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タイトル:特許公報(B2)_球形マンニトール結晶粒子
出願番号:2009516238
年次:2013
IPC分類:A61K 47/10,A61K 9/14,A61K 9/20,C07H 3/02,A23L 1/236


特許情報キャッシュ

里見 仁 稲葉 麻記 JP 5337027 特許公報(B2) 20130809 2009516238 20080509 球形マンニトール結晶粒子 三菱商事フードテック株式会社 000223090 太田 恵一 100080447 里見 仁 稲葉 麻記 JP 2007140923 20070528 20131106 A61K 47/10 20060101AFI20131017BHJP A61K 9/14 20060101ALI20131017BHJP A61K 9/20 20060101ALI20131017BHJP C07H 3/02 20060101ALI20131017BHJP A23L 1/236 20060101ALI20131017BHJP JPA61K47/10A61K9/14A61K9/20C07H3/02A23L1/236 A A61K 47/10 A23L 1/236 A61K 9/14 A61K 9/20 C07H 3/02 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 国際公開第2002/070013(WO,A1) 国際公開第2002/069934(WO,A1) 国際公開第2001/072285(WO,A1) 米国特許第03145146(US,A) 特開2006−028130(JP,A) 特開昭61−085330(JP,A) 特許第3447042(JP,B2) Jessica Elversson et al,Journal of Pharmaceutical Sciences,2005年 9月,94(9),p.2049-2060 7 JP2008058646 20080509 WO2008146590 20081204 14 20110502 原田 隆興 本発明は食品や医薬品の原料などとして有用な真球度の高い球形マンニトール結晶粒子に関する。 D−マンニトールは六炭糖アルコールの一種であり、安定性に優れ、通常は白色の結晶性粉末で臭いはなく、スクロースの60〜70%ほどの温和な甘味をもち、スクロースやグルコースよりも低カロリーで、人体に対して安全であるなどの特性を持つので、各種食品及び各種医薬品の基剤、あるいは錠剤や散剤の賦形剤などに幅広く使用されている。 マンニトールの結晶形状は、水溶液から晶出した場合には微細な針状結晶になるのでその粒子は流動性が劣り、また、マンニトールは一般にクラフト袋で包装した微細な結晶性粉末として流通、利用されることが多いが、流通や保存の際に固結して著しく商品価値を損ねることがある。 更に、水から晶出したままのマンニトール結晶は、直接打錠した場合に得られる錠剤が崩れやすく硬度が低いことや、打錠の際にキャッピングやスティッキングなどの現象が発生して連続的な打錠が困難であるなどの問題点もあった。 このようなマンニトール結晶の持つ欠点を補うことを目的として、過去に様々な方法が提案されている。 その一つにマンニトール結晶を球状に加工することにより、マンニトール結晶の持つ欠点を補う方法がある。マンニトールを球状にすることにより、流動性、固結、崩壊性の改善を目指すもので、いくつかの報告がなされている。 特許第3447042号明細書には、「飽和水溶液の粘度が10cps以下である水溶性単一物質を95重量%以上含有する粒子を造粒してなるアスペクト比が1.2以下の球形であって、集合体のカサ密度が0.65g/ml以上、安息角35度以下であり、かつ磨損度1.0以下である球形粒の製造法であって・・・」という製造方法が開示されており、「水溶性単一物質」としてD−マンニトールが例示されている。 特許第3491887号明細書には、「95重量%以上が710μm以下の粒子で、50重量%以上が75〜710μmの範囲内の粒子からなる造粒物集合体であり、該造粒物集合体のかさ密度が0.5g/ml以上、安息角40゜以下である糖アルコール造粒物集合体の製造方法であって、糖アルコールを95重量%以上含有する粉末を、流動造粒コーティング装置に仕込み、容器内に流動化空気を供給して粉末を流動させ、糖アルコール水溶液を噴霧して造粒し、造粒物をふるいで篩過することを特徴とする直接圧縮加工用糖アルコール造粒物集合体の製造方法」が開示されており、「糖アルコール」としてD−マンニトールが例示されている。 特許第3910939号明細書には、「水溶性単一物質を95重量%以上含有する粒子を造粒してなるアスペクト比が1.2以下の球形であって、集合体のカサ密度が0.65g/ml以上、安息角35度以下である球形粒であって、(イ)該水溶性単一物質が糖アルコール、ビタミンC及び塩化ナトリウムの群より選ばれた1種からなり、(ロ)該水溶性単一物質の飽和水溶液の粘度が25℃〜45℃の範囲で10cps以下であり、(ハ)該球形粒の摩損度が1.0%以下であることを特徴とする球形粒」が開示されており、「糖アルコール」としてD−マンニトールが例示されている。 しかしながら上述の3つの特許明細書で採用されている加工技術は、何れも造粒法によるものであり、様々な課題が残されていた。 造粒法は、核となるマンニトール粒子の周囲に、必要に応じ適当な溶媒や溶液を用いて、周囲のマンニトール粒子を次々に凝集させたり、その周囲を乾燥させたりして固形成分を析出させる方式や、またこれらを組合せて適用するなどの方法で実施されるが、いずれも、原料となる粉末を徐々に大きな塊状に成長させる方法である。 マンニトール結晶のような針状の結晶を原料粉末として用いると、微細な粒径で真球度の高い粒子を造粒方式で形成させるのは極めて困難であり、製造コストが極めて嵩むことや、粒子内部まで結晶が密に充填された重い粒子になってしまい、且つ粒径が大きくなりがちで、軽く微細な粒子が必要な用途に対応できないという問題点があった。 また、特開昭61−85330号公報には、直接打錠用賦形薬の製造法として、D−マンニトールを噴霧乾燥することを特徴とする直打用賦形薬の製造法が開示されている。しかしながら、当該公報に記載の製造条件は、D−マンニトールの25〜33重量%水溶液を用い、排熱温度120〜140℃で噴霧乾燥するというおおまかなもので、そもそも真球状の粉末を得ようと意図したものではなく、実際に得られた粉末の写真が当該公報の第1図に示されているが、その形状はいびつであり球には程遠い形状である。特許第3447042号明細書特許第3491887号明細書特許第3910939号明細書特開昭61−85330号公報 マンニトールに期待される用途の中で大きなものに、生理活性物質の担体としての役割があるが、その場合、通常はマンニトールの微細な粒子に生理活性成分などを保持させることが必要とされ、採用される加工方法は殆どが流動造粒法、攪拌造粒法などである。従って、マンニトールに望まれる特性は、活性成分を吸着担持する能力が高いことが望ましいので、吸油率が高いこと及び真球度が高いこと、また、同時に加工の際に粒子が軽く浮遊流動しやすいことが望ましいので、かさ密度が低いこと、更に、後に打錠した場合に十分な錠剤硬度を与えることが望ましいので、加工前の粒子の段階から直接打錠した場合に高い硬度が得られる性質を備えていることが望まれていたのである。 本発明の目的は、従来のマンニトール球形粒や直接打錠可能なマンニトール粉末のさまざまな問題点を解消した、吸油率が高く、且つ流動性に優れ、直接打錠した場合に十分な硬度が得られる真球度の高いマンニトール球状粒子を提供することにある。さらに、本発明の目的は、本発明品が粒子中に大きな空隙を有するといった立体的特徴をもつことから、従来の造粒物や細粒状にはない極めて高い吸油率をもつマンニトール粒子を提供することにある。 本発明者らは、上述の目的を達成するため鋭意検討を行った結果、結晶化速度及び水分蒸発速度の微妙な調節を行うことにより、得られたマンニトール粒子から極めて真球度が高く、吸油率が高く、且つかさ密度が低い球形マンニトール粒子を見出し、更に直接打錠した場合に十分な硬度が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。 第一に、アスペクト比が1.0〜1.2、試験法Aによる吸油率1が25〜60%、吸油率2が15〜40%である球形マンニトール結晶粒子である。 第二に、平均粒子径15〜165μmの粉末のゆるみかさ密度が0.35〜0.60である上記第一に記載の球形マンニトール結晶粒子である。 第三に、平均粒子径15〜165μmの粉末の安息角が30〜50度である上記第一または第二に記載の球形マンニトール結晶粒子である。 第四に、平均粒子径15〜85μmの粉末のゆるみかさ密度が0.35〜0.60である上記第一に記載の球形マンニトール結晶粒子である。 第五に、平均粒子径15〜85μmの粉末の安息角が30〜50度である上記第一または第四に記載の球形マンニトール結晶粒子である。第六に、平均粒子径15〜65μmの粉末のゆるみかさ密度が0.35〜0.60である上記第一に記載の球形マンニトール結晶粒子である。 第七に、平均粒子径15〜65μmの粉末の安息角が30〜50度である上記第一または第六に記載の球形マンニトール結晶粒子である。 第八に、直接打錠した場合に得られる錠剤の硬度が7〜20kgfである上記第一から第七の何れか一つに記載の結晶性マンニトール粉末である。 第九に、平均粒子径15〜100μmの粉末のゆるみかさ密度が0.35〜0.60および/又は安息角が30〜50度である上記第一に記載の球形マンニトール結晶粒子である。 第十に、平均粒子径15〜85μmの粉末のゆるみかさ密度が0.35〜0.60および/又は安息角が30〜50度である上記第一に記載の球形マンニトール結晶粒子である。 第十一に、平均粒子径15〜65μmの粉末のゆるみかさ密度が0.35〜0.60および/又は安息角が30〜50度である上記第一に記載の球形マンニトール結晶粒子である。 第十二に、74μmよりも小さい粒径の粒子を30%以上有する、第一から第十一の何れか一つに記載の球形マンニトール結晶粒子である。 また、本発明は、造粒法によらず、噴霧乾燥法により製造された上記第一から第十二の何れか一つに記載の結晶性マンニトール粉末である。 本発明品は、従来のマンニトール粒子には無いほど吸油率が高く、且つかさ密度が低いという粉体特性を有した、真球度の高い球形マンニトール粒子である。 本発明に係る球形マンニトール結晶粒子は、真球度が高いという特徴に加え、粒子中に大きな空隙を有するという立体的特徴があるので、極めて高い吸油率を示す。 本発明におけるアスペクト比とは、粒子の長軸と短軸との比であり、真球度を示す目安となるものである。長軸、短軸の比は、試料粒子を走査型電子顕微鏡(S−2600N、株式会社日立製作所製)を用いて無蒸着、加速電圧20kV、真空度50Pa、拡大倍率1500倍で写真撮影し、30個の球形粒について長軸の長さ(長径)と長軸の中点から垂直に引いた短軸の長さ(短径)を各々測定し、各々について短径に対する長径の比を求め、30個の平均値で示したものである。 本発明における試験法Aによる吸油率とは以下の通りである。中鎖脂肪酸トリグリセライド(花王株式会社製、ココナードMT)30gと試料マンニトール15gを100mlのガラス製ビーカーに入れ、粉体を破砕しないように穏やかにスパチュラで油と粉末試料とをかき混ぜたのち、真空定温乾燥機(VOS−300D、EYELA社製)に入れ、室温で0.67パスカルまで減圧して3時間油を含浸させる。 次に、325メッシュのろ布を敷いた遠沈管(底に孔のあるもの)に移し、遠心分離器(国産遠心器株式会社製、H−500R)を用いて約1300Gで10分間遠心分離する。遠心分離後の試料入り遠沈管重量と遠沈管風袋重量の測定値から遠心分離後に遠沈管内に残った粉末試料の重量(重量a)を求め、下記式1により計算された値を吸油率1とする。 吸油率1(%)=[(重量a−15)/15]×100 (式1) 更に、100mlのガラス製ビーカーに遠心分離後の試料入り遠沈管を入れ、n−ヘキサン20gを粉末試料の上から加え、遠心分離器を用いて約1300Gで10分間遠心分離する。次に、遠心分離後の試料入り遠沈管重量と遠沈管風袋重量の測定値から遠心分離後に遠沈管内に残った粉末試料の重量(重量b)を求め、下記式2により計算された値を吸油率2とする。 吸油率2(%)=[(重量b−15)/15]×100 (式2) 本発明における平均粒子径とは、一般にメディアン径と呼ばれるものであり、粉体粒子積算分布の50%を与える粒子径である。 レーザー回折式粒度分布測定機MT−3000(日機装株式会社製)を用い、分散溶媒としてイソプロパノール(試薬一級、純度99.0%以上、和光純薬工業株式会社製)を用い、測定機が適量と表示されるまで試料を添加した後、超音波出力40Wで超音波処理を30秒間行なった後、平均粒子径を測定する。一種類の試料につき前述の操作を2回繰り返し実施し、その平均値を平均粒子径とする。この際、測定結果から粒度分布の算出も行った。 本発明におけるゆるみかさ密度とは、粉体を所定の容器内に自然落下させた状態の充填密度であり、A.B.D粉体特性測定器(筒井理化学器械株式会社製)を用いて以下の方法で測定する。 測定円台に試料容器(容積100ml)を置き、試料用ホッパーから排出ノズルを取った状態で試料を落下させ試料容器に山盛りに充填し、上部をすり切りヘラですり切りし、その重量を測定する。一種類の試料について同じ操作を3度繰り返し、その平均値をゆるみかさ密度とする。 本発明における安息角とは、粉体を円盤上に自然落下させた状態で形成される山の角度であり、A.B.D粉体特性測定器(筒井理化学器械株式会社製)を用いて以下の方法で測定する。試料用ホッパーに投入した試料を振動棒、網(目開き1000μm)、排出ロート、ノズル(内径1cm)を通し、安息角試料台の円板上に落下させ山を作り、異なる向き3ヶ所でその山の角度を角度計で測定し、同じ操作を3度繰り返し行い、その平均値を安息角とする。 本発明における直接打錠した場合の硬度とは、ステアリン酸マグネシウムを外部滑沢剤として用い、試料を打錠機(VIRG0512SS2AZ、(株)菊水製作所製)にて、打錠圧1tで錠剤(錠剤重量200mg、錠剤形状φ8mm平、無地)を調製し、各試料10錠の錠剤硬度(錠剤硬度計、TH−203CP型、富山産業株式会社製)を測定して平均値を計算したものである。 本発明の球形マンニトール結晶粒子は、例えばマンニトール水溶液を噴霧乾燥機で、アトマイザー又はノズルから放出されたマンニトール水溶液の液滴が表面張力により球形の形状を形成した後、結晶析出、水分蒸発の際にそのままの形を維持できるよう、導入空気の量や温度を厳しく制御することにより得られるが、結晶化速度と水分蒸発速度のバランスを調整し、最初に液滴表面より結晶を析出させ、さらに加熱や水分の気化に伴う膨張による球形粒子の破裂を抑制し、粒子内部の水分を徐々に排出させることによって真球度の高い殻状の結晶を形成しながら内部に球状の空洞や多くの空隙を形成させることができるのである。 また、乾燥機の胴直径や高さ、サイクロンなど粒子の回収設備の大きさを考慮した上で、乾燥機への導入空気量や供給量を制御し、噴霧乾燥機内や排出部、粒子を回収する設備内での粒子同士の衝突や装置内壁への衝突や接触による物理的摩損を抑制することにより、真球度の高い殻状の結晶を回収することができる。 従って、設備の形、乾燥機の直径、高さ、空気の導入速度、温度、マンニトール液を霧状の液滴にするノズルの口径やアトマイザーの直径や形、回転数、排出部の中での空気の線速度やサイクロンなどの回収部での線速度など、本発明の球形マンニトール結晶粒子を得るための条件は、それぞれの条件の組み合わせが複雑であり、また、個々の設備の特性によっても異なる場合が多く、一概に条件を限定することが極めて困難である。 しかし、スプレードライヤーとして大川原化工機株式会社製のODT−20型を用いた場合は、入口温度を90〜160℃程度、Mピン型ディスク(ディスク直径84mmφ、大川原化工機株式会社製)を採用した場合には、回転数として毎分7000〜25000回転、水分蒸発速度として3〜22kg/hrとなるよう、送風量を5〜15m3/min.程度でマンニトール液の供給量を5〜25kg/hrとすることにより本発明の球形マンニトール結晶粒子を得ることができる。 更に詳細且つ具体的な条件は、実施例を示すことにより説明する。 例示された本発明の球形マンニトール結晶粒子の製造方法において使用される原料マンニトールの品質は、適度な結晶化速度を具備する必要があるが、医薬品として局方に定められるか又は食品添加物として定められている規格を備えるものであれば有利に採用することができる。スプレードライヤーに導入するにあたっては、マンニトール水溶液の濃度は5〜35重量%程度が有利に採用できる。 得られた本発明の球形マンニトール結晶粒子は、以下の物理化学的性質を備えている。 本発明によって得られる球形マンニトール結晶粒子は、極めて微細な粒子でありながら従来に無い優れた流動性を示し、また極めて真球に近いという立体的形状、さらには球形マンニトール内部に従来の品には見られないほどの、大きな中空部や多くの空隙部を有すること、などの特徴があることから、これらの特徴を活かすことで、飲食品や医薬品の様々な分野で応用可能である。 例えば、本発明に係る球形マンニトール結晶粒子は、極めて微細な粒子径と優れた流動性を活用して、球形顆粒体、各種粉体の造粒品、各種粉体の顆粒品、などの芯材や核としての幅広い利用が可能である。 また、本発明に係る球形マンニトール結晶粒子は、球形マンニトール内部が中空部を有することから、例えば、アスコルビン酸やクエン酸やリンゴ酸などの各種酸味料、アセスルファムKやスクラロースやアスパルテームなどの高甘味剤、マルチトールやキシリトールやソルビトールやエリスリトールなどの各種糖アルコール類、ミントやバニラなどの各種フレーバー類や香味料類、その他、各種基剤や食品素材の他、医薬品類などを中空部または空隙部に包含させることが可能であり、それらを担持する化合物としての利用が可能である。 また、本発明に係る球形マンニトール結晶粒子は、球形マンニトール内部に大きな中空部や空隙部が存在して充填性が優れており、直接打錠した場合にも高い錠剤硬度を示すので打錠用粉末としても極めて有利に採用可能である。さらに、本発明に係る球形マンニトール結晶粒子は、中空部や空隙部に薬効成分や各種基剤を充填させることで、体内での薬効成分や各種基剤の溶出時間の調整を可能とする除放性製剤としての利用も可能である。 以下に、本発明に係る球形マンニトールについて、実施例を交えて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の例に限定されるものではない。 (実施例1で用いるマンニトール水溶液の調製) マンニトールとして市販の結晶品5重量部(マンニットP、三菱商事フードテック株式会社製)に純水95重量部を加え、固形物が完全に溶解し、清澄な溶液になるまで加温しながら溶解し、温度30℃の固形分濃度5重量%(以下%は指定の無い限り重量%を示す)のマンニトール水溶液を得て実施例1に用いた。 (実施例2、3、5で用いるマンニトール水溶液の調製) マンニトールとして市販の結晶品20重量部(マンニットP、三菱商事フードテック株式会社製)に純水80重量部を加え、固形物が完全に溶解し、清澄な溶液になるまで加温しながら溶解し、温度70℃の固形分濃度20%のマンニトール水溶液を得て実施例2、3、5に用いた。 (実施例4で用いるマンニトール水溶液の調製) マンニトールとして市販の結晶品15重量部(マンニットP、三菱商事フードテック株式会社製)に純水85重量部を加え、固形物が完全に溶解し、清澄な溶液になるまで加温しながら溶解し、温度70℃の固形分濃度15%のマンニトール水溶液を得て実施例4に用いた。 (実施例6、7で用いるマンニトール水溶液の調製) マンニトールとして市販の結晶品30重量部(マンニットP、三菱商事フードテック株式会社製)に純水70重量部を加え、固形物が完全に溶解し、清澄な溶液になるまで加温しながら溶解し、温度70℃の固形分濃度30%のマンニトール水溶液を得て実施例6、7に用いた。 (実施例8で用いるマンニトール水溶液の調製) マンニトールとして市販の結晶品35重量部(マンニットP、三菱商事フードテック株式会社製)に純水65重量部を加え、固形物が完全に溶解し、清澄な溶液になるまで加温しながら溶解し、温度70℃の固形分濃度35%のマンニトール水溶液を得て実施例8に用いた。 (実施例で用いた噴霧乾燥機) 試料製造装置としてスプレードライヤーODT−20型(大川原化工機株式会社製)を用いた。装置下部に製品回収缶を備え、装置上部にMピン型ディスク(ディスク直径84mmφ、大川原化工機株式会社製)が装着されたアトマイザーを設置し、マンニトール水溶液は2本のテフロン(登録商標)製チューブ(外径6mm、内径4mmφ)を通じて、アトマイザー内に導入した。熱風は、噴霧される液に対して同一方向に空気を噴出して渦流を生ずる並流式で、装置上部から導入し、装置下部から排出した。 アトマイザーの回転数を25,000rpmとし、スプレードライヤー内に導入する熱風の温度は入口部で150℃とし、導入する熱風の送風量は14m3/min.とした。また、マンニトール5%水溶液の導入量は6.5kg/hrとした。予め調製したマンニトール水溶液30kgを導入後、スプレードライヤー下部の製品缶内に蓄積された粉末物を回収し、これを流動層乾燥機(FLO−5、株式会社大川原製作所製)を用いて、80℃で10分間乾燥し、本発明の球形マンニトール結晶粒子(本発明品1)を得た。 得られた本発明品1の物理化学的性質及び直接打錠した場合の錠剤硬度の測定結果を表1〜2に示した。 アトマイザーの回転数を25,000rpmとし、スプレードライヤー内に導入する熱風の温度を入口部で100℃とし、導入する熱風の送風量は7m3/min.とした。また、マンニトール20%水溶液の導入量を6.5kg/hrとした。予め調製したマンニトール水溶液30kgを導入後、スプレードライヤー下部の製品缶内に蓄積された粉末物を回収し、これを流動層乾燥機(FLO−5、株式会社大川原製作所製)を用いて、80℃で10分間乾燥し、本発明の球形マンニトール結晶粒子(本発明品2)を得た。 得られた本発明品2の物理化学的性質及び直接打錠した場合の錠剤硬度の測定結果を表1〜2に示した。 アトマイザーの回転数を15,000rpmとした他は実施例2と同じ工程を経て、本発明の球形マンニトール結晶粒子(本発明品3)を得た。 得られた本発明品3の物理化学的性質及び直接打錠した場合の錠剤硬度の測定結果を表1〜2に示した。 アトマイザーの回転数を8,500rpmとし、スプレードライヤー内に導入する熱風の温度を入口部で150℃とし、マンニトール15%水溶液の導入量を6.5kg/hrとした他は実施例2と同じ工程を経て、本発明の球形マンニトール結晶粒子(本発明品4)を得た。 得られた本発明品4の物理化学的性質及び直接打錠した場合の錠剤硬度の測定結果を表1〜2に示した。 アトマイザーの回転数を7,000rpmとした他は実施例2と同じ工程を経て、本発明の球形マンニトール結晶粒子(本発明品5)を得た。 得られた本発明品5の物理化学的性質及び直接打錠した場合の錠剤硬度の測定結果を表1〜2に示した。 アトマイザーの回転数を7,000rpmとし、スプレードライヤー内に導入する熱風の温度を入口部で95℃とし、マンニトール30%水溶液の導入量を6.5kg/hrとした他は実施例2と同じ工程を経て、本発明の球形マンニトール結晶粒子(本発明品6)を得た。 得られた本発明品6の物理化学的性質及び直接打錠した場合の錠剤硬度の測定結果を表1〜2に示した。 アトマイザーの回転数を7,000rpmとし、マンニトール30%水溶液の導入量を6.5kg/hrとした他は実施例2と同じ工程を経て、本発明の球形マンニトール結晶粒子(本発明品7)を得た。 得られた本発明品7の物理化学的性質及び直接打錠した場合の錠剤硬度の測定結果を表1〜2に示した。 アトマイザーの回転数を7,000rpmとし、スプレードライヤー内に導入する熱風の温度を入口部で115℃とし、マンニトール35%水溶液の導入量を6.5kg/hrとした他は実施例2と同じ工程を経て、本発明の球形マンニトール結晶粒子(本発明品8)を得た。 得られた本発明品8の物理化学的性質及び直接打錠した場合の錠剤硬度の測定結果を表1〜2に示した。 また、比較品1として、三菱商事フードテック株式会社から市販されているマンニットPを、比較品2として、ロケットフレール社から市販されているPearlitol 100SDを、比較品3として、ロケットフレール社から市販されているPearlitol 200SDを、比較品4として、メルク社から市販されているParteck M200を、それぞれ用いた。 測定結果から、本発明品は微細な粒子径であるにも拘わらずゆるみかさ密度が小さく、アスペクト比が1.2以下で真球状に近い形状をもっていることがわかる。 本発明品において、マンニトール粒子の平均粒子径が15〜165μmの場合アスペクト比は1.0〜1.2の値を示し、平均粒子径が15〜85μmの場合アスペクト比は1.0〜1.1の値を示し、平均粒子径が15〜65μmの場合アスペクト比は1.0を示し、ほぼ真球に近い値となる。 また、本発明品の安息角は30〜50度の範囲内の数値を示すことがわかる。 表1の結果から、本発明品は吸油率1及び2が共に大きな数値を示し、油を放出し難い大きな空洞または空隙が粒子内部に存在することがわかる。一方、比較品は、吸油率1については大きな数値を示すものもあるが、吸油率2は本発明品に較べて非常に低い値を示し、粒子内部の空洞または空隙が少ないことがわかる。 また、表1の結果から、本発明品のマンニトール粒子の平均粒子径が15〜165μmの場合良好な硬度示し、平均粒子径が15〜85μmの場合さらに高い硬度を示し、平均粒子径が15〜65μmの場合最も高い硬度を示す。 また、表2の粒度分布の結果を合わせると、本発明品において、粒径74μm以下のものが30%以上含まれる粒子はより良好な硬度を示す。 一部の比較品に高い錠剤硬度を示すものがあるが、本発明品の錠剤硬度はすべて、打錠用粉末としての使用に耐える高い数値を示し、表1における吸油率1及び2の結果を併せ考えると、本発明品は、総合的に比較品より優れたものであるということができる。 一方、図1に本発明品3、4、6、7、及び比較品1〜4の電子顕微鏡写真を示す。走査型電子顕微鏡(S−2600N、株式会社日立製作所製)を用いて無蒸着、加速電圧20kV、真空度50Pa、拡大倍率1000倍(本発明品及び比較品1)または500倍(比較品2〜4)で撮影したものである。写真からも明らかのように、本発明品は微細なマンニトール結晶が真球状の粒子を形成しているのに対し、比較品は比較的大きな粒子が寄り集まっていたり、大きな結晶がそのままの形で存在したりしており、本発明品とは明らかに異なることがわかる。拡大倍率1000倍の本発明品3、4、6、7と比較品1及び拡大倍率500倍の比較品2〜4の電子顕微鏡写真である。 アスペクト比が1.0〜1.2、試験法Aによる吸油率1が25〜60%、吸油率2が15〜40%であって、試験法Aによる吸油率1及び吸油率2について、 (1)中鎖脂肪酸トリグリセライド30gと試料マンニトール15gを100mlのガラス製ビーカーに入れ、粉体を破砕しないように穏やかにスパチュラで油と粉末試料とをかき混ぜたのち、真空定温乾燥機に入れ、室温で0.67パスカルまで減圧して3時間油を含浸させ、 (2)次に、325メッシュのろ布を敷いた遠沈管(底に孔のあるもの)に移し、遠心分離器を用いて1300Gに設定し10分間遠心分離し、遠心分離後の試料入り遠沈管重量と遠沈管風袋重量の測定値から遠心分離後に遠沈管内に残った粉末試料の重量(重量a)を求め、[(重量a−15)/15]×100により計算された値を吸油率1とし、 (3)更に、100mlのガラス製ビーカーに遠心分離後の試料入り遠沈管を入れ、n−ヘキサン20gを粉末試料の上から加え、遠心分離器を用いて1300Gに設定し10分間遠心分離し、次に、遠心分離後の試料入り遠沈管重量と遠沈管風袋重量の測定値から遠心分離後に遠沈管内に残った粉末試料の重量(重量b)を求め、[(重量b−15)/15]×100により計算された値を吸油率2とし、 平均粒子径15〜165μmの粉末のゆるみかさ密度が0.35〜0.60で、安息角が30〜50度である球形マンニトール結晶粒子。 平均粒子径15〜85μmの粉末のゆるみかさ密度が0.35〜0.60である請求項1に記載の球形マンニトール結晶粒子。 平均粒子径15〜85μmの粉末の安息角が30〜50度である請求項1または2に記載の球形マンニトール結晶粒子。 平均粒子径15〜65μmの粉末のゆるみかさ密度が0.35〜0.60である請求項1に記載の球形マンニトール結晶粒子。 平均粒子径15〜65μmの粉末の安息角が30〜50度である請求項1または4に記載の球形マンニトール結晶粒子。 直接打錠した場合に得られる錠剤の硬度が7〜20kgfである請求項1から5の何れか一つに記載の球形マンニトール結晶粒子。 噴霧乾燥法により製造されたことを特徴とする、請求項1から6の何れか一つに記載の球形マンニトール結晶粒子。


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