タイトル: | 公開特許公報(A)_微生物のフィード培養による目的物質の製造法 |
出願番号: | 2009223694 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12P 1/00 |
山下 穣 JP 2011072193 公開特許公報(A) 20110414 2009223694 20090929 微生物のフィード培養による目的物質の製造法 味の素株式会社 000000066 川口 嘉之 100100549 松倉 秀実 100090516 遠山 勉 100089244 佐貫 伸一 100126505 丹羽 武司 100131392 山下 穣 C12P 1/00 20060101AFI20110318BHJP JPC12P1/00 Z 4 1 OL 12 4B064 4B064AE03 4B064AE29 4B064CA02 4B064CA06 4B064CC04 4B064CD09 4B064DA10 本発明は、微生物を用いた目的物質の製造方法に関し、特に、培養器に糖液をフィードしながら培養を行う方法に関する。 L−アミノ酸や核酸などの物質は、微生物を用いた発酵法により製造されている。発酵法においては、目的物質の収量はグルコースやスクロース等の炭素源の量に依存するが、培地中の糖濃度が高すぎると微生物の生育が悪くなったり、目的物質の生産性が低くなるため、培地中の糖の消費に応じて糖液をフィードしながら培養を行われることが多い。 糖液は通常、糖液を発酵槽に送液するためのフィード管を通してフィードされるが、糖濃度が高いとフィード管中で糖が固結することがあるため、従来、糖濃度は高くても750g/L程度である。しかしながら、糖液をフィードすることによって発酵槽中の培地の液量が増加するため、フィードできる糖液の量に限界があり、培地成分が希釈されるなどの問題がある。 また、発酵に用いる培地の炭素源として、複数の糖の混合物、例えばグルコースとフルクトースの混合物(特許文献1)が知られている。また、糖の析出防止について、グルコースとスクロースの混合物(特許文献2)が開示されている。しかしながら、フィード糖液としての物性から、糖の組成について検討を行ったとの報告は知られていない。欧州特許出願公開第1225230号特開2006−204132 本発明は、フィード時に糖が固結することなく、培養器に糖液をフィードすることが可能なフィード液、及びそれを用いた目的物質の製造法を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、グルコースとスクロースを混合することによって、それぞれ単独に比べて保存安定性に優れ、高濃度での糖フィードが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、以下のとおりである(1)目的物質生産能を有する微生物を培養器中の液体培地で培養し、同培地から目的物質を回収する、目的物質の製造方法であって、 前記培養器には下記の割合のグルコース及びスクロースを含むフィード液をフィード管を通して連続的又は間歇的にフィードし、 フィード液中のグルコース及びスクロースの濃度が合計で750g/L以上であることを特徴とする方法。(2)フィードされる前のフィード液を、pHを5〜9に調整して保存することを特徴とする、前記方法。(3)フィードされる前のフィード液を、50℃以下で保存することを特徴とする、前記方法。(4)フィード管を通るときのフィード液の温度が50℃以上となるように、フィード液を加熱することを特徴とする、前記方法。 本発明により、従来よりも高濃度で糖液のフィードが可能となる。また、フィード液中での糖の固結及び結晶化を低減させることができる。殺菌時のpHとスクロースの分解率との関係を示す図。pHを変えて殺菌したスクロース溶液の保存中におけるpHとスクロースの分解率の経時的変化を示す図。保存温度を変えて保存したスクロース溶液のpHとスクロースの分解率の経時的変化を示す図。スクロース及びグルコースの混合溶液中のスクロースの分解率の経時的変化を示す図。スクロース及びグルコースの混合溶液中のスクロースの分解率の経時的変化を示す図。スクロース溶液の温度と粘度との関係を示す図。スクロース及びグルコースの混合溶液の温度と粘度の関係を示す図。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明は、目的物質生産能を有する微生物を培養器中の液体培地で培養し、同培地から目的物質を回収する、目的物質の製造方法であって、前記培養器にはフィード液をフィード管を通して連続的又は間歇的にフィードする方法である。以下、このようにフィード液のフィードを伴う培養を、「フィード培養(fed-batch culture)」ということがある。 本発明においては、フィード液は、グルコース及びスクロースを含む。グルコース及びスクロースを「含む」とは、グルコース及びスクロース以外の糖を、微量含んでいてもよいことも意味する。グルコース及びスクロース以外の糖としては、フルクトースが挙げられる。このようなグルコース及びスクロース以外の糖は、糖全量に対して、50重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは2重量%以下であることが好ましい。 フィード液中のグルコースとスクロースの量比は、下記の割合である。 フィード液中のグルコースとスクロースの量比は、下記の割合であることが好ましい。 フィード液中のグルコースとスクロースの量比は、下記の割合であることがより好ましい。 また、フィード液中のグルコース及びスクロースの濃度は、合計で750g/L以上、好ましくは800g/L以上、より好ましくは900g/L以上である。グルコース及びスクロースの濃度の上限としては、好ましくは1000g/L以下、より好ましくは975g/L以下、さらに好ましくは950g/L以下である。 フィード液は、例えば、グルコース及びスクロースを上記割合及び濃度で水に溶解させ、オートクレーブ等により滅菌することにより、調製することができる。また、グルコース及びスクロースの割合及び濃度が上記範囲となるように、滅菌したグルコース溶液及びスクロース溶液を混合することによっても、調製することができる。尚、グルコース溶液及びスクロース溶液を混合してフィード液を調製する場合、例えば同濃度のグルコース溶液とスクロース溶液を等容量混合しても、混合液中のグルコースとスクロースは厳密には同濃度にはならないが、その程度の誤差は無視することができる。 また、グルコース及びスクロースを上記範囲で含むフィード液を作製しても、後述するように、滅菌中又は保存中にスクロースがグルコースとフルクトースに分解すること等によって、糖組成が若干変化することがある。このように糖組成が変化しても、フィード液が本発明の効果を奏し、調製時の糖組成が本発明の要件を充す限り、その当該フィード液は本発明の範囲に含まれる。 フィード液、又はフィード液の調製に用いるスクロース溶液の保存中のpHは、5以上であることが好ましい。pHが5より低いと、保存中にスクロースがグルコースとフルクトースに分解されやすくなる。また、フィード液を高温で保存するとスクロースの分解が進むが、この分解を抑えるためには、滅菌をオートクレーブにより行う場合は、滅菌時のpHは5以上、より好ましくは6以上に調整することが好ましい。pHがこれよりも低いと、滅菌中にスクロースの分解が進みやすくなる。 特に、目的物質の製造に、フルクトースの資化性が低い微生物を用いる場合は、スクロースの分解を低減させることが好ましい。 一方、フルクトース資化性が高い微生物を用いる場合は、フィード液の物性が損われない限り、スクロースは分解されてもよい。 保存温度は、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。保存温度が高いと、スクロースの分解が進みやすくなる。一方、保存温度が低すぎると、グルコース又はスクロースが結晶化又は固結化することがあるので、保存温度は、1℃以上、好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上であることが好ましい。したがって、好ましい保存温度の範囲は、1〜50℃、好ましくは5〜40℃、さらに好ましくは10〜30℃である。尚、フィード液の保存温度は高い方が、コンタミネーションを防ぐことができるので、この観点からは、保存温度は40〜50℃であることが好ましい。 本明細書において「固結」とは、糖の結晶同士が結合して一体となって固まり、流動性がなくなる現象をいう。糖が結晶化しても、スラリー状であれば本発明にいう「固結」ではない。尚、グルコースは、室温で1000g/Lの濃度で水に溶解可能であるが、スクロースは1000g/Lでは結晶化する。また、グルコース溶液は600g/L以上の濃度では固結するが、スクロース溶液は1000g/Lでも固結しない フィード液をフィードする際にフィード液の粘度が高いとフィード管を通りにくくなり、また、フィード液の殺菌処理が困難になることがあるので、フィード液の粘度は低い方が好ましい。フィード液の粘度は、pHが高いと高くなり、温度が低いと高くなる。粘度の観点からは、pHは9以下、好ましくは8以下であることが好ましい。 スクロースの分解低減の観点と併せると、pHは5〜9が好ましく、6〜8がより好ましい。 フィード管を通るときのフィード液の温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。 フィード液の送液にポンプを用いる場合、ポンプを通る際にも、フィード液はフィード管を通るときと同様の粘度条件を満たすことが好ましい。 本発明において、グルコース及びスクロースは、精製されたものであっても、粗精製物であってもよい。本発明において、グルコースとしてはタピオカ糖、精製グルコース等が好ましく、スクロースとしては粗糖(サトウキビ由来)、精製スクロース等が好ましい。 本発明においてフィード液は、本発明の効果を損わない限り、グルコース及びスクロース並びに許容範囲内で含まれ得るこれらの分解物の他に、他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、リン酸、リン酸カリウム、硫安、消泡剤、マグネシウム、要求性アミノ酸、培地成分が挙げられる。また、本発明のグルコース及びスクロースを含むフィード液の他に、必要に応じて、培地成分等を含む他のフィード液をフィードしてもよい。 本発明において生産される目的物質は、グルコース及びスクロースを炭素源として微生物により製造され得るものであれば特に制限されず、アミノ酸、核酸、ビタミン、抗生物質、成長因子、生理活性物質、タンパク質などが挙げられる。これらの目的物質は、塩であってもよい。 アミノ酸としては、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−リジン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−スレオニン、L−メチオニン、L−システイン、L−シスチン、L−アルギニン、L−セリン、L−プロリン、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン、L−ヒスチジン、グリシン、及びL−アラニン等が挙げられる。アミノ酸は、フリー体のアミノ酸であってもよく、硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の塩であってもよい。 核酸としては、イノシン、グアノシン、キサントシン、アデノシン、イノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸、アデニル酸等が挙げられる。核酸は、フリー体の核酸であってもよく、ナトリウム塩、カリウム塩等の塩であってもよい。 本発明に用いる微生物としては、グルコース及びスクロースを炭素源として目的物質を生産し得るものであれば特に制限されず、エシェリヒア(Escherichia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、パントエア(Pantoea)、クレブシエラ(Klebsiella)属、ラウルテラ(Raoultella)属、セラチア(Serratia)属、エルビニア(Erwinia)属、サルモネラ(Salmonella)属、モルガネラ(Morganella)属などのγ−プロテオバクテリアに属する腸内細菌や、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属に属するいわゆるコリネ型細菌、アリサイクロバチルス(Alicyclobacillus)属、バチルス(Bacillus)属などの細菌、サッカロマイセス(Saccharomyces)属やキャンディダ(Candida)等に属する酵母などが挙げられる。 L−アミノ酸生産菌もしくは核酸生産菌又はその育種に用いられる微生物、及びL−アミノ酸生産能及び核酸生産能の付与及び増強の方法については、WO2007/125954、WO2005/095627、米国特許公開公報2004-0166575号等に詳述されている。 微生物の培養は、所定のフィード液を、フィード管を通して培養器に連続的又は間歇的にフィードする以外は、通常の発酵と同様にして行うことができる。培養器としては、発酵槽又はファーメンター等の、通常の培養装置を用いることができる。 培地も、通常の微生物を用いた目的物質の製造に用いる培地、具体的には炭素源、窒素源、無機塩類、その他必要に応じてアミノ酸、ビタミン等の有機微量栄養素を含有する培地を用いることができる。合成培地または天然培地のいずれも使用可能である。 初発培地に含まれる炭素源は、グルコース及び/又はスクロースであってもよく、他の炭素源、又はそれらの混合物であってもよい。他の炭素源としては、グリセロール、フルクトース、マルトース、マンノース、ガラクトース、澱粉加水分解物、糖蜜等の糖類、及び、酢酸、クエン酸等の有機酸、エタノール等のアルコール類が挙げられる。 窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、りん酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩または硝酸塩等が使用することができる。 有機微量栄養素としては、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、更にこれらのものを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆たん白分解物等が使用でき、生育にアミノ酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添することが好ましい。 無機塩類としてはりん酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等が使用できる。 培養条件は、使用する微生物に応じて、適宜設定すればよい。 フィード培養を行う培地には、寒天培地等の固体培地で斜面培養した微生物を直接接種してもよいが、微生物を予め液体培地で培養(種培養又は前培養)したものを接種するのが好ましい。種培養又は前培養は、通常の方法で行うことができる。 フィード液の培養器へのフィードは、フィード液組成及びフィード時の温度以外は、通常のフィード培養と同様にして行えばよく、例えば、フィード液の貯留槽から、この貯留槽と培養器を連通するフィード管を通してポンプを用いて送液するか、又は圧力送液すればよい。 フィード液のフィード量、及びフィードのタイミングは、微生物による培地中の糖消費等に応じて適宜設定することができる。 培養終了後の培養液から目的物質を採取する方法は、目的物質の種類に応じて公知の回収方法に従って行えばよい。例えば、目的物質がアミノ酸であれば、培養液から菌体を除去した後に濃縮晶析する方法あるいはイオン交換クロマトグラフィー等によって採取される。 培養終了後の培地液からの目的物質の採取は、本願発明において特別な方法は必要ない。 本発明において採取される目的物質は、目的物質以外に微生物菌体、培地成分、水分、及び微生物の代謝副産物を含んでいてもよい。 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。〔実施例1〕糖溶液の保存安定性(1)粗糖(サトウキビ由来。スクロースを99重量%含む。ブラジルから入手。以下、「スクロース」と記載する。)及びタピオカ糖(グルコースを99重量%含む。タイ又はベトナムから入手。以下、「グルコース」と記載する。)を、それぞれ600g/L、800g/L、1000g/Lの濃度で水に溶解させた。各溶液を試験管に入れ、120℃で20分オートクレーブし、10℃又は35℃で48時間保存した後、各溶液を観察した。その結果、保存温度10℃及び35℃のいずれにおいても、スクロース溶液は1000g/Lで結晶が析出した。(2)スクロース及びグルコースを、それぞれ600g/L、800g/L、1000g/Lの濃度で水に溶解させた。各溶液を試験管に入れ、120℃で20分オートクレーブし、0℃で48時間保存した後、各溶液を観察した。その結果、スクロース溶液は1000g/Lで結晶が析出した。一方、グルコースは、800g/L、及び1000g/Lの濃度では、固結が観察された。(3)スクロース1000g/L及びグルコース1000g/Lのそれぞれの溶液を、表1に示す容量比で混合し、120℃で20分オートクレーブした後、0.5℃で保存した。 保存後、30時間では、試料1〜4、及び試料9、10では、結晶化が認められたが、固結はしていなかった。尚、試料1〜4では、この逆の順序、すなわちグルコース含量が多いほど結晶成長が早く、試験管内の結晶含量が多く観察された。 60時間後では、試料1、2では全体的に結晶化が認められ、試料3、4では部分的に結晶化が認められた。試料5、6、9、10では試験管の底に結晶が観察された。試料7、8では結晶が認められなかった。 120時間後では、試料1〜4は、全体的に結晶化し、固結していた。試料5では、結晶化が認められたが、固結はしていなかった。試料6では部分的に結晶化が認められ、試料9、10では試験管の底に結晶が観察された。試料7、8では結晶化が認められなかった。この傾向は、204時間後でも同様であった。 以上の結果から、グルコースとスクロースを適当な割合で混合することにより、高濃度でも溶液の保存中における結晶化及び固結を防ぐことができることがわかった。〔実施例2〕糖溶液殺菌時のpHおよび分解率 600g/Lのスクロース溶液を、pH2〜12に調整し、120℃で20分オートクレーブした。その後、スクロースの分解率を測定した。スクロースが分解すると、等モルのグルコースとフルクトースが生成する。したがって、スクロースの分解は、グルコースの増加量により評価した。結果を図1に示す。pHが5より低いと、スクロースはオートクレーブによって分解されやすくなることが明らかとなった。〔実施例3〕糖溶液殺菌後のpHおよび分解率(1)600g/Lのスクロース溶液を、そのまま(無調整、pH5.8)(J1)、又はpH7.0(J2)、pH8.0(J3)に調整後、120℃で20分オートクレーブした。その後、60℃で約1ヶ月保存した際の、pHおよびスクロースの分解率を経時的に測定した。結果を図2に示す。 pH8.0で殺菌した場合、殺菌後のpHは約6.0と他の条件に比べ高い値を示し、その後、1ヶ月間、他の試料に比べて高いpHを推移した。このpH上昇は、グルコース又はフルクトースの分解により生じる有機酸の増加が原因であると考えられる。一方、分解率は、他に比べ低く推移し、グルコースの生成は最も少なかった。(2)600g/Lのスクロース溶液(pH無調整、pH5.95)を、120℃20分でオートクレーブした。その後、30℃、40℃、50℃、又は60℃で約2日間保温した後の、pHおよび分解率(グルコースの増加量)を経時的に測定した。結果を図3に示す。 60℃で加温した場合、pHは他に比べ低く推移した。一方、分解率は他に比べ高く推移した。(3)600g/Lのスクロース溶液及び600g/Lのグルコース溶液を7:3の容量比で混合し(pH未調整)、30℃(J-1)、40℃(J-2)、50℃(J-3)、又は60℃(J-4)で70時間保存し、スクロースの分解率を経時的に測定した。結果を図4に示す。その結果、60℃保存では50℃以下の保存と比較し、スクロースの分解率が約2倍に上昇することが明らかとなった。(4)600g/Lのスクロース溶液及び600g/Lのグルコース溶液を4:6の容量比で混合し(pH未調整)、30℃(J-5)、40℃(J-6)、50℃(J-7)、又は60℃(J-8)で70時間保存し、スクロースの分解率を経時的に測定した。結果を図5に示す。その結果、60℃保存では50℃以下の保存と比較し、スクロースの分解率が約1.5倍に上昇することが明らかとなった。〔実施例4〕糖溶液の粘性(1)図6に示す濃度のスクロース(600g/L〜800g/L)を各種温度に加温した直後の粘度を測定した。結果を図6に示す。 600g/Lのグルコースとスクロースは、保存後の粘度は同等であることが確認された。また、スクロースは、750g/Lの濃度でも、保存温度を80℃にすると、600g/Lのグルコースを60℃で保存したときと同等の粘度であることが確認された。(2)スクロース及びグルコースを、それぞれ600g/L、750g/L、900g/Lの濃度で水に溶解させた。これらの溶液を7:3及び4:6の容量比で混合し、30℃、50℃、70℃にて粘度を測定した。結果を図7に示す。その結果、900g/Lの濃度でも、50℃以上では、それより低い温度に比べてかなり粘度が低下することが明らかとなった。〔実施例5〕高濃度スクロースフィード液を用いたL−フェニルアラニンの生産 エシェリヒア・コリK12株から誘導されたL−フェニルアラニン生産菌を、下記組成の培地で、36℃で通気、撹拌下で65時間培養を行った。〔培地組成〕スクロース 40g/LMgSO4・7H2O 2g/L大豆加水分解液 100mg/L(総窒素量として)H3PO4 0.8g/L(NH4)2SO4 2g/LビタミンB6 0.7mg/LビタミンB12 0.004mg/LFeSO4・7H2O 20mg/LMnSO4・5H2O 20mg/LKOH 0.7g/L消泡剤 0.015ml/LpH7 フィード糖液は、スクロース溶液(600g/L)をpH2.0及びpH8.0に調製し、120℃で20分オートクレーブしたものを、表2に示した割合で混合した。pH8.0で殺菌した場合の分解率は2%、pH2.0で殺菌した場合の分解率は100%であった。培養後のL−フェニルアラニン収率、生産性、及び培養液中のL−フェニルアラニン濃度を測定した結果を表2に示す。各々の値は、スクロース溶液をpH8.0で殺菌したときの値を1とする相対値で示した。 pH2.0で殺菌したフィード糖液の比率が高いほど、L−フェニルアラニンの生産性、及び蓄積が低下することが確認された。用いた菌株のフルクトース資化能が低く、培養中に培地中のフルクトース濃度が高まったため、L−フェニルアラニンの生産性が低下したと考えられる。 目的物質生産能を有する微生物を培養器中の液体培地で培養し、同培地から目的物質を回収する、目的物質の製造方法であって、 前記培養器には下記の割合のグルコース及びスクロースを含むフィード液をフィード管を通して連続的又は間歇的にフィードし、 フィード液中のグルコース及びスクロースの濃度が合計で750g/L以上であることを特徴とする方法。 フィードされる前のフィード液を、pHを5〜9に調整して保存することを特徴とする、請求項1に記載の方法。 フィードされる前のフィード液を、50℃以下で保存することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。 フィード管を通るときのフィード液の温度が50℃以上となるように、フィード液を加熱することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。 【課題】フィード時に糖が固結することなく、培養器に糖液をフィードすることが可能なフィード液、及びそれを用いた目的物質の製造法を提供する。【解決手段】目的物質生産能を有する微生物を培養器中の液体培地で培養し、同培地から目的物質を回収する、目的物質の製造方法において、前記培養器には下記の割合のグルコース及びスクロースを含むフィード液をフィード管を通して連続的又は間歇的にフィードし、フィード液中のグルコース及びスクロースの濃度を合計で750g/L以上とする。 30重量%<グルコース及びスクロースに対するグルコースの重量比<75重量% 70重量%>グルコース及びスクロースに対するスクロースの重量比>25重量%【選択図】図1