タイトル: | 公表特許公報(A)_神経精神障害の治療用の非不安誘発性精神賦活薬の製造のための1,7−ジメチルキサンチンの使用 |
出願番号: | 2009514766 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 31/522,A61P 25/22,A61P 25/28,A61P 25/26,A61P 25/24,A61P 21/00,A61P 1/04,A61P 25/34,A61P 25/16,A61P 21/02,A61P 25/20,A61P 25/18,C07D 473/06 |
ジャン、コステンタン リュスィーラ、マンスイ ピエール、ソコロフ JP 2009539921 公表特許公報(A) 20091119 2009514766 20070608 神経精神障害の治療用の非不安誘発性精神賦活薬の製造のための1,7−ジメチルキサンチンの使用 ピエール、ファーブル、メディカマン 500033483 ユニベルシテ、ド、ルアン 508367016 UNIVERSITE DE ROUEN 吉武 賢次 100075812 中村 行孝 100091487 紺野 昭男 100094640 横田 修孝 100107342 ジャン、コステンタン リュスィーラ、マンスイ ピエール、ソコロフ FR 0605189 20060612 A61K 31/522 20060101AFI20091023BHJP A61P 25/22 20060101ALI20091023BHJP A61P 25/28 20060101ALI20091023BHJP A61P 25/26 20060101ALI20091023BHJP A61P 25/24 20060101ALI20091023BHJP A61P 21/00 20060101ALI20091023BHJP A61P 1/04 20060101ALI20091023BHJP A61P 25/34 20060101ALI20091023BHJP A61P 25/16 20060101ALI20091023BHJP A61P 21/02 20060101ALI20091023BHJP A61P 25/20 20060101ALI20091023BHJP A61P 25/18 20060101ALI20091023BHJP C07D 473/06 20060101ALN20091023BHJP JPA61K31/522A61P25/22A61P25/28A61P25/26A61P25/24A61P21/00A61P1/04A61P25/34A61P25/16A61P21/02A61P25/20A61P25/18C07D473/06 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW EP2007055668 20070608 WO2007144315 20071221 16 20081212 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086CB07 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA02 4C086ZA12 4C086ZA15 4C086ZA16 4C086ZA18 4C086ZA22 4C086ZA26 4C086ZA68 4C086ZA94 4C086ZC39発明の背景 本発明は、パラキサンチンとしても知られる1,7−ジメチルキサンチン(1,7−ジメチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン)に関する。パラキサンチンは、植物であるオオツヅラフジ(Sinomenium acutum)中に存在することが知られる天然物である(Jiang et al,, 1998a)。 他のメチルキサンチンは周知の天然物である。1,3,7−トリメチルキサンチン(カフェイン)はアラビアコーヒーノキ(Coffea arabica)またはロブスタコーヒーノキ(Coffea robusta)の豆から抽出される。1,3−ジメチルキサンチン(テオフィリン)は、カメリアシネンシス(Camellia sinensis)のようなツバキ科(Theacea)植物の葉に著しく存在する。3,7−ジメチルキサンチン(テオブロミン)は、カカオ(Theobroma cocoa)豆に著しく存在する。これらの天然メチルキサンチンは、コーヒー、チョコレートまたは紅茶を含む飲料または料理の成分である。ヒトをはじめとする哺乳類では、パラキサンチンはカフェイン代謝産物でもある(Yesair et al., 1984)。 カフェインは、コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミンおよびメチルフェニデートと同じように、精神刺激薬として分類される。ヒトが消費する現在のカフェイン系飲料および製品は、覚醒、集中力、注意および知的機能を刺激するそれらの性質でよく知られている。メチルフェニデートなどの他の精神刺激薬は、注意欠陥/多動性障害(ADHD)として知られている病変を治療するための治療薬として使用される。 カフェインはまた、不安状態を誘発するともいわれており、パニック発作を引き起こすことがある。例えば、多量のコーヒーを消費する患者は、一般的不安症状を患う可能性があり、この症状は「カフェイン中毒」と呼ばれている(Greden, 1974)。実験的には、高用量のカフェインの投与は健康なボランティアにおける不安測定値の増加をもたらす(Stern et al., 1989)。カフェインの不安惹起作用は、パニック発作を起こす傾向がある患者においてより強い(Boulenger et al., 1984)。パニック発作は、DSM−III−R基準(American Psychiatric Association, 1987)に従って、カフェインを投与することによって実験的に引き起こすことができる(Nickel and Uhde, 1994)。最後に、青年期の人での別の実証研究では、その対象者らはカフェインによって不安になったと述べた(Bernstein et al., 1994)。 驚くべきことに、本発明者らは、パラキサンチンは、カフェインとは対照的に、動物においてその不安惹起活性が無く、さらに、抗不安活性を有するということを見出した。このように、本発明者らは神経精神障害(その症状には睡眠障害および不安障害がある)を治療するための非不安誘発性精神賦活薬剤(non-anxiogenic psychoanaleptic drug)の製造のためのパラキサンチンの使用を提案する。 Delay and Denicker(1957)によって示され、1961年の世界精神医学会(the World Congress of Psychiatry)において承認された分類によれば、心とアナレプチコス(analeptikos)を意味し、気付け薬を意味するギリシア精神学の「精神賦活薬(剤)」は、覚醒を誘発し、居眠りしたいという欲求を軽減し、思考、注意および知的能力を刺激する薬剤を意味する。現在の薬理学テキストでは、パラキサンチンは精神賦活物質として分類されていない。動物、特に齧歯類では、精神賦活作用は、動物を新しい環境に置いたときの自発運動を測定することによって評価される。 「不安」とは、一般的な心配、無力感または恐怖を伴う差し迫った詳細不明の危険感を意味する。「不安惹起(の)」とは、不安をもたらし、または不安の測定値を増加させる可能性が高い任意の作用を意味する。不安惹起状況は、動物、特に齧歯類では、それらにとって危険であると思われる通常の状況にそれらを置くことによって生み出すことができる。「抗不安(の)」とは、不安または不安の増加を妨害する任意の作用を意味する。動物では、抗不安作用は、その動物が危険だと察知する状況の心配をせず、この状況に関連する環境へとさらに入るか、またはこの状況の中でより多くの時間を過ごすときに示される。 特発性過眠症は、長時間夜間睡眠、覚醒困難(多くの場合錯乱を含む)、および多少持続性の日中の眠気を兼ね備えた障害である。 ナルコレプシーは、日中の過度の眠気を特徴とする障害であり、1日に数回起こり、2〜30分続く抑制不能の睡眠発作を示す。これらの睡眠発作に続いて通常の覚醒があるが、ほんの数時間である。これらのような覚醒変動は注意および記憶困難を伴う。 鬱病は、強い悲しみの気持ち、悲観的不安および卑下を特徴とする、よく見られる気分障害であり、多くの場合、熱意、活力または意欲の喪失、疲労、無快感または快感経験困難、および睡眠障害を伴う。患者がDSM−III−R(American Psychiatric Association, 1994)に詳細に記載されている鬱病基準を示すときに、大鬱病、または大鬱病エピソードの診断がなされる。重症度の低い型は未分類の鬱病性障害または気分変調と考えられており、数年続くことがある。鬱病患者は抗鬱薬で治療され、この抗鬱薬は、多くの場合、不安、眠気および疲労などの始末に負えない副作用を有する。 機能障害は、幅広い生理的機能に関連するものであり、かつ器質的病変に起因するのではなく、むしろ肝臓または心臓などの器官が働く様式に起因するものである。機能障害は、後に起こる病気の原因になることがある。 注意欠陥/多動性障害、すなわちADHDは、最も多く見られる小児期神経精神障害である。ADHDは、3つの一次症状:不注意、活動亢進および衝動性を特徴とする。ADHDを有する子供には、程度の差はあってもこれらの症状の3つ総てが存在し得る。そのため、この障害は3つのタイプに細分される:混合型、不注意優位型および多動性/衝動性優位型(American Psychiatric Association, 1987)。 「薬学上許容される」とは、動物またはヒトにおいて投与されるときに悪影響、アレルギー作用または他の望ましくない反応を一切及ぼさない分子的実体および組成物を指す。 本明細書において、「薬学上許容される賦形剤」との用語には、任意の希釈剤、助剤または賦形剤、例えば防腐剤、増量剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、抗菌薬、抗真菌薬または腸および消化管吸収を遅延させる薬剤が含まれる。これらの媒質またはベクターの使用は当技術分野で周知である。前記薬剤がパラキサンチンと化学的に不相溶性でない限り、治療組成物においてパラキサンチンとそれを併用することが考えられ得る。他の治療薬もまた、パラキサンチンを含有する治療組成物に組み込み得る。 本発明に関し、本明細書において用いられる「治療」との用語は、該用語が適用される障害、またはその症状の1以上の発生または進行を予防または阻害することを意味する。 「治療上有効な量」とは、本発明に従って所望の治療効果を得るのに有効であるパラキサンチンの量を意味する。 本発明によれば、「患者」との用語は、特定の病変による影響を受けるか、または影響を受ける可能性があるヒトまたは非ヒト哺乳類を指す。好ましくは、前記患者はヒトである。 本発明者らは、マウスにおいて、パラキサンチンが1mg/kg〜最大50mg/kgの用量で自発運動に対して用量依存的刺激作用(dose-dependant stimulating effect)を発揮することを実証している(実施例1参照)。同じ条件下でカフェインも刺激作用を発揮するが、その作用は低く、それが生じるのはより狭い範囲の用量においてである(10〜25mg/kg)。 物質の不安惹起能または抗不安能を測定するホールボード試験では、50mg/kgの用量のカフェインは不安惹起作用を有するが、この作用は50mg/kgの用量のパラキサンチンの場合には認められない(実施例2参照)。 同様に物質の不安惹起能または抗不安能を測定するブラック・ホワイトボックス試験では、50mg/kgの用量のパラキサンチンは抗不安作用を有するが、一方で、同じ50mg/kg用量でのカフェインは有していない(実施例3参照)。 物質の不安惹起能または抗不安能を測定する高架式十字迷路試験では、カフェイン(50mg/kgの用量)は不安惹起するが、パラキサンチン(50mg/kgの用量)はそうではない。50mg/kgの用量のパラキサンチンは抗不安作用を有する(実施例4参照)。 のどの渇いたラットが水を消費するたびに弱い電気ショックの形で罰を受けるコンフリクト状況において物質の不安惹起能または抗不安能を測定するフォーゲル型コンフリクト試験では、パラキサンチンは不安惹起作用を有していなかった(実施例5参照)。 マウスが2プレート間を横断する(この種では通常の探索行動である)ときに弱い電気ショックにより罰を受けるフォープレート試験(four-plate test)では、抗不安物質はプレート間を横断する数を増加させる。この試験では、パラキサンチンは25mg/kgの用量において抗不安活性を有する(実施例6参照)。 このように、パラキサンチンは、非不安誘発性であり続けながら、動物において少なくともカフェイン程度の刺激作用を示し、ある特定の試験では抗不安作用さえ示す。当業者の最新の理解によれば、不安惹起性でなく、精神賦活薬活性を有することが分かっている薬剤はない。現在の技術状況において精神賦活性と非不安誘発性を兼ね備えた製品は知られていない。同様に、総ての公知の抗不安薬、特にベンゾジアゼピン構造のマイナートランキライザーは眠気を誘発する。 よって、本発明者らは、例として本明細書に列挙した障害について、睡眠障害または不安障害の治療のための治療組成物におけるパラキサンチンの使用を提案するが、決してこれらの例に限定されない。 本発明の第一の態様において、パラキサンチンは、特発性過眠症およびナルコレプシーの治療のために使用される。過眠症は後者の障害の一次症状であり、パラキサンチンは、不安を引き起こすことなく、または不安を増加させることなく、かかる患者を救済することができる。 本発明の別の態様では、パラキサンチンは、鬱病に罹患している患者を治療するために使用される。疲労、精神運動遅延および睡眠障害は鬱病の症状であり、不安に関連していることが多い。本発明によれば、パラキサンチンは、大鬱病、未分類の鬱病性障害または気分変調に罹患している患者を治療するために使用することができる。好ましくは、これらの患者は、不安を伴うまたは伴わない睡眠障害に罹患している。 本発明の別の態様は、パラキサンチンにより注意欠陥/多動性障害を治療することを含む。この障害は、現在、メチルフェニデートなどの精神刺激薬で治療されている。本発明によれば、パラキサンチンは、集中力を高め、知的能力を刺激するその非不安誘発性精神賦活作用により、注意欠陥/多動性障害に有益な影響を与えるであろう。 本発明の別の態様は、パラキサンチンにより機能障害に罹患している患者を治療することを含む。機能障害は、精神運動遅延および疲労を伴うことが多く、精神運動遅延および疲労はパラキサンチンによって、機能障害を悪化させる要因である不安を引き起こすことなく、改善の見込みがある症状である。本発明は上記の障害に限定されず、とりわけ、慢性疲労、過敏性腸症候群および線維筋痛症に有用であり得る。 本発明の特定の特徴によれば、パラキサンチンは、鬱病、線維筋痛症、過敏性腸症候群、ニコチン離脱、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、時差ぼけまたは交代勤務に伴う疲労および睡眠または集中力障害の治療用の非不安誘発性精神賦活薬剤を製造するために使用される。 本発明の別の特定の特徴によれば、パラキサンチンは、鬱病またはニコチン離脱に伴う不安障害の治療用の非不安誘発性精神賦活薬剤を製造するために使用される。 パラキサンチンの刺激作用に関連して、不安惹起作用が存在せず、抗不安作用を誘発しさえすることが注意および記憶に好ましい影響をもたらし得ることを考えると、本発明者らはまた、認知的欠陥、例えば加齢に関連した軽度または中等度の認知的欠陥(多くの場合、初期型の認知症またはアルツハイマー病である)を治療するためのパラキサンチンの使用も提案する。認知障害はまた、統合失調症などの精神障害に伴っても起こる。本発明によれば、パラキサンチンは、統合失調症または他の型の精神病の治療において助剤として使用することができる。 疲労および睡眠障害が神経障害に伴って起こり得ることを考えると、パラキサンチンはこれらの障害の治療において助剤として使用することができる。本発明はこれらの障害に限定されず、とりわけ、多発性硬化症、パーキンソン病および筋萎縮性側索硬化症に有用であり得る。 本発明によれば、パラキサンチンは、様々な疾病または障害、特にその症状に睡眠障害および不安を含むものの治療用の薬学上許容される製剤において使用することができる。 パラキサンチンは、当技術分野で公知の方法による化学合成によって調製される。記載することができる一例は、Schmidtおよび同僚ら(Schmidt et al., 1958)によるイソプロピルヒドラジンおよび2−シアノ−3−エトキシ−アクリル酸エチルエステルからのパラキサンチンの全合成である。他の合成経路を使用して、例えばキサンチンからパラキサンチンを得ることもできる(Muller et al., 1993)。 パラキサンチンはまた、それを合成する植物または生物の抽出物からも調製することができる。これらのような既知植物の1つがオオツヅラフジである(Jiang et al., 1998b)が、本発明は、パラキサンチンの抽出に関してこの植物単独の使用に限定されない。 パラキサンチンはまた、生化学的経路によるカフェインの選択的脱メチル化によっても得ることができる。カフェインは、ヒトまたは非ヒト起源の、例えば哺乳類においてカフェインのパラキサンチンへの選択的変換を触媒する、肝臓などの組織から抽出される、CYP1A2活性、またはCYP1A2−類似体活性を含有する酵素調製物とともにインキュベートされる。 パラキサンチンはまた、天然にすでに存在する微生物または遺伝子操作されたものを用いることによっても得ることができる。例えば、ヒトまたは非ヒト起源のCYP1A2酵素をコードする遺伝子が導入されている微生物を使用することができる。プラスミドまたはウイルスベクターによる外来遺伝子の微生物への導入は当技術分野で周知である。 本発明に従う使用はパラキサンチンを必要とし、そのパラキサンチンについては、例えば化学合成または植物抽出物など、それを取得する方法は限定されない。本発明による医薬組成物はパラキサンチンを治療上有効な量で含む。必要なパラキサンチンの量は、投与される用量が1日当たり0.1mg〜100mg/体重1kg、好ましくは1日当たり0.5mg〜20mg/体重1kgとなるような量である。別の医薬組成物は、治療上有効な量のパラキサンチンと薬学上許容される賦形剤の組合せを含む。 本発明による別の医薬組成物は、治療上有効な量のパラキサンチンと、精神または神経障害を治療するために使用される他の有効成分とを含む。このような他の有効成分は、抗鬱薬、抗不安薬、抗精神病薬、抗パーキンソン薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、抗炎症薬、特にコルチコイド、メマンチンまたはリルゾールであり得る。 パラキサンチンは、経口、非経口、直腸または鼻腔経路により投与することができる。特に、パラキサンチンは、好適な製剤で経口経路により投与することができる。経口経路による患者への投与に好適な製剤は、ゼラチンカプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、液剤、水性もしくは非水性液中の懸濁剤、または油/水液体乳剤などの治療用単位である。各製剤は、治療上有効な所定の用量のパラキサンチンを含む。 パラキサンチンによって発揮される様々な作用を以下に記載する実施例において具体的に示し、添付の図面にまとめた。 本発明は以下の実施例を参照することによってよりよく理解されるであろう:実施例1:マウスにおいて自発運動によって測定されるパラキサンチンの刺激作用 試験は、試験時において体重25〜35gの雄CD1 albinoマウス(Charles River)を用いて実施した。これらの動物を20匹ずつプレキシガラスケージ(38×24×18cm)に入れ、温度を21±1℃に維持した換気式動物施設内で飼育した。これらの動物は水および食物を自由に得ることができ;人工照明で昼夜周期(昼間7:00a.m.〜7:00p.m.間)を確立した。試験は11:00a.m.〜6:00p.m.間に行った。 カフェインおよびパラキサンチンはSigmaから購入し;それらを安息香酸ナトリウム溶液(Sigma)に加熱下で30mg/mlの濃度まで溶かした。その溶液を、Cremophor EL(Sigma)を用いて終濃度15%に安定化させた。その溶液を10ml/kgの用量で腹膜内経路により注射した。 各試験の前に、動物をプレキシガラスケージ(27×13×13cm)に20分間隔離し;それらには自由に食物を与えた。自発運動測定には、プレキシガラスカバーおよびフロアを備えた個別プレキシガラスチャンバー(一辺20cm高さ30cm)からなるコンピューターによる行動監視システムを用いた。チャンバー中の光電子センサーにより動物の水平および垂直運動が測定され、遮断されたビームの数として表され、そのデータを、ソフトウェアアプリケーション(Omnitech Electronics Inc., Columbus, Ohio, USA)を用いて解析した。動物の自発運動を6連続する10分の期間測定し;測定した部屋は暗所であった。注射を行った直後に動物を行動監視システムに入れた。各動物の試験の後には、チャンバーを清掃した。 パラキサンチンは、1mg/kgの用量から水平方向の自発運動を最初の測定期間からその後30分間刺激した(P<0.05またはP<0.01)。高用量では、その効果はより著しく(P<0.01またはP<0.001)、より長く続いた(少なくとも1時間)。これらの結果は、累積的水平運動の解析により確認される(図1、上のグラフ)。同様の試験において、カフェインは、10mg/kgの用量から、動物の水平方向の自発運動を試験の最初の10分以内に刺激し;この作用は少なくとも1時間続いた(P<0.05)。カフェインは、25mg/kgの用量では、この運動を注射の10分後に刺激し、その効果は40分続いた(P<0.05)。10mg/kgより低いかまたは25mg/kgより高い用量では、溶媒単独を投与した動物と比較して有意な差は示されなかった。カフェインによっては10mg/kg(P<0.01)および25mg/kg(P<0.05)の用量でのみ水平運動が実験条件下で1時間刺激されたということに注目すべきである(図1)。 パラキサンチンは、動物の垂直方向の自発運動も水平運動の場合と同じように刺激したが、1mg/kg用量での効果は立証することがより困難である(図1、下のグラフ)。カフェインもまた、10mg/kg用量において動物の垂直方向の自発運動を刺激したが、この効果は、注射の30分後に統計的に有意であるのみである(P<0.05)。100mg/kg用量では、動物の垂直運動は、最初の測定期間からその後40分間対照のものと比べて低下した(P<0.05)。累積的垂直運動を検討すると類似パターンが観察される(図1、下のグラフ)。実施例2:マウスにおいてホールボード試験によって測定されるパラキサンチンの非不安誘発性作用 試験は、実施例1の場合と同じ系統のマウスで実施し、同じ条件下で維持した。 ホールボード試験は、好奇心を調査する試験であり、不安によりマイナスの影響を受ける。この装置は、床上60cmに置き、動物が頭を通すことができるような大きさのホールが16個均等分布している、一辺40cmの不透明なプラスチックの四角いプラットフォームからなる。動物に注射した後、プラットフォームの中央に置くまで20分間隔離した。各動物が探索したホールおよびエッジの数を計数した。各動物の試験の後には、装置を清掃した。 カフェインは、50mg/kgの用量において、動物が探索したホール(図2、上のグラフ)およびエッジ(図2、下のグラフ)の数を有意に減少させた(P<0.001)が、一方で、パラキサンチンは同じ用量でこの点において何の効果もなかった。よって、この試験では、カフェインは不安惹起作用を有していたが、一方で、パラキサンチンは有していなかった。実施例3:マウスにおいてブラック・ホワイトボックス試験によって測定される、カフェインには存在しないパラキサンチンの抗不安作用 試験は、実施例1の場合と同じ系統のマウスで実施し、同じ条件下で維持した。 ブラック・ホワイトボックス試験は、動物の不安の状態を光に対する嫌悪の関数として測定する試験である。装置は、同じサイズ(長さ=21cm、幅=15cm、高さ=25cm)の2つの区画からなり、一方の区画は白く塗られており、40W電球で照明されているが、もう一方の区画は黒く塗られており、カバーで閉じられている。動物は一方の区画からパーティションの下方部分にある1辺5cmの正方形の開口部を通じてもう一方の区画へと進むことができる。注射後、動物を20分間隔離し、その後、黒色区画内に入れ、動物の頭を開口部の反対側のコーナーに向けた。装置の上方に置いた鏡を使用して、明るくした区画に最初に侵入するまでの時間、侵入回数および電球付きの区画で過ごした時間を測定した。各試験ごとに2つの区画を清掃した。 カフェインは、50mg/kgの用量では、電球付きの区画で過ごした時間の量を変化させず、よって、抗不安作用を有していなかった。他方、パラキサンチンは、対照(P<0.05)と比較して、さらに「カフェイン」群(P<0.01)と比較しても、電球付きの区画で過ごした時間の量を増加させた(図3、上のグラフ)。さらに、パラキサンチンで処置した動物は、カフェインで処置した動物よりも頻繁に電球付きの区画に入った(P<0.05)(図3、下のグラフ)。最後に、試験した2つの製品はどちらも黒色区画から最初に出るまでの時間の量に影響を及ぼさなかった。よって、この試験では、パラキサンチンは抗不安作用を示した。実施例4:マウスにおいて高架式十字迷路試験によって測定される、パラキサンチンの抗不安作用およびカフェインの不安惹起作用 試験は、実施例1の場合と同じ系統のマウスで実施し、同じ条件下で維持した。 高架式十字迷路試験は、動物の自発的ボイド回避に基づいて動物の不安レベルを測定する試験である(80)。装置は、直角に置かれた、各々18×6cmの4つのアームからなり;床上60cmの台に基礎を置く。2つのアームは高さ6cmの側壁を有し、端から端まで設計されており;これらは「クローズド」アームである。クローズドアームに直交する他の2つのアームには側壁はなく;これらは「オープン」アームである。注射を行った後、動物を20分間隔離し、その後、十字路の中央にある迷路に置き、頭をクローズドアームの方向にした。動物の動きを画像解析ソフトウェア(Videotrack)に接続されたビデオカメラによって5分間記録した。各動物の試験の後には、迷路を清掃した。 カフェインは、50mg/kgの用量において、マウスがオープンアームに侵入する回数を減少させたが(P<0.05)、一方で、パラキサンチンには効果はなかった(図4、上のグラフ)。これは、カフェインが、パラキサンチンには当てはまらない不安惹起作用を有していることを示唆している。 パラキサンチンの用量を徐々に増やしながら試験したところ(1mg/kg〜50mg/kg)、動物がオープンアームで過ごす時間は増加し、50mg/kgの用量において有意な効果が示された(P<0.05、図4、下のグラフ)。よって、高架式十字迷路試験では、高用量においてパラキサンチンは抗不安作用を有するようである。実施例5:ラットにおいてフォーゲル型コンフリクト試験によって測定されるパラキサンチンの不安惹起作用の不在 試験は、Vogel et al.(Psychopharmacologia, 1971, 21: 1-7)によって記載されている手順に従って、体重180g〜280gの雄Wistarラットを用いて実施した。動物を48時間絶水させた後、フロアが1cm間隔の導電性金属棒からなるプレキシガラスチャンバー(15×32×34cm)に個別に入れた。チャンバーの壁の1つの中央に電気ショック発生器(1.7mA;1秒)に接続された金属カップを置いた。 試験中、動物は、自由に装置を探索できる状態にしており、カップから水を消費するたびに動物は電気ショックを受ける。調査員には動物が受けた処置が分からないようにし、動物が水を消費し、電気ショックを受けた回数を計数する。動物が水を消費する回数の増加は抗不安作用を示し、一方、この数の減少は不安惹起作用を示す。 パラキサンチンを安息香酸ナトリウム(30mg/ml)に加熱下で溶かし、終濃度15%になるまでCremophor ELを加え、1mg/kg、10mg/kg、25mg/kgおよび50mg/kgの用量で腹膜内経路により投与した。クロバザムを参照抗不安薬として使用し;クロバザムは0.2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液中に分散させ、32mg/kgの用量で腹膜内経路により投与した。 パラキサンチンは動物が水を消費する回数を減少させず、よって、不安惹起作用を示さなかった(図5)。実施例6:マウスにおいてフォープレート試験によって測定されるパラキサンチンの抗不安作用 試験は、Aron et al. (Neuropharmacology, 1971, 10:459-469)によって記載されている方法に従って、体重20g〜30gのNMRIマウスを用いて実施した。動物を、フロアが電気ショック発生器(2.5mA;1.5秒)に独立に接続された4枚の金属プレートからなるプラスチックチャンバーに入れた。動物は、最初15秒間自由に装置を探索できる状態にし、その後、動物が2枚の金属プレート間を横断するたびに動物に電気ショックを与えた。横断数の増加は抗不安活性を示し、一方、この数の減少は不安惹起活性を示す。 パラキサンチンを安息香酸ナトリウム(30mg/ml)に加熱下で溶かし、終濃度15%になるまでCremophor ELを加え、1mg/kg、10mg/kg、25mg/kgおよび50mg/kgの用量で腹膜内経路により投与した。クロバザムを参照抗不安薬として使用し;クロバザムは0.2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液中に分散させ、16mg/kgの用量で腹膜内経路により投与した。 パラキサンチンは25mg/kgの用量において抗不安活性を示した(P<0.05)(図6)。参考文献・American Psychiatric Association (1987) Diagnostic and statistical manual of mental disorders. Washington, D. C: American Psychiatric Association.・ American Psychiatric Association (1994) Diagnostic and statistical manual of mental disorders - Fourth Edition (DSM-IV) .・Bernstein GA, Carroll ME, Crosby RD, Perwien AR, Go FS, Benowitz NL (1994) Caffeine effects on learning, performance, and anxiety in normal school-age children. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry 33: 407-415.・Boulenger JP, Uhde TW, Wolff EA, III, Post RM (1984) Increased sensitivity to caffeine in patients with panic disorders. Preliminary evidence. Arch Gen Psychiatry 41: 1067-1071.・Greden JF (1974) Anxiety or caffeinism: a diagnostic dilemma. Am J Psychiatry 131: 1089-1092.・Jiang M, Kameda K, Han LK, Kimura Y, Okuda H (1998) Isolation of lipolytic substances caffeine and 1,7- dimethylxanthine from the stem and rhizome of Sinomenium actum. Planta Med 64: 375-377.・Muller CE, Shi D, Manning MJr, Daly JW (1993) Synthesis of paraxanthine analogs (1, 7-disubstituted Xanthines) and other xanthines unsubstituted at the 3-position: structure-activity relationships at adenosine receptors. J Med Chem 36: 3341-3349.・Nickell PV, Uhde TW (1994) Dose-response effects of intravenous caffeine in normal volunteers. Anxiety 1: 161-168.・Schmidt P, Eichenberger K, Druey J (1958) 1-Pyrazolo [3, 4- d] pyrimidines with caffeine-like structure and activity. HeIv Chim Acta 41: 1052-1060.・Stern KN, Chait LD, Johanson CE (1989) Reinforcing and subjective effects of caffeine in normal human volunteers. Psychopharmacology (Berl) 98: 81-88.・Yesair DW, Branfman AR, Callahan MM (1984) Human disposition and some biochemical aspects of methylxanthines. Prog Clin Biol Res 158: 215-233.マウスでの60分にわたるパラキサンチンおよびカフェインの自発運動に対する作用の比較を示す図である(上のグラフには水平方向のもの、下のグラフには垂直方向のもの)。結果は平均±SEM(1群当たりn=14動物)として示している;溶媒で処置した対照動物に対し、*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001。マウスでのホールボード試験においてパラキサンチンには存在しないカフェインの不安惹起作用を示す図である(上のグラフには探索したホールの数、下のグラフには探索したエッジの数)。結果は平均±SEM(1群当たりn=8動物)として示している;溶媒を投与した対照動物に対し、***p<0.001。マウスでのブラック・ホワイトボックス試験においてカフェインには存在しないパラキサンチンの抗不安作用を示す図である(上のグラフには白色区画で過ごした時間、下のグラフには白色区画への侵入数)。結果は平均±SEM(1群当たりn=10動物)として示している;溶媒を投与した対照動物に対し、*P<0.05;カフェインを投与した動物に対し、#P<0.01。マウスでの高架式迷路試験においてカフェインの不安惹起作用およびパラキサンチンの抗不安作用を示す図である。カフェインは、パラキサンチンと比べて、オープンアームへの侵入回数を減少させる(上のグラフ)。パラキサンチンはオープンアームで過ごす時間を増加させる(下のグラフ)。結果は平均±SEM(1群当たりn=15〜20動物)として示している;溶媒を投与した対照動物に対し、*P<0.05;カフェインを投与した動物に対し、#P<0.01。ラットでのフォーゲル型コンフリクト試験においてパラキサンチンの不安惹起作用の不在を示す図である。結果は平均±SEM(n=10動物)として示しており、水が消費された回数を表す。クロバザムを参照抗不安薬として使用している。パラキサンチンおよびクロバザムの用量は棒の下にmg/kgで示している。第1の「ビヒクル」の棒はパラキサンチンに使用した溶媒に対応し;第2の「ビヒクル」の棒はクロバザムに使用した溶媒に対応する;各々の溶媒に対し、**P<0.01。フォープレート試験においてパラキサンチンの抗不安作用を示す図である。結果は平均±SEM(n=10動物)として示しており、2プレート間の横断数を表す。クロバザムを参照抗不安薬として使用している。第1の「ビヒクル」の棒はパラキサンチンに使用した溶媒に対応し;第2の「ビヒクル」の棒はクロバザムに使用した溶媒に対応する;各々の溶媒に対し、*P<0.05および**P<0.01。 神経精神障害の治療用の非不安誘発性精神賦活薬剤の製造のための、パラキサンチンの使用。 前記神経精神障害が疲労、睡眠障害または注意障害である、請求項1に記載の使用。 前記神経精神障害が不安障害である、請求項1に記載の使用。 前記神経精神障害が認知障害である、請求項1に記載の使用。 前記睡眠障害または注意障害が、特発性過眠症またはナルコレプシーである、請求項2に記載の使用。 前記薬剤が、鬱病、線維筋痛症、過敏性腸症候群、ニコチン離脱、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、時差ぼけまたは交代勤務による影響を受ける患者の疲労、睡眠障害または注意障害の治療用の薬剤である、請求項2に記載の使用。 前記薬剤が、鬱病またはニコチン離脱による影響を受ける患者の不安障害の治療用の薬剤である、請求項3に記載の使用。 前記薬剤が、注意欠陥/多動性障害の治療用の薬剤である、請求項1に記載の使用。 前記薬剤が、統合失調症に罹患している患者の認知障害の治療用の薬剤である、請求項4に記載の使用。 前記認知障害が、加齢またはアルツハイマー病に関連するものである、請求項4に記載の使用。 本発明は、神経精神障害の治療用の非不安誘発性精神賦活薬の製造のためのパラキサンチンの使用に関する。