淘汰している。しかしながら、炭酸ナトリウム水溶液など比較的塩基性の強い条件で処理すると、ペプチドのC末端、又はC末端より2番目のアミノ酸残基がプロリンのペプチドである場合には、ジケトピペラジン環が生成する副反応が進行したり、C末端保護基がメチルエステル、エチルエステルなどである場合は加水分解を受けたり、あるいはC末端がシステインの場合はエピメリ化しやすいなど、好ましくない副反応が生じるという問題があった。 非特許文献4には、N−Bocアミノ酸ペンタフルオロフェニルエステルをカップリング反応で用い、残留したN−Bocアミノ酸活性ペンタフルオロフェニルエステルをN,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミド(DMPDA)などのポリアミンとカップリングさせて塩基性物質に導いた後に酸性水溶液洗浄で水層に淘汰する方法が記載されている。この方法では、Boc基をトリフルオロ酢酸などの強酸で脱保護した後、使用した酸を除くため炭酸ナトリウム水溶液などで洗浄する必要があり、塩基処理における上記と同様の問題がある。 また、N末端保護基としてZ基(ベンジルオキシカルボニル)を使用した場合も、脱保護での接触還元反応が酸性条件下で行われ、後処理で塩基を用いて酸を中和する必要があるため、塩基処理における上記と同様の問題がある。米国公開特許第2003/0018164号明細書Peptide Chemistry, vol. 15,p. 61-66, 1997Bull.Chem. Soc. Jpn.,vol. 55, 2165,1982Journal of Peptide Science, vol.11, p. 663−641, 2005Tetrahedron Letter, vol. 19,p. 1785-1786, 1974Journal of Organic Chemistry, vol. 64, p. 4325-4338, 1999Organic Process Research & Development, vol. 7, p. 28−37, 2007 本発明の目的は、Boc−NH基又はZ−NH基の脱保護を含むペプチドの液相合成法において、工業的製造に適したペプチドの液相合成法、特にワンポット合成を可能とする方法を提供することである。 本発明者は上記課題を解決するため、特にC末端付近にプロリン残基やシステイン残基を有したり、C末端保護基がメチルエステル、エチルエステルの場合のペプチド合成において問題となる副反応を回避すべく鋭意検討した結果、意外なことに、脱保護の後、反応混合物のpHを一定範囲に制御するという簡便な操作により、脱保護で用いた酸を除去し、又、ジケトピペラジン生成などの副反応を回避し、かつ目的のC−保護ペプチドを効率よく抽出できることを見出した。かかる知見に基づき、従来、ワンポット合成が困難であったこのようなペプチドに本法を適用したところ、ワンポットで高収率に合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下に示される内容を包含する。[1]液相合成法によるペプチドの製造方法において、(I)Boc−NH基を含むペプチドを酸と反応させることにより脱保護した後、または(II)Z−NH基を含むペプチドを酸性条件下で接触還元に付すことにより脱保護した後に、反応混合物のpHを4〜7に調整する工程を含むことを特徴とする方法。[2]pHを5〜6に調整する、上記[1]に記載の方法。[3]ペプチドのC末端アミノ酸残基がプロリンもしくはシステイン、および/またはC末端から2番目のアミノ酸残基がプロリンである、上記[1]または[2]に記載の方法。[4]ペプチドのC末端がメチルエステル又はエチルエステルで保護されている、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。[5](1)C−保護ペプチドまたはC−保護アミノ酸を、N−Bocアミノ酸またはN−Zアミノ酸と、縮合剤の存在下縮合させる工程、および/または(2)C−保護ペプチドまたはC−保護アミノ酸を、N−Bocアミノ酸活性エステルまたはN−Zアミノ酸活性エステルと縮合させる工程を含む、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。[6]上記[5]の(1)の縮合工程において、活性化剤をさらに存在させる、上記[5]記載の方法。[7]上記[5]記載の縮合工程の後、反応混合物を酸性水溶液洗浄および/または塩基性水溶液洗浄する工程をさらに含む、上記[5]または[6]記載の方法。[8]上記[5]記載の縮合工程の後、反応混合物をクエンチ剤で処理する、上記[5]〜[7]のいずれかに記載の方法。[9]クエンチ剤がDMPDAである、上記[8]記載の方法。[10]上記[1]記載の工程で得られた中間体ペプチドを固体として単離せずに上記[5]記載の工程に供することを含む、上記[5]〜[9]のいずれか一項に記載の方法。[11]ワンポット合成で行う、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。 本発明によれば、Boc−NH基又はZ−NH基の脱保護を含むペプチドの液相合成法において、工業的製造に適したペプチドの液相合成法が提供される。特に従来ワンポット合成が困難であったC末端またはC末端から2番目のアミノ酸残基がプロリンであるペプチド、C末端保護基がメチルエステル、エチルエステルであるペプチド、C末端アミノ酸がシステインであるペプチドをワンポットで合成できる方法が提供される。 本発明の方法は、N末端保護基としてBoc、C末端保護基としてメチルエステルなどの安価かつ脱保護が容易な保護基のみにてペプチド合成を行いうるので、接触還元によるベンジルの脱保護が困難である含硫アミノ酸を含むペプチドのワンポット合成に好適に適用できる。 本明細書において使用される記号、略号の意味を以下に示す。(1)Boc:tert−ブトキシカルボニル(2)Z:ベンジルオキシカルボニル(3)Fmoc:9−フルオレニルメトキシカルボニル(4)Bsmoc:1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−2−イルメトキシカルボニル(5)Alloc:アリルオキシカルボニル(6)Ac:アセチル(7)Me:メチル(8)Et:エチル(9)iPr:イソプロピル(10)tBu:tert−ブチル(11)Bzl:ベンジル(12)Trt:トリチル(13)Fm:9−フルオレニルメチル(14)HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(15)HOCt:6−クロロ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(16)HOAt:1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(17)HOOBt:3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1.2.3−ベンゾトリアジン(18)HOSu:N−ヒドロキシスクシンイミド(19)HOPht:N−ヒドロキシフタルイミド(20)HONb:N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド(21)Bt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール−1−イル(22)Ct:1−ヒドロキシ−6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル(23)At:1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル(24)OBt:3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1.2.3−ベンゾトリアジン−3−イル(25)Su:スクシンイミドイル(26)Pht:フタルイミドイル(27)Nb:5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドイル(28)DCC:N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(29)EDC:N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(30)EDC.HCl:N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(31)DIC:N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(32)BOP:(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(33)PyBOP:(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(34)PyBroP:ブロモトリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(35)HBTU:O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(36)HCTU:O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(37)TBTU:O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(38)HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(39)CDI:カルボニルジイミダゾール(40)DMT−MM:4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホニウム クロリド(41)AAn:アミノ酸残基(下付のnは1以上の任意の整数であり、ペプチドC末端からの順番を示す。)(42)PG0:ペプチドのC末端カルボキシル基の保護基(43)PGn:アミノ基の保護基(下付のnは1以上の任意の整数であり、AAnのアミノ基の保護基であることを示す。)(44)HOE:活性化剤(45)E:活性エステル基(46)Gly:グリシン(47)Ala:アラニン(48)Val:バリン(49)Leu:ロイシン(50)Ile:イソロイシン(51)Met:メチオニン(52)Phe:フェニルアラニン(53)Tyr:チロシン(54)Trp:トリプトファン(55)His:ヒスチジン(56)Lys:リジン(57)Arg:アルギニン(58)Ser:セリン(59)Thr:トレオニン(60)Asp:アスパラギン酸(61)Glu:グルタミン酸(62)Asn:アスパラギン(63)Gln:グルタミン(64)Cys:システイン(65)Pro:プロリン(66)Orn:オルニチン(67)Sar:サルコシン(68)β−Ala:β−アラニン(69)GABA:γ−アミノ酪酸(70)Pal:3−ピリジルアラニン(71)Cpa:4−クロロフェニルアラニン(72)Nal:2−ナフチルアラニン(73)DMPDA:N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン PG0で示されるC末端カルボキシル基の保護基としては、Me、Et、iPr、tBuなどのアルキル基、Bzl、Fm、Trt、ジフェニルメチル、1,1−ジメチルベンジル等のアラルキル基、ジメチルフェニル等が挙げられる。 PGnで示されるアミノ基の保護基としては、Boc、Z、Fmoc、Bsmoc、Alloc、Ac等が挙げられる。 Eで示される活性エステル基とは、アミノ基による求核攻撃を受けて「EO−」として容易に脱離し、アミド結合を生成させうる基を意味し、Bt、Ct,At、OBt、Su、Pht、Nb、ペンタフルオロフェニル等が挙げられる。 本明細書においてアミノ酸を「H−AA−OH」と表示した場合は、左側がアミノ基、右側がカルボキシル基であることを意味し、アミノ基およびカルボキシル基がそれぞれ保護されていないことを意味する。 この場合において、例えば、カルボキシル基が保護されている場合は、「H−AA−OPG0」と表示され、アミノ基が保護されている場合は、「PGn−AA−OH」と表示される。 アミノ基が保護されたアミノ酸のカルボキシル基が活性エステル化されている場合は、「PGn−AA−OE」と表示される。 PGn−AA−OHの対称酸無水物は、「(PGn−AA)2−O」と表示される。 アミノ酸が側鎖官能基を有する場合に、該官能基が保護されている場合は、「H−AA(PG)−OH」(PGは側鎖官能基の保護基を示す)と表示される。 本明細書においてペプチドを「H−AAn’−AAn’−1−・・・−AA1−OH」(下付けのn’は2以上の任意の整数を示す。)と表示した場合は、左側がN末端、右側がC末端であり、N末端およびC末端がそれぞれ保護されていないアミノ酸残基をn’個有するペプチドであることを意味する。ここで、N末端とはアミノ酸残基のα位アミノ基に限定されず、ペプチド伸長が側鎖アミノ基(例えば、Lysのεアミノ基)を介して行われる場合は、当該側鎖アミノ基もN末端に含まれる。以下、同様。 この場合において、例えば、C末端が保護されている場合は、「H−AAn’−AAn’−1−・・・−AA1−OPG0」と表示し、さらにN末端が保護されている場合は、「PGn’−AAn’−AAn’−1−・・・−AA1−OPG0」と表示するものとする。 本発明方法により合成されるペプチドの構成単位となるアミノ酸残基としては、天然アミノ酸または非天然アミノ酸が特に限定されることなく含まれ、また、それらのL体あるいはラセミ体も包含される。 天然アミノ酸としては、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、Cys、Met、Phe、Tyr、Trp、His、Pro、Orn、Sar、β−Ala、GABA等が挙げられる。 非天然アミノ酸としては、上記の天然アミノ酸のD体、Pal、Nal、Cpa等が挙げられる。 また、当該アミノ酸が側鎖に官能基を有する場合に、該官能基を保護基により保護したアミノ酸とすることもできる。かかる側鎖保護アミノ酸としては、例えば、Gluのγ位又はAspのβ位のカルボキシル基をベンジル基で保護したγ-Bzl−Glu又はβ−Bzl−Asp;、Gluのγ位又はAspのβ位のカルボキシル基をtert−ブチル基で保護したγ−tBu−Glu又はβ−tBu−Asp;Lysのεアミノ基を保護したε−Z−Lys、ε−Boc−Lys、ε−iPr−ε−Boc−Lys;CysのSH基をフェニルカルバモイル基で保護したS−フェニルカルバモイル−Cys;CysのSH基をトリチル基で保護したS−Trt−Cys;Tyr及びSerの水酸基の酸素をBzlで保護した誘導体等が挙げられる。 本発明において「Boc−NH基を含むペプチド」とは、該ペプチドが有するアミノ基の一つ以上がBocで保護されたペプチドを意味し、該アミノ基はN末端アミノ基であってもよいし、側鎖のアミノ基であってもよい。 本発明において「Z−NH基を含むペプチド」とは、該ペプチドが有するアミノ基の一つ以上がZで保護されたペプチドを意味し、該アミノ基はN末端アミノ基であってもよいし、側鎖のアミノ基であってもよい。 「Boc−NH基を含むペプチド」または「Z−NH基を含むペプチド」の脱保護は、ペプチドの液相合成法に含まれるアミノ基の脱保護であれば、特に限定されない。例えば、後掲のN末端脱保護工程であってもよいし、最終脱保護における側鎖アミノ基の脱保護であってもよい。好ましくは、後掲のペプチド伸長反応において、次工程のカップリングの対象となるアミノ基を生成させる脱保護である。 本発明において「N−保護アミノ酸」とは、アミノ基が保護されており、カルボキシル基が無保護のアミノ酸を意味し、上記表記法によれば、「PGn−AA−OH」と表示される。 本発明において「N−保護アミノ酸活性エステル」とは、アミノ基が保護され、カルボキシル基がEにより活性エステル化されたアミノ酸を意味し、上記表記法によれば、「PGn−AA−OE」と表示される。 なお、N−保護アミノ酸活性エステルとして単離可能なものは、Eがペンタフルオロフェニル、SuまたはNbであるものであり、その他のN−保護アミノ酸活性エステルは、N−保護アミノ酸を縮合剤(例えば、EDC)および活性化剤(例えば、HOBt)と反応させることにより、反応系中で生成される。 本発明において「N−Bocアミノ酸」とは、アミノ基がBocで保護されており、カルボキシル基が無保護のアミノ酸を意味し、上記表記法によれば、「Boc−AA−OH」と表示される。 本発明において「N−Zアミノ酸」とは、アミノ基がZで保護されており、カルボキシル基が無保護のアミノ酸を意味し、上記表記法によれば、「Z−AA−OH」と表示される。 本発明において、例えば、「(Boc or Z)−AA−OH」と表示した場合は、アミノ基がBocまたはZで保護されており、カルボキシル基が無保護のアミノ酸を意味する。 本発明において「N−Bocアミノ酸活性エステル」とは、アミノ基がBocで保護され、カルボキシル基がEにより活性エステル化された任意のアミノ酸を意味し、上記表記法によれば、「Boc−AA−OE」と表示される。 本発明において「N−Zアミノ酸活性エステル」とは、アミノ基がZで保護され、カルボキシル基がEにより活性エステル化された任意のアミノ酸を意味し、上記表記法によれば、「Z−AA−OE」と表示される。 本発明において、例えば、「(Boc or Z)−AA−OE」と表示した場合は、アミノ基がBocまたはZで保護されており、カルボキシル基が活性エステル化されているアミノ酸を意味する。 N−Bocアミノ酸活性エステルまたはN−Zアミノ酸活性エステルとして単離可能なものは、Eがペンタフルオロフェニル、SuまたはNbであるものであり、その他のN−保護アミノ酸活性エステルは、N−保護アミノ酸を縮合剤(例えば、EDC)および活性化剤(例えば、HOBt)と反応させることにより、反応系中で生成される。 本発明において「C−保護ペプチド」とは、C末端が保護されており、N末端が保護されていない任意の個数のアミノ酸残基を有するペプチドを意味し、上記表記法によれば、「H−AAn’−AAn’−1−・・・−AA1−OPG0」(n’は2以上の整数を示す)と表示される。 本発明において「C−保護アミノ酸」とは、カルボキシル基が保護されており、アミノ基が保護されていないアミノ酸を意味し、上記表記法によれば、「H−AA1−OPG0」と表示される。 本発明において「N,C−ジ保護ペプチド」とは、N末端とC末端の両方が保護されている任意の個数のアミノ酸残基を有するペプチドを意味し、上記表記法によれば、「PGn’−AAn’−AAn’−1−・・・−AA1−OPG0」(n’は2以上の整数を示す)と表示される。また、例えば、N末端がBocで保護されていて、C末端がEtで保護されているN,C−ジ保護ペプチドは「N−Boc−C−Etペプチド」と表示するものとする。 本発明において「中間体ペプチド」とは、ペプチド液相合成における各工程で得られる合成中間体であるペプチドであって、最終的に目的とするペプチドよりアミノ酸残基数が少ないものを意味する。好ましい中間体ペプチドは、後掲のN末端脱保護後に得られるC−保護ペプチドである。 本発明において「縮合剤」としては、DCC、EDC(塩酸塩およびフリー体を含む。)、DIC、BOP、PyBOP、PyBroP、HBTU、HCTU、TBTU、HATU、CDI、DMT−MM等が挙げられる。 本発明において「活性化剤」とは、縮合剤との共存化でカルボキシル基を活性エステル、対称酸無水物などに導いてアミド結合を形成させやすくする試薬であり、「HOE」で示される。具体的には、HOBt、HOCt、HOAt、HOOBt、HOSu、HOPht、HONb、ペンタフルオロフェノール等が挙げられる。 本発明において「クエンチ剤」とは、N−保護アミノ酸活性エステル、N−保護アミノ酸のアシルイソウレア、N−保護アミノ酸の対称酸無水物などのアミン成分と縮合しうる反応混合物中の残留物や副生成物(以下、本明細書において「N−保護アミノ酸活性エステル等」と総称する。)と反応して、塩基性、酸性または水溶性のN−保護アミノ酸誘導体に変換させ、酸性洗浄、塩基性洗浄または水洗によって該誘導体を容易に水層に移行させうる試薬または当該「N−保護アミノ酸活性エステル等」と反応して捕捉する樹脂などを意味し、例えば、DMPDA、ジエチルプロパンジアミン、プロパンジアミン、エチレンジアミン、プトレッシン、アミノメチルピリジンなどの多価アミン類、N−(2−アミノエチル)−アミノメチルポリスチレンなどの固体に担持された求核性除去剤、β−Alaエステル(例えば、β−Ala−OBzl、β−Ala−OFm等)等が挙げられる。N−保護アミノ酸活性エステル等と多価アミン類との反応により、N−保護アミノ酸活性エステル等を塩基性のN−保護アミノ酸アミド誘導体に導くことができ、これを酸性水溶液洗浄で水層に淘汰することができる。 N−保護アミノ酸活性エステル等とβ−Alaエステルとの反応により、N−保護アミノ酸−β−Alaエステルに導き、さらにこれを脱保護することにより酸性の(N−保護)アミノ酸−β−Ala誘導体に導くことができる。これは、塩基性水溶液洗浄で水層に淘汰することができる。 N−保護アミノ酸活性エステル等を固体に担持された求核性除去剤と反応させることにより、N−保護アミノ酸と固体の間にアミド結合が形成され、N−保護アミノ酸を固体表面上に捕捉することができる。 本発明において「ワンポット合成」とは、ペプチドの液相合成法において、各工程で得られる中間体ペプチドを反応容器から取り出さずに目的とするペプチドまで合成することを意味する。 本発明の方法により最終的に合成されるペプチドは特に限定されるものはないが、合成医薬ペプチド、化粧品、電子材料(有機ELなど)、食品などの合成に好適に利用可能である。 該ペプチドの構成アミノ酸残基数は特に限定されないが、一般的な合成ペプチドにみられる3〜15個程度が好適である。 また、本発明の方法は、ジケトピペラジン副成の問題があるC末端、またはC末端から2番目のアミノ酸残基がプロリンである場合や、エピメリ化の問題があるシステインがC末端に位置する場合、又、C末端保護基がメチルエステル、エチルエステルの場合に適している。 本発明は、ペプチドの液相合成法に適用されるものである。ここで、「ペプチドの液相合成法」とは、固相法ではないことを意味し、全ての試薬が溶媒に溶解している場合の他、試薬の全部または一部が溶媒に溶解せず、懸濁などしているいわゆる不均一反応も本発明の方法に含まれる。 本発明のペプチドの液相合成法は、ペプチド合成化学で常用される一般的な方法を特に制限なく採用することができる。 具体的には、下記スキームに示す方法、すなわち、(1)C−保護ペプチド(Pn’)(n’は、2以上の任意の整数を示し、アミノ酸残基がn’個のペプチドであることを意味する。以下、同様。)または一回目のペプチド伸長においてはC−保護アミノ酸(A1)(以下、本明細書において「C−保護ペプチド(Pn)等」(nは、1以上の任意の整数を示し、nが1の場合は、C−保護アミノ酸(A1)を意味する。以下、同様。)と総称する。)を、N−保護アミノ酸(PAn+1)と、縮合剤(および好ましくは活性化剤)の存在下、縮合させるか、あるいは(2)C−保護ペプチド(Pn)等を、N−保護アミノ酸活性エステル(PAEn+1)と縮合させて、アミノ酸残基が一つ伸長したN,C−ジ保護ペプチド(PPn+1)を得る工程(以下、本明細書においてそれぞれ「カップリング工程(1)」および「カップリング工程(2)」という。)、得られたN,C−ジ保護ペプチド(PPn+1)のアミノ保護基を脱保護してC−保護ペプチド(Pn+1)を得る工程(以下、本明細書において「N末端脱保護工程」という。)を1サイクルとする反応(以下、本明細書において「ペプチド伸長反応」という。)の繰り返しからなる方法であり、最終段階で、C−保護ペプチド(Pm)のカルボキシ保護基および側鎖官能基が保護されている場合は当該保護基を脱保護することにより(以下、本明細書において「最終脱保護工程」という。)、目的のペプチド(P)が得られる。 本発明のペプチド合成法において、n番目のペプチド伸長反応を「ペプチド伸長反応(n)」、ペプチド伸長反応(n)を構成する各工程をそれぞれ「カップリング工程(1−n)」、「カップリング工程(2−n)」および「N末端脱保護工程(n)」と表示するものとする。(式中、mは目的とするペプチドのアミノ酸残基数を示し、他の記号は上記で定義した通りである。) 本発明は、一連のペプチド伸長反応の少なくとも一回で、N−Bocアミノ酸またはN−Zアミノ酸を使用してカップリング工程(1)を行うか、またはN−Bocアミノ酸活性エステルまたはN−Zアミノ酸活性エステルを使用してカップリング工程(2)を行い、続くN末端脱保護工程で(I)Boc基を酸と反応させることにより脱保護した後(以下、本明細書において「N末端脱保護工程(I)」といい、ペプチド伸長反応(n)においては「N末端脱保護工程(I−n)」と表示する。)、または(II)Z基を酸性条件下で接触還元に付すことにより脱保護した後(以下、本明細書において「N末端脱保護工程(II)」といい、ペプチド伸長反応(n)においては「N末端脱保護工程(II−n)」と表示する。)のワークアップにおいて、反応混合物のpHを4〜7に調整する工程を含むことを特徴とする(以下、「本発明のペプチド伸長反応」といい、n回目のペプチド伸長反応においては「本発明のペプチド伸長反応(n)」と表示する。)。 本発明のペプチド合成において、少なくとも1回、本発明のペプチド伸長反応が含まれていればよいが、全ての工程を本発明のペプチド伸長反応で行うことが好ましく、それにより目的のペプチドまでワンポットで合成することができる。 以下に、本発明のペプチド伸長反応(n)のスキームを示す。(式中、各記号は上記で定義した通りである。) Boc基またはZ基のN末端脱保護工程のワークアップで、反応混合物のpHを4〜7という範囲に調整することにより、意外なことに塩基性にしなくとも酸を効率的に除去でき、さらに意外なことには反応混合物のpHが酸性域にあるにも係わらず遊離アミノ基を有するC−保護ペプチド(Pn+1)を効率よく抽出できることが見出された。このような弱酸性条件でワークアップが可能となることにより、ジケトピペラジン生成、エステル加水分解、エピメリ化などの副反応を回避し、洗浄のみで残留物などを淘汰することができるので、単離操作をすることなく得られたC−保護ペプチド(Pn+1)を次のペプチド伸長反応に供することができ、ワンポット合成に繋げることができる。 この場合、pHが4より低いと酸が除去されにくく、またC−保護ペプチド(Pn+1)が水層に淘汰されてしまう虞がある。また、pHが7より高いと、ジケトピペラジン生成、エステル加水分解、エピメリ化などの副反応が進行してしまう虞がある。かかるpHの範囲内であれば如何なる値も採用されうるが、より好ましくはpH5〜6であり、pH5.5が特に好ましい。 なお、Journal of Organic Chemistry, vol. 64, p. 4325−4338, 1999およびOrganic Process Research & Development, vol. 7, p. 28−37, 2007には、N−Fmocアミノ酸活性エステルまたはN−Bsmocアミノ酸活性エステルを用いてカップリング工程を行い、続くN末端脱保護工程において4−(アミノメチル)ピペラジン(4−AMP)、トリス(2−アミノエチル)アミン(TAEA)などの多価アミン類を用いることにより副成するジベンゾフルベンなどを塩基性誘導体に導いた後に、当該誘導体を水層に淘汰するために反応混合物をpH5.5に調整していることが記載されている。しかし、上記文献はFmocまたはBsmocの脱保護後の処理であり、本発明とは構成を異にし、また、脱保護の結果副成するジベンゾフルベン誘導体などを除去することを目的としており、本発明とは趣旨が全く異なる。さらには、上記文献は、脱保護後に反応混合物を塩基性から弱酸性に調整するものであり、酸性領域から弱酸性に調整することにより作用効果を奏する本発明の方法を示唆するものではない。 以下に、本発明のペプチド伸長反応について説明する。1.カップリング工程1−1.カップリング工程(1) 本発明のペプチド伸長反応のカップリング工程(1)においては、例えば、溶媒中において、N−Bocアミノ酸またはN−Zアミノ酸(以下、本明細書において「N−保護アミノ酸(B/Z−An+1)」と総称する。)、C−保護ペプチド(Pn)等および縮合剤を(好ましくは、活性化剤と共に)混合することによって一つアミノ酸残基が伸長したN−Boc−C−保護ペプチドまたはN−Z−C−保護ペプチド(以下、本明細書において「N,C−ジ保護ペプチド(B/Z−Pn+1)」と総称する。)が得られる。添加順序は特に限定はないが、C−保護ペプチド(Pn)等が一つ前のペプチド伸長反応(n−1)によって得られたものである場合は、反応容器中のC−保護ペプチド(Pn)等の溶液にN−保護アミノ酸(B/Z−An+1)および縮合剤を添加すればよい。 N−保護アミノ酸(B/Z−An+1)の使用量は、C−保護ペプチド(Pn)等に対して、通常0.9〜2.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量である。この範囲より少ないと、未反応のC−保護ペプチド(Pn)等が残りやすく、多いと過剰のN−保護アミノ酸(B/Z−An+1)を除去しにくくなる。 C−保護ペプチド(Pn)等を酸付加塩として使用した場合には中和するため、塩基が添加される。該塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリンなどが挙げられる。該塩基の使用量は、C−保護ペプチド(Pn)等に対して、通常0.8〜2.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量である。塩基の使用量がこの範囲より少ないと中和が不十分となり反応が進行しにくくなり、多い場合はジケトピペラジン生成やエピメリ化などの副反応が進行する虞がある。 縮合剤は上記で例示したものを特に制限なく使用することができ、EDC(フリー体または塩酸塩)、DIC(フリー体または塩酸塩)が、残留した縮合剤や縮合剤の分解物を洗浄により淘汰することが容易であるため好ましい。特に、C−保護ペプチド(Pn)等が本発明のペプチド伸長反応で得られたものである場合は、EDCのフリー体が好ましい。本発明のペプチド伸長反応で得られるC−保護ペプチド(Pn)等はpH4〜7で処理されているため酸付加塩で得られるが、当該縮合剤のフリー体を使用することにより、中和と活性化を同時に行うことができる。この場合、上記の塩基を使用する必要がなく、反応混合物が塩基性になる虞がないので、ジケトピペラジン生成などの副反応を回避することができる。縮合剤の使用量は、N−保護アミノ酸(B/Z−An+1)に対して通常0.8〜3.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量である。 カップリング工程(1)において、反応を促進し、ラセミ化などの副反応を抑制するために、好ましくは、活性化剤が添加される。活性化剤を存在させた場合は、反応系中で一時的にN−保護アミノ酸の活性エステルなどが生成する。 活性化剤は上記で例示したものを制限無く使用することができ、HOBt、HOOBt、HOCt、HONb等が好ましい。活性化剤の使用量は、N−保護アミノ酸(B/Z−An+1)に対して通常、0.01〜1.2当量、好ましくは0.05〜0.5当量である。 溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリルなどまたはそれらの混合溶媒が挙げられ、酢酸エチルまたはDMFが好ましい。溶媒の使用量は、C−保護ペプチド(Pn)等に対して、通常3〜50倍重量であり、好ましくは5〜20倍重量である。 反応温度は、通常−20〜40℃、好ましくは0〜20℃の範囲内である。反応時間は、上記温度範囲内で、通常0.5〜24時間である。 カップリング工程(1)反応終了後のワークアップは、カップリング工程(2)と同様であるので、後掲の1−3においてまとめて説明する。1−2.カップリング工程(2) 本発明のペプチド伸長反応のカップリング工程(2)においては、例えば、溶媒中において、N−Bocアミノ酸活性エステルまたはN−Zアミノ酸活性エステル(以下、本明細書において「N−保護アミノ酸活性エステル(B/Z−AEn+1)」と総称する。)およびC−保護ペプチド(Pn)等を混合することによってN,C−ジ保護ペプチド(B/Z−Pn+1)が得られる。添加順序は特に限定はないが、C−保護ペプチド(Pn)等が一つ前のペプチド伸長反応(n−1)によって得られたものである場合は、反応容器中のC−保護ペプチド(Pn)等の溶液にN−保護アミノ酸活性エステル(B/Z−AEn+1)を添加すればよい。 N−保護アミノ酸活性エステル(B/Z−AEn+1)の使用量はカップリング工程(1)におけるN−保護アミノ酸(B/Z−An+1)と同様である。 また、塩基、溶媒およびその使用量、反応温度、反応時間等のその他の反応条件は、カップリング工程(1)と同様である。1−3.カップリング工程(1)および(2)のワークアップ カップリング工程(1)およびカップリング工程(2)の反応終了後、「N−保護アミノ酸活性エステル等」を洗浄により淘汰し得る誘導体に導くため、または捕捉するために、好ましくは反応混合物にクエンチ剤が添加される。 クエンチ剤は上記で例示したものを制限無く使用することができ、DMPDAなどが好ましい。クエンチ剤の使用量は、C−保護ペプチド(Pn)等に対するN−保護アミノ酸活性エステル(B/Z−AEn+1)またはN−保護アミノ酸(B/Z−An+1)の使用量の過剰使用量を考慮して決定すればよい。クエンチ剤の使用量は、当該過剰使用量に対して通常0.5〜5.0当量、好ましくは1.0〜3.0当量である。 クエンチ剤とN−保護アミノ酸活性エステル等との反応は、通常−20〜40℃、好ましくは0〜30℃の範囲内で、10〜60分行えばよい。 カップリング工程(1)および(2)のワークアップでは、好ましくは、酸性水溶液洗浄および/または塩基性水溶液洗浄が行われる。酸性水溶液洗浄により、N−保護アミノ酸活性エステル等とクエンチ剤との反応により生成する塩基性誘導体、C−保護ペプチド(Pn)等、残留した縮合剤またはその分解物、塩基などを水層に淘汰することができる。塩基性水溶液洗浄により、活性化剤、残留したN−保護アミノ酸(B/Z−An+1)などを水層に淘汰することができる。 酸性水溶液洗浄は、例えば、反応混合物を希塩酸水溶液(例えば、1N塩酸水溶液)、クエン酸水溶液、リン酸水溶液、硫酸水溶液などと攪拌後、分液して水層を除去することにより行われる。 塩基性水溶液洗浄は、エステル加水分解などの副反応を回避するため、あまり長時間かけて行わないようにするのが好ましい。なお、N末端が保護された状態のN,C−ジ保護ペプチド(B/Z−Pn+1)の塩基性水溶液洗浄では、ジケトピペラジン生成の副反応はほとんど進行しない。 具体的には、反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液(例えば、5%炭酸水素ナトリウム水溶液)、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液などと攪拌後、分液して水層を除去することにより行われる。 必要に応じてさらに水洗し、有機層を濃縮することにより、N,C−ジ保護ペプチド(B/Z−Pn+1)を得ることができ、そのまま容器から取り出すことなく、続くN末端脱保護工程に供することができる。また、濃縮することなく、N,C−ジ保護ペプチド(B/Z−Pn+1)の溶液としてN末端脱保護工程に用いてもよい。 本発明のペプチド合成において、Boc、Z以外のアミノ保護基を使用するカップリング工程が含まれる場合も、上記と同様に行えばよい。2.N末端脱保護工程2−1.N末端脱保護工程(I) 本発明のペプチド伸長反応におけるN末端脱保護工程(I)においては、N末端がBocで保護されたN,C−ジ保護ペプチド(B/Z−Pn+1)(以下、本明細書において「N−Boc−C−保護ペプチド(BPn+1)」と称す。)を、溶媒中または無溶媒で、酸と反応させることによりC−保護ペプチド(Pn+1)が得られる。具体的には、カップリング工程で得られたN−Boc−C−保護ペプチド(BPn+1)の濃縮残査に酸を添加すればよい。 酸としては、トリフルオロ酢酸、塩酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トシル酸などが挙げられ、トリフルオロ酢酸、ギ酸、塩酸が好ましい。 酸の使用量は、N−Boc−C−保護ペプチド(BPn+1)に対して、通常5〜100当量、好ましくは10〜50当量である。この範囲より少ないと、未反応のN−Boc−C−保護ペプチド(BPn+1)が残りやすく、多いと酸の除去操作に時間を要することとなる。 溶媒を使用する場合、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチル、ジオキサンなどまたはそれらの混合溶媒が挙げられ、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチルが好ましい。溶媒の使用量は、N−Boc−C−保護ペプチド(BPn+1)に対して、通常3〜50倍重量であり、好ましくは5〜20倍重量である。トリフルオロ酢酸を酸として使用する場合は、無溶媒が好ましい。 反応温度は、通常−10〜40℃、好ましくは0〜30℃の範囲内である。反応時間は、上記温度範囲内で、通常0.5〜15時間である。 反応終了後のワークアップでのpH調整は、N末端脱保護工程(II)と同様であるので、後掲の2−3でまとめて説明する。2−2.N末端脱保護工程(II) 本発明のペプチド伸長反応におけるN末端脱保護工程(II)においては、N末端がZで保護されたN,C−ジ保護ペプチド(B/Z−Pn+1)(以下、「N−Z−C−保護ペプチド(ZPn+1)」と称す。)を、酸性条件下、接触還元に付すことによりC−保護ペプチド(Pn+1)が得られる。具体的には、カップリング工程で得られたN−Z−C−保護ペプチド(ZPn+1)を、溶媒中、触媒存在下、水素還元条件又はギ酸等を添加する水素移動型還元条件にて脱保護させる。水素還元条件の場合、酸を添加しなくても反応は進行するが、酸を添加したほうが効率的である。 添加する酸としては塩酸、酢酸、メタンスルホン酸、トシル酸などが挙げられる。酸の量は脱保護されて、遊離するアミノ基と等量以上になるように添加すればよい。 触媒としては、パラジウム炭素、水酸化パラジウム、酸化白金、ルテニウム炭素、ロジウム炭素、ラネーニッケルなどが挙げられる。触媒の使用量は、N−Z−C−保護ペプチド(ZPn+1)に対して、0.01〜200重量%の範囲から適宜選択すればよい。 溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば、メタノール、エタノール、酢酸エチル、DMF、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどまたはそれらの混合溶媒が挙げられ、酢酸エチルが好ましい。溶媒の使用量は、N−Z−C−保護ペプチド(ZPn+1)に対して、通常3〜50倍重量であり、好ましくは5〜20倍重量である。 水素還元条件の場合は、具体的には、水素雰囲気下、反応混合物を攪拌すればよい。水素圧は常圧〜10気圧の範囲から適宜選択される。 水素移動型還元条件の場合は、ギ酸、ギ酸アンモニウム、シクロヘキサジエン、シクロヘキセン、トリイソプロピルシランなどの水素源が添加される。水素源の使用量は、N−Z−C−保護ペプチド(ZPn+1)に対して、通常1〜100当量であり、好ましくは1.5〜10当量である。 反応温度は、通常−10〜40℃、好ましくは0〜30℃の範囲内である。反応時間は、上記温度範囲内で、通常0.5〜15時間である。反応終了後、濾過により触媒を除去した後に、濾液をpH調整に付せばよい。2−3.N末端脱保護後のワークアップでのpH調整 N末端脱保護工程(I)または(II)のワークアップでのpH調整法としては特に限定はない。例えば、必要に応じて酸を減圧蒸留などによりある程度除去した後に、反応混合物のpHをモニターしながら、塩基(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなど)の水溶液を滴下して、所望のpHに調整する方法、予めpHを調整した緩衝液を加える方法、反応混合物を緩衝液中に加える方法またはそれらを組み合わせた方法などが挙げられる。好ましいpH調製方法として、N末端脱保護工程後の反応混合物と塩基とを、pHをモニターしながら同時に反応容器に添加する方法が挙げられる。反応容器には予め酢酸エチルと水との混合溶媒などの溶媒を加えておき、該溶媒中に反応混合物と塩基を加えてもよい。 また、pHをモニターする必要がなく、簡便にpHを調整することができるので、緩衝液を加える方法も好ましい。反応混合物に酢酸エチル、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸ブチルなどの溶媒を加えた後に、上記緩衝液で洗浄してもよい。使用する緩衝液としては、リン酸(リン酸2水素ナトリウム+リン酸水素2ナトリウム)、トリス塩酸緩衝液(塩酸+(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、酢酸緩衝液(酢酸+ 酢酸ナトリウム)などが挙げられる。緩衝液の濃度は特に限定されず、0.5〜5Mの範囲から適宜選択すればよい。 pH調整後、反応混合物を攪拌し、液相を分離後、水層を除去する。有機層は必要に応じてさらに水洗し、濃縮することにより、C−保護ペプチド(Pn+1)を得ることができ、そのまま容器から取り出すことなく、次のペプチド伸長反応に供することができる。また、濃縮することなく、C−保護ペプチド(Pn+1)の溶液として次のペプチド伸長反応に用いてもよい。 本発明のペプチド合成において、BocおよびZ以外のN末端保護基を使用したN末端脱保護工程が含まれる場合は、ペプチド合成化学で常用されるアミノ基保護基の種類に応じた一般的なN−末端脱保護方法により行えばよい。 以上のように、カップリング工程後に、反応混合物にクエンチ剤が添加されることで、酸性水溶液洗浄および/または塩基性水溶液洗浄により簡便に不純物が除去され、さらにN末端脱保護工程の後に、反応混合物がpH調整されることで、抽出により簡便に不純物等が除去されるため、ペプチドの液相合成法において、次の縮合工程、すなわち次のペプチド伸長反応を、中間体ペプチドを反応容器から取り出すことなく行うことができる。すなわち、得られた中間体ペプチドを晶析等により固体として単離せずに次の縮合工程を行うことができる。このように本発明の方法によれば、ペプチドの液相合成法により、目的とする最終ペプチドをワンポット合成することが可能である。3.最終脱保護工程 本発明のペプチド合成で、目的のペプチドまで構築されたC−保護ペプチド(Pm)のPG0や側鎖保護基を脱保護することにより、目的のペプチド(P)を得ることができる。 最終脱保護工程は、PG0または側鎖保護基の種類に応じた自体公知の脱保護法を特に制限なく採用することができる。 例えば、Me、Etなどの低級アルキル基の場合は、水性有機溶媒や極性有機溶媒などの溶媒中、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基と、0〜40℃で、0.5〜10時間反応させることにより脱保護することができる。 tBuの場合は、クロロホルム、酢酸エチルなどの溶媒中、トリフルオロ酢酸、塩酸などの酸と、0〜40℃で、0.5〜10時間反応させることにより脱保護することができる。 Bzlの場合は、メタノールやDMFなどの溶媒中、パラジウム炭素などの触媒を用いて、0〜50℃で、1〜50時間、水素化反応させるか、あるいは、フッ化水素、トリフルオロメタンスルホン酸、HBrなどの強酸と、−20〜40℃で、0.5〜10時間反応させることにより脱保護することができる。 最終脱保護工程において、Boc基またはZ基で保護された側鎖アミノ基を脱保護する場合も、N末端脱保護工程と同様にワークアップにおいて反応混合物のpHを調整して行うことができる。 本発明の方法により、合成されたペプチド(P)は、ペプチド化学で常用される方法に従って単離精製することができる。例えば、最終脱保護工程のワークアップにおいて、反応混合物を濃縮、沈殿化、イオン交換、HPLC精製などのクロマト精製などによって、ペプチド(P)を単離精製することができる。 以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。 HPLC分析は以下の条件で行った。カラム:YMC−Pack−ODS-A−302 150×4.6mm 12nm, 15μm溶離液:A液 0.1%TFA水 B液 0.1%TFA/MeCNカラム温度:40℃流速 1ml/min波長:220nm参考例1 H−Ala−OBzl.TsOH(10.0 g, 28.46 mmol)、Boc−Pro−OH(6.74 g, 31.30 mmol)及びHOBt(0.43 g, 3.13 mmol)をDMF(30 ml)に溶解し、氷冷下でEDC(5.35 g, 34.46mmol)を加えて3時間攪拌した。 酢酸エチル(150 ml)を加え、混合物を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸水、及び、飽和食塩水にて順次洗浄し有機層を濃縮した。残渣にヘキサンを加えて攪拌して析出物を濾取し減圧乾燥させて、Boc−Pro−Ala−OBzl(9.38g, 24.91mmol)を得た。比較例1 Boc−Pro−Ala−OBzl (2.50 g, 6.64 mmol)にトリフルオロ酢酸(21 ml)を氷冷下で加えて1.5時間攪拌させた。反応液を減圧濃縮して、残渣油状物に酢酸エチル(33 ml)を加え、10%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層にBoc−Ile−OH (1.75 g, 7.30 mmol)及びHOBt(0.10 g, 0.74 mmol)を溶解し、EDC.HCl(1.54 g, 8.03 mmol)を氷冷下で添加して2時間攪拌した。反応液をHPLC分析したところ、目的物であるBoc−Ile−Pro−Ala−OBzlは痕跡量しか認められなかった。比較例2 H−D−Pal−OMe.2HCl(D−3−ピリジルアラニンメチルエステル塩酸塩)(1.0 g, 3.97 mmol)、Boc−D−Cpa−OH(Boc−D−4−クロロフェニルアラニン)(1.19 g, 3.97 mmol)及びHOBt(0.053 g, 0.40 mmol)をN−メチルピロリドン(6 ml)と水 (0.6 ml)に溶解し、氷冷下でEDC(0.68 g, 4.37 mmol)を加え、16時間攪拌させた。反応液に酢酸エチル(30 ml)を加え、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸水、及び、飽和食塩水にて順次洗浄し、有機層を濃縮した。残渣にトリフルオロ酢酸 (10 ml)を加え、2時間攪拌させ、減圧濃縮した。残渣油状物に酢酸エチル(20 ml)を加え、10%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を濃縮したところ、H−D−Cpa−D−Pal−OMeが得られたが、HPLC分析したところ、加水分解したH−D−Cpa−D−Pal−OHが含まれていた。実施例1 Boc−Pro−Ala−OBzl (2.50 g, 6.64 mmol)にトリフルオロ酢酸(21 ml)を氷冷下で加えて1.5時間攪拌させ、反応液を減圧濃縮して残査油状物に酢酸エチル(33 ml)を加え、pH5.5の2Mリン酸バッファーにて洗浄した。水層を酢酸エチル(20 ml)で抽出し、有機層に混ぜ、Boc−Ile−OH (1.75 g,7.30 mmol)及びHOBt(0.10g, 0.74mmol)を加えて、EDC.HCl(1.54 g, 8.03 mmol)を氷冷下で添加して2時間攪拌した。反応液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、1M塩酸及び飽和食塩水にて順次洗浄し、得られた有機層を濃縮し、Boc−Ile−Pro−Ala−OBzlを収率94%で得た。実施例2 H−Ala−OBzl.TsOH(2.28 g, 6.50 mmol)、Boc−Pro−OH (1.54 g, 7.15 mmol)及びHOBt(0.1 g, 0.74mmol)を酢酸エチル (35 ml)に溶解し、氷冷下でEDC(1.22 g, 7.87 mmol)を加えて3時間攪拌した。 反応液に DMPDA(N,N−ジメチルプロパンジアミン)(0.16 ml, 1.58mmol)を加えて30分間攪拌し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸水、及び、飽和食塩水にて順次洗浄し、有機層を濃縮した。得られた残査にトリフルオロ酢酸 (11 ml)を加えて氷冷下で1時間攪拌して、濃縮乾固した。残渣に酢酸エチル(35 ml)を加え、混合物をpH5.5のリン酸バッファーにて洗浄した。水層を酢酸エチル(20 ml)で抽出し、最初の有機層と混ぜて、Boc−Ile−OH (1.56 g, 6.50 mmol)及びHOBt(0.08 g 0.74 mmol)を加えて、EDC.HCl(1.11 g, 7.15 mmol)を氷冷下で添加して16時間攪拌した。反応液にDMPDA(0.16 ml, 1.58mmol)を加えて30分間攪拌し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、1M塩酸及び飽和食塩水にて順次洗浄し、得られた有機層を濃縮し、Boc−Ile−Pro−Ala−OBzlを収率88%(vs H−Ala−OBzl)で得た。実施例3 H−D−Pal−OMe.2HCl(D−3−ピリジルアラニンメチルエステル塩酸塩)(1.0 g, 3.97 mmol)、Boc−D−Cpa−OH (Boc−D−4−クロロフェニルアラニン)(1.19 g, 3.97 mmol)及びHOBt(0.053 g, 0.40 mmol)をN−メチルピロリドン(6 ml)と水(0.6 ml)に溶解し、氷冷下でEDC(0.68 g, 4.37 mmol)を加え、16時間攪拌させた。反応液に酢酸エチル(30 ml)を加え、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸水、及び、飽和食塩水にて順次洗浄し有機層を濃縮した。残渣にトリフルオロ酢酸 (10 ml)を加え、2時間攪拌させ、減圧濃縮した。残渣油状物に酢酸エチル(20 ml)を加え、pH5.5のリン酸バッファーで洗浄し、有機層をHPLC分析したところ、加水分解体のH−D−Cpa−D−Pal−OHは検出されなかった。濃縮してDMF(6 ml)、Ac−D−Nal−OH(アセチル−D−ナフチルアラニン)(0.92 g, 3.56 mmol)及びHOOBt(ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン)(0.58 g, 3.56 mmol)を加えて、氷冷下にてEDC(0.61 g, 3.91 mmol)を滴下して、16時間室温で攪拌した。反応液に水(30 ml)を加え炭酸ナトリウムにてpH8に調整して析出物を濾過して減圧乾燥させ、Ac−D−Nal−D−Cpa−D−Pal−OMe (1.66 g, 2.77 mmol)を得た。実施例4 H−D−Ala−OMe.HCl(D−アラニンメチルエステル塩酸塩)(0.25 g, 1.79 mmol)、Boc−Pro−OH(0.39 g, 1.79 mmol)及びHOBt(0.024 g, 0.18 mmol)をDMF(2 ml)に溶解し、氷冷下でEDC(0.31 g, 1.97 mmol)を加え、16時間攪拌させた。酢酸エチル(10 ml)を加え、塩化ナトリウムを加えた5%炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸水、及び、飽和食塩水にて順次洗浄し、水層に酢酸エチルを加えて抽出して、有機層を合わせて濃縮した。残渣にトリフルオロ酢酸(5 ml)を加え、2時間攪拌し、減圧濃縮した。残渣油状物に酢酸エチル(10 ml)を加え、pH5.5の2Mリン酸バッファーを加え、Na2CO3でpH5.5に調整して塩化ナトリウムを加えて分層させた。有機層に、Z−(iPr)Lys(Boc)−OH(0.61 g, 1.43 mmol)、HOBt(0.020 g, 0.14 mmol)を添加して、EDC(0.25 g, 1.57 mmol)を氷冷下で加えて16時間攪拌した。反応液を、塩化ナトリウムを加えた5%炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸水、及び、飽和食塩水にて順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた有機層を濃縮して、Z−(iPr)Lys(Boc)−Pro−D−Ala−OMe(0.76g, 1.25mmol)を得た。 本発明の方法は、ペプチド医薬品などの工業的製造に好適に利用できる。 本出願は、日本で出願された特願2007−193331を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。 本発明がその好ましい態様を参照して提示又は記載される一方、本明細書中において、添付の請求の範囲で包含される発明の範囲を逸脱することなく、形態や詳細の様々な変更をなし得ることは当業者に理解されるであろう。本明細書中に示され又は参照されたすべての特許、特許公報及びその他の刊行物は、参照によりその全体が取り込まれる。 液相合成法によるペプチドの製造方法において、(I)Boc−NH基を含むペプチドを酸と反応させることにより脱保護した後、または(II)Z−NH基を含むペプチドを酸性条件下で接触還元に付すことにより脱保護した後に、反応混合物のpHを4〜7に調整する工程を含むことを特徴とする方法。 pHを5〜6に調整する、請求項1に記載の方法。 ペプチドのC末端アミノ酸残基がプロリンもしくはシステイン、および/またはC末端から2番目のアミノ酸残基がプロリンである、請求項1または2に記載の方法。 ペプチドのC末端がメチルエステル又はエチルエステルで保護されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。(1)C−保護ペプチドまたはC−保護アミノ酸を、N−Bocアミノ酸またはN−Zアミノ酸と、縮合剤の存在下縮合させる工程、および/または(2)C−保護ペプチドまたはC−保護アミノ酸を、N−Bocアミノ酸活性エステルまたはN−Zアミノ酸活性エステルと縮合させる工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 請求項5の(1)の縮合工程において、活性化剤をさらに存在させる、請求項5記載の方法。 請求項5記載の縮合工程の後、反応混合物を酸性水溶液洗浄および/または塩基性水溶液洗浄する工程をさらに含む、請求項5または6記載の方法。 請求項5記載の縮合工程の後、反応混合物をクエンチ剤で処理する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。 クエンチ剤がDMPDAである、請求項8記載の方法。 請求項1記載の工程で得られた中間体ペプチドを固体として単離せずに請求項5記載の工程に供することを含む、請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。 ワンポット合成で行う、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。