タイトル: | 公開特許公報(A)_芳香族ジアミン化合物及びその製造方法並びに合成樹脂 |
出願番号: | 2009257550 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07D 251/70,C08G 73/10 |
大石 好行 芝崎 祐二 佐藤 仁祉 JP 2011102259 公開特許公報(A) 20110526 2009257550 20091110 芳香族ジアミン化合物及びその製造方法並びに合成樹脂 国立大学法人岩手大学 504165591 日本フッソ工業株式会社 391065448 清原 義博 100082072 大石 好行 芝崎 祐二 佐藤 仁祉 C07D 251/70 20060101AFI20110428BHJP C08G 73/10 20060101ALI20110428BHJP JPC07D251/70 FC08G73/10 12 3 OL 15 特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 社団法人 高分子学会 刊行物名 高分子学会予稿集 58巻1号[2009] 発行年月日 平成21年5月12日 4J043 4J043PA02 4J043PA04 4J043PB08 4J043PB14 4J043QB15 4J043QB31 4J043RA34 4J043SA05 4J043SA06 4J043SA31 4J043SA49 4J043SA55 4J043SB02 4J043TA22 4J043TB01 4J043UA132 4J043UA141 4J043UA331 4J043UA531 4J043UB241 4J043UB402 4J043VA041 4J043VA042 4J043ZA23 4J043ZA31 本発明は、新規な芳香族ジアミン化合物及びその製造方法並びに該芳香族ジアミン化合物を原料とした合成樹脂に関する。より詳しくは、エチニルフェニルアミノ置換トリアジン骨格を有する芳香族ジアミン化合物とその製造方法並びに該芳香族ジアミン化合物を原料とした合成樹脂に関する。 従来の全芳香族ポリイミド、ポリアミド,ポリアゾメチンなどは優れた耐熱性を有すると共に、優れた機械的特性を有し、広く工業材料として使用されてきたが、これらの多くは有機溶媒に不溶であり、その成形性に多くの問題があった。 このような合成樹脂の中でアリール基を置換したポリイミドやポリアミドは有機溶媒に可溶であることが知られている(例えば,非特許文献1、非特許文献2)。 従って、かさ高いエチニルフェニルアミノ置換トリアジン骨格を有する芳香族ジアミン化合物を用いることにより、有機溶媒に可溶な(すなわち成形性に優れる)耐熱性合成樹脂を得ることが期待されている。 しかし、かかる期待や多くの試みにも関わらずトリアジン骨格を有する芳香族ジアミン化合物の合成に成功した例は未だ報告されておらず、トリアジン骨格を有する芳香族ジアミン化合物は、その製造方法も解明されていないため存在していない。 その結果、トリアジン骨格を有する芳香族ジアミン化合物から得られる合成樹脂が、優れた耐熱性、機械的特性及び成形性を実際に有しているかどうかも知られていない。 一方、特許文献1には、加熱による架橋が可能なペンダントフェニルエチニル基を有するポリイミドなどの高分子化合物の製造に用いられる芳香族ジアミン化合物であって、柔軟性に優れた骨格を有し、ポリイミドの熱成形性に寄与する芳香族ジアミン化合物が記載されている。該公報の段落番号(0026)の式(5)には、1 , 3 − ビス( 3 − アミノフェノキシ) − 5 − ( フェニルエチニル) ベンゼンが記載されている。 しかし、この特許文献1記載技術では、基本骨格はトリアジン骨格ではなく、フェニルエチニル基が直接ベンゼン環に導入された骨格であり、該ポリイミドは熱成形性に優れているものの、溶解性に優れていないという問題があった。特開2007−297319号公報大石好行等,J.Polym.Sci.,Part A,Polym.Chem. 28巻,1763頁(1990年)J.Polym.Sci.,Part A,Polym.Chem. 30巻,1027頁(1992年) 本発明は、かかる問題を解決するべく、耐熱性および機械的特性に優れ、しかも有機溶媒に溶解できる成形性に優れた耐熱性合成樹脂の原料となる新規な芳香族ジアミン化合物及びその製造方法並びに該芳香族ジアミン化合物を原料とした合成樹脂を提供することを目的とする。 請求項1に係る発明は、次式(化1)で表される芳香族ジアミン化合物に関する。(式中のR1,R2,R3,R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す) 請求項2に係る発明は、次式(化2)で表される、請求項1に記載の芳香族ジアミン化合物に関する。 請求項3に係る発明は、次式(化3)で表されるトリアジンジクロリドを原料として、次式(化4)で表される芳香族ジアミン化合物を誘導することを特徴とする芳香族ジアミン化合物の製造方法に関する。(式中のR1およびR4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す)(式中のR1,R2,R3,R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す) 請求項4に係る発明は、次式(化5)で表されるトリアジンジクロリドを原料として、次式(化6)で表される芳香族ジアミン化合物を誘導することを特徴とする、請求項3に記載の芳香族ジアミン化合物の製造方法に関する。 請求項5に係る発明は、前記トリアジンジクロリドとジアミン化合物を塩基存在下に反応させて下記(化7)で表される芳香族ジアミン化合物を誘導する芳香族ジアミン化合物の製造方法。(式中のR1,R2,R3,R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す) 請求項6に係る発明は、前記塩基として、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素セシウムから選ばれる1種以上を用いることを特徴とする請求項5に記載の芳香族ジアミン化合物の製造方法に関する。 請求項7に係る発明は、反応時の溶媒として、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)を使用することを特徴とする請求項5又は6に記載の芳香族ジアミン化合物の製造方法に関する。 請求項8に係る発明は、反応温度が20〜200℃であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の芳香族ジアミン化合物の製造方法に関する。 請求項9に係る発明は、前記トリアジンジクロリドは、塩化シアヌルとエチニルフェニルアミン化合物を塩基存在下に反応させて製造することを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の芳香族ジアミン化合物の製造方法に関する。 請求項10に係る発明は、請求項1又は2に記載の芳香族ジアミン化合物を用いて合成した芳香族ポリイミド合成樹脂に関する。 請求項11に係る発明は、請求項1又は2に記載の芳香族ジアミン化合物と、ペルフルオロノネニル基含有ジアミン(FNDA)とを用いて合成した含フッ素芳香族ポリイミド合成樹脂に関する。 請求項12に係る発明は、さらにビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて合成した請求項10又は11に記載の芳香族ポリイミド合成樹脂に関する。 請求項1及び2に係る発明によれば、耐熱性および機械的特性に優れ、しかも有機溶媒に溶解できる成形性に優れた耐熱性合成樹脂の原料となる新規な芳香族ジアミン化合物を提供することができる。 請求項3乃至5に係る発明によれば、トリアジンジクロリドを原料として、耐熱性および機械的特性に優れ、しかも有機溶媒に溶解できる成形性に優れた耐熱性合成樹脂の原料となる新規な芳香族ジアミン化合物を製造することができる。 請求項6乃至8に係る発明によれば、本発明の芳香族ジアミン化合物を収率よく製造することができる。 請求項9に係る発明によれば原料となるトリアジンクロリドを容易に製造することができるので本発明の芳香族ジアミン化合物を大量に製造することができる。 請求項10乃至11に係る発明によれば易加工性と耐溶剤性を有するコーティング合成樹脂を提供することができる。2,4‐ビス(p‐アミノアニリノ)‐6‐(p‐エチニルアニリノ)‐1,3,5‐トリアジン(式II)の1H NMRの図を表わしたものである。2,4‐ビス(p‐アミノアニリノ)‐6‐(p‐エチニルアニリノ)‐1,3,5‐トリアジン(式II)の13C NMRの図を表わしたものである。ペルフルオロノネニル基含有ジアミン化合物とエチニル基含有ジアミン化合物からポリイミドフィルムを作成する反応式を表した図である。 本発明者は、トリアジン骨格を有する芳香族ジアミン化合物を得る方法について鋭意研究を行った。かかる化合物を合成するための条件は、多大に上り、その条件を洗い直したところ、使用する原料に左右されることが判明した。ただ、同じ材料であっても、合成がなされる場合となされない場合とがあり、一定の原料の選択は、必要条件ではあるが、その他にも合成を左右する条件が存在することが分かった。多大な合成条件を鋭意研究し、その条件を解明し、本発明をなすに到った。 以下、本発明を具体的に説明する。 本発明は、以下の一般式(I)で表される芳香族ジアミン化合物である。(式中のR1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す。) 好ましくは、式(II)で表される芳香族ジアミン化合物(2,4‐ビス(p‐アミノアニリノ)‐6‐(p‐エチニルアニリノ)‐1,3,5‐トリアジン)である。 本発明の一般式(I)で表される芳香族ジアミン化合物は以下の一般式(III)によって表されるトリアジンジクロリドを原料として製造することができる。(式中のR1およびR4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す。) 好ましい化合物である上記式(II)で表される芳香族ジアミン化合物は、以下の式(IV)で表されるトリアジンジクロリドを原料として製造することができる。 この上記一般式(IV)によって表されるトリアジンジクロリドは、塩化シアヌルとエチニルフェニルアミン化合物を塩基存在下で反応させることにより、容易に製造することができる。 上記一般式(I)および式(II)によって表される芳香族ジアミン化合物の製造は、それぞれ上記一般式(III)および式(IV)で表されるトリアジンジクロリドを原料として、一段階の工程で行われる。 以下、代表的な例によって説明する。 上記一般式(I)および式(II)で表される芳香族ジアミン化合物は、それぞれ上記一般式(III)および式(IV)で表されるトリアジンジクロリドと過剰のジアミン化合物を塩基存在下に反応させることによって得られる。 ジアミン化合物の量は,トリアジンジクロリドの量の10〜20倍molとすることが好ましい。10倍molより少なければトリアジンジクロリドとジアミン化合物の重合が起こってしまい,20倍molより多ければ目的とする芳香族ジアミン化合物の製造効率が低くなるので,いずれの場合も収率が悪くなり好ましくないからである。 反応溶媒中には塩基を存在させることで、副生する塩化水素を中和することができる。 この反応に用いる塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素セシウムなどが好ましい。 反応溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)などの非プロトン性極性溶媒が好ましい。 反応温度は20〜200℃が好ましい。20℃より低い温度もしくは200℃よりも高い温度であれば、芳香族ジアミン化合物を製造することができないからである。尚、経済的には30℃〜150℃の温度範囲がより好ましい。 反応時間は用いた試薬の種類や量、溶媒の種類、反応温度などによって異なるが、一般に数十分から数日間反応させるのが好ましい。 このようにして得られる上記一般式(I)および式(II)の芳香族ジアミン化合物はそのまま種々の高分子化合物の原料となる。 以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。〈試験方法〉 以下の実施例において、得られる化合物の組成・構造の同定等は、次の手法により行った。(A)FT‐IR(フーリエ変換赤外分光法)(KBr,cm−1):JASCO FT-IR4200を用いて、KBr錠剤法により測定した。(B)1H NMR(核磁気共鳴分光法)(400MHz,ppm):Buruker AC400を用いて、テトラメチルシラン(TMS)を含む重水素化溶媒中で測定した。(C)13C NMR(核磁気共鳴分光法)(100Hz,ppm):Buruker AC400を用いて、テトラメチルシラン(TMS)を含む重水素化溶媒中で測定した。(D)元素分析:PerkinElmer2400を用いて、炭素、水素および窒素元素の定量分析を行った。(実施例1)(トリアジンジクロリドの製造) 以下の操作により、芳香族ジアミン化合物の原料となるトリアジンジクロリドの製造を行った。〈操作〉 マグネット攪拌子、塩化カルシウム管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの三口フラスコに、18.44g(0.10mol)の塩化シアヌルと100mLのテトラヒドロフラン(THF)を入れ、攪拌しながら溶解させた後に、氷浴で0〜5℃に冷却した。11.72g(0.10mol)のp‐エチニルアニリンを60mLのTHFに溶かした溶液を温度上昇に注意しながらゆっくりと滴下し、0〜5℃で2時間撹拌した。 次に、5.30g(0.05mol)の炭酸ナトリウムを30mLの蒸留水に溶かした水溶液を、温度上昇に注意しながらゆっくりと滴下し、0〜5℃で2時間撹拌した。その後、反応混合物を飽和食塩水で洗浄し、有機層を回収した。有機層を無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液からTHFを留去することにより、6‐(p‐エチニルアニリノ)‐1,3,5‐トリアジン‐2,4‐ジクロリドの粗生成物を得た。これをヘキサン/トルエンの混合溶媒により再結晶した後、140℃/0.1Torrで昇華精製し、さらに再結晶を行い、80℃で9時間減圧乾燥した。 上記の操作により得られた結晶について特性を調査した。その結果を以下に示す。〈結果〉(1)形状:無色針状結晶(2)収率:54%(14.3g)(3)融点:199〜200℃(4)FT‐IR(KBr,cm−1):3287(N-H),2104(C≡C),1615(C=C),1541(C=N)(5)1H NMR(400MHz,acetone‐d6,ppm):3.65(s,1H,C≡CH),7.54(d,2H,phenylene),7.79(d,2H,phenylene),10.02(s,1H,NH)(6)13C NMR(100Hz,acetone‐d6,ppm):79.2,83.8(C≡C),119.4,121.9,133.4,138.4(phenylene),165.2,169.5,170.5(triazine)(7)元素分析(C11H6Cl2N4 分子量265.10) 計算値:C:49.84%,H:2.28%,N:21.13% 実験値:C:49.97%,H:2.54%,N:21.22%(芳香族ジアミン化合物の製造) 上記の操作により得られた結晶を原料として以下の操作により芳香族ジアミン化合物を製造した。本例における芳香族ジアミン化合物は、前記式(II)で表される2,4‐ビス(p‐アミノアニリノ)‐6‐(p‐エチニルアニリノ)‐1,3,5‐トリアジンである。〈操作〉 マグネット攪拌子、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、100mLの1,4‐ジオキサン、5.30g(0.050mol)の炭酸ナトリウムおよび54.07g(0.50mol)のp‐フェニレンジアミンを加え、還流温度で攪拌し溶解させた。そこに、13.26g(0.050mol)の6‐(p‐エチニルアニリノ)‐1,3,5‐トリアジン‐2,4‐ジクロリドを250mLの1,4‐ジオキサンに溶かした溶液をゆっくりと滴下した。その後、還流温度のまま一晩攪拌した。反応混合物を1.5Lの熱水に投入し、生成物を析出させた。 これを熱水で4回、蒸留水で1回洗浄した。ろ過により回収した析出物をアセトン中で30分間加熱還流させ、不溶分をろ別した。ろ液からアセトンを留去することにより、褐色の粗生成物を得た。これを活性炭を用いて1,4‐ジオキサン/ヘキサンの混合溶媒により2回再結晶を行い、100℃で9時間減圧乾燥した。〈結果〉(1)形状:淡黄色粉末結晶(2)収率:63%(12.9g)(3)融点:242〜244℃(硬化反応)(4)FT‐IR(KBr,cm−1):3365(N‐H),2101(C≡C),1610(C=C),1570(C=N),1501(C=C)(5)1H NMR(400MHz,DMSО‐d6,ppm):4.00(s,1H,C≡CH),4.81(s,4H,NH2),6.55(d,4H,phenylene),7.33-7.35(m,6H,phenylene),7.86(d,2H,phenylene),8.71(s,2H,NH),9.19(s,1H,NH)(図1参照)(6)13C NMR(100Hz,DMSО‐d6,ppm):79.3,84.1(C≡C),113.9,119.4,122.9,128.8,131.9,141.3,144.3(phenylene),163.9,164.2(triazine)(図2参照)(7)元素分析(C23H20N8 分子量408.46) 計算値:C:67.63%、H:4.94%、N:27.43% 実験値:C:67.46%、H:4.97%、N:27.45%(実施例2)(合成樹脂の製造) 本例では、本発明に係る芳香族ジアミン化合物を用いて含フッ素芳香族ポリイミドを合成した。ペルフルオロノネニル基含有ジアミン(FNDA)とエチニル基含有ジアミン(EDA)を種々のモル比(総モル量2.5mmol)でNMP(10mL)に溶解させた。この溶液にビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)(2.5mmol)を加え、6時間反応させ、ポリアミド酸溶液を得た。この溶液をガラス板にキャストし、段階的に300〜350℃まで加熱してポリイミドフィルムを作製した。 尚、反応式は図3に示した。 上記した通り、ペルフルオロノネニル基含有ジアミン(FNDA)とエチニル基含有ジアミン(EDA)のジアミンモノマーと、テトラカルボン酸二無水物(BPDA)の重付加により、対数粘度が0.6〜1.3dL/gの高分子量のポリアミド酸を合成した。 これを化学イミド化することによりNMPやDMIなどの溶媒に可溶なポリイミド共重合体を得ることができた。また、300℃で熱イミド化することによりポリイミド共重合体フィルムを作製することができた。熱イミド化したポリイミドについてはEDA含量50mol%以上で不溶化となり、350℃で熱イミド化したポリイミドについてはEDA含量が20mol%以上で不溶化となった。熱イミド過程でエチニル基の熱架橋反応が起こったためである。 EDA含量が増加するにつれて、ガラス転移温度は287℃から341℃に増加し、熱膨張係数は43から20ppm/℃に減少した。また、動的粘弾性測定では、EDA含量が増加するにつれてガラス転移温度以上での貯蔵弾性率は高くなった。 フィルムの引張特性に関しては、EDA含量が増加するにつれて引張強度が95から121MPaに増加し、破断伸びは7から2%に低下し、引張弾性率は5から8GPaに増加した。さらに、フィルム表面の水の接触角は、EDA含量が50mol%まで90°以上と高い撥水性を示し、フィルム最表面にフッ素原子団が偏析していた。 以上の結果から、本発明の含フッ素芳香族ポリイミドは、易加工性と耐溶剤性を有するフッ素系コーティング合成樹脂としての応用も可能であることが分かった。上記の結果を表1に示す。 なお、上記重合における原料としてビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を例示したが、それ以外に、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6FDA)等についても同様の結果が得られた。 本発明により耐熱性及び機械的特性に優れ、しかも有機溶媒に溶解できるため、成形性にも優れた耐熱性、耐溶剤性合成樹脂の原料となる新規な芳香族ジアミン化合物及びその製造方法並びに該芳香族ジアミン化合物を原料とした合成樹脂が提供される。 次式(化1)で表される芳香族ジアミン化合物。(式中のR1,R2,R3,R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す) 次式(化2)で表される、請求項1に記載の芳香族ジアミン化合物。 次式(化3)で表されるトリアジンジクロリドを原料として、次式(化4)で表される芳香族ジアミン化合物を誘導することを特徴とする芳香族ジアミン化合物の製造方法。(式中のR1およびR4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す)(式中のR1,R2,R3,R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す) 次式(化5)で表されるトリアジンジクロリドを原料として、次式(化6)で表される芳香族ジアミン化合物を誘導することを特徴とする、請求項3に記載の芳香族ジアミン化合物の製造方法。 前記トリアジンジクロリドとジアミン化合物を塩基存在下に反応させて下記(化7)で表される芳香族ジアミン化合物を誘導する芳香族ジアミン化合物の製造方法。(式中のR1,R2,R3,R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す) 前記塩基として、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素セシウムから選ばれる1種以上を用いることを特徴とする請求項5に記載の芳香族ジアミン化合物の製造方法。 反応時の溶媒として、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)を使用することを特徴とする請求項5又は6に記載の芳香族ジアミン化合物の製造方法。 反応温度が20〜200℃であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の芳香族ジアミン化合物の製造方法。 前記トリアジンジクロリドは、塩化シアヌルとエチニルフェニルアミン化合物を塩基存在下に反応させて製造することを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の芳香族ジアミン化合物の製造方法。 請求項1又は2に記載の芳香族ジアミン化合物を用いて合成した芳香族ポリイミド合成樹脂。 請求項1又は2に記載の芳香族ジアミン化合物と、ペルフルオロノネニル基含有ジアミン(FNDA)とを用いて合成した含フッ素芳香族ポリイミド合成樹脂。 さらにビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて合成した請求項10又は11に記載の芳香族ポリイミド合成樹脂。 【課題】耐熱性および機械的特性に優れ、しかも有機溶媒に溶解できる成形性に優れた耐熱性樹脂の原料となる新規な芳香族ジアミン及びその製造方法並びに該芳香族ジアミン化合物を原料とした樹脂を提供する。【解決手段】次式で表される芳香族ジアミン化合物。(式中のR1,R2,R3,R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基を示す)【選択図】図3