生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_発毛促進剤
出願番号:2009500199
年次:2013
IPC分類:A61K 38/00,A61K 8/64,A61P 17/14,A61Q 7/00,C12Q 1/02,G01N 33/15,G01N 33/50,C12N 5/10


特許情報キャッシュ

今村 亨 木村 美穂 川野 光子 辻野 希 倉持 明子 織田 裕子 本村 香織 鈴木 理 浅田 眞弘 亀山 あずさ 栂谷内 純恵 岡 修一 JP 5360593 特許公報(B2) 20130913 2009500199 20080219 発毛促進剤 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 今村 亨 木村 美穂 川野 光子 辻野 希 倉持 明子 織田 裕子 本村 香織 鈴木 理 浅田 眞弘 亀山 あずさ 栂谷内 純恵 岡 修一 JP 2007038223 20070219 20131204 A61K 38/00 20060101AFI20131114BHJP A61K 8/64 20060101ALI20131114BHJP A61P 17/14 20060101ALI20131114BHJP A61Q 7/00 20060101ALI20131114BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20131114BHJP G01N 33/15 20060101ALI20131114BHJP G01N 33/50 20060101ALI20131114BHJP C12N 5/10 20060101ALN20131114BHJP JPA61K37/02A61K8/64A61P17/14A61Q7/00C12Q1/02G01N33/15 ZG01N33/50 ZC12N5/00 102 A61K 38/00-38/58 A61K 39/395 A61K 45/00-45/08 A61K 48/00 A61K 36/42 CAPLUS(STN) MEDLINE(STN) BIOSIS(STN) EMBASE(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2006−83082(JP,A) 特開2003−176213(JP,A) 特開2006−117659(JP,A) 10 JP2008052781 20080219 WO2008102783 20080828 20 20091120 2013009738 20130527 (出願人による申告)平成18年度文部科学省「ベンチャー開発戦略研究センター」委託研究、産業技術強力化法第19条の適用を受ける特許出願 内藤 伸一 大久保 元浩 川口 裕美子 本発明は、毛包(毛根と同義)の成長を抑制する物質に対する阻害物質を含有する毛髪成長促進剤、発毛促進剤、脱毛症治療剤、及びそれらのスクリーニング方法に関する。 繊維芽細胞増殖因子(以下FGFと称する)といった様々なポリペプチド増殖因子が皮膚組織において発現していることが知られている。マウス及びヒトにおいては、FGFは22種類の異なる遺伝子によってコードされる(非特許文献1)。特に、FGF1、FGF2、FGF5、FGF7、FGF10、FGF13及びFGF22は、皮膚細胞及び毛包細胞において発現し、毛髪成長及び皮膚再生を制御していることが報告されている(非特許文献2〜17、特許文献1参照)。 上掲した非特許文献2〜17を含む他の文献から、FGFが皮膚細胞の増殖及び分化に重要な役割を担っていることが示唆される。しかしながら、毛包の成長を促進する作用、それに伴う毛髪成長促進作用及び発毛促進作用に対して、FGF群がどのように関与するのかといった知見は依然として不明のままである。 上記の背景にあって発明者らは以前、FGF18をマウス休止期皮膚に単回投与することにより、発毛を誘導することを見いだし、FGF18を毛包の成長期を誘導して毛成長を促進する物質として報告した(非特許文献19、特許文献2)。OrnitzDM, Itoh N: Fibroblast growth factors. Genome Biol 2:REVIEWS3005, 2001duCros DL: Fibroblast growth factor and epidermal growth factor in hairdevelopment. J Invest Dermatol 101:106S-113S. 1993duCros DL, Isaacs K, Moore GP: Distribution of acidic and basic fibroblast growthfactorsin ovine skin during follicle morphogenesis. J Cell Sci 105:667-674, 1993HebertJM, Rosenquist T, Gotz J, Martin GR: FGF5 as a regulator of the hair growthcycle: Evidence from targeted and spontaneous mutations. Cell 78:1017-1025,1994DanilenkoDM, Ring BD, Yanagihara D, Benson W, Wiemann B, Starnes CO, Pierce GF:Keratinocyte growth factor is an important endogenous mediator of hair folliclegrowth, development, and differentiation. American J Pathol 147:145-154, 1995MarcheseC, Chedid M, Dirsch OR, et al: Modulation of keratinocyte growth factor and itsreceptor in reepithelializing human skin. J Exp Med 182:1369-1376, 1995GuoL, Degenstein L, Fuchs E: Keratinocyte growth factor is required for hairdevelopment but not for wound healing. Genes Dev 10:165-175, 1996RosenquistTA, Martin GR: Fibroblast growth factor signalling in the hair growth cycle:Expression of the fibroblast growth factor receptor and ligand genes in themurine hair follicle. Developmental Dynamics 205:379-386, 1996Petho-SchrammA, Muller HJ, Paus R: FGF5 and the murine hair cycle. Arch Dermatol Res288:264-266, 1996MitsuiS, Ohuchi A, Hotta M, Tsuboi R, Ogawa H: Genes for a range of growth factorsand cyclin-dependent kinase inhibitors are expressed by isolated human hairfollicles. Br J Dermatol 137:693-698, 1997OrtegaS, Ittmann M, Tsang SH, Ehrlich M, Basilico C: Neuronal defects and delayedwound healing in mice lacking fibroblast growth factor-2. Proc Natl Acad Sci USA 95:5672-5677, 1998SuzukiS, Kato T, Takimoto H, et al: Localization of rat FGF-5 protein in skinmacrophage-like cells and FGF-5S protein in hair follicle: Possible involvementof two Fgf-5 gene products in hair growth cycle regulation. J Invest Dermatol111:963-972, 1998SuzukiS, Ota Y, Ozawa K, Imamura T: Dual-mode regulation of hair growth cycle by twoFgf-5 gene products. J Invest Dermatol 114:456-463, 2000NakatakeY, Hoshikawa M, Asaki T, Kassai Y, Itoh N: Identification of a novel fibroblastgrowth factor, FGF-22, preferentially expressed in the inner root sheath of thehair follicle. Biochem Biophys Acta 1517:460-463, 2001StennKS, Paus R: Controls of hair follicle cycling. Physiol Rev 81:449-494, 2001BeyerTA, Werner S, Dickson C, Grose R: Fibroblast growth factor 22 and its potentialrole during skin development and repair. Exp Cell Res 287:228-236, 2003KawanoM, Suzuki S, Suzuki M, Oki J, Imamura T: Bulge- and basal layer-specificexpression of fibroblast growth factor 13 (FHF-2) in mouse skin. J Invest Dermatol122:1084-1090, 2004SuzukiS, Ota Y, Ozawa K, Imamura T: Dual-mode regulation of hair growth cycle by twoFgf-5 gene products. J Invest Dermatol 114:456-463, 2000Kawano M, Komi-Kuramochi A, Asada M, Suzuki M, Oki J, Jiang J, ImamuraT. Comprehensive analysis of FGF and FGFR expression in skin: FGF18 is highlyexpressed in hair follicles and capable of inducing anagen from telogen stagehair follicles. J Invest Dermatol. 2005, 124(5):877-885Zhang X, Ibrahimi OA, Olsen SK, Umemori H,Mohammadi M, Ornitz DM. Receptor Specificity of the Fibroblast Growth FactorFamily: THE COMPLETE MAMMALIAN FGF FAMILY. J Biol Chem 2006,281(23):15694-15700特開平4-224522号公報特開2006-83082号公報 薄毛、脱毛に悩む人は多い。しかし万人に有効な発毛育毛剤は存在しない。そこで、本発明は、毛髪成長を制御する内在性因子の作用機構を解明して、毛髪の成長を阻害する内在性因子を決定し、当該内在性因子の活性もしくは発現を阻害する物質をスクリーニングし、新規な毛髪成長促進剤、発毛促進剤、脱毛症治療剤を提供することを目的としている。 また、そのためのスクリーニング方法も本発明の他の目的である。 前記したように、FGF18は、休止期毛包を有する皮膚に単回投与すると数週間の反応期間を経てから毛成長が促進されることが確認されていたことから、毛髪の成長促進作用を有する物質であると考えられていた。 しかしながら、本発明者らは、今回、休止期にあるマウス背部毛包において、抜毛によって強制的に毛包の成長期を誘導した後に、FGF18を1日1回、8日間、背部皮下に投与し、毛包部に持続的に存在させた状態での毛髪の成長状態を観察したところ、予想もしなかった驚くべき知見が得られた。 すなわち、対照群として同様な条件下で投与したリン酸緩衝生理食塩水の場合は、9日目に毛の成長が順調に進んで毛包の肥大化が起きたのに対して、FGF18投与群では毛の成長は著しく阻害された。 また、同様の条件でFGF18を連続投与した後に、投与を中止して飼育を継続すると、毛包の成長が起きた。 さらに、本発明者等は、FGF18に関する詳細な機能解析を行ったところ、毛包成長の司令塔と考えられる毛乳頭細胞において、FGF18の存在する環境下で培養後、FGF18を除くことにより、毛包成長にとって重要であるとされる増殖因子VEGFの発現レベルが上昇することを見出した。 このような知見に基づけば、以前の動物実験の結果は、一回投与されたFGF18タンパク質を成体が速やかに分解/無効化した結果、むしろ「FGF18濃度が低下した場合の効果」を見ていたものと説明できることから、本発明者らは、FGF18が持続的に存在することが毛成長に抑制的に働くことを推定し、その推定を実験的に確認した。その結果、この推定が正しいことが示されたことから、本発明を完成するに至った。 FGF18が毛包内にもともと存在している内在因子であることを考慮すれば、毛包内のFGF18の活性を阻害する物質、及びFGF18遺伝子の発現を阻害する物質は、いずれも毛髪成長促進剤及び発毛促進剤及び脱毛症治療剤として用いることができる。 FGF18遺伝子の発現を阻害する物質は、動物培養細胞又は実験動物を用いてFGF18遺伝子の発現を促進するか否かをモニターすることでスクリーニングすることができる。 また、当該知見をさらに発展させて、FGF18のFGF受容体への結合を阻害するというFGF18のアンタゴニスト的な働きをする物質であれば、FGF18の活性を阻害することになるので、毛髪に対しては成長促進効果があると推定した。さらに、FGF18に結合することによりそのFGF受容体への結合を阻害するという抗体であれば、FGF18の活性を阻害することになるので、毛髪に対しては成長促進効果があると推定した。FGF18がFGF受容体サブクラスのうち少なくともFGFR1c、FGFR2c、FGFR3c、FGFR4と反応するので(非特許文献20)、当該反応性に着目してFGF18の活性を阻害する物質のスクリーニング系を開発した。 そして、当該スクリーニング系としてFGFR3c及び/またはFGFR4受容体を用い、自然界に存在する植物その他の天然物由来物質を広く探索した結果、FGF18によるFGFR3c及び/またはFGFR4受容体の活性化を阻害するいくつかの天然物由来物質を見出し、FGF18の活性阻害物質に係る本発明も完成させた。 すなわち、本発明は以下を包含する。(1) FGF18の活性阻害物質及び/又は発現抑制物質を有効成分として含有する毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤。(2) 前記FGF18の活性阻害物質がFGF18の部分ペプチドであることを特徴とする前記(1)に記載の毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤。(3) 前記FGF18の活性阻害物質が抗FGF18抗体であることを特徴とする前記(1)に記載の毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤。(4) 前記FGF18の活性阻害物質がゴーヤー抽出物であることを特徴とする前記(1)記載の毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤。(5) 前記FGF18の活性阻害物質が、FGF18の活性を阻害する活性を有するFGF18の部分ペプチドをコードするcDNAを組み込んだ発現ベクターであることを特徴とする前記(1)に記載の毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤。(6) 前記FGF18の発現抑制物質が、FGF18の発現を阻害する活性を有するsiRNAを組み込んだ発現ベクターであることを特徴とする前記(1)に記載の毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤。(7) 他の毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤を更に含むことを特徴とする前記(1)ないし(6)のいずれかに記載の毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤。(8) 前記(1)ないし(4)のいずれかに記載のFGF18の活性阻害物質をスクリーニングし、被検物質を毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤の候補とする方法であって、以下の(a)〜(c)の工程を含む方法。(a)FGFR1c、FGFR2c、FGFR3c及びFGFR4から選ばれた少なくとも1つのFGF受容体遺伝子を用いて遺伝子操作により細胞表面に強制的に発現させ、当該細胞を培養する工程、(b)(a)工程で得られた、細胞表面にFGF受容体を有する細胞系にFGF18とともに披検物質を接触させる工程、(c)(b)工程において、FGF18の細胞増殖促進活性を阻害する活性を観察した披検物質を選択する工程(9) 前記(8)に記載のFGF受容体がFGFR3cである前記(8)に記載のスクリーニング方法。(10) 前記(8)に記載のFGF受容体がFGFR4である前記(8)に記載のスクリーニング方法。(11) 前記(8)に記載のFGF受容体を細胞表面に強制的に発現させるための細胞がマウスIL-3依存性Ba/F3細胞株である前記(8)ないし(10)のいずれかに記載のスクリーニング方法。(12) 前記(1)に記載のFGF18の発現抑制物質をスクリーニングし、毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤の候補とするための方法であって、下記の(a)〜(d)の工程を含む方法。(a)FGF18遺伝子が観察可能な程度発現する動物培養細胞又は実験動物を用意する工程、(b)被検物質を、(a)の動物培養細胞に接触させるか又は実験動物に接触させるかもしくは投与する工程、(c)(b)工程後の動物培養細胞又は実験動物におけるFGF18遺伝子の発現をモニターする工程、(d)FGF18遺伝子の発現を阻害する機能を有する被検物質を選択する工程。(13) 前記(c)工程において、前記(b)工程後の実験動物又は動物培養細胞から、mRNAを抽出し、発現されたFGF18のmRNA量を解析することによりFGF18遺伝子の発現をモニターし、前記(d)工程において、披検物質を作用させない場合と比較して低いレベルのFGF18のmRNA量を観察した系を選択することにより、FGF18遺伝子の発現を阻害する機能を有する被検物質を選択することを特徴とする、(12)に記載の方法。 上記(1)〜(7)の毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤は、他のタンパク質増殖因子及び/又は毛髪成長促進剤を更に含むものであっても良い。 他のタンパク質増殖因子としては、表皮増殖因子、血小板由来増殖因子、FGFファミリーに属するFGF18以外の因子、トランスフォーミング増殖因子-α、トランスフォーミング増殖因子-β、トランスフォーミング増殖因子-βスーパーファミリーに属する因子、インシュリン様増殖因子-I及びインシュリン様増殖因子-IIを挙げることができる。上記(1)〜(7)の剤は、これら他のタンパク質増殖因子のうち一種を含むものであっても良いが、複数種を含むものであっても良い。またこれらに限定されるものではない。 毛髪成長促進剤としては、ミノキシジル、ミノキシジル類縁体、ミノキシジル誘導体、抗アンドロゲン及び5α-還元酵素阻害剤、Finasteride(プロペシア)、を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。上記(1)〜(7)の剤は、これら毛髪成長促進剤のうち一種を含むものであっても良いが、複数種を含むものであっても良い。 本発明によれば、毛包の成長を阻害している内在性の因子を抑制することによる毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤を提供することができる。本発明に係る毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤によれば、禿頭及び薄毛頭における毛髪の成長、発毛の促進及び脱毛症の治療をより効果的に達成することができる。 また、本発明に係るスクリーニング方法によれば、毛髪成長剤、発毛促進剤、脱毛症治療剤として有効な物質をスクリーニングすることができる。毛乳頭細胞の産生する毛包成長促進因子(AはVEGF、Bはnoggin)のmRNA数が、細胞の培地からFGF18が除かれると、増加することを示す図である。ControlはFGF18入りの場合、-FGF18は培地からFGF18が除かれた場合の結果を示す。FGF18を連続投与することによって、毛包の成長が抑制されることをinvivoにおいて実証した図である。図中、Aは対照液PBSを投与したマウスの皮膚切片、BはFGF18を投与したマウスの皮膚切片の顕微鏡写真である。FGF18がFGF受容体(FGFR)発現細胞の増殖を促進する効果が、FGF18部分ペプチドにより抑制されることを示す図である。FGFR3c発現細胞(R3c)、FGFR4発現細胞(R4)を用いた解析結果を示す。 A:試験物質を1 μg/mlで加えた場合の結果<対照> カラム1:FGF18以外の試料添加なし。<R3c> カラム2:(d4)。カラム3 :(d16) 。カラム4:(d18)。カラム5:(d22)。カラム6:(d37) 。カラム7:(d48)。カラム8 :(d77)。カラム9:(d95)。<R4> カラム10:(d22) 。カラム11:(d37)。カラム12:(d48)。カラム13:(d67)。カラム14:(d77)。カラム15:(d95)。 B:試験物質を100 ng/mlで加えた場合の結果<対照> カラム1:FGF18以外の試料添加なし。<R3c> カラム2:(d4)。カラム3:(d12)。カラム4:(d16)。カラム5:(d18)。カラム6:(d37)。カラム7:(d48)。カラム8:(d67)。カラム9:(d95)。<R4> カラム10:(d37)。カラム11:(d67)。ゴーヤー熱水抽出液のR4/BaF3 細胞増殖阻害作用:FGF18存在下でFGFR4/BaF3 細胞をゴーヤー熱水抽出液とともに培養することにより、ゴーヤー熱水抽出液0.083%、0.83%及び8.3%の添加によるFGF18のFGFR4/BaF3細胞の増殖促進作用に対する阻害効果を示す。ゴーヤー熱水抽出液のin vivo 解析:ゴーヤー熱水抽出液のエタノール溶液(49.5%エタノール、1%グリセロールを含有)を毛周期の休止期にあるC3H/Heマウス背部皮膚に11日間(5日目、及び6日目を除く)に渡って毎日塗布し、第10日、14日、17日、21日、24日目のマウス背部の発毛状態を発毛スコアーで示す。発明の実施するための最良の形態 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明を適用することによって、新規な毛髪成長促進剤、発毛促進剤及び脱毛症治療剤を提供することができる。これら毛髪成長促進剤、発毛促進剤、脱毛症治療剤は、FGF18の活性または発現を抑制する点、及び持続的高濃度のFGF18が毛包(毛根と呼ばれる場合もある)の成長を抑制する作用を利用する点で共通する。 毛包とは、毛を作る器官である。毛包の成長周期は、成長期(anagen)、退行期(catagen)、退行期に続く休止期(telogen)からなり、休止期の後に成長期に入るというサイクルである。一般に、マウスの実験系では、成長期は脱毛後1〜19日目の期間であり、退行期は20〜21日目の期間である。また、脱毛後、21〜22日目に休止期に入ることが知られている。成長期においては、新しい毛の成長(伸長)が活発化するとともに、皮膚内では毛包の成長が活発化して、その底部が皮膚の下部近傍に到達する。一方、休止期においては、毛包は皮膚の浅いところに小さい状態で存在する。また、成長期と休止期とでは皮膚の厚さも全く異なる。さらに有色体毛を持つマウスでは、成長期の初期にはメラニン色素が合成され、皮膚が青くなっているのを視認することができる。したがって、皮膚の外側から青い色を見て毛包の成長周期の進行を評価することもできる。また、成長期に皮膚を切開して裏側から見ると、メラニン色素を多量に含んだ毛包が高い密度で並ぶこととなるため、皮膚の裏側が黒なっているのを視認することができる。これに対して休止期においては、皮膚の裏側は白いままであることを視認することができる。例えば、マウスの実験系では、生後7〜8週齢のマウスの背中の毛は全て休止期にあり、また、生えている毛を抜くことにより、同調して成長期が開始する。1.FGF18活性阻害物質 本発明に係る新規な毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤に含まれるFGF18活性阻害物質は、例えばFGF18の部分断片であっても良い。 FGF18は、ヒトとマウスでは産生細胞の細胞質で207アミノ酸のポリペプチドとして合成され、それが細胞外に分泌される際にN末端のシグナルペプチドが切断され、181アミノ酸より成る分泌体として生理作用を発揮する。そして、7種類あるFGF受容体サブクラス(FGFR1c、FGFR1b、FGFR2c、FGFR2b、FGFR3c、FGFR3b、FGFR4)のうち少なくとも4つ、すなわちFGFR1c、FGFR2c、FGFR3c、FGFR4と反応する。 本発明において「FGF18」というとき、ヒト由来に限定されず、例えば、他の哺乳動物由来のFGF18を使用することができる。他の哺乳動物としては、マウス、ラット、ニワトリ、七面鳥、ウシ、ブタ、ヒツジ及びウサギ等を挙げることができるが、これらに限定されない。例えば、配列番号1に示すヒト由来FGF18の塩基配列に基づいて作製したプローブを定法に従って用いれば、ヒトを除く他の哺乳動物からFGF18をコードする遺伝子を単離することができる。 シグナル配列除去後のヒト由来FGF18の塩基配列及びアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び2に示す。シグナル配列除去後のマウス由来FGF18の塩基配列及びアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3及び14に示す。これら配列番号2及び14に示すアミノ酸配列を比較すると判るように、哺乳動物においてFGF18は非常に高い相同性を有しており、哺乳動物におけるFGF18の機能はほぼ同様であると理解することができる。 ところで、一般にアンタゴニストとは、受容体には結合はするが、その受容体を刺激する生体物質(リガンド)とは異なり生体反応を起こさないかまたは比較的弱い生体反応しか起こさず、また本来結合すべき生体内物質と受容体の結合を阻害し、生体応答反応を引き起こさないかまたは減弱させる物質をいう。FGF18は、上述のように、7種類あるFGF受容体サブクラスのうちの少なくともFGFR1c、FGFR2c、FGFR3c、FGFR4と反応するので、本発明において「FGF18アンタゴニスト作用」というときは、FGFR1c、FGFR2c、FGFR3c、FGFR4のいずれかの受容体を発現している細胞に対して、FGF18による応答を引き起こさないかまたは減弱させる物質をいう。FGF18アンタゴニストがFGF18の受容体への結合を妨げることになってFGF18に起因する毛髪成長抑制作用を阻害し、結果的に毛髪成長促進効果を有することになる。 FGF18アンタゴニスト作用を有するFGF18部分ペプチドの場合としてヒトFGF18の場合を例にとれば、配列番号2に示すアミノ酸配列における32〜151番目の領域は、FGFファミリーで共通性の高いコア配列と呼ばれる領域であって、この領域だけで構築される3次元構造は受容体との基本的な結合能を有しているが完全な活性を持たないと考えられることから、当該領域に対応する領域のアミノ酸配列からなる部分ペプチドは、FGF18アンタゴニスト作用を有すると考えられる部分ペプチドである。当該領域に対応するコア配列を含むFGF18部分ペプチドであって、FGFR4などの受容体への結合能は十分有しており、かつFGF18応答を引き起こすほどに十分な長さを有していない場合は、FGF18アンタゴニスト作用を有する。 実際に実験的に確かめた結果からは、図3に示されるように、配列番号14において、N末端から翻訳開始のために導入されたメチオニンを除く16個欠失した場合でもアンタゴニスト作用を及ぼし、好ましくは22個、より好ましくは77個、最も好ましくは95個のアミノ酸を欠失した部分ペプチドはさらに強いFGF18アンタゴニスト作用を有するということができる。すなわち、少なくともN末側のアミノ酸配列については、95個まで欠失しても受容体結合能を失わず、むしろアンタゴニスト作用が強まっているといえるから、N末側のアミノ酸配列は32番目から始まる上記コア配列の全てがFGF受容体の結合に必須の配列ではないことは明らかであり、N末側アミノ酸をさらに除去した場合であってもFGF18アンタゴニストであるといえる。また、このことからみて、C末側についても、コア配列のC末側に相当する、C末端から31番目までのアミノ酸を欠失した場合の部分ペプチドにFGF18アンタゴニスト作用があることは明らかである上に、さらにC末側アミノ酸配列を大きく欠失させた場合も、受容体結合能を完全には失わないことが十分期待できるから、C末端から31個以上の、例えば43個、57個、67個、82個、94個、108個、113個、125個などのアミノ酸を欠失した部分ペプチドも強いFGF18のアンタゴニスト作用のある部分ペプチドであると考えられる。そして、これはN末側とC末側を同時に除去しても当該アンタゴニスト作用が保たれることはもちろんであるから、少なくとも32〜151番目のアミノ酸配列を含有するペプチドのみならず、むしろ好ましくは77〜151、より好ましくは95〜151番目のアミノ酸配列を含むペプチドもFGF18アンタゴニスト作用を有するということができる。 また、FGF18又はFGF18反応性受容体に結合する抗体、すなわち、抗FGF18抗体や抗FGFR3c抗体、抗FGFR4抗体も同様にFGF18とその受容体との結合を阻害するので、FGF18による毛包成長抑制作用を阻害する。 そこで、本発明では、上記FGF18アンタゴニストも含めて、FGF18とその受容体との結合を阻害する物質など、FGF18の受容体を介しての作用を阻害する物質を「FGF18の活性阻害物質」という。 このような、FGF18活性阻害作用を有する物質は、FGF18とは無関係な物質群から選択された物質であっても良く、下記2.のスクリーニング方法を適用することにより、簡単にFGF18活性阻害作用を有する物質を取得することができる。本願の実施例においても、当該スクリーニング方法により、FGF18の活性阻害作用があるゴーヤー抽出物を選択し、当該ゴーヤー抽出物に、FGF18の毛包成長抑制作用を阻害し、かつ毛包成長作用があることを確認した。このように、本発明におけるFGF18の活性阻害物質は、FGF18の受容体との結合を阻害することでFGF18による毛包の成長抑制作用を阻害し、結果的に毛髪の成長促進作用を有する。 これらのFGF18の活性阻害物質が、ペプチド、タンパク質もしくは糖タンパク質の場合、これらペプチドなど自身を含む製剤として投与してもよいことはもちろんであるが、当該ペプチドなどをコードするDNAを組み込んだ発現ベクターの状態で投与することもできる。たとえば、FGF18部分ペプチドをコードするDNAを組み込んだ発現ベクターを有効成分とする製剤も、毛髪成長促進剤、発毛促進剤及び脱毛症治療剤として用いることができる。 そして、これらのFGF18の活性阻害物質は、単独で、もしくは併用して、毛髪成長促進剤、発毛促進剤及び脱毛症治療剤として用いることができる。2.FGF18活性阻害物質のスクリーニング方法 FGF18の活性阻害物質をスクリーニングし、被検物質を毛髪成長促進剤又は発毛促進剤及び脱毛症治療剤の候補とする方法は、具体的には、以下の(a)〜(c)の工程を含むものである。(a)FGFR1c、FGFR2c、FGFR3c及びFGFR4から選ばれた少なくとも1つのFGF受容体遺伝子を用いて遺伝子操作により細胞表面に強制的に発現させ、当該細胞を培養する工程、(b)(a)工程で得られた、細胞表面にFGF受容体を有する細胞系にFGF18とともに披検物質を接触させる工程、(c)(b)工程において、FGF18の細胞増殖促進活性を阻害する活性を観察した披検物質を選択する工程 ここで、FGF受容体遺伝子としては、FGF18が結合し、かつ細胞表面に受容体を有する細胞に対するFGF18の細胞増殖作用が確認されているFGFR1c、FGFR2c、FGFR3c及びFGFR4の受容体遺伝子の少なくとも1つを用いる。好ましくは、FGFR3cまたはFGFR4遺伝子を用いる。(b)工程で、被検物質を細胞に接触させる場合に、典型的には、細胞培養液に被検物質を直接投与するが、特に被検物質がタンパク質の場合などは、当該被検物質をコードする遺伝子をFGF受容体発現細胞中に導入することも可能である。 また、FGF受容体を細胞表面に強制的に発現させるための細胞は、培養可能な細胞であればどのような細胞でもよいが、好ましくはマウスIL-3依存性Ba/F3細胞株である。 スクリーニングに際しては、48時間以上、例えば72時間程度培養し、FGF18を単独で添加した場合に比べ、FGF受容体発現細胞の細胞増殖能が、5%以上、好ましくは10%以上低下していることを目安にスクリーニングすることが好ましい。 そして、FGF受容体遺伝子を導入していない親細胞は対照試験に用いることができ、披検物質を用いて(b)工程で添加したFGF18をIL-3に置き換えて同様の操作を行い、披検物質がこれら親細胞に対してはIL-3の細胞増殖促進活性を阻害しないことを確認する工程を設けることが好ましい。3.FGF18の発現抑制物質及びそのスクリーニング方法 FGF18は毛包内に存在する内在因子であるので、毛包細胞内でのFGF18遺伝子の転写及び翻訳を阻害する物質、すなわちFGF18遺伝子の発現を低下させる物質も毛包細胞中のFGF18濃度を低下させて、FGF18による毛髪成長の促進作用を引き起こすことができるから、毛髪成長促進作用及び発毛作用を有する。 このようなFGF18遺伝子の発現を阻害する物質は、FGF18遺伝子に対するsiRNAまたはその発現ベクターとして公知の方法で設計することができ、その活性は、動物培養細胞又は実験動物を用いてFGF18遺伝子の発現を阻害するか否かをモニターすることで確認することができる。 また別に、このようなFGF18遺伝子の発現を阻害する物質は、動物培養細胞又は実験動物を用いてFGF18遺伝子の発現を阻害するか否かをモニターすることでスクリーニングすることができる。 具体的には、先ず、FGF18遺伝子を観察可能な程度に発現する動物培養細胞又は実験動物を用意し、被検物質を当該動物培養細胞もしくは実験動物に接触させるか又は実験動物に投与する。なお、実験動物とは、ヒトを除く、例えば、マウス、ラット、ニワトリ、七面鳥、ウシ、ブタ、ヒツジ及びウサギ等を意味する。被検物質としては、何ら限定されないが、例えば、植物抽出液、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、低分子化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、動物組織抽出液等が挙げられる。これらの物質は新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。被検物質を細胞もしくは動物に接触させる場合に、典型的には、被検物質を細胞培養液に添加するか又は実験動物に投与するが、特に被検物質がタンパク質の場合などは、当該被検物質をコードする遺伝子をFGF受容体発現細胞中に導入することも可能である。 次に、当該動物培養細胞又は実験動物におけるFGF18遺伝子の発現をモニターする。動物培養細胞又は実験動物におけるFGF18遺伝子の発現は、例えば、FGF18抗体を用いたELISA等の常法を用いて解析するか、あるいは該細胞内又は実験動物内におけるFGF18遺伝子のmRNA量を定量的逆転写PCR法やノーザンブロット法等により解析するといった方法によりモニターすることができる。 これらいずれかの解析により、被検物質の非存在下で培養された動物培養細胞内におけるFGF18遺伝子の発現量と比べて、被検物質の存在下で培養された動物培養細胞内又は実験動物内におけるFGF18遺伝子の発現量が低下すれば、当該被検物質は毛髪成長促進或いは発毛といった機能を有する可能性があると判断できる。具体的には、被検物質を作用させない場合と比較して、mRNA量が0.8倍以下、好ましくは0.7倍以下、より好ましくは0.5倍以下に減少すれば、確実にFGF18の発現抑制物質であるといえる。培養角化細胞や培養真皮細胞、培養毛乳頭細胞でのFGF18のmRNA発現量は、培養条件や細胞の種類により様々であるので、上記の方法などにより個別に測定し、その数値が0.8倍以下に減少することを目安にスクリーニングすればよい。 このような工程を経てスクリーニングされたFGF18の発現抑制物質は、単独で、もしくは併用して、毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤として用いることができる。4.毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤 上記「1.FGF18の活性阻害物質」及び/又は「3.FGF18の発現抑制物質」で説明した物質は、例えば、皮膚適用向けに適合化された溶液、クリーム、軟膏、ゲル、ローシヨン、シャンプー又はエアゾールといった形態で製剤化され、毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤として提供される。 特に、毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤は、局所投与用に適合化された薬理学上許容されるキャリアと共にFGF18活性阻害物質及び/又は発現抑制物質を含んだ医薬組成物の形で投与される。FGF18活性阻害物質及び/又は発現抑制物質を含有する毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤は、薬学上許容されるキャリア中に通常約0.01〜約100μg/日/cm2、好ましくは約0.1〜約10μg/日/cm2の活性化合物を含有している。言い換えると、FGF18の濃度は薬学上許容されるキャリア中で通常約0.01〜約100μg/日/cm2、好ましくは約0.1〜約10μg/日/cm2の活性化合物である。 さらにまた、局所投与用に適合化された薬理学上許容されるキャリアとしては、特に限定されないが、親水ワセリン又はポリエチレングリコール軟膏のような軟膏、キサンゴムのようなゴム等のペースト、アルコール、水性又は緩衝液のような溶液、水酸化アルミニウム又はアルギン酸ナトリウムゲルのようなゲル、ヒト又は動物アルブミンのようなアルブミン、ヒト又は動物コラーゲンのようなコラーゲン、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルヒドロキシアルキルセルロースのようなセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース、プルロニックF−127で例示されるプルロニック(Pluronic(商標))ポリオ−ルのようなポリマ−;テトロニック1508のようなテトロニック(tetronic)、アルギン酸ナトリウムのようなアルギン酸塩を挙げることができる。 本発明に係るFGF18の活性阻害物質としては、FGF18部分ペプチドなどのFGF18の活性阻害タンパク質、ペプチドをコードするDNAを組み込んだ発現ベクターを用いることができるが、その場合は、通常の遺伝子治療の形態で提供することができる。発現ベクターとしては、動物細胞においてFGF18部分ペプチドなどを発現させるためのプロモーターなどの配列を備えるが、特に限定されるものではない。発現ベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクターなどが利用可能であるが、これらに限定されない。 また、本発明に係る毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤は、FGF18発現抑制物質を有効成分として含有するものであってもよい。すなわち、本発明に係る毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤は、FGF18に対するsiRNA発現ベクターを用いた遺伝子治療として提供することができる。発現ベクターとしては、動物細胞においてsiRNAを発現するためのプロモーターなどの配列を備えるが、特に限定されるものではない。発現ベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクターなどが利用可能であるが、これらに限定されない。また、FGF18発現抑制物質は、FGF18に対するsiRNA発現ベクターに限定されない。 遺伝子治療用の毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤を細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターを利用した遺伝子導入方法、非ウイルス性の遺伝子導入方法(日経サイエンス,1994年4月号,20-45頁、実験医学増刊,12(15)(1994)、実験医学別冊「遺伝子治療 の基礎技術」,羊土社(1996))のいずれの方法も適用することができる。 ウイルスベクターによる遺伝子導入方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のDNAウイルス又はRNAウイルスに、TR4あるいは変異TR4をコードするDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。このうち、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルスを用いた方法が、特に好ましい。非ウイルス性の遺伝子導入方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。5.インビトロ毛髪再生系への応用 FGF18の活性阻害物質及び/又は発現抑制物質を用いて、再生された皮膚組織における毛髪のインビトロ再生系を構築することができる。ここで、皮膚組織とは、分離した皮膚幹細胞を培養することによって得られる、皮膚の各種の細胞からなる組織を意味する。皮膚の各種の細胞とは、特に限定されないが、皮膚表皮の上皮細胞、皮膚上皮基底層の細胞、毛胞を構成する各種細胞、真皮の細胞及び脂肪細胞等を意味する。皮膚組織を再生する際に使用される細胞は、異種細胞、同種他家細胞及び同種自家細胞のいずれであっても良い。 先ず、皮膚幹細胞からの皮膚の各種細胞への分化を制御する方法としては、特に確立された技術がないため、本発明においては特に限定されない。例えば、自然分化(spontaneous differentiation)が起きた段階において異なる発現を示す増殖因子受容体を利用し、それぞれに対応するリガンド増殖因子を培地中に加えることにより、異なった分化方向を有する細胞を選択的に増幅することができる。異なった分化方向を有する細胞を選択的に増幅した後、皮膚組織を作製することができる。 人工皮膚組織の作製方法としては、特に定まった技術はないため、本発明においては限定されないが、例えば、上皮細胞だけを培養し層状に仕上げる方法、繊維芽細胞など真皮の構成細胞により真皮層を形成した後、上皮細胞を重層させて一体化する方法、その後上皮細胞の表面を空気に暴露することにより表皮化を促進させる方法、真皮層の変わりに、生物分解が可能な成分により形成された層状フィルムを用いる方法、など、様々な方法をとることができる。また、本発明は、ヒトから採取した皮膚組織から皮膚幹細胞を分離し、分離した皮膚幹細胞を用いて皮膚組織を作製するといった、いわゆる再生医療における皮膚組織の作製方法も適用される。このとき、新たに作製した皮膚組織は、採取したヒトと同一人に対して治療のために戻すことを前提としても良いし、採取したヒトと異なる他人に対して治療のために移植することを前提するものであってもよい。 このような皮膚組織の作製方法において、培地中にFGF18の活性阻害物質及び/又は発現抑制物質を適当な時期に添加することによって、再生した皮膚組織において毛包の成長を促進することができ、当該皮膚組織における毛髪の成長或いは発毛を促進することができる。さらに、皮膚組織の作製方法において、培地中にFGF18活性阻害物質及び/又は発現抑制物質を適当な時期に添加することによって、皮膚細胞の増殖を促進することができ、皮膚組織全体の体積の増大を図ることができる。6.ゴーヤー抽出物 本発明の前記2.のスクリーニング方法により得られたFGF18活性阻害物質はゴーヤー抽出物であり、実施例に示すようにその発毛促進効果も確認された。 ゴーヤー抽出物の原料となるゴーヤーは、ウリ科ツルレイシ属の植物で、学名はMomordica charantiaであり、ニガウリ、または、ツルレイシとも呼ばれている。 ゴーヤーからその抽出物を得るに当たっては、植物体の全部位が使用可能であり、各部位を単独に、或いは適宜混合して抽出原料に用いることができる。また、原料となる植物体の性状は、乾燥状態のもの、非乾燥状態のもの、いずれも用いることができる。 ゴーヤーから、本発明に用いる抽出物を得るには、これらの原料を必要により細切ないし粉砕し、適当な溶媒を用いて、一般に用いられる抽出法で抽出すれば良い。抽出に用いられる溶媒は、特に限定されないが、例えば水、無水或いは含水有機溶媒を例示することができる。無水或いは含水有機溶媒としては、1価アルコール、多価アルコールまたはその誘導体、ケトン、エステル、エーテル、石油エーテル、脂肪族炭化水素、またはハロゲン化合物、芳香族炭化水素より選択された一種または二種以上を例示することができる。具体的な溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトン、酢酸エチルエステルが例示され、これらは一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、特に水、或いはメタノールやエタノール等の1価アルコールを用いることが好ましい。抽出に当たって、上記溶媒の使用量は特に限定されないが、抽出原料であるゴーヤーに対して、0.1-1000重量倍、好ましくは1-100重量倍、更に好ましくは2-50重量倍である。 上記溶媒による抽出法は、常法に従って行なうことができる。例えば抽出温度については、室温程度の温度で抽出しても良く、また用いられる溶媒の沸点付近の温度で抽出しても良い。また、抽出操作についても、ゴーヤーの乾燥粉砕物もしくは粉砕物を室温下で1-30日間浸漬することにより抽出する方法や、抽出溶媒の沸点程度の温度において還流抽出する方法等を用いることができる。 下記の実施例において示されるように、本発明のゴーヤーの抽出物からなる物質は、FGFR4遺伝子を発現したBa/F3細胞に対して、FGF18による細胞増殖を阻害するFGF18阻害活性を有する。実施例では、FGFレセプターの1つであるFGFR4を遺伝子発現操作により細胞表面に強制的に発現させた細胞を用いたときに、FGF18の存在下で、FGF18による細胞増殖に対して、ゴーヤー抽出物の添加により濃度依存的に阻害することが示された。ゴーヤー抽出物のこの作用は、同時に行われたFGF18非存在下の細胞増殖に対しては増殖阻害作用を示さなかったことから、細胞障害作用ではなく、FGF18活性阻害作用であることが示された。 すなわち、本発明のゴーヤーの抽出物からなる物質は、FGF18による細胞増殖を阻害するFGF18活性阻害物質である。 以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。〔実施例1〕FGF18による毛包成長促進因子の遺伝子発現阻害作用 本実施例では、FGF18の毛成長に対する機能を評価するため、毛包成長の司令塔と考えられている毛乳頭細胞による遺伝子発現について、FGF18の影響を調べた。<材料と方法> 培養したヒト毛乳頭細胞(HFDP:成人頭皮由来;東洋紡績株式会社製)はHFDP生育培地(20%ウシ胎児血清を含む乳頭細胞基礎培地;東洋紡績株式会社製)で継代培養して2継代以内に実験に使用した。細胞はトリプシン処理してコラーゲンコートdish(Sumilon社製、直径6 cm)に、4×105細胞を播種してHFDP培地で37℃に維持した。次の日にHEK培地(EpiLifeTM,0.06 mM CaCl2, 10 μg/ml insulin, 0.1 ng/ml hEGF, 0.5 μg/ml hydrocortisone, 0.4% BPE )に交換後、FGF18を添加し、細胞を24時間培養した。その後、試験試料(”-FGF18”)ではFGF18を含まない培地に交換した。対照試料(“Control”)では、細胞を継続してFGF18を含む培地で培養した。そして細胞を採取して、そのmRNAを抽出し、精製した。その中に含まれる、毛包成長促進因子として知られるVEGF及び毛成長抑制因子として知られるnogginのmRNAの発現レベルを解析した。<結果> 結果を図1に示す。毛乳頭細胞は様々な因子を放出して毛成長を促進していると考えられている。それらの因子として毛成長を促進するVEGF、及びnogginがある。本実験で、毛乳頭細胞によるVEGFのmRNAの発現レベルは、培地からFGF18を除くことにより4.8倍に増加した。さらに、nogginのmRNAの発現レベルは、培地からFGF18を除くことにより3.5倍に増加した。このことから、FGF18が存在する環境で抑制されていた、毛乳頭細胞による毛包成長因子の産生は、FGF18の影響が解除されることにより、促進されることを確認した。すなわち、FGF18には毛包成長の抑制作用があることと共に、当該FGF18の活性又は発現を抑制すれば毛包成長に対して促進的に作用することが示唆された。〔実施例2〕FGF18の継続的投与による毛髪成長抑制作用 本実施例では、毛包成長に対するFGF18のin vivoでの影響の特徴を調べるため、FGF18の投与による影響を毛包成長期に誘導したC3H/HeNマウスで試験した。<材料と方法> FGF18の毛包成長に対するin vivoでの影響の特徴を調べるため、毛包成長期に誘導したマウスに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解したFGF18タンパク質を投与した。 すなわち、50日齢のC3H/HeN雄マウスの休止期にある背部毛を手指によって優しく抜き去り、毛包成長期開始を誘導した。そしてFGF18溶液を尾部近くより背部皮膚に皮下注射した(マウス1匹あたり1μgのFGF18)。マウスは飼料および水を任意に摂取できるようにして飼育した。この日から継続的に8日間、毎日ほぼ同時刻に、FGF18溶液を背部皮膚に皮下注射した。対照群としては、FGF18の代わりにPBSを注射した。9日後にマウスに麻酔をかけて安楽死させた。背部皮膚を全層で切除し、パラフィンで包理した。包理した皮膚サンプルはミクロトームで4μm厚の切片にしてヘマトキシリンで染色して顕微鏡で観察した。<結果> 結果を図2に示す。図中、Aは対照液PBSを投与したマウスの皮膚切片の顕微鏡写真であり、BはFGF18を投与したマウスの皮膚切片の顕微鏡写真である。なお、A,Bで写真の拡大倍率は一定である。 写真Aから分かるように、PBS液を皮下投与したマウスでは、9日後に毛包の自然な成長が認められ、毛包が長く成長し、皮膚の下層まで達している。 これに対して、写真BのFGF18液を投与したマウスでは毛包が短く、毛成長が強く抑制されていることが示される。 この結果から、FGF18を継続的に投与すると毛髪成長を抑制する作用があることが示された。このことは反対に、持続的に存在する内在性FGF18によって毛包の成長が抑制されている際には、FGF18の活性を抑制すれば、毛包の成長を促進できることを示すものである。〔実施例3〕FGF18の部分ペプチドによるFGF18活性の阻害 FGF18の部分ペプチドとして、マウスFGF18のアミノ酸配列に対応する配列番号14のN末端から翻訳開始のために導入されたメチオニンを除く4番目まで〜95番目までのアミノ酸を除去した部分ポリペプチド(d4〜d95:メチオニンを除くN末端から除去したアミノ酸数で表す。)を作製した。 なお、それぞれの部分ポリペプチドのアミノ酸配列(塩基配列)は、以下の配列番号に対応する。 d4:配列番号15(配列番号4) d12:配列番号16(配列番号5) d16:配列番号17(配列番号6) d18:配列番号18(配列番号7) d22:配列番号19(配列番号8) d37:配列番号20(配列番号9) d48:配列番号21(配列番号10) d67:配列番号22(配列番号11) d77:配列番号23(配列番号12) d95:配列番号24(配列番号13) FGF18は4種類のFGFレセプターFGFR1c, FGFR2c, FGFR3c, FGFR4を刺激するが、それらを刺激する強さは異なり、また、これらの受容体への刺激の総和としての結果として、毛成長抑制をすると考えられる。 文献の教示にしたがって、マウスIL-3依存性proB細胞であるBa/F3細胞株(理研BRCより入手)に、遺伝子発現操作によりFGFレセプターであるFGFR1c, FGFR2c, FGFR3c, FGFR4のいずれかを導入して、FGFRが細胞表面に強制的に発現されている細胞を作成した(Ornitz, DM., Xu, J., Colvin, JS., McEwen, DG., MacArthur, CA., Coulier, F., Gao, G. and Goldfarb, M., 1996. Receptor specificity of the fibroblast growth factor family. J. Biol. Chem. 271(25):15292-15297;Yoneda, A., Asada, M., Oda, Y., Suzuki, M. and Imamura, T., 2000. Engineering of an FGF-proteoglycan fusion protein with heparin-independent, mitogenic activity. Nat. Biotec. 18(6):641-644)。 これらの細胞を用い、それぞれのレセプターを30 ng/mlのFGF18で刺激している際に、それぞれのFGF18の部分ペプチドを1μg/ml (図3A) または100 ng/ml (図3B) の濃度で共存させ、FGF18で刺激された細胞のDNA合成(これを100% とする)を阻害するかどうかアンタゴニスト活性を調べた。すなわち、FGF18による細胞増殖刺激効果を抑制する活性を解析した。その結果を、図3 に示す。各カラムとテスト試料の対応は以下の通りである。 (図3A) カラム1:FGF18以外の試料添加なし(対照)。 カラム2:(d4)。カラム3 :(d16)。カラム4:(d18)。カラム5:(d22)。カラム6:(d37) 。カラム7:(d48) 。カラム8 :(d77)。カラム9:(d95) 。カラム10:(d22) 。カラム11:(d37)。カラム12:(d48)。カラム13:(d67)。カラム14:(d77)。カラム15:(d95)。 (図3B) カラム1:FGF18以外の試料添加なし(対照)。カラム2:(d4)。カラム3:(d12)。カラム4:(d16)。カラム5:(d18)。カラム6:(d37)。カラム7:(d48)。カラム8:(d67)。カラム9:(d95)。カラム10:(d37)。カラム11:(d67)。 図3A から、披検物質を1μg/mlの濃度で試験すると、d16, d22, d37, d48, d77, d95などがFGFR3c/BaF3細胞上でFGF18の活性を強く阻害することが分かる。またd22, d48, d77, d95などがFGFR4/BaF3細胞上でFGF18の活性を強く阻害することが分かる。他の部分ペプチドも図に示すように様々な阻害効果を示す。 図3B から、披検物質を100 ng/mlの濃度で試験すると、d16, d95などがFGFR3c/BaF3細胞上でFGF18の活性を強く阻害することが分かる。 これらのFGF18の活性阻害物質となるFGF18の部分ペプチドを用いることで、毛成長制御におけるFGF18による毛成長抑制作用を解除することができるから、毛成長を促進することができる。 また、同様に、マウスFGF18のアミノ酸配列に対応する配列番号14のC末端から25番目まで〜125番目までのアミノ酸を除去した部分ポリペプチド(dc25〜dc125:C末端から除去したアミノ酸数で表す。)を作製した。 なお、それぞれの部分ポリペプチドのアミノ酸配列(塩基配列)は、以下の配列番号に対応する。 dc25:配列番号34(配列番号25) dc43:配列番号35(配列番号26) dc57:配列番号36(配列番号27) dc67:配列番号37(配列番号28) dc82:配列番号38(配列番号29) dc94:配列番号39(配列番号30) dc108:配列番号40(配列番号31) dc113:配列番号41(配列番号32) dc125:配列番号42(配列番号33) これらのFGF18部分ペプチドのうちdc25を除く部分ペプチドはN末端を除去した上記部分ペプチドと同様のFGF18の活性阻害作用を有するため、FGF18による毛成長抑制作用を解除することができ、毛成長を促進することができる。〔実施例4〕FGFR4発現細胞を用いたFGF18活性阻害物質のスクリーニング 作製したFGFR4発現細胞(R4/Ba/F3細胞)を、FGF18存在下で、被験液として種々の植物抽出液と共に培養した。陽性対照としては市販のFGF18蛋白質を用いた。一定時間培養した後の細胞数を、Cell Counting Kit-8((株)同仁化学研究所製造、和光純薬工業株式会社販売)を用いて、WST-8ホルマザンの産生量に伴う450 nmの発色を測定して求めた。 その結果、ゴーヤーの抽出物が、FGF18活性阻害物質として作用し、FGF18によるFGFR4/BaF3細胞の増殖を阻害することを見いだした。〔実施例5〕本発明のFGF18活性阻害物質の細胞増殖阻害活性 乾燥したゴーヤー1.5gに、蒸留水30mlを加え、15分間煮沸した。以上の様にして得られた抽出液をろ紙でろ過してろ液を取り、ゴーヤーの熱水抽出液を得た。乾燥したゴーヤー1.5gに、70%エタノール水溶液30mlを加え、室温で7日間浸漬抽出した。この様にして得られた抽出液をろ紙でろ過し、ゴーヤーの70%エタノール抽出液を得た。 実施例4と同様にして、FGFR4/BaF3細胞を用いて本発明のFGF18活性阻害物質の活性測定を行った。具体的には、測定は次の様にして行った。96穴の細胞培養用プレートの各ウエルに、1ウエル当たり50μl の10% FBS、1% Antibiotic G-418 Sulfate(プロメガ株式会社、V7983)を含むRPMI1640培地を加えた。次いで、各試料を水で希釈して調製した種々の濃度の被験液 10μl を添加した後、10% FBS、1% Antibiotic G-418 Sulfateを含むRPMI1640培地中に5×104個のFGFR4/BaF3細胞が懸濁した細胞懸濁液50μlを添加し、軽く撹拌した。更に、heparin / 10% FBS / 1% Antibiotic G-418 Sulfate / RPMI1640培地、10μl(heparin終濃度5μg/ml)、及びFGF18(ぺプロテック株式会社、100-28)溶液 10μl(FGF18終濃度3ng/ml)を加え、5%CO2存在下、37℃の炭酸ガスインキュベーターで72時間培養した。FGFR4/BaF3細胞の増殖は、72時間培養後の各ウエルに、Cell Counting Kit-8((株)同仁化学研究所製造、和光純薬工業株式会社販売)/PBS溶液10μlを加えた後、更に3時間培養し、WST-8ホルマザンの産生量に伴う450 nmの発色を測定して求めた。 測定に際しては、陽性対照としては、FGF18(ぺプロテック株式会社、100-28)溶液 10μl(FGF18終濃度3ng/ml)を、また陰性対照としては、被験液作製時に使用した水またはエタノール溶液(エタノール溶液の終濃度は1%以下になるように調製)10μl を用いて測定した。細胞増殖阻害率(%)の算定は、以下の式(A)により算出した。〔式(A)〕細胞増殖阻害率(%)=100×{(FGF18及び水またはエタノール溶液添加時の吸光度)−(FGF18及び被験液添加時の吸光度)}/FGF18及び水またはエタノール溶液添加時の吸光度−水またはエタノール溶液添加時の吸光度) ゴーヤー熱水抽出液についての結果を図4に示す。FGF18の存在下で、終濃度8.3%のゴーヤー熱水抽出液を被験液とした場合、発色量が減少し、ゴーヤー熱水抽出液はFGF18によるFGFR4/BaF3細胞の増殖を阻害することが確認された。一方、FGF18無添加で被験液添加時の吸光度は、同様にFGF18無添加で水またはエタノール溶液添加時の吸光度に比べてほとんど減少することは無く、被験液による細胞障害作用はほとんど認められなかった。〔実施例6〕 FGF18活性阻害物質の in vivo での作用を見るために、毛周期の休止期にあるC3H/He マウスで試験した。本発明のFGF18活性阻害物質の in vivo 解析 乾燥したゴーヤー1.1gに、蒸留水15mlを加え、20分間煮沸した。抽出液が室温に戻った後、ろ紙でろ過し、ろ液については同量のエタノールを添加することによって、ゴーヤー熱水抽出液の50%エタノール溶液を作製した。更に0.45μmのマイレクスHV滅菌フィルター(ミリポア社)を通過させ、その後、グリセロールを1%になるように添加し、被験液とした。この様にして得られたゴーヤー熱水抽出液(49.5%エタノール、1%グリセロールを含有)について、毛周期の休止期にあるC3H/He マウス背部皮膚に塗布した。7週齢のC3H/He 雄マウスに麻酔をし、背部毛をバリカンにより優しく剃毛した。剃毛後、被験液としてゴーヤー熱水抽出液(49.5%エタノール、1%グリセロールを含有)、又は水−エタノール−グリセロール溶液(49.5%水、49.5%エタノール、1%グリセロールを含有)200μlをそれぞれ1群5匹のマウス背部皮膚に塗布した(第0日)。同様にして、11日間(5日目、及び6日目を除く)に渡って毎日塗布し、第10日、14日、17日、21日、24日目のマウス背部の発毛状態を目視により観察し、発毛スコアーを得た。発毛スコアーは、1)色素沈着:1点、2)短かな毛並み:2点、3)通常の毛並み:3点とし、それぞれの発毛状態の面積が全剃毛面積に対して占める割合を%で示し、以下の式で求めた。本算出法によると、全剃毛面積が通常の毛並みに回復した場合、100点となる。 発毛スコアー=(色素沈着面積の割合(%)×1+短かな毛並み面積の割合(%)×2+通常毛並み面積の割合(%)×3)/3 第一回の塗布後、第10日、14日、17日、21日、24日目におけるマウス背部の発毛状態を観察した結果、図5に示す通り、ゴーヤー抽出液塗布群は、陰性対照群(水−エタノール−グリセロール溶液(49.5%水、49.5%エタノール、1%グリセロールを含有)塗布群)に比較して特に21日目以降に発毛スコアーが高く、発毛が有意に促進された。 以上の様に、FGF18活性阻害物質であるゴーヤー熱水抽出液には発毛促進剤としての作用が実証された。〔実施例7〕 本発明であるゴーヤー熱水抽出物を用いたヘアシャンプーの処方及び製造法を示す。 以下の処方、及び製法に従ってヘアシャンプーを製造した。(処方)成 分 重量%1. 実施例5で得られた希釈液 0.12. ラウリルエーテル硫酸ナトリウムエタノール 203. ラウリル硫酸ナトリウム 104. 1,3ブチレングリコール 15. 香料 適量6. 精製水 残量(全量で100とする)(製法) 処方成分を80℃に加熱し、攪拌混合した後、攪拌冷却し本発明のヘアシャンプーを製造した。〔実施例8〕 本発明であるゴーヤー熱水抽出物を用いたヘアリキッドの処方及び製造法を示す。 以下の処方、及び製法に従ってヘアリキッドを製造した。(処方)成 分 重量%1. 実施例5で得られた希釈液 0.12. エタノール 403. グリセリン 14. 香料 適量5. 精製水 残量(全量で100とする)(製法) 処方成分を加えて攪拌溶解した後、精製水を加えてヘアリキッドを製造した。〔実施例9〕 本発明であるゴーヤー熱水抽出物を用いたヘアクリームの処方及び製造法を示す。 以下の処方、及び製法に従ってヘアクリームを製造した。(処方)成 分 重量%1. 実施例5で得られた希釈液 0.12. 流動パラフィン 403. ワセリン 14. セトステアリルアルコール 15. メチルポリシロキサン 16. パラオキシ安息香酸メチル 0.27. プロピレングリコール 58. 香料 適量9. 精製水 残量(全量で100とする)(製法) 処方成分を攪拌混合し、本発明のヘアクリームを製造した。 本発明により、効果的な毛髪成長促進剤、発毛促進剤及び脱毛症治療剤が提供でき、これらを配合することにより、毛髪成長促進活性を有するシャンプー、ヘアリキッドなどの他、脱毛症治療用の医薬組成物などが提供できる。 下記の(a)からなるFGF18の活性阻害物質を有効成分として含有する毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤;(a)FGF18の部分ペプチドであって、シグナルペプチドが除去されたFGF18のアミノ酸配列のうち、N末端から4番目まで〜95番目までのいずれかのアミノ酸配列が除去されているか、又はC末端から43番目まで〜125番目までのいずれかのアミノ酸配列が除去されている部分ペプチド。 他の毛髪成長促進剤及び発毛促進剤及び脱毛症治療剤を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤。 毛髪成長促進剤、発毛促進剤又は脱毛症治療剤の候補とするために被検物質をスクリーニングする方法であって、以下の(a)〜(c)の工程を含むスクリーニング方法。(a)FGFR1c、FGFR2c、FGFR3c及びFGFR4から選ばれた少なくとも1つのFGF受容体遺伝子を用いて遺伝子操作により細胞表面に強制的に発現させ、当該細胞を培養する工程、(b)(a)工程で得られた、細胞表面にFGF受容体を有する細胞系にFGF18とともに被検物質を接触させる工程、(c)(b)工程において、FGF18の細胞増殖促進活性を阻害する活性を観察した被検物質をFGF18の活性阻害物質として選択する工程。 前記FGF受容体がFGFR3cである請求項3に記載のスクリーニング方法。 前記FGF受容体がFGFR4である請求項3に記載のスクリーニング方法。 前記FGF受容体を細胞表面に強制的に発現させるための細胞がマウスIL-3依存性Ba/F3細胞株である請求項3ないし5のいずれかに記載のスクリーニング方法。 請求項3〜6のいずれかに記載のスクリーニング方法に用いるためのキットであって、少なくとも下記(a)〜(c)を含むことを特徴とするキット;(a)FGFR1c、FGFR2c、FGFR3c及びFGFR4から選ばれた少なくとも1つのFGF受容体遺伝子が細胞内に導入され、いずれかのFGF受容体が細胞表面に強制的に発現している細胞系、(b)FGF18、(c)(b)のFGF18と共に被検物質を、(a)の細胞系に接触させるための器具。 毛髪成長促進剤及び発毛促進剤及び脱毛症治療剤の候補とするために被検物質をスクリーニングする方法であって、下記の(a)〜(d)の工程を含むスクリーニング方法。(a)FGF18遺伝子が観察可能な程度発現する動物培養細胞又は実験動物を用意する工程、(b)被検物質を、(a)の動物培養細胞に接触させるか又は実験動物に接触もしくは投与する工程、(c)(b)工程後の動物培養細胞又は実験動物におけるFGF18遺伝子の発現をモニターする工程、(d)FGF18遺伝子の発現を阻害する機能を有する被検物質をFGF18の発現抑制物質として選択する工程。 前記(c)工程において、前記(b)工程後の実験動物又は動物培養細胞から、mRNAを抽出し、発現されたFGF18のmRNA量を解析することによりFGF18遺伝子の発現をモニターし、前記(d)工程において、被検物質を作用させない場合と比較して低いレベルのFGF18のmRNA量を観察した系を選択することにより、FGF18遺伝子の発現を阻害する機能を有する被検物質をFGF18の発現抑制物質として選択することを特徴とする、請求項8に記載のスクリーニング方法。 請求項8又は9に記載のスクリーニング方法に用いるためのキットであって、少なくとも下記の(a)〜(c)を含むキット;(a)FGF18遺伝子が観察可能な程度発現している動物培養細胞又は実験動物、(b)被検物質を、(a)の動物培養細胞又は実験動物に対して、接触もしくは投与させるための器具、(c)当該動物培養細胞又は実験動物内のFGF18遺伝子発現量を解析する装置。配列表


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