| タイトル: | 特許公報(B2)_リパーゼ粉末製剤、その製造方法及び使用 |
| 出願番号: | 2009505150 |
| 年次: | 2013 |
| IPC分類: | C12N 9/20,C12P 7/62,C12P 7/64 |
鈴木 順子 山内 良枝 眞鍋 珠美 根岸 聡 JP 5145609 特許公報(B2) 20121207 2009505150 20080312 リパーゼ粉末製剤、その製造方法及び使用 日清オイリオグループ株式会社 000227009 熊倉 禎男 100082005 小川 信夫 100084009 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 山崎 一夫 100119013 鈴木 順子 山内 良枝 眞鍋 珠美 根岸 聡 JP 2007069189 20070316 20130220 C12N 9/20 20060101AFI20130131BHJP C12P 7/62 20060101ALI20130131BHJP C12P 7/64 20060101ALI20130131BHJP JPC12N9/20C12P7/62C12P7/64 C12N 9/16-9/20 C12P 7/62 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平11−246893(JP,A) 特開2006−325465(JP,A) 国際公開第2006/030889(WO,A1) 国際公開第2005/097984(WO,A1) 国際公開第2005/097985(WO,A1) 国際公開第2008/010543(WO,A1) 9 JP2008054448 20080312 WO2008114656 20080925 12 20100924 吉田 知美 本発明は、各種エステル化反応、エステル交換反応などに好適に使用することができるリパーゼ粉末製剤、更に脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸を含有するリパーゼ粉末製剤、これらの製造方法、これらのリパーゼ粉末製剤を用いるエステル交換方法などに関するものである。(発明の背景) リパーゼは、脂肪酸などの各種カルボン酸とモノアルコールや多価アルコールなどのアルコール類とのエステル化反応、複数のカルボン酸エステル間のエステル交換反応などに幅広く使用されている。このうち、エステル交換反応は動植物油脂類の改質をはじめ、各種脂肪酸のエステル、糖エステルやステロールエステルの製造法として重要な技術である。これらの反応の触媒として、油脂加水分解酵素であるリパーゼを用いると、室温ないし約70℃程度の温和な条件下でエステル交換反応を行うことができ、従来の化学反応に比べ、副反応の抑制やエネルギーコストが低減化されるだけでなく、触媒としてのリパーゼが天然物であることから安全性も高い。また、その基質特異性や位置特異性により目的物を効率良く生産することができる。ところが、粉末リパーゼをそのままエステル交換反応に用いても活性が十分に発現しないばかりか、元来が水溶性のリパーゼを油性原料中に均一に分散させることは困難であり、その回収も困難である。 このため、従来はリパーゼを何らかの担体、たとえば陰イオン交換樹脂(特許文献1)、フェノール吸着樹脂(特許文献2)、疎水性担体(特許文献3)、陽イオン交換樹脂(特許文献4)、キレート樹脂(特許文献5)等に固定化してエステル化やエステル交換反応などに用いることが一般的である。さらに、リパーゼとリパーゼの担体として作用する物質とを溶解している水相が疎水相に分散しているエマルジョンを製造し、そのエマルジョンから水を除去することにより、水相をリパーゼで被覆した固体粒子へ変化させる固定化リパーゼ粒子の製造方法が提案されている(特許文献6)。 このように、従来はリパーゼを固定化してエステル交換反応に用いていたが、かかる固定化リパーゼは固定化処理による本来のリパーゼ活性の損失を伴うだけでなく、多孔性担体を用いた場合は細孔に原料や生成物が詰まり、結果としてエステル交換率の低下を招いていた。さらに、従来の固定化リパーゼを用いたエステル交換反応においては、担体が保持する水分が反応系に持ち込まれるため、副反応、たとえば油脂類のエステル交換反応におけるジグリセリドやモノグリセリドの生成等を避けることは困難であった。 このような状況に鑑み、粉末リパーゼを用いる各種技術が開発されている。例えば、不活性有機溶媒の存在下または非存在下、エステル交換反応時に分散リパーゼ粉末粒子の90%以上を1〜100μmの範囲の粒径に保つように、エステルを含有する原料に粉末リパーゼを分散させてエステル交換反応を行う方法が提案されている(特許文献7)。又、リン脂質および脂溶性ビタミンを含む酵素溶液を乾燥して得た酵素粉末を用いることが提案されている(特許文献8)。 しかしながら、さらにリパーゼ活性が向上した粉末リパーゼが求められている。 一方、酵素含有溶液に穀物粉を、又は穀物粉及び糖類を添加して該酵素含有溶液を乾燥させることを特徴とする酵素固定製剤の製造方法が提案されている(特許文献9)。ここでは、使用できる酵素として、リパーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ及びペクチナーゼがあげられており、この製造方法により得られた酵素固定製剤は、酵素活性低下物質存在下における酵素の失活が抑制できるとしているが、酵素活性が向上することについては記載されていない。又、ここで、実際に製造されているのは、セルラーゼ又はプロテアーゼに脂肪含量の少ない脱脂大豆粉を適用した例のみであり、リパーゼを用いた例は具体的に記載されていない。特開昭60−98984号公報特開昭61−202688号公報特開平2−138986号公報特開平3−61485号公報特開平1−262795号公報特許第3403202号公報特許第2668187号公報特開2000−106873号公報特開平11−246893号公報 本発明は、リパーゼ活性が向上したリパーゼ粉末製剤を提供することを目的とする。 本発明は、又、これらのリパーゼ粉末製剤の製造方法を提供することを目的とする。 本発明は、又、これらのリパーゼ粉末製剤を用いるエステル交換方法及びエステル化方法を提供することを目的とする。 本発明は、特定の起源のリパーゼを、脂肪含量の高い大豆粉末を用いて粉末に造粒し、得られたリパーゼ粉末製剤をエステル化反応及び/又はエステル交換反応に使用すると、リパーゼ活性が格段に向上するとの知見に基づいてなされたのである。 すなわち、本発明は、Rhizopus oryzae由来及び/又はRhizopus delemar由来のリパーゼと、脂肪含有量が5質量%以上である大豆粉末とを含有する造粒物であることを特徴とするリパーゼ粉末製剤を提供する。 本発明は、又、Rhizopus oryzae由来及び/又はRhizopus delemar由来のリパーゼと、脂肪含有量が5質量%以上である大豆粉末を溶解・分散させた水溶液を乾燥させることを特徴とするリパーゼ粉末製剤の製造方法を提供する。 本発明は、又、上記リパーゼ粉末製剤を用いて、脂肪酸エステル、脂肪酸、及びアルコールから選ばれる1種以上にエステル交換反応又はエステル化反応を行うことを特徴とする、エステル交換物又はエステル化物の製造方法を提供する。 本発明によれば、エステル交換反応又はエステル化反応を効率的に行い且つ反応後に回収して再度の利用が可能である、酵素活性が格段に向上したリパーゼ粉末製剤を提供することができる。 また、本発明によれば、宗教上の理由や健康上の理由などにより動物由来の蛋白や油脂を摂取できない人々のための食品又は食品添加剤を製造するのに安全に且つ廉価で使用できるリパーゼ粉末製剤を得ることができる。 本発明で用いるリパーゼとしては、リゾプス属のリゾプス デレマー(Rhizopus delemar)及びリゾプス オリザエ(Rhizopus oryzae)が使用できる。1,3-特異性リパーゼであるのが好ましい。 これらのリパーゼとしては、ロビン社の商品:ピカンターゼR8000や、天野エンザイム社の商品:リパーゼF−AP15等が挙げられるが、最も適したリパーゼとしては Rhizopus oryzae由来、天野エンザイム社の商品:リパーゼDF“Amano”15−K(リパーゼDともいう)が挙げられる。このものは粉末リパーゼである。なお、このリパーゼDF“Amano”15−Kについては従来はRhizopus delemar由来の表記であった。 本発明で使用するリパーゼとしては、リパーゼの培地成分等を含有したリパーゼ含有水溶液を乾燥して得られたものでもよい。 本発明で用いる脂肪含有量が5質量%以上である大豆粉末としては、脂肪含有量が10質量%以上であるのが好ましく、さらに15質量%以上であるのが好ましく、一方、25質量%以下であるのが好ましい。特に脂肪含有量が18〜23質量%である大豆粉末が好ましい。ここで、脂肪としては脂肪酸トリグリセリド及びその類縁体があげられる。大豆の脂肪含量は、ソックスレー抽出法などの方法により容易に測定することができる。 本発明では、このような大豆粉末として、全脂大豆粉を用いることができる。また大豆粉末の原料として豆乳を用いることもできる。大豆粉末は、大豆を常法により粉砕して製造することができ、その粒径は0.1〜600μm程度であるのが好ましい。 リパーゼに対する大豆粉末の使用量は、質量基準で0.1〜200倍の量であるのが好ましく、0.1〜20倍の量であるのがより好ましく、0.1〜10倍の量が最も好ましい。 本発明のリパーゼ粉末製剤は、水分含量が10質量%以下であるのが好ましく、特に、1〜8質量%であるのが好ましい。 本発明のリパーゼ粉末製剤の粒径は任意とすることができるが、リパーゼ粉末製剤の90質量%以上が粒径1〜100μmであるのが好ましい。平均粒径は10〜80μmが好ましい。又、リパーゼ粉末製剤の形状は球状であるのが好ましい。 リパーゼ粉末製剤の粒径は、例えば、HORIBA社の粒度分布測定装置(LA−500)を用いて測定することができる。 本発明のリパーゼ粉末製剤は、リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた水溶液を、スプレードライ、フリーズドライ、及び溶剤沈澱・乾燥の中から選ばれるいずれか1種の乾燥方法で乾燥し、製造することができる。 ここで、リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた水溶液は、粉末リパーゼと大豆粉末を水に溶解・分散させたり、大豆粉末が溶解・分散した水溶液に粉末リパーゼを混合したり、又は、後に説明するリパーゼ含有水溶液に大豆粉末を混合することにより得ることができる。 リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた水溶液を乾燥させる過程では、リパーゼ及び/又は大豆粉末の粒子が凝集して、リパーゼ及び大豆粉末を含有する造粒物が形成される。この造粒物は、リパーゼの培地成分を含んでいてもよい。 このようにして調製したリパーゼ粉末製剤は、そのままエステル交換又はエステル化に使用することができる。 リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた水溶液中の水の量は、リパーゼ及び大豆粉末との合計質量に対して水の質量を調整する。具体的には、リパーゼ及び大豆粉末との合計質量に対する水の質量が、0.5〜1,000倍であるのが好ましく、1.0〜500倍であるのがより好ましく、3.0〜100倍が最も好ましい。 特に、スプレードライによりリパーゼ粉末製剤を製造する場合は、装置の特性からリパーゼ及び大豆粉末との合計質量に対する水の質量が、2.0〜1,000倍であるのが好ましく、2.0〜500倍であるのがより好ましく、3.0〜100倍が最も好ましい。なお、リパーゼ含有水溶液を原料として使用する場合で、リパーゼ含有水溶液中のリパーゼ含量が不明な時は、フリーズドライ、その他の減圧乾燥によりリパーゼ含有水溶液を粉末化してリパーゼ含量を求め、リパーゼ質量を算出することができる。 ここで、リパーゼ含有水溶液としては、菌体を除去したリパーゼ培養液、精製培養液、これらから得たリパーゼを再度水に溶解・分散させたもの、市販の粉末リパーゼを再度水に溶解・分散させたもの、市販の液状リパーゼ等が挙げられる。さらに、リパーゼ活性をより高めるために塩類等の低分子成分を除去したものがより好ましく、また、粉末性状をより高めるために糖等の低分子成分を除去したものがより好ましい。 リパーゼ培養液としては、例えば、大豆粉、ペプトン、コーン・ステープ・リカー、K2HPO4、(NH4)2SO4、MgSO4・7H2O等含有する水溶液があげられる。これらの濃度としては、大豆粉0.1〜20質量%、好ましくは1.0〜10質量%、ペプトン0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%、コーン・ステープ・リカー0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%、K2HPO4 0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。又、(NH4)2SO4は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%、MgSO4・7H2Oは0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%である。培養条件は、培養温度は10〜40℃、好ましくは20〜35℃、通気量は0.1〜2.0VVM、好ましくは0.1〜1.5VVM、攪拌回転数は100〜800rpm、好ましくは200〜400rpm、pHは3.0〜10.0、好ましくは4.0〜9.5に制御するのがよい。 菌体の分離は、遠心分離、膜濾過などで行うのが好ましい。また、塩類や糖等の低分子成分の除去は、UF膜処理により行うことができる。具体的には、UF膜処理を行い、リパーゼを含有する水溶液を1/2量の体積に濃縮後、濃縮液と同量のリン酸バッファーを添加するという操作を1〜5回繰り返すことにより、低分子成分を除去したリパーゼ含有水溶液を得ることができる。 遠心分離は200〜20,000×g、膜濾過はMF膜、フィルタープレスなどで圧力を3.0kg/m2以下にコントロールするのが好ましい。菌体内酵素の場合は、ホモジナイザー、ワーリングブレンダー、超音波破砕、フレンチプレス、ボールミル等で細胞破砕し、遠心分離、膜濾過などで細胞残さを除去することが好ましい。ホモジナイザーの攪拌回転数は500〜30,000rpm、好ましくは1,000〜15,000rpm、ワーリングブレンダーの回転数は500〜10,000rpm、好ましくは1,000〜5,000rpmである。攪拌時間は0.5〜10分、好ましくは1〜5分がよい。超音波破砕は1〜50kHz、好ましくは10〜20kHzの条件で行うのが良い。ボールミルは直径0.1〜0.5mm程度のガラス製小球を用いるのがよい。 乾燥工程前の途中の工程において、リパーゼ含有水溶液を濃縮してもよい。濃縮方法は、特に限定されるものではないが、エバポレーター、フラッシュエバポレーター、UF膜濃縮、MF膜濃縮、無機塩類による塩析、溶剤による沈殿法、イオン交換セルロース等による吸着法、吸水性ゲルによる吸水法等があげられる。好ましくはUF膜濃縮、エバポレーターがよい。UF膜濃縮用モジュールとしては、分画分子量3,000〜100,000、好ましくは6,000〜50,000の平膜または中空糸膜、材質はポリアクリルニトリル系、ポリスルフォン系などが好ましい。 次に、リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた水溶液を乾燥する方法であるスプレードライ、フリーズドライ、又は溶剤沈澱・乾燥について説明する。 スプレードライは、例えば、ノズル向流式、デイスク向流式、ノズル並流式、デイスク並流式等の噴霧乾燥機を用いて行うのがよい。好ましくはデイスク並流式が良く、アトマイザー回転数は4,000〜20,000rpm、加熱は入口温度100〜200℃、出口温度40〜100℃で制御してスプレードライするのが好ましい。特に、リパーゼと大豆粉末を含有する水溶液の温度を20〜40℃に調整し、次いで70℃〜130℃の乾燥雰囲気内に噴霧するのが好ましい。又、乾燥前に水溶液のpHを7.5〜8.5に調整しておくのが好ましい。 フリーズドライ(凍結乾燥)は、例えば、ラボサイズの少量用凍結乾燥機、棚段式凍結乾燥により行うのが好ましい。さらに、減圧乾燥により調製することもできる。 溶剤沈殿・乾燥は、リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた水溶液を、使用する溶剤に徐々に添加して沈殿物を生成させ、得られた沈殿物を遠心分離機を用いて遠心分離を行って沈殿を回収した後、減圧乾燥する。一連の操作は、リパーゼ粉末製剤の変性・劣化を防止するために、室温以下の低温条件下で行うのが好ましい。 溶剤沈澱で用いる溶剤として、例えば、エタノール、アセトン、メタノール、イソプロピルアルコール、及びヘキサン等の水溶性溶剤又は親水性溶剤が挙げられ、これらの混合溶剤も使用することができる。その中でもリパーゼ粉末製剤の活性をより高めるために、エタノール又はアセトンを用いることが好ましい。 使用する溶剤の量は特に限定されないが、リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた水溶液の体積に対し、1〜100倍の体積の溶剤を使用するのが好ましく、2〜10倍の体積の溶剤を使用するのがより好ましい。 また、溶剤沈澱した後、沈殿物は静置後に濾過により得ることができるが、1,000〜3,000×g程度の軽度な遠心分離により得ることもできる。得られた沈殿物の乾燥は、例えば、減圧乾燥により行うことができる。 本発明では、リパーゼ粉末製剤を製造する過程で、脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸をさらに添加してもよい。具体的には、リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた水溶液に、脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸を接触させた後、乾燥することにより得ることができる。このような脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸の接触を行うことにより、リパーゼ活性及び安定性をより向上させることができる。 使用する脂肪酸エステルとしては、モノアルコール又は多価アルコールと脂肪酸との脂肪酸エステルが挙げられる。多価アルコールの脂肪酸エステルは、部分エステルでも良く、フルエステルでも良い。 ここで、モノアルコールとしてはアルキルモノアルコール、フィトステロール等のステロール類が挙げられる。アルキルモノアルコールを構成するアルキル部分は、炭素数が6〜12の中鎖アルキル又は炭素数が13〜22の長鎖アルキルであるのが好ましく、飽和でも不飽和でもよく、直鎖でも分岐鎖でもよい。フィトステロールとしては、例えばシトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、フコステロール、スピナステロール、ブラシカステロール等が好ましい。また、多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリンやデカグリセリン等のグリセリン縮合物、プロピレングリコール等のグリコール類、ソルビトール等が挙げられる。 使用する脂肪酸エステルの構成脂肪酸、及び使用する脂肪酸は、特に限定されないが、油脂由来の脂肪酸であることが好ましい。例えば、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ウンデカン酸等の炭素数が6〜12の中鎖脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エルシン酸等の炭素数が13〜22の長鎖不飽和脂肪酸が挙げられる。その他、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸等の長鎖飽和脂肪酸も挙げられる。 使用する脂肪酸エステルとしては、油脂、油脂由来の脂肪酸を構成成分とするジグリセリド、モノグリセリドから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。また、脂肪酸エステルの一部を加水分解することにより得られる、部分エステルと脂肪酸の混合物を使用することもできる。 なお、リパーゼ粉末製剤に使用する脂肪酸エステル及び脂肪酸は、リパーゼ粉末製剤を用いて行うエステル交換やエステル化に使用する原料と同じものを選択するのが好ましい。 ここで、脂肪酸エステルとして使用する油脂は、特に限定されないが、加水分解反応及びエステル化反応を行うことでリパーゼ粉末製剤を製造する場合は、反応温度において液体の油脂を使用することが好ましい。 油脂として、例えば、菜種油、ひまわり油、オリーブ油、コーン油、ヤシ油、ゴマ油、紅花油、大豆油、それらのハイオレイン品種の油脂、綿実油、米油、アマニ油、パーム油、パーム油の分別油、パーム核油、つばき油、カカオ脂、シア脂、サル脂、及びイリッペ脂等などの植物性油脂、トリオレイン(トリオレイン酸グリセリド)、トリカプリリン(トリオクタン酸グリセリド)、トリアセチン(トリ酢酸グリセリド)、トリブチリン(トリブタン酸グリセリド)などのトリグリセリド(合成油脂)、魚油、牛脂、ラード等の動物性油脂といった油脂の1種又は2種以上の混合物があげられる。これらの中でも植物性油脂が好ましい。 脂肪酸エステル、又は脂肪酸エステルと脂肪酸を原料として使用する場合、リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた水溶液に、脂肪酸エステル、又は脂肪酸エステルと脂肪酸を添加して接触させ、スターラーやスリーワンモーター等で均一に攪拌して加水分解及び/又は乳化・分散させた後に、スプレードライ、フリーズドライ又は溶剤沈殿・乾燥から選ばれる1種の乾燥方法で乾燥することで、リパーゼ粉末製剤を製造することができる。 ここで、乾燥を、エステル化反応を伴う脱水により行うこともできる。すなわち、加水分解及び/又は乳化・分散させた後、続いて脱水しながらエステル化反応を行い、必要に応じて未反応物等の油分を濾過することにより、リパーゼ粉末製剤を製造することができる。 リパーゼ粉末製剤の製造に使用する脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸の添加量は、リパーゼ及び大豆粉末の合計質量に対して0.1〜500倍の質量であるのが好ましく、0.2〜100倍の質量であるのがより好ましく、0.3〜50倍の質量が最も好ましい。 ただし、スプレードライを使ってリパーゼ粉末製剤を製造する場合、使用する脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸の添加量は、リパーゼ及び大豆粉末の合計質量に対して0.1〜10倍の質量であるのが好ましく、0.2〜10倍の質量であるのがより好ましく、0.3〜10倍の質量が最も好ましい。 スプレードライを使用する場合、脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸の添加量が多くなると、水分の蒸発が不完全になったり、得られるリパーゼ粉末製剤が過剰な脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸により回収しにくくなる等の問題が発生するからである。 スプレードライの装置の改良や回収形態の変更により、使用する脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸の添加量の上限値を高くすることもできるが、必要以上に脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸を含有すると濾過等の工程が必要となる。 脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸を含有するリパーゼ粉末製剤を、溶剤沈殿を用いて製造する場合、使用する溶剤の量は、脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸と、リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた水溶液とを合計した全質量の値に対し、1〜100倍の値の体積の溶剤を使用するのが好ましく、2〜10倍の体積の溶剤を使用するのがより好ましい。 溶剤沈殿を行う前に、後に説明する濾過助剤を添加した場合には、更に濾過助剤を加えた質量を全質量として、溶剤を使用する。 本発明では、更に、濾過助剤を添加する工程を含むことができる。 乾燥を、エステル化反応を伴う脱水により行う場合は、エステル化反応前、エステル化反応中又はエステル化反応後に、濾過助剤を添加することができる。濾過助剤を添加することにより、エステル化反応をした後に濾過処理をスムーズに行うことができるので好ましい。 エステル化反応前又はエステル化反応中に濾過助剤を添加する場合は、その際に、更に油脂を添加してもよい。添加することにより粘度が増加し、撹拌が悪くなった場合は、このように油脂を追加することによって、反応溶液の流動性が良くなるからである。 使用できる濾過助剤としては、シリカゲル、セライト、セルロース、でんぷん、デキストリン、活性炭、活性白土、カオリン、ベントナイト、タルク、砂等があげられる。このうち、シリカゲル、セライト、セルロースが好ましい。濾過助剤の粒径は任意でよいが、1〜100μmが好ましく、5〜50μmが特に好ましい。 エステル化反応前後又は反応中に使用できる濾過助剤は、リパーゼ及び大豆粉末の合計質量に対し1〜500質量%の量を添加することが好ましく、10〜200質量%の量を添加することがさらに好ましい。この範囲の量を使用すると、濾過時の負担がより小さくなり、大規模な濾過設備や高度な遠心分離等の濾過前処理を必要としないからである。 また、本発明のエステル化反応を伴う脱水以外の乾燥方法により得られるリパーゼ粉末製剤中に濾過助剤を含有させることもできる。スプレードライ又はフリーズドライにより乾燥を行ってリパーゼ粉末製剤を得る場合には、乾燥の前又は後のどちらで濾過助剤を添加してもよい。 溶剤沈殿後に乾燥させる方法によって乾燥を行う場合には、乾燥して得られたリパーゼ粉末製剤へ濾過助剤を添加するのが好ましい。 得られたリパーゼ粉末製剤に含有させる濾過助剤の量は、リパーゼと大豆粉末の合計質量を基準として1〜500質量%とすることができ、10〜200質量%であることがさらに好ましい。 次に、本発明のリパーゼ粉末製剤を用いてエステル交換反応又はエステル化反応することにより得られるエステル交換物又はエステル化物の製造方法について説明する。 本発明のリパーゼ粉末製剤を使用して行うエステル交換反応は、脂肪酸エステル、脂肪酸、及びアルコールから選ばれる1種以上と、脂肪酸エステルとのエステル交換反応であり、例えば、常法による油脂と油脂のエステル交換反応、油脂と脂肪酸エステルとのエステル交換反応、アルコリシスやアシドリシスのエステル交換反応が挙げられる。 また、本発明のリパーゼ粉末製剤を使用して行うエステル化反応は、脂肪酸の部分エステルと脂肪酸とのエステル化反応、又は一価又は多価アルコールと脂肪酸とのエステル化反応であり、例えば、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応等が挙げられる。 さらに詳細には、油脂と油脂とのエステル交換反応として、例えば、長鎖脂肪酸のトリグリセリドである菜種油と植物由来の中鎖脂肪酸のトリグリセリドであるトリオクタン酸グリセリドをエステル交換させる反応を行うことができ、長鎖と中鎖の混合したトリグリセリドを製造することができる。 また、油脂と脂肪酸によるアシドリシスを使ったエステル交換反応としては、リパーゼの持つ1,3-特異性リパーゼを大いに利用した構造油脂の製造をすることができる。グリセリン骨格の2位に特定の脂肪酸を残して1,3位の脂肪酸を目的の脂肪酸に置き換えるものである。得られたものはチョコレート等に使用する油脂へ利用でき、また特定の栄養効果を持つ油脂へ利用できる。 本発明のリパーゼ粉末製剤を用いたエステル交換反応やエステル化反応の条件については、特に限定するものではなく、常法により行うことができる。 一般的には、加水分解の原因となる水分の混入を避けながら、常圧又は減圧下にて行なわれる。反応温度としては、使用する原料及び原料を混合した混合物の凝固点にもよるが、20〜80℃程度で行うことが好ましく、凝固点により限定されなければ、40〜60℃で行うことがより好ましい。 また、リパーゼ粉末製剤の反応原料への添加量としては、0.05〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。最適な量は、反応温度、設定する反応時間、得られたリパーゼ粉末製剤の活性等により決定される。反応終了後、リパーゼ粉末製剤は濾過・遠心分離等により除かれ、製造が不可能な活性に低下するまで繰り返し使用(安定性の評価)できる。 したがって、通常、高価であるリパーゼは、できるだけ少量で高い活性と高い安定性とを同時にリパーゼ粉末製剤に付与できることが望ましい。 このようにして得られたエステル交換物又はエステル化物は、特に限定されないが、食品分野に使用されるエステル交換油脂又はエステル化油脂であることが好ましく、さらに宗教上の理由や健康上の理由などにより動物由来の蛋白や油脂を摂取できない人々のための食品又は食品添加剤を製造するのに使用できる植物油由来のエステル交換油脂又はエステル化油脂であることがより好ましい。 次に本発明を製造例及び実施例により詳細に説明する。実施例1 天野エンザイム社の商品:リパーゼDF“Amano”15−K(リパーゼDともいう)の酵素溶液(150000U/ml)に豆乳(脂肪含有量が20質量%の大豆粉末分散液:めいらく(株)社製)を攪拌しながら3倍量加え、0.5NのNaOH溶液でpH7.8に調整後(液温度:室温)、入口温度130℃で噴霧して噴霧乾燥(東京理科器械(株)社、SD-1000型)を行った。得られたリパーゼ粉末製剤の95質量%が粒径1〜100μmであった。比較例1 豆乳を添加しない以外は、実施例1と同様にして、リパーゼ粉末製剤を得た。 実施例1及び比較例1で得たリパーゼ粉末製剤の活性を以下の方法で測定した。リパーゼ活性の測定方法 1,2,3-トリオレオイルグリセリンと1,2,3-トリオクタノグリセリンを1:1(w)の割合で混合した油に、リパーゼ粉末製剤を添加し60℃で反応させた。経時的に10μlサンプリングし、ヘキサン1.5mlで希釈後、リパーゼ粉末製剤をろ過した溶液をガスクロマトグラフィー(GC)用サンプルとした。GC(カラム:DB-1ht)で分析し下式より反応率を求めた。GC条件は、カラム温度;150℃、昇温;15℃/分、最終温度370℃である。 反応率(%)={C34area/(C24area+C34area)}×100 式中、C24は1,2,3-トリオクタノグリセリン、C34は1,2,3-トリオクタノグリセリンの一つの脂肪酸がオレイン酸に置き換わったものを示し、areaはそれらのエリア面積である。各時間における反応率に基づき、解析ソフト(origin ver.6.1)により反応速度定数k値を求めた。 リパーゼ粉末製剤の活性は、酵素溶液をそのまま噴霧乾燥させた際のk値を100とし、相対活性で表した。 結果をまとめて表1に示す。 表1の結果から、本発明によれば、リパーゼ活性が大幅に向上することがわかる。実施例2 実施例1で用いたのと同じリパーゼDF“Amano”15-Kの酵素溶液(150000U/ml)に脱臭全脂大豆粉末(脂肪含有量が23質量%、商品名:アルファプラスHS-600、日清コスモフーズ(株)社製)10%水溶液を攪拌しながら3倍量加え、0.5N NaOH溶液でpH7.8に調整後、噴霧乾燥(東京理科器械(株)社、SD-1000型)を行った(本発明1)。 脱臭全脂大豆粉末水溶液の濃度を10質量%(以下、%と略称する)、15%(本発明2)、20%(本発明3)で比較したところ10%水溶液を添加することで、最もエステル交換活性の高い粉末を得ることができた。 また、脱臭全脂大豆粉末10%溶液を予めオートクレーブ滅菌(121℃、15分)を行い、室温程度に冷やしてから上記の工程で粉末化を行う(本発明4)と更に活性の高い酵素粉末を得ることができた。 結果をまとめて表2に示す。実施例3 実施例1で用いたのと同じリパーゼDF“Amano”15-Kの酵素溶液(150000U/ml)に添加する大豆粉の種類を検討した。大豆粉水溶液の濃度は10%とした。 米国産大豆粉(商品名:Organic Soy Flour 、Arrowhead Mills社製、ミキサーでスラリーを調整後、ガーゼなどで裏漉しした溶液を使用、脂肪含有量が7質量%)又は脱脂大豆粉末(商品名:ソーヤフラワーFT-N、日清コスモフーズ(株)社製、脂肪含有量が0.2質量%、比較例2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、リパーゼ粉末製剤を製造した。 得られたリパーゼ粉末製剤のリパーゼ活性を表3に示す。 表3の結果から、大豆粉末として、脂肪含量の少ない脱脂大豆粉末を用いるとリパーゼ活性を向上させることができないことがわかる。実施例4 シアオレイン(商品名:Lipex205、Aarhuskarlshamn社製)200gに対し、実施例2(本発明1)で得られたリパーゼ粉末製剤2gを添加して60℃で20時間攪拌してエステル交換反応を行った。経時的に10μlサンプリングし、ヘキサン1.5mlで希釈後粉末酵素をろ過した溶液をガスクロマトグラフィー(GC)用サンプルとした。トリアシルグリセリド組成中のジステアロイルモノオレオイルグリセリン(SSOとSOSの混合物)の割合を反応率とした。同様に比較例1で得られたリパーゼ粉末製剤のエステル交換反応をおこなった。その結果、図1に示されるように、実施例2で得られた酵素は明らかに活性が高いことがわかった。実施例2(本発明1)で得られたリパーゼ粉末製剤とリパーゼ粉末製剤を用いた場合のエステル交換反応率の経時変化を示す。 Rhizopus oryzae由来及び/又はRhizopus delemar由来のリパーゼと、脂肪含有量が5質量%以上である大豆粉末とを含有する造粒物であることを特徴とするエステル交換用又はエステル化用リパーゼ粉末製剤。 大豆粉末の脂肪含有量が10〜25質量%である請求項1記載のリパーゼ粉末製剤。 大豆粉末が、全脂大豆粉である請求項1又は2記載のリパーゼ粉末製剤。 リパーゼ粉末製剤の90質量%以上が粒径1〜100μmである請求項1〜3のいずれか1項記載のリパーゼ粉末製剤。 Rhizopus oryzae由来及び/又はRhizopus delemar由来のリパーゼと、脂肪含有量が5質量%以上である大豆粉末を溶解・分散させた水溶液を乾燥させることを特徴とするエステル交換用又はエステル化用リパーゼ粉末製剤の製造方法。 乾燥前に水溶液のpHを7.5〜8.5に調整する請求項5記載の製造方法。 乾燥を噴霧乾燥により行なう請求項5又は6記載の製造方法。 噴霧乾燥直前に、リパーゼと大豆粉末を含有する水溶液の温度を20〜40℃に調整し、次いで70℃〜130℃の乾燥雰囲気内に噴霧する請求項5〜7のいずれか1項記載の製造方法。 請求項1〜4のいずれか1項記載のリパーゼ粉末製剤を用いて、脂肪酸エステル、脂肪酸、及びアルコールから選ばれる1種以上にエステル交換反応又はエステル化反応を行うことを特徴とする、エステル交換物又はエステル化物の製造方法。