タイトル: | 公開特許公報(A)_毛髪の縮毛矯正方法 |
出願番号: | 2009248698 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 8/22,A61K 8/46,A61Q 5/04 |
八巻 悟史 河田 恵美子 柿澤 みのり 川副 智行 JP 2011088878 公開特許公報(A) 20110506 2009248698 20091029 毛髪の縮毛矯正方法 株式会社資生堂 000001959 志村 光春 100103160 八巻 悟史 河田 恵美子 柿澤 みのり 川副 智行 JP 2009219803 20090924 A61K 8/22 20060101AFI20110408BHJP A61K 8/46 20060101ALI20110408BHJP A61Q 5/04 20060101ALI20110408BHJP JPA61K8/22A61K8/46A61Q5/04 5 OL 8 4C083 4C083AB012 4C083AB411 4C083AB412 4C083AC532 4C083AC542 4C083AC771 4C083AC772 4C083BB53 4C083CC34 4C083DD23 4C083DD27 4C083EE25 本発明は、毛髪における美容方法に関する分野の発明であり、さらに具体的には、毛髪の縮毛矯正方法に関する発明である。 パーマネントウエーブ用剤には、毛髪にウエーブを形成させる目的のものばかりではなく、癖毛を真直に矯正するためのストレートパーマ剤(縮毛矯正剤)が知られている。ストレートパーマ剤は、過去の施術によりウエーブがかかっている毛髪を積極的にもとの状態に戻す場合や、本来有している癖毛を真直に矯正する場合や、明らかなストレートヘアとする等の目的に用いられており、美容室、美容院、ヘアサロン等において、施術を伴って用いられている。 縮毛の矯正は、施術者の勘や経験に基づいて行われる傾向が強く、施術者の技量は、縮毛矯正の出来・不出来に大きな差になって表れる傾向がある。また、縮毛矯正に際しては、毛髪強度が低下し、毛髪が痛みやすい。よって、本発明は、縮毛矯正効果がより効果的に持続し、かつ、毛髪強度の低下を抑制することも可能な、最適な縮毛矯正方法を提供することを課題とする発明である。 うねりのないまっすぐな毛髪(ストレート毛)とうねりのある毛髪(縮毛)の違いは、毛髪の形状が真円状であるか楕円状であるかなどといったマクロ的な違いで説明されることが一般的であるが、本発明者らは、毛髪のミクロ的な視点に着目し、横断面に切片化した毛髪にマイクロビームX線を照射した際に得られる回折像からミクロフィブリルの配向性(周期性)の違いを探索してきた。その結果、ストレート毛では、全方向に回折像が現れミクロフィブリル周期性がどの方向にも存在することが、縮毛では、一方向のみ回折像が現れミクロフィブリル周期性が一方向に偏って存在していることを見出した。 また、本発明者らは、縮毛の矯正処理においては、外観上ストレートな状態に処理するだけではなく、毛髪のミクロフィブリル周期性をも変化させることが重要な因子であると考え、鋭意検討を行った結果、縮毛の矯正処理のステップにおいて、最もミクロフィブリルの周期構造を変化させ得るステップは、熱処理ステップであることを突き止め、さらに縮毛矯正における最適な条件についての検討を行った。その結果、熱処理温度を175℃以上とすることにより、一旦、ミクロフィブリルのα−結晶が融解を起こし、その後の縮毛矯正効果が向上することを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、下記(1)〜(3)のステップ:(1)第1剤塗布による毛髪の還元ステップ、(2)毛髪の熱処理ステップ、(3)第2剤塗布による毛髪の酸化ステップを含む、毛髪の縮毛矯正方法において、(2)毛髪の熱処理ステップの熱処理温度を175〜220℃とする、毛髪の縮毛矯正方法(以下、本発明の縮毛矯正方法ともいう)を提供する発明である。 また、(1)第1剤塗布による毛髪の還元ステップを、チオ乳酸又はその塩類(以下、チオ乳酸類ともいう)の塗布、とすることにより、縮毛矯正効果と共に、毛髪の損傷抑制効果が認められ、現状における本発明の毛髪矯正方法の最適の態様である。 本発明により、極めて効果的に縮毛矯正を行うことが可能な、縮毛矯正方法が提供される。本発明の縮毛矯正方法の各ステップにおける、縮毛矯正効果を、半値幅変化率を指標として検討した結果を示す図面である。本発明の縮毛矯正方法における熱処理の条件を検討した結果を示す図面である。本発明の縮毛矯正方法における、還元剤の種類による結果を検討した結果を示す図面である。本発明の縮毛矯正方法における、還元剤の種類の毛髪強度に対して及ぼす影響を検討した結果を示す図面である。 上述したように、本発明の縮毛矯正方法は、下記(1)〜(3)のステップを含むことを前提とする、縮毛矯正方法である。(1)第1剤塗布による毛髪の還元ステップ、(2)毛髪の熱処理ステップ、(3)第2剤塗布による毛髪の酸化ステップ 以下、これらのステップを、本発明の特徴と関連させて説明する。[第1ステップ] 第1ステップ(1)は、還元剤を含む第1剤塗布による毛髪の還元ステップである。第1ステップにより、毛髪におけるジスルフィド結合が切断される。還元剤としては、チオ乳酸、チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、又は、これらの塩類(アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩等)、システイン、システイン誘導体、システアミン、又はこれらの塩類等から選ばれる1種又は2種以上が例示される。前述したように、これらの中でも、チオ乳酸、又は、その塩類、が最も好適である。第1剤には、その他の配合成分として、例えば、アンモニア、有機アミン、アンモニウム塩、塩基性アミノ酸、モノエタノールアミン等のアルカリ剤;非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等の界面活性剤;エデト酸塩等の安定化剤、その他、油分、多価アルコール、水、等が挙げられる。第1剤における還元剤の配合量は、公知のパーマネントウエーブ剤の第1剤に準じ、特に限定されるものではない。毛髪と第1剤との接触時間は、通常は、10〜30分間程度である。[第2ステップ] 第2ステップ(2)は、毛髪の熱処理ステップであり、第1ステップにおいて、ジスルフィド結合が切断された毛髪に対して熱処理を施すことにより、毛髪におけるミクロフィブリルのα−結晶を融解させるステップである。このステップは、本発明の優れた縮毛矯正効果を発揮させるために必要なステップである。この毛髪のミクロフィブリルのα−結晶を融解させるためには、175℃以上の加熱を毛髪に対して行うことが必要である。また、加熱温度の上限は、220℃である。加熱温度が220℃を超えると、毛髪が焦げてしまい好ましくない。また、好適な加熱温度範囲は、175〜200℃であり、最も好適には、175〜185℃である。また、毛髪の加熱手段は、通常の通り、好適にはヘアアイロンを温度調整することにより行い、加熱時間は、ヘアアイロンと毛髪との接触を行っている総時間として、2〜5秒間程度を目安とすることが好適である。なお、この第2ステップは、1回(サイクル)のみ行うことも可能であるが、2〜3回(サイクル)を行うことも可能である。ただし、毛髪の熱処理ステップを繰り返し行うことで、毛髪の強度は低下する傾向にある。[第3ステップ] 第3ステップ(3)は、酸化剤を含有する第2剤による、毛髪の酸化を行うことにより、新たなジスルフィド結合を形成し、直毛状態を固定するためのステップである。第2剤は、現状で採用されている、パーマネントウエーブ剤の第2剤に準ずる構成であり、酸化剤としては、例えば、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、過ホウ素酸ナトリウム、過酸化水素等が挙げられる。また、適宜、水の他に、pH緩衝剤やシリコーンエマルジョン等を含有させることも可能である。第2剤における酸化剤の配合量は、公知のパーマネントウエーブ剤の第2剤に準じ、特に限定されるものではない。毛髪と第2剤との接触時間は、通常は、3〜20分間程度である。 本発明の毛髪矯正方法は、上記のステップ(1)〜(3)を含むものであるが、適宜他のステップを伴うことも可能である。例えば、第1ステップの毛髪還元ステップを行った後に、毛髪の洗浄(水洗)と、ドライヤー等による乾燥ステップを入れてから、第2ステップの毛髪の加熱ステップを行うことは、可能かつ有益である。また、第3ステップの毛髪の酸化ステップを行った後に、毛髪の洗浄(水洗)と、ドライヤー等による乾燥ステップを入れることも、可能かつ有益である。 以下、本発明の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、これは、本発明の範囲を限定するものではない。 本実施例においては、様々な条件で縮毛矯正処理した毛髪の横断面にマイクロビームX線を照射し、繊維構造の変化を観察して、方位角方向360°の強度プロファイルに現れるピークの半値幅の変化から、ミクロフィブリルの周期構造を変化させる重要な因子を探索した。以下、その内容と結果について説明する。[縮毛矯正方法の効果の検討] うねりのある日本人毛髪の根本部分を処理前としてサンプリングし、残部に各条件での縮毛矯正処理を行った後、処理前と処理後の毛髪をミクロトームで30μmに横断面を切片化し、サンプルとした。この試料の横断面に垂直方向からマイクロビームX線を20μm間隔で照射した。得られた回折像の方位角方向360°の強度プロファイルより、各ピークの半値幅を求めることによってミクロフィブリル構造の配向性を解析した。すなわち、強度ピークがブロード(一様傾向、すなわち直毛傾向)になると、半値幅は増加することから、「半値幅変化率=処理後平均半値幅/処理前平均半値幅」という指標により、縮毛矯正による、毛髪内部の構造変化を指標とした。半値幅変化率が1より大きければ、縮毛矯正処理により、毛髪は直毛傾向に矯正されたことを示し、その値が大きいほど、矯正度合いは大きいことを示している。逆に、半値幅変化率が1より小さければ、縮毛矯正処理を施したものの、却って癖毛傾向を助長してしまったことを示している。縮毛矯正処理・縮毛矯正第1剤にて15分処理後、流水ですすぐ。・熱処理:縮毛矯正用ヘアアイロン使用 100℃、140℃、160℃、180℃、を、各3秒・1サイクル行う。・縮毛矯正第2剤 5分処理後、流水ですすぐ。 <第1剤の処方> チオ乳酸アンモニウム、又は、チオグリコール酸モノアンモニウムを10.5質量% ジチオジグリコール酸ジアンモニウム 4.0質量% モノエタノールアミン 2.0質量% ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液 適量 精製水 残余 <第2剤の処方> 過酸化水素 1.5質量% ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液 適量 リン酸 適量 リン酸水素2ナトリウム 適量 精製水 残余結果(1)ミクロフィブリルに配向性のあるうねり毛髪では、縮毛矯正処理によって配向性が減少していることが示された。(図示せず)(2)第1剤処理(還元)、第1剤処理及び熱処理(還元・熱)、第1剤処理、熱処理及び第2剤処理(還元・熱・酸化)、第1剤処理及び第2剤処理(還元・酸化:熱処理なし)、熱処理のみ(熱のみ)の系において、第1剤における還元剤としてチオ乳酸アンモニウムを用いて、半値幅変化率を検討した(図1)。 この結果より、第1剤による還元処理では半値幅は減少し、より偏った構造となったことが明らかになり、還元処理に引き続く熱処理によって、毛髪の内部構造が大きく変化して、直毛傾向となったことが示されている。また、第2剤による酸化処理により、熱処理によって変化した毛髪の構造が保持されると考えられる。熱処理のみでは、かえって、毛髪を偏った構造とすることも明らかになった。(3)第1剤における還元剤としてチオ乳酸アンモニウムを用いた、第1剤処理、熱処理及び第2剤処理(還元・熱・酸化)の系において、熱処理温度を、100℃、140℃、160℃、及び、180℃、として、半値幅変化率を検討した(図2)。 この結果より、180℃におけるヘアアイロン処理により、最も効果的に縮毛矯正効果が発揮されることが示された。 すなわち、各処理温度において処理を行った毛髪は、いずれも外観上まっすぐに見えるが、本発明において規定される特定の条件で処理することにより、毛髪の内部構造がよりストレート毛に近づくことが、上記の半値幅のデータより明らかになった。これにより、本発明の縮毛矯正方法により処理を行った毛髪における縮毛矯正効果は、他の条件にて行った毛髪よりも、持続性に優れると考えられる。(4)第1剤における還元剤として、チオ乳酸アンモニウム(TLA)を用いた場合と、チオグリコール酸モノアンモニウム(TGA)を用いた場合の、縮毛矯正効果に顕れる影響を検討した。なお、熱処理温度は、180℃で行い、その後に、第2剤による酸化処理を行った(図3)。 この結果により、チオグリコール酸類に比べ、チオ乳酸類を用いた方が、縮毛矯正効果が優れていることが明らかになった。[毛髪強度に対する還元剤の影響] うねりのある日本人毛髪をサンプリングし、これに対して、一連の縮毛矯正のステップを行った。すなわち、第1剤における還元剤として、(1)チオグリコール酸モノアンモニウム(TG:9.5%)及びジチオグリコール酸(DTDG:3.0%)、(2)チオ乳酸アンモニウム(TL:9.5%)のみ、(3)チオ乳酸アンモニウム(TL:9.5%)及びジチオグリコール酸ジアンモニウム(DTDG:3.0%)、の3通りの系を用い、還元処理、ヘアアイロンによる熱処理(180℃・3秒)、過酸化水素を5%含有する上記の第2剤による酸化工程を3回行い、毛髪強度に対する影響を検討した。毛髪強度は、精密万能試験器オートグラフAGS−H 50N(株式会社 島津製作所社製)により計測した。結果を図4に示す。図4においては、初期の毛髪強度を1として、縦軸に相対的な毛髪強度を表している。熱処理の回数が多ければ多いほど、毛髪強度は低下するのが原則であるが、本試験では、還元剤の種類を変えることにより、この毛髪強度にどのような影響が現れるかについての検討を行った。 図4の結果から、還元剤としてチオ乳酸アンモニウムを用いた系は、チオグリコール酸モノアンモニウムを用いた系よりも、熱処理の回数による毛髪強度の落ちが少なく、チオ乳酸類を、本発明の縮毛矯正方法に用いることにより、毛髪の保護の徹底を図ることができることが明らかとなった。下記(1)〜(3)のステップ:(1)第1剤塗布による毛髪の還元ステップ、(2)毛髪の熱処理ステップ、(3)第2剤塗布による毛髪の酸化ステップを含む、毛髪の縮毛矯正方法において、(2)毛髪の熱処理ステップの熱処理温度を175〜220℃とする、毛髪の縮毛矯正方法。上記毛髪の縮毛矯正方法において、(2)毛髪の熱処理ステップの熱処理温度は、175〜200℃である、請求項1に記載の毛髪の縮毛矯正方法。上記毛髪の縮毛矯正方法において、(2)毛髪の熱処理ステップの熱処理温度は、175〜185℃である、請求項1に記載の毛髪の縮毛矯正方法。上記毛髪の縮毛矯正方法において、(2)毛髪の熱処理ステップは、ヘアアイロンによって行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪の縮毛矯正方法。上記毛髪の縮毛矯正方法において、(1)第1剤塗布による毛髪の還元ステップは、チオ乳酸又はその塩類の塗布によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪の縮毛矯正方法。 【課題】 縮毛矯正効果がより効果的に持続し、かつ、縮毛矯正処理工程における毛髪強度の低下を抑制することも可能な、最適な縮毛矯正方法を提供すること。【解決手段】下記(1)〜(3)のステップ:(1)第1剤塗布による毛髪の還元ステップ、(2)毛髪の熱処理ステップ、(3)第2剤塗布による毛髪の酸化ステップを含む、毛髪の縮毛矯正方法において、(2)毛髪の熱処理ステップの熱処理温度を175〜220℃とする毛髪の縮毛矯正方法、を提供することにより、毛髪における縮毛矯正効果をより持続的とし、かつ、縮毛矯正処理工程における毛髪強度の低下を抑制することも可能であることを見出し、本発明を完成した。【選択図】 なし