タイトル: | 公開特許公報(A)_タイヤ付きホイールの衝撃性能のシミュレーション方法 |
出願番号: | 2009199910 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01M 17/02,B60C 19/00,B60B 3/00,G06F 17/50,G01M 7/08,G01N 3/303 |
中道 義弘 原 雅徳 森 春幸 寺倉 祐二 JP 2010256319 公開特許公報(A) 20101111 2009199910 20090831 タイヤ付きホイールの衝撃性能のシミュレーション方法 日立金属株式会社 000005083 中道 義弘 原 雅徳 森 春幸 寺倉 祐二 JP 2009083848 20090331 G01M 17/02 20060101AFI20101015BHJP B60C 19/00 20060101ALI20101015BHJP B60B 3/00 20060101ALI20101015BHJP G06F 17/50 20060101ALI20101015BHJP G01M 7/08 20060101ALI20101015BHJP G01N 3/303 20060101ALI20101015BHJP JPG01M17/02 BB60C19/00 ZB60B3/00 ZG06F17/50 612HG01M7/00 HG01N3/303 1 1 OL 17 2G061 5B046 2G061AA13 2G061BA01 2G061CB06 2G061DA11 5B046AA04 5B046JA04 5B046JA08 本発明は、車両用のホイールの性能評価方法に関し、詳しくは、コンピュータを用いてタイヤ付きホイールの衝撃性能を精度良く予測することができるシミュレーション方法に関する。 車両用のホイールは重要保安部品であり、構造物としての機械的強度はもとより、車両が歩道の縁石や車止めに乗り上げるなど障害物に衝突した場合に、き裂が発生しないような衝撃性能(耐衝撃性)が求められている。一方でホイールにはバネ下重量を小さくして乗り心地や走行安定性の向上のために、或はまた車両の燃費改善のために、形状変更や肉厚減少により軽量化を図ることも求められている。衝撃性能向上のためにはホイールを厚肉に形成して強度を向上することが考えられるが、厚肉にするとホイールの軽量化を妨げる問題がある。 ホイールメーカでは、設計時にCAD、CAEと呼ばれるコンピュータ支援設計により形状や重量を事前検討したり、実体での衝撃試験、回転曲げ試験、ドラム耐久試験など性能評価を実施するなどしてホイールを開発しているが、強度と軽量化との相反する要求を満足するための検討は試行錯誤によるところが多く開発に長期間を費やしているのが現状である。 従来、ホイールの衝撃性能の評価は、ホイールを設計後、金型製作、試作を経て実体を製作した後、車両の実車走行時の縁石などへの乗り上げ等、障害物への衝突を想定した衝撃試験として、例えばJIS D4103「自動車部品−ディスクホイール−性能及び表示」に規定された衝撃試験を実施することで評価している。前記JISの衝撃試験は、タイヤを装着したホイールのディスク面(径方向)を水平に対して角度30°傾けてホイールの中央ハブ部を支持台に固定し、この傾いたタイヤ付きホイールに所定の落下高さから、所定の位置に、所定の質量の重錘を落下衝突させ、重錘の衝突によりホイールの損傷(有害なき裂)や急激なタイヤの空気漏れが生じないことを確認してホイールの衝撃性能を評価している。 ホイールの衝撃性能の評価方法には、前記JISに規定された試験の他に、ISO 7141(Road vehicles−Light alloy wheels−Impact test)として、水平に対するホイール径方向の傾き角度を13°とするなど異なる試験仕様として規定されたISO方式衝撃試験があり、また公式な規格は無いが、水平に対するホイールの傾き角度を90°とするなど、カーメーカなどが各社独自に試験仕様や規格値を規定した衝撃試験がある。 図10は、実体のホイールの衝撃試験装置20の模式図である。図10の衝撃試験装置20で、21はホイール、22はタイヤ、23は重錘、23aは重錘23のうちの主錘、23bは副錘、23cは主錘23aに副錘23bを懸架して連結するコイルバネ、24はホイール21のディスク面21aを固定する支持台である。図10に示す衝撃試験装置20は、ホイール21にタイヤ22を装着し、水平に対するホイール21の径方向の傾き角度θを90°、即ちホイール21の径方向を鉛直として、自動車への取り付けと同様の方式で支持台24に固定して、タイヤ22に対する副錘23bの落下位置を定め、落下高さHから重錘23を落下させる構成となっている。なお、重錘23を主錘23a、副錘23b及びコイルバネ23cで構成しているのは、車両が障害物に衝突した場合に車両のサスペンション(懸架装置)による衝撃吸収の影響を考慮したものであり、副錘23bは車両のサスペンションを境にしてそれより下に装着されているバネ下部品(タイヤ、ホイール、ブレーキ系、それを支えるハブキャリアやアクスルなど)による衝撃荷重を、主錘23aはバネ下部品以外の車両全体による衝撃荷重を、コイルバネ23cはサスペンションの弾性変形により衝撃荷重を吸収する緩衝効果を模擬したものとされている。 しかし、図10の衝撃試験装置で、ホイールの衝撃性能を評価するためには、多大な工数と費用とを要し、なおかつ衝撃性能が十分でなかった場合には、ホイールの設計変更、金型修正、試作、衝撃試験という工程を繰り返し実施しなければならず、開発期間が長くなるという問題がある。ホイールのサイズと形状にも依存するが、ホイールの衝撃性能を評価するための期間は、ホイールの設計以降、即ちゼロベースからの設計期間は除外して、金型製作から試作を経て実体を製作して衝撃試験を実施するまでに約3カ月を要する。また、金型製作後にホイールの部分的な設計変更、金型修正、実体の試作・製作及び衝撃試験に要する期間は約2週間である。 これに対して、近年、実体のホイールを用いた試験に替えて、コンピュータを利用した数値解析(シミュレーション)によってホイールの性能を評価する試みがなされている。衝撃試験においてもシミュレーションにより事前に衝撃試験の結果を予測し、これを用いて事前に形状変更や肉厚増減などの対策を行うことで製品開発活動の迅速化を図ろうとする提案がなされている。 例えば、特許文献1には、ホイールの衝撃強度に対する評価方法として、ホイール材料の機械的特性を調べるとともに、ホイールに作用する荷重を静的荷重に置換した有限要素解析を行って荷重に対するホイールの物性を求め、次いでホイールを求めた物性に基づいたバネ特性とするバネ要素に置換してこのバネ要素と錘による振動系としてホイールと錘の関係をモデル化し、錘のホイールに対する落下高さに応じた初期条件に基づいてこの振動系モデルを解き、ホイールに作用する最大負荷を算出し、この最大負荷とホイールの物性からホイールの衝撃強度を推定する解析技術が開示されている。この特許文献1によれば、実際にホイールの試作や衝撃試験などを行うことなく、ホイールの衝撃強度を評価できるとしている。 また、特許文献2には、タイヤ・ホイール性能のシミュレーション方法として、有限個の要素で分割したタイヤ付きホイールの組立モデルを設定するステップと、この組立体モデルに、設定した転動条件で転動シミュレーションを行うステップと、転動シミュレーションを行った組立モデルから評価値を取得するステップとを含む、解析技術が開示されている。 この特許文献2によれば、タイヤとホイールとが相互に影響し合う種々の要因、例えばタイヤとホイールとの間に生じる摩擦力やタイヤとホイールとのタイヤ周方向のずれといった要因などを考慮に入れつつ転動シミュレーションを行うことが可能となるため、操縦安定性、直進安定性、乗り心地、耐磨耗性能など、実車評価に近いシミュレーション結果を得ることができるとしている。また特許文献2には、転動条件にスリップ角を設定したときのコーナリング力の作用を示す転動シミュレーションの一例として、コーナリング中のホイールモデルの応力分布の解析を行い、この結果から、コーナリング中に大きな応力の作用している部分を補強し、応力の小さな部分を削ることにより、軽量化と剛性とをバランスさせたホイールが得られるとの記載がある。特開平5−99784号公報特開2002−350294号公報 しかしながら、従来の衝撃試験のシミュレーションにおいては次に述べるような解決すべき課題を有していた。特許文献1に開示される、ホイールの衝撃強度に対する評価方法は、ホイール単体のみをモデル化しているため、解析精度が十分とは言えない。すなわち、実際の車両はタイヤとホイールとからなる車輪で構成されおり、実車走行時にホイールが、縁石などの障害物に衝突した場合、衝突した際の衝撃力は、タイヤを介してホイールに伝達される。しかし、特許文献1ではタイヤが存在することによる影響、例えば、タイヤ自体の特性、タイヤ内の充填空気によるタイヤの圧縮、変形などを考慮に入れていないので、ホイールの解析精度として十分とは言えない。 また、特許文献2に開示される、タイヤ・ホイール性能のシミュレーション方法は、専らタイヤ性能のシミュレーションに着目して提案されたもので、コーナリング中のホイールモデルの応力分布の解析に例示されるように、駆動、減速、旋回など、ホイールにかかる衝撃力の小さい転動シミュレーションを想定している。このため車輪が縁石等の障害物に衝突した場合など、通常の走行時とは異なる比較的大きな衝撃力が作用してタイヤが大変形した場合の挙動と、それを考慮したホイールの衝撃性能の評価、予測を行うことは困難である。 本発明は、上記した実情に鑑みてなされたもので、車両が縁石や車止めに乗り上げるなど障害物に衝突した場合に想定される、比較的大きな衝撃力が作用した際のホイールの衝撃性能を精度良く、かつ短時間に予測することができるタイヤ付きホイールの衝撃性能のシミュレーション方法を提供することを目的としている。 本発明者らは、上記課題を解決するため、実体の衝撃試験をコンピュータで模擬的に再現(シミュレート)することに着目して鋭意研究した結果、実体の衝撃試験と同様、水平に対して所定の傾き角度で固定したタイヤ付きホイールに、所定質量の重錘を、所定高さから、タイヤの所定の位置に落下させたときの挙動をコンピュータで数値解析して模擬的に再現することで、上記課題を解決してホイールの衝撃性能を評価できるとの知見を得て本発明に想到した。 すなわち、本発明のタイヤ付きホイールの衝撃性能のシミュレーション方法は、ホイールモデルを設定するステップ(S1)と、タイヤモデルを設定するステップ(S2)と、タイヤモデルとホイールモデルとを位置合わせしてタイヤ付きホイールモデルを設定するステップ(S3)と、主錘と副錘とバネ要素とからなる重錘モデルを設定するステップ(S4)と、解析条件を設定するステップ(S5)と、重錘モデルをタイヤ付きホイールモデルに衝突させる衝撃シミュレーションを行うステップ(S6)と、衝撃シミュレーションからホイールの応力および/または歪を取得するステップ(S7)と、を含むことを特徴とする。 本発明によれば、車両が縁石や車止めに乗り上げるなど障害物に衝突した場合に想定される、比較的大きな衝撃力が作用した際のホイールの衝撃性能を精度良く、しかも短時間に予測することができる。これにより、ホイールの強度確保と軽量化に寄与することが期待され、また少ない試作回数でホイールを開発することが可能となり開発期間の短縮や費用低減にも貢献する。本発明のタイヤ付きホイールモデルと重錘モデルの一例を示す斜視図である。本発明のシミュレーション方法を含むホイール開発手順の一例を示すフローチャートである。本発明の衝撃シミュレーションで得られる衝突挙動の様子を可視化した斜視図である。本発明の解析結果と、実体の衝撃試験の実測結果を示すグラフである。本発明の衝撃シミュレーションで得られたホイールモデルにかかる衝撃力が最大のときに発生する応力の分布を可視化した斜視図である。実体のホイールの衝撃試験にき裂が生じた部位を示す図である。比較例のタイヤなしホイールモデルと重錘モデルを示す斜視図である。比較例の解析結果と、実体の衝撃試験の実測結果を示すグラフである。比較例の衝撃シミュレーションで得られたホイールモデルにかかる衝撃力が最大のときに発生する応力の分布を可視化した斜視図である。実体のホイールの衝撃試験装置の模式図である。実体の衝撃試験の衝突挙動の様子をハイスピードカメラで撮影した画像である。(実施の形態1) 以下、本発明の実施の形態の一例を図面に基づき説明する。図1は、本発明のタイヤ付きホイールモデル10と重錘モデル13の一例を示す斜視図である。また図2は、本発明のシミュレーション方法を含むホイール開発手順の一例を示すフローチャートである。以下、図1と図2を参照しつつ説明する。なお、以下に記述する重錘の落下位置や解析条件の設定値などの具体値は、本発明の実施の形態を説明するための一例であって、本発明はこれに限定されない。重錘の質量や落下高さ及びタイヤへの落下位置などは、カーメーカの指定する試験仕様に基づいて設定してもよい。本実施の形態のタイヤサイズは225/50R18の場合について例示する。 図1は、タイヤ付きホイールモデル10を回転軸を含む子午面で、重錘モデル13を長手方向の中央面で、夫々タイヤの進行方向に対して前後に切断した半分のモデル(ハーフモデル)を示す。ハーフモデルとすればモデルの要素数を削減して計算時間を短縮できるので好ましい。但し、ハーフモデルではなくシミュレーションの対象となる全ての構成をモデル化したフルモデルとしてもよい。(S1)ホイールモデルを設定するステップ ホイールは、取り付け孔を介してボルトで車軸に締結されるディスク面と、タイヤが装着されるリム部と、ディスク面とリム部とを連結するスポーク部などの要素とから構成されている。ホイールモデル11は、ホイールの各要素を、六面体要素や四面体要素などのソリッド要素からなる有限要素に分割し、コンピュータで計算可能な数値データとして設定する。(S2)タイヤモデルを設定するステップ タイヤは、ゴム部、ビードワイヤー、スチールベルト、カーカスなどの各要素からなる複合構造物である。タイヤモデル12は、タイヤの各要素をソリッド要素、シェル要素などからなる有限要素に分割し、コンピュータで計算可能な数値データとして設定する。なお、本発明の衝撃シミュレーションは走行状態を考慮した転動時の挙動を模擬した転動シミュレーションは行わないので、転動シミュレーションでは重要となるタイヤのゴム部のトレッドパターンを設定する必要はなく、また路面モデルも不要である。 なお、ホイールモデル11を設定するステップ(S1)と、タイヤモデル12を設定するステップ(S2)とは、実行順序を逆としてもよく、また各ステップ(S1)、(S2)を並列して行ってもよい。(S3)タイヤ付きホイールモデルを設定するステップ 次に、ホイールモデル11とタイヤモデル12を、実際にタイヤを組付けたホイールと同様に、コンピュター上で位置合せして組み合わせることでタイヤ付きホイールモデル10を設定する。 ここで重錘をタイヤに衝突させる際のホイール径方向の水平に対する所定の傾き角度(図10でθ)を設定する。本実施の形態では、ホイールモデル11のディスク面11aが水平に対して角度90°傾けてタイヤ付きホイールモデル10を設定する。実体の衝撃試験においては、タイヤ付きホイールを支持台に固定する際の水平に対する傾き角度θによって重錘が落下したときの重錘とホイール及びタイヤとの接触状況が変化する。即ち角度θが小さいほど、落下した重錘はホイールに接触しやすくなり、一方、角度θが大きいほど、即ちホイールが径方向で水平から鉛直に近づくほど、落下した重錘はホイールに接触しにくく、タイヤに接触しやすくなる。換言すれば、水平に対するホイール径方向の傾き角度θが小さいほど衝撃に対するタイヤの影響は小さく、角度θが大きいほど衝撃に対するタイヤの影響が大きくなる。従って本発明が解決しようとする課題に含まれるタイヤの影響を考慮したホイール衝撃性能の予測精度向上の観点からすると、本発明のシミュレーション方法は、試験仕様として、ホイールを径方向で水平に対する傾き角度を90°に固定したタイヤ付きホイールの実体の衝撃試験を再現する場合に好適である。(S4)主錘と副錘とバネ要素とからなる重錘モデルを設定するステップ 次に、主錘13a、副錘13b、およびその間のバネ要素13cからなる重錘モデル13を設定する。主錘13a及び副錘13bは、六面体要素や四面体要素などのソリッド要素からなる有限要素に分割し、またバネ要素13cは、複数のビーム要素からなる有限要素に分割し、何れもコンピュータで計算可能な数値データとして設定する。 実体の衝撃試験で使用される主錘13a及び副錘13bの外形寸法(サイズ)は、その質量を確保するために、タイヤ付きホイールに比較して相対的に大きなものとなる。実体の重錘サイズのまま重錘モデルを設定すると要素数が膨大となり計算時間の増大を招く。そこで、重錘を落下衝突させたときの重錘とタイヤとの接触領域より大きな外形寸法を確保するなど、衝撃シミュレーションに影響を及ぼさない範囲で、主錘13a及び副錘13bの外形寸法を小さくしてモデルを設定する。これにより重錘モデル13の要素数を削減して計算時間を短縮できる。 また重錘をタイヤに衝突させる際の所定の落下位置として、例えば図1の副錘13bの図示右下端の角部13dと、タイヤモデル12との相対的な位置関係を設定する。本実施の形態では、タイヤ軸方向距離として、車両内側(インナー側)のタイヤのサイドウォール端Sを起点にタイヤ総幅の例えば約1/4の位置に副錘13bの角部13dが位置するように、重錘モデル13とタイヤ付きホイールモデル10との位置合せをする。(S5)解析条件を設定するステップ 次に、各モデルの材料定数(縦弾性係数、ポアソン比、密度など)、タイヤモデル12の空気圧、タイヤモデル12とホイールモデル11との接触面の摩擦係数、重錘モデル13の初速ほかの各種解析条件を、以下のように設定する。(S5−1)ホイールモデル アルミニウム合金からなる鋳造ホイールを想定して、ホイールモデル11は弾塑性材料として、縦弾性係数70GPa、ポアソン比0.3、密度2.7×10−6kg/mm3とし、応力−歪線図を設定する。(S5−2)タイヤモデル タイヤモデル12のゴム部は、一般的なゴム材料の横弾性係数3.0MPaを設定する。ビードワイヤー及びスチールベルトは、鋼材の縦弾性係数206GPaを設定する。カーカスは、一般的に有機繊維(ポリエステルなど)を撚ったものが使われているで、縦弾性係数20GPaを設定する。(S5−3)タイヤ付きホイールモデル 図10に示す実体のホイールの衝撃試験装置20では、ホイール21のディスク面21aが支持台24に固定されているので、図1に示すタイヤ付きホイールモデル10も、ホイールモデル11のディスク面11aが動かないように、取り付け孔11bに接する節点が図1に示すXYZ軸方向に相対的に移動しないよう全拘束する拘束条件を設定する。また、図1に示すハーフモデルの切断面となる対称面に位置するタイヤ要素、ホイール要素の節点に対して、X軸方向の挙動を拘束する拘束条件を設定する。なお解析モデルをフルモデルとした場合には前記対称面に位置する要素には拘束条件を設定しない。(S5−4)重錘モデル 重錘モデル13は、主錘13a及び副錘13bについては剛体とし、鋼材の縦弾性係数206GPa、ポアソン比0.3を設定し、また所定質量の重錘として、実体の衝撃試験で使用される主錘910kg、副錘100kgに対して重錘モデル13をハーフモデルとしているので半分の質量として、主錘13aの質量455kg、副錘13bの質量50kgを設定する。重錘の密度については、前述のステップ(S4)で記載したように計算時間短縮のため、重錘の外形寸法(サイズ)を小さく設定するので、重錘の材料である鋼材の密度をそのまま設定すると、上述の所定質量を確保できない。このため主錘13a及び副錘13bが所定質量(455kg及び50kg)となるように、主錘13a及び副錘13bの夫々の密度を大きく設定する。また重錘の所定落下高さとして、本実施の形態では重錘モデル13の落下高さを127mm(5インチ)に設定する。 バネ要素13cは、複数のバネからなる構成として、10本を設定し、全てのバネ要素を合算した合成バネ定数として500N/mm、初期縮み量を衝撃試験の前記JIS規定に従って6mmに設定する。 重錘モデル13は、落下方向、即ち図1でのY軸方向への相対的な移動のみを許し、XZ軸方向への挙動を拘束するように主錘13a、副錘13b及びバネ要素13cの全ての節点に拘束条件を設定する。(S5−5)空気圧、接触面の摩擦係数、重錘モデルの初速、および解析条件 タイヤモデル12の空気圧は、実体の衝撃試験で充填される0.26MPa、ホイールモデル11とタイヤモデル12との接触面の摩擦係数は一定値として0.1、また重錘モデル13の初速は、実体の衝撃試験での重錘の落下高さ(H)から、以下のように算出して設定する。例えば、図10で示した衝撃試験で、重錘23の落下高さが(H)のとき、タイヤ22に当たる瞬間の重錘23の速度(V)は、エネルギ保存則[V=√(2gH),(g:重力加速9807mm/s2)]で算出されるので、この計算式から、重錘モデル13の落下高さが127mm(5インチ)では、初速を1578mm/sと設定する。(S6)重錘モデルをタイヤ付きホイールモデルに衝突させる衝撃シミュレーションを行うステップ 次に、市販のアプリケーションソフトのうち有限要素法(FEM)による動的な弾塑性解析が可能な衝撃解析ソフトを使用して、重錘モデル13をタイヤ付きホイールモデル10に衝突させる衝撃シミュレーションを行う。すなわち、上記ステップ(S5)で設定した各種解析条件に基づいて、図1でタイヤ付きホイールモデル10に重錘モデル13を落下して衝突させ、重錘モデル13がタイヤ付きホイールモデル10に衝突するときの挙動をコンピュータで逐次模擬的に再現するとともに、重錘モデル13の評価値として衝撃力・加速度・変位などを、またホイールモデル10の評価値としてホイール各部の応力および/または歪などを数値解析する。衝撃解析の処理は、アプリケーションソフトが設定した微小時間毎に時間ステップを刻みながら、逐次計算することによって行われ、設定した所定の出力時間間隔毎に重錘モデル13及びホイールモデル10の評価値を出力して記憶し、設定した所定の計算終了時間になったら計算を終了する。本実施の形態では、出力時間間隔0.008(秒)、計算終了時間0.24(秒)と設定する。出力時間間隔は好ましくは0.01(秒)以下、さらに好ましくは0.005(秒)以下である。計算終了時間は好ましくは0.1(秒)以上である。(S7)衝撃シミュレーションからホイールの応力および/または歪を取得するステップ 次に、衝撃シミュレーションを行ったホイールモデル10から評価値としてホイール各部の応力および/または歪を取得するステップを行う。本ステップで得られるホイール各部の応力、歪は、ホイール開発において強度と軽量化を満足するよう形状変更や肉厚増減などの事前検討を行うために利用する。これらの各評価値は、前記ステップ(S6)で、予め設定され衝撃シミュレーションの中で出力されかつ記憶され、本ステップ(S7)で取得され、また可視化される。 図3は、本発明の衝撃シミュレーションで得られる衝突挙動の様子を可視化した斜視図である。図3で、(a)は重錘モデル13がタイヤモデル12に接触した時点(0(秒))の状態、(b)は重錘モデル13とタイヤモデル12の接触から0.064(秒)経過後のタイヤモデル12が変形している状態、(c)は重錘モデル13とタイヤモデル12の接触から0.176(秒)経過後のタイヤモデル12が大きく潰れるとともにホイールモデル11も変形している状態を示している。 図11は、実体の衝撃試験の衝突挙動の様子をハイスピードカメラで撮影した画像である。実体の衝撃試験は、上述した実施の形態と同様の試験仕様で実施した。図11で、(a)は重錘23がタイヤ22に接触した時点(0(秒))の状態、(b)は重錘23とタイヤ22の接触から0.06(秒)経過後のタイヤ22が変形している状態、(c)は重錘23とタイヤ22の接触から0.18(秒)経過後のタイヤ22が大きく潰れるとともにホイール21も変形している状態を示している。実体の衝撃試験ではシミュレーションのように断面や内部の可視化はできないため外観で観察される範囲での評価に過ぎないものの、経過時間に対応したタイヤやホイールの変形や潰れの状況は、図11の実体の衝撃試験と図3の衝撃シミュレーションとで良く一致している。このことから本発明のシミュレーション方法は、実体のタイヤ付きホイールの衝撃試験を良く再現していることがわかる。 図4は、本発明の解析結果と、実体の衝撃試験の実測結果を示すグラフである。図4で横軸は重錘がタイヤに接触した時点を起点(0(秒))としての経過時間(秒)を、縦軸は主錘及び副錘の変位(mm)と重錘の荷重を指標としたホイールに対する衝撃力(kN)を示し、本発明の解析結果である解析値として、夫々、主錘の変位を四角印で、副錘の変位を三角印で、衝撃力を丸印で示し、また実体の衝撃試験の実測結果である実測値を太線の実線で示している。 図4の実測値(実線)に基づいて、実体の衝撃試験での重錘の挙動や荷重の変化を説明すると、(1)重錘がタイヤに接触後、重錘の下向きの荷重と変位は増加を続けタイヤは潰れてゆく、(2)約0.064秒後にインナーフランジ(リム)近傍でタイヤが潰れきると重錘の荷重が急激に増加し、(3)約0.08〜0.12秒の間、副錘の下降(変位)は止まるが、主錘は下降(変位)を続け、この間に副錘と主錘の間のコイルバネが圧縮されて縮んでゆくので重錘の荷重増加は停滞し、(4)約0.12秒以後はコイルバネの圧縮が止まり、主錘の慣性力で再び荷重が増加してホイールが変形するため副錘も再び下降(変位)し、(5)約0.176秒付近でホイールが重錘の慣性力を受け止めるため、重錘の荷重と変位は最大(ピーク)となり、(6)約0.176秒以後は重錘がはね返って上昇してゆく。 図4に示すように解析値(四角印、三角印、丸印)も実測値(実線)と同様に、約0.176(秒)経過時において、主錘と副錘の変位は最下点に達して最大になり、重錘の荷重がピークに達してホイールにかかる衝撃力が最大になっている。なお、前記図3(c)での衝突挙動の再現図は、図4での衝撃力が最大となる0.176(秒)経過時の各モデルの状態を示したもので、タイヤモデルの大変形とホイールモデルの変形の様子が可視化されている。図4から明らかなように、主錘及び副錘の変位とホイールに対する衝撃力の何れも、経過時間毎の解析値と実測値とが良く一致しており、本発明のシミュレーション方法によれば、タイヤ付きホイールの衝撃性能を精度良く予測できていることがわかる。 図5は、本発明の衝撃シミュレーションで得られたホイールモデル11にかかる衝撃力が最大のときに発生する応力の分布を可視化した斜視図である。図6は、実体のホイールの衝撃試験でき裂(K)が生じた部位を示す図である。図5でのホイールモデル11に最大の引張応力(σmax)が発生した部位(実線丸囲み)と、図6での実体のホイールにき裂(K)が生じた部位(実線丸囲み)とは良く一致している。図5と図6の対比から明らかなように、解析結果での最大の引張応力の発生部位と、実体の衝撃試験でのき裂発生部位とは良く一致しており、本発明のシミュレーション方法によれば、タイヤ付きホイールの衝撃性能を精度良く予測できていることがわかる。なお、図5の破線丸囲みで示した部位も応力が大きくなっているが、この部位は圧縮応力を示すためき裂発生に影響しないことから評価の対象から除外した。 上記の各ステップ(S1)〜(S7)の手順を含むシミュレーション方法を実施することでホイールの衝撃性能を精度良く予測することができる。次に本発明のシミュレーション方法を用いてホイール性能を評価して強度確保と軽量化とを図る手順について説明する。(S8)ホイールの衝撃性能が目標に到達したか判定するステップ 次に、ホイールの衝撃性能が目標に到達したか判定してホイール性能を評価する。本ステップでは、上記ステップ(S7)で得られたホイールモデル11にかかる応力および/または歪が、予め材料試験を実施して目標として定めたホイールの機械的性質より小さいか否かを判定する。例えば、ホイールモデル11にかかる衝撃力が最大のときの最大の引張応力(σmax)および/または最大歪(%)が、予め材料試験などから目標として定めたホイールの引張強さおよび/または歪より小さい場合には、実体のホイールの衝撃試験においても、ホイールにき裂が生じないと判定する。(S9)ホイールモデルの形状・寸法の変更を行うステップ 上記ステップ(S8)で、ホイールモデル11にかかる最大の引張応力(σmax)および/または最大歪(%)が、目標とするホイールの機械的性質を超えた場合には、ホイールモデル11の形状・寸法を変更して、再度、上記ステップ(S1)で形状・寸法変更を反映したホイールモデル11を作成し、衝撃シミュレーションを含む上記ステップ(S2)〜(S7)を実施し、ホイールモデル11がステップ(S8)を満足したら、実体のホイールを試作する。 上記の各ステップ(S1)〜(S7)の手順を含むシミュレーション方法を実施するとともに、上記の各ステップ(S8)及び(S9)の手順でホイールを開発することで、ホイールの性能を評価して強度確保と軽量化に寄与することが期待される。 本発明と比較するため、タイヤなしホイールモデルで衝撃性能のシミュレーションを行った。図7は、比較例のタイヤなしホイールモデル11と重錘モデル13を示す斜視図である。比較例では、タイヤモデルを削除した以外は前述した実施の形態と同様の解析条件等で解析を実施する。比較例では、タイヤモデルがないので落下する重錘モデル13は、ホイールモデル11のインナーフランジ(リム)に接触して、ホイールモデル11に直接衝撃力が作用する。 図8は、比較例の解析結果と、実体の衝撃試験の実測結果を示すグラフである。図8で横軸及び縦軸、並びにグラフ上のプロット及び実線は、実施の形態と同様に示し、比較例の解析値として、夫々、主錘の変位を四角印で、副錘の変位を三角印で、衝撃力を丸印で示し、また実体の衝撃試験の実測値を太線の実線で示している。なお、図8で解析値の経過時間(秒)については、重錘モデルがホイールモデルに接触した時点を起点(0(秒)として示している。図8に示すように、タイヤなしホイールモデルの衝撃性能のシミュレーションでは、主錘と副錘の経過時間(秒)に対する変位(mm)と、ホイールモデルに対する衝撃力(kN)の値が、実体のタイヤ付きホイールの衝撃試験における実測値と大きく異なっている。比較例の解析結果では、ホイールにかかる衝撃力は、重錘モデルとホイールモデルの接触から0.128(秒)経過時に最大となっている。 図9は、比較例の衝撃シミュレーションで得られたホイールモデル11にかかる衝撃力が最大のときに発生する応力の分布を可視化した斜視図である。図9の比較例のホイールモデル11での最大の引張応力(σmax)発生部位(実線丸囲み)と、前述した図6の実体のホイールでのき裂(K)発生部位(実線丸囲み)とは大きく異なっている。図8及び図9より、比較例のようにタイヤなしのホイールモデルで衝撃性能のシミュレーションを行ってもホイールの衝撃性能を精度良く予測することは困難である。なお、図9の破線丸囲みで示した部位も応力が大きくなっているが、この部位は圧縮応力を示すためき裂発生に影響しないことから評価の対象から除外した。(実施の形態2) 以下、本発明の他の実施の形態として、計算時間を短縮した一例を説明する。実施の形態2は実施の形態1の態様のうち、ホイールモデルの密度を変更した以外はシミュレーション方法の手順(ステップ)、解析モデル、解析条件等は全く同一として実施する。 実施の形態1でのホイールモデル11は、密度を2.7×10−6kg/mm3として実施すると解析時間は約4.6日(109.8Hr)を要した。処理能力の高いコンピュータを用いれば計算時間を短縮できるが、新たな設備投資を要して性能評価のコストを増大させてしまう。そこで予測精度を確保して、さらに計算時間を短縮するためホイールモデルの密度を大きくすることを検討した。 陽解法の有限要素法を用いて解析する場合には、計算時に時間ステップを刻む微小時間(Δt)が下記の式(1)で示されるクーラン(Courant)条件により決定される。Δt≦L/√(E/ρ)・・・(1)ここで、Δtは時間ステップを刻む微小時間、Lは解析モデルの要素寸法、Eは弾性係数、ρは密度である。このうち解析モデルの要素寸法は解析モデルを構成する要素の中で最も小さい要素の代表長さ(要素長)である。式(1)のΔtは解析モデル全要素について算出され、このうち最小のΔtに基づいてシミュレーションが行われるので、Δtが小さければ計算に多くの時間を要する。また、解析の計算時間は解析モデルの要素総数が多くなると長くなる。従って計算時間を短縮するためには、時間ステップを刻む微小時間Δtを大きく、要素総数を少なくすることが必要である。上記の式(1)より、Δtを大きくするには、(イ)解析モデルの要素寸法(要素長)を大きくする、(ロ)弾性係数を小さくする、(ハ)密度を大きくする、の3つの方法がある。(イ)(ロ)の方法では解析の誤差を増大して予測精度を悪化させることが懸念されるため、(ハ)の密度を大きくすることで計算時間を短縮することとした。 本実施の形態では、ホイールモデルの密度を夫々、10倍、100倍、500倍と変更して、前述のステップ(S1)〜(S7)の手順に沿って衝撃シミュレーションを実施した。次にシミュレーションによる解析結果と実体の衝撃試験の実測結果から、重錘の荷重と変位がピークに達した時の主錘と副錘の変位の最大値及びホイールにかかる衝撃力の最大値を求めた。さらに前記の変位及び衝撃力の最大値について実測値に対する解析値の誤差(解析誤差(%))を算出するとともに、設定した所定の計算終了時間に到達するまでに要した時間(計算時間(Hr))を確認した。表1にホイールモデルの密度を変更した場合の解析誤差と計算時間を示した。表1で実体の衝撃試験での計算時間欄には、比較のため、金型製作以降、衝撃試験を実施するまでの所要時間(約3カ月)を併記した。また参考として、ホイールモデルの密度を1倍としてタイヤなしで衝撃シミュレーションを行った場合の解析値、解析誤差及び計算時間を併記した。 表1に示すように、ホイールモデルの密度を10倍にしたときの解析誤差は、衝撃力としては4%程度あるもの重錘の変位は2%程度で密度1倍の解析誤差と同等であり、また密度を100倍にしたときの解析誤差は10%程度であり、何れも予測精度として問題ないと判断された。また、計算時間は、密度1倍での時間(109.8Hr)を1としたときに、密度10倍では時間比1/3(所要時間33.3Hr)、密度100では時間比1/10(所要時間10.7Hr)と大幅に短縮できることがわかる。一方、ホイールモデルの密度を500倍にしたときの計算時間は、時間比1/23(所要時間4.7Hr)となって、さらに計算に要する時間を短くできるものの、解析誤差は、重錘の変位と衝撃力の何れにおいても30%程度と大きくなることから予測精度の悪化が懸念される。従って、予測精度を確保して、しかも計算時間を短縮するためにはホイールモデルの密度を大きくすることが望ましく、密度を大きくする場合には、ホイールモデルの密度を500倍未満に設定することが好ましく、100倍以下に設定することがより好ましい。 以上のことから、本発明のタイヤ付きホイールの衝撃性能のシミュレーション方法によれば、車両が縁石や車止めに乗り上げるなど障害物に衝突した場合など比較的大きな衝撃力が作用した際のホイールの衝撃性能を精度良く、しかも短時間で予測することができる。この衝撃性能のシミュレーション結果を踏まえてホイールを開発することで、ホイールの強度確保と軽量化に寄与することが期待でき、しかも、例えば少ない試作回数でホイールを開発できるなど、開発期間の短縮や費用低減への貢献も期待できる。 10:タイヤ付きホイールモデル 11:ホイールモデル 11a:ディスク面 11b:取り付け孔 12:タイヤモデル 13:重錘モデル 13a:主錘 13b:副錘 13c:バネ要素 20:衝撃試験装置 21:ホイール 21a:ディスク面 22:タイヤ 23:重錘 23a:主錘 23b;副錘 23c:コイルバネ 24:支持台 H:落下高さ V:重錘の速度 θ:ホイールの傾き角度 ホイールモデルを設定するステップと、タイヤモデルを設定するステップと、タイヤモデルとホイールモデルとを位置合わせしてタイヤ付きホイールモデルを設定するステップと、主錘と副錘とバネ要素とからなる重錘モデルを設定するステップと、解析条件を設定するステップと、重錘モデルをタイヤ付きホイールモデルに衝突させる衝撃シミュレーションを行うステップと、衝撃シミュレーションからホイールの応力および/または歪を取得するステップと、を含むことを特徴とするタイヤ付きホイールの衝撃性能のシミュレーション方法。 【課題】 車両が縁石や車止めに乗り上げるなど障害物に衝突した場合に想定される比較的大きな衝撃力が作用した際のホイールの衝撃性能を精度良く予測する。【解決手段】 ホイールモデルを設定するステップと、タイヤモデルを設定するステップと、タイヤモデルとホイールモデルとを位置合わせしてタイヤ付きホイールモデルを設定するステップと、主錘と副錘とバネ要素とからなる重錘モデルを設定するステップと、解析条件を設定するステップと、重錘モデルをタイヤ付きホイールモデルに衝突させる衝撃シミュレーションを行うステップと、衝撃シミュレーションからホイールの応力および/または歪を取得するステップと、を含むタイヤ付きホイールの衝撃性能のシミュレーション方法である。【選択図】 図1