タイトル: | 特許公報(B2)_カルボン酸クロライドの製造方法 |
出願番号: | 2009501278 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07C 51/60,C07C 51/64,C07C 55/36,C07C 53/42 |
小林 剛史 城戸 清弥 長友 昭憲 JP 5172820 特許公報(B2) 20130111 2009501278 20080227 カルボン酸クロライドの製造方法 三井化学株式会社 000005887 杉村 憲司 100147485 小林 剛史 城戸 清弥 長友 昭憲 JP 2007051879 20070301 20130327 C07C 51/60 20060101AFI20130307BHJP C07C 51/64 20060101ALI20130307BHJP C07C 55/36 20060101ALI20130307BHJP C07C 53/42 20060101ALI20130307BHJP JPC07C51/60C07C51/64C07C55/36C07C53/42 C07C 51/60、51/64、53/42、55/36 4 JP2008053422 20080227 WO2008105464 20080904 9 20100708 神野 将志 本発明は、精密化学品、医薬品、農薬、ポリエステル等の有用な中間体として使用されるカルボン酸クロライドの製造方法に関し、特に、熱安定性が悪く蒸留精製が困難な、あるいは高沸点で実用上蒸留が困難なカルボン酸クロライドを製造するのに有用な製造方法に関する。 通常、カルボン酸クロライドは、ホスゲン、塩化オキザリル、三塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル等の塩素化剤とカルボン酸との反応により製造される。その際、反応速度を向上させる目的で触媒としてアミド型化合物を添加する場合には、塩素化剤とアミド型化合物とが反応してヴィルスマイヤー(Vilsmeier)試薬型化合物(いわゆるクロロイミニウム塩)を形成し、酸クロライド合成反応の活性種となる。しかしながら、これらヴィルスマイヤー試薬型化合物は、その高活性ゆえに、残存すると次工程で副反応や着色の原因となる事が多い。 原料のカルボン酸の種類または生成したカルボン酸クロライドの種類にもよるが、通常、ヴィルスマイヤー試薬型化合物は、反応終了後に褐色〜黒色のタール状で反応容器の底に相分離して沈降するため、デカンテーション等により該ヴィルスマイヤー試薬型化合物を分離した後に、蒸留精製によりカルボン酸クロライドを単離する。従って、通常は、カルボン酸クロライドとヴィルスマイヤー試薬型化合物とを容易に分離できるため、問題とはならない。また、ヴィルスマイヤー試薬型化合物の分離が不十分な場合でも、熱処理によりヴィルスマイヤー試薬型化合物を高分子化し、沸点差あるいは溶解度差を利用して精製する方法も知られている。 しかしながら、生成するカルボン酸クロライドが熱安定性に欠けたり、高沸点で実質的に蒸留困難な場合もある。また、工業化レベルでの製造においては、真空ユニットの能力、材質の面で大きな負荷となるため蒸留を断念せざるを得ない事もある。このような場合には、蒸留精製が出来ないため、完全には分離できなかった溶存分のヴィルスマイヤー試薬型化合物を含んだ反応混合液の状態、即ち、粗体のままの使用を余儀なくされる。その場合、ヴィルスマイヤー試薬型化合物の影響で副反応や着色の問題が避けられない。 また、原料カルボン酸の種類によっては融点が高く、溶媒の存在下でしか反応できない場合が多く、大抵の場合、上述したようなヴィルスマイヤー試薬型化合物の相分離も観られない。そのため、ヘキサン等の適当な貧溶媒を添加してヴィルスマイヤー試薬型化合物を強制的に相分離させるか、あるいは、蒸留せずにヴィルスマイヤー試薬型化合物の全量を含んだ状態で使用する事を余儀なくされる。 ヘキサン等の溶媒を使用する場合、カルボン酸クロライドの2重量倍程度を必要とし、容積効率を悪化させるだけでなく、溶媒の分離回収などコスト面でも負荷がかかる。一方、設備的問題がクリアされ蒸留できる環境が整っている場合には、ヴィルスマイヤー試薬型化合物を含んだままで蒸留を行う事も可能であるが、骨格バランスが崩れ収率が低い等の不具合がある。 上述の課題を解決する手法として、カルボン酸に対して塩素化剤を理論量よりも若干少ない量で使用し、微量の原料カルボン酸を残す事で反応終了後に上記ヴィルスマイヤー試薬型化合物を残存させない方法も知られている。しかしながら、工業レベルで仕込み量の微調整を実施するのは困難であり、実現のためには設備面での対応にコストがかかる。特に、塩素化剤として工業的に広く使用されているホスゲンはガスとして供給されるため、仕込み量の調整はより困難である。 さらに、原料がジカルボン酸の場合は系が複雑である。即ち、塩素化剤不足分が原料ジカルボン酸の残存量と等しくなく、モノ酸クロライド体や、ジカルボン酸の種類によっては酸無水物を生成するために、塩素化剤仕込み量の調節で上記ヴィルスマイヤー試薬型化合物を残存させない処方は、実質的に不可能である。 また、反応終了後または反応中に塩素と接触させる事で色相を改善する方法(特開2002−363130号)や、反応終了後または反応中に塩化水素を接触させる事で色相を改善する方法(特表2003−509393号)も知られているが、色相の改善は観られるもののヴィルスマイヤー試薬型化合物が除去される事がなく、副反応が起こり得るリスクは解消できていない。 そこで、本発明は、熱安定性に欠けるカルボン酸クロライドや、高沸点で実質的に蒸留困難なカルボン酸クロライド中のヴィルスマイヤー試薬型化合物を効率良く、且つ、簡便な操作で分解し、次工程に悪影響を及ぼす事のない、カルボン酸クロライドの製造方法を提供する事を課題とする。 本発明者らは、鋭意検討した結果、塩素化剤とカルボン酸の反応終了後、過剰の塩素化剤を除去した後さらに原料カルボン酸を添加する事で、ヴィルスマイヤー試薬型化合物が反応に消費され、触媒に戻る事を見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、アミド型化合物およびウレア型化合物からなる群から選択される少なくとも1種の触媒の存在下、塩素化剤とカルボン酸とを反応させ、該反応後に過剰の塩素化剤を系外に除去し、その後、さらに前記触媒に対して1.0〜3.0当量の原料カルボン酸を系に添加して、系内に残存する反応活性種たるヴィルスマイヤー(Vilsmeier)試薬型化合物を分解することを特徴とする、カルボン酸クロライドの製造方法である。 本発明によれば、熱安定性に欠けるカルボン酸クロライドや、高沸点で実質的に蒸留困難なカルボン酸クロライド中に残存する活性種たるヴィルスマイヤー試薬型化合物を効率良く、且つ、簡便な操作で分解する事が可能となり、これにより蒸留精製工程を経なくても次工程に悪影響を及ぼす事のない高品質のカルボン酸クロライドを得る事が出来る。 以下に、本発明を詳細に説明する。本発明に使用されるカルボン酸としては、炭素数16〜30の飽和または不飽和の脂肪族カルボン酸、並びに、炭素数3〜18の脂肪族ジカルボン酸(即ち、2価の脂肪族カルボン酸)および脂環式ジカルボン酸が挙げられる。なお、本発明においては、これらカルボン酸の中でも、炭素数3〜12の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。 炭素数16〜30の飽和または不飽和の脂肪族カルボン酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。これら脂肪族カルボン酸から誘導される、パルミチン酸クロライド、ステアリン酸クロライド、アラキジン酸クロライド、ベヘン酸クロライド、リグノセリン酸クロライド、オレイン酸クロライド、リノール酸クロライド、α-リノレン酸クロライド、γ-リノレン酸クロライド、アラキドン酸クロライド等のカルボン酸クロライドは、沸点が高く、実質的に蒸留が困難である。 また、炭素数3〜18のジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。これらのジカルボン酸は、融点が高く、溶媒存在下でしか反応できないため、ヴィルスマイヤー試薬型化合物がタール状の沈殿として沈降する現象が起こりにくく、生成したジカルボン酸ジクロライドとの分離が困難である。また、これらのジカルボン酸から誘導される、マロン酸ジクロライド、コハク酸ジクロライド、フマル酸ジクロライド、マレイン酸ジクロライド、グルタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、スベリン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド、1,10-デカンジカルボン酸ジクロライド、1,12-ドデカンジカルボン酸ジクロライド、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸ジクロライド等の脂肪族ジカルボン酸ジクロライド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド、シクロヘキセンジカルボン酸ジクロライド等の脂環式ジカルボン酸ジクロライド等のジカルボン酸ジクロライドは、熱安定性に乏しいものが多く、蒸留中に骨格バランスを崩すなどの不具合もある。 本発明に使用される塩素化剤としては、ホスゲン、塩化オキザリル、三塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル等が挙げられる。これらの中では、塩素化剤自身および副生化合物が容易に系外に除去可能なホスゲン、塩化オキザリルおよび塩化チオニルが好ましく使用される。また、工業規模では、ホスゲンが好適に使用される。 本発明において使用される塩素化剤の量は、通常は最初に仕込んだカルボン酸のカルボキシル基に対して1.02〜2.0当量、好ましくは1.05〜1.5当量である。この範囲より少ない使用量では、十分に反応が進行しない。一方、この範囲より多く使用する場合は、未反応の塩素化剤の処理に多大な設備と試剤を必要とする。 本発明において、塩素化剤とカルボン酸の反応温度は特に限定されず、原料カルボン酸の種類や塩素化剤の種類により異なるが、通常−20℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃、さらに好ましくは40℃〜80℃で行われる。 本発明の塩素化剤とカルボン酸の反応においては、有機溶剤を使用する事が出来る。一般にカルボン酸類は炭素鎖が短い場合は融点が低く、上述の反応温度において液体となる場合が多く、無溶媒での反応が可能である。しかしながら、炭素鎖の長いカルボン酸あるいはジカルボン酸は、融点以下での反応を余儀なくされるため、その溶解または懸濁を目的として有機溶剤を使用する事が出来る。 本発明において原料カルボン酸の溶解または懸濁を目的として使用される有機溶媒としては、実質的に塩素化剤あるいはヴィルスマイヤー試薬型化合物と反応しないものであれば特に限定されず、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、アセトニトリル等のニトリルが挙げられる。 本発明において塩素化剤とカルボン酸の反応に使用される触媒としては、塩素化剤と反応してヴィルスマイヤー試薬型化合物を形成し得るアミド型化合物またはウレア型化合物であれば特に限定されず、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド型化合物、1,3-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、テトラブチル尿素等のウレア型化合物が挙げられる。これらの中でも、DMF、テトラメチル尿素およびDMIが好ましく、汎用性、価格および対応するヴィルスマイヤー試薬型化合物の反応性の観点から、DMFが特に好ましい。 本発明において使用される触媒の量は特に限定されず、塩素化剤の種類およびカルボン酸の種類により異なるが、通常はカルボン酸のカルボキシル基に対して0.1mol%〜10mol%、好ましくは0.5mol%〜5mol%、さらに好ましくは1mol%〜3mol%の範囲で使用される。この範囲より少ない使用量では、反応速度が遅く、反応に長時間を要する傾向がある。また、この範囲より多く使用する場合は、反応温度の異常上昇など反応を制御できない可能性がある。また、この範囲以上に使用しても反応速度の向上が観られない場合もある。 本発明の製造方法において、塩素化剤およびカルボン酸の仕込み方法は特に限定されず、溶媒の存在下または非存在下で塩素化剤およびカルボン酸を仕込んだ後に触媒を一括または逐次装入して反応を開始する方法や、溶媒の存在下または非存在下でカルボン酸および触媒を仕込んだ後に塩素化剤を一括または逐次装入して反応を開始する方法などが挙げられる。なお、塩素化剤としてホスゲン(ガス)を使用する場合は、溶媒の存在下または非存在下でカルボン酸および触媒を仕込んで所定の反応温度に昇温した後に、ホスゲンガスを吹き込みながら反応を行う。ホスゲンガスの吹き込み時間は反応温度や触媒量にも依るが、概ね2時間〜20時間かけて吹き込むことが好ましい。これより吹き込み速度が速い場合は、反応に関与せずショートパスして系外へ逃げるホスゲンが増えるだけで、効率が悪い。一方、これより吹き込み速度が遅い場合は、反応に長時間を要し、生産効率が悪い。 本発明の製造方法において、反応終了後の反応液中には過剰の塩素化剤、反応副生物および塩素化剤と触媒から生成するヴィルスマイヤー試薬型化合物が存在する。反応副生物とは、例えば塩素化剤としてホスゲンを使用した場合は塩酸および二酸化炭素の事を言う。これら反応副生物および過剰の塩素化剤は、常圧または減圧下で系外へ留去する。特に塩素化剤としてホスゲンを使用する場合は、塩素化剤自身も反応副生物も常温でガス(気体)であり、反応マスに窒素ガスを吹き込むだけで容易に留去できる。この際、使用した溶媒を同時に留去しても構わないし、溶媒を残したまま、カルボン酸添加によるヴィルスマイヤー試薬型化合物の分解を行なっても良い。 本発明の製造方法において、ヴィルスマイヤー試薬型化合物の分解とは、過剰の塩素化剤と反応副生物を系外に留去した後、系内に残存するヴィルスマイヤー試薬型化合物にカルボン酸を作用させ、カルボン酸をカルボン酸クライドへ、ヴィルスマイヤー試薬型化合物を塩酸と触媒へ変換させる事を言う。添加するカルボン酸の量は、使用した触媒に対して1.0〜3.0当量、好ましくは1.5〜2.5当量である。この範囲未満では、化学量論量に不足しておりヴィルスマイヤー試薬型化合物が残存する事となる。一方、この範囲を超えて使用する場合、目的のカルボン酸クロライドと添加したカルボン酸とが作用し、酸無水物を生成したり、ジカルボン酸ジクロライド/ジカルボン酸モノクロライド間の平衡等により、実質的に目的のカルボン酸クロライドの純度が低下する恐れがある。 本発明の製造方法において、残存するヴィルスマイヤー試薬型化合物と添加カルボン酸との反応温度は特に限定されず、通常、前工程の塩素化剤とカルボン酸との反応温度が採用される。なお、希薄濃度での反応となるため反応が進行しにくい場合は、適宜温度を上げても良い。 本発明の製造方法において、残存するヴィルスマイヤー試薬型化合物と添加カルボン酸との反応時間は特に限定されず、通常0.5〜10時間の間で設定される。 かくして得られたカルボン酸クロライドは、そのまま、あるいは溶媒を留去した後に種々の反応に用いる事ができる。溶媒を留去する際の温度は、得られたカルボン酸クロライドの熱安定性により適宜設定される。通常は常圧または減圧下で20℃〜100℃、好ましくは30℃〜80℃で行なわれる。<実施例> 以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。(実施例1) 292.3gのトルエンにアジピン酸292.3g(2.0mol)を懸濁させ、ジメチルホルムミド(DMF)4.39g(0.06mol:3mol%/アジピン酸)を添加した後、50℃〜55℃まで昇温した。同温度を維持しつつ、フローメーターを通じてホスゲンガスを45g/hrの速度で吹き込みながら反応を行なった。トータルで約10hr吹き込んだ(全ホスゲン:4.4mol)。その後、同温度で窒素を48L/hrで2hr吹き込み、溶存するホスゲンおよび塩酸ガスを留去した。反応液中にはヴィルスマイヤー試薬型化合物が浮遊しており、一部フラスコ底部にペースト状に存在していた。その後、アジピン酸5.26g(0.036mol:1.2当量/DMF)を添加し1hr攪拌を行なった。攪拌中に、ヴィルスマイヤー試薬型化合物の浮遊物やアジピン酸の結晶は完全に溶解した。その後、48L/hrで窒素を吹き込み、塩酸ガスを留去し、645.4gの反応液を得た。GC分析を行なった結果、アジピン酸ジクロライドは56.7wt%(2.0mol)であった(反応収率98.2%/全アジピン酸)。その後、70℃のオイルバス下10torrでトルエンを留去した。最終的な内温は69℃に達した。得られた粗アジピン酸ジクロライドは371.5gであり、GC分析の結果、アジピン酸ジクロライド:97.1wt%、トルエン:1.3wt%、DMF:0.48wt%、アジピン酸モノクロライド:0.43wt%であった。アジピン酸ジクロライドの純度換算収率は96.8%であった。(実施例2) 236.2gのトルエンにコハク酸236.18g(2.0mol)を懸濁させ、ジメチルホルムミド(DMF)1.46g(0.02mol:1mol%/コハク酸)を添加した後、55℃まで昇温した。同温度を維持しつつ、フローメーターを通じてホスゲンガスを25g/hrの速度で吹き込みながら反応を行なった。トータルで約16hr吹き込んだ(全ホスゲン:4.1mol)。その後、同温度で窒素を48L/hrで2hr吹き込み、溶存するホスゲンおよび塩酸ガスを留去した。反応液中にはヴィルスマイヤー試薬型化合物が浮遊しており、一部フラスコ底部にペースト状に存在していた。その後、コハク酸2.60g(0.022mol:2.2当量/DMF)を添加し1hr攪拌を行なった。攪拌中に、ヴィルスマイヤー試薬型化合物の浮遊物やコハク酸の結晶は完全に溶解した。その後、48L/hrで窒素を吹き込み、塩酸ガスを留去し、553.5gの反応液を得た。GC分析を行なった結果、コハク酸ジクロライドは55.62wt%(1.99mol)であった(反応収率98.2%/全コハク酸)。その後、70℃のオイルバス下20torrでトルエンを留去した。最終的な内温は70℃に達した。得られた粗コハク酸ジクロライドは311.4gであり、GC分析の結果、コハク酸ジクロライド:96.4wt%、トルエン:2.1wt%、DMF:0.51wt%、コハク酸モノクロライド:0.6wt%であった。コハク酸ジクロライドの純度換算収率は95.8%であった。(実施例3) 250.0gのトルエンにステアリン酸284.5g(1.0mol)を懸濁させ、ジメチルホルムミド(DMF)2.2g(0.03mol:3mol%/ステアリン酸)を添加した後、50℃まで昇温した。同温度を維持しつつ、フローメーターを通じてホスゲンガスを20g/hrの速度で吹き込みながら反応を行なった。トータルで約5hr吹き込んだ(全ホスゲン:1.1mol)。その後、同温度で窒素を48L/hrで2hr吹き込み、溶存するホスゲンおよび塩酸ガスを留去した。反応液中にはヴィルスマイヤー試薬型化合物が浮遊しており、一部フラスコ底部にペースト状に存在していた。その後、ステアリン酸10.24g(0.036mol:1.2当量/DMF)を添加し1hr攪拌を行なった。攪拌中に、ヴィルスマイヤー試薬型化合物の浮遊物やステアリン酸の結晶は完全に溶解した。その後、48L/hrで窒素を吹き込み、塩酸ガスを留去し、562.4gの反応液を得た。GC分析を行なった結果、ステアリン酸クロライドは54.9wt%(1.02mol)であった(反応収率98.5%/全ステアリン酸)。その後、70℃のオイルバス下10torrでトルエンを留去した。最終的な内温は69℃に達した。得られた粗ステアリン酸クロライドは311.2gであり、GC分析の結果、ステアリン酸クロライド:98.2wt%、トルエン:1.1wt%、DMF:0.51wt%であった。ステアリン酸クロライドの純度換算収率は97.4%であった。(比較例1) 292.3gのトルエンにアジピン酸292.3g(2.0mol)を懸濁させ、ジメチルホルムミド(DMF)4.39g(0.06mol:3mol%/アジピン酸)を添加した後、50℃〜55℃まで昇温した。同温度を維持しつつ、フローメーターを通じてホスゲンガスを45g/hrの速度で吹き込みながら反応を行なった。トータルで8.3hr吹き込んだ(全ホスゲン:3.8mol)。その後、同温度で窒素を48L/hrで2hr吹き込み、溶存する微量のホスゲンおよび塩酸ガスを留去した。反応液は透明均一で不溶分は観られなかった。得られた反応液603.3gをGC分析した結果、アジピン酸クロライドは48wt%であり、反応収率は79%/アジピン酸であった。その後、70℃のオイルバス下10torrでトルエンを留去した。最終的な内温は68℃に達した。得られた粗アジピン酸ジクロライドは353.7gであり、GC分析の結果、アジピン酸ジクロライド:81.0wt%、トルエン:2.0wt%、DMF:0.48wt%、アジピン酸モノクロライド:14.8wt%であった。アジピン酸ジクロライドの純度換算収率は78.3%/アジピン酸であった。(比較例2) 236.2gのトルエンにコハク酸236.18g(2.0mol)を懸濁させ、ジメチルホルムミド(DMF)4.39g(0.06mol:3mol%/コハク酸)を添加した後、55℃まで昇温した。同温度を維持しつつ、フローメーターを通じてホスゲンガスを33g/hrの速度で吹き込みながら反応を行なった。トータルで約12hr吹き込んだ(全ホスゲン:4.1mol)。その後、同温度で窒素を48L/hrで2hr吹き込み、溶存するホスゲンおよび塩酸ガスを留去した。反応液中にはヴィルスマイヤー試薬型化合物が浮遊しており、一部フラスコ底部にペースト状に存在していた。反応液553.5gのGC分析を行なった結果、コハク酸ジクロライドは55.6wt%(1.99mol)であった(反応収率99.5%/コハク酸)。その後、減圧下、70℃から分留を開始し、最終的に内温100℃まで達した時点で終了した。トルエン留分233.1g、初留分28.4g、中間留分12.2g、主留分248.1gおよび釜残34.7gであった。中間留分のコハク酸ジクロライドは98.8wt%、主留分のコハク酸ジクロライドは99.9%であった。中間留分および主留分を合わせたコハク酸ジクロライドの収率は83.9%/コハク酸であった。(比較例3) 146.14gのトルエンにアジピン酸146.14g(1.0mol)を懸濁させ、ジメチルホルムミド(DMF)1.46g(0.02mol:2mol%/アジピン酸)を添加した後、50℃〜55℃まで昇温した。同温度を維持しつつ、フローメーターを通じてホスゲンガスを27g/hrの速度で吹き込みながら反応を行なった。トータルで約18hr吹き込んだ(全ホスゲン:4.8mol)。その後、同温度で窒素を48L/hrで2hr吹き込み、溶存するホスゲンおよび塩酸ガスを留去した。反応液中にはヴィルスマイヤー試薬型化合物が浮遊しており、一部フラスコ底部にペースト状に存在していた。その後、アジピン酸7.3g(0.05mol:5当量/DMF)を添加し1hr攪拌を行なった。攪拌中に、ヴィルスマイヤー試薬型化合物の浮遊物やアジピン酸の結晶は完全に溶解した。その後、48L/hrで窒素を吹き込み、塩酸ガスを留去し、321.2gの反応液を得た。GC分析を行なった結果、アジピン酸ジクロライドは55.7wt%(0.98mol)であった(反応収率93.0%/全アジピン酸)。その後、70℃のオイルバス下10torrでトルエンを留去した。最終的な内温は69℃に達した。得られた粗アジピン酸ジクロライドは192.7gであり、GC分析の結果、アジピン酸ジクロライド:90.7wt%、トルエン:2.8wt%、DMF:0.43wt%、アジピン酸モノクロライド:5.1wt%であった。アジピン酸ジクロライドの純度換算収率は90.9%であった。 実施例1〜3から明らかなように、本発明の方法によれば、原料のカルボン酸の種類を代えることで、様々なカルボン酸クロライドを製造できることが分かる。 実施例1および比較例1から明らかな様に、ヴィルスマイヤー試薬型化合物を残存させないためにホスゲン量を理論量より若干少ない量にした場合、ジクロライドおよびモノクロライドの平衡により仕込み比以上にモノクロライドが生成する。 実施例2および比較例2から明らかな様に、ヴィルスマイヤー試薬型化合物を含んだまま蒸留操作を行なった場合、主留分として得られるカルボン酸ジクロライドは高品質であるものの、骨格バランスが崩れ、収率が低下する。 また、実施例1および比較例3から明らかな様に、ヴィルスマイヤー試薬型化合物を分解するために必要以上にカルボン酸を添加した場合、モノクロライド生成量が増えてしまい品質が低下するため、過剰の塩素化剤の除去後に添加するカルボン酸の量は、触媒に対して3.0当量以下とする必要があることが分かる。 アミド型化合物およびウレア型化合物からなる群から選択される少なくとも1種の触媒の存在下、塩素化剤とカルボン酸とを反応させ、該反応後に過剰の塩素化剤を系外に除去し、その後、さらに前記触媒に対して1.0〜3.0当量の原料カルボン酸を系に添加して、系内に残存するヴィルスマイヤー試薬型化合物を分解することを特徴とする、カルボン酸クロライドの製造方法。 前記塩素化剤がホスゲンである請求項1に記載のカルボン酸クロライドの製造方法。 前記触媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラメチル尿素および1,3-ジメチルイミダゾリジノンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のカルボン酸クロライドの製造方法。 前記カルボン酸が、炭素数3〜12の脂肪族ジカルボン酸である請求項1〜3のいずれかに記載のカルボン酸クロライドの製造方法。