タイトル: | 特許公報(B2)_化学架橋ヒアルロン酸誘導体を含むハイブリッドゲルおよびそれを用いた医薬組成物 |
出願番号: | 2009513034 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 47/36,A61K 38/28,A61K 38/22 |
秋吉 一成 森本 展行 平倉 泰 下房地 剛 JP 5443976 特許公報(B2) 20131227 2009513034 20080430 化学架橋ヒアルロン酸誘導体を含むハイブリッドゲルおよびそれを用いた医薬組成物 国立大学法人 東京医科歯科大学 504179255 中外製薬株式会社 000003311 小野 新次郎 100140109 社本 一夫 100089705 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 寺地 拓己 100122644 秋吉 一成 森本 展行 平倉 泰 下房地 剛 JP 2007120872 20070501 20140319 A61K 47/36 20060101AFI20140227BHJP A61K 38/28 20060101ALI20140227BHJP A61K 38/22 20060101ALI20140227BHJP JPA61K47/36A61K37/26A61K37/24 A61K 47/36 A61K 38/22 A61K 38/28 特開平06−073102(JP,A) 国際公開第2003/047462(WO,A1) 国際公開第2006/028110(WO,A1) 国際公開第2004/046200(WO,A1) 国際公開第2004/050712(WO,A1) 国際公開第2005/054301(WO,A1) 特開2005−298644(JP,A) Journal of Biomedical Materials Research PartA, 2005, Vol.76A, Issue2, pp.416-424 PALUMBO S. F. et al., New graft copolymers of hyaluronic acid and polylactic acid:Synthesis and characterization, Carbohydrate Polymers, 2006, Vol.66 , pp.379-385 CREUZET C. et al., New associative systems based on alkylated hyaluronic acid. Synthesis and aqueous solution properties, polymer, 2006, Vol.47, pp.2706-2713 MORIMOTO N. et al., Design of Hybrid Hydrogels with Self-Assembled Nanogels as Cross-Linkers: Interaction with Proteins and Chaperone-Like Activity, Biomacromolecules, 2005, Vol.6, pp.1829-1834 NISHIKAWA T. et al., Macromolecular Comolexation between Bovine Serum Albumin and the Self-Assembled Hydrogel Nanoparticle of Hydrophobized Polysaccharides, Journal of the American Chemical Society, 1996, Vol.118, pp.6110-6115 NISHIKAWA T. et al., Supramolecular Assembly between Nanoparticles of Hydrophobized Polysaccharide and Soluble Protein Complexation between the Self-Aggregate of Cholesterol-Bearing Pullulan and α-Chymotrypsin, Macromolecules, 1994, Vol.27, pp.7654-7659 AKIYOSHI K. et al., Microscopic Structure and Thermoresponsiveness of a Hydrogel Nanoparticle by Self-Assembly of a Hydrophobized Polysaccharide, Macromolecules, 1997, Vol.30, pp.857-861 AKIYOSHI K. et al., Self-Aggregates of Hydrophobized Polysaccharides in Water. Formation and Characteristics of Nanoparticles, Macromolecules, 1993, Vol.26, pp.3062-3068 18 JP2008058593 20080430 WO2008136536 20081113 71 20110425 原田 隆興【技術分野】【0001】 本発明は、ヒアルロン酸誘導体と疎水性基を導入した多糖類またはその誘導体からなる新規なハイブリッドゲル、当該ハイブリッドゲルの製造方法、当該ハイブリッドゲルを含む医薬組成物、特に薬効を有するタンパク質またはペプチドを徐放する徐放性製剤における利用に関する。【背景技術】【0002】 近年、薬効を持つタンパク質やペプチドの製剤が盛んに実用化されている。一般にタンパク質やペプチドは消化管内での安定性および腸管膜からの吸収性が低いため、経口投与製剤にすることは困難であり、大部分が注射剤として臨床使用されている。しかし、タンパク質やペプチドは一般に血中半減期も短いため、これらを薬物として使用する場合は頻回投与とならざるを得ず、患者の負担は過大なものとなっている。できるだけ少量で薬効を発揮させかつ投与回数も少なくできる、タンパク質またはペプチドの実用的な徐放性製剤が望まれている。また、低分子化合物を薬物として投与する場合も、薬効を延長させるための持続製剤のニーズは高い。【0003】 また、タンパク質またはペプチドの徐放性製剤においては、製剤化工程中や生体内へ投与した後の製剤中でタンパク質またはペプチドの変性あるいは凝集が起こるという問題がある。このような変性あるいは凝集を防止し、回収率の低下を防ぐための手段は、生物学的利用率の向上の観点から非常に有益である。【0004】 ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体(PLGA)等の生分解性高分子を基材にした徐放性製剤化が試みられているが、基材の疎水性や製剤化のための操作(乳化、乾燥、酸性化など)に起因するタンパク質の変性、凝集が報告されている(非特許文献1および2を参照)。一方、こうした問題が低減される親水性のハイドロゲルを基材に用いた徐放性製剤も報告されているが、やはり実用化には至っていない。また、安全性の面からは、製剤に用いる素材は、非抗原性、非変異原性、無毒性、生分解性を併せ持つものでなければならず、タンパク質またはペプチドの封入率、回収率および安全性の全てにおいて、実用化レベルに達している徐放性製剤の実現は難しい。【0005】 近年、多糖を薬物担体の基材として用いるという報告がある。その中でも、ヒアルロン酸(HA)は、1934年、K.Meyerによって牛の眼の硝子体から単離された生体材料(多糖)であり、細胞外マトリックスの主成分として古くから知られている。HAは、D−グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとがβ(1→3)グリコシド結合により連結された二糖単位から成るグルコサミドグリカンの一種である。HAは、化学的、物理的構造に種差が無く、ヒトも代謝系を持っており、免疫性、毒性といった面でも最も安全な医用生体材料(Biomaterial)の一つである。近年、微生物による高分子量HAの大量生産が可能となり、変形性軟骨治療薬、化粧品等の分野でも実用化されている。【0006】 非抗原性、非変異原性、無毒性、生分解性を併せ持ち、安全性の面から好ましいと考えられるHAを化学架橋したゲルからタンパク質やペプチドを薬物として徐放させる試みについていくつか報告されている。HAを化学架橋でゲル化させる方法としては、カルボジイミド(CDI)法(特許文献1参照)、ジビニルスルホン(DVS)法(特許文献2参照)、グリシジルエーテル(GE)法(特許文献3参照)等が知られている。また、HAに架橋性官能基としてヒドラジド(HZ)基を導入したHA誘導体(HA−HZ)を架橋剤で架橋する方法(非特許文献3参照)も知られている。【0007】 in situ架橋によりHAゲル中にタンパク質またはペプチドを封入する徐放性製剤についても報告されており(例えば、特許文献4参照)、このようなin situ架橋徐放性製剤工程においては、薬物への影響が少ないことが望まれる。タンパク質およびペプチドの反応を極力抑えるため、穏和な条件下でのメルカプト基の酸化による架橋反応を利用した薬物封入HAゲルの製造が報告されているが(特許文献5参照)、システイン残基を含むタンパク質やペプチドへの適用に改良の余地がある。同様にタンパク質またはペプチドとの反応を極力抑える方法として、ポリエチレングリコール(PEG)を基材に不飽和官能基を求核付加反応で架橋する報告もあるが(特許文献6参照)、反応選択性や汎用性に問題があり、また上述したとおり、生分解性でないPEG断片が生体内に残存する点が問題となる。【0008】 副反応によるタンパク質またはペプチドの変性は、生物活性の低下のみならず抗原性発現の原因になる等の問題があることから、ゲルを架橋する反応は、封入されるタンパク質やペプチドに影響を及ぼさない高選択的なものである必要性があるが、その反応の選択性、汎用性、安全性のすべてを解決したin situ架橋方法は知られていない。【0009】 一方で、ゲルを架橋した後にタンパク質またはペプチドを封入する方法では、化学架橋時の薬剤と基材との副反応を完全に回避できる利点がある。また、ゲルを化学架橋後に洗浄することにより薬物非存在下で余剰の架橋剤を除去したり、未反応の架橋性官能基を別の反応性基により消失させることが可能なので、未反応の架橋性官能基や架橋剤の残存というコンタミネーションの問題を回避できる利点がある。しかし、HAとタンパク質またはペプチドとの相溶性、静電反発等の問題でその封入効率は低く、かつ徐放性をほとんど示さないことが問題である。【0010】 これまでに、親水性多糖類に疎水性基(例えば、コレステロール基やアルキル基などを含む基)を導入して得られる多糖類(以下、疎水化多糖、Hydrophobized Polysaccharide、HPとも称す)が、水溶液中において自発的に会合しヒドロゲル構造を有するナノサイズの微粒子(ナノゲル)を形成すること(非特許文献4、および5を参照)、このナノゲルは疎水性低分子、ペプチド、タンパク質などと複合化するホスト分子として機能すること(非特許文献4、6、および7を参照)、およびこのナノゲルはタンパク質の熱安定化やリフォールディングを促進する人工分子シャペロンとして機能することが報告されている(非特許文献8、および9を参照)。さらに、このナノゲルにメタクリロイル基などの重合性基を導入し、これを機能性モノマーで共重合反応することによって架橋したハイブリッドゲルが報告されている(特許文献8および非特許文献10を参照)。【先行技術文献】【特許文献】【特許文献1】 国際公開WO94/02517号パンフレット【特許文献2】特開昭61−138601号公報【特許文献3】特開平5−140201号公報【特許文献4】米国特許第5827937公報【特許文献5】国際公開第WO2004/046200号パンフレット【特許文献6】国際公開第WO2000/44808号パンフレット【特許文献7】国際公開第WO2004/050712号パンフレット【特許文献8】特開2005−298644号公報【特許文献9】国際公開第WO2006/028110号パンフレット【特許文献10】国際公開第WO00/12564号パンフレット【特許文献11】欧州公開第0842657号公報【特許文献12】国際公開第WO2005/054301号パンフレット【非特許文献】【非特許文献1】J.Pharm.Sci.第88巻、第166−173頁、1999年【非特許文献2】非特許文献2: J.Microencapsulation 第15巻、第699−713頁、1998年【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc.第116巻、第7515−7522頁、1994年【非特許文献4】Macromolecules 第26巻、第3062−3068頁、1993年【非特許文献5】Macromolecules 第30巻、第857−861頁、1997年【非特許文献6】Macromolecules 第27巻、第7654−7659頁、1994年【非特許文献7】J.Am.Chem.Soc.第118巻、第6110−6115頁、1996年【非特許文献8】Bioconjugate Chem. 第10巻、第321−324頁、1999年【非特許文献9】FEBS Letters 第533巻、第271−276頁、2003年【非特許文献10】Biomacromolecules 第6巻、第1829−1834頁、2005年【非特許文献11】J.Biomedical Materials Research 第47巻 第152−169頁、1999年【非特許文献12】J.Controlled Release 第54巻、第313−230頁、1998年【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0011】 これまでに、in situで安全性の高いヒアルロン酸を基剤として化学架橋することでゲルを調製し、薬物、特に薬効を有するタンパク質やペプチドをその生物活性を維持したまま効率的にそこへ封入して長期間の徐放を可能にする方法は知られていない。また、あらかじめ架橋されたHAゲルに効率的に薬物を封入し、長期間徐放することができるゲルおよびその製造方法、およびこれらを用いた薬物の徐放型製剤は知られていない。【0012】 発明が解決しようとする課題は、長時間の徐放が可能であり、安全性に優れた、徐放性製剤用の薬物担体を提供することであり、特に、薬効を有するタンパク質またはペプチドを薬物として含む徐放性製剤に使用する場合に、薬理活性を維持したまま薬物を効率よく封入することができる薬物担体を提供することである。【課題を解決するための手段】【0013】 本発明者は、かかる問題点を解決する為に鋭意検討を進めたところ、ヒアルロン酸誘導体と、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を使用して調製されるハイブリッドゲルが、薬物、特に薬効を有するタンパク質またはペプチドを、その生物活性を維持したまま効率よく封入し、長期間徐放し、生分解性で安全性に問題のない薬物徐放担体となることを見出し、本発明を完成させた。【0014】 すなわち、本発明は、薬物、特に薬効を有するタンパク質やペプチドを、その生物活性を維持したまま効率よく封入することができることを特徴とする、ヒアルロン酸誘導体および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を含むハイブリッドゲルとその製造法、および薬物を該ハイブリッドゲルに封入することで得られる徐放性製剤とその製造方法に関する。【0015】 本発明の1つの側面によれば、ヒアルロン酸誘導体および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を含むハイブリッドゲルが提供される。上記側面によれば、本発明のハイブリッドゲルは、ヒアルロン酸誘導体および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を含み、化学結合による架橋構造と疎水的相互作用による物理架橋構造を併せ持つゲル状組成物である。【0016】 本明細書で言及するゲルには、ヒドロゲル(水を含んで膨潤しており、流動性が低下している、または無くなっている状態)、オルガノゲル(有機溶媒を含んで膨潤しており、流動性が低下している、または無くなっている状態)、キセロゲル(ヒドロゲル、オルガノゲルを乾燥した状態)などが含まれる。【0017】 また、ゲルを含む医薬組成物の調製法としては、薬物を封入してからもしくは薬物の封入と同時にヒドロゲル化もしくはオルガノゲル化し、その後乾燥してキセロゲル化する方法;ヒドロゲルもしくはオルガノゲルの状態で薬物を封入し、その後乾燥してキセロゲル化する方法;キセロゲルに水を加えてヒドロゲル化し、その後薬物を封入する方法、などが挙げられる。【0018】 本発明の1つの側面によれば、架橋性基を有するヒアルロン酸誘導体、および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を含む組成物であって、前記架橋性基を有するヒアルロン酸誘導体が、前記疎水性基の会合により微粒子を形成する前記親水性多糖類誘導体(ここで、当該親水性多糖類誘導体は架橋形成が可能な基を有していてもよい)の存在下、ヒアルロン酸または架橋形成が可能な基を有するその誘導体の架橋形成反応により調製される前記組成物が提供される。【0019】 本発明の別の側面によれば、架橋性基を有するヒアルロン酸誘導体、および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を含む組成物であって、前記疎水性基の会合により微粒子を形成する前記親水性多糖類(ここで、当該親水性多糖類誘導体は架橋形成が可能な基を有していてもよい)を含む溶液(例えば、水溶液)中で、ヒアルロン酸または架橋形成が可能な基を有するその誘導体を架橋形成することにより、前記架橋性基を有するヒアルロン酸誘導体を調製する、前記組成物が提供される。【0020】 本発明の組成物はゲル(例えば、ヒドロゲル、またはキセロゲル)を形成していてもよい。本発明の組成物がキセロゲルである場合、水分含有量は、例えば20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。したがって、1つの態様において、本発明はゲル状組成物である。【0021】 本発明のヒアルロン酸誘導体とは、ヒアルロン酸の少なくとも1つ以上のカルボキシ基またはヒドロキシ基に置換基を導入したものまたは塩を形成したものである。特に限定されないが、置換基として架橋形成が可能な基、例えば、アミノ基、メルカプト基、ホルミル基、−CONHNH2、炭素−炭素二重結合を含む基、および炭素−炭素三重結合を含む基が挙げられる。置換基はスペーサーを介して結合していてもよい。【0022】 前記架橋形成が可能な基は、ヒアルロン酸の1以上のカルボキシ基を−CO−Yに変換することにより導入されてもよく、Y基としては、例えば以下の基: −X11−R12−Y2; −X11−R12−X12−CO−R13−Y2; −X11−R12−X12−C(=NR24)−R13−Y2; −X11−R12−CO−X13−R13−Y2; −X11−R12−X12−CO−X13−R13−Y2; −N(R11)N(R14)CO−R12−Y2; −N(R11)N(R14)CO−R12−CON(R15)N(R16)CO−R13−Y2;および −N(R11)N(R14)CO−R12−CON(R15)N(R16)C(=NR24)−R13−Y2[式中、X11、X12およびX13は、独立に、OおよびN(R11)から選択され: Y2は、アミノ基、メルカプト基、ホルミル基、−CONHNH2、炭素−炭素二重結合を含む基、および炭素−炭素三重結合を含む基から選択され; R11、R14、R15、R16およびR24は、独立に、水素原子またはC1−6アルキル基から選択され; R12は、2価のC2−50炭化水素基または2価のC2−50ポリアルキレンオキシ基であり; R13は、2価のC1−50炭化水素基、2価のC2−50ポリアルキレンオキシ基または-CH(R25)−CH2−S−CH2−R26−CH2−であり;ここで、R12およびR13が2価のC2−50炭化水素基である場合、1〜10の酸素原子が挿入されて当該炭化水素基が一部にポリアルキレンオキシ部分を含んでいてもよく;または −R13−Y2は、一緒になって、−CH(NH2)CH2SH、もしくは−CH(NH2)CH2CH2SHを表し;または −X11−R12−Y2は、一緒になって、システイン、ホモシステインまたはグルタチオンが末端のアミノ基で連結する基を表し; R25は、水素原子またはC1−6アルキル基であり; R26は、−(CH(R27))m−または1〜3の酸素原子が挿入されて一部にポリアルキレンオキシ部分を含んでいてもよい2価のC2−10炭化水素基であり; mは、1〜10の整数であり; R27は、独立に、水素原子、ヒドロキシ基またはC1−6アルキル基から選択される]が挙げられる。【0023】 ここで、システイン、ホモシステインまたはグルタチオンが末端のアミノ基で連結する基とは、それぞれ以下の基: −NHCH(CO2H)−(CH2)−SH −NHCH(CO2H)−(CH2)2−SH −NHCH(CO2H)−(CH2)2CONH−CH(CONHCH2CO2H)−CH2SHを意味する。【0024】 Y2は、アミノ基、メルカプト基、ホルミル基、−CONHNH2、および炭素−炭素二重結合を含む基から選択されるか;または−R13−と一緒になって、−CH(NH2)CH2SH、もしくは−CH(NH2)CH2CH2SHを表し;または−X11−R12−と一緒になって、システイン、ホモシステインまたはグルタチオンが末端のアミノ基で連結する基を表すのが好ましい。【0025】 本発明の1つの態様において、Y基は、以下の基: −X11−R12−Y1; −X11−R12−X12−CO−R13−Y1; −X11−R12−CO−X13−R13−Y1; −X11−R12−X12−CO−X13−R13−Y1; −N(R11)N(R14)CO−R12−Y1;および −N(R11)N(R14)CO−R12−CON(R15)N(R16)CO−R13−Y1;[式中、X11、X12およびX13は、独立に、OおよびN(R11)から選択され: Y1は、アミノ基、メルカプト基、ホルミル基、炭素−炭素二重結合を含む基、および炭素−炭素三重結合を含む基から選択され; R11、R14、R15およびR16は、独立に、水素原子またはC1−6アルキル基から選択され; R12およびR13は、2価のC2−50炭化水素基または2価のC2−50ポリアルキレンオキシ基であり、前記2価のC2−50炭化水素基は、1〜10の酸素原子が挿入されて一部にポリアルキレンオキシ部分を含んでいてもよい]から選択される基であってもよい。【0026】 Y1は、アミノ基、メルカプト基、ホルミル基、および炭素−炭素二重結合を含む基から選択されるのが好ましい。【0027】 Y基の好ましいものとしては、例えば、 −NH−(CH2)p−O−CO−C(R17)=CH2; −NH−(CH2)p−O−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH; −NH−(CH2)p−NH2; −NH−(CH2)p−SH; −NH−(CH2)p−NH−CO−C(R17)=CH2; −NH−(CH2)p−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH; −NH−(CH2)p−NH−CO−(CH2)r−SH; −NH−(CH2)p−NH−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH; −NH−(CH2)p−NH−CO−CH(NH2)−CH2−SH; −NH−(CH2)p−NH−CO−CH(NH2)−(CH2)2−SH; −NH−NH−CO−(CH2)4−CO−NH−NH2; −NH−NH−CO−(CH2)4−CO−NH−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−O−CO−C(R17)=CH2; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−O−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH2; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−C(R17)=CH2; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−(CH2)r−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−CH(NH2)−CH2−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−CH(NH2)−(CH2)2−SH; −NH−CH(CO2H)−(CH2)−SH; −NH−CH(CO2H)−(CH2)2−SH;および −NH−CH(CO2H)−(CH2)2−CONH−CH(CONH−CH2−CO2H)−CH2−SH(ここで、R17は、水素原子またはC1−6アルキル基であり、pは2〜10の整数、qは1〜200の整数、rは1〜3の整数を、それぞれ表す)が挙げられる。特に、 −NH−CH2−CH2−O−CO−C(R17)=CH2; −NH−NH−CO−(CH2)4−CO−NH−NH2; −NH−NH−CO−(CH2)4−CO−NH−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH; −NH−(CH2−CH2−O)2−CH2−CH2−NH2; −NH−(CH2−CH2−O)2−CH2−CH2−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH; −NH−(CH2−CH2−O)2−CH2−CH2−NH−CO−CH2−SH;および −NH−CH2−CH2−O−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH(ここで、R17は、水素原子またはC1−6アルキル基である)が好ましい。【0028】 R17としては、水素原子およびメチル基が好ましい。【0029】 前記架橋形成が可能な基は、親水性多糖誘導体がカルボキシ基を有する場合(例えば、親水性多糖誘導体がヒアルロン酸である場合)、その1以上のカルボキシ基を−CO−Yに変換することにより導入されてもよい。【0030】 前記架橋形成が可能な基は、親水性多糖誘導体あるいはヒアルロン酸またはその誘導体の1以上のヒドロキシ基を−O−Zに変換することにより導入されてもよく、Z基としては、例えば以下の基: −CO−C(R21)=CH2; −CH2CH(OH)−R22−Y1; −CH(CH2OH)−R22−Y1; −CONH−R23−Y1; −CO−R23−Y1; −CONH−CH2CH2−(X21−CH2CH2)n−Y1; −CO−CH2CH2−(X21−CH2CH2)n−Y1;[式中、X21は、OおよびSから選択され: nは、1〜50の整数を表し; Y1は、アミノ基、メルカプト基、ホルミル基、炭素−炭素二重結合を含む基、および炭素−炭素三重結合を含む基から選択され; R21は、水素原子またはC1−6アルキル基から選択され; R22およびR23は、2価のC2−50炭化水素基または2価のC2−50ポリアルキレンオキシ基であり、前記2価のC2−50炭化水素基は、1〜10の酸素原子が挿入されて一部にポリアルキレンオキシ部分を含んでいてもよい]が挙げられる。【0031】 本発明の一つの態様において、Z基は、以下の基: −CO−C(R21)=CH2; −CH2CH(OH)−R22−Y1; −CH(CH2OH)−R22−Y1; −CONH−R23−Y1; −CO−R23−Y1;[式中、Y1は、アミノ基、メルカプト基、ホルミル基、炭素−炭素二重結合を含む基、および炭素−炭素三重結合を含む基から選択され; R21は、水素原子またはC1−6アルキル基から選択され; R22およびR23は、2価のC2−50炭化水素基または2価のC2−50ポリアルキレンオキシ基であり、前記2価のC2−50炭化水素基は、1〜10の酸素原子が挿入されて一部にポリアルキレンオキシ部分を含んでいてもよい]から選択される基であってもよい。【0032】 本明細書で言及する「C1−6アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチルなどの「C1−4アルキル基」が含まれ、さらに、n−ペンチル、3−メチルブチル、2−メチルブチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、4−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチル、3−エチルブチル、および2−エチルブチルなどが含まれる。【0033】 本明細書で言及する「C8−50炭化水素基」は特に限定されず、その例として、炭素数8〜50の直鎖状、分岐鎖状、環状および一部が環状のアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基が挙げられ、当該基は芳香族環基であってもよく、または芳香族環を構造の一部に含んでいてもよい。【0034】 本明細書で言及する「2価のC1−50炭化水素基」は特に限定されず、その例として、炭素数1〜50の直鎖状、分岐鎖状、環状および一部が環状のアルキレン基、アルケニレン基およびアルキニレン基が挙げられ、当該基は2価の芳香族環であってもよく、または芳香族環を構造の一部に含んでいてもよい。【0035】 本明細書で言及する「2価のC2−50炭化水素基」は特に限定されず、その例として、炭素数2〜50の直鎖状、分岐鎖状、環状および一部が環状のアルキレン基、アルケニレン基およびアルキニレン基が挙げられ、当該基は2価の芳香族環であってもよく、または芳香族環を構造の一部に含んでいてもよい。【0036】 本明細書で言及する「2価のC2−10炭化水素基」は特に限定されず、その例として、炭素数2〜10の直鎖状、分岐鎖状、環状および一部が環状のアルキレン基、アルケニレン基およびアルキニレン基が挙げられ、当該基は2価の芳香族環であってもよく、または芳香族環を構造の一部に含んでいてもよい。【0037】 本明細書で言及する「2価のC2−50ポリアルキレンオキシ基」は特には限定されず、繰り返し単位のアルキレン基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。「2価のC2−50ポリアルキレンオキシ基」の例には、2価のC2−50ポリエチレンオキシ基、C3−48ポリプロピレンオキシ基、C3−48ポリブチレンオキシ基などが含まれる。当該基は、酸素原子または炭素原子を介して他の基と連結していてよく、例えばC2−50ポリエチレンオキシ基には、−O(CH2CH2O)1−25−、−(CH2CH2O)1−25−、−(OCH2CH2)1−25−、−(CH2CH2O)1−24−(CH2CH2)−などが含まれる。【0038】 本明細書において、炭化水素基に酸素原子が挿入される場合、1または2個の酸素原子は炭化水素基の任意の位置に挿入されてよく、3以上の酸素原子は当該基が一部にポリアルキレンオキシ部分を含むように挿入されてもよい。【0039】 本明細書において2価のC2−50炭化水素基に1〜10の酸素原子が挿入される場合、1または2個の酸素原子は炭化水素基の任意の位置に挿入されてよく、3〜10の酸素原子は前記基が一部にポリアルキレンオキシ部分を含むように挿入されてもよい。前記基に含まれるポリアルキレンオキシ部分としては、C2−20エチレンオキシ、C3−30プロピレンオキシ、C4−40ポリブチレンオキシなどが含まれる。【0040】 本明細書で言及する「炭素−炭素二重結合を含む基」は特には限定されないが、当該基には例えば、直鎖状、分岐鎖状、環状および一部が環状のC2−50アルケニレン基、C2−30アルケニレン基、C2−10アルケニレン基などが含まれる。さらに前記炭素−炭素二重結合を含む基には、例えば、下式 −X14−CO−C(R18)=CH2[式中、X14は、OおよびN(R19)から選択され;R18は水素原子またはC1−6アルキル基であり;R19は水素原子またはC1−6アルキル基である]で表される基および下式:【0041】【化1】で表される基などが含まれる。【0042】 本明細書で言及する「炭素−炭素三重結合を含む基」は特には限定されないが、当該基には例えば、直鎖状、分岐鎖状、環状および一部が環状のC2−50アルキニレン基、C2−30アルキニレン基、C2−10アルキニレン基などが含まれる。【0043】 Z基としては、−CO−C(R21)=CH2が好ましく、特にアクリロイル基およびメタクリロイル基が好ましい。【0044】 本発明の上記側面において、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体は、特には限定されないが、例えば、親水性多糖類に100単糖あたり0.5〜30個の疎水性基を導入することで得られた親水性多糖類であってもよい。当該疎水性基を導入した親水性多糖類は、水溶液中において疎水性相互作用により数分子が自発的に会合することでナノサイズ(1−1,000nm)の微粒子を形成することなどにより、疎水性薬物や薬効を有するタンパク質やペプチドと複合化するものである。【0045】 前記親水性多糖類誘導体は、親水性多糖類およびその誘導体に疎水性基を導入して得ることができる。ここで、親水性多糖類には、水溶性多糖類が含まれ、特には限定されないが、例えば、プルラン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、マンナン、レバン、イヌリン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、デキストリンなどが含まれる。【0046】 本明細書で言及する架橋とは、共有結合などによる化学結合であっても、疎水性相互作用や静電的相互作用による物理結合(会合)であってもよく、また分子間、分子内架橋を含むものであり、同時に分子間および分子内架橋を有する場合もある。本明細書で言及する架橋性基とは、上記の架橋を形成している基である。本明細書で言及する架橋形成が可能な基とは、架橋形成反応や一定の条件下におくことで架橋性基を形成することができる基である。【0047】 本発明の上記側面において、前記疎水性基は、特には限定されないが、例えば、C8−50炭化水素基またはステリル基を含む基であってもよい。【0048】 前記疎水性基は、例えば、前記親水性多糖類またはその誘導体の1以上のヒドロキシ基を−OXに変換することにより導入され、Xの例としては、以下の基: −CO−R1; −CO−X1−R2; −CO−R3−X2−CO−R1; −CO−X1−R3−CO−R1; −CO−R3−CO−X3−R2; −CO−X1−R3−CO−X3−R2; −CO−X1−R3−X2−CO−R1; −CO−R3−X2−CO−X3−R2;および −CO−X1−R3−X2−CO−X3−R2[式中、R1は、C8−50炭化水素基であり; R2は、C8−50炭化水素基またはステリル基であり; R3は、2価のC2−50炭化水素基であり; X1、X2およびX3は、独立に、OおよびN(R4)から選択され; R4は水素原子またはC1−6アルキル基である]などが挙げられる。【0049】 本発明の一つの態様において、Xは、以下の基: −CO−R1; −CO−X1−R2; −CO−R3−X2−CO−R1; −CO−X1−R3−CO−R1; −CO−X1−R3−CO−X3−R2; −CO−X1−R3−X2−CO−R1; −CO−R3−X2−CO−X3−R2;および −CO−X1−R3−X2−CO−X3−R2[式中、R1は、C8−50炭化水素基であり; R2は、C8−50炭化水素基またはステリル基であり; R3は、2価のC2−50炭化水素基であり; X1、X2およびX3は、独立に、OおよびN(R4)から選択され; R4は水素原子またはC1−6アルキル基である]から選択される基であってもよい。【0050】 Xとしては、−CO−R3−CO−X3−R2および−CO−X1−R3−X2−CO−X3−R2が好ましく、−CO−R3−CO−O−R2および−CO−NH−R3−NH−CO−O−R2がさらに好ましく、−CO−NH−R3−NH−CO−O−R2がなおさらに好ましい。【0051】 R3としては、直鎖もしくは分岐鎖状のC2−50アルキレン基、直鎖もしくは分岐鎖状のC2−50アルケニレン基、直鎖もしくは分岐鎖状のC2−50アルキニレン基等が挙げられる。好ましくは直鎖状のC2−50アルキレン基が挙げられる。その炭素数は、−CO−R3−CO−X3−R2におけるR3としては2〜20が好ましく、2〜10、更には2〜6が、より好ましい。−CO−X1−R3−X2−CO−X3−R2におけるR3としては2〜20が好ましく、2〜10、更には4〜8が、より好ましい。【0052】 C8−50炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐鎖状のC8−50アルキル基、直鎖もしくは分岐鎖状のC8−50アルケニル基、直鎖もしくは分岐鎖状のC8−50アルキニル基等が挙げられ、好ましくは直鎖状のC8−50アルキル基が挙げられる。その炭素数は、10〜30が好ましく、10〜20がより好ましく、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基などが挙げられる。【0053】 ステリル基としては、ステロール骨格を有する基であれば特に制限されず、例えば、コレステリル基、スチグマステリル基、β−シトステリル基、ラノステリル基、エルゴステリル基等が挙げられ、好ましくはコレステリル基が挙げられる。【0054】 R2としては、コレステリル基、−(CH2)11CH3、−(CH2)15CH3および−(CH2)19CH3が好ましく、コレステリル基がさらに好ましい。【0055】 Xの具体例としては、 −CO−(CH2)t−CO−O−コレステリル; −CO−(CH2)t−CO−O−(CH2)11CH3; −CO−(CH2)t−CO−O−(CH2)15CH3; −CO−(CH2)t−CO−O−(CH2)19CH3; −CO−NH−(CH2)u−NH−CO−O−コレステリル; −CO−NH−(CH2)u−NH−CO−O−(CH2)11CH3; −CO−NH−(CH2)u−NH−CO−O−(CH2)15CH3;および −CO−NH−(CH2)u−NH−CO−O−(CH2)19CH3; (ここで、tは2〜6の整数であり、uは4〜8の整数である)が好ましく、特に、−CO−NH−(CH2)6−NH−CO−O−コレステリルが好ましい。【0056】 前記疎水性基は、例えば、前記親水性多糖類またはその誘導体の1以上のカルボキシ基を−CO−OXに変換することにより導入されてもよい。【0057】 本発明の上記側面の1つの態様において、前記架橋形成反応は、前記溶液中に架橋剤を添加することにより行われる。【0058】 本発明の上記側面の1つの態様において、架橋性基を有するヒアルロン酸誘導体により、架橋性基を有さない親水性多糖類誘導体が封入されていてもよい。さらに、本発明の上記側面の1つの態様において、親水性多糖類誘導体が、分子内架橋性基、または親水性多糖類誘導体およびヒアルロン酸誘導体に連結する分子間架橋性基を有していてもよい。さらに、本発明の上記側面の1つの態様において、親水性多糖類誘導体がヒアルロン酸誘導体にのみ連結する架橋性基を有していてもよい。【0059】 1つの態様において、本発明の上記側面により提供される組成物は、医薬組成物として使用される。当該医薬組成物に含まれる薬剤は、特には限定されないが、例えば、タンパク質またはペプチドを薬剤として含有していてもよい。【0060】 本発明のさらなる側面によれば、本発明の上記側面により提供されるゲルに薬物溶液を添加することで薬物を吸収させる工程を含む、医薬品組成物の製造方法が提供される。【0061】 本発明のさらに別の側面によれば、以下の工程、(a)架橋形成が可能な基を有するヒアルロン酸誘導体を製造する工程;(b)疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を製造する工程;(c)少なくとも1種類以上の工程(a)により生成するポリマーと、少なくとも1種類以上の工程(b)により生成するポリマーから選択される、少なくとも2種類以上のポリマーをハイブリッドゲル化させる工程;を含む、ゲル状組成物の製造方法が提供される。当該工程(c)においてハイブリッドゲル化させる方法は、ポリマーを架橋することができる一般的に知られている方法を用いればよい。特に限定されないが、架橋形成が可能な基を有するヒアルロン酸誘導体と疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を架橋剤を用いて架橋してもよく、架橋形成が可能な基を有するヒアルロン酸誘導体を前記親水性多糖類誘導体の存在下で架橋してもよく、架橋形成が可能な基を有するヒアルロン酸誘導体と前記親水性多糖類誘導体に架橋形成が可能な基を導入した誘導体を架橋してもよい。当該工程は、バルクで行ってもよく、W/Oエマルション中や噴霧液滴中などの不連続相中で行ってもよい。当該工程中に、架橋反応を停止する操作を行ってもよい。工程(c)の後に、粉砕、乾燥、洗浄工程などを行ってもよい。【0062】 さらに本発明の別の側面によれば、前記ゲルに薬物溶液を添加することで、薬物を封入する工程を含む、医薬品組成物の製造方法と当該製造方法によって得られる医薬品組成物が提供される。当該工程の後に粉砕、乾燥、洗浄工程などを行ってもよい。【0063】 さらに本発明の別の側面によれば、以下の工程(a)HPまたはその誘導体からなるナノゲルに薬物を複合化させる工程;(b)工程(a)で得られたナノゲルと薬物の複合体とHAまたはその誘導体をハイブリッドゲル化させる工程;を含む医薬品組成物の製造方法と当該製造方法によって得られる医薬品組成物が提供される。ここで、必要であれば、工程(b)の後に粉砕、乾燥、洗浄工程などを行ってもよい。【発明の効果】【0064】 本発明のゲルを用いることで、薬物、特に薬効を有するタンパク質やペプチドの従来の徐放性製剤では達成できなかった、薬物をその生物活性を維持したまま効率よく封入し、長期間徐放し、安全性に問題のない実用的な徐放性製剤を提供することが可能である。【図面の簡単な説明】【0065】 【図1】図1は、FITC−Insの吸収後の、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルの写真の1例である。 【図2】図2は、FITC−Insの吸収後の、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルの緩衝液中における写真の1例である。 【図3】図3は、FITC−Insを吸収させた後に、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルにシクロデキストリンを添加した時の写真の1例である。 【図4】図4は、FITC−Insを吸収させた後に、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルにヒアルロニダーゼを添加した時の写真の1例である。 【図5】図5は、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルに吸収されたインスリン量を示すグラフである。 【図6】図6は、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルからのインスリン放出量を示すグラフである。 【図7】図7は、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルからのインスリン放出量に対する、シクロデキストリンの影響を示すグラフである。 【図8】図8は、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルに吸収されたFITC−Ins量を示すグラフである。 【図9】図9は、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルからのFITC−Ins放出量を示すグラフである。 【図10】図10は、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルからのFITC−Ins放出挙動に対する、アルブミンの影響を示すグラフである。 【図11】図11は、CHP−MAとHA−SHとの化学架橋によるハイブリッドゲル調製検討時の写真である。 【図12】図12は、CHP−MAとHA−SHとの化学架橋によるハイブリッドゲルからのFITC−Ins放出特性を示すグラフである。 【図13】図13は、CHP−MAとHA−MAとの化学架橋によるハイブリッドゲル調製検討結果を示す図である。 【図14】図14は、CHP−MAとHA−MAとの化学架橋によるハイブリッドゲルへのFITC−Ins吸収量の経時変化を示すグラフである。 【図15】図15は、CHP−MAとHA−MAとの化学架橋によるハイブリッドゲルからのFITC−Ins放出量の経時変化を示すグラフである。 【図16】図16は、CHP−MAとHA−MAとの化学架橋によるハイブリッドゲルからのFITC−Ins放出挙動に与えるシクロデキストリンの影響を示すグラフである。 【図17】図17は、CHP−MAとHA−MAとの化学架橋によるハイブリッドゲルからのFITC−Ins放出挙動に与えるアルブミンの影響を示すグラフである。 【図18】図18は、CHP−MAとHA−MAとの化学架橋によるハイブリッドゲルからのFITC−Ins放出挙動に与えるヒアルロニダーゼの影響を示すグラフである。 【図19】図19は、各種化学架橋ハイブリッドゲルのゲル密度を示すグラフである。 【図20】図20は、CHP−MAとMPCとの化学架橋によるハイブリッドゲルからのFITC−Ins放出挙動に与えるアルブミン(10mg/mL)の影響を示すグラフである。 【図21】図21は、CHP−MA・MPCハイブリッドゲルとCHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルからのFITC−Ins放出挙動に対するアルブミンの影響の比較を示すグラフである。 【図22】図22は、HP−MAとMPCとの化学架橋によるハイブリッドゲルからのFITC−Ins放出挙動に与えるアルブミン(50mg/mL)の影響を示すグラフである。 【図23】図23は、CHP−MAとMPCのハイブリッドゲルとCHP−MAとHA−MAとの化学架橋ハイブリッドゲルからのFITC−Ins放出挙動に対するアルブミンの影響の比較を示すグラフである。 【図24】図24は、CHPを封入した各種化学架橋ハイブリッドゲルからのインスリン放出挙動を示すグラフである。 【図25】図25は、CHcDexを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルからのインスリン放出挙動を示すグラフである。 【図26】図26は、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルからのGLP−1放出挙動を示すグラフである。 【図27】図27は、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルからのEPOおよびCHPの放出挙動を示すグラフである。 【図28】図28は、CHPを封入した化学架橋HA−AMハイブリッドゲルからのEPO放出挙動を示すグラフである。 【図29】図29は、EPOとCHPの複合体、およびEPO共存下で化学架橋したハイブリッドゲルからのEPO回収率を示すグラフである。 【図30】図30は、EPOとCHPの複合体溶液、およびEPO溶液のラット皮下投与後のEPO血漿中濃度推移を示すグラフである。 【図31】図31は、EPOを封入した各種ハイブリッドゲルのラット皮下埋め込み後のEPO血漿中濃度推移を示すグラフである。【発明を実施するための形態】【0066】 以下、本発明を更に具体的に説明する。 本発明の組成物(好ましくはゲル状組成物)は、架橋性基を有するヒアルロン酸誘導体および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を含むことを特徴とし、薬物徐放担体として以下のような優れた特徴を有している。【0067】 1.生分解性であり、また生体内における安全性を有する。【0068】 2.薬物、特に薬効を有するタンパク質やペプチドの封入工程、製剤中、生体内での変性を防ぐことができる。【0069】 3.架橋密度および分解性を制御することにより、徐放期間を制御することができる。【0070】 本発明に用いられるヒアルロン酸誘導体は、ヒアルロン酸の少なくとも1つ以上のカルボキシ基またはヒドロキシ(OH)基に置換基が結合したものである。置換基は1種類またはそれ以上のものであってもよい。製造方法は各種公知の方法により製造することができる。特に限定されないが、架橋性官能基は例えば、アミノ基(AM)、メルカプト基(SH)、不飽和結合を有する基、ホルミル基(ALD)などが挙げられ、その調製法は、例えば特許文献5、特許文献9、非特許文献11に開示がある。置換基はスペーサーを介して結合していてもよい。さらに生分解速度を制御するための修飾がされていてもよく、この調製法は、例えば特許文献9に開示がある。【0071】 本発明に用いられるヒアルロン酸およびその誘導体の分子量は、特に限定されないが、低分子量になるほど、ゲル化の架橋反応効率が低下し、高分子量になるほど溶液粘度が増大することに起因してHPまたはその誘導体や架橋剤と均一に混合することが困難となる。そのため、当該分子量は、1kDa〜1,000kDaが好ましく、10kDa〜300kDaがさらに好ましい。【0072】 本発明に用いられるヒアルロン酸誘導体は、薬学的に許容される塩であってもよい。薬学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属類を挙げることができ、特に好ましい塩は、医薬品として汎用されているナトリウム塩である。ヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩は、鶏冠や豚皮下等の生物由来のものを抽出する方法や生物発酵法等の各種公知の方法を用いて製造することができ、あるいは市販のものを購入して(例えば、株式会社資生堂、電気化学工業株式会社、生化学工業株式会社等から)入手することも可能である。【0073】 本発明に用いられる疎水性基を有する親水性多糖類誘導体は、親水性多糖類およびその誘導体に、多糖1分子あたり少なくとも1分子以上の疎水性基を導入して得ることができる親水性多糖類である。親水性多糖類としては特に限定されないが、好ましくはプルラン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、マンナン、レバン、イヌリン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、デキストリンであり、これらは市販されているか、文献記載の方法に従い、種々の平均分子量を有するものを入手することもできる。親水性多糖類として特に好ましいものは、プルラン、ヒアルロン酸、デキストリンである。デキストリンとしてはクラスターデキストリン(登録商標)が好ましい。クラスターデキストリン(登録商標)は、江崎グリコ株式会社から販売されているものを購入して使用することができる。疎水性基としては特に限定されないが、好ましくはC8−50の炭化水素基、ステリル基、ポリ乳酸(PLA)基、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)基などの基またはこれらの基を含む基であり、特に好ましくはコレステリル基を含む基、C8−30の直鎖または分岐アルキル基または当該基を含む基である。疎水性基はスペーサーを介して導入されていてもよい。【0074】 疎水性基を有する親水性多糖類誘導体は各種公知の方法により製造することができ、例えば親水性多糖類としてプルランのヒドロキシ基に、疎水性基としてN−[6−(コレステリルオキシカルボニルアミノ)ヘキシル]カルバモイル基を導入した親水性多糖類誘導体(以下、「コレステロールプルラン」、「CHP」とも称する)の製造方法は、特許文献10に開示があり、また市販のものを購入して(例えば、日本油脂株式会社)入手することも可能である。疎水性基を有する親水性多糖類誘導体は、水溶液中において疎水性相互作用により数分子が自発的に会合することでナノサイズ(1〜1,000nm)のゲル構造を有する微粒子(以下、「ナノゲル」とも称する)を形成することなどにより、疎水性薬物や薬効を有するタンパク質やペプチドと複合化することがきるものであり、例えば非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7などで例示されているものである。疎水基の導入率は特に限定されないが、安定にナノゲルを形成すること、薬物を安定に複合化できること、薬物複合化可能量が多いこと、を成しえる範囲が好ましく、この範囲は親水性多糖類と疎水基の組み合わせによって変動する。例えば親水性多糖類としてプルランを用いた場合、100単糖あたり1〜5個のN−[6−(コレステリルオキシカルボニルアミノ)ヘキシル]カルバモイル基で置換されていることが好ましい。【0075】 疎水性基を有する親水性多糖類誘導体は、1分子に少なくとも1つ以上の疎水性基が結合したものであり、その他にも置換基を導入することにより修飾されていてもよい。前記親水性多糖類誘導体が有する疎水性基および置換基は1種類またはそれ以上のものであってもよい。製造方法は各種公知の方法により製造することができる。特に限定されないが、置換基として架橋形成が可能な基が導入されているものであってもよい。架橋形成が可能な基としては、例えば、アミノ基、メルカプト基、不飽和結合(炭素−炭素二重結合、および炭素−炭素三重結合など)を有する基、およびホルミル基から選択される基など、または当該基を含む基が挙げられ、例えばメタクリロイル基を、CHPに導入した親水性多糖類誘導体の調製法は、特許文献8に開示がある。当該置換基はスペーサー部分を含んでいてもよい。【0076】 本発明に用いられる疎水性基を有する親水性多糖類誘導体の分子量は、特に限定されないが、好ましくは1kDa〜1,000kDa、さらに好ましくは10kDa〜300kDaである。また前記親水性多糖類誘導体は、薬学的に許容される塩であってもよい。【0077】 本発明の組成物(好ましくはゲル状組成物)は、架橋形成が可能な基を有するヒアルロン酸誘導体、および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体から選択される少なくとも2種類以上のポリマーを架橋したハイブリッドゲルであり、ポリマーの比率は、当事者が適宜選択できる。疎水性基を有する親水性多糖類誘導体は、薬効を有するタンパク質やペプチドおよび疎水性低分子薬物と複合化し、安定に保持する機能を有するもので、この組成比が高いほどハイブリッドゲル中への薬物封入量を増やすことができる。【0078】 タンパク質などの薬物を安定に保持するために、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体が、疎水性基の会合により水溶液中で形成する微粒子の内部に薬物を保持することにより、薬物と上記のハイブリッドゲルと複合化するのが好ましい。一方で、微粒子を形成せずとも、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体における複数の疎水性基が、水溶液中の複数の場所で会合し、その会合点の1つまたは複数により薬物が保持される場合もある。特に、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体の水溶液中の濃度が高くなるに従い、当該水溶液がバルクでゲル化しやすくなるため、後者の形式で薬物が保持される割合が高くなる。【0079】 本発明の組成物(好ましくはゲル状組成物)は、複合的な架橋構造を有するハイブリッドゲルであってもよい。架橋とは、共有結合による化学結合であっても、疎水性相互作用や静電的相互作用などによる物理結合であってもよく、また分子間、分子内架橋を含むものであり、同時に分子間および分子内架橋を有する場合もある。当該ハイブリッドゲルは、少なくとも1種類以上の化学結合による化学架橋構造と、1種類以上の疎水的相互作用による物理架橋構造を合わせ持つことを特徴としている。【0080】 また、本発明は、架橋形成が可能な基を有するヒアルロン酸誘導体および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体から選択される少なくとも2種類以上のポリマーをハイブリッドゲル化させる工程にも関する。本発明のハイブリッドゲルは、各種公知の架橋方法によって形成される。【0081】 本発明の組成物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体の存在下で、架橋形成が可能な基を導入したヒアルロン酸誘導体を架橋する方法が挙げられる。具体的には、アミノ基を導入したヒアルロン酸誘導体(HA−AM)を、C2−20アルキレン基の両端にスクシンイミジルエステルやその他のイミドエステルを有する架橋剤(例えば、ビス[スルフォスクシンイミジル]スベレート(BS3)、エチレングリコール−ビス[スルフォスクシンイミジル]スクシネート(Sulfo−EGS)、ジメチルアジピミデート塩酸塩(DMA)など)で縮合反応により架橋すればよい。または、HA−AMを、C2−20アルキレン基の両端にホルミル基を有する架橋剤(例えば、グルタルアルデヒドなど)で架橋すればよい。または、ホルミル基を導入したヒアルロン酸誘導体(HA−ALD)を、C2−20アルキレン基の両端にアミノ基を有する架橋剤(例えば、エチレンジアミン(EDA)など)で架橋すればよい。さらには、メルカプト基を導入したヒアルロン酸誘導体(HA−SH)を酸化条件下(例えば、テトラチオネートナトリウム(STT)存在下など)で酸化反応により架橋すればよい。さらには、HA−SHをC2−20アルキレン基の両端にマレイミド(MAL)基やメタクリロイル基などの不飽和結合を有する架橋剤(例えば、1,4−ビス−マレイミドブタン(BMB)、ジメタクリル酸エチレン(EDMA)など)でマイケル付加反応により架橋すればよい。さらには、ヒアルロン酸に不飽和結合を有する官能基(例えば、メタクリロイル基(以下「MA基」とも称する)、アクリロイル基など)を導入したヒアルロン酸誘導体を、C2−20アルキレン基の両端にSH基を有する架橋剤(例えば、ジチオスレイトール(DTT)など)でマイケル付加反応により架橋すればよい。さらには前記不飽和結合を導入したヒアルロン酸誘導体を各種重合開始剤(例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)/N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、Irgacure2959など)でラジカル重合により架橋すればよい。さらには、ヒアルロン酸ナトリウムとジアミン化合物(例えば、EDA、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチレンジアミン)など)共存下、縮合剤(例えば、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジハイドロキノリン(EEDQ)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン)−4−メチルモルホリウムクロライド(DMT-MM)、2−ベンゾトリアゾール−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム4フッ化ホウ酸塩(TBTU)、3,4−ジハイドロ−3−ハイドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HODhbt)、ベンゾトリアゾール−1−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム6フッ化リン酸塩(PyBOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)フォスフォニウム ヘキサフルオロフォスフェート(BOP)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)またはN−ハイドロキシスクシンイミド(NHS)など)によって架橋すればよい。上記の架橋形成は、ヒアルロン酸誘導体の分子内であっても、複数のヒアルロン酸誘導体の分子間であってもよい。【0082】 または、本発明の組成物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体の存在下で、異なる架橋性官能基を導入した2種類のヒアルロン酸誘導体同士を化学架橋する方法が挙げられる。具体的には、HA−AMと活性エステル基を導入したHA誘導体を縮合反応により架橋すればよい。または、HA−AMとHA−ALDを架橋すればよい。さらには、HA−SHとHA−MAをマイケル付加反応により架橋すればよい。【0083】 さらには、例えば、ヒアルロン酸またはその誘導体および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体に含まれるヒドロキシ基もまた架橋形成が可能な基として利用することができる。すなわち、ヒアルロン酸またはその誘導体、および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を、特定の架橋剤、例えば、ジビニルスルホン(DVS)、カルボジイミド、またはC2−20アルキレン基の両端にグリシジルエーテル基を有する架橋剤などによって架橋すればよい。【0084】 さらには、本発明の組成物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、架橋形成が可能な基を導入した疎水性基を有する親水性多糖類誘導体、および架橋形成が可能な基を導入したヒアルロン酸誘導体を架橋する方法が挙げられる。具体的には、アミノ基を導入した前記親水性多糖類誘導体誘導体(HP−AM)とHA−AMを、前例の架橋剤などで架橋すればよい。または、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体にホルミル基を導入した誘導体(HP−ALD)とHA−ALDを前例の架橋剤などで架橋すればよい。さらには、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体にメルカプト基を導入した誘導体(HP−SH)とHA−SHを、前例の方法などにより架橋すればよい。さらには、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体に不飽和結合を有する官能基(例えば、メタクリロイル基、アクリロイル基など)を導入した誘導体と不飽和結合を有する官能基を導入したヒアルロン酸誘導体を、前例の方法などにより架橋すればよい。上記の架橋形成は、ヒアルロン酸誘導体および親水性多糖類誘導体の分子内であっても、複数のヒアルロン酸誘導体または親水性多糖類誘導体の分子間であってもよい。【0085】 さらには、本発明の組成物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体およびヒアルロン酸誘導体の各々に異なる架橋形成が可能な基を導入した前記誘導体を化学架橋する方法が挙げられる。具体的には、HP−AMと活性化エステル基を導入したヒアルロン酸誘導体を縮合反応により架橋すればよい。または、HP−AMおよびHA−ALD、またはHP−ALDおよびHA−AMを架橋すればよい。さらには、HP−MAおよびとHP−SHや、HP−SHおよびHA−MAをマイケル付加反応により架橋してもよい。【0086】 本発明の組成物(好ましくはゲル状組成物)が有する化学架橋構造は、架橋剤、ポリマーに導入した架橋形成が可能な基、結合様式などに、生体内で分解するものを用いてもよい。特に限定されないが、例えば置換基にエステル結合を有するメタクリロイル基などで修飾したHA−MAやHP−MAなどを用いてもよい。または、Sulfo−EGSやEDMAなど、スペーサー領域にエステル結合を有する架橋剤を用いてもよい。生体内の酵素によって分解されるペプチドスペーサーを用いてもよい。また、メルカプト基の酸化によって形成するジスルフィド結合によって架橋したゲルはジスルフィド交換反応や還元反応によって生体で分解される。分解性の化学架橋構造を有することで、ハイブリッドゲルの生体内での分解速度を制御することができ、これによって薬物の放出速度も制御することが可能である。【0087】 本発明のハイブリッドゲル化させる工程は、適宜その条件を選択してもよい。架橋の条件とは、例えば、ヒアルロン酸誘導体と疎水性基を有する親水性多糖類誘導体から選択した2種類以上のポリマー、それらの架橋方法、ポリマー濃度、ポリマー比率、架橋剤濃度、溶媒、溶媒pH、塩濃度、温度、時間などがある。【0088】 本発明のゲルの製造において、架橋形成の反応条件の中で、例えば化学架橋時のポリマー濃度および架橋形成が可能な基の導入率を高くすることで、生成するハイブリッドゲルの架橋密度を高くすることが可能である。【0089】 また、本発明のハイブリッドゲル化工程におけるポリマー濃度は、ハイブリッドゲル化させる前にポリマーや架橋剤を均一に混合するのに適した範囲で適宜選択してもよい。この範囲はポリマー分子量、置換基、選択する溶媒などによっても変動する。例えば20kDaのヒアルロン酸誘導体を水中で用いる場合は、好ましくは1%w/v〜30%w/v、特に好ましくは4%w/v〜20%w/vである。200kDaのHAを水中で用いる場合は、好ましくは0.1%w/v〜10%w/v、特に好ましくは0.5%w/v〜4%w/vである。また、HPとして100kDaのプルランに100単糖あたり1.4個のコレステロール基が導入されたCHPを水中で用いる場合、好ましくは0.1%w/v〜4.0%w/v、特に好ましくは0.5%w/v〜3.0%w/vである。また、HPとして150kDaのクラスターデキストリン(登録商標)に100単糖あたり3.8個のコレステロール基が導入されたCHcDexを水中で用いる場合、好ましくは0.1%w/v〜10.0%w/v、特に好ましくは0.5%w/v〜8.0%w/vである。【0090】 本発明のハイブリッドゲル化工程における架橋剤濃度は、両端に架橋形成が可能な基を有するものを使用する場合、当該基が過不足なく速やかに架橋反応に関与できるような濃度で添加することが好ましい。例えば、メタクリロイル基を導入したポリマーをDTTを用いてマイケル付加反応により架橋する場合は、MA基:SH基=3:1〜1:3が好ましく、2:1〜1:2が特に好ましい。【0091】 本発明のハイブリッドゲル化工程において選択する溶媒は、ポリマーおよび架橋剤を充分に溶解することができるものが好ましく、特に限定されないが、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)およびこれらから選択される混合溶媒を用いることが好ましい。また、これらの溶媒に混和する有機溶媒を混合して使用することも可能である。特に限定されないが、混和する有機溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられる。なお、疎水性基を有する親水性多糖誘導体の疎水性基を会合させることで予め微粒子を形成しておくという観点では、水単独を溶媒として用いることが好ましい。【0092】 本発明のハイブリッドゲル化工程における溶媒pH、塩濃度、時間、温度などは、選択した架橋方法が速やかに進行する条件で、かつ選択したポリマーが化学的に安定である条件を用いることが好ましい。特に限定されないが、塩濃度が高いとポリマーの溶解性が悪くなったり、異種ポリマー間の相分離などが見られる場合があることから(実施例3および4参照)、塩濃度は低い方が好ましい。【0093】 本発明のハイブリッドゲル化させる工程は、バルクで行ってもよく、エマルション中や噴霧液滴中などの不連続相中で行ってもよい。例えば、W/Oエマルション中で行う場合は、ポリマーや架橋剤などを溶解させた水相を、水に混和しない溶媒中に乳化し、ゲル化反応を行えばよい。水に混和しない溶媒とは、特に限定されないが、例えばヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、流動パラフィン、大豆油などが挙げられる。乳化を安定化するための界面活性剤を添加してもよい。また、例えば、超臨界二酸化炭素中やPEG中など脱溶媒が可能な溶媒中で行ってもよい。この場合は、ポリマーや架橋剤などを溶解させた水相や有機溶媒相を、前例の溶媒中に乳化、分散することで、脱溶媒(溶媒拡散)に伴うポリマーの濃縮が成されることから、より高い架橋密度のハイブリッドゲルを得ることが可能になる。この方法を利用した例として、デキストラン(Dex)にグリシジルメタクリレート(GMA)を導入したDex−GMAの水溶液をPEG水溶液中で脱水と同時に架橋する方法が、例えば特許文献11に開示されている。乳化は、例えばメカニカルスターラー、回転型ホモジナイザー、膜乳化、超音波照射などを使用して行ってもよい。噴霧液滴中で行う場合は、例えば噴霧乾燥機を用いてゲル化させてもよい。この方法では、特許文献12に開示があるように、ポリマーや架橋剤などを溶解した溶液を噴霧乾燥することで、濃縮、ゲル化、乾燥、微粒子化を同時に行うことができる。【0094】 本発明のハイブリッドゲル化させる工程およびその後に、架橋反応を停止する操作および残存した架橋性官能基を失活もしくは洗浄する操作を行ってもよい。反応に関与しなかった架橋性官能基、架橋剤の片端のみが結合した基、残存した架橋剤などは、安全性の観点、保存中安定性の観点、封入される薬物との副反応などの観点から除去した方が好ましい。特に限定されないが、例えば、未反応の架橋剤が残存している場合は、過剰の水などで洗浄することで除去してもよい。また、例えばポリマーに置換したメタクリロイル基が残存する場合は、過剰のメルカプトエタノールなどを添加し、メタクリロイル基を失活させた後、過剰の水などで余剰のメルカプトエタノールを洗浄することで除去してもよい。さらには、例えばメルカプト基が残存する場合は、過剰のプロピオン酸マレイミド、酢酸ヨウ素などを添加し、メルカプト基を失活させた後、過剰の水などで余剰のプロピオン酸マレイミド、酢酸ヨウ素を洗浄することで除去してもよい。【0095】 本発明のハイブリッドゲル化させる工程の後に、粉砕工程を行ってもよい。粉砕方法としては、乳棒と乳鉢を用いる粉砕やミルを用いる粉砕が挙げられるが、ミルを用いる粉砕が好ましい。ミル粉砕装置としては、遠心式粉砕機(日本精機製作所)およびインパクトミル(株式会社ダルトン)等の回転円板型の粉砕装置、アトマイザー(東京アトマイザー製造株式会社)、サンプルミル(東京アトマイザー製造株式会社)、バンタムミル(東京アトマイザー製造株式会社)、およびSKミル(トッケン)等のスクリーンミルの粉砕装置、超微少量ラボジェットミル(A−Oジェットミル、セイシン企業)等のジェット粉砕装置、並びに、超低温での粉砕が可能なリンレックスミル(リキッドガス株式会社)等が挙げられるが、SKミルおよびリンレックスミルが好ましい。【0096】 本発明のハイブリッドゲル化させる工程の後に、乾燥工程を行ってもよい。乾燥方法としては、例えば通風乾燥、恒温槽中での乾燥、減圧乾燥、熱風循環式乾燥などが挙げられる。風速、乾燥時間、温度、圧力などは本発明のゲルが分解や変質を生じない範囲で適宜選択される。【0097】 また、本発明は、前記の本発明のハイブリッドゲルに薬物を封入することで得られる医薬組成物の製造方法に関する。【0098】 薬物封入方法として、あらかじめ架橋されたハイブリッドゲルに薬物溶液を添加する方法が挙げられる。当該方法では、まず、膨潤したゲル内部へ拡散によって薬物が吸収され、吸収された薬物は、ハイブリッドゲル中の疎水性相互作用による物理架橋ドメインに保持されることによって薬物が封入される。特に限定されないが、溶媒、塩濃度、pH、温度、時間、変性剤の添加などの条件は、薬物が安定でかつ高収率で封入されるように適宜選択してよい。例えば、薬物封入時の塩濃度やpHによって、ハイブリッドゲルの膨潤度や密度が変化し、薬物の電離状態なども変わるため、その組み合わせによって適宜、適した条件を使用すればよい。また、CHPナノゲルと種々タンパク質の複合化挙動は、例えばインスリン(非特許文献12参照)やアルブミン(非特許文献7参照)などは常温において自発的に複合化するのに対して、炭酸脱水酵素B(非特許文献8参照)やクエン酸合成酵素(非特許文献9参照)などは熱変性や変性剤による変性条件において複合化するというように、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体と複合化することができる条件はタンパク質やペプチドによって異なる。そのため、本発明の組成物(好ましくはゲル状組成物)への薬物封入条件は、封入する薬物の特性によって温度や変性剤の添加などを行うなど適宜調整すればよい。変性剤を添加した場合は、薬物封入後、過剰の水などで洗浄して余剰の変性剤を除去すればよい。また、当該方法においては、本発明のハイブリッドゲルのサイズが小さくなる程、比表面積が広くなり、また薬物が疎水架橋ドメインに保持されるまでに本発明のゲル内を拡散する距離が短くなることから、薬物封入工程にかかる時間が短縮することができる。本発明のハイブリッドの架橋密度は、封入する薬物が拡散によって速やかに吸収される範囲であることが好ましく、架橋方法やハイブリッドゲル化させる条件によって封入される薬物の分子量やサイズなどに合わせて、その適した架橋密度のハイブリッドゲルを調製すればよい。また、in situ架橋の場合、未反応の架橋性官能基や架橋剤が製剤中に残存してしまうことから、医薬品としての安全性の観点から好ましくない。これは、洗浄工程や未反応の架橋性官能基を他の反応性試薬で消失させる工程により改善されるが、これらの工程は封入された薬物の共存下で行わなければならず、回収率の低下や薬物変性の原因となるが、当該方法では、薬物非存在下で洗浄工程などを行った後に薬物封入を行える点で大きな利点がある。また、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体の疎水ドメインに保持されなかった薬物は、生体内に投与された場合に速やかに本発明のハイブリッドゲルから放出されてしまうため、洗浄工程によって除去することが好ましい。薬物封入後に必要に応じて粉砕、乾燥工程などを行ってもよく、粉砕工程の条件や乾燥工程の風速、乾燥時間、温度、圧力などは本発明のハイブリッドゲルや封入された薬物が分解や変質を生じない範囲で適宜選択される。【0099】 また、薬物封入方法として、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体が形成するナノゲルに薬物を複合化させた後、このナノゲル・薬物複合体とヒアルロン酸誘導体をin situ架橋することでハイブリッドゲル化させる方法が挙げられる。特に限定されないが、複合化の際の溶媒、塩濃度、pH、温度、時間、変性剤の添加、前記親水性多糖類誘導体濃度、薬物濃度、HPと薬物の比率などの条件は、薬物が安定でかつ高収率でナノゲルと複合化されるように適宜選択してもよい。複合化されなかったフリーの薬物は、透析法やサイズ排除クロマトグラフ(SEC)法などで分離、除去すればよい。in situ架橋の際は、ナノゲルに複合化された薬物が変性しない架橋条件を用いることが好ましい。一般にヒアルロン酸誘導体と薬物をin situ架橋する場合、薬物と基材が反応しない選択的な架橋反応を利用する必要があるが、完全に選択性を得ることは難しい。当該方法において、HPに複合化された薬物は、フリーの薬物と比較して反応性が抑えられているために、HAまたはその誘導体とin situ架橋しても、基材との副反応が起こりにくい利点がある。本発明者らは、エリスロポエチン(EPO)をモデル薬物として、CHPと複合化したEPOとフリーのEPOの間に前記反応性の違いがあることを実施例30で示している。当該方法においては、例えば疎水性基を有する親水性多糖類誘導体としてCHPのようなノニオン性の骨格を持つポリマーを用いることが特に好ましい。これは、ノニオン性ポリマーとヒアルロン酸およびその誘導体のようなアニオン性ポリマー同士の相溶性がよくないために、CHPとヒアルロン酸誘導体の間ではミクロ相分離が起こり、CHPに複合化されたナノゲル内の薬物は、ヒアルロン酸誘導体の化学架橋反応から保護されるためである。in situ架橋した後に必要に応じて粉砕、乾燥、洗浄工程などを行ってもよく、各条件は本発明のハイブリッドゲルや封入された薬物が分解や変質を生じない範囲で適宜選択される。【0100】 本発明のハイブリッドゲルからの薬物は、ハイブリッドゲル中の薬物および薬物と疎水性基を有する親水性多糖類誘導体との複合体の拡散、ハイブリッドゲルの分解、および生体成分と薬物の置換によって放出される。放出される薬物とは、フリーの薬物であっても疎水性基を有する親水性多糖類誘導体との複合体であってもよい。例えば、in vitroにおいて、CHP・インスリン複合体にアルブミンを添加すると速やかに置換が起こりフリーのインスリンが放出されること、また、そのまま静脈投与すると速やかに血液成分との置換が起こり、フリーのインスリン水溶液を投与した場合と比較してほぼ同等の薬効を示すことが非特許文献12に例示されており、複合体としてハイブリッドゲルから放出された薬物は、生体内において速やかに複合体から解離すると考えられる。【0101】 薬物および複合体の拡散によって薬物放出がなされる場合には、本発明のハイブリッドゲルの架橋密度、および疎水架橋ドメインの量やその疎水性の強さによってその速度を制御することが可能である。特に薬物とナノゲルの結合定数が高い場合、複合体の拡散によって薬物は放出される。この場合、封入する薬物に依らず、ハイブリッドゲルからのナノゲルの拡散速度を制御することで薬物放出速度を制御することが可能である。【0102】 ハイブリッドゲルの分解とは、例えば、化学架橋ドメインの分解、ヒアルロン酸誘導体の骨格の分解、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体誘導体の骨格の分解などがある。これらの分解により、架橋密度の低下(膨潤率の増大)が生じる。またヒアルロン酸誘導体と疎水性基を有する親水性多糖類誘導体が化学的に結合している場合は、この結合が切れることになる。架橋密度が低下すると、ハイブリッドゲル中の薬物や複合体の拡散速度が加速されるため放出が促進され、また結合が切れることによっても放出が促進される。このため、化学架橋ドメインの分解性、ポリマー骨格の分解性、スペーサーの分解性などを制御することによって、薬物放出速度を制御することが可能である。【0103】 生体成分との置換とは、例えば、ハイブリッドゲルを皮下や血中などの生体内に投与した場合、アルブミンなどの血漿タンパク質や脂質などが存在し、これらがハイブリッドゲル中に浸潤、封入されている薬物と置換されることにより薬物が放出される場合を意味する。本発明のハイブリッドゲルは、CHPなどの疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を、架橋したヒアルロン酸誘導体中に封入することによって、生体成分の浸潤に伴う薬物との置換を抑制することが可能で、例えば、本発明者らは過剰のアルブミン存在下、非存在下のどちらにおいても薬物放出速度が変わらないことを実施例8に示している。生体成分の浸潤は、ハイブリッドゲルの架橋密度、ゲル中の電荷などによってその速度を制御することが可能である。なお、前記の架橋によりハイブリッドゲルを形成後に薬物溶液を添加して薬物封入をする場合は、封入時に薬物はハイブリッドゲル中に吸収されやすく、生体内では生体成分の浸潤が抑制されるように、その封入条件を適宜選択することができる。特に限定されないが、例えば、タンパク質を封入する場合、その等電点付近で封入工程行うことで、ヒアルロン酸誘導体と薬物の静電反発を抑制することができる。また、ヒアルロン酸に含まれるグルクロン酸由来のカルボン酸のpKa(およそ4.0)以下で封入工程を行うことで、ハイブリッドゲルが持つ負電荷を弱めることができるので、その条件で負電荷に帯電しているタンパク質との静電反発が抑制され、封入効率の向上が可能となる。また、例えば生体内よりも低い塩濃度において封入工程を行うことで、生体内よりもハイブリッドゲルの膨潤率が高くなるため、封入が容易となる。【0104】 薬物を封入した前記ハイブリッドゲルに、さらに、2価の金属イオンや硫酸プロタミンなどの持続化剤を添加することで、更に徐放期間を長くすることが可能である。2価の金属イオンとしては、例えば亜鉛、マグネシウム、鉄、カルシウム、アルミニウムなどが挙げられる。【0105】 前記ハイブリッドゲルのサイズは、前記の不連続相中でゲル化を行う方法や粉砕方法を用いることで、用途によって調節することができる。インジェクタブルな医薬組成物とするためには通常、0.01μm〜150μmが好ましい。経皮投与の時は、0.01μm〜150μmが好ましく、経鼻、経肺投与の時は、0.01μm〜5μmが吸入効率の点で好ましく、静注投与の時には、0.01μm〜0.2μm程度が血中動態の点から好ましい。【0106】 なお、本発明のハイブリッドゲルに封入する薬物(低分子化合物、タンパク質、ペプチド、および核酸)の例としては、以下のものを挙げることができる。【0107】 低分子化合物の例としては、例えば、制癌剤(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アルカロイド等)、免疫抑制剤、抗炎症剤(ステロイド剤、非ステロイド剤系抗炎症剤、等)、抗リウマチ剤、抗菌剤(β-ラクタム系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、新キノロン系抗生物質、サルファ剤、等)などを挙げることができる。【0108】 タンパク質、ペプチドの例としては、例えば、貧血治療薬、臓器保護薬であるエリスロポエチン(EPO)、好中球減少症治療薬であるグラニュロサイトコロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロン−α、β、γ、(INF−α、β、γ)、トロンボポエチン(TPO)、シリアリーニュートロフィクファクター(CNTF)、チューマーネクローシスファクター(TNF)、チューマーネクローシスファクター結合タンパク質(TNFbp)、インターロイキン−10(IL−10)、FMS類似チロシンカイネース(Flt−3)、成長ホルモン(GH)、インシュリン、インシュリン類似成長因子−1(IGF−1)、血小板由来成長因子(PDGF)、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト(IL−1ra)、ブレイン由来ニューロトロフィクファクター(BDNF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、幹細胞因子(SCF)、メガカリオサイト成長分化因子(MGDF)、オステオプロテゲリン(OPG)、レプチン、副甲状腺ホルモン(PTH)、塩基性フィブロブラスト成長因子(b−FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、各種酵素補充療法薬、抗体、ダイアボディー、ミニボディー、断片化抗体等を挙げることができる。【0109】 核酸の例としては、例えば、DNA、RNA、アンチセンス、デコイ、リボザイム、small interfering RNA、RNAアプタマー等を挙げることができる。【0110】 本発明のハイブリッドゲルは、薬物を封入して、1種もしくはそれ以上の薬学的に許容し得る希釈剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定剤等を含む医薬組成物として、目的とする投与経路に応じ、適当な任意の形態にして投与することができる。投与経路は非経口的経路であっても経口的経路であってもよい。【0111】 薬物としては、タンパク質およびペプチドが好ましく、これらの薬物を封入することで、タンパク質およびペプチドを含有する、本発明の組成物を得ることができる。【0112】 本発明により、従来の徐放性製剤では得られない、タンパク質、ペプチド、核酸、低分子化合物といった薬物を長期間徐放できる安全性の高い徐放性製剤、医薬組成物を提供することが可能である。【実施例】【0113】 以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明する。【0114】 以下の記載中のHAユニットとは、ヒアルロン酸中のN−アセチルグルコサミン−グルクロン酸を1ユニットとするの繰り返し単位を意味する。また、実験操作において使用した超純水は、超純水製造装置(例えば、ミリポア(Millipore)社製、Milli−Q SP TOC(型番 ZD21TOCSP)など)を用いて調製したものを使用した。〔実施例1〕MA基を導入したHA誘導体(HA−MA)の合成(実施例1−1)カチオン交換樹脂のテトラブチルアンモニウム(TBA)塩化 DOWEX(登録商標)50WX−8−400(アルドリッチ社製)を超純水に懸濁させ、デカンテーションにより樹脂を超純水で3回程度洗浄した。40wt%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TBA−OH)(アルドリッチ社製)を樹脂のカチオン交換能に対し約1.5倍モル等量加え、30分間ほど撹拌した。余剰のTBA−OH溶液をデカンテーションにより除去した後、さらに過剰の超純水で洗浄することで、TBA塩化したカチオン交換樹脂を得た。(実施例1−2)HAのTBA塩化 分子量16kDa、100kDaおよび200kDaのヒアルロン酸ナトリウム塩(HA−Na、100kDaのものは資生堂株式会社製、その他は電気化学工業株式会社製)をそれぞれ15mg/mLの濃度で超純水に溶解した。実施例1−1項でTBA塩化したカチオン交換樹脂の懸濁液をHAユニットのモル数に対し樹脂のイオン交換能換算で5倍モル等量添加した。15分間ほど撹拌した後、0.45μmのフィルターを用いて濾過を行い、濾液を凍結乾燥し、ヒアルロン酸TBA塩(HA−TBA)を白色固体として得た。【0115】 得られたHA−TBAを約10mg/mLの濃度でD2Oに溶解させ、NMRによる構造解析を行い(グルコサミンのアセチル基(3H:1.75ppm)の積分値を基準とし、TBAの二つのメチレン(N(CH2CH2CH2CH3)4、2H:1.35−1.39ppmおよび2H:1.64−1.67ppm)の積分値の比率より算出)、HAユニットに対するTBAの量比を算出し、この塩比からTBA−HAのユニット平均分子量を算出し、この値を次項の合成に使用した。(実施例1−3)メタクリロイル基を導入したHA誘導体(HA−MA)の合成 実施例1−2で調製した各分子量のHA−TBAを5mg/mLで無水DMSOに溶解した。その後、2−アミノエチルメタクリレート塩酸塩(AEMA)(ポリサイエンス社製)をHAユニットに対して表1に記載した比率で各溶液に添加した。次に、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(BOP試薬)をHAユニットに対して以下に示す表1に記載した比率で加え、穏やかな攪拌下、室温で一晩反応させた。反応溶液は0.3M NaCl水溶液を使用して透析(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa、外液は4回交換した)し、次に外液を超純水に変え、引き続き透析(外液は6回交換した)して精製をした。得られた透析液を凍結乾燥してHA−MAを白色固体として得た。【0116】 得られたHA−MAを約10mg/mLの濃度でD2Oに溶解させ、NMRにより構造解析を行い(グルコサミンのアセチル基の積分値を基準とし、AEMAのメチレン(CH2=C(CH3)CO2CH2CH2NH−、5.60ppmおよび6.00ppmの積分値の比率より算出)、HAユニットに対するMA基の導入率を算出し、導入率からHA−AMEAのユニット平均分子量を算出した(表1参照)。【0117】 この結果、縮合剤(BOP試薬)およびAEMAの添加量によって、MA導入率を制御可能であることが示唆された。【0118】【表1】 上記表1のHA−MA−9は、以後「HA−MA−200k−43」とも称する。〔実施例2〕化学架橋HA−MAのゲルの調製条件検討(実施例2−1)ゲル化反応の緩衝液調製 500mM リン酸緩衝液(PB、pH8.0)に500mMになるようにトリエタノールアミン(TEA)を添加し、よく混合した。これを超純水で5倍に希釈してpHを測定したところ、pHは9.2であった。(実施例2−2)ジチオトレイトール(DTT)水溶液の調製 75mg/mL(486.07mM)になるようにDTTを超純水に溶解させた。(実施例2−3)化学架橋HA−MAのゲルの調製 各サンプル調製(サンプル2−1〜2−14)に使用したHA−MA、最終濃度を表2に示した。【0119】 実施例1で合成した種々のHA−MAをマイクロチューブに秤取し、超純水を添加し、4℃で一晩静置して、表2に示す種々の濃度の溶液を得た。次に実施例2−1で調製したTEA/PB溶液を最終容量の1/5添加し、よく混合した。さらに、実施例2−2で調製したDTT水溶液をMA基の最終濃度に対して1/2のモル数(MA基とSH基の比率が1:1)になるように添加し、よく混合した。最終容量は、どの条件もおよそ100μLとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、37℃で14時間静置することによって化学架橋反応を行った。【0120】 サンプル2−7およびサンプル2−13では、HA−MAが完全には溶解しなかった。【0121】【表2】(実施例2−4)化学架橋HA−MAのゲルの特性評価 実施例2−3において調製したゲルをマイクロチューブより取り出し、全体がゲル化していないものを「−」、一部がゲル化したものを「±」、全体がゲル化したものを「+」としてスコアをつけた。次に、全体がゲル化したゲルを過剰の超純水を用いて4℃で一晩膨潤させた。膨潤したゲルのそれぞれについて、キムワイプ(登録商標)で表面についた水分を吸い取り、重量を測定した(膨潤重量)。次に、膨潤したゲルを凍結乾燥し、重量を測定した(乾燥重量)。以下の式(1)により膨潤時のゲル密度を算出した(表3)。式(1) (膨潤時ゲル密度%w/w)={(乾燥重量)/(膨潤重量)}×100【0122】【表3】 この結果、架橋性官能基であるMA基の導入率が高いほどゲル密度が高くなること、架橋時のHA−MA濃度が高いほどゲル密度が高くなること、HA分子量が高いほど、低い濃度でゲル化が起こることが示唆された。〔実施例3〕コレステロール基導入プルラン(CHP)を封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルの調製−1(実施例3−1)CHP水溶液の調製 分子量100kDaのプルランの100単糖あたり1.38個のコレステロール基が置換されているCHP(CHP−100−1.38と表記する;PUREBRIGHT CP−100T、日本油脂株式会社製)を5mg/mLの濃度でDMSOに溶解させた。このDMSO溶液を超純水に対して透析(スペクトラポア4、MWCO:12k−14kDa)し、得られた水溶液を0.22μmのフィルターで濾過し、凍結乾燥した。得られたCHP−100−1.38の白色粉末を30mg/mLの濃度になるように超純水に溶解させることで、CHPの水溶液を得た。(実施例3−2)ゲル化反応の緩衝液調製 500mMリン酸緩衝液(PB)(pH8.0)に500mMになるようにトリエタノールアミン(TEA)を添加し、よく混合した。(実施例3−3)ジチオトレイトール(DTT)水溶液の調製 25mg/mL(162.02mM)および150mg/mL(972.13mM)になるようにDTTを超純水に溶解させた。(実施例3−4)CHPを封入した化学架橋HA−MAの調製 各調製(サンプル3−1〜3−18)に使用したHA−MA、最終濃度を表4に示した。【0123】 実施例1で合成したHA−MA−3およびHA−MA−8をマイクロチューブに秤取し、超純水および実施例3−1で調製したCHP水溶液を添加し、4℃で一晩静置して、表4に示す種々の濃度の溶液を得た。次に実施例3−2で調製したTEA/PB溶液を最終容量の1/5添加し、よく混合した。さらに、実施例3−3で調製したDTT水溶液をMA基の最終濃度に対して1/2のモル数(MA基とSH基の比率が1:1)になるように添加し(サンプル3−1〜3−9は150mg/mL溶液、サンプル3−10〜3−18は25mg/mL溶液使用)、よく混合した。最終容量は、どの条件もおよそ100μLとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、37℃で14時間静置することによって化学架橋反応を行った。【0124】【表4】(実施例3−5)CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルの特性評価 実施例3−4において調製した化学架橋HA−MAをマイクロチューブマイクロチューブより取り出し、全体がゲル化していないものを「−」、一部がゲル化したものを「±」、全体がゲル化したものを「+」としてスコアをつけた。また、ゲルの外観(透明、不透明)について表5に記載した。次に、全体がゲル化したサンプルを過剰の超純水を用いて4℃で一晩膨潤させた。膨潤前のゲルの形状のまま膨潤したものを均一に膨潤したゲル、そうでないものを不均一に膨潤したゲルとした。膨潤したそれぞれのゲルは、キムワイプで表面についた水分を吸い取り、重量を測定した(膨潤重量)。次に、膨潤したゲルを凍結乾燥し、重量を測定した(乾燥重量)。前記の式(1)により膨潤時のゲル密度を算出した(表5)。【0125】【表5】 サンプル3−7〜3−9では完全ではなかったが、全てのサンプルにおいてゲル化の進行が確認された。サンプル3−7〜3−9では、HA−MAのみではゲル化したのに対してCHP共存下ではゲル化が完全には進行しなかったのは、CHPを混合することでゲル化前の溶液粘度が増大し、ポリマー、架橋剤が均一に混合できなくなったことによるものと思われた。また、サンプル3−16〜3−18では、不均一な膨潤挙動が見られた。これは、サンプル3−7〜3−9と同様にCHPを混合することでゲル化前の溶液粘度が増大し、ポリマー、架橋剤が均一に混合できなくなった結果、不均一な架橋となったと思われた。実施例2の結果と併せて、高濃度での化学架橋によるゲル化は、HA−MAおよびCHP混合溶液の濃度や比率によって、その溶解性や粘度に起因する上限があるものと思われた。【0126】 また、CHP濃度が上がるにつれて、ゲル化反応直後のゲルが不透明となる場合が確認されたが、超純水に対する膨潤後は透明になった。これは膨潤することによるゲル密度(ポリマー濃度)の低下、pHの変動、TEAが除去されたことなどに起因すると考えられた。【0127】 膨潤時のゲル密度は、CHP含量が高くなるにつれ増大していた。CHPはゲル化の化学架橋反応に関与しないことから、超純水に対して膨潤しても封入されたままになっていることが示唆された。本実施例により種々の組成およびゲル密度でCHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルが得られることが示された。〔実施例4〕CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルの調製−2(実施例4−1)ゲル化反応の緩衝液調製 500mMになるようにトリエタノールアミン(TEA)を超純水に対して溶解させた。超純水で5倍に希釈してpHを測定したところ、pHは9.2であった。(実施例4−2)ジチオトレイトール(DTT)水溶液の調製 150mg/mL(972.13mM)になるようにDTTを超純水に溶解させた。(実施例4−3)CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルの調製 各ゲル調製(サンプル4−1および4−2)に使用したHA−MA、最終濃度を表6に示した。【0128】 実施例1で合成したHA−MA−3をマイクロチューブに秤取し、超純水および実施例3−1で調製したCHP水溶液を添加、4℃で一晩静置することで種々の濃度で溶解させた。次に実施例4−1で調製したTEA水溶液を最終容量の1/5添加し、よく混合した。さらに、実施例4−2で調製したDTT水溶液をMA基の最終濃度に対して1/2のモル数(MA基とSH基の比率が1:1)になるように添加し、よく混合した。最終容量は、どの条件もおよそ100μLとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、37℃で14時間静置することによって化学架橋反応を行った。【0129】【表6】(実施例4−4)CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルの特性評価 実施例4−3において調製した化学架橋HA−MAゲルおよびハイブリッドゲルをマイクロチューブより取り出し、ゲルの外観(透明、不透明)について表7に記載した。次に、ゲルを過剰の超純水を用いて4℃で一晩膨潤させた。膨潤したそれぞれのゲルは、キムワイプで表面についた水分を吸い取り、重量を測定した(膨潤重量)。次に、膨潤したゲルを凍結乾燥し、重量を測定した(乾燥重量)。前記の式(1)により膨潤時のゲル密度を算出した。【0130】【表7】 この結果から、反応溶液からPBを除去しても、化学架橋HA−MAゲルは調製可能であり、むしろゲル密度が増大したことから、化学架橋の反応効率は高いことが示唆された。また、サンプル4−2においてゲルの不透明化は見られなかった。実施例3において不透明化したゲルを超純水に膨潤すると透明になったことと、本項の結果を合わせて、HA−MAとCHPの相分離は、溶液塩濃度を低減することで抑制できることが示唆された。〔実施例5〕CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルの薬物吸収性および放出性、ならびにゲル分解性の評価(実施例5−1)ハイブリッドゲルへのFITC−Ins封入 100mM PB(pH7.4)に100μg/mLの濃度になるようにFITC−Ins(アルドリッチ社製)を溶解させた。実施例3において調製したサンプル3−1〜3−6のハイブリッドゲルの凍結乾燥品に5mLのFITC−Ins溶液を添加し、4℃において2日間インキュベーションしたところ、実施例3における膨潤時は無色透明であったそれぞれのハイブリッドゲルは、周囲のFITC−Ins溶液より濃い黄色を呈していた。このことから、ハイブリッドゲルはFITC−Insを自発的に吸収、保持したものと考えられた。FITC−Ins溶液を除去したハイブリッドゲルの外観を図1に示した。(実施例5−2)ハイブリッドゲルのFITC−Ins放出特性評価 実施例5−1でFITC−Insを封入したハイブリッドゲルに5mLのPBS(pH7.4)を添加し、37℃において4日間インキュベーションした。そのときの外観を図2に示した。それぞれのハイブリッドゲルは黄色を呈したままで、水溶液は無色透明のままであったことから、自発的に吸収、保持されたFITC−Insは速やかに放出されないことが示唆された。次に、最終濃度で10mMになるように100mM 2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD、純正化学株式会社製)水溶液を添加し、37℃においてインキュベーションした。経時的に外観を観察したところ、黄色を呈していたハイブリッドゲルは徐々に退色し、水溶液が徐々に黄色を呈した(HP−β−CD添加後2時間の外観、図3)。シクロデキストリンは、CHPのコレステロール基を包摂し、コレステロール基と疎水性相互作用によって結合していたタンパク質やペプチドを放出することが知られているが、このことから、FITC−Insはコレステロール基との疎水性相互作用により保持されていたことが示された。また、CHPナノゲルは水溶液中でインスリンと自発的に複合化することが知られているが、実施例3で調製したハイブリッドゲル中においても、その複合化能を保持していることが確認された。(実施例5−3)ハイブリッドゲルの分解性評価 実施例5−2の放出特性を評価したサンプル(CD添加2時間後)に、それぞれ125mUのヒアルロニダーゼSD(HydaseSD、生化学工業株式会社製)を添加し、37℃で2日間インキュベーションした。そのときの外観を図4に示した。分子量16kDaのHAにMA基を導入したHA−MAを50mg/mL濃度でゲル化させたサンプル3−1〜3−3のハイブリッドゲルは、酵素添加により完全に分解され、均一に薄く黄色に呈色した溶液となっており、封入されていたFITC−Insは完全に放出されたと考えられた。一方、100mg/mL濃度でゲル化させたサンプル3−4〜3−6のハイブリッドゲルは、大部分のゲルは分解されていたが、一部の薄く黄色に呈色したゲルが残存していた。このことから、実施例3で調製したハイブリッドゲルは、生分解性であるとともに、ゲル密度によってその分解速度が異なることが示唆された。また、コレステロール基をシクロデキストリンで包摂してFITC−Insとコレステロール基の疎水性相互作用を切ることによって、FITC−Insの放出が起こることが実施例5−2で示されたが、本実施例からハイブリッドゲルの分解に伴って薬物放出が起こることも示唆された。〔実施例6〕CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルへのインスリン封入(実施例6−1)CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルの調製 実施例4に示した方法と同様の手順で表8に記載したハイブリッドゲルを調製した。【0131】【表8】(実施例6−2)インスリン封入の経時変化、および封入量の算出 実施例6−1において調製したハイブリッドゲルをマイクロチューブより取り出し、過剰の超純水を用いて4℃で一晩膨潤させた。超純水をデカンテーションにより除去してから膨潤したゲルを凍結乾燥した。4mLの150mM PB(pH7.4)をそれぞれの凍結乾燥ゲルに添加し、4℃で一晩膨潤させた後、PBをデカンテーションにより除去した。インスリン(ウシ膵臓由来、シグマ社製)を100μg/mLになるように150mM PB(pH7.4)に溶解させた。インスリンの分子量を5,733.5として、ゲル調製の仕込み量を基準としたCHP4モルに対してインスリン分子15モルが添加されるように、インスリン溶液をそれぞれのゲルに添加し4℃において静置した。インスリン溶液添加後、1日、3日、5日目に上澄みを70μLずつ回収し、上澄み中のインスリン濃度を液体クロマトグラフィーの逆相モード(RP−HPLC)で定量した。上澄み中から減少したインスリン量(=ゲル中に封入されたインスリン量、定量のために回収した上澄み中のインスリン減少分は補正)をプロットしたグラフを図5に示した(サンプル6−3はサンプル6−2と同条件なのでデータは省略)。RP−HPLCの分析条件は以下に示した。また、添加したインスリン溶液はデカンテーションにより除去し、各ゲルは実施例7に供した。【0132】 RP−HPLC条件 システム:Waters Alliance2790/2487 カラム:Cadenza CD18−C(3μm) 3.0mm×50mm(Imtakt社製) 流速:0.75mL/分 検出: UV(280nm) 溶出液A: 0.01%w/vTFA含有超純水 溶出液B: 0.01%w/vTFA含有アセトニトリル 溶出方法: 溶出液A/溶出液B=80/20から50/50のリニアーグラジエント この結果、実施例5と同様にインスリンはハイブリッドゲルに自発的に封入された。サンプル6−1とサンプル6−2の比較から、ハイブリッドゲルに封入されるインスリン量はCHP含量に依存しており、ハイブリッドゲル中のCHPがインスリンを保持するリザーバーとして機能していることが示唆された。また、サンプル6−2とサンプル6−4の比較から、封入される速度はゲルの架橋密度が高いほど遅く、ゲル中へのインスリンの拡散速度はゲルの架橋密度に依存することが示唆された。〔比較例1〕HA−MA化学架橋ゲルへのインスリン封入(比較例1−1)HA−MA化学架橋ハイブリッドゲルの調製 実施例4に示した方法と同様の手順で、表9に記載した化学架橋HA−MAゲルを調製した。【0133】【表9】(比較例1−2)インスリン封入の経時変化、および封入量の算出 比較例1−1で調製した化学架橋HA−MAのゲルに、実施例6−2と同様の方法でインスリン封入を行った。インスリン溶液は、実施例6−2のサンプル6−2と同量添加した。ゲル中に封入されたインスリン量を図5に併せて記載した。この結果、CHPを含有しないHAゲルに封入されるインスリン量はハイブリッドゲルに対して極めて少なかった。本検討の化学架橋HA−MAゲル自体にはインスリンを自発的に吸収する能力はほとんどないことが示唆された。〔実施例7〕CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルからのインスリン放出挙動 ハイブリッドゲル中や表面のCHPに保持されていないインスリンを除去するため、実施例6においてインスリンを封入したハイブリッドゲルに5mLの10mM PB、150mM NaCl、pH7.4(PBS)を添加し、4℃において1時間静置した後、PBSをデカンテーションによって除去した。さらに、5mLのPBSを添加し、4℃で1日間静置後、PBSを除去した。再度この操作を繰り返した。【0134】 サンプル6−2、サンプル6−4、サンプル6−5のハイブリッドゲルには500μLのPBS、サンプル6−3のハイブリッドゲルには500μLの10mMのHP−β−CDを含むPBSを添加し、37℃でインキュベーションした。インキュベーション開始後、1時間、3時間、1日、2日、5日、7日後に、400μLの上澄みを回収、新たに400μLの各リリースバッファー(CDを含まないPBS(CD(−))、CDを含むPBS(CD(+)))を添加する操作を行った。回収した上澄み中のインスリン濃度をRP−HPLC(実施例6−2に記載の条件)で定量し、各測定時までにハイブリッドゲルからリリースされた累積のインスリン量を算出した。この値を封入されたインスリン量(実施例6−2で算出)に対するパーセント量としてプロットしたものを図6および図7に示した。【0135】 この結果、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルからのインスリン放出挙動は、初期バーストの少ない徐放性を有するものであり、サンプル6−2とサンプル6−4の比較から、その放出速度はゲル密度(架橋密度)に依存することが明らかとなった。このことから、架橋密度を制御することによって薬物放出速度を制御することが可能なことが示唆された。サンプル6−2とサンプル6−5のハイブリッドゲルからの放出速度はほぼ同様であった。この2つのサンプルはHA分子量が異なるがゲル密度はほぼ同様であり、前記の結果と併せてゲル密度によって放出速度が規定されることがわかった。また、サンプル6−2とサンプル6−3の比較から、シクロデキストリンを添加することでインスリンの放出速度が大幅に加速された。実施例5の結果と同様、インスリンはコレステロール基との疎水性相互作用により保持されており、CHPナノゲルはハイブリッドゲル中においても、その複合化能を保持していることが示された。【0136】 また、リリース試験において回収した上澄みについて以下に示したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析を行ったところ、放出された種として、サンプル6−3以外のサンプルではインスリン・ナノゲル複合体のみが検出され(保持時間6.2分)、サンプル6−3では複合体およびフリーのインスリン(保持時間10.8分)が検出された。この結果、CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルは、インスリン・ナノゲル複合体を徐放すること、シクロデキストリンによって疎水性基(コレステロール基)を包摂すると、フリーのインスリンが放出されることがわかった。【0137】 SEC分析条件 システム:Waters Alliance2790/2487 カラム:G2000SWXL(TOSOH社製) 流速:1.0mL/分 検出:UV検出(280nm) 溶出液:PBS インジェクション容量:100μL〔実施例8〕CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルへの封入特性および放出特性の評価(実施例8−1)CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルの調製 実施例4に示した方法と同様の手順で表10に記載したハイブリッドゲルを調製した。得られたハイブリッドゲル溶液の最終容量が50μLになるように調製した。【0138】【表10】(実施例8−2)FITC−Ins封入量の算出 実施例8−1において調製したハイブリッドゲルをマイクロチューブより取り出し、過剰の超純水を用いて4℃で一晩膨潤させた。超純水をデカンテーションにより除去してから膨潤したゲルを凍結乾燥した。4mLの150mM PB(pH7.4)をそれぞれの凍結乾燥ゲルに添加し、4℃で一晩膨潤させた後、PBをデカンテーションにより除去した。FITC−Ins(アルドリッチ社製)を100μg/mLになるように150mM PB(pH7.4)に溶解させた。FITC−Insは分子量を6122.49(インスリン1分子にFITCが1分子結合していると仮定)として、ゲル調製の仕込み量を基準としたCHP4モルあたりFITC−Ins分子15モルが添加されるように、FITC−Ins溶液をそれぞれのゲルに添加し4℃において静置した。インスリン溶液添加後、1時間、1日、3日、5日後に上澄みを100μLずつ回収し、上澄み中のFITC−Ins濃度を分光光度計(検出波長、494nm)で定量した。上澄み中から減少したFITC−Ins量(=ゲル中に封入されたFITC−Ins量、定量のために回収した上澄み中のFITC−Ins減少分は補正)を算出した。サンプル8−1〜8−3のゲル中に封入されたFITC−Ins量のハイブリッドゲル乾燥重量に対する重量パーセントをプロットしたグラフを図8に示した。また、添加したFITC−Ins溶液はデカンテーションにより除去し、各ゲルは実施例8−3に供した。(実施例8−3)FITC−Insのハイブリッドゲルからの放出挙動 実施例8−2でFITC−Insを封入したそれぞれのハイブリッドゲルに5mLの10mM PB、150mM NaCl、pH7.4(PBS)を添加し、4℃において1時間静置した後、PBSをデカンテーションによって除去した。さらに、5mLのPBSを添加し、4℃で1日間静置後、PBSを除去した。再度この操作を繰り返した。この操作により、ハイブリッドゲル中や表面のCHPに保持されていないFITC−Insが除去されると考えられる。【0139】 サンプル8−1およびサンプル8−2のハイブリッドゲルには500μLのPBS、サンプル8−3のハイブリッドゲルには500μLの10mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSを添加し、37℃でインキュベーションした。インキュベーション開始後、1時間、3時間、1日、2日、5日、7日後に、400μLの上澄みを回収、新たに400μLの各リリースバッファー(BSAを含まないPBS(BSA(−))、BSAを含むPBS(BSA(+)))を添加する操作を行った。回収した上澄み中のFITC−Ins濃度をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で定量し、各測定時までにハイブリッドゲルからリリースされた累積のFITC−Ins量を算出した。この値をハイブリッドゲル中に封入されたFITC−Ins量(実施例8−2で算出)に対するパーセント量としてプロットしたものを図9および図10に示した。用いたSEC分析条件を以下に示す。【0140】 SEC分析条件 システム:Waters Alliance2790/2475 カラム:G2000SWXL(TOSOH社製) 流速:1.0mL/分 検出:蛍光検出(励起波長494nm、検出波長518nm) 溶出液:10mM HP−β−CD含有PBS 各サンプルは0.05%w/v Tween80含有PBSで20倍に希釈してから、10μLずつHPLCにアプライした。【0141】 この結果、FITC−Insのハイブリッドゲルからの放出速度は、実施例7と同様にゲル密度に依存しており、ゲル密度による放出速度制御が可能なことが示唆された。【0142】 また、溶液状態において、CHPナノゲルとインスリンの複合体にBSAを添加すると、速やかに(数時間以内に)インスリンの放出が起こることが知られているが、ハイブリッドゲルからの放出速度は、1〜2日の間はほぼ変化がなかった。このことから、ハイブリッドゲル中へBSAが急速には拡散しないことが示唆された。5日以降の放出量はBSA(+)で多くなっていた。これは、化学架橋点の加水分解が進行することで、ゲル密度がより低くなった結果、BSAがハイブリッドゲル中に拡散しやすくなったためと推察される。〔実施例9〕SH基を導入したHA誘導体(HA−SH)の合成(実施例9−1)HZ基を導入したHA誘導体(HA−HZ)の合成 分子量20kDaおよび200kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA−Na、電気化学工業)それぞれ536.9mg、524.8mgを超純水に2mg/mLになるように溶解させた後、同量のエタノール(EtOH)を加え、50%v/v EtOH溶液とした。HAユニット/1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、同仁堂社製)/アジピン酸ジヒドラジド(ADH、東京化成工業社製)=1/0.25/40(mol/mol/mol)の等量比で添加し、反応させた。5N HCl水溶液によりpHは4.7−4.8を維持し、2時間反応させた後、100mM NaCl水溶液、25%v/v EtOH水溶液、超純水の順に透析精製し(スペクトラポア4、MWCO:12k−14kDa)、限外ろ過濃縮(YM−10、MWCO:10kDa、ミリポア社製)の後、凍結乾燥することでHA−HZを白色粉末として得た。収量は20kDaのHAを原料に用いたもので490.93mg、200kDaで375.77mgであった。【0143】 得られたHA−HZを約10mg/mLの濃度でD2Oに溶解させ、NMRにより構造解析を行い(グルコサミンのアセチル基の積分値を基準とし、ADHの4つのメチレン(1.5、2.1および2.25ppmの積分値の比率より算出)、HAユニットに対するHZ基の導入率を算出したところ、20kDaのHAを原料に用いたもので20.3%および200kDaで32.0%であった。また、この導入率からHA−HZのユニット平均分子量を算出し、この値を次項の合成に使用した。(実施例9−2)SH基を導入したHA誘導体(HA−SH)の合成 実施例9−1で得られた分子量の異なるHA−HZ(それぞれ480.54mg、365.21mg)を20mg/mLになるよう超純水に溶解させた後、HZ基に対して約2倍当量の2−イミノチオレイン塩酸塩(ピアス社製)を加え、室温で3時間反応させた。反応後、100mLのEtOHを加えることで目的生成物を沈殿させた。沈殿は遠心分離により回収し、EtOHで洗浄後、減圧乾燥にすることでHA−SHを白色固体として得た。収量は20kDaのHAを原料に用いたもので513.72mg、200kDaで371.58mgであった。【0144】 得られたHA−SHを約10mg/mLの濃度でD2Oに溶解させ、NMRにより構造解析を行い(グルコサミンのアセチル基の積分値を基準とし、SH基の隣のメチレン(2.85ppmの積分値の比率より算出)、HAユニットに対するSH基の導入率を算出したところ、20kDaのHAを原料に用いたもので18.0%(以下、このHA−SHを「HA−SH−20k−18」とも称する)および200kDaで27.0%(以下、このHA−SHを「HA−SH−200k−27」とも称する)であった。また、この導入率からHA−SHのユニット平均分子量を算出し、この値を実施例11のハイブリッドゲル調製に使用した。〔実施例10〕MA基を導入したCHP(CHP−MA)の合成および水溶液中での会合挙動(実施例10−1)CHP−MAの合成−1 CHP(コレステロール置換度1.5/100単糖、Mw=108kDa、日本油脂株式会社より入手)を60℃にて2日間、減圧乾燥した。減圧乾燥した100mLの三口フラスコをフレームドライした後ゴム栓をして、窒素気流下、1g(9.26μmol)のCHPおよび257.5mg(2.11mmol)のジメチルアミノピリジン(DMAP)を加えた。ガラスシリンジを用いて25mLのDMSOを加え、完全に溶解するまで室温で約1時間攪拌した後、92.6μL(0.7mmol)のグリシジルメタクリレート(GMA)を注入し、室温で24時間反応させた。1M塩酸を数滴滴下して反応を停止した後、総量が約100mLとなるように蒸留水を加えた。透析チューブ(スペクトラポア6、MWCO:3500)に反応溶液を入れ、蒸留水に対して1週間透析を行い、凍結乾燥することにより目的物を白色固体として得た。【0145】 得られたCHP−MAをDMSO−d6およびD2Oの混合溶媒(容量比で20対1)に溶解させ、NMRにより構造解析を行った。プルランに含まれるα1→6結合を形成するグルコースユニット1位炭素上のプロトン(アノメリックプロトン(α1−6)、4.60−7.75ppm)の積分値と、MA基のメチレン(5.65ppmおよび6.15ppm)の積分値の比較により、グルコースユニットに対するMA基の導入率を算出したところ、2.4%(以下、このCHP−MAを「CHP−MA−2.4」とも称する)であった。(実施例10−2)CHP−MAの合成−2 添加したGMAを277.8μL(2.11mmol)として、他は実施例10−1と同様の方法により、CHP−MAの白色固体を得た。NMRによる構造解析を行ったところ、グルコースユニットに対するMA基の導入率は、18.7%(以下、このCHP−MAを「CHP−MA−18.7」とも称する)であった。(実施例10−3)CHP−MA−2.4の水溶液中での会合挙動 CHP−MA−2.4の水中での会合挙動をSECの多角度光散乱(MALS)検出により行った。SECは東ソー製のTSKgel G4000SWカラム、溶離液として50mMのNaClを含む超純水を用い、0.5mL/分の流速にてMALS(DAWN DSP,Wyatt Technology社製)に接続した。屈折率定数(dn/dc)を0.143として分子量、多分散度、z−平均慣性二乗半径(Rg)を求めた。CHP−MA−2.4水溶液は、1mg/mLとなるように超純水に溶解させた後、プローブ型ソニケーター(SONIFIER250、BRANSON社製)を用いて40Wで15分間超音波照射を行い、ポアサイズ0.45μmのフィルターで濾過してから、SEC−MALS測定に供した。【0146】 この結果、CHP−MA−2.4の水溶液中における会合体(ナノゲル)は、Mw=583kDa、Mw/Mn=1.04、Rg=13.8nmであり、CHPと同様にナノメートルオーダーでサイズのそろった微粒子を形成すること、また、多糖約5.4分子が会合して1つの会合体が形成していることが確認された。〔実施例11〕CHP−MAとHA−SHとの化学架橋によるハイブリッドゲルの調製(実施例11−1)CHP−MAとHA−SHとの化学架橋によるハイブリッドゲルの調製−1 各ゲル調製(サンプル11−1〜11−6)に使用したHA−SH、CHP−MAおよびこれらの最終濃度を表11に示す。【0147】【表11】 実施例9および実施例10において合成したHA−SH−20k−18、HA−SH−200k−27、CHP−MA−2.4、CHP−MA−18.7に、それぞれ40mg/mLになるように、20mMのトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む超純水を添加し、一晩攪拌することで溶解させた。これらのサンプルを遠心チューブに注入した。最終容量は、どの条件もおよそ1000μLとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、37℃で静置することによって化学架橋反応を行った。各時間におけるゲル化の確認をTilt法にて行った。72時間後の外観を図11に示した。【0148】 この結果、サンプル11−1およびサンプル11−2では、24時間後には粘度上昇が確認されたが、72時間後まで観察したところゲル化は起こっていなかった。サンプル11−3およびサンプル11−4では、10時間後には粘度上昇が確認されたが、72時間後には相分離が観察された。サンプル11−5およびサンプル11−6では、相分離しないゲルの調製が確認された。【0149】 本項の化学架橋反応は、MA基とSH基のマイケル付加による架橋とSH基同士の酸化反応(ジスルフィド結合の形成)の二つの反応が起こると考えられるが、同様の条件でHA−SHのみでゲル化の有無を検討したところ、粘度の上昇は見られたものの、ゲル化は起こらなかった。このことから、少なくともマイケル付加反応により架橋が起こっていることが示唆され、本項のハイブリッドゲル中ではCHPとHAが化学的に結合していると思われた。(実施例11−2)CHP−MAとHA−SHとの化学架橋によるハイブリッドゲルの調製−2 各ゲル調製(サンプル11−7〜11−8)に使用したHA−SH、CHP−MAおよびこれらの最終濃度を表12に示す。【0150】【表12】 実施例9および実施例10において合成したHA−SH−200k−27、CHP−MA−18.7をそれぞれ40mg/mLになるように、20mMのトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む超純水を添加し、一晩攪拌することで溶解させた。これらのサンプルを遠心チューブに注入した。次に最終濃度で100mMになるようにTEAを添加した。最終容量は、どの条件もおよそ1000μLとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、37℃で5日間静置することによって化学架橋反応を行った。各サンプルは5日後に相分離が観察されないゲルとなっていた。未反応のMA基を消失させるため、メルカプトエタノールを仕込みのMA基に対して10モル倍量加え、一晩反応させた。この反応液を除去し、過剰の超純水によって洗浄した後に、未反応のSH基を消失させるためヨードエタノールを仕込みのSH基に対して10モル倍量加え、さらに一晩反応させた。この反応液を除去、過剰の超純水によって洗浄後、凍結乾燥した。〔実施例12〕化学架橋CHP−MA・HA−SHのハイブリッドゲルへのFITCラベル化インスリン封入 実施例11において調製したサンプル11−4のハイブリッドゲル5mgを100mM PB(pH7.4)により平衡膨潤させた。これをUV用のセルに移し、1500rpm、1分間遠心分離して上清を除去し、ここに3mLの50μg/mLのFITC−Insを含むPB溶液を加え、20℃で静置した。0時間から24時間の間、経時的に吸光度(492nm)を測定し、検量線からFITC−InsのHA−CHPハイブリッドゲル内への取込み量の定量を行った。【0151】 この結果、ハイブリッドゲルへのFITC−Insの取込みは徐々に進行し、20時間でほぼ平衡に達していた。吸光度は0.117減少し、ここから乾燥ハイブリッドゲルの単位重量あたりのFITC−Inslinの取込み量は0.775nmol/mg(0.47%w/w)と算出された。〔実施例13〕化学架橋CHP−MA・HA−SHのハイブリッドゲルからのFITCラベル化インスリン放出挙動 実施例12において、FITC−Ins溶液を添加したハイブリッドゲルサンプルを遠心処理して、上澄みをデカンテーションにより除去し、100mM PB(pH7.4)を加え洗浄した(3mL、2回)。ここに3mLの100mM PB(pH7.4)を加え20℃にて492nmの波長をUV−VIS分光光度計でモニターすることで放出挙動を評価した。その結果を図12に示した。【0152】 これより本項の化学架橋CHP−MA・HA−SHのハイブリッドゲルは、FITC−Ins放出の初期バーストが非常に小さく、リザーバー型の徐放性を示すことが明らかとなった。〔実施例14〕化学架橋CHP−MA・HA−MAのハイブリッドゲルの調製(実施例14−1)CHP−MA−2およびCHP−MA−7の合成 実施例10のGMA添加量を変え、他は同様の方法によりグルコースユニットに対するMA基の導入率が2.0%(以下、「CHP−MA−2」とも称する)および7.0%(以下、「CHP−MA−7」とも称する)のCHP−MAを合成した。(実施例14−2)化学架橋CHP−MA・HA−MAのハイブリッドゲルの調製条件検討 各ゲル調製(サンプル14−1〜14−10)に使用したCHP−MA、HA−MA、最終濃度を表13に示した。【0153】【表13】 実施例1で合成したHA−MA−9(「HA−MA−200k−43」とも称する)および実施例14−1で合成したCHP−MA−7をそれぞれ40mg/mLになるように超純水に溶解させた。表13に示した組成になるように2種類のポリマー溶液を混合した後、最終濃度で100mMになるようにTEAを添加し、よく混合した。さらに、DTT水溶液を系中のMA基の最終濃度に対して1/2のモル数(MA基とSH基の比率が1:1)になるように添加し、よく混合した。最終容量は、どの条件もおよそ1000μLとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、37℃で24時間静置することによって化学架橋反応を行い、Tilt法によりゲル化の判定を行った。結果の模式図を図13に示した。【0154】 この結果、系中に含まれる全MA基の増加によりゲル化が進行した。サンプル14−3〜14−5の結果から、単独ではゲル化が進行しなかったHA−MA10mg/mLの条件下、ナノゲルを添加していくと、ナノゲル含量が10mg/mLで粘度上昇が観察され、20mg/mL加えた場合においてゲル化が確認された。このことから、ナノゲルのMA基がゲル化に寄与していると考えられた。これらのゲル化はいずれも反応開始後2時間以内に確認された。これらのゲルは調製後すぐに超純水に膨潤させると、ゲル化直後相分離が起こり不透明なゲルであったサンプル14−5、サンプル14−7であっても透明なゲルが得られた。また、CHP−MA−2を用いて同様の検討を行ったところ、ほとんど同様のゲル化挙動を示した。(実施例14−3)化学架橋CHP−MA・HA−MAのハイブリッドゲルの調製 各ゲル調製(サンプル14−11〜14−14)に使用したCHP−MA、HA−MA、最終濃度を表14に示した。実施例14−2と同様の方法でゲル化させた後、系中に仕込んだMA基に対して過剰のメルカプトエタノールを添加し反応させることで、残存していると思われる未反応のMA基を消失させ、さらに過剰の超純水で洗浄することで余剰のメルカプトエタノールを除去し、凍結乾燥してから次項に供した。【0155】【表14】〔実施例15〕CHP−MA・HA−MA化学架橋ハイブリッドゲルへのFITC−Ins封入 実施例14−3において調製したサンプル14−11〜14−14のハイブリッドゲル5mgに5mLの50μg/mLのFITC−Insを含む100mM PB(pH7.4)を加え、20℃で静置した。0時間から72時間の間、経時的に吸光度(494nm)を測定した。サンプル14−13およびサンプル14−14についての吸光度の経時変化を図14に示した。【0156】 この結果、ハイブリッドゲルへのFITC−Insの取込みは添加するだけで自発的に進行し、72時間でほぼ平衡に達していた。検量線から72時間後のFITC−Insのハイブリッドゲル内への取込み量の定量を行った結果を表15に示した。【0157】【表15】 封入されたFITC−Ins量はナノゲル含有量が多いほど増加するが、MA基の置換度には依存していなかった。このことからナノゲルの含有量がFITC−Ins取込量の増減に寄与することが示唆された。〔実施例16〕化学架橋CHP−MA・HA−MAのハイブリッドゲルからのFITC−Ins放出挙動(実施例16−1)緩衝液中での放出特性 実施例15において調製したFITC−Ins溶液を添加したハイブリッドゲルサンプルから、上澄みを遠心、デカンテーションにより除去し、100mM PB(pH7.4)を加え洗浄した(3mL、2回)。ここに3mLの100mM PB(pH7.4)を加え37℃にて494nmの波長をUV−VIS分光光度計でモニターすることで放出の経時変化を測定した。その結果を図15に示す。【0158】 この結果いずれのゲルからも3日間程度までは持続的にFITC−Insが放出されることが明らかとなった。放出開始より12時間以降に観察された放出の遅い相は、CHP−MAの置換基導入率が高いほど、またナノゲル含有量が多いほど、より遅い放出速度を示しており、置換基導入率やナノゲル含有量により徐放速度を制御可能なことが示唆された。(実施例16−2)シクロデキストリン存在下における放出挙動 実施例15と同様の方法で調製したFITC−Ins溶液を添加したハイブリッドゲルサンプルについて、洗浄操作を1回として、その他は実施例16−1と同様の方法で放出挙動を評価した。また、放出開始から5日後に10mMになるようにβ−CDを添加し、さらに放出挙動を評価した。結果を図16に示す。【0159】 まず、洗浄操作を2回した場合(実施例16−1)と比較すると、CHP含量の低いサンプル14−11およびサンプル14−13では初期バーストが約30%増加したが、CHP含量の高いサンプル14−12およびサンプル14−14ではほとんど初期バースト量に変化はなかった。これはナノゲル含量が少ないハイブリッドゲルでは、HAマトリクスに封入されていたFITC−Insの割合が高かったことを示唆した。また、実施例5や実施例7のCHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルでの結果と同様に、シクロデキストリン添加により放出速度は加速され、FITC−Insはコレステロール基との疎水性相互作用によってハイブリッドゲル中に保持されていることが示唆された。(実施例16−3)アルブミン存在下における放出特性 実施例15と同様の方法で調製したFITC−Ins溶液を添加したハイブリッドゲルサンプルについて、リリースバッファーを50mg/mLのBSAを含む100mM PB(pH7.4)に変更し、その他は実施例16−1と同様の方法で放出挙動を評価した。結果を図17に示す。【0160】 この結果、FITC−Insの24時間までの放出速度は、ゲルの組成にかかわらずBSA未添加の場合(実施例16−1)と比較してほとんど変化は確認されなかった。これはCHPを封入したハイブリッドゲル(実施例8)の結果と同様、化学架橋HAゲルによる効果と考えられた。50mg/mLというアルブミン濃度は、ほぼ血液中濃度に等しいことから、血液中においても緩衝液と同様の放出特性が期待された。(実施例16−4)ヒアルロニダーゼ存在下における放出特性 実施例15と同様の方法で調製したFITC−Ins溶液を添加したハイブリッドゲルサンプルについて、リリースバッファーを285mU/mLのヒアルロニダーゼSDおよび50mg/mLのBSAを含む100mM PB(pH6.2)に変更し、その他は実施例16−1と同様の方法で放出挙動を評価した。結果を図18に示した。【0161】 この結果、FITC−Insの24時間までの放出速度は、ヒアルロニダーゼSD未添加の場合(実施例16−1)と比較して加速された。これはCHPを封入したハイブリッドゲル(実施例5)の結果と同様、ハイブリッドゲルの分解(化学架橋したHA部分の分解)に伴って、薬物放出が起こることが示唆された。〔比較例2〕化学架橋CHP−MA・MPCハイブリッドゲルの調製および薬物放出性評価(比較例2−1)化学架橋CHP−MA・MPCハイブリッドゲルの調製 実施例14において合成したCHP−MA−7と2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)をそれぞれ30mg/mL、32mg/mLになるように超純水に溶解させ、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](VA−044、和光純薬製)を系中のMA基に対してモル比で0.005倍量添加し、アルゴン脱気後、50℃で5時間重合反応を行った。得られたハイブリッドゲルを、過剰の水に対して1週間膨潤させることで精製を行い、凍結乾燥して白色個体を得た。【0162】 以下、本比較例で調製したハイブリッドゲルを「サンプルC−2」とも称する。(比較例2−2)ハイブリッドゲルへのFITC−Ins封入 比較例2−1において作製したハイブリッドゲル10mgを用いた他は実施例15と同様の手順でFITC−Insを封入した。〔実施例17〕各種ハイブリッドゲルの膨潤率と薬物放出性比較(実施例17−1)凍結乾燥ハイブリッドゲルの膨潤率評価 実施例8−1のサンプル8−2と同一条件においてサンプル17−1のハイブリッドゲルを調製し、凍結乾燥した(表16に記載)。また、実施例14−3のサンプル14−11〜14と同一条件においてサンプル17−2〜5(表17に記載)のハイブリッドゲルを調製し、凍結乾燥した。サンプル17−1〜5およびサンプルC−2について、凍結乾燥ハイブリッドゲルをそれぞれ5〜10mg程度秤取して(乾燥重量)、過剰のPBS(pH7.4)に対して4℃で24時間膨潤させ、デカンテーションによって溶媒を除去した後、キムワイプ(登録商標)で表面についた水分を吸い取り、重量を測定し(膨潤重量)、前記の式(1)によりPBS中における膨潤時のゲル密度を算出した。この結果をグラフにしたものを図19に示した。【0163】【表16】【0164】【表17】(実施例17−2)CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルと化学架橋CHP−MA・MPCハイブリッドゲルの薬物放出性比較 比較例2−2において調製したFITC−Ins封入CHP−MA・MPCハイブリッドゲルについて、実施例16−1および実施例16−3で示した方法とBSA濃度以外は同一の手順で、リリースバッファーにBSAを含まない場合(BSA(−))と10mg/mLのBSAを含む場合(BSA(+))の薬物放出性を評価した。その結果を図20に示した。また、この結果および実施例8−3で実施したFITC−Insの放出挙動について、リリースバッファーにBSAを含まない条件でのリリース量に対するBSAを含む条件でのリリース量の比率(BSA(+)/BSA(−))を経時的にプロットしたものを図21に示した。(実施例17−3)化学架橋CHP−MA・HA−MAハイブリッドゲルと化学架橋CHP−MA・MPCハイブリッドゲルの薬物放出性比較 比較例2−2において調製したFITC−Ins封入CHP−MA・MPCハイブリッドゲルについて、実施例16−1および実施例16−3で示した方法と同一の手順で、リリースバッファーにBSAを含まない場合(BSA(−))とBSAを含む場合(BSA(+))の薬物放出性を評価した。その結果を図22に示した。また、この結果および実施例16で実施したFITC−Insの放出挙動について、リリースバッファーにBSAを含まない条件でのリリース量に対するBSAを含む条件でのリリース量の比率(BSA(+)/BSA(−))を経時的にプロットしたものを図23に示した。【0165】 本実施例に用いたCHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルおよび化学架橋CHP−MA・HA−MAハイブリッドゲルの膨潤時ゲル密度は、サンプルC−2と比較して低かったにも関らず、アルブミンによる薬物リリース速度の加速は有意に抑制されていた。〔実施例18〕AM基を導入したHA誘導体(HA−AM)の合成 分子量21kDa、27kDaのヒアルロン酸ナトリウム塩(資生堂株式会社製)を用いて実施例1−2と同様の方法で調製したHA−TBAを5mg/mLで無水DMSOに溶解した。その後、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDOBEA)(アルドリッチ社製)をHAユニットに対してモル比で50倍量を各溶液に添加した。次に、BOP試薬をHAユニットに対してモル比で0.4倍量を添加し、穏やかな攪拌下、室温で一晩反応させた。反応溶液は0.3M NaCl水溶液を使用して透析(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa、外液は4回交換した)し、次に外液を超純水に変え、引き続き透析(外液は6回交換した)することにより精製した。得られた透析液を凍結乾燥してHA−AMを白色固体として得た。【0166】 得られたHA−AMを約10mg/mLの濃度でD2Oに溶解させ、NMRにより構造解析を行い、HAユニットに対するAM基の導入率を算出し(グルコサミンのアセチル基の積分値を基準とし、EDOBEAのメチレン(NH2−CH2−(CH2−O−CH2)2−CH2−NH−)、3.22ppm付近の積分値の比率より算出)、導入率からHA−AMのユニット平均分子量(未修飾HAユニットはナトリウム塩、HA−AMユニットは塩酸塩として)を算出した(表18参照)。【0167】【表18】〔実施例19〕SH基(イミノチオレイン、ITL)を導入したHA誘導体(HA−ITL)の合成 実施例18で得られたHA−AM−2を10mg/mLで100mM PB(pH7.4)に溶解した。その後、2−イミノチオレイン塩酸塩(ピアス社製)をHAユニットに対してモル比で0.35倍量を添加し、穏やかな攪拌下、室温で2時間反応させた。次に、無水コハク酸(SUC)をHAユニットに対してモル比で40倍量添加し、室温で2時間反応させた。反応溶液は0.3M NaCl水溶液を使用して透析(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa、外液は4回交換した)し、次に外液を超純水に変え引き続き透析(外液は6回交換した)、さらに外液を1mM塩酸水溶液に変え引き続き透析(外液は3回交換した)することで精製を行った。得られた透析液を凍結乾燥してHA−ITLを白色固体として得た。【0168】 得られたHA−ITLを約10mg/mLの濃度でD2Oに溶解させ、NMRにより構造解析を行い、HAユニットに対するITL基およびSUC基の導入率を算出し(グルコサミンのアセチル基の積分値を基準とし、ITLのメチレン(SH−CH2−CH2−CH2−C(=NH2+)−)、2.40ppm付近の積分値の比率、およびSUCのエチレン(COOH−CH2−CH2−CO−)、2.70ppm付近の積分値の比率より算出)、導入率からHA−ITLのユニット平均分子量(未修飾HAユニットはフリーカルボン酸体、HA−AM−SUCユニットはフリーカルボン酸体、HA−AM−ITLユニットのイミノ基は塩酸塩として)を算出した(表19参照)。【0169】【表19】〔実施例20〕SH基(チオグリコール酸、TGA)を導入したHA誘導体(HA−TGA)の合成(実施例20−1)HA−AMへのSATA基の導入 実施例18で得られたHA−AM−3を10mg/mLで100mM PB(pH7.4)に溶解した。その後、N−スクシンイミジル S−アセチルチオアセテート(SATA)(ピアス社製)をAM基が導入されたHAユニットに対してモル比で3倍量(HAユニットに対してモル比で0.85倍量)を添加し、穏やかな攪拌下、室温で2時間反応させた。次に、無水コハク酸(SUC)をHAユニットにたいして40倍等量添加し、室温で2時間反応させた。反応溶液は0.3M NaCl水溶液を使用して透析(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa、外液は4回交換した)し、次に外液を超純水に変え引き続き透析(外液は6回交換した)することで精製をした。得られた透析液を凍結乾燥してSATAが導入されたHA誘導体(HA−SATA)を白色固体として得た。(実施例20−2)S−アセチル基の脱保護によるHA−TGAの合成 本実施例に使用した全ての溶媒は窒素バブリングしてから以下の検討に供した。【0170】 実施例20−1で得られたHA−SATAの白色粉末を10mg/mLの濃度で500mMヒドロキシアミン(NH2−OH)および10mMTCEPを含む50mM塩酸水溶液(pH7.0)に溶解させ、室温で1時間攪拌した。得られた溶液をあらかじめ1mM塩酸水溶液で平衡化した脱塩カラム(PD−10、GEヘルスケアバイオサイエンス社)にアプライし、回収した溶液を1mM塩酸水溶液に対して透析(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa、外液は2回交換した)することで精製を行った。得られた透析液を凍結乾燥してTGAが導入されたHA誘導体(HA−TGA)を白色固体として得た。【0171】 得られたHA−TGAを約10mg/mLの濃度でD2Oに溶解させ、NMRにより構造解析を行い、HAユニットに対するTGA基およびSUC基の導入率を算出し(グルコサミンのアセチル基の積分値を基準とし、TGAのSH基隣のメチレン(SH−CH2−CO−)、3.26ppm付近の積分値の比率、およびSUCのエチレン(COOH−CH2−CH2−CO−)、2.70ppm付近の積分値の比率より算出)、導入率からHA−TGAのユニット平均分子量(未修飾HAユニットはフリーカルボン酸体、HA−AM−SUCユニットはフリーカルボン酸体として)を算出した(表20参照)。【0172】【表20】〔実施例21〕SH基(ジチオトレイトール、DTT)を導入したHA誘導体(HA−DTT)の合成(実施例21−1)HA−MAの合成 実施例1のHA−MA−2〜4と同様の条件でHA−MAを合成したところ、MA基の導入率は35.2%、ユニット平均分子量は432.7であった。【0173】 以下、本実施例で合成したHA−MAをHA−MA−11とも称する。(実施例21−2)HA−DTTの合成 本実施例に使用した全ての溶媒は窒素バブリングしてから以下の検討に供した。【0174】 実施例21−1において得られたHA−MAを20mg/mLの濃度で超純水に溶解した。ここに最終濃度でHA−MAが5mg/mL、TEAが10mM、DTTがMA基に対してモル比で25倍量になるように、TEA、超純水、DTTの順に各試薬を添加し、室温で一晩反応させた。得られた溶液をあらかじめ1mM塩酸水溶液で平衡化した脱塩カラム(PD−10、GEヘルスケアバイオサイエンス社)にアプライし、回収した溶液に10mMになるようにTCEPを添加し、室温で1時間反応させた。再度、脱塩カラムによる精製を行った後、1mM塩酸水溶液に対して透析(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa、外液は2回交換した)することで精製を行った。得られた透析液を凍結乾燥してDTTが導入されたHA誘導体(HA−DTT)を白色固体として得た。【0175】 得られたHA−DTTを約10mg/mLの濃度でD2Oに溶解させ、NMRにより構造解析を行った。反応によりHA−MAのMA基由来のピーク(1.91ppm、5.73ppmおよび6.13ppm)が消失したことから、未反応MA基はなく、すべてのMA基がDTTのSH基とマイケル付加したことが示唆された。また、2.69ppm〜2.86ppmの間に検出された数本の重なったピークは、DTTのSH基隣のメチレン(4H/DTT基)、付加反応を受けたMA基由来のメチレン(DTT−CH2−CH(CH3)−COO−)およびメチン(DTT−CH2−CH(CH3)−COO−)由来のピークと帰属された。この積分値の和(7H/MA−DTT基)と付加反応を受けたMA基由来のメチル(1.23ppm、DTT−CH2−CH(CH3)−COO−)の積分値の比率から、MA基に対してDTTが過不足なく導入されたものと推察された。以上より、HAユニットに対するDTT基の導入率はHA−MA−11のMA基導入率と同一であるとし、HA−DTTのユニット平均分子量(未修飾HAユニットはフリーカルボン酸体として)を算出した(表21参照)。【0176】【表21】〔実施例22〕コレステロール基を導入したクラスターデキストリン誘導体(CHcDex)の合成 分子量150kDaのクラスターデキストリン(cDex)(江崎グリコ株式会社より入手)を100mg/mLで無水DMSOに溶解した。その後、無水ピリジンに溶解させたコレステリル−N−(6−イソシアネートヘキシル)カーバメート(CHI)(日油株式会社より入手)をcDexユニットに対してモル比で0.05倍量を添加し、窒素雰囲気下、80℃で9.5時間反応させた。反応溶液を過剰のエタノール・ジエチルエーテル混合溶媒(容量比3:17)に供し、再沈殿により白色沈殿を得た。得られた沈殿を減圧乾燥後、DMSOに溶解させ、超純水に対して透析(スペクトラポア6、分画分子量(MWCO):3.5kDa、外液は6回交換した)することによって精製を行った。得られた透析液をフィルター(0.8μm)濾過した後、凍結乾燥してCHcDexを白色固体として得た。【0177】 得られたCHcDexをDMSO−d6・D2O混合溶媒(容量比9:1)に溶解させ、NMRにより構造解析を行い、cDexユニットに対するコレステロール基の導入率を算出(cDex中に94%含まれるα1−4結合由来のアノメリックプロトン(4.9−5.3ppm付近)の積分値を基準とし、コレステロール由来のピーク(0.2−2.4ppm付近)の積分値の比率より算出)したところ、100グルコースユニットあたり3.8個であった。〔比較例3〕各種化学架橋HAゲルの調製 各サンプル調製(サンプルC3−1〜11)に使用したHA誘導体、最終濃度、架橋剤、反応条件等を表22に示した。(比較例3−1)HA−MAをマイケル付加反応によって架橋したHAゲルの調製 ゲル化反応の緩衝液を500mMTEA/100mM塩酸水溶液(最終濃度は1/5、希釈後のpHは8.1)に変更した他は実施例2で示した方法と同様の手順で、表22に示したサンプルC3−1〜3の化学架橋HAゲルを調製し、膨潤時のゲル密度を算出した。(比較例3−2)HA−MAをラジカル重合によって架橋したHAゲルの調製 500mM塩酸水溶液に500mMになるようにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を溶解させた。超純水で1/5に希釈したところ溶液pHは7.3であった。【0178】 超純水に50mg/mL(185.0mM)になるようにペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)を溶解させた。【0179】 実施例1で合成したHA−MA−2をマイクロチューブに秤取し、超純水を添加し、4℃で一晩静置して溶解させた。前記で調製したTEMED溶液を最終容量の1/5添加し、よく混合した。さらに前記で調製したKPS溶液を最終濃度で20mMになるように添加し、よく混合した。最終容量は100μlとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、室温で1時間静置することによって化学架橋反応を行った。ここで調製したサンプルC3−4について、実施例2−4で示した方法と同様の手順で膨潤時のゲル密度を算出した。(比較例3−3)HA−MAを光重合したHAゲルの調製 100mM塩酸水溶液に500mMになるようにTEAを溶解させた。超純水で1/5に希釈したところ溶液pHは8.1であった。【0180】 エタノールに50mg/mL(223.0mM)になるように2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオフェノン(Initiator)(Aldrich社製)を溶解させた。【0181】 実施例1で合成したHA−MA−2をマイクロチューブに秤取し、超純水を添加し、4℃で一晩静置して溶解させた。前記で調製したTEA溶液を最終容量の1/5添加し、よく混合した。さらに前記で調製したInitiator溶液を最終濃度で20mMになるように添加し、よく混合した。最終容量は100μlとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、UVランプで10分間UV光を照射(365nm、〜4W/cm2)することによって化学架橋反応を行った。ここで調製したサンプルC3−5について、実施例2−4で示した方法と同様の手順で膨潤時のゲル密度を算出した。(比較例3−4)HAとEDOBEAを縮合反応によって架橋したHAゲルの調製 250mM塩酸水溶液に500mMになるようにTEAを溶解させた。超純水で1/5に希釈したところ溶液pHは7.4であった。【0182】 1000mM塩酸水溶液に500mMになるようにEDOBEAを溶解させた。溶液pHは7.5であった。【0183】 超純水に4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド(DMT−MM)(国産化学株式会社製)を500mg/mL(試薬に予め含まれている水分量(11.7%)を補正すると1595.5mM)になるように溶解させた。【0184】 21kDaのヒアルロン酸ナトリウム(資生堂株式会社製)をマイクロチューブに秤取し、超純水を添加し、4℃で一晩静置して溶解させた。前記で調製したTEA溶液を最終容量の1/5、前記で調製したEDOBEA溶液をHAユニットに対してモル比で0.28倍になるように添加し、よく混合した。さらに前記で調製したDMT−MM溶液をHAユニットに対してモル比で2倍量になるように添加し、よく混合した。最終容量は100μlとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、37℃で16時間静置することによって化学架橋反応を行った。ここで調製したサンプルC3−6について、実施例2−4で示した方法と同様の手順で膨潤時のゲル密度を算出した。(比較例3−5)HA−AMを縮合反応によって架橋したHAゲルの調製 250mM塩酸水溶液に500mMになるようにTEAを溶解させた。超純水で1/5に希釈したところ溶液pHは7.4であった。【0185】 超純水にDMT−MMを650mg/mL(試薬に予め含まれている水分量(11.7%)を補正すると2074.1mM)になるように溶解させた。【0186】 実施例18で合成したHA−AM−1をマイクロチューブに秤取し、超純水を添加し、4℃で一晩静置して溶解させた。前記で調製したTEA溶液を最終容量の1/5添加し、よく混合した。さらに前記で調製したDMT−MM溶液をHAユニットに対してモル比で2倍量になるように添加し、よく混合した。最終容量は100μlとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、37℃で16時間静置することによって化学架橋反応を行った。ここで調製したサンプルC3−7について、実施例2−4で示した方法と同様の手順で膨潤時のゲル密度を算出した。(比較例3−6)HA−ITLを酸化反応によって架橋したHAゲルの調製 本比較例に使用した超純水は窒素バブリングしてから以下の検討に供した。【0187】 超純水に500mMになるようにTEAを溶解させた。超純水で1/5に希釈したところ溶液pHは9.2であった。【0188】 30%の過酸化水素(OX)水溶液を超純水で希釈することで1%OX水溶液を調製した。【0189】 実施例19で合成したHA−ITLをマイクロチューブに秤取し、超純水を添加し、4℃で一晩静置して溶解させた。前記で調製したTEA溶液を最終容量の1/5添加し、よく混合した。さらに前記で調製した1%OX水溶液をSH基に対してモル比で等量になるように添加し、よく混合した。最終容量は100μlとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、37℃で16時間静置することによって化学架橋反応を行った。ここで調製したサンプルC3−8について、実施例2−4で示した方法と同様の手順で膨潤時のゲル密度を算出した。(比較例3−7)HA−TGAを酸化反応によって架橋したHAゲルの調製 実施例20で合成したHA−TGAを用いた他は、比較例3−6で示した方法と同様の手順でサンプルC3−9を調製し、膨潤時のゲル密度を算出した。(比較例3−8)HA−MAとHA−DTTをマイケル付加反応によって架橋したHAゲルの調製 本比較例に使用した超純水は窒素バブリングしてから以下の検討に供した。【0190】 100mM塩酸水溶液に500mMになるようにTEAを溶解させた。超純水で1/5に希釈したところ溶液pHは8.1であった。【0191】 実施例21−1で合成したHA−MA−11および実施例21−2で合成したHA−DTTをそれぞれ別のマイクロチューブに秤取し、超純水を添加し、4℃で一晩静置して溶解させた。HA−MA−11およびHA−DTT溶液を系中のMA基とHA基の比率が1になるように混合した後、前記で調製したTEA溶液を最終容量の1/5添加し、よく混合した。最終容量は100μlとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、37℃で16時間静置することによって化学架橋反応を行った。ここで調製したサンプルC3−10について、実施例2−4で示した方法と同様の手順で膨潤時のゲル密度を算出した。(比較例3−9)HA−MAとHA−TGAをマイケル付加反応によって架橋したHAゲルの調製 本比較例に使用した超純水は窒素バブリングしてから以下の検討に供した。【0192】 100mM塩酸水溶液に500mMになるようにTEAを溶解させた。超純水で1/5に希釈したところ溶液pHは8.1であった。【0193】 実施例21−1で合成したHA−MA−11および実施例20で合成したHA−TGAをそれぞれ別のマイクロチューブに秤取し、超純水を添加し、4℃で一晩静置して溶解させた。HA−MA−11およびHA−DTT溶液を系中のMA基とHA基の比率が1になるように混合した後、前記で調製したTEA溶液を最終容量の1/5添加し、よく混合した。最終容量は100μlとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、37℃で16時間静置することによって化学架橋反応を行った。ここで調製したサンプルC3−11について、実施例2−4で示した方法と同様の手順で膨潤時のゲル密度を算出した。【0194】【表22】〔実施例23〕ナノゲル(CHP、CHcDex)を封入した各種化学架橋HAハイブリッドゲルの調製 各サンプル調製(サンプル23−1〜15)に使用したHA誘導体、ナノゲル、最終濃度、架橋剤、反応条件等を表23に示した。(実施例23−1)HA−MAをマイケル付加反応によって架橋したCHP封入ハイブリッドゲルの調製 化学架橋する前のサンプル溶液に20mg/mLのCHPを含む他は比較例3−1で示した方法と同様の手順で、表23に示したサンプル23−1〜3のCHP封入ハイブリッドゲルを調製し、膨潤時のゲル密度を算出した。(実施例23−2)HA−MAをラジカル重合によって架橋したCHP封入ハイブリッドゲルの調製 化学架橋する前のサンプル溶液に20mg/mLのCHPを含む他は比較例3−2で示した方法と同様の手順で、表23に示したサンプル23−4のCHP封入ハイブリッドゲルを調製し、膨潤時のゲル密度を算出した。(実施例23−3)HA−MAを光重合したCHP封入ハイブリッドゲルの調製 化学架橋する前のサンプル溶液に20mg/mLのCHPを含む他は比較例3−3で示した方法と同様の手順で、表23に示したサンプル23−5のCHP封入ハイブリッドゲルを調製し、膨潤時のゲル密度を算出した。【0195】 (実施例23−4)HAとEDOBEAを縮合反応によって架橋したCHP封入ハイブリッドゲルの調製 化学架橋する前のサンプル溶液に20mg/mLのCHPを含む他は比較例3−4で示した方法と同様の手順で、表23に示したサンプル23−6のCHP封入ハイブリッドゲルを調製し、膨潤時のゲル密度を算出した。(実施例23−5)HA−AMを縮合反応によって架橋したCHP封入ハイブリッドゲルの調製 化学架橋する前のサンプル溶液に20mg/mLのCHPを含む他は比較例3−5で示した方法と同様の手順で、表23に示したサンプル23−7および23−8のCHP封入ハイブリッドゲルを調製し、膨潤時のゲル密度を算出した。(実施例23−6)HA−ITLを酸化反応によって架橋したCHP封入ハイブリッドゲルの調製 化学架橋する前のサンプル溶液に20mg/mLのCHPを含む他は比較例3−6で示した方法と同様の手順で、表23に示したサンプル23−9のCHP封入ハイブリッドゲルを調製し、膨潤時のゲル密度を算出した。(実施例23−7)HA−TGAを酸化反応によって架橋したCHP封入ハイブリッドゲルの調製 化学架橋する前のサンプル溶液に20mg/mLのCHPを含む他は比較例3−7で示した方法と同様の手順で、表23に示したサンプル23−10のCHP封入ハイブリッドゲルを調製し、膨潤時のゲル密度を算出した。(実施例23−8)HA−MAとHA−DTTをマイケル付加反応によって架橋したCHP封入ハイブリッドゲルの調製 化学架橋する前のサンプル溶液に7.5mg/mLのCHPを含む他は比較例3−8で示した方法と同様の手順で、表23に示したサンプル23−11のCHP封入ハイブリッドゲルを調製し、膨潤時のゲル密度を算出した。(実施例23−9)HA−MAとHA−TGAをマイケル付加反応によって架橋したCHP封入ハイブリッドゲルの調製 化学架橋する前のサンプル溶液に7.5mg/mLのCHPを含む他は比較例3−9で示した方法と同様の手順で、表23に示したサンプル23−12のCHP封入ハイブリッドゲルを調製し、膨潤時のゲル密度を算出した。(実施例23−10)HA−MAをマイケル付加反応によって架橋したCHcDex封入ハイブリッドゲルの調製 化学架橋する前のサンプル溶液に20mg/mLのCHcDexを含む他は比較例3−1で示した方法と同様の手順で、表23に示したサンプル23−13のCHP封入ハイブリッドゲルを調製し、膨潤時のゲル密度を算出した。【0196】 前記、比較例3−1〜9および実施例23−1〜10において算出したゲル密度の結果を表24に示した。凍結乾燥ゲル重量から理論収量に対する収率を算出すると、全てのゲルの収率はほぼ100%であったこと、および、ナノゲル(CHPおよびCHcDex)共存下、各種化学反応によって架橋したハイブリッドゲルのゲル密度は、ナノゲル非共存下と比較して増大していたことから、本実施例において調製した種々ハイブリッドゲル中にナノゲルが封入されたことが示唆された。【0197】【表23】【0198】【表24】〔実施例24〕CHPを封入した各種化学架橋HAハイブリッドゲルへのインスリン封入特性および放出特性の評価(実施例24−1)各種ハイブリッドゲルの調製 表25に示したサンプル24−1〜5をそれぞれ2個ずつ、実施例23で示した方法と同様の手順で各種凍結乾燥ハイブリッドゲルを調製し、それぞれマイクロチューブに入れた。【0199】【表25】(実施例24−2)インスリンの封入、および封入量の算出 インスリン(ウシ膵臓由来)を250μg/mLになるように300mMPB(pH7.0)に溶解させた。【0200】 インスリン溶液をハイブリッドゲルが入ったマイクロチューブに1mLずつ添加し、4℃で3日間静置した後、デカンテーションによってインスリン溶液を除去し、過剰のPBS(PBSタブレットを超純水に溶解することにより調製、シグマ社製)を添加し、4℃で静置、数時間後に添加したPBSをデカンテーションによって除去した。この操作を数回繰り返した後、ゲル表面の水分をキムワイプで吸い取り、一方は以下の封入量評価の検討に、他方は実施例24−3のインスリン放出挙動評価の検討に供した。【0201】 インスリンを封入した各ハイブリッドゲルに25mMのHP−β−CDおよび0.05%のTween20を含むPBS(CTB)を500μl添加し、37℃でインキュベーションした。インキュベーション開始後、2時間、1日、2日、4日後に、400μLの上澄みを回収、新たに400μLのCTBを添加する操作を行った。回収した上澄み中のインスリン濃度をRP−HPLC(実施例6−2に記載の条件)で定量し、各測定時までにハイブリッドゲルからリリースされた累積のインスリン量を算出した。すべてのサンプルで2日後から4日後まで間、インスリンのリリースが止まっていたことから、4日後までの累積リリース量をハイブリッドゲルへのインスリンの封入量とした。その結果を表26に示した。【0202】【表26】(実施例24−3)インスリンの放出挙動 実施例24−2においてインスリンを封入した各ハイブリッドゲルに0.05%のアジ化ナトリウムを含むPBS(SAB)を500μl添加し、37℃でインキュベーションした。インキュベーション開始後、2時間、1日、2日、4日、7日、10日、15日後(サンプル25−5は10日まで)に、400μLの上澄みを回収、新たに400μLのSABを添加する操作を行った。回収した上澄み中のインスリン濃度をRP−HPLC(実施例6−2に記載の条件)で定量し、各測定時までにハイブリッドゲルからリリースされた累積のインスリン量を算出した。この値を封入されたインスリン量(実施例24−2で算出)に対するパーセント量としてプロットしたものを図24に示した。【0203】 この結果、本検討に用いた全てのハイブリッドゲルからのインスリン放出挙動は徐放性を有していた。放出挙動が異なっているのは、それぞれのゲル密度や分解速度が異なるためと推察された。〔実施例25〕CHcDを封入した各種化学架橋HAハイブリッドゲルへのインスリン封入特性および放出特性の評価(実施例25−1)インスリンの封入、および封入量の算出 表27に示したサンプル25−1を2個、実施例23で示した方法と同様の手順で凍結乾燥ハイブリッドゲルを調製し、それぞれマイクロチューブに入れた。【0204】 実施例24−2で示した方法と同様の手順でインスリンを封入し、封入量を算出したところ、CHcDexの仕込み量に対する重量比で3.4%w/w、乾燥ゲルに対する重量比で1.0%w/wであった。【0205】【表27】(実施例25−2)インスリンの放出挙動 実施例25−1でインスリン封入したサンプル25−1について、実施例24−3で示した手順と同様の方法でインスリンの放出挙動を評価し、結果を図25に示した。【0206】 この結果、骨格多糖の異なる疎水化多糖(ナノゲル)であるCHcDexを封入したハイブリッドゲルからのインスリンの放出挙動は徐放性を有するものであった。〔実施例26〕CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルへのグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)の封入特性および放出特性評価(実施例26−1)GLP−1の封入、および封入量の算出 表28に示したサンプル26−1を2個、実施例23で示した方法と同様の手順で各種凍結乾燥ハイブリッドゲルを調製し、それぞれマイクロチューブに入れた。【0207】 天然型GLP−1[7−37](アメリカンペプチド社製)をペプチド濃度として500μg/mLになるように300mMPB(pH7.0)に溶解させた。【0208】 実施例24−2で示した方法と同様の手順でGLP−1を封入し、サンプル26−1について封入量を算出したところ、CHPの仕込み量に対する重量比で20.6%w/w、乾燥ゲルに対する重量比で5.9%w/wであった。【0209】【表28】(実施例26−2)GLP−1の放出挙動 実施例26−1でGLP−1封入したサンプル26−1について、実施例24−3で示した手順と同様の方法でGLP−1の放出挙動を評価し、結果を図26に示した。この結果、本検討に用いたハイブリッドゲルからのGLP−1放出挙動は徐放性を有していた。〔実施例27〕CHPを封入した化学架橋HA−MAハイブリッドゲルへのエリスロポエチン(EPO)の封入特性および放出特性評価(実施例27−1)EPOの封入、および封入量の算出 表29に示したサンプル27−1を2個、実施例23で示した方法と同様の手順で各種凍結乾燥ハイブリッドゲルを調製し、それぞれマイクロチューブに入れた。【0210】 エリスロポエチン(EPO)原薬溶液(中外製薬株式会社製)をポリペプチド濃度として500μg/mLになるように50mMPB(pH6.5)で希釈した。【0211】 各ハイブリッドゲルに添加した薬物溶液量を0.5mLに、静置した温度および時間を37℃、4日間に変更した他は、実施例24−2で示した方法と同様の手順でEPOを封入した。また、以下に示すSEC分析条件において定量を行った他は実施例24−2で示した方法と同様の手順でEPOおよびCHPの封入量を算出した。(本SEC分析において、EPO・CHP複合体からEPOは完全に解離しフリーのEPOとして定量的に検出されることをあらかじめ検証した。)この結果、EPO封入量はCHPの仕込み量に対する重量比で6.8%w/w、乾燥ゲルに対する重量比で2.0%w/wであった。また、CHPの仕込み量に対する放出量比(ゲル化、洗浄、封入工程などにおける収率)は61.3%であった。【0212】 SEC分析条件 システム:Waters Alliance2790/2487 カラム:G2000SWXL(TOSOH社製) 流速:1.0mL/分 検出:UV検出(280nm) 溶出液:10mM HP−β−CD含有PBS インジェクション容量:50μL【0213】【表29】(実施例27−2)EPOおよびCHPの放出挙動 実施例27−1でEPOを封入したハイブリッドゲルからのEPOおよびCHPの放出挙動を以下に示すSEC分析条件で定量した他は、実施例24−3で示した手順と同様の方法で経時的なEPOおよびCHPの放出挙動を評価し、結果を図27に示した。【0214】 本検討に用いたハイブリッドゲルからのEPO放出挙動は徐放性を有していた。また、CHPについて徐放性が観察されたとともに、その放出挙動はEPOのそれとほぼ同様であった。実施例7において、ハイブリッドゲルから放出された種はインスリン・CHP複合体のみであったこと、本検討において、EPOとCHPの放出挙動がほぼ同様であったことから、ハイブリッドゲルからの薬物放出は、ナノゲルが放出されることに伴って生じることが示唆された。【0215】 SEC分析条件 システム:Waters Alliance2790/2487/2414 カラム:G2000SWXL(TOSOH社製) 流速:1.0mL/分 検出:EPOについてはUV検出(280nm) CHPについては示唆屈折率(RI)検出 溶出液:10mM HP−β−CD含有PBS インジェクション容量:50μL〔実施例28〕CHPを封入した化学架橋HA−AMハイブリッドゲルへのエリスロポエチン(EPO)の封入特性および放出特性評価(実施例28−1)EPOの封入、および封入量の算出 表30に示したサンプル28−1および28−2をそれぞれ2個ずつ、実施例23で示した方法と同様の手順で各種凍結乾燥ハイブリッドゲルを調製し、それぞれマイクロチューブに入れた。【0216】 実施例27−1で示した方法と同様の手順でEPOを封入し、封入量を算出した。この結果を表31に示した。【0217】【表30】【0218】【表31】(実施例28−2)EPOの放出挙動 実施例28−1でEPOを封入したハイブリッドゲルからのEPO放出挙動を実施例27−2で示した手順と同様の方法で経時的なEPO放出挙動を評価し、結果を図28に示した。【0219】 本検討に用いたハイブリッドゲルからのEPO放出挙動は徐放性を有していた。また、実施例6と同様に、ゲル密度(実施例23で算出したサンプル23−7および23−8のゲル密度を参照)に依存してリリース速度が異なっていた。〔実施例29〕ナノゲルとEPOの複合体共存下でHA誘導体を化学架橋したハイブリッドゲルの調製 本実施例に使用した超純水は窒素バブリングしてから以下の検討に供した。【0220】 100mM塩酸水溶液に500mMになるようにTEAを溶解させた。超純水で1/5に希釈したところ溶液pHは8.1であった。【0221】 実施例21−1で合成したHA−MA−11および実施例21−2で合成したHA−DTTをそれぞれ別のマイクロチューブに秤取し、超純水を添加し、4℃で一晩静置して溶解させた。【0222】 DTTを50mg/mLの濃度で超純水に溶解させた。【0223】 CHPを30mg/mLの濃度で超純水に溶解させた。【0224】 エリスロポエチン(EPO)原薬溶液(中外製薬株式会社製)、前記CHP溶液および超純水を混合することで、EPOポリペプチド濃度として450μg/mL、CHP濃度15mg/mL溶液を調製し、37℃で一晩静置した。実施例7に示したSEC分析条件においてSEC分析を実施したところ、フリーのEPO(保持時間7.1分)は検出されず、EPO・CHP複合体(保持時間5.6分)のみが検出され、系中のEPO全量がCHPと複合体を形成していることが確認された。【0225】 各種HA誘導体溶液、EPO・CHP複合体溶液、超純水、DTT溶液(サンプル29−2のみ)、TEA溶液を表32に示した割合になるように混合した。最終容量は50μlとした。遠心操作により混合時に発生した気泡を除去し、37℃で16時間静置することによって化学架橋反応を行った。ここで調製したサンプルは実施例30に供した。【0226】【表32】〔比較例4〕EPO共存下でHA誘導体を化学架橋したハイブリッドゲルの調製 エリスロポエチン(EPO)原薬溶液(中外製薬株式会社製)に超純水を混合することで、EPOポリペプチド濃度として450μg/mLになるように希釈した。【0227】 前記EPO溶液を用いた他は、実施例29に示した方法と同様の手順で表33に示したハイブリッドゲルを調製し、実施例30に供した。【0228】【表33】〔実施例30〕EPOおよびナノゲル・EPO複合体共存下で化学架橋により薬物封入したハイブリッドゲル中の薬物安定性評価 実施例29および比較例4で調製したそれぞれのサンプルに25mMのHP−β−CDおよび0.05%のTween20を含むPBSを250μl添加し、37℃でインキュベーションした。インキュベーション開始後、2時間、10時間、2日、3日、5日、7日、11日後に、200μLの上澄みを回収、新たに、25mMのHP−β−CDおよび0.05%のTween20を含むPBSを200μL添加する操作を行った。回収した上澄み中のEPO濃度をRP−HPLC(分析条件は以下に記載)および実施例27−1で示したSEC分析条件で定量し、各測定時までにリリースされた累積のEPO量を算出した。RP−HPLCとSECによる定量結果に有意な差は見られなかった。すべてのサンプルで7日後から11日後まで間、EPOのリリースが止まっていた。仕込んだEPO量に対する11日後までの累積リリース量をEPO回収率とし、その値(RP−HPLC定量値)を図29に示した。【0229】 この結果、あらかじめEPOをナノゲルと複合化させておくことで、ゲルから回収されたEPO量は有意に増加し、特にサンプル29−1では仕込んだEPOのほぼ全量が回収された。これは、ナノゲルに複合化したEPOはフリーのEPOと比較して、HA誘導体や架橋剤との反応性が著しく低下しているためと推察された。よって実施例29で示した方法は、化学架橋HAゲルに薬物共存下で化学架橋して薬物封入する場合に、不本意な副反応を回避するために有効な手法であると考えられた。【0230】 RP−HPLC分析条件 システム:Waters Alliance2790/2487 カラム:Symmetry300 C4(3.5μm) 2.1mm×50mm(Waters社製) 流速:0.75mL/分 検出: UV(280nm) 溶出液A: 0.1%w/vTFA含有超純水 溶出液B: 0.1%w/vTFA含有アセトニトリル 溶出方法: 溶出液A/溶出液B=90/10から40/60のリニアーグラジエント〔実施例31〕ラットにおける薬物動態試験用各種ハイブリッドゲルの調製 表34に示したサンプル31−1、31−2をそれぞれ15個ずつ、サンプル31−3を27個、実施例23に示した方法と同様の手順で調製し、ゲル密度を算出した。その結果を表35に示した。【0231】【表34】【0232】【表35】〔実施例32〕薬物動態試験用各種ハイブリッドゲルへのEPO封入および封入量評価 実施例31で調製したサンプル31−1〜3のそれぞれの凍結乾燥ハイブリッドゲルについて、実施例27−1で示した方法と同様の手順でEPOを封入した。EPOを封入した各サンプルのなかから無作為に選択したそれぞれ3個について実施例27−1で示した方法と同様の手順でゲルサンプル1個あたりに封入されたEPO量を算出した。その結果を表36に示した。【0233】【表36】〔比較例5〕エリスロポエチン・CHP複合体のラットにおける薬物動態試験(比較例5−1)EPO・CHP複合体溶液およびEPO溶液の調製 CHPを10mg/mLの濃度でPBS(pH7.4)に溶解させた。【0234】 エリスロポエチン(EPO)原薬溶液(中外製薬株式会社製)、前記CHP溶液およびPBSを混合することで、EPOポリペプチド濃度として25μg/mL、CHP濃度3mg/mL溶液を調製し、37℃で一晩静置した。実施例7に示したSEC分析条件においてSEC分析を実施したところ、フリーのEPO(保持時間7.1分)は検出されず、EPO・CHP複合体(保持時間5.6分)のみが検出され、系中のEPO全量がCHPと複合体を形成していることが確認された。【0235】 別に、EPOポリペプチド濃度として25μg/mLのPBS溶液を調製した。(比較例5−2)薬物動態試験 表37に示した用量で、比較例5−1で調製したEPO・CHP複合体溶液およびEPO溶液を正常ラット(SD、7週齢、雄)の皮下に単回投与した。投与後、経時的にヘパリン処理をしたシリンジで頸静脈採血を行った。得られた血液は血漿分離し、EPO血漿中濃度をELISAキットにて測定した。EPOの血漿中濃度推移(平均値)を図30に示した。【0236】 この結果、EPO・CHP複合体とフリーのEPOはほぼ同様の血漿中濃度推移を示し、ナノゲルと複合体を形成することによって有意な徐放性は観察されなかった。これは、皮下に投与されたEPO・CHP複合体から生体成分(アルブミンなど)との置換により速やかにEPOが放出されたと考えられ、CHPと複合化を形成することによってEPOの皮下からの吸収過程や体内消失過程にほとんど影響を及ぼさないことが示唆された。【0237】【表37】〔実施例33〕ラットにおけるハイブリッドゲルからのエリスロポエチン徐放性評価 実施例32でEPOを封入したサンプルを表38に示した用量で正常ラット(SD、7週齢、雄)の皮下に埋め込んだ。投与後、経時的にヘパリン処理をしたシリンジで頸静脈採血を行った。得られた血液は血漿分離し、EPO血漿中濃度をELISAキットにて測定した。各種ハイブリッドゲル投与時のEPOの血漿中濃度推移(平均値)および比較例5のEPO・CHP複合体溶液投与時の血漿中濃度推移(平均値)を併せて図31に示した。また、薬物動態パラメーター(血漿中濃度−時間曲線下面積外挿値(AUC∞)および平均滞留時間(MRT))をWinNonlin Ver.5.0.1(Pharsight社製)によって解析し、その値を表39に示した。【0238】 この結果、ハイブリッドゲルからのEPO放出挙動はin vivoにおいても徐放性を有するものであり、その放出速度は架橋密度やゲルを架橋する反応の種類により制御可能なことが示唆された。【0239】【表38】【0240】【表39】 架橋を形成している基を有するヒアルロン酸誘導体、および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を含む組成物であって、前記架橋を形成している基を有するヒアルロン酸誘導体が、前記親水性多糖類誘導体(ここで、当該親水性多糖類誘導体は架橋形成が可能な基を有していてもよい)の存在下、ヒアルロン酸または架橋形成が可能な基を有するその誘導体の架橋形成反応により調製され、前記親水性多糖類誘導体が、前記疎水性基の会合により微粒子を形成し; ここで前記親水性多糖類誘導体が、プルラン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、マンナン、レバン、イヌリン、キチン、キトサン、およびデキストリンから選択される親水性多糖類またはその誘導体に疎水性基を導入して得ることができ、前記疎水性基が、コレステリル基を含む基であり、前記架橋形成が可能な基が、アミノ基、メルカプト基、メタクリロイル基、およびアクリロイル基から選択される1以上の基を含む、前記組成物。 前記親水性多糖類誘導体が、100単糖あたり0.5〜30個の疎水性基を有する、請求項1に記載の組成物。 前記親水性多糖類誘導体が、プルラン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、レバン、イヌリン、キチン、およびデキストリンから選択される親水性多糖類またはその誘導体に疎水性基を導入して得ることができる、請求項1または2に記載の組成物。 前記架橋形成が可能な基が、アミノ基、メルカプト基、およびメタクリロイル基から選択される1以上の基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。 前記疎水性基が、前記水溶性多糖類の1以上のヒドロキシ基を−OXに変換することにより導入され、Xは、以下の基: −CO−X1−R2; −CO−R3−CO−X3−R2; −CO−X1−R3−CO−X3−R2; −CO−R3−X2−CO−X3−R2;および −CO−X1−R3−X2−CO−X3−R2[式中、R2は、コレステリル基であり; R3は、2価のC2−50炭化水素基であり; X1、X2およびX3は、独立に、OおよびN(R4)から選択され; R4は、水素原子またはC1−6アルキル基である]から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。 前記水溶性多糖類またはその誘導体が、プルランまたはその誘導体、およびデキストリンまたはその誘導体から選択される、請求項4または5に記載の組成物。 前記架橋形成が可能な基が、ヒアルロン酸の1以上のカルボキシ基を−CO−Yに変換することにより導入され、Y基は、以下の基: −X11−R12−Y2; −X11−R12−X12−CO−R13−Y2; −X11−R12−X12−C(=NR24)−R13−Y2; −X11−R12−CO−X13−R13−Y2; −X11−R12−X12−CO−X13−R13−Y2; −N(R11)N(R14)CO−R12−Y2; −N(R11)N(R14)CO−R12−CON(R15)N(R16)CO−R13−Y2;および −N(R11)N(R14)CO−R12−CON(R15)N(R16)C(=NR24)−R13−Y2[式中、X11、X12およびX13は、独立に、OおよびN(R11)から選択され: Y2は、アミノ基、メルカプト基、およびメタクリロイル基から選択され; R11、R14、R15、R16およびR24は、独立に、水素原子またはC1−6アルキル基から選択され; R12は、2価のC2−50炭化水素基または2価のC2−50ポリアルキレンオキシ基であり; R13は、2価のC1−50炭化水素基、2価のC2−50ポリアルキレンオキシ基または−CH(R25)−CH2−S−CH2−R26−CH2−であり;ここで、R12およびR13が2価のC2−50炭化水素基である場合、独立に、1〜10の酸素原子が挿入されて当該炭化水素基が一部にポリアルキレンオキシ部分を含んでいてもよく;または −R13−Y2は、一緒になって、−CH(NH2)CH2SHもしくは−CH(NH2)CH2CH2SHを表し; R25は、水素原子またはC1−6アルキル基であり; R26は、−(CH(R27))m−または1〜3の酸素原子が挿入されて一部にポリアルキレンオキシ部分を含んでいてもよい2価のC2−10炭化水素基であり; mは、1〜10の整数であり; R27は、独立に、水素原子、ヒドロキシ基またはC1−6アルキル基から選択される]から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。 Y基が、 −NH−CH2−CH2−O−CO−C(R17)=CH2; −NH−NH−CO−(CH2)4−CO−NH−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH; −NH−(CH2−CH2−O)2−CH2−CH2−NH2; −NH−(CH2−CH2−O)2−CH2−CH2−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH; −NH−(CH2−CH2−O)2−CH2−CH2−NH−CO−CH2−SH;および −NH−CH2−CH2−O−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH[式中、R17は、水素原子またはC1−6アルキル基である]から選択される、請求項7に記載の組成物。 前記架橋形成が可能な基が、親水性多糖誘導体、またはヒアルロン酸もしくはその誘導体の1以上のヒドロキシ基を−O−Zに変換することにより導入され、Z基は、以下の基: −CO−C(R21)=CH2; −CH2CH(OH)−R22−Y1; −CH(CH2OH)−R22−Y1; −CONH−R23−Y1; −CO−R23−Y1;[式中、Y1は、アミノ基、メルカプト基、およびメタクリロイル基から選択され; R21は、水素原子またはC1−6アルキル基から選択され; R22およびR23は、2価のC2−50炭化水素基または2価のC2−50ポリアルキレンオキシ基であり、前記2価のC2−50炭化水素基は、1〜10の酸素原子が挿入されて一部にポリアルキレンオキシ部分を含んでいてもよい]から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。 Y1が、以下の基: −X14−CO−C(R18)=CH2[式中、X14は、OおよびN(R19)から選択され;R18は水素原子またはメチル基であり;R19は水素原子またはC1−6アルキル基である]である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。 前記架橋形成反応が、前記溶液中に架橋剤を添加することにより行われる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。 架橋を形成している基を有するヒアルロン酸誘導体により、架橋を形成している基を有さない親水性多糖類誘導体が封入されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。 親水性多糖類誘導体が、分子内架橋を形成している基、または親水性多糖類誘導体およびヒアルロン酸誘導体に連結する分子間架橋を形成している基を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。 親水性多糖類誘導体がヒアルロン酸誘導体にのみ連結する架橋を形成している基を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。 ヒアルロン酸誘導体が、分子内架橋を形成している基、またはヒアルロン酸誘導体に連結する分子間架橋を形成している基を有する、請求項14に記載の組成物。 ゲル状である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。 医薬として使用される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。 タンパク質またはペプチドを含有する、請求項17に記載の組成物。