タイトル: | 公開特許公報(A)_ラテックス粒子を用いた免疫アッセイ方法 |
出願番号: | 2009210605 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | G01N 33/543,G01N 33/545,C08F 2/18,C08F 212/08 |
笠置 典之 ▲桑▼原 知子 渡辺 裕也 JP 2011059003 公開特許公報(A) 20110324 2009210605 20090911 ラテックス粒子を用いた免疫アッセイ方法 富士フイルム株式会社 306037311 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 笠置 典之 ▲桑▼原 知子 渡辺 裕也 G01N 33/543 20060101AFI20110301BHJP G01N 33/545 20060101ALI20110301BHJP C08F 2/18 20060101ALI20110301BHJP C08F 212/08 20060101ALI20110301BHJP JPG01N33/543 525UG01N33/545 AG01N33/543 575G01N33/543 525CG01N33/543 525GG01N33/543 595C08F2/18C08F212/08 12 OL 16 4J011 4J100 4J011AA05 4J011JB00 4J011JB14 4J011JB26 4J100AB02P 4J100AJ02Q 4J100CA04 4J100CA05 4J100FA19 4J100JA53 本発明は、ラテックス粒子を用いた免疫アッセイ方法に関する。 従来、バイオ測定等において、高感度かつ容易な測定法として蛍光検出法が広く用いられている。この蛍光検出法は、特定波長の光により励起されて蛍光を発する検出対象物質を含むと考えられる試料に上記特定波長の励起光を照射し、そのとき蛍光を検出することによって検出対象物質の存在を確認する方法である。また、検出対象物質が蛍光体ではない場合、蛍光色素で標識されて検出対象物質と特異的に結合する物質を試料に接触させ、その後上記と同様にして蛍光を検出することにより、この結合すなわち検出対象物質の存在を確認することも広くなされている。 また、このような蛍光検出法において、感度を向上させるため、プラズモン共鳴による電場増強の効果を利用する方法が特許文献1などに提案されている。これは、プラズモン共鳴を生じさせるため、透明な支持体上の所定領域に金属層を設けたセンサチップを備え、支持体と金属膜との界面に対して支持体の金属層形成面と反対の面側から、全反射角以上の所定の角度で励起光を入射させ、この励起光の照射により金属層に表面プラズモンを生じさせ、その電場増強作用によって、蛍光物質を励起させるものである。特開平10−307141号公報 上記した従来の免疫診断においては、依然として十分な大きさのシグナル値(ΔS(=シグナル値−ノイズ値))が得られないという問題があった。本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、免疫診断において、十分な高さのシグナル値ΔS(=シグナル値−ノイズ値)を実現でき、かつ製造再現性の高いラテックス粒子を用いた免疫アッセイ方法、並びに上記ラテックス粒子の製造方法を提供することを解決すべき課題とした。 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ラテックス粒子表面に存在するCOOH基の量を40〜300μeq/gに調整することによって、製造再現性が高いラテックス粒子を提供でき、これを用いて十分な高さのシグナル値ΔS(=シグナル値−ノイズ値)を実現できる免疫アッセイを行うことができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。 即ち、本発明によれば、(1)蛍光ラテックス粒子に結合物質を結合させることにより得られる結合物質標識蛍光ラテックス粒子に、被検出物質を接触又は競合させる工程、及び(2)上記結合物質標識蛍光ラテックス粒子の蛍光を測定する工程を含むアッセイ方法であって、上記蛍光ラテックス粒子が、(a)ラテックス粒子表面に存在するCOOH基の量が40〜300μeq/gであることを特徴とするラテックス粒子に蛍光物質を添加することによって得られる蛍光ラテックス粒子、又は(b)ラテックス粒子と蛍光物質とを含む蛍光ラテックス粒子であって、該蛍光ラテックス粒子表面に存在するCOOH基の量が40〜300μeq/gであることを特徴とする蛍光ラテックス粒子である、上記のアッセイ方法が提供される。 好ましくは、ラテックスは、ソープフリー重合により得られるラテックスである。 好ましくは、ラテックスは、単量体としてスチレンを少なくとも含む共重合体である。 好ましくは、ラテックスは、スチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体である。 好ましくは、平均粒径は150〜330 nmである。 好ましくは、平均粒径は190〜270 nmである。 好ましくは、結合物質は、被検出物質に対する抗体である。 好ましくは、工程(2)において、表面プラズモン蛍光測定または落射蛍光測定により蛍光を測定する。 本発明によればさらに、スチレンおよびアクリル酸またはメタクリル酸を含み、スチレン濃度が1.4 M以下の水系懸濁液に重合開始剤を滴下して重合を行うことを含む、ラテックス粒子表面に存在するCOOH基の量が82〜400μeq/gであるラテックス粒子の製造方法が提供される。 好ましくは、重合始剤の添加前に水系懸濁液を75〜95℃に昇温する。 好ましくは、重合開始剤は過硫酸カリウムである。 好ましくは、架橋剤の存在下で重合を行う。 本発明によれば、ラテックス粒子表面のCOOH基量を40μeq/g〜300μeq/g に規定することにより、免疫アッセイにおいて十分な性能を発揮することができるラテックス粒子を提供することができ、本発明の蛍光ラテックス粒子を用いた免疫アッセイでは、非特異吸着によるバックグラウンドが極めて低いので、シグナル値の高感度評価を行うことが可能である。また、本発明のラテックス粒子は、製造再現性が高いという利点を有している。図1は、導入カルボン酸量と粒径の関係([M] = 2.9 M)を示す。図2は、導入カルボン酸量と粒径の関係を示す。図3は、蛍光ラテックス粒子を用いたSPF免疫アッセイの結果を示す。図4は、蛍光色素導入前後での粒径分布の測定結果を示す。図5は、蛍光色素導入前後でのゼータ電位の測定結果を示す。 以下、本発明についてさらに詳細に説明する。(1)本発明で用いるラテックス粒子 本発明で用いるラテックス粒子は、表面のCOOH基量が40μeq/g〜300μeq/gであることを特徴とする。ラテックス粒子表面のCOOH基量は、電気伝導度を測定することによって測定できる。具体的には、ラテックス表面のCOOH基量は、pHメータ(例えば、pHメータD-54(堀場製作所製)など)を用い、Journal of Colloid and Interface Science 49(3),pp425-432,1974記載の方法によって電気伝導度滴定を行うことによって定量することができる。具体的には以下の通りである。重量を正確に測定したラテックス試料を脱イオン水で希釈する。pHメータ及びThomas-Serfass電気伝導度装置の電極の両セットを希釈したラテックス分散液中に入れる。ラテックスを攪拌し、ラテックス試料のpHを希NaOH溶液でpH11.5±0.2に調整する。試料を、0.421NのH2SO4で0.50mlずつ増大させて滴定する。電気伝導度とpHを、pHが約2.4になるまで、酸の消費量の関数として解析する。 なお、COOH基量が40μeq/g 〜300μeq/gであることは、COOH基量が40μmol/g 〜300μmol/gであることと同義である。 ラテックスの材質の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルアクリレートなどが挙げられる。ラテックスとしては、単量体としてスチレンを少なくとも含む共重合体が好ましく、スチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が特に好ましい。 ラテックスの作成方法は特に限定されず、任意の重合方法により作成することができる。但し、抗体標識の際に界面活性化剤が存在すると抗体固定化が困難となるため、ラテックスの作製には、ソープフリー重合が好ましい。 ラテックス粒子の平均粒径は、粒子の材質や被検出物質を定量する濃度範囲、測定機器などによって異なるが、150〜330 nmが好ましく、190〜270 nmがさらに好ましい。 ラテックス粒子の平均粒径と表面COOH基量との関係について、一般にラテックスの粒径は表面COOH基量に依存し、表面COOH基量が少ないと平均粒径が大きくなる。これはカルボン酸が少ないほどラテックス同志の荷電反発が少なくなり、とくにソープフリーの重合系ではラテックスが水中で安定に存在しにくくなるためである。そこで本発明において好ましい範囲の粒径かつ好ましい範囲の表面COOH基量のラテックス粒子を合成するには、以下に記載したラテックス粒子の製法またはこれに準じた方法に従って重合することが好ましい。(2)ラテックス粒子の製法 本発明で用いる、表面に存在するCOOH基の量が40〜300μeq/gであるラテックス粒子は、特に好ましい態様によれば、スチレンおよびアクリル酸またはメタクリル酸を含み、スチレン濃度が1.4 M以下の水系懸濁液に重合開始剤を滴下して重合を行うことによって製造することができる。スチレン濃度が1.4 Mより高い水系懸濁液を用いることは、重合系中に発生したラテックス粒子同士が結合し、結果として生成するラテックスの平均粒径が大きくなってしまうので、好ましくない。 また、重合開始剤の添加前に水系懸濁液を75〜95℃に昇温することが好ましい。このように昇温することにより、添加と同時に開始剤を分解、重合系中のラジカルを一気に発生させ、モノマーの消費を始めることができるため、ラテックスの粒径を均一にする効果があるので、好ましい。 本発明で用いる重合開始剤は、重合を行えるものであれば特に限定されず、公知の重合開始剤を使用することができる。例えば、過硫酸カリウム、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル)バレロニトリル、2,2'−アゾビス4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロパーオキサイド、イソプロピルパーオキシカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどを使用して重合を行なうことができ、特に好ましくは、過硫酸カリウムを用いて重合を行うことができる。重合開始剤の使用量は、単量体組成物の0.1〜5重量%程度であることが好ましい。 また、重合は、架橋剤の存在下で行うこともできる。架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、1,4ブタジエンなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。(3)蛍光ラテックス粒子 本発明で用いるラテックス粒子は、蛍光物質であることが好ましい。上記(2)で記載したような重合により得られたラテックス自体が蛍光性である場合には、そのまま蛍光ラテックス粒子として使用することができる。重合により得られたラテックスが非蛍光性の場合には、ラテックスに蛍光物質(蛍光色素など)を添加することによって、蛍光ラテックス粒子を作製することができる。即ち、蛍光ラテックス粒子は、水および水溶性有機溶剤を含むラテックス粒子の溶液に蛍光色素を添加して攪拌することなどにより製造できる。ラテックス粒子の溶液中のラテックス濃度は0.1〜10重量%が好ましい。溶液には電解質が含まれることが好ましく、電解質としてはNaClが好ましく、溶液中の電解質濃度は1〜500mMが好ましい。またラテックス粒子の溶液中に含まれる水溶性有機溶剤としては、テトラヒドロフラン(THF), ジメチルホルムアミド(DMF), ジメチルアセトアミド(DMAc), アセトンが好ましく、水と水溶性有機溶剤の比率は10〜80%程度が好ましい。 なお、本明細書で言う「ラテックス粒子と蛍光物質とを含む蛍光ラテックス粒子」とは、上記(2)で記載したような重合により得られたラテックス自体が蛍光性である場合における当該蛍光ラテックス粒子と、重合により得られたラテックスが非蛍光性の場合に、当該ラテックスに蛍光物質(蛍光色素など)を添加することによって得られる蛍光ラテックス粒子の両方の場合を包含するものとする。(4)結合物質を結合させたラテックス粒子 本発明のラテックス粒子は、結合物質を結合させることによって、蛍光アッセイにおいて用いることができる。ここで言う「結合物質」は、被検出物質を介してセンサ部に結合する物質であってもよいし、被検出物質と競合してセンサ部に結合する競合物質であってもよい。例えば、抗原抗体反応を検出する蛍光アッセイにおいて、抗原が被検出物質であるとき、サンドイッチ法によるアッセイを行う場合には、固定層は該抗原と特異的に結合する第1の抗体(固定化抗体)から構成され、結合物質は、抗原と特異的に結合する第2の抗体から構成される。また、競合法によるアッセイを行う場合には、結合物質は、抗原と特異的に結合する抗体から構成してもよいし、あるいは抗原と競合して固定化抗体と結合する競合抗原から構成してもよい。 結合物質が、抗原と特異的に結合する第2の抗体である場合、このような抗原と特異的に結合する抗体としては、特に限定されるものではないが、例えば、その被検出物質によって免疫された動物の血清から調製する抗血清、抗血清から精製された免疫グロブリン画分、その被検出物質によって免疫された動物の脾臓細胞を用いる細胞融合によって得られるモノクローナル抗体、あるいは、それらの断片[例えば、F(ab’)2、Fab、Fab’、又はFv]を用いることができる。これらの抗体の調製は、常法により行なうことができる。さらに、その抗体がキメラ抗体などの場合のように、修飾を加えられたものでもよいし、また市販の抗体でも、動物血清や培養上清から公知の方法により調製した抗体でも使用可能である。 断片化抗体は、その動物種やサブクラス等によらず使用できる。例えば、本発明に用いることが可能な抗体は、マウス、ラット、ヤギ、ウサギ、ヒツジなどに由来する抗体、具体的には、マウスIgG、マウスIgM、ラットIgG、ラットIgM、ウサギIgG、ウサギIgM、ヤギIgG、ヤギIgM、ヒツジIgG、ヒツジIgM等であり、ポリクローナルもしくはモノクローナルの両方に適用可能である。断片化抗体は、少なくとも1つの抗原結合部位を持つ、完全型抗体から導かれた分子であり、具体的にはFab、F(ab')2等である。これらの断片化抗体は、酵素あるいは化学的処理によって、もしくは遺伝子工学的手法を用いて得られる分子である。 次に、抗体を蛍光ラテックスに結合する方法について説明する。蛍光ラテックス粒子水溶液に、抗体を含む溶液を加えて攪拌し、その後、WSC(品番01−62−0011、和光純薬)水溶液を加えて撹拌する。更にグリシン水溶液を添加して撹拌した後、遠心分離にて、蛍光ラテックス粒子を沈降させる。上清を取り除き、PBS溶液を加え、超音波洗浄機により蛍光ラテックス粒子を再分散させる。さらに遠心分離で上清を除いた後、1%BSAを含むPBS溶液を加えて、蛍光ラテックス粒子を再分散させることにより、抗体結合蛍光ラテックス粒子の溶液を得ることができる。(5)アッセイの形態 本発明はさらに、(1)本発明の蛍光ラテックス粒子に結合物質を結合させることにより得られる結合物質標識蛍光ラテックス粒子に、被検出物質を接触又は競合させる工程、及び(2)上記結合物質標識蛍光ラテックス粒子の蛍光を測定する工程を含む、アッセイ方法に関する。 本発明によるアッセイ方法は、被検出物質の存在の有無の検出や被検出物質の量の測定(すなわち、定量)などを含む、最も広い概念として解釈されるものとして、通常知られている免疫学的な測定方法を制限なく包含するものである。以下に、本発明のアッセイ方法の具体的な実施態様として、サンドイッチ法及び競合法について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。(サンドイッチ法) サンドイッチ法では、特に限定されるものではないが、例えば、以下の手順により被検出物質を測定することができる。まず、被検出物質(抗原)に対して特異性を有する第1抗体及び第2抗体を予め用意しておく。次いで、第1抗体を固相、例えば基板上に固定し、第2抗体を、蛍光ラテックス粒子に結合させて、抗体標識蛍光ラテックス粒子を作製する。次いで被検出物質(抗原)を含む可能性のある被験試料(又はその抽出液)と、抗体標識蛍光ラテックス粒子とを、基板上に接触させる。被験試料中に被検出物質が存在する場合には、被検出物質と抗体標識蛍光ラテックス粒子との間、及び被検出物質と基板との間で抗原抗体反応が起きる。この抗原抗体反応は、通常の抗原抗体反応と同様に行なうことができる。結果として、被験試料中に被検出物質が存在する場合には、基板に固定化した第1抗体と、被検出物質(抗原)と、蛍光ラテックス粒子に結合している第2抗体とからなる免疫複合体が形成される。サンドイッチ法では、基板固定化第1抗体と、被検出物質(抗原)と、蛍光ラテックス粒子に結合している第2抗体との反応が終了した後、前記免疫複合体を形成しなかった第2抗体を除去し、洗浄する。次いで前記免疫複合体の形成の度合いを蛍光強度として検出することにより、被検出物質の濃度などを測定することができる。なお、蛍光強度と被検出物質の濃度は、正の相関関係がある。(競合法) 競合法では、特に限定されるものではないが、例えば、以下の手順により被検出物質を測定することができる。競合法は、サンドイッチ法でアッセイすることができない低分子化合物の抗原を検出する手法として知られている。 まず、被検出物質(抗原)に対して特異性を有する第1抗体を予め調製する。次いで第1抗体を、蛍光ラテックス粒子に結合させる。第1抗体に対して結合性を有する、被検出物質そのもの、または被検出物質と類似な部位を持ち被検出物質と同様の第1抗体に対するエピトープを持つ化合物を固相、例えば基板上に固定する。次いで被検出物質(抗原)を含む可能性のある被験試料(又はその抽出液)と、第1抗体を結合させた蛍光ラテックス粒子とを基板に接触させると、その被験試料中に被検出物質が存在しない場合には、第1抗体と、第1抗体に対して結合性を有する被検出物質そのものまたは被検出物質と同様の第1抗体に対するエピトープを持つ化合物とにより、基板上で抗原抗体反応が起きる。一方、被検出物質が存在する場合には、第1抗体に被検出物質(抗原)が結合するため、その後の第1抗体に対して結合性を有する、被検出物質そのもの、または被検出物質と類似な部位を持ち被検出物質と同様の第1抗体に対するエピトープを持つ化合物との、基板上の抗原抗体反応が阻害され、抗原抗体反応による結合が起こらない。第1抗体に対して結合性を有する固定化物と、蛍光ラテックス粒子に結合した第1抗体との反応が終了した後、前記免疫複合体を形成しなかった蛍光ラテックス粒子を除去する。次いで前記免疫複合体の形成の度合いを蛍光強度として検出することにより、被検出物質の濃度などを測定することができる。 あるいは別の態様によれば、競合法によるアッセイを行う場合には、「被検出物質そのもの、または被検出物質と類似な部位を持ち被検出物質と同様の第1抗体に対するエピトープを持つ化合物」を蛍光ラテックス粒子に結合させ、被検出物質(抗原)に対して特異性を有する第1抗体を固相、例えば基板上に固定してもよい。この場合においても上記と同様に抗原抗体反応を行うことにより、被検出物質の濃度などを測定することができる。(6)蛍光の検出方法 本発明における蛍光の検出方法としては、特に限定されないが、例えば、蛍光強度を検出することができる機器、具体的には、マイクロプレートリーダー、又は表面プラズモン励起による蛍光検出(SPF)を行うためのバイオセンサーなどを用いて蛍光強度を検出することができる。蛍光強度の検出は、通常、抗原抗体反応後一定時間、例えば、数分〜数時間後に終了する。前記免疫複合体の形成の度合いを蛍光強度として検出することにより、蛍光強度と被検出物質の濃度の関係から、被検出物質の濃度を定量することができる。なお、蛍光の測定の形態は、プレートリーダー測定でもよいし、フロー測定でもよい。なお、表面プラズモン励起による蛍光検出法(SPF法)は、落射励起による蛍光検出法(以下、「落射蛍光法」という。)よりも高感度に測定することができる。 上記の表面プラズモン蛍光(SPF)バイオセンサーとしては、例えば、特開2008−249361号公報に記載されているような、所定波長の励起光を透過させる材料から形成された光導波路と、この光導波路の一表面に形成された金属膜と、光ビームを発生させる光源と、前記光ビームを光導波路に通し、該光導波路と金属膜との界面に対して表面プラズモンを発生させる入射角で入射させる光学系と、該表面プラズモンによって増強されたエバネッセント波によって励起されたことによって発生する蛍光を検出する蛍光検出手段とを備えたセンサーを用いることができる。 本発明の蛍光粒子を用いた表面プラズモン蛍光(SPF)検出系は、ラテックス凝集法とは異なる方法である。ラテックス凝集法では、ラテックス試薬中の抗体感作ラテックスと検体中の抗原が、抗体反応により結合し、凝集する。この凝集塊は時間と共に増大し、この凝集塊に近赤外光を照射して得られた単位時間当たりの吸光度変化から、抗原濃度を定量化する方式が、ラテックス凝集法である。免疫比濁法で起こる抗原抗体反応凝集物は非常に小さく、抗原量の少ない低濃度域での凝集の度合いを光学的に検出するのは難しい。そこで、従来は、μmクラスの比較的大きなラテックス粒子に抗体を感作させたラテックス凝集法では、抗原抗体反応が見かけ上ラテックスの凝集という形で現れる。そのため、低濃度域での抗原量の少ない場合でも、大きな凝集として現れ、わずかな凝集塊の変化も光学的に捉えることができる。例えば、凝集の形成を濁度の増加としてとらえる比濁法、凝集の形成を粒度分布または平均粒径の変化としてとらえる方法、凝集の形成による前方散乱光の変化を、積分球を用いて測定し、透過光強度との比を比較する積分球濁度法等が挙げられる。上記の測定法においては、異なる時点で少なくとも2つの測定値を得、これらの時点間における測定値の増加分、すなわち、増加速度に基づき凝集の度合いを求める速度試験(レートアッセイ)、および、通常は反応の終点と考えられるある時点で1つの測定値を得、この測定値に基づき凝集の度合いを求める終点試験(エンドポイントアッセイ)がある。免疫ラテックス凝集反応測定に適する臨床検査自動機としては、例えば、日立7070、7150、7170、LPIA−A700、S500などの市販の自動分析機が挙げられる。 以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。 抗体標識の際に界面活性化剤が存在すると抗体固定化が困難なため粒子作製には、ソープフリー重合が好ましいが、200nm以下の粒子は、ソープフリー重合が困難である。また、300nm以上では、抗体標識後凝集のため評価できなかった。そこで、200〜250 nmにしぼって実験を行った。その結果を以下の実施例に示す。 以下の実施例において、粒径は、ZETA SIZER(シスメックス社製)Nano seriesで測定した。サンプルは、0.01%になるように設定し、10 mM Phosphate pH 7.0(800μL)で測定した。パラメーターは以下の通りである。Polystyren latex: RI: 1.590, Absorption: 0.01、溶媒:水, 温度: 25℃, 粘度: 0.8872 cP, RI: 1.330 また、ラテックス中のカルボン酸量は、pHメータD-54(堀場製作所製)を用い、Journal of Colloid and Interface Science 49(3),pp425-432,1974記載の方法によって電気伝導度滴定行うことにより定量した。実施例1:ラテックス粒子の製造 スチレン、アクリル酸、及び過硫酸カリウム(KPS)を用いたソープフリー重合に関する検討結果を以下に示す。(1)開始剤(過硫酸カリウム:KPS)の量の検討 粒子表面のカルボン酸量と粒径の関係([M] = 2.9 M)を図1に示す。モノマー濃度2.9mol・L-1では開始剤の量(仕込み比[M]/[I])によらず、粒子表面のカルボン酸に応じて粒径が決まった。(2)ラテックス粒子(直径511nm , COOH基146μmol/g)の合成例 スチレン(和光純薬製)30g(288 mmol)とアクリル酸(和光純薬製)1g(56 mol)をミリQ水100 mLに懸濁、溶解させ、85℃でKPS(和光純薬製)0.2gを10 mLに溶解させた水溶液を添加し、65℃で250 rpmで6時間攪拌した。その後、8000 rpmで3時間遠心分離を3回行い、最後に、ミリQ水に再分散させた。(3)モノマー(スチレン)の仕込み濃度検討 モノマー(スチレン)の仕込み濃度を検討した結果を図2に示す。仕込み濃度を低下させると、カルボン酸導入量が少なく、かつ粒径が275nmの粒子が製造可能となった。(4)ラテックス粒子の製造 以下の表1に記載した物性を有するラテックス粒子の製造法を以下に示す。試料番号(1)の製造 スチレン(和光純薬製)30g(288 mmol)とアクリル酸(和光純薬製)0.5g(7 mmol)をミリQ水660 mLに懸濁させ、85℃に昇温し、KPS(和光純薬製)1gを10 mLに溶解させた水溶液を添加し、85℃、250 rpmで6時間攪拌した。その後、10,000 rpmで3時間遠心分離を3回行い、最後に、ミリQ水に再分散させた。試料番号(2)の製造 スチレン(和光純薬製)30g(288 mmol)とアクリル酸(和光純薬製)3g(42 mmol)をミリQ水440 mLに懸濁させ、85℃に昇温し、KPS(和光純薬製)1gを10 mLに溶解させた水溶液を添加し、85℃、250 rpmで6時間攪拌した。その後、10,000 rpmで3時間遠心分離を3回行い、最後に、ミリQ水に再分散させた。試料番号(3)の製造 スチレン(和光純薬製)30g(288 mmol)とアクリル酸(和光純薬製)6g(84 mmol)をミリQ水330 mLに懸濁させ、85℃に昇温し、KPS(和光純薬製)1gを10 mLに溶解させた水溶液を添加し、85℃、250 rpmで6時間攪拌した。その後、10,000 rpmで3時間遠心分離を3回行い、最後に、ミリQ水に再分散させた。試料番号(4)の製造 スチレン(和光純薬製)30g(288 mmol)とアクリル酸(和光純薬製)6g(83 mmol)をミリQ水220 mLに懸濁させ、85℃に昇温し、KPS(和光純薬製)1gを10 mLに溶解させた水溶液を添加し、85℃、250 rpmで6時間攪拌した。その後、10,000 rpmで3時間遠心分離を3回行い、最後に、ミリQ水に再分散させた。試料番号(5)の製造 スチレン(和光純薬製)30g(288 mmol)とアクリル酸(和光純薬製)1g(14 mmol)をミリQ水660 mLに懸濁させ、85℃に昇温し、KPS(和光純薬製)1gを10 mLに溶解させた水溶液を添加し、85℃、250 rpmで6時間攪拌した。その後、10,000 rpmで3時間遠心分離を3回行い、最後に、ミリQ水に再分散させた。実施例2:蛍光ラテックス粒子の製造 13.4% solidのラテックス粒子(表1に記載の試料番号(1)〜(5))745μLを500 mM NaCl水溶液9.255 mLに溶解し、さらに、ジメチルホルムアミド(DMF)を10 mLを添加し、30分間、室温、遮光下で攪拌した。その後、蛍光色素BODIPY650/665(Invitrogen社製)を0.5 mg(50μDMF溶液)添加し、室温で30分間攪拌した。精製は、遠心分離(15,000 rpm 、60分間、4℃)、1×PBSへの再分散を3回繰り返した。最後に、5 mLのミリQ水を加え固形分濃度を2%solidに調製した。実施例3:抗体を結合させた蛍光ラテックス粒子の製造 実施例2で調製した2%(固形分濃度)蛍光ラテックス粒子水溶液250μLに、2mg/mLの抗hCGモノクローナル抗体Anti-alpha subunit 6601 SPR-5(IgG2a(Medix社製))、50mMのMESバッファー(pH6.0)溶液250μLを加え室温で15分間攪拌した。その後、10mg/mLのWSC(品番01−62−0011、和光純薬)水溶液を5μL加え、室温で2時間撹拌した。2mol/LのGlycine水溶液を25μL添加し、30分間撹拌した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)にて、蛍光ラテックス粒子を沈降させた。上清を取り除き、PBS溶液(pH7.4)を500μL加え、超音波洗浄機により蛍光ラテックス粒子を再分散させた。さらに遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行い、上清を除いた後、1%BSAを含むPBS(pH7.4)溶液500μL加え、蛍光ラテックス粒子を再分散させることで、抗hCG抗体結合蛍光ラテックス粒子の1%(w/v)溶液を得た。実施例4:フローシステムでのSPF免疫アッセイの検討(hCG抗原を用いたアッセイ系) サンドイッチペアの抗体は、Anti-hCG 5008 SP-5(IgG1)(Medix社製)を固相側に, Anti-alpha subunit 6601 SPR-5(IgG2a(Medix社製))を蛍光粒子側に使用した。 ポリメタクリル酸メチルを基体として基盤に金膜を蒸着したチップを用いて、金膜上に抗体液を点着して抗体固定化を行った。その後、実施例3で調製した抗体標識蛍光粒子を用いて、以下の手順に従って、免疫アッセイを行った。 上板をセンサチップの流路に付ける前に、センサチップの測定エリアに、10μg/mLに調製した抗hCGモノクローナル抗体Anti-hCG 5008 SP-5(IgG1)(Medix社製)の150mM塩化ナトリウム溶液を100μL添加し、室温で1時間静置した。抗体溶液を除去し、予め調製した洗浄用バッファー(0.05%(w/v) Tween-20を含むPBS(pH7.4))で洗浄した(300μL/回、3回)。洗浄終了後、抗体の未吸着部分のブロッキングを行うため、1%カゼインを含むPBS(pH7.4)を300μL添加し、1時間、室温で静置した。上記の洗浄用バッファーで洗浄後、安定化剤としてImmunoassay Stabilizer(ABI社製)を300μLずつ各ウェルに添加し、室温で30分間放置後、溶液を除去し乾燥機中で水分を完全に取り除いた。抗hCG抗体結合処理後に、蓋材を用いてセンサチップの流路を封入し、流路型センサチップを作製する。流路の封入には超音波溶着などの方法を用いることができる。 精製hCG抗原をそれぞれ、0pM、0.9pM、9pM、90pM添加した1%BSAのPBS溶液(リン酸緩衝液)を調製し、試料溶液とした。濃度0pMは1%BSAのPBS溶液そのものである。 各試料溶液500μLに、上述の手順で調製した1%抗hCG抗体結合蛍光標識物質溶液を5μLずつ添加し混合させ反応液とした。試料セルを用いて、反応液を、測定エリア上を流下させつつ、測定エリアからの蛍光信号を、異なる複数の時刻で測定した。蛍光信号の測定は、金膜上の複合体(抗体−抗原―抗体)が形成された領域に対して、抗体が結合していない側から近赤外レーザを照射し、エバネッセント波を発生させることによって行った。エバネッセント波は金膜近傍にのみ到達するので、主に上記のサンドイッチ複合体に含まれる標識を励起して蛍光を発する。フォトダイオードを用いてその蛍光を検出した。この際、試料セルの空気孔にポンプを接続し、一定流速(線速度1.4mm/s)となるようにポンプ吸引を行い、反応液のうち300μLを測定エリア上に送液しつつ、測定を行った。 免疫アッセイの性能を評価するために、SPF測定において血漿系での抗原トラップ密度を評価した結果を図3に示す。各蛍光粒子について、ΔS=シグナル値−ノイズ値で比較した結果を示す。反応条件:1次反応10分, 流速10μL/分、Flow time: 5分, 洗浄時間: 5分実施例5:SPF検出法による免疫アッセイ性能が良かった試料(2)の再現性、製造適正処方の検討 スチレン(和光純薬製)30g(288 mmol)とアクリル酸(和光純薬製)4g(56 mmol)をミリQ水480 mLに懸濁させ、85℃に昇温し、KPS(和光純薬製)1.16gを10 mLに溶解させた水溶液を添加し、85℃で250 rpmで6時間攪拌した。その後、10,000 rpmで3時間遠心分離を3回行い、最後に、ミリQ水に再分散させた。 [M] / [I] = 80 M, [St]/[AA]= 5.12, [M] = 1.72 M, 80℃, 4時間での重合再現性を確認した結果を以下の表2に示す。 3つの試料を製造して、粒径225±5 nm, COOH基量270±20 μeq / g以内におさまる再現性の良い処方が確立できた。実施例6: 粒径200-210nm、60-120μmol/g付近)の合成処方検討[M]/[I]=80, [M]=0.45mol・L-1、[St]/[AA]=26.18、80℃、6時間での重合再現性確認 粒径の再現性は良いが、分子量が安定せず、モノマーも残存した。カルボン酸量の少ないラテックス粒子は重合の再現性が取りにくいことが分かる。実施例7:蛍光色素導入前後での粒径分布及び表面COOH量 蛍光色素(BODIPY650/665:Invitrogen社製)の導入前及び導入後における粒径分布を調べた結果を図4に示す。蛍光色素の導入前及び導入後において粒径は変化しないことが示された。 また、蛍光色素導入後の電気伝導度測定はできないため、ゼータ電位を指標として、蛍光色素(BODIPY650/665:Invitrogen社製)導入前後での表面COOH量を評価した。その結果を図5に示す。蛍光色素の導入前及び導入後において表面COOH量も実質的に変化しなかった。(1)蛍光ラテックス粒子に結合物質を結合させることにより得られる結合物質標識蛍光ラテックス粒子に、被検出物質を接触又は競合させる工程、及び(2)上記結合物質標識蛍光ラテックス粒子の蛍光を測定する工程を含むアッセイ方法であって、上記蛍光ラテックス粒子が、(a)ラテックス粒子表面に存在するCOOH基の量が40〜300μeq/gであることを特徴とするラテックス粒子に蛍光物質を添加することによって得られる蛍光ラテックス粒子、又は(b)ラテックス粒子と蛍光物質とを含む蛍光ラテックス粒子であって、該蛍光ラテックス粒子表面に存在するCOOH基の量が40〜300μeq/gであることを特徴とする蛍光ラテックス粒子である、上記のアッセイ方法。ラテックスが、ソープフリー重合により得られるラテックスである、請求項1に記載のアッセイ方法。ラテックスが、単量体としてスチレンを少なくとも含む共重合体である、請求項1又は2に記載のアッセイ方法。ラテックスが、スチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体である、請求項1から3の何れかに記載のアッセイ方法。ラテックス粒子及び/又は蛍光ラテックス粒子の平均粒径が150〜330 nmである、請求項1から4の何れかに記載のアッセイ方法。ラテックス粒子及び/又は蛍光ラテックス粒子の平均粒径が190〜270 nmである、請求項1から5の何れかに記載のアッセイ方法。結合物質が、被検出物質に対する抗体である、請求項1から6の何れかに記載のアッセイ方法。工程(2)において、表面プラズモン蛍光測定または落射蛍光測定により蛍光を測定する、請求項1から7の何れかに記載のアッセイ方法。スチレンおよびアクリル酸またはメタクリル酸を含み、スチレン濃度が1.4 M以下の水系懸濁液に重合開始剤を滴下して重合を行うことを含む、ラテックス粒子表面に存在するCOOH基の量が40〜300μeq/gであるラテックス粒子の製造方法。重合始剤の添加前に水系懸濁液を75〜95℃に昇温する、請求項9に記載の方法。重合開始剤が過硫酸カリウムである、請求項9又は10に記載の方法。架橋剤の存在下で重合を行う、請求項9から11の何れかに記載の方法。 【課題】免疫診断において、十分な高さのシグナル値ΔS(=シグナル値−ノイズ値)を実現でき、かつ製造再現性の高いラテックス粒子を提供すること。【解決手段】(1)蛍光ラテックス粒子に結合物質を結合させることにより得られる結合物質標識蛍光ラテックス粒子に、被検出物質を接触又は競合させる工程、及び(2)上記結合物質標識蛍光ラテックス粒子の蛍光を測定する工程を含むアッセイ方法であって、上記蛍光ラテックス粒子が、(a)ラテックス粒子表面に存在するCOOH基の量が40〜300μeq/gであることを特徴とするラテックス粒子に蛍光物質を添加することによって得られる蛍光ラテックス粒子、又は(b)ラテックス粒子と蛍光物質とを含む蛍光ラテックス粒子であって、該蛍光ラテックス粒子表面に存在するCOOH基の量が40〜300μeq/gであることを特徴とする蛍光ラテックス粒子である、上記のアッセイ方法。【選択図】なし