タイトル: | 公開特許公報(A)_芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法 |
出願番号: | 2009197974 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 51/56,C07C 63/22,C07C 63/30,C07C 63/307,C07C 63/313,C07C 63/38,C07B 61/00 |
井出野 隆次 倉島 秀治 JP 2011046664 公開特許公報(A) 20110310 2009197974 20090828 芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法 三菱瓦斯化学株式会社 000004466 永井 隆 100117891 井出野 隆次 倉島 秀治 C07C 51/56 20060101AFI20110210BHJP C07C 63/22 20060101ALI20110210BHJP C07C 63/30 20060101ALI20110210BHJP C07C 63/307 20060101ALI20110210BHJP C07C 63/313 20060101ALI20110210BHJP C07C 63/38 20060101ALI20110210BHJP C07B 61/00 20060101ALN20110210BHJP JPC07C51/56C07C63/22C07C63/30C07C63/307C07C63/313C07C63/38C07B61/00 300 6 OL 7 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC47 4H006BA07 4H006BA19 4H006BA30 4H006BJ50 4H006BS30 4H039CA65 4H039CD30この発明は、医農薬の中間体としてあるいは機能性高分子の製造原料として有用な芳香族カルボン酸クロライドを製造する方法に係り、特に芳香族ポリイミドや芳香族ポリエステル等の機能性高分子を製造する上で不可欠な高純度の芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法に関するものである。一般的な芳香族カルボン酸クロライドの製造方法としては、原料となる芳香族カルボン酸を、塩素化剤により塩素化反応させて芳香族カルボン酸クロライドを製造する方法がある。塩素化剤としては、塩化チオニル、五酸化リン、三塩化リン、塩化オキサリル、塩化スルフリルまたは塩化ホスホリルなどが挙げられる。 そのような中、トリメシン酸トリクロライドの製造方法として、第三級酸化ホスフィンを触媒として使用し、塩素化剤として塩化チオニルを使用して、トリメシン酸からトリメシン酸トリクロライドを製造する方法が公知となっている(特許文献1)。ただし、この方法では第三級酸化ホスフィンを製品中に残存させたままであり、不純物が多く好ましくない。 芳香族カルボン酸クロライドを製造する方法として、トリクロロメチル基を加水分解し、芳香族カルボン酸クロライドを生成させる方法がある(特許文献2)。この方法では、分子内に存在するメチル基の3個の水素を触媒と塩素ガスを用いてすべて塩素に置換してトリクロロメチル基を有する化合物を生成させる必要があり、またその後加水分解し、分離・精製をする必要があることから、製造は非常に困難である。 芳香族カルボン酸クロライドの製造方法としては、オルソトルイル酸にベンゾトリクロライドを作用させてオルソトルイル酸クロライドを製造する方法がある(特許文献3)。このオルソトルイル酸クロライドを製造する方法は、過剰のオルソクロロトルエンを金属マグネシウムでグリニャール試薬化し、その際にはテトラヒドロフランなどの低沸点溶剤を使用する。さらにその後、二酸化炭素でオルソトルイル酸を製造し、低沸点の溶剤を留去し、ベンゾトリクロライドで塩素化してオルソトルイル酸クロライドを製造するが、最後に当初仕込んだ過剰のオルソクロロトルエンを留去して製品を得ている。このように塩素化反応は過剰のオルソクロロトルエンを溶剤として使用することとなり、副生成物であるベンゾクロライド以外に、大量の溶剤を除去しなければならなくなる。 また、芳香族カルボン酸クロライドの製造方法として、パラクロロベンゾトリクロライドとラウリン酸とを塩化鉄触媒の存在下に反応させて加水分解し、得られた反応混合物中に蒸留安定剤としてトリフェニルホスフィンを添加して蒸留精製し、パラクロロ安息香酸クロライドとラウリン酸クロライドとを製造し、この際にラウリン酸クロライドの分解が蒸留安定剤未添加の場合に比べて収率で約18%程度抑制されることが記載されている(特許文献4)。しかしながら、この方法では、蒸留安定剤それ自体あるいはその分解物が目的物である芳香族酸クロライドの微量不純物となり、高純度の芳香族酸クロライドを製造することは困難である。また、トリフェニルホスフィンのような蒸留安定剤の使用は、通常、蒸留安定剤の使用量が触媒に対して等モル以上であり、しかも、蒸留安定剤が高価であって回収もできないことから、製造コストが高くなるという問題もある。 さらに、芳香族カルボン酸クロライドの製造方法として、キシレンからビストリクロロメチルベンゼンを合成し、それと対応する芳香族ジカルボン酸とを塩化鉄触媒の存在下に反応させて加水分解し、芳香族ジカルボン酸ジクロライドを製造することが記載されている(特許文献5)。しかしながら、ビストリクロロメチルベンゼンはキシレンの2個のメチル基の6個の水素を塩素化する必要があり、分離・精製をする必要があることから、製造は極めて困難である。特公昭64−12255号公報特開平8−188551号公報特開昭58−219144号公報特開昭61−155350号公報特開昭51−127032号公報 本発明の目的は、医農薬の中間体としてあるいは機能性高分子の製造原料として有用な芳香族酸クロライドを製造する方法に係り、特に芳香族ポリイミドや芳香族ポリエステル等の機能性高分子を製造する上で不可欠な高純度の芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法を提供することにある。 本発明者は鋭意検討した結果、芳香族ポリカルボン酸を、鉄または亜鉛の塩化物もしくは酸化物を触媒として、トリクロルメチルベンゼン化合物と反応させ、生成物を蒸留・精製することにより、高純度の芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドを得るに至った。 本発明により、医農薬の中間体としてあるいは機能性高分子の製造原料として有用な芳香族酸クロライドを製造する方法に係り、特に芳香族ポリイミドや芳香族ポリエステル等の機能性高分子を製造する上で不可欠な高純度の芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法を提供できる。 本発明は、芳香族ポリカルボン酸を、鉄または亜鉛の塩化物もしくは酸化物を触媒として、トリクロルメチルベンゼン化合物と反応させ、生成物を蒸留・精製することにより得られる、高純度の芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法に関する。 芳香族ポリカルボン酸としては、芳香環上に2個以上のカルボン酸が置換基として存在していればよく、芳香環としてはベンゼン環、ナフタレン環、および3環以上の多環芳香族炭化水素などが例示できる。具体的には、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、およびこれらの誘導体、から選ばれる1種以上が挙げられる。 鉄または亜鉛の塩化物もしくは酸化物の触媒としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、塩化亜鉛、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、または酸化亜鉛が挙げられ、なかでも酸化亜鉛、塩化亜鉛が好ましい。なお、これらの2種以上を混合して使用しても良い。 触媒の使用量は使用する反応原料の種類、触媒の種類、反応温度に依存するが、原料芳香族ポリカルボン酸100重量部に対して0.001〜0.3重量部、好ましくは0.01〜0.2重量部、さらに好ましくは0.01〜0.1部である。触媒使用量がこの範囲より少ないと反応が円滑に進行しにくくなり、また多いと縮合反応が進行し、タール状の残渣が多量に生成することとなる。 トリクロルメチルベンゼン化合物としてはベンゾトリクロライド、p-クロロベンゾトリクロライド、および3,4−ジクロロベンゾトリクロライドが挙げられる。芳香族ポリカルボン酸とトリクロルメチルベンゼン化合物の配合量は、芳香族ポリカルボン酸中のカルボン酸モル数/トリクロルメチルベンゼン化合物のトリクロルメチルモル数=1/1〜1/1.5が好ましく、好ましくは1/1〜/1.2、さらに好ましくは1/1〜1/1.1である。いずれかの量が多くなると、未反応物質が多くなることや、縮合反応の進行による副生成物が多く生成することとなり好ましくない。 反応終了時には、未反応のトリクロルメチルベンゼン化合物を消費させるために、過剰のトリクロルメチルベンゼン化合物のトリクロルメチルモル数と同じモル数のものカルボン酸化合物を加えても良い。モノカルボン酸化合物としては脂肪酸でも良いし、芳香族カルボン酸でもよい。脂肪酸であれば。炭素数1〜8のモノカルボン酸が挙げられ、例えば酢酸、プロピオン酸、2-エチルヘキサン酸が例示できる。また芳香族カルボン酸としては安息香酸が挙げられる。 蒸留精製は通常の方法に従えばよいが、高純度化のためには充填材の詰められた精留塔を使用することが好ましい。また、その充填材の材質は酸クロライドに対する耐性が強い、ガラス、フッ化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、などが好ましく、特にガラス、フッ化ポリエチレンが好ましい。蒸留精製に際しては、トリフェニルホスフィン類やヘキサミンを添加することもできる。これらの添加量は触媒1モルに対して0.8〜2モル、より好ましくは0.9〜1.5モル、さらに好ましくは0.9〜1.2モルである。以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。<純度測定> ガスクロマトグラフィーにより得られた芳香族酸クロライドの分析を行った。 装置:HWELETT PACKARD社製HP6890series カラム:DB−1 30m×0.53mm×1.5μm 試料導入部・検出器温度:250℃ カラム温度:120℃→8℃/分昇温→220℃ キャリアー:ヘリウム<実施例1> 攪拌機、温度計および還流冷却器を取り付けた2L四つ口フラスコに、イソフタル酸600g(3.61mol)、ベンゾトリクロライド1412g(7.22mol)および塩化鉄(III)0.6g(0.0037mol)を入れ、反応容器を140℃に加熱し、8時間反応し、1710gの粗イソフタル酸ジクロライドを得た。これにトリフェニルホスフィン0.97g(0.0037mol)を加え、減圧下(0.8kPa)で蒸留し、711gのイソフタル酸ジクロライド(純度99.8%)を得た。<実施例2> 攪拌機、温度計および還流冷却器を取り付けた2L四つ口フラスコに、イソフタル酸600g(3.61mol)、ベンゾトリクロライド1553g(7.94mol)および塩化鉄(III)0.06g(0.0004mol)を入れ、反応容器を150℃に加熱し、18時間反応し、これに2−エチルヘキサン酸103.8g(0.72mol)を加え、さらに2時間反応した。1952gの粗イソフタル酸ジクロライドを得た。その後、減圧下(0.8kPa)で蒸留し、689gのイソフタル酸ジクロライド(純度99.5%)を得た。<実施例3> 攪拌機、温度計および還流冷却器を取り付けた2L四つ口フラスコに、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸600g(2.86mol)、ベンゾトリクロライド1677g(8.58mol)および塩化亜鉛0.6g(0.004mol)を入れ、反応容器を145℃に加熱し、17時間攪拌、反応し、2144gの粗1,2,4−ベンゼントリカルボン酸クロライドを得た。これにトリフェニルホスフィン1.05g(0.004mol)を加え、減圧下(0.8kPa)で蒸留し、702gの1,2,4−ベンゼントリカルボン酸クロライド(純度99.9%)を得た。<実施例4> 攪拌機、温度計および還流冷却器を取り付けた2L四つ口フラスコに、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸600g(2.86mol)、ベンゾトリクロライド1777g(9.09mol)および酸化亜鉛0.36g(0.004mol)を入れ、反応容器を145℃に加熱し、17時間反応し、これに安息香酸62g(0.51mol)を入れ、さらに2時間反応し、2201gの粗1,2,4−ベンゼントリカルボン酸クロライドを得た。これにトリフェニルホスフィン1.05g(0.004mol)を加え、減圧下(0.8kPa)で蒸留し、722gの1,2,4−ベンゼントリカルボン酸クロライド(純度99.6%)を得た。<実施例5> 攪拌機、温度計および還流冷却器を取り付けた2L四つ口フラスコに、トリメシン酸600g(2.86mol)、ベンゾトリクロライド1776g(9.09mol)および酸化亜鉛0.36g(0.004mol)を入れ、反応容器を140℃に加熱し、17時間反応し、その後、安息香酸62g(0.51mol)を入れ、さらに2時間反応し、2234gの粗トリメシン酸トリクロライドを得た。これにヘキサメチレンテトラミン0.56g(0.004mol)を加え減圧下(0.8kPa)で蒸留し、740gのトリメシン酸トリクロライド(純度99.7%)を得た。 芳香族ポリカルボン酸を、鉄または亜鉛の塩化物もしくは酸化物からなる触媒を使用して、トリクロルメチルベンゼン化合物と反応させ、生成物を蒸留精製することにより得られる、芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法。 芳香族ポリカルボン酸がオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、およびこれらの誘導体から選ばれる1種以上である、請求項1記載の芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法。 前記触媒が塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、塩化亜鉛、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2のいずれかに記載の芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法。 前記触媒が酸化亜鉛である請求項3記載の芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法。 トリクロルメチルベンゼン化合物がベンゾトリクロライド、p-クロロベンゾトリクロライド、および3,4−ジクロロベンゾトリクロライドから選ばれる1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法。 トリクロルメチルベンゼン化合物がベンゾトリクロライドである請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法。 【課題】医農薬の中間体として、あるいは、特に芳香族ポリイミドや芳香族ポリエステル等の機能性高分子を製造する上で不可欠な、高純度の芳香族ポリカルボン酸ポリクロライドの製造方法を提供する。【解決手段】芳香族ポリカルボン酸を、鉄または亜鉛の塩化物もしくは酸化物を触媒として、トリクロルメチルベンゼン化合物と反応させ、生成物を蒸留・精製することにより、製造される高純度の芳香族ポリカルボン酸ポリクロライド。【選択図】なし