タイトル: | 公開特許公報(A)_リポソーム |
出願番号: | 2009199914 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/409,A61K 9/127,A61K 47/24,A61K 47/28,A61K 47/46,A61P 43/00,A61P 9/10,C07D 487/22 |
湯浅 浩司 東 千鶴 濱本 あきば 松川 泰治 松居 雄毅 山田 泰正 山田 一郎 JP 2011051906 公開特許公報(A) 20110317 2009199914 20090831 リポソーム ユーハ味覚糖株式会社 390020189 柳野 隆生 100074561 森岡 則夫 100124925 関口 久由 100141874 湯浅 浩司 東 千鶴 濱本 あきば 松川 泰治 松居 雄毅 山田 泰正 山田 一郎 A61K 31/409 20060101AFI20110218BHJP A61K 9/127 20060101ALI20110218BHJP A61K 47/24 20060101ALI20110218BHJP A61K 47/28 20060101ALI20110218BHJP A61K 47/46 20060101ALI20110218BHJP A61P 43/00 20060101ALI20110218BHJP A61P 9/10 20060101ALI20110218BHJP C07D 487/22 20060101ALN20110218BHJP JPA61K31/409A61K9/127A61K47/24A61K47/28A61K47/46A61P43/00 111A61P9/10 101C07D487/22 10 OL 11 4C050 4C076 4C086 4C050PA06 4C076AA19 4C076CC11 4C076DD63F 4C076DD70Q 4C076EE56S 4C076FF15 4C076FF16 4C076FF51 4C076FF67 4C086AA01 4C086AA02 4C086CB04 4C086MA02 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA24 4C086NA07 4C086NA14 4C086ZA45 4C086ZC02 4C086ZC42 本発明は、フェオフォルバイドa及びその誘導体化合物が持つLOX−1アンタゴニスト活性を低下させることなく、これらの化合物が有する細胞毒性のみを低減させるシステムを提供することにある。より詳細には、本発明は、LOX−1アンタゴニストとして使用できるリポソーム、該リポソームを含むLOX−1アンタゴニスト作用剤及び動脈硬化抑制剤に関するものである。 ポルフィリンはヘモグロビン、ミオグロビンのほか、我々の体内細胞におけるチトクロムの補欠分子族ヘムの基本骨格であり、生命維持に不可欠な生体物質である。一方で植物においては葉緑体にクロロフィルが存在し、その分解過程においてフェオフォルバイドaが産生される。フェオフォルバイドaは、酸化低密度リポ蛋白質(oxLDL)の受容体であるレクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体(LOX−1)の拮抗剤として(例えば特許文献1)、あるいはエンドセリン拮抗剤として(例えば特許文献2〜3)有用であることが開示されている。 一方で、フェオフォルバイドaやその誘導体化合物群を含むポルフィリンは、光依存的なアポトーシス誘導を細胞レベルで引き起こすことが知られている(例えば非特許文献1)。この光依存的なポルフィリンによるアポトーシス誘導作用は、蛍光物質と光線を利用した癌治療の分野で注目され、副作用を引き起こしやすい多くの薬剤や放射線治療等と比較すると、その標的箇所である癌細胞への特異性は高いことが知られている(例えば非特許文献2)。そこでポルフィリン環を結合させたオリゴマー状の化合物や、ポルフィリンに糖鎖やDNA、蛋白質等を結合した化合物が提案され、細胞認識能や腫瘍親和性を高くすることが研究されている。しかし多くのポルフィリン化合物は、光照射を行わない状態においても細胞毒性が高く、標的箇所以外の細胞をも破壊してしまうという問題があった。 この毒性の問題に対しては、イオン性ポルフィリン等のポルフィリン誘導体化合物の開発技術が開示されている(例えば特許文献4〜6)。 また、特許文献7では、ポルフィリンを脂質に包接することでリポソームを形成する技術が開示されているが、この技術においてはポルフィリンとともに化学治療剤を含有させ、且つ光照射によるポルフィリン誘導型のリポソーム崩壊過程で起こる細胞毒性(抗癌作用)を期待するものである。しかし、特許文献7には、脂質によるポルフィリンの細胞毒性の低減については記載されていない。国際公開第2008/001884号パンフレット特開平5−331063号公報特開平7−330601号公報特開2001−206886号公報特開平9−124652号公報特開平5−97857号公報特開2007−277218号公報Planta Med 67:156−7 (2001)ポルフィリン・ヘムの生命科学 現代化学 増刊27 205−208 (1995) 本件出願人は、既に特許文献1において、フェオフォルバイドa又はその誘導体化合物がLOX−1アンタゴニスト作用を有することに着目していたが、フェオフォルバイドaについては、前記のように細胞毒性があるため、血管内等のインビボで投与した場合には、安全性の問題があり、所望の効果を発揮させにくい状況にあった。 そこで、本発明は、上記現状に鑑み、フェオフォルバイドa又はその誘導体化合物が有するLOX−1アンタゴニスト活性を損なうことなく、細胞毒性を低減させる手段を開発し、前記化合物を利用するうえで人体にとって極めて安全かつ有用なシステムを提供することを目的とする。 具体的には、本発明は、LOX−1アンタゴニスト活性を有し、優れた安全性を有するリポソーム、該リポソームを含有するLOX−1アンタゴニスト作用剤及び動脈硬化抑制剤を提供することを目的とする。 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、LOX−1には本来結合しない中性電荷のリン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン)をベースとすることで、本来のリガンドである陰性電化を持った酸化LDLとは異なる脂質のベースを作製し、このベースにフェオフォルバイドaを包接することでLOX−1アンタゴニスト活性は保持したまま、細胞毒性のみを低減させることに成功した。すなわち、本発明は以下の(1)〜(7)に係るものである。(1)フェオフォルバイドa又はその誘導体化合物と、中性リン脂質とを含有することを特徴とするリポソーム。(2)中性リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びスフィンゴミエリンからなる群から選ばれる1種以上である前記(1)記載のリポソーム。(3)コレステロールを含有する前記(1)又は(2)記載のリポソーム。(4)脂質1μmolに対してフェオフォルバイドa又はその誘導体化合物が0.01〜1mg含有されている前記(1)〜(3)いずれか記載のリポソーム。(5)脂質過酸化阻害剤を含有する前記(1)〜(4)のいずれか記載のリポソーム。(6)前記脂質過酸化阻害剤がビタミン又はその誘導体である前記(5)記載のリポソーム。(7)レクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体(LOX−1)アンタゴニスト作用を有する前記(1)〜(6)いずれか記載のリポソーム。(8)レクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体(LOX−1)アンタゴニストとして使用するための前記(1)〜(7)いずれか記載のリポソーム。(9)前記(1)〜(8)いずれか記載のリポソームを含むレクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体(LOX−1)アンタゴニスト作用剤。(10)前記(1)〜(8)いずれか記載のリポソームを含む動脈硬化抑制剤。 なお、本発明においてアンタゴニスト作用とは、後述の実施例に記載の方法で評価した場合に、LOX−1への酸化LDLの結合を阻害し、かつ酸化LDLの細胞内への取り込みを阻害することを意味する。本発明は、フェオフォルバイドa又はその誘導体化合物が有するLOX−1アンタゴニスト活性を損なうことなく、細胞毒性のみを有意に低減させることを初めて可能にしたものである。したがって本発明によれば、ヒトにとって安全で、副作用のないLOX−1アンタゴニスト作用剤及び動脈硬化抑制剤を提供することができる。図1は実施例1及び実施例2の方法により調製した脂質包接型フェオフォルバイドa(PhAリポソーム)とビタミンE含有脂質包接型フェオフォルバイドa(PhAリポソーム+V.E.)とフェオフォルバイドa単体(PhA)による、実施例3の方法によりLOX−1アンタゴニスト活性をELISAで検証した結果を示すグラフである。縦軸はLOX−1への酸化LDL結合の阻害率を示している。図2は実施例1の方法により調製した脂質包接型フェフォルバイドa(+酸化LDL+PhAリポソーム)とフェオフォルバイドa単体(+酸化LDL+PhA)による、実施例4の方法によりLOX−1アンタゴニスト活性をセルアッセイで検証した結果を示すグラフである。縦軸は蛍光標識を指標に、LOX−1発現細胞に結合した酸化LDL量を示している。図3は実施例1の方法により調製した脂質包接型フェフォルバイドaとフェオフォルバイドa単体による、実施例5の方法により細胞毒性を検証した結果を示すグラフである。図4は実施例2の方法により調整した脂質包接型フェオフォルバイドaに対するビタミンEの効果について、実施例5の方法により細胞毒性を検証した結果を示すグラフである。 本発明のリポソームは、フェオフォルバイドa又はその誘導体化合物と、中性リン脂質とを含有することを特徴とする。かかる特徴を有することで、LOX−1アンタゴニスト活性を有し、光依存性の細胞毒性も抑えられた優れた安全性を有するリポソームを得ることができる。 本発明のように、リポソーム形成によるフェオフォルバイドa又はその誘導体化合物の細胞毒性の低減作用については知られておらず、さらにこのリポソーム包接により、ネイティブなフェオフォルバイドaが有していたLOX−1アンタゴニスト作用が影響を受けるか否かについても、全く知られていなかった。事実、化合物を何らかの巨大分子に結合させた場合、その化合物が本来持っていた性質(アンタゴニスト活性等)が失われることは、生化学の実験上、非常に多いものである。 これに対して、本発明では、中性リン脂質を含む脂質二重層を形成しているリポソームの疎水性領域に、疎水性化合物であるフェオフォルバイドa又はその誘導体化合物を包接させることで、フェオフォルバイドaが有する作用のうち、LOX−1アンタゴニスト活性を選択的に発現させ、細胞毒性作用は選択的に発現させ難くすることが可能になると考える。 フェオフォルバイドaとしては、天然物から精製されたもの、あるいは合成されたものであってもよい。また、フェオフォルバイドaは、LOX−1アンタゴニスト活性を有するものであれば、構造上の誘導体化合物であっても問題は無い。フェオフォルバイドaの誘導体化合物としては、エチルフェオフォルバイド、クロロフィルa、クロロフィルb、ヘム、シアノコバラミン、フェオフィチンa、フェオフィチンb、ヘマチン、プロトポルフィリン、ウロポルフィリン等が挙げられる。 リポソームを構成する中性リン脂質については、天然由来であっても合成物であってもよく、その種類も特に限定はされない。天然物であればホスファチジルコリンが多く含まれる大豆レシチン等が挙げられる。また合成品であれば、中性リン脂質であるホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン等が挙げられる。 また、前記中性リン脂質以外にも、リポソームを構成する脂質として、コレステロールを含有することが好ましい。コレステロールを含有することでリポソームの安定性が増加するという利点がある。 また、リポソームを構成する他の脂質として、例えば、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール等のリン脂質を用いてもよい。 本発明のリポソームを構成する脂質中における中性リン脂質の割合としては、50〜100重量%が好ましい。また、本発明のリポソームを構成する脂質中におけるコレステロール及びその他の脂質の割合としては、50重量%以下が好ましい。 本発明のリポソームにおいて、脂質とフェオフォルバイドa又はその誘導体化合物との量比に関しては特に制限を設けないが、好ましくは脂質1μmolに対してフェオフォルバイドa又はその誘導体化合物が0.01〜1mg含まれるものである。なお、ここで脂質の量は、前記リポソームを構成する脂質成分の全量をいう。 また、リポソームを形成する脂質は保存状態により酸化され易くなることがあるので、脂質の酸化を防ぐ意味で脂質過酸化阻害剤を混合してもよい。例えば、アスコルビン酸、ビタミンC、ビタミンE、あるいはこれらの誘導体等が挙げられる。これらの中でもLOX−1アンタゴニスト活性に影響を与えない、あるいは脂溶性が調整しやすいという観点からビタミンEが好ましく、その濃度範囲は終濃度で0−0.5Mである。 中でも、前記脂質過酸化阻害剤がビタミンE又はその誘導体である場合には、脂質の酸化防止に加えて、細胞毒性を低減させる効果も向上させることができるため、好ましい。 前記のような構成を有する本発明のリポソームは、通常のリポソームの製造方法に準じて得ることができる。例えば、フェオフォルバイドa又はその誘導体化合物と、中性リン脂質と、必要であれば他の脂質とを有機溶媒に溶解・混合し、得られる混合液から溶媒を窒素ガス等を用いて除去した後、水系溶媒と混合し、超音波処理を施す方法が挙げられる。 有機溶媒としては、エタノール、メタノール、クロロホルム等が挙げられる。 水系溶媒としては、水、各種のバッファー等が挙げられる。 超音波処理には、リポソームの作製に使用可能な装置を用いればよく、特に限定はない。 本発明のリポソームは、メンブレンフィルターに通過させることで、リポソームの粒径を調整することができる。例えば、孔径0.1μmのメンブレンフィルターを用いることが好ましい。 以上のようにして得られた本発明のリポソームは、レクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体(LOX−1)アンタゴニスト作用を有するものであり、しかも、フェオフォルバイドa又はその誘導体化合物が有する細胞毒性が、これらの化合物を単独で使用した場合に比べて顕著に低減された安全性に優れたものである。 したがって、本発明のリポソームは、安全性に優れたレクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体(LOX−1)アンタゴニストとして使用することができる。 また、本発明のリポソームは、医薬組成物の成分として使用することができる。 医薬組成物の用途としては、レクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体(LOX−1)アンタゴニスト作用剤、動脈硬化抑制剤が挙げられる。 医薬組成物の態様としては、注射剤、点滴剤等の液剤等が挙げられる。これらは、水、緩衝液等の安全性の高い溶媒中で、本発明のリポソームと、増量剤、賦形剤、潤沢剤、崩壊剤、結合剤、矯味矯臭剤等とを混合して、定法に基づいて、製剤することで得られる。 フェオフォルバイドa又はその誘導体化合物の配合量としては医薬組成物100gあたり100mg以下が望ましい。 これらの医薬組成物の1日あたりの投与量は、症状、身長、体重、年齢等により異なるが、成人1人あたりの摂取量が0.1mg/kg・日以下となるように、1回ないし数回に分けて被検体に投与するのが好ましい。 なお、本発明の医薬組成物の標的としているLOX−1は、ヒトや非ヒトの動物(例えば、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ロバ、ラクダ、ウサギ、イヌ、ネコ、ネズミ、マウス、モルモット、ニワトリ、アヒル、ガチョウ等)の血管内皮細胞のみならず、マクロファージ、平滑筋細胞にも存在しており、それぞれの細胞に酸化LDLが取り込まれることが動脈硬化症の発症に重要な役割を果たしていると考えられる。したがって、本発明は、前記ヒトや非ヒトの動物における血管内皮細胞等の動脈硬化症に関与する複数の細胞群において酸化LDLの取り込みを顕著に阻害する作用を有することから、多面的でかつ顕著に動脈硬化症を抑制することが期待でき、さらに安全性に優れることから、動脈硬化の予防効果も期待することができる。 次に、本発明をその実施例によって具体的に説明する。 (実施例1)リポソーム組成物の調製 5μmolのホスファチジルコリンと2.5μmolのコレステロールをベースとし、さらにフェオフォルバイドaを0.075−7.5mgとなるように1mlのメタノールに溶解した。次にこの溶液を混合しながら窒素ガスを吹きつけ、溶媒であるメタノールを除去した。溶媒除去後、脂質混合物に10mM HEPES(pH7.4), 150mM NaCl, 2mM CaCl2のバッファーを7.5ml添加し、窒素ガス充填後に4℃で10分間の超音波処理を行った。このようにして作製したリポソームを、脂質包接フェオフォルバイドa(PhAリポソーム)として使用した。なお、フェオフォルバイドaを添加しなかったリポソームをネガティブコントロールとして使用した。 (実施例2)リポソーム組成物の調製 5μmolのホスファチジルコリンと2.5μmolのコレステロールをベースとし、さらにフェオフォルバイドaを0.075−7.5mgとなるように1mlのメタノールに溶解した。上記溶液に終濃度0−0.5MとなるようにビタミンEをさらに混合した。次にこの溶液を混合しながら窒素ガスを吹きつけ、溶媒であるメタノールを除去した。溶媒除去後、脂質混合物に10mM HEPES(pH7.4), 150mM NaCl, 2mM CaCl2のバッファーを7.5ml添加し、窒素ガス充填後に4℃で10分間の超音波処理を行った。このようにして作製したリポソームを、ビタミンE含有脂質包接フェオフォルバイドa(PhAリポソーム+V.E.)として使用した。 またコントロールとして、フェオフォルバイドaを添加しなかったものも作製し、適時使用した。 (実施例3) 実施例1、2により取得した脂質包接フェオフォルバイドa(PhAリポソーム、PhAリポソーム+V.E.)、あるいはフェオフォルバイドa単体(PhA)のアンタゴニスト作用(LOX−1への酸化LDLの結合阻害)をELISAにより評価した。具体的には以下のように行った。 評価にはマキシソープ・イムノプレート(96ウェルタイプ、NUNC社製)を用いて行った。大腸菌で作製したリコンビナントLOX−1蛋白質を5μg/mlとなるようにPBSバッファーで調製し、100μlずつ各ウェルにアプライした。4℃で1晩静置した後に、PBSバッファーで各ウェルを400μl×2回で洗浄し、25%ブロックエース(大日本住友製薬社製)を含むPBSバッファー300μlを各ウェルにアプライした。4℃で1晩静置した後に、PBSバッファーで各ウェルを400μl×2回で洗浄し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSバッファーで適当な希釈倍率となるように調製したフェオフォルバイドa単体や包接したフェオフォルバイドa(PhAリポソーム、PhAリポソーム+V.E.)等のサンプルを100μlずつ各ウェルにアプライした。4℃で1晩静置した後に、PBSバッファーで各ウェルを400μl×3回で洗浄し、5μg/mlとなるようにPBSバッファーで調製した酸化LDLを、100μlずつ各ウェルにアプライした。4℃で1晩静置した後に、PBSバッファーで各ウェルを400μl×3回で洗浄し、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼをコンジュゲートした抗アポリポプロテインB抗体(The Binding Site社製)をPBSバッファーで1000倍希釈し、100μlずつ各ウェルにアプライした。室温で2時間の静置後、PBSバッファーで各ウェルを400μl×5回で洗浄し、3,3’,5,5’−テトラメチルベンヂジン(TMB)−ペルオキシダーゼ−酵素免疫測定(EIA)−基質−キット試薬(バイオラッド社製)を100μlずつ各ウェルにアプライした。適当な反応時間後に、2M H2SO4を50μlずつ各ウェルにアプライして反応を停止させた。最終的に450nmで検出を行い、LOX−1に対するアンタゴニスト作用を酸化LDLの結合量として定量した。結果を図1に示す。 図1に示す結果から、このようにフェオフォルバイドaをリン脂質に包接した場合(PhAリポソーム)、あるいはビタミンEを含有した場合(PhAリポソーム+V.E.)においても、フェオフォルバイドa単体(PhA)と比較して、同程度のアンタゴニスト活性を有することが確認された。 なお、大腸菌由来リコンビナントLOX−1蛋白質及び酸化LDLについては、国際公開第2008/001884号パンフレット(特許文献1)に記載の方法に準じて得たものを使用した。 (実施例4) 実施例1により取得した脂質包接フェオフォルバイドa(PhAリポソーム)、フェオフォルバイドa単体(PhA)のアンタゴニスト作用(酸化LDLの細胞内への取り込み阻害)を以下のようにして評価した。 bLOX−1を安定的に発現しているCHO細胞は、既報の方法に従って経代培養を行った(Nature, Vol.385, p73−77, 1997)。細胞を用いたアッセイについては、次のように行った。96ウェルプレート(ファルコン社製)に1.0×105cells/mlとなるように各ウェルに100μlずつ10%牛胎児血清(FBS)含有HamF12培地(GIBCO社製)のもとで細胞の蒔き込みを行い、37℃、5%のCO2濃度の環境下で2日間培養した。2日間の培養後、培養上清50μlを除去し、PhAリポソーム又はPhAを適当な希釈倍率で含む50μlの新しい培養液を添加した。これらの薬剤を含む新しい培養液を添加した後に、1時間の前処理を上記環境下で行うことにより、LOX−1への抽出物の結合反応を行った。その後、カルボシアニン蛍光色素である1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン パーコレート(DiI:インビトロジェン社製)で標識した酸化LDLを5μg/mlとなるように各ウェルにアプライし、上記環境下で6時間のCHO細胞内への蛍光標識酸化LDLの取り込み処理を行った。これらの処理を行った後に、1mlPBSバッファーで3回各ウェルを洗浄し、室温で10%ホルマリン溶液での固定を10分間行った。固定処理を行った細胞を、200μlのPBSバッファーで洗浄を2回行い、最後にDAPI(4',6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)染色を行った。このように処理されたプレートは、In Cell Analyzer(GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社製)により、DiI標識酸化LDLのbLOX−CHO細胞への取り込みを蛍光顕微鏡イメージ画像として解析した。結果を図2に示す。なお、コントロールとして、前記薬剤を含まず、酸化LDLを用いないもの(−酸化LDL)と前記薬剤を含まず、酸化LDLを用いたもの(+酸化LDL)を用意した。 図2に示す結果から、図1と同様に、セルアッセイにおいても脂質に包接したフェオフォルバイドa(+酸化LDL+PhAリポソーム)は、フェオフォルバイドa単体(+酸化LDL+PhA)と比較して、同程度のアンタゴニスト活性を有することが確認された。 (実施例5) 脂質に包接したフェオフォルバイドa(PhAリポソーム)と、フェオフォルバイドa単体(PhA)の細胞毒性について、処理後の生細胞数を測定して検証した。また実施例2に従い、リポソームに加えるビタミンEを0−0.5Mの範囲で変化させた場合の、細胞毒性に対する濃度依存的な効果についても検証した。生細胞数を測定する方法としては、ミトコンドリア内脱水素酵素によるMTTのホルマザン(難溶性の沈殿物として生成)への還元を利用したMTT法等が汎用される。よって上記方法の変法を利用している、「Cellcounting Kit−8」(商品名、同仁化学研究所製)を用いて生細胞数の測定を行った。具体的には、96ウェルプレート(ファルコン社製)に5.0×104cells/mlとなるように細胞の蒔き込みを行った。2日間の培養後、培養上清50μLを除去し、各阻害剤を適当な希釈倍率で含む50μlの新しい培養液を添加した。抽出液を含む新しい培養液を添加した後に、7時間の培養を行った。7時間後に、抽出液を含まない100μlの培地で3回ずつ各ウェルの洗浄を行った後に、各ウェルに3μlずつとなるようにCell counting Kit−8溶液であるWST―8を含む培地を添加した。1時間の培養後、450nmの吸光度を測定し、生細胞数として換算した。結果を図3に示す。 図3に示す結果から、フェオフォルバイドaを脂質に包接した場合(PhAリポソーム)、フェオフォルバイドa単体(PhA)と比較して約3倍の細胞生存率を示す結果となった。 また、図4は実施例2の方法により調整した脂質包接型フェオフォルバイドaに対するビタミンEの効果について、実施例5の方法により細胞毒性を検証した結果を示すグラフであり、ビタミンEの含有量が増加するにつれてフェオフォルバイドaのみの場合(コントロール)と比べて、細胞生存率が顕著に向上していることがわかる。(実施例6) 医薬組成物(液剤)の調製例 生理食塩水に実施例1又は2で得られたリポソームを含有させた液剤として医薬組成物を調製した。なお、リポソームは、フェオフォルバイドaの実質的な含有量が10μg/mlとなるように調整した。 前記医薬組成物中、リポソームは安定してその状態を維持していた。 実施例6で得られた医薬組成物は、実施例3、4の結果から、アンタゴニスト作用剤として好適に使用できる。また、実施例5の結果から、安全性についても優れているため、動脈硬化抑制剤としても好適に使用できる。 フェオフォルバイドa又はその誘導体化合物と、中性リン脂質とを含有することを特徴とするリポソーム。 中性リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びスフィンゴミエリンからなる群から選ばれる1種以上である請求項1記載のリポソーム。 コレステロールを含有する請求項1又は2記載のリポソーム。 脂質1μmolに対してフェオフォルバイドa又はその誘導体化合物が0.01〜1mg含有されている請求項1〜3いずれか記載のリポソーム。 脂質過酸化阻害剤を含有する請求項1〜4いずれか記載のリポソーム。 前記脂質過酸化阻害剤がビタミン又はその誘導体である請求項5記載のリポソーム。 レクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体(LOX−1)アンタゴニスト作用を有する請求項1〜6いずれか記載のリポソーム。 レクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体(LOX−1)アンタゴニストとして使用するための請求項1〜7いずれか記載のリポソーム。 請求項1〜8いずれか記載のリポソームを含むレクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体(LOX−1)アンタゴニスト作用剤。 請求項1〜8いずれか記載のリポソームを含む動脈硬化抑制剤。 【課題】細胞毒性を示すフェオフォルバイドaもしくはその誘導体化合物において、その化合物単体の特徴であるLOX−1アンタゴニスト活性には影響を与えずに、細胞毒性のみを低減させる方法は知られていなかった。【解決手段】フェオフォルバイドaもしくはその誘導体化合物を脂質に包接しリポソームを形成させることにより、細胞毒性のみを有意に低減させ、かつ化合物単体が持つLOX−1アンタゴニスト活性には影響を与えないことを見出した。この技術を応用することにより、副作用の少ない機能的なLOX−1アンタゴニスト作用剤を提供することが可能である。【選択図】なし