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タイトル:公開特許公報(A)_エポキシ樹脂含有材料の硬化度評価方法
出願番号:2009219201
年次:2011
IPC分類:G01N 21/65


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米住 元匡 JP 2011069653 公開特許公報(A) 20110407 2009219201 20090924 エポキシ樹脂含有材料の硬化度評価方法 パナソニック電工株式会社 000005832 西川 惠清 100087767 米住 元匡 G01N 21/65 20060101AFI20110311BHJP JPG01N21/65 1 1 OL 8 2G043 2G043AA06 2G043EA03 2G043FA03 2G043FA06 2G043KA02 2G043KA05 2G043KA09 2G043NA01 本発明は、エポキシ樹脂を含有する材料の硬化度を評価する方法に関するものであり、より詳しくは、芳香環を有するエポキシ樹脂の硬化度をラマンスペクトルにより評価する方法に関する。 従来、エポキシ樹脂を含有する材料の硬化度を評価する方法として、DSC(示差走査熱量計)を用いて測定した発熱量から評価する方法、NMR(核磁気共鳴)分析のエポキシ基のピークから評価する方法、IR(赤外分光)分析のエポキシ基のピークから評価する方法、ラマン分析のエポキシ基のピークから評価する方法(1260cm-1付近のエポキシ基のピークを用いたもの、2990cm-1以上3025cm-1以下のピークを用いたもの)などの方法が知られている(特許文献1参照)。このうち、スペクトル解析によりエポキシ樹脂の硬化度を評価する方法は簡単で効率よく硬化度を評価することができるものである。 しかしながら、特許文献1のラマン分析による硬化度の評価では、定量的な評価が困難であった。すなわち、2990cm-1以上3025cm-1以下のエポキシ基のピークは、他の2つのピーク(アルキルC−Hピーク(< 3000cm-1),φ−H(> 3050cm-1))の間に存在しピークの重複部分が発生するため、ピーク分離を行わなければならない。しかし、上記2つのピークは非常に強い一方で、エポキシ基のピークは弱いため、ピーク分離が困難である。そのため、ピーク分離の困難性が定量性を下げる要因となっていた。また、2990cm-1以上3025cm-1以下の領域には他のC−Hピークが重なって現れるため、エポキシ樹脂が完全に硬化してもピークが消失しないという問題があり、さらに定量性を低下させていた。特開2000−178522号公報 本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ラマン分析を用い、エポキシ樹脂含有材料の硬化度を、定量性を向上して精度よく評価する方法を提供することを目的とするものである。 本発明に係るエポキシ樹脂含有材料の硬化度評価方法は、芳香環を有するエポキシ樹脂を含む材料の硬化度を評価する方法であって、当該材料のラマンスペクトルにおけるラマンシフト値1100cm-1以上1150cm-1以下の範囲内にあるエポキシ基のピーク(A)とラマンシフト値1575cm-1以上1625cm-1以下の範囲内にあり硬化の前後で変化しない芳香環のピーク(B)とのラマン強度比(IA/IB)に基づいて、当該材料の硬化度を評価することを特徴とするものである。 本発明によれば、ラマンシフト値1100cm-1以上1150cm-1以下の範囲内にはエポキシ基以外のピークが現れないので、ピーク分離することなくエポキシ基のピークを検出することができ、また、エポキシ樹脂が硬化しても物質内でのピーク強度が変化しない芳香環のピークとの強度比でエポキシ基の減少量を判断するので、定量性を向上して硬化度を精度よく評価することができるものである。エポキシ樹脂含有材料のラマンスペクトルのデータであり、図2のスペクトルの一部の拡大図である。エポキシ樹脂含有材料のラマンスペクトルのデータである。エポキシ樹脂のラマンスペクトルのデータである。 本発明のエポキシ樹脂含有材料の硬化度評価方法は、ラマン分析によるラマンスペクトルを用いる。ラマン分析は、入射光と散乱光とのエネルギー差から物質内の官能基の振動エネルギーを対応させて分析を行う手法である。このエネルギー差(振動数の差)がラマンシフト値と呼ばれるものであり、物質の官能基に応じてラマンシフト値でのラマン強度に強弱が生じ、このラマンシフト値におけるラマン強度をチャートすることによりラマンスペクトルが得られる。 ラマンスペクトルとしては、可視レーザー励起のラマン分光計や近赤外レーザー励起のラマン分光計等で測定したラマンスペクトルを用いればよく、特に限定はされるものではない。例えば、光源をHe−Neレーザーとし、入射光の波長を630〜640nm程度に設定することができる。 エポキシ基のピークとしては、ラマンシフト値2990cm-1以上3025cm-1以下、1260cm-1付近、1100cm-1以上1150cm-1以下、などのピークがあるが、このうち本発明では、ラマンシフト値が1100cm-1以上1150cm-1以下の範囲内にあるピーク(A)を用いる。2990cm-1以上3025cm-1以下のエポキシ基のピークは、他の2つのピーク(アルキルC−Hピーク(< 3000cm-1),φ−H(> 3050cm-1))の間に存在しピークの重複部分が発生するため、ピーク分離を行わなければならず、定量性が低くなるので好ましくない。また、1260cm-1付近のピークもピークが鮮明に検出できないために定量性が低く実用的ではない。しかしながら、ピーク(A)を用いれば、他のピークと重複することなくピークを検出することができるのでピーク分離を行う必要がなく、また、硬化するとピークが消失するので、定量性を向上することができるものである。ピーク(A)はエポキシ基のCH2のピークである。 本発明の方法によって硬化度を評価する材料は、芳香環を有するエポキシ樹脂を含む材料である。そして、芳香環を有するエポキシ樹脂は、芳香環に由来するラマンシフト値1575cm-1以上1625cm-1以下の範囲内にピーク(B)を有しており、このピーク(B)が硬化の前後で変化しないために、このピーク(B)を参照ピークとして利用してピーク(A)と比較するのである。 ラマンスペクトルを測定した際、測定ごとにスペクトルの強度が変わることがあり、エポキシ基のピークのみで硬化状態を判断することは難しい。測定時の雰囲気やノイズによって強度が異なってくることがあるからである。しかし、本発明では、芳香環を有するエポキシ樹脂における、エポキシ基のピークと芳香環のピークとに着目し、硬化の前後で物質内でのピーク強度が変化しない芳香環のピークを基準として、エポキシ基の量を相対的に表すものであるので、測定によって強度が変化しても相対的にエポキシ基の量を把握することができ、正確に樹脂の硬化度を評価することができるのである。 ピーク(A)とピーク(B)のラマン強度比(IA/IB)は各ピークのピークトップ(高さ)を比較しても、各ピークのピークエリア(面積)を比較してもよい。このうち、ピーク(A)が鮮明に得られることから面積比を有効に利用することができる。すなわち、ピークが重複する場合、検出したいピークにおけるベースラインが不明確になるため、面積の算出が不正確となるが、ピーク(A)を用いれば、他のピークとの重複がないので、ベースラインが明確であり、面積比を精度よく用いることができるものである。もちろん、ピークトップを用いる場合も、ピークトップの位置はピーク重複があれば重複度合で変化してしまう(高くなる)が、ピーク(A)を用いれば、このようなピークトップ位置の変化がないので精度よく測定することができる。 ピーク(A)[1100cm-1以上1150cm-1以下]及びピーク(B)[1575cm-1以上1625cm-1以下]は、ラマンシフト値が1100 cm-1から1625cm-1までの範囲にあり、ピークのラマンシフト値が近く、近傍の波数領域に存在することから、ラマンスペクトルにおけるベースラインの変動等の影響が少ないため、定量性が良く、また、ラマン強度比(IA/IB)を容易に求めることができるものである。 ラマンスペクトルの測定としては、顕微鏡下で行うこと、すなわち、顕微ラマン分光法で測定を行うことも好ましい。その際、測定径を1μm以上100μm以下の微小部とすることによって、硬化する特定位置の微小部での評価ができるようになり、より詳細で実用的な硬化度の評価方法とすることができる。 芳香環を有するエポキシ樹脂としては、ラマンシフト値1575cm-1以上1625cm-1以下の範囲内にピーク(B)を有するものであれば、特に限定されるものではないが、好ましくは、ピーク(A)の領域、すなわちラマンシフト値1100cm-1以上1150cm-1以下の範囲にピークがないものである。ピーク(A)の領域にエポキシ樹脂の他のピークが存在すると定量性が低下する。 芳香環を有するエポキシ樹脂としては、具体的には、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやビスフェノールF等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂が挙げられ、その他グリシジルエーテル、グリシジルアミン、グリシジルエステル、脂環式、複素環式等の1分子内に2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ樹脂が例示される。エポキシ樹脂材料中にこれらのエポキシ樹脂を単独または2種以上混合して使用してもよい。このうち、ビスフェノールF型エポキシ樹脂はピーク(A)を鮮明に検出できるため好ましい。 図3は、エポキシ樹脂のラマンスペクトルを示し、(a)はビスフェノールF型エポキシ樹脂、(b)はビスフェノールA型エポキシ樹脂のスペクトルである。なお、比較を簡単にできるように(a)の強度を約600上げて両スペクトルを縦に並べてプロットしている。図示のように、(a)では、ピーク(A)が鮮明に検出できる。一方、(b)では、ピーク(A)が他の大きなピークの肩に入っていて検出がしにくく、定量がほぼ不可能である。このように、検出精度のよいビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましいものである。 硬化度の評価を行う材料には、エポキシ樹脂以外の成分を含有することができる。例えば、硬化剤、導電性粒子、有機又は無機の粒子、粘着付与剤や可塑剤等の粘着性調整剤、界面活性剤、フィルム形成材、アクリル樹脂、シリカ等の充填剤、イソシアネートやメラミン等の架橋剤、溶剤、重合禁止剤、金属不活性化剤及びカップリング剤等を必要に応じて含有できる。また、材料の形態は特に限定されるものではなく、例えば、フィルム状、シート状及びペースト状等でもよい。 具体的には、硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、カルボン酸無水物、チオール、アルコール、フェノール、イソシアネート、第三級アミン、ホウ素錯塩、無機酸、ヒドラジド及びイミダゾール等の各系及びこれらの変成物が適用できる。また、これらは単独若しくは2種以上の混合体としても使用できる。また、導電性粒子としては、金属粒子、例えば、Ni、Cr、Co、Al、Sb、Mo、Pb、Cu、Ag、Pt、Au、Sn、Ta等が挙げられ、また、導電性を示さない、例えばガラス、セラミックス及びプラスチックス粒子等にこれらの金属を被覆したものでもよい。これらは単体、合金、複合物及び混合物として使用できる。また、ガラス、セラミックス及びプラスチックス粒子等の粒子をそのまま用いてもよい。 エポキシ樹脂を含む材料は加熱硬化するものであることが好ましい。加熱硬化によってエポキシ基のピークが徐々に減少するものであり、加熱の度合(温度、時間)による硬化の進行度を精度よく評価することができる。材料の用途としては、特に限定されるものではなく、硬化して絶縁基材や導電性部材を形成する材料であっても、接着剤として使用されるものであってもよい。 (樹脂組成物及びその硬化) 芳香環を有するエポキシ樹脂を含む材料として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物を用いた。 樹脂組成物の配合成分とその比率(質量比)は、・ビスフェノールF型エポキシ樹脂:72・イミダゾール系硬化剤:4・グルタル酸:24である。なお、溶剤は使用していない。 この樹脂組成物を塗布して板状にし、温度150℃、時間15分、30分、又は60分の加熱条件で加熱して硬化した。 (ラマンスペクトル測定) 上記の硬化物について、ラマンスペクトルの測定を実施した。 ラマンスペクトルの装置及び条件は、 装置)・顕微レーザーラマン分析装置(HR-800 HORIBA JOBINYVON製) 測定条件)・対物レンズ : ×100・光源/波長 :He-Neレーザー/632.8 nm・レーザー強度 :17mW(レーザー出口における強度)・回折格子 :600 gr/mm・検出器 :CCD・光学フィルタ :ノッチフィルタ・露光時間 :20〜100秒である。 なお、上記のラマン分析装置では、Intensity(強度)が、ラマン散乱光の光子数[単位:cnt(カウント)]で測定される。この測定値は、装置や測定条件(試料の厚み等)によって変化するため、異なる条件下で測定した数値を比較しても意味がない。しかしながら、測定されたスペクトル内でのピーク相対値には意味があり、本発明のようにピーク比をとって比較することが可能となる。 (硬化度の評価) ラマンシフト値1100cm-1以上1150cm-1以下の範囲内にあるエポキシ基(CH2)のピーク(A)強度と、参照ピークであるラマンシフト値1575cm-1以上1625cm-1以下の範囲内にある芳香環のピーク(B)強度とから、ラマン強度比(IA/IB)が算出される。なお、ピーク(B)には極大値がいくつか見られるが、上記の範囲をピーク全体として用いた。 図1及び2は、各加熱条件におけるラマンスペクトルデータ(チャート)である。図2は全体領域、図1は一部領域(750〜1750cm-1の範囲、図2中の領域X)の拡大図である。各チャートは、加熱温度はいずれも150℃で、(a)反応前、(b)15分加熱、(c)30分加熱、(d)60分加熱、の硬化物を示している。なお、チャートの比較を簡単に行うために、それぞれベースラインを上げて縦に並べてプロットしている。つまり、(a)では1500、(b)では1000、(c)では500、ラマン強度を上げてプロットしている。 図1に示すように、参照ピークであるピーク(B)は、加熱時間が長くなってもピークが消失しなかった。一方、定量ピークであるピーク(A)は、加熱時間が長くなるにしたがって徐々にピークが小さくなり硬化後は消失した。すなわち、ピーク(A)とピーク(B)とのラマン強度比(IA/IB)は、ピークエリア(面積)、ピークトップ(高さ)のいずれにおいても、徐々に小さくなっている。 具体的には、ラマン強度比(IA/IB)は、 ピークエリア比:0.116、0.0380、0.0192、0.00221 ピークトップ比:0.248、0.0841、0.0421、0.00603となり、反応前(a)の硬化度を0%、ピーク消失時の硬化度を100%とすることで、硬化度を計算すると、 ピークエリア比からの算出:0%、67%、83%、98% ピークトップ比からの算出:0%、66%、82%、98%となった。なお上記の各数値は、チャート(a)(b)(c)(d)での強度比又は硬化度をこの順で示している。ちなみに硬化度はエポキシ基の反応率ということになる。 なお、比較例として、ラマンシフト値2990cm-1以上3025cm-1以下のピーク(C)強度とラマンシフト値3025cm-1以上3150cm-1以下のピーク(D)強度とを確認した(特許文献1の方法)。また、ラマンシフト値1260cm-1付近のピークについても確認した。 図2のように、ピーク(C)は、他の2つのピーク(D,E)の間に存在しピークの重複部分が発生しており、ラマン強度比(IC/ID)が正確に算出できなかった。また、硬化後においてもピーク(C)が消失しておらず(チャート(d))、ピークの有無で硬化を評価することができなかった。 また、図1のように、ラマンシフト値1260cm-1付近では、エポキシ基に対応するピークの減少は見られるが、ピークが混在しているため、この領域のピークを硬化度の評価に使用することができなかった。 このように、本発明の方法では、ラマン強度比(IA/IB)によって、硬化度を定量的に精度よく評価することができる。 そして、同種の樹脂組成物を用いる際には、上記のスペクトルデータを標準スペクトルデータとして用いて、材料の硬化度を定量的に精度よく測定することができるものであり、硬化度の測定を迅速に実施して生産効率を向上することができるものである。 芳香環を有するエポキシ樹脂を含む材料の硬化度を評価する方法であって、当該材料のラマンスペクトルにおけるラマンシフト値1100cm-1以上1150cm-1以下の範囲内にあるエポキシ基のピーク(A)とラマンシフト値1575cm-1以上1625cm-1以下の範囲内にあり硬化の前後で変化しない芳香環のピーク(B)とのラマン強度比(IA/IB)に基づいて、当該材料の硬化度を評価することを特徴とするエポキシ樹脂含有材料の硬化度評価方法。 【課題】ラマン分析を用い、エポキシ樹脂含有材料の硬化度を、定量性を向上して精度よく評価する方法を提供する。【解決手段】芳香環を有するエポキシ樹脂を含む材料の硬化度を評価する方法に関する。エポキシ樹脂含有材料のラマンスペクトルにおけるラマンシフト値1100cm-1以上1150cm-1以下の範囲内にあるエポキシ基のピーク(A)とラマンシフト値1575cm-1以上1625cm-1以下の範囲内にあり硬化の前後で変化しない芳香環のピーク(B)とのラマン強度比(IA/IB)を用いる。このラマン強度比(IA/IB)に基づいて、材料の硬化度を評価する。【選択図】図1


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