生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_サイドポピュレーション細胞分画の濃縮方法
出願番号:2009511824
年次:2013
IPC分類:C12N 5/077,A61L 27/00


特許情報キャッシュ

横山 安伸 櫻川 宣男 JP 5283279 特許公報(B2) 20130607 2009511824 20080416 サイドポピュレーション細胞分画の濃縮方法 学校法人北里研究所 598041566 株式会社ニデック 000135184 谷川 英次郎 100088546 横山 安伸 櫻川 宣男 JP 2007107812 20070417 20130904 C12N 5/077 20100101AFI20130815BHJP A61L 27/00 20060101ALN20130815BHJP JPC12N5/00 202GA61L27/00 Z C12N 5/077 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) PubMed CiNii BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/(STN) CA(STN) 特開2004−254682(JP,A) 米国特許出願公開第2002/0045260(US,A1) KESSINGER A et al.,An ex vivo model of hematopoietic stem cell mobilization,Cytotherapy,2005年,vol. 7, no. 6,p. 463-469 HUNG S-C et al.,Isolation and characterization of size-sieved stem cells from human bone marrow,Stem Cells,2002年,vol. 20,p. 249-258 UMEMOTO T et al.,Limbal epithelial side-population cells have stem cell-like properties, including quiescent state,Stem Cells,2006年,vol. 24,p. 86-94 REDVERS R P et al.,Side population in adult murine epidermis exhibits phenotypic and functional characteristics of keratinocyte stem cells,Proc. Natl. Acad. Sci. 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Sci.,2006年,vol. 47, no. 3,p. 892-900 7 JP2008057428 20080416 WO2008133140 20081106 9 20110415 太田 雄三 本発明は、サイドポピュレーション細胞分画を濃縮する方法に関する。本発明の濃縮方法は、間葉系細胞群に含まれる多能性サイドポピュレーション細胞分画を、簡便に高濃度に濃縮することができ、再生医療への高い応用性を有する。 従来より、再生医学研究の分野で、高い細胞増殖能と多分化能を有するサイドポピュレーション細胞(side population cells、以下、「SP細胞」と言うことがある)を用いた細胞移植方法が研究されており, 損傷を起こした組織に少数のSP細胞を移植することで機能の再構築が認められることが報告されている(非特許文献1及び2参照)。SP細胞は、Hoechst33342蛍光色素を細胞外に排出する能力を有する細胞として、最初にマウス骨髄細胞中での存在が報告された(非特許文献2参照)。SP細胞は、ABCトランスポーターであるMDR(multi drug resistance gene)がコードするタンパク質(MDR分子)を代表とする、ポンプ状の分子によってHoechst33342を細胞外に排出していると考えられている。さらにその後の研究で、マウス以外のヒト、サル、ブタ、イヌ、ニワトリ、ウズラ、ゼブラフィッシュ等にも、存在すること、また、骨髄以外でも臍帯、骨格筋、乳腺、肺、肝臓、上皮、前脳、精巣、心臓、腎臓、縁上皮や前立腺等の組織にSP細胞が含まれることが明らかになった(非特許文献3、4、5、6参照)。 本願発明者らは、ヒト羊膜由来SP細胞を安定した供給量で採取可能であること、及び、細胞移植の際に組織適合抗原型(以下、「HLA型」と言うことがある)の適合性が問題とならない細胞であることを見出し、再生医療に有用なヒト羊膜由来の多能性SP細胞の発明を完成させた(特許文献1参照)。 しかしながら、生体組織中でのSP細胞存在比率は極端に低く、骨髄細胞中には0.1%前後しか存在せず、またヒト羊膜間葉細胞層においても0.2−0.6%程度の存在しか認められない。上記のごとく、SP細胞を用いた細胞移植治療は再生医学研究において有望視されており、存在比率の低いSP細胞を濃縮する方法を開発することが大きな課題となっている。 現在までにも、SP細胞を増幅あるいは濃縮する方法がいくつか報告されており、(1)MDR1、Akt等の遺伝子を組み込んだウィルスベクターをマウス骨髄細胞に導入してSP細胞を増幅する方法(非特許文献4及び5参照)や、(2)ミトキサントロン(mitoxantrone)等の抗癌剤で処理し、SP細胞がこれらの薬剤を細胞外に排出する能力を利用した濃縮方法等(非特許文献6及び7参照)、(3)細胞表面マーカー或いは細胞内の複雑度を利用してゲーティングをかけて蛍光活性化セルソーター(fluorescence activated cell sorter, FACS)等によりSP細胞を濃縮する方法(非特許文献7及び8参照)、(4)骨髄細胞を低酸素濃度条件下で培養し、SP細胞分画の増加を図る方法(非特許文献9参照)、さらには(5)組織から細胞を採取するときに混入する不純物を密度勾配遠心法により取り除いてSP細胞分画比率を上げる方法(非特許文献10参照)等が報告されている。 しかしながら、前記方法(1)及び(2)は、濃縮後のSP細胞を細胞移植治療への利用することを考えた場合に、遺伝子を導入した細胞や抗癌剤で処理された細胞を生体内に移植することで何らかの危険を伴うことが危惧される。前記方法(3)‐(5)については、本発明に応用することで更に濃縮効率を上げることが期待できる。したがって、新規なSP細胞の濃縮方法の開発が待たれている。特開2004−254682号公報Goodell, M.A. et al., Nat Med., 1997, Dec;3(12):1337-1345Gussoni, E. et al., Nature., 1999, Sep 23;401(6751):390-394Asakura, A. et al., Exp Hematol. 2002, Nov;30(11):1339-1345Schienda, J. et al., PNAS., 2006., Jan 24; 103(4); 945-950Challen, G.A. et al., Stem Cells., 2006, 24:3-12Patrawala, L. et al., Cancer Res., 2005, July 15;65(14): 6207-6219Bunting, K.D. et al., Blood., 2000, Aug 1;96(3):902-909Mogi, M. et al., J Biol Chem., 2003, Oct 3;278(40):39068-39075Hirschmann-Jax, C. et al., PNAS., 2004, Sep 28;101(39):14228-14233Zou, S. et al., PNAS., 2002, Sep 17;99(19):12339-12344Kotton, D.N. et al., Blood., 2005, Sep 1;106(5):1574-1580Krishnamurthy, P. et al., J Biol Chem., 2004, Jun 4;279(23):24218-24225Budak, M.T. et al., J Cell Sci, 2005, Apr 15;118(Pt 8):1715-1724 本発明の目的は、組織中の存在率が低いSP細胞を、簡便に、高い純度で濃縮する方法を提供することである。 本願発明者らは、鋭意研究の結果、間葉細胞層から採取したSP細胞が遊走性を示さず、SP細胞が成熟した間葉細胞に分化すると遊走能を獲得することを見出し、該SP細胞と該成熟間葉細胞の遊走性の差異を利用してSP細胞分画を濃縮することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、間葉層から分取したサイドポピュレーション細胞分画を含む細胞を、該細胞が通過しうる大きさの貫通孔を有する多孔性基体上で培養し、遊走能を有する細胞を、該多孔性基体により区切られた栄養度の高い培地分画に移動させることによりサイドポピュレーション細胞を濃縮後、該多孔性基体上に残留する細胞を回収することを含む、サイドポピュレーション細胞の濃縮方法を提供する。 本発明により、SP細胞を、安全で、簡便に高い純度で濃縮する方法が提供された。また、本発明によるSP細胞濃縮方法は、細胞に生物学的な変化をきたすことがないので、他の濃縮方法と組み合わせてさらに高い濃縮率でSP細胞を濃縮することが可能である。実施例1において、ヒト羊膜由来間葉細胞からSP細胞を濃縮した結果を表すFACSデータであり、実線枠内がSP細胞分画を示す。実施例2において、Fresh細胞と凍結細胞の遊走性を比較検討した結果を示す。本発明による、羊膜由来SP細胞の濃縮方法を模式的に示す。 本発明の濃縮方法は、遊走能を有しないSP細胞と、SP細胞が分化して遊走能を獲得した成熟間葉細胞を多孔性基体上で共培養することで実施することができる。すなわち、下記実施例において具体的に記載するように、間葉細胞層を多孔性基体上で共培養することで、遊走能を有する成熟間葉細胞は、多孔性膜の孔を通過して該多孔性膜により区切られた下層の栄養度の高い培地分画に移動するが、遊走能を有しないSP細胞は、移動することができず上層の培地分画に留まる性質を利用することで、SP細胞を簡便に、前記間葉細胞層で大多数を占めるメインポピュレーション細胞(main population cells、以下、「MP細胞」と言うことがある)から濃縮することができる。 本発明で用いる間葉層は、SP細胞を含む組織から採取されるものであれば特に限定されず、そのような組織の例として、骨髄、骨格筋、心筋、皮下組織、肺、肝臓、結合織、乳房、腎、又は羊膜等が挙げられる。将来、SP細胞をドナー細胞として細胞移植治療に用いることが期待されるが、その場合には組織適合抗原型の適合性が問題とならない羊膜由来のSP細胞が移植細胞として特に適していると考えられ、前記間葉層を採取する組織としては、羊膜が特に好ましい。 また、前記間葉層は、SP細胞を有する生物種に由来するものであれば、特に限定されるものではなく、そのような生物種の例として、ゼブラフィッシュ、ニワトリ、ウズラ、マウス、ブタ、イヌ、サル、ヒトなどが挙げられる。これらの生物種の中では、羊膜採取の観点から有羊膜類に属する動物が好ましく、その中でも特に哺乳動物が好ましく、将来のヒトに対する再生治療を考慮した場合に、組織適合性の観点から、上記哺乳動物の中でも、ヒトであることが、さらに特に好ましい。従って、本発明を再生医学、再生医療に応用する場合には、ヒト羊膜由来のSP細胞を濃縮することが最も好ましい。ヒト由来の羊膜であれば、出産時に子宮より排出されたものが医療機関等を通じて安定した供給量で提供される。 本発明で用いる間葉層は、常法により採取することができる。例えば、本発明で用いる羊膜間葉層については、羊膜の絨毛層から間葉細胞層を剥離し、コラゲナーゼやパパイン等の酵素処理を行う等の常法に従って採取することができる(特許文献1参照)。採取した間葉層に、目的のSP細胞が含まれるかどうかは、Hoechst33342等の蛍光色素で染色することにより確認することができる。SP細胞はHoechst33342を細胞外へ排出する能力が高いため、MP細胞等に比べて染色による蛍光強度が低いという特徴を有する。Hoechst 33342染色による傾向強度は、FACS等を用いたフローサイトメトリーにより波長675nm及び450nmの二次元解析を行うことで測定することができる。すなわち、675nm及び450nm両波長の蛍光強度が共に弱い領域にSP細胞集団が存在する。Hoechst33342染色による解析は常法に従って簡単に行うことができる(特許文献1、又は非特許文献1参照)。 本発明で用いる多孔性基体については、前記間葉層に含まれる細胞が通過しうる大きさの貫通孔を有する多孔性基体であれば、特に限定されないが、個々の孔の平均直径が、3μmから8μmの範囲であることが好ましい。本発明で用いる多孔性基体としては、市販の多孔性基体を用いることも可能である。下記実施例においてはCorning社製の孔直径3.0μm又は8.0μmを有する Transwell(登録商標)を使用しているが、特にこれに限定されるものではない。 本発明の前記多孔性基体上で、前記間葉層に含まれる細胞を培養する方法としては、前記多孔性基体上に細胞を接着させる点において培養条件が異なることを除き、その細胞の培養方法の常法に従って培養可能であり(特許文献1参照)、特に限定されることはないが、その典型例として、Dulbecco's modified Eagle's minimal essential medium(以下、「DMEM」と言うことがある)等の基礎培地、又は基礎培地に公知の添加物を添加した液体を培養液として用い、細胞が多孔性基体上に接着した状態で、かつ、該培養液に浸った状態である培養法が挙げられる。濃縮する期間についても特に限定されないが、十分な濃縮効率を得るために、7日間以上の継続培養を行うことが好ましく、10日間以上の継続培養が特に好ましい。継続培養期間の上限は、特に限定されないが、30日間以内の培養で十分な濃縮効率を得ることができ、SP細胞の種類によっては20日以内の培養期間で十分な効果が得られる。 本発明において、多孔性基体を用いてSP細胞を濃縮した後、前記多孔性基体上に残留する細胞を回収する方法については特に限定されないが、多孔性基体上に接着した細胞を生きたまま回収できる方法であればよく、例として、酵素処理などにより細胞を該多孔性基体上より剥離して、該剥離された細胞を遠心分離する等の回収方法が挙げられる。 本発明は、SP細胞と成熟間葉細胞の有する遊走能の差異を利用した、SP細胞の濃縮方法である。ここで、遊走能とは「走化因子などの濃度勾配に従って細胞が集合したり,逃避したりする運動能力」を意味するが、本発明においては、多孔性基体により区切られた培養系の上層分画では培養開始時より細胞が播種されており、該細胞の代謝により栄養成分が消費され続けるが、一方で、下層分画では栄養成分が豊富に残存しているため、遊走能を有する成熟間葉細胞が該栄養成分の濃度勾配に応答して該下層分画へと移動することにより観察される現象であると考えられる(図3参照)。図3は、本発明の濃縮方法を模式的に示す。図3中、参照番号10はペトリディッシュ、12は多孔性基体、14は間葉細胞を示す。多孔性基体12上で間葉細胞を培養すると、遊走能を有する成熟間葉細胞は多孔性基体12の孔を通過してペトリディッシュ上へ移動するが、SP細胞は、多孔性基体12上に残留するため、SP細胞が多孔性基体12上に濃縮される。 本発明により濃縮された後のSP細胞の存在比率は、前記Hoechst33342染色による二次元解析により測定することができる(特許文献1、又は非特許文献1参照)。 以下、本発明を実施例に基づき、より具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。実施例1 ヒト羊膜由来間葉層からのSP細胞の濃縮1. SP細胞の濃縮培養ヒト羊膜より常法(特許文献1参照)に従って採取した間葉細胞を、採取直後に細胞濃度1.13x105(細胞個/cm2)で、3.0μmの孔直径を有するポリカーボネイト製メンブレンのCorning社製Transwell(登録商標)上に播種し、20%牛胎児血清(FBS)含有DMEM/F-12(1:1)培養液中にて、37℃、CO2濃度5%の条件下で10日間培養した。培養液の交換は、上記培養開始7日後から前記培養液が黄色に変色するため、培養開始7日目以降は24時間毎に培養液の交換を行なった。2. SP細胞の分取(1)上記Transwell (登録商標)を取り外し、新しいペトリディッシュ上に設置した。(2)取り外したTranswell(登録商標)のメンブレン上の培養液を回収した。(3)上記メンブレンの上下面にPBS(-)を添加し、メンブレン上に接着した細胞をピペッティング操作により回収する。メンブレンの下面に残留したPBS(-)はアスピレータで除去した。この操作を3回繰り返した。(4)メンブレンの上下面に0.02%トリプシン溶液/0.01% EDTAを添加し37℃、CO2濃度5%の条件で2分間の処理を行った。(5)メンブレンの上面に接着した細胞を、さらにピペッティング操作により剥離し、あらかじめ調整しておいた20%FBS含有DMEM/F-12(1:1)培養液に細胞を回収した。(6)上記(4)及び(5)の操作を3回繰り返した。(7)Hoechst33342染色を行なうため、上記操作により回収した細胞の一部(少量)を取り分けて、生細胞数をカウントした。(8)上記回収した細胞を室温にて、回転数1000rpmにて5分間遠心してペレット状にした。(9)上清をアスピレートにより除去して5%FBS含有DMEM/F-12(1:1)培養液で生細胞を懸濁し、細胞濃度を5x105個/mlに調整した。(10)ペトリディシュに1x106個相当の細胞を移し、インキュベータにて37℃、CO2濃度5%の条件下で60分間振とう培養を行った。(11)上記振とう培養した細胞の培養液に、Hoechst33342を終濃度1.5μg/mlとなるように添加(667倍希釈)した。(12)インキュベータにてさらに、37℃、CO2濃度5%の条件下で90分間振とう培養を行なうことで、Hoechst33342蛍光色素を細胞に取り込ませた。(13)冷HBSS+(Hanks Balanced Salt Solution,Gibco社製に2%FCS,10mM HEPES緩衝液,Gibco社製)を上記培養液と等量添加した。(14)上記細胞をセルストレイナーを通して、10mlの冷HBSS+の入ったチューブへと移した。(15)さらに、上記振とう培養に用いたペトリディッシュを再度冷HBSS+で洗い、該冷HBSS+を回収してセルストレイナーを通すことで、細胞を完全に回収した。(16)上記回収した細胞を室温にて、回転数1000rpmにて5分間遠心してペレット状にした。(17)細胞を4℃に保ち、最終濃度2μg/mLとなるように PI (propidium iodide)を添加した冷HBSS+で、細胞濃度を1x106個/mlに調整する。(18)細胞懸濁液の一部を分取し、生細胞数をカウントした。(19)EPICS ALTRA HyPerSort(ベックマン・コールター株式会社)を用いてHoechst33342色素はUVレーザー350nmで励起し、Hoechst Blue/350nmとHoechst Red/675nmを検出しSP分画を解析、分取した。 FACSの結果を図1に示す。実線で囲んだ部分がSP細胞領域である。羊膜より採取した直後の間葉細胞を、上記と同様の方法でHoechst33342染色し、FACSにて二次元蛍光解析を行ったところ、SP細胞の存在比率は全細胞の0.2%であった。これに対し、上記Transwell(登録商標)を用いて濃縮した後のSP細胞の存在比率は全細胞の22.4%であり、SP細胞の濃度は100倍以上に濃縮されていることが分かった(図1参照)。また、このSP細胞分画はMDR分子の機能阻害剤であるベラパミル(verapamil)を添加すると(図1中、「Verapamil (+)」と表示)、細胞存在比率が0.9%にまで低下した。したがって、このSP細胞分画中に含まれる細胞集団がSP細胞であることが確認された。実施例2 ヒト羊膜から採取直後の間葉細胞と、採取後に凍結保存された間葉細胞を融解した細胞を用いたSP細胞の濃縮効率の比較 上記実施例1と同様の方法で、ヒト羊膜から採取直後の間葉細胞(Fresh細胞)と、ヒト羊膜から採取した後に凍結保存された間葉細胞を融解した細胞(凍結細胞)をそれぞれTranswell(登録商標)上で培養して、培養開始から経時的にTranswell(登録商標)のメンブレン上面に接着している細胞数をカウントした。Fresh細胞及び凍結細胞は、実施例1に示す培養方法と同じ条件で培養され、同じ方法に従って回収された。ただし、凍結融解された細胞の代謝機能が正常に回復する期間を考慮して、Transwell(登録商標)上での培養期間を14日間に延長した点が異なる。 一定期間Transwell(登録商標)上で培養した後の、Transwell(登録商標)のメンブレン上面に接着したFresh細胞及び凍結細胞の各細胞数を、図2に示す。図2から、Fresh細胞は培養開始後3日目前後からメンブレン上面に接着した細胞の数が減少し始め、10日目で細胞数は約1/5に減少した。一方、凍結細胞においては、メンブレン上の細胞の数は培養開始後7日目では殆ど変化はなく、14日目で約1/2の細胞数に減少しており、Fresh細胞に比べ、細胞数の減少開始が著しく遅いことが判明した。これは、Fresh細胞が培養開始時点から高い代謝機能を有しており、比較的早い時点からFresh細胞に含まれる成熟間葉細胞が遊走能によりメンブレン下層へと移動できたが、一方で、凍結細胞では培養開始時点での代謝機能が低い状態にあり、凍結細胞に含まれる成熟間葉細胞が、遊走能によりメンブレン下層へ移動するために必要な代謝機能を獲得するまでに相当時間を要したためであると考えられる。仮に、成熟間葉細胞が、遊走能ではなく重力に引っ張られて貫通孔を通過し、Transwell(登録商標)下層へ移動しているのであれば、Fresh細胞と凍結細胞との比較において上記時間差は生じないはずである。従って、本比較実験により、成熟間葉細胞は、自身の有する遊走能により、メンブレン下層へと移動していると考えられる。実施例3 異なる孔直径を有するTranswell(登録商標)を用いた比較検討 上記実施例2と同様の方法で、Fresh細胞を、それぞれ3.0μmと8.0μmの孔直径を有するTranswell(登録商標)上で培養して、メンブレン上面に接着した細胞数をカウントすることで、細胞遊走性に孔直径が及ぼす影響を比較実験により検討した。 異なる孔直径を有するTranswell(登録商標)を用いた比較実験から、細胞の遊走速度は、3.0μmと8.0μmの間では孔直径に依存しないという結果を得た。実施例3 異なる細胞数をTranswell(登録商標)上に播種した比較検討 上記実施例2と同様の方法で、Fresh細胞を、それぞれ1x106、5x106、1x107個の細胞数でTranswell(登録商標)上に播種して、メンブレン上面に接着した細胞数をカウントしすることで、細胞遊走性に初期細胞数が及ぼす影響を比較実験により検討した。 異なる初期細胞数を用いた比較実験から、細胞の遊走速度は、1x106−1x107個の間では初期細胞数に依存しないという結果を得た。また、メンブレン上面に接着したSP細胞分画の回収細胞数は、初期細胞数に依存していた。 間葉層から分取した間葉細胞を、該細胞が通過しうる大きさの貫通孔を有する多孔性基体上で培養し、遊走能を有する細胞を、該多孔性基体により区切られた栄養度の高い培地分画に移動させることによりサイドポピュレーション細胞を濃縮後、該多孔性基体上に残留する細胞を回収することを含む、間葉層由来のサイドポピュレーション細胞の濃縮方法。 前記多孔性基体の貫通孔の平均直径が3μm〜8μmである請求項1記載の方法。 前記培養を10日以上行なう請求項1又は2記載の方法。 前記間葉層が有羊膜類に属する動物由来である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。 前記間葉層が哺乳動物由来である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。 前記間葉層がヒト由来である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。 前記間葉層が羊膜由来である請求項4ないし6のいずれか1項に記載の方法。


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