タイトル: | 公開特許公報(A)_液体消臭剤組成物 |
出願番号: | 2009231245 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 8/368,A61L 9/01,A61Q 15/00,A61K 8/41,A61K 8/02 |
石川 晃 鍬農 陽一 JP 2011079750 公開特許公報(A) 20110421 2009231245 20091005 液体消臭剤組成物 花王株式会社 000000918 古谷 聡 100087642 溝部 孝彦 100076680 持田 信二 100091845 義経 和昌 100098408 石川 晃 鍬農 陽一 A61K 8/368 20060101AFI20110325BHJP A61L 9/01 20060101ALI20110325BHJP A61Q 15/00 20060101ALI20110325BHJP A61K 8/41 20060101ALI20110325BHJP A61K 8/02 20060101ALI20110325BHJP JPA61K8/368A61L9/01 HA61L9/01 KA61Q15/00A61K8/41A61K8/02 4 OL 14 4C080 4C083 4C080AA03 4C080BB02 4C080CC01 4C080HH03 4C080JJ01 4C080KK06 4C080LL02 4C080MM14 4C080MM18 4C080QQ20 4C083AB032 4C083AC311 4C083AC312 4C083AC541 4C083AC542 4C083CC17 4C083DD08 4C083DD23 4C083EE18 本発明は、液体消臭剤組成物に関し、詳しくは、汗臭、菌代謝により熟成した汗臭、足臭、及び皮脂臭等の低減効果に優れ、消臭処理後、経時での臭い戻りがない液体消臭剤組成物、及びそれを用いる消臭方法に関する。 消臭剤は不快な臭いを和らげるものであり、芳香剤と共に快適な生活を送る上で重要な部分を担っている。消臭に関する近年のニーズは、強い芳香で悪臭をマスキングする芳香剤から、微香性又は無香性で臭い自体を消す消臭剤へと変化している。 臭い自体を消す技術の一つとして、中和反応を利用した中和消臭技術があげられる。これは、酸性又はアルカリ性の揮発性悪臭成分を、中和により揮発性の低い化合物に変えてしまう技術であり、効果の高い消臭方法として知られている。しかしながら、中和反応はイオン交換平衡によるものであり、乾燥して水分が減少した場合にイオン解離度の平衡がずれると、逆反応(中和塩の加水分解)が進行し、いわゆる‘臭い戻り’が生じることがある。消臭剤適用直後だけでなく、悪臭に対する消臭効果が持続する消臭剤が求められている。 従来、消臭基剤としてポリカルボン酸を用いる例は知られているが、芳香族ポリカルボン酸及び/又はその中和物が汗臭、菌代謝により熟成した汗臭、足臭、及び皮脂臭等の低減効果に優れており、かつ消臭効果の持続性に優れていることは知られていない。 例えば、特許文献1には、少なくとも一つのカルボン酸基を有する総炭素数2〜16の有機酸類及びその塩の使用が開示されているが、その配合目的は亜硫酸塩の保存安定性向上であり、主に金属キレート効果を期待したものである。また、2〜6のカルボン酸基を有する有機酸類又はその塩を使用できることは記載されているが、汗臭、菌代謝により熟成した汗臭、足臭、及び皮脂臭等の低減効果及び消臭効果の持続性に有効な具体的な構成については示唆がない。 特許文献2には、25℃における第1番目の酸解離指数と第2番目の酸解離指数の差が1.7以上である有機二塩基酸又はその塩により、酢酸、イソ吉草酸等の低級脂肪酸類やアンモニア、トリメチルアミン等のアミン類等を消臭できることが開示されている。しかしながら、有機二塩基酸又はその塩のみでは、布上で熟成した汗臭の消臭効果の持続性が充分ではなく、ラウリルジメチルアミンオキサイドによる酸臭の可溶化による消臭や、香料の併用による悪臭変調作用を必要とする。 特許文献3には、シクロヘキサンポリカルボン酸誘導体を含有する化粧品組成物が記載されており、従来、ジエチルフタレートのようなエステルが脱臭剤組成物に使用されていたことが開示されている。特許文献3でのシクロヘキサンポリカルボン酸誘導体は主に香料としての使用を意図したものであり、それゆえカルボン酸がエステル化されている方が好ましいと記載されている。しかし、臭い自体を消す効果としては不十分なものである。 また、特許文献4には、アルカノールアミン化合物(成分a)、分子中にカルボン酸基を2〜5個有するポリカルボン酸化合物(成分b)、及び水を含有する消臭剤組成物が開示されているが、(成分a)の(成分b)に対するモル比が過剰で、pHが高い(9.0〜11.5)のが特徴であり、アルカノールアミンの緩衝作用による消臭効果を主としたキッチンまわりの洗浄剤に関する技術である。このため(成分b)については、好ましい化合物として金属キレート効果の高いものが開示されており、汗臭、菌代謝により熟成した汗臭、足臭、及び皮脂臭等の低減効果及び消臭効果の持続性に有効な具体的な構成については示唆がない。 また、特許文献5には、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等のポリヒドロキシアミン化合物を0.005〜30質量%含有し、かつpH緩衝能が0.3〜300mmol/kgである空間及び/又は硬質表面用消臭剤が開示され、酸解離指数(pKa)が5以上の多塩基酸を併用することが開示されている。しかしながら、特許文献5では、汗臭、菌代謝により熟成した汗臭、足臭、及び皮脂臭等の低減効果及び消臭効果の持続性については、更なる向上が望まれている。特開2004−89358号公報特開2001−95907号公報特表2006−525974号公報特開2008−23090号公報特開2006−320711号公報 本発明は、汗臭、菌代謝により熟成した汗臭、足臭、及び皮脂臭等の低減効果に優れ、消臭処理後、経時での臭い戻りがない液体消臭剤組成物、並びに該液体消臭剤組成物を用いた消臭方法を提供することを課題とする。 本発明は、下記一般式(I)で表されるポリカルボン酸芳香族誘導体を含有する液体消臭剤組成物に関する。(式中、R1、R2、R3、R4、R5は水素原子、メチル基、−COOM基から選ばれる基であって、それぞれ同じでも違っていても良く、R1〜R5のうちの少なくとも2つは−COOM基である。Mは水素原子又は対イオンである。) また、本発明は、上記本発明の液体消臭剤組成物を対象物に噴霧して対象物の臭いを低減させる消臭方法に関する。 本発明の液体消臭剤組成物は、汗臭、菌代謝により熟成した汗臭、足臭、及び皮脂臭等の低減効果に優れ、消臭処理後、経時での臭い戻りがなく、かつ人体に触れても安全である。 また、本発明の消臭方法によれば、汗臭、菌代謝により熟成した汗臭、足臭、及び皮脂臭等に由来する悪臭を簡便かつ経時にわたり効果的に消臭することができる。[ポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)] 一般式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5は水素原子、メチル基、−COOM基から選ばれる基であって、それぞれ同じでも違っていても良く、R1〜R5のうちの少なくとも2つは−COOM基である。−COOM基はR1〜R5のうちの少なくとも2つなので、一分子中の−COOM基の数は3〜6である。また、−COOM基の位置については特に制限はないが、消臭性能及び臭い戻り抑制の観点から分子中の−COOM基は多い方が好ましい。一分子中の−COOM基の数は4〜6が好ましく、5〜6がより好ましく、6(R1〜R5の全部が−COOM基)が最も好ましい。 式(I)中のMは、水素原子又は対イオンである。消臭性能の点から、対イオンは、アルカリ金属イオン又はアルカノールアミンから得られるアルカノールアンモニウムイオンが好ましい。アルカリ金属としてはLi、Na、Kが好ましく、Li、Naがより好ましい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノn−プロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどがあげられる。モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましく、モノエタノールアミンがより好ましい。 ポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)の具体例としては、例えば、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、メリット酸、及びそれらの中和物が挙げられる。これらの中では、消臭性能の持続性の点からピロメリット酸、メリット酸、及びそれらの中和物が好ましく、メリット酸及びそれらの中和物がより好ましい。中和度は、0.5〜1.0、更に0.6〜0.9が好ましい。[ポリヒドロキシアミン化合物類(b)] 本発明の液体消臭剤組成物は、下記一般式(II)で表されるポリヒドロキシアミン化合物〔以下、ポリヒドロキシアミン化合物類(b)という〕を含有することが好ましい。(式中、R6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R7は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R8及びR9は、炭素数1〜5のアルカンジイル基である。R8及びR9は、同一でも異なっていてもよい。) 一般式(II)において、R6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基である。炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。また、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。 R6は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。 R7は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基である。炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、上記R6で述べたものが挙げられる。R7は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。 R8及びR9は、炭素数1〜5のアルカンジイル基である。R8及びR9は、同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜5のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等が好ましく、特にメチレン基が好ましい。 ポリヒドロキシアミン化合物類(b)の具体例としては、例えば、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。 これらの中では、消臭性能等の観点から、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオールから選ばれる1種以上が特に好ましい。 一般式(II)で表されるポリヒドロキシアミン化合物を塩酸等の塩として用いる場合は、塩基を添加することによりpHを調整することができる。用いることができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。 上記のポリヒドロキシアミン化合物類(b)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、ポリヒドロキシアミン化合物類(b)は、常法により製造することができる。[液体消臭剤組成物の組成等] 本発明の液体消臭剤組成物において、ポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)の含有量は、液安定性の観点から、塩ではない場合はそのまま、塩の場合はポリカルボン酸(酸型化合物)に換算して、好ましくは0.02〜10質量%であり、より好ましくは0.03〜8質量%、更に好ましくは0.04〜5質量%、より更に好ましくは0.05〜3質量%、特に好ましくは0.05〜2質量%である。また、ポリヒドロキシアミン化合物類(b)の含有量は、液安定性の観点から、塩ではない場合はそのまま、塩の場合はポリヒドロキシアミン化合物に換算して、好ましくは0.05〜10質量%であり、より好ましくは0.05〜8質量%、更に好ましくは0.05〜5質量%、より更に好ましくは0.05〜3質量%、特に好ましくは0.05〜2質量%である。 また、ポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)の消臭性能を高める観点から、配合するポリヒドロキシアミン化合物類(b)との比率は、ポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)/ポリヒドロキシアミン化合物類(b)のモル比が好ましくは0.2〜5.0、より好ましくは0.3〜4.0、更に好ましくは0.4〜3.0である。ポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)とポリヒドロキシアミン化合物類(b)の含有量は、上記範囲内で、消臭する悪臭の濃度、使用形態、繊維製品の種類によって適宜調整することができる。 本発明の液体消臭剤組成物は、ポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)及びポリヒドロキシアミン化合物類(b)以外に、残部として液体成分を含む。使用する液体成分は、ポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)及びポリヒドロキシアミン化合物類(b)を均一透明に溶解し得るものが好ましく、水や水溶性溶剤及びそれらの組み合わせが好ましい。なかでも、水を含有することが好ましい。水を用いる場合、金属イオン成分、特に多価の金属イオンを含まないものが好ましく、金属イオンを除去した蒸留水やイオン交換水が好ましい。 本発明の液体消臭剤組成物のpHは20℃で6.0〜8.5が好ましい。pH6.0以上で汗臭や足臭、皮脂臭に対する効果が優れ、またpH8.5以下でアミン類等に対する効果が優れる。 汗臭や足臭、皮脂臭及びアミン類等に対する効果、及び皮膚刺激低減の観点から、pHは20℃で6.0〜8.3が好ましく、6.5〜8.0が更に好ましい。pHの調整は、pH調整剤、例えば、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム、アルカノールアミン等のアルカリを添加することにより行うことができる。 また、本発明の液体消臭剤組成物の水分量は、好ましくは80〜99.9質量%であり、より好ましくは、85〜99質量%、更に好ましくは、85〜98質量%である。臭い戻り抑制の観点から、本発明の液体消臭剤組成物の水分量の60%を蒸発させて濃縮した時、濃縮前と後のpHの変化が0〜1であることが好ましく、0〜0.5であることがより好ましく、0〜0.3であることが特に好ましい。 本発明の液体消臭剤組成物を対象物に噴霧して対象物の臭いを低減させると、経時においても臭い戻りがなく、悪臭レベルは噴霧直後と変わらない。その消臭効果の発現機構が全て解明されているわけではないが、以下のように考えられる。 一般に、水性消臭剤による消臭は、緩衝作用を利用した中和消臭である。悪臭成分は有機脂肪酸等の酸やアミン類等のアルカリに起因しているものが多い(汗臭は脂肪酸系)。これらの悪臭成分に対し、水性消臭剤を作用させると、緩衝作用で悪臭成分が中和されて塩を形成し、悪臭成分の揮発が抑制され一時的に消臭される。ところが、放置され乾燥していく過程において、形成されていた塩が加水分解されて悪臭成分の揮発が起こり、経時における臭い戻り現象となるものと考えられる。 従来の緩衝系を利用する水性消臭剤は、消臭剤としての緩衝能を向上させるために、一般的な強酸/弱塩基、又は弱酸/強塩基の緩衝系を採用しているが、乾燥過程で起こるような濃度変化に対するpHの安定性に欠ける。すなわち、悪臭成分は、一般的に弱酸、弱塩基であるため、消臭剤噴霧直後に形成される塩が弱酸(悪臭成分)−強塩基の塩、弱塩基(悪臭成分)−強酸の塩の場合、特に緩衝剤濃度が上がり、pHが変動し、中性付近になった時に加水分解が起こり易く、揮発性が高い悪臭成分に戻ると考えられる。 本発明の液体消臭剤組成物による消臭も、緩衝作用による中和消臭が寄与していると考えられるが、緩衝能から予想される効果以上の消臭効果が得られる。これは酸成分としてポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)を採用したことによる。本発明のポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)はクエン酸などと比べて単位質量あたりの緩衝能が必ずしも高いわけではないが、消臭性能が優れているためである。いまだ推論の域を出ないが、本発明のポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)の結晶性が高いことが原因と考えている。すなわち、塩基性の悪臭成分に対しては、中和により対イオンとして悪臭成分を固定し、乾燥過程における濃度変化が生じても系外に析出することで加水分解を抑制して臭い戻りをなくし、また、酸性の悪臭成分に対しては、乾燥過程における濃度変化に対し自身が酸型のまま系外に析出し、悪臭成分との対イオン交換によって、悪臭成分の塩の減少(加水分解)を抑制して臭い戻りをなくすものと考えられる。この結果、本発明の液体消臭剤組成物によれば、悪臭成分の揮発は抑えられたままとなり、臭い戻りがなくなると考えられる。実際に、本発明の液体消臭剤組成物の元の水分量の60%を蒸発させて濃縮すると、本発明のポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)の析出が観察される。 本発明の液体消臭剤組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、界面活性剤、及び一般に添加される各種の他の消臭剤、溶剤、油剤、ゲル化剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、酸化防止剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、香料、色素、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。 界面活性剤としては特に制限はなく、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤の中から選ばれる1種以上が挙げられる。 通常、臭気成分は、布地、衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品等の固体表面に付着するが、界面活性剤は、固体表面に付着した臭気成分の揮発を抑制するばかりでなく、消臭成分である芳香族ポリカルボン酸類(a)を安定に分散させ、繊維製品等に対する接触性を向上させて、消臭性能を更に高めることができる。 非イオン性界面活性剤としては、炭素数8〜24の第1級又は第2級アルコールにエチレンオキサイド(以下、「EO」という)及び/又はプロピレンオキサイド(以下、「PO」という)を平均6〜18モル付加したポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル;平均炭素数6〜12のアルキル基を有し、EOを平均6〜20モル付加したポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;炭素数8〜24のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸に、EO及び/又はPOを平均6〜18モル付加したポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;炭素数10〜24のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸が1〜3モルエステル結合したソルビタン脂肪酸エステル又はグリセリン脂肪酸エステルに、EO及び/又はPOを平均6〜30モル付加したポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、もしくはEO及び/又はPOを平均6〜80モル付加したポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル;EO及び/又はPOを平均6〜80モル付加したポリオキシアルキレンヒマシ油又は硬化ヒマシ油;POとプロピレングリコールとの縮合物にEOを付加したもの(プルロニック型界面活性剤);POとエチレンジアミンとの縮合物にEOを付加したもの(テトロニック型界面活性剤)等が挙げられる。 非イオン性界面活性剤としては、下記一般式(III)で表される化合物が、特に好ましい。 R10−A−(DO)d−R11 (III)〔式(III)中、R10は、炭素数8〜22、好ましくは炭素数8〜20、より好ましくは炭素数8〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R11は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。Aは、−O−基又は−COO−基を示し、Dは、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基から選ばれる1種以上の基を示し、dは平均付加モル数であり、5〜15の数である。d個の(DO)は同じでも異なっていてもよい。〕 消臭性能向上の観点から、一般式(III)のR10は、好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは炭素数10〜16、更に好ましくは炭素数10〜14のアルキル基又はアルケニル基であり、R11は、好ましくは水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基、更に好ましくは水素原子である。 一般式(III)のdは、好ましくは5〜14、より好ましくは5〜13、更に好ましくは5〜12であり、ポリオキシエチレン(オキシエチレン基の平均付加モル数n=6〜12、以下のかっこ内の数字も同じである。)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=5〜12)モノアルキル(炭素数12〜14の2級の炭化水素基)エーテル、ラウリン酸ポリオキシエチレン(n=6〜13)メチルエーテルから選ばれる1種以上が特に好ましい。 陽イオン性界面活性剤としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中では、第4級アンモニウム塩が好ましい。第4級アンモニウム塩としては、4つの置換基の少なくとも1つが総炭素数8〜28のアルキル又はアルケニル基であり、残余がベンジル基、炭素数1〜5のアルキル基及び炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である化合物が挙げられる。総炭素数8〜28のアルキル又はアルケニル基は、この炭素数の範囲で、アルコキシル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルアミノ基、アルケノイルアミノ基、アルカノイルオキシ基又はアルケノイルオキシ基で置換されていてもよい。特に好適な第4級アンモニウム塩としては、N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリド、N,N−ジデシル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−テトラデシル−N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−テトラデシル−N,N−ジメチル−N−エチル4級アンモニウムエチルサルフェート等が挙げられる。 両性界面活性剤としては、炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する、アルキル又はアルケニルアミンオキサイド、アルキル又はアルケニルジエタノールアマイド、ジメチルアミノ酢酸ベタイン、又はイミダゾリニウムベタイン;炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルアミン又はアルケニルアミンにEO及び/又はPOを平均2〜40モル付加したポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルアミン;炭素数8〜18のアルキル基もしくはアルケニル基を有する、脂肪酸アミドプロピルアミンオキサイド、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−アシルアミノ酸又はその塩、又はN−アシルメチルタウリン酸塩等が挙げられる。 陰イオン性界面活性剤としては、炭素数8〜16のアルキル基を有する直鎖又は分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸等);炭素数10〜20の、アルキル硫酸塩もしくはアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルグリセリルエーテルスルホン酸のようなアルキル多価アルコールエーテル硫酸塩、高級脂肪酸塩;炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有し、平均0.5〜8モルのEO、PO、ブチレンオキサイド、又はEO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1の比で付加した、アルキルエーテル硫酸塩又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩又はアルケニルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。 上記の界面活性剤の中では、消臭性能の観点から、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好ましく、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤がより好ましい。 また、溶剤としては、水、エタノール、イソプロパノール等の低級(炭素数3〜4)アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(炭素数2〜12)、エチレングリコールやプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールやジプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性化合物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。 本発明の液体消臭剤組成物は、特にスプレー、ローション等として用いることが好適である。本発明の液体消臭剤組成物を対象物に噴霧して対象物の臭いを低減させる消臭方法が好ましい。特にミストタイプのスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1〜1.2mlに調整したものを用いることが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器等の公知のスプレー容器を用いることができる。 本発明の液体消臭剤組成物を用いる消臭方法の対象物は、空間又は固体表面を有するものであれば特に制限はない。例えば、リビングや居間の空間、タンスの中の空間、カーテン等の布地、スーツ、セーター等の衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品、食器、ゴミ箱、調理台、室内の床、天井、壁等の硬質表面を有する対象物に本発明の液体消臭剤組成物を噴霧して、対象物の臭いを効果的に低減させることができる。特に、繊維製品のような消臭対象の表面積が広い対象物において効果的である。 本発明の液体消臭剤組成物は、汗臭、菌代謝により熟成した汗臭、足臭、及び皮脂臭等の低減効果に優れ、消臭処理後、経時での臭い戻りがなく、かつ人体に触れても安全である。このため、本発明の液体消臭剤組成物は、上記のような各種の対象物に付着した悪臭に対する液体消臭剤組成物として、好適に使用することができる。<液体消臭剤組成物の調製> 下記成分を用いて、表1〜3に示す配合処方の液体消臭剤組成物を調製した。得られた組成物は、トリエタノールアミン(表1の組成物)又は2%水酸化ナトリウム水溶液(表2、表3の組成物)でpHを調整した。表中の適量は、pHを所定の値とするための量である。*ポリカルボン酸芳香族誘導体類(a)・メリット酸〔1,2,3,4,5,6−ベンゼンヘキサカルボン酸、一般式(I)中のR1、R2、R3、R4、R5が全て−COOH基である化合物〕・トリメリット酸〔1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、一般式(I)中のR1、R3が−COOH基であり、R2、R4、R5が水素原子である化合物〕・ピロメリット酸〔1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、一般式(I)中のR1、R3、R4が−COOH基であり、R2、R5が水素原子である化合物〕*比較の酸類・クエン酸・テレフタル酸・安息香酸・L−乳酸*ポリヒドロキシアミン化合物類(b)・2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール〔一般式(II)中のR6がヒドロキシメチル基、R7が水素原子、R8、R9が炭素数1のアルカンジイル基である化合物〕<消臭効果の評価>(1)消臭対象物の調製(1−1)汗臭試験片A 木綿メリヤス布(6cm×6cm)に、臭気成分として、イソ吉草酸濃度が12ppm、カプロン酸濃度が4ppm、酢酸濃度が4ppmである水溶液をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて5回スプレーし(約0.20g)、30分間乾燥させた後、汗臭試験片Aとした(表1)。(1−2)汗臭試験片B 木綿メリヤス布(6cm×6cm)に、臭気成分として、イソ吉草酸濃度が20ppmである水溶液をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて5回スプレーし(約0.20g)、30分間乾燥させた後、汗臭試験片Bとした(表2、表3)。汗臭試験片Bは、菌代謝により熟成した汗臭のモデル試験片である。(2)消臭方法 上記で得られた汗臭試験片に、表1〜3に示す液体消臭剤組成物を、スプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて16回スプレーし(計約0.64g)、所定の時間乾燥させた。(3)消臭性能評価 30歳代の男性3人及び女性3人の計6人の熟練パネラーに、液体消臭剤組成物をスプレーした後の試験片の臭いを嗅いでもらい、それぞれ下記の6段階の臭気強度表示法で評価し、その平均値を求めた。表1、表2には液体消臭剤組成物をスプレーした後、4時間後の評価結果を示した。また、表3には液体消臭剤組成物をスプレーした後、7時間後の評価結果を示した。(評価基準) 0:無臭 1:何の臭いか分からないが、ややかすかに何かを感じる強さ(検知閾値のレベル) 2:何の臭いか分かる、容易に感じる弱い臭い(認知閾値のレベル) 3:明らかに感じる臭い 4:強い臭い 5:耐えられないほど強い臭い 上記評価基準に基づいて評価した。表には平均値を示した。評価は2.0以下が好ましい。 表1から、比較例1〜3の液体消臭剤組成物は布上のモデル汗臭に対して、長時間経過後(噴霧後4時間)の消臭性能が低い。これに対して、実施例1〜3の液体消臭剤組成物は、長時間経過後の汗臭に対する消臭性能が高いことが分かる。 表2から、比較例4〜6の液体消臭剤組成物は布上のイソ吉草酸臭(菌代謝により熟成した汗臭)に対して、長時間経過後(噴霧後4時間)の消臭性能が低い。これに対して、実施例4〜5の液体消臭剤組成物は、長時間経過後の熟成した汗臭に対する消臭性能が高いことが分かる。 表3から、比較例7〜8の液体消臭剤組成物は布上のイソ吉草酸臭(菌代謝により熟成した汗臭)に対して、長時間経過後(噴霧後7時間)の消臭性能が低い。これに対して、実施例6〜7の液体消臭剤組成物は、長時間経過後の熟成した汗臭に対する消臭性能が高いことが分かる。 下記一般式(I)で表されるポリカルボン酸芳香族誘導体を含有する液体消臭剤組成物。(式中、R1、R2、R3、R4、R5は水素原子、メチル基、−COOM基から選ばれる基であって、それぞれ同じでも違っていても良く、R1〜R5のうちの少なくとも2つは−COOM基である。Mは水素原子又は対イオンである。) 更に、(b)下記一般式(II)で表されるポリヒドロキシアミン化合物を含有する、請求項1記載の液体消臭剤組成物。(式中、R6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R7は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R8及びR9は、炭素数1〜5のアルカンジイル基である。R8及びR9は、同一でも異なっていてもよい。) 20℃でのpHが6.0〜8.5である、請求項1又は2記載の液体消臭剤組成物。 請求項1〜3の何れか1項記載の液体消臭剤組成物を対象物に噴霧して対象物の臭いを低減させる消臭方法。 【課題】汗臭、菌代謝により熟成した汗臭、足臭、及び皮脂臭等の低減効果に優れ、消臭処理後、経時での臭い戻りがない液体消臭剤組成物、並びに該液体消臭剤組成物を用いた消臭方法を提供する。【解決手段】メリット酸、トリメリット酸等の、特定のポリカルボン酸芳香族誘導体類を含有する液体消臭剤組成物。【選択図】なし