生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_環境に対する有害物質の検出方法、検出装置および検出システム
出願番号:2009186175
年次:2011
IPC分類:G01N 21/64


特許情報キャッシュ

服部 順昭 安藤 恵介 JP 2011117728 公開特許公報(A) 20110616 2009186175 20090810 環境に対する有害物質の検出方法、検出装置および検出システム 服部 順昭 509225708 安藤 恵介 509225719 大平 和幸 100123489 服部 順昭 安藤 恵介 G01N 21/64 20060101AFI20110520BHJP JPG01N21/64 Z 12 3 OL 18 2G043 2G043AA01 2G043BA01 2G043BA05 2G043CA05 2G043EA01 2G043EA10 2G043FA06 2G043GA02 2G043GA04 2G043GB01 2G043GB02 2G043HA01 2G043HA02 2G043HA03 2G043JA04 2G043KA01 2G043KA03 2G043KA05 2G043KA08 2G043KA09 2G043LA03 本発明は、環境に対する有害物質の検出方法、検出装置及び検出システムに関する。より詳しくは、木材に含まれるクロム、ヒ素等の環境に悪影響を与える有害物質を正確に検出する方法、検出装置、検出システムに関する。 CCA(クロム、銅、ヒ素)処理木材はCCA薬剤を木材に加圧注入したものである。優れた防腐効果を持つが、CCA処理木材を廃棄・処分する際に、ヒ素が気化、飛散することや、クロムの焼却灰中への残留により、人間や環境に与える悪影響が懸念されている。そこで、木材を廃棄する際にはCCA処理を施した木材か否かを検出し、分別して廃棄する必要があるが、それができない場合は、埋め立て等で一括処理してきた。 これまでに開発されている検出装置は正確性が不十分か、大型で使いにくい、放射線が出るなど、現場で使いにくいという問題があった。そのため、正確で小型のCCA検出装置、システム、方法等が求められていた。また、CCA以外にも、人体や環境に有害な金属等を含む木材も存在することから、それらを検出する検出装置、システム、方法等が求められている。 簡便な機器が現在市販されているが、これは正確性に欠け、CCA含有木材以外も陽性判定をしたり、CCA含有木材を陰性判定するミスが出るなど問題があった。 これらの問題を解決できれば、CCA処理木材を正確かつ簡便に判別できることから、環境に悪影響を与える廃木材を分別し、木材リサイクルの適正化が可能になると期待されるため、CCAの正確かつ簡便な検出装置、システム、検出方法開発が望まれていた。佐藤敏幸,叶内剛広,安藤規男,小林正男:光学式木材防腐剤検出法の開発、山形県工業技術センター報告,NO34,p.5-8,2002 解決しようとする課題は、有害な薬剤を含む木材を判別することである。すなわち、本発明は木材中の有害な物質、特にクロム、ヒ素等の有害金属類を正確に検出できる検出装置、システム、方法を提供するものである。 上記課題を解決するために、本発明は、木材にレーザー(「レーザ」ということもあるが意味は全く同じである)を照射することによりプラズマを発生させ、その後の蛍光を計測することにより、クロム、ヒ素、銅の含有量を測定し、その含有量に基づき、CCA処理された木材であるか否かを判定することを最も主要な特徴とする。 本明細書では、以下の発明が提供される。(1)レーザー照射手段と、集光手段と、レーザー光を通過させかつ蛍光を反射させる手段と、分光分析手段を有する環境有害物質測定システムが提供される。本発明によれば、レーザー照射手段と集光手段により焦点を絞って木材にレーザーを照射し、照射部位から出る蛍光を反射させて第2の集光手段に集め、集光手段により分光分析手段に蛍光を誘導して蛍光強度を測定できるという効果が得られる。(2)集光手段が2以上である(1)の環境有害物質測定システム(3)集光手段が集光レンズである(1)の環境有害物質測定システム(4)集光レンズの焦点距離と分光分析手段との距離が焦点距離又は焦点距離よりも遠い距離である(3)の環境有害物質測定システム(5)レーザー光を通過させる手段が穴付ミラーである(1)の環境有害物質測定システム。(6)穴付ミラーの穴の直径が1mmないし15mmである(5)の環境有害物質測定システム。より好ましくは3mm以上でもよい。(7)環境有害物質がクロム、銅、ヒ素である(1)ないし(6)の環境有害物質測定システム(8)さらにデータ分析手段を有する(1)ないし(7)の環境有害物質測定システム(9)木材に対し、レーザーを照射する工程と、照射部位からの蛍光を集光する工程と、集光した蛍光を分光分析することからなる環境有害物質検出方法が提供される。(10)さらに、データを分析し、環境有害物質を含むか否かを判定する(9)の環境有害物質検出方法(11)環境有害物質が、クロム、銅、ヒ素である(9)または(10)の環境物質検出方法(12)レーザー照射部位からの蛍光を集光する前に反射させる工程を有する(9)ないし(11)の環境有害物質検出方法(13)レーザー照射手段と、集光手段と、分光分析手段を有する環境有害物質測定システムが提供される。 本発明においては木材にレーザー光を照射して表面をプラズマ状態にし、そこから出る蛍光を分析することにより、クロム、ヒ素等を検出することができる、という利点がある。図1は 直接集光系を表す図である。(実施例2,3,4,5)図2は 直接集光系における分光器の位置調整を示す図である。(実施例2,3,4,5)図3は 改良後の集光系を示す図である。(実施例2,3,4,5)図4は 改良後の集光系の蛍光等の集光方法を表す説明図である。(実施例2,3,4,5)図5は 光学系改良前後のスペクトル(PT)を表すグラフである。(実施例3)図6は データ処理後のスペクトル(PT)を表すグラフである。(実施例3)図7は データ処理前のスペクトル(不明を除く各種サンプル)を表すグラフである。(実施例4)図8は データ処理後のスペクトル(不明を除く各種サンプル)を表すグラフである。(実施例4)図9は CCA処理木材から検出されたAsのピークを表すグラフである。(実施例5)図10は CCA処理木材以外のスペクトル(Asピーク検出波長域)を表すグラフである。(実施例5)図11は CCA処理木材から検出されたCrのピークを表すグラフである。(実施例5)図12は CCA処理木材以外のスペクトル(Crピーク検出波長域)を表すグラフである。(実施例5)図13は 光学系改良後における相対発光強度の散布図である。(実施例4) 本発明によれば、レーザー照射手段と、集光手段と、レーザー光を通過させかつ蛍光を反射させる手段と、分光分析手段及び解析部からなるCCA木材判定システムが提供される。レーザー照射装置は一定レベル以上の強度のレーザーを発振できるものであれば特に制限されない。一定レベル以上の強度とは、木材に照射した場合に、プラズマを発生させられる強度以上の強度を言う。YAGレーザーがもっとも好ましく用いられるが、上記の目的に使えるものであれば特に制限されない。YAGレーザーの一例としては、例えば、QスイッチNd:YAGレーザTempest 10 (New Wave Research社製)等が挙げられるがこれに限定されない。 集光手段としては典型的には集光レンズ、凹面鏡等が用いられるがこれらに限られない。レーザー照射手段から発振されたレーザーを集光レンズにより集め、木材表面上に焦点を結ばせることにより、木材表面をプラズマ化し、励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光、りん光等)を反射手段により第2の集光手段に誘導し、集光して分光器に誘導する。 「レーザー光を通過させ」とは、レーザー光を反射板のレーザー光源とは反対側にある木材表面に当てるために反射板を通過させる、という意味で、ハーフミラーのように当たった光の略半分を反射し、略半分を通過させるものでもよく、あるいは、反射板の内部にレーザーを通過させられるだけの大きさの穴をあけてもよい(穴付誘多膜平面ミラー)。穴の大きさはレーザーを通す際のレーザー光の絞り具合にもよるが、3mm〜20mm、より望ましくは5mm〜15mmなどが考えられるが、要するに、照射するレーザーのビーム径より一回り大きければよい。一回り大きいとは、レーザービームがミラーに当たって干渉波を出さない程度に大きいことを意味する。 「蛍光を反射させる」とは、レーザーを木材表面に当てた際に出る蛍光を第2の集光手段に集めるために反射させることを意味する。これにより、蛍光の進行方向を集光手段の方向に変えることができる。反射させるために、目的の波長を効率良く反射させる薬剤をコーディングしてもよい。 第2の集光手段としては、集光レンズが好適に用いられる。本発明の場合、集光レンズの焦点距離と分光器の位置が必ずしも一致する必要はない。集光レンズの焦点距離にかかわらず、前後に動かして、よりよい分光分析結果が得られる距離を決定すればよい。 分光分析機としては、測定波長範囲として190nm〜300nmの範囲を含み、分解能が0.15nmよりも細かいものであれば用いることができる。例えば、StellarNet社のEPP2000HR等が好適に使用できるがこれに限られない。 以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。供試材料 本実施例では表1に示す31種類の供試木材を用いた。略称の凡例を表2に示す。供試木材薬剤または木材の略称サンプル中のCJ1は漏水クレーム現場からの廃材であり、サンプル到着時には湿潤状態であった。このため、CJ1に対する実験は自然乾燥させ、木材の表面状態が他のサンプルと同条件になった時点で照射を行った。表3に各供試木材の提供企業と、CCA処理木材が提供された企業についてはCCAの号数が判明していればそれを記す。 供試木材提供企業とCCA薬剤の種類使用機器 光学系LIBSを構成する機器として、光学系の部分を以下に示す。a) レーザ励起源であるレーザには、EO・QスイッチNd:YAGレーザ(NEW WAVE RESEARCH社、Tempest10)を用いた。YAGレーザは小型な躯体であり、短パルス・高出力のビームを放出できる特長を持つ。 レーザの仕様を表4に示す。レーザの仕様b) レーザ光 集光レンズ供試木材に対して、表面をプラズマ化させるのに十分なエネルギー密度でレーザ光を照射するため、集光レンズとして焦点距離150mmの平凸レンズ(シグマ光機(株)製、SLB-25-150P)を用いた。c) スペクトロメータ(分光・検出器)スペクトロメータ(以下分光器)には、測定波長範囲190〜300nm、分解能が0.15nmのStellarNet社製、EPP2000HR(仕様:表6)を用いた。この分光器の分散素子は回折格子で、内部の光学配置はチェルニターナ型である。コンピュータに接続すると、得た光の波長と強度をスペクトルとして表示できる。分光器の入射スリット手前に石英のコリメータレンズを取り付け、このレンズに集まった光が分光部へ入射する形態で利用した。なお、レーザと分光器はAvantes社,AvaSpec-2048 Fiber OpticSpectrometerを端子としてケーブルで接続し、同期して使用した。分光器の仕様d) その他の実験条件 レーザ、分光器の設定については、分光器の露光時間は30ms、レーザと分光器の遅延時間は0msで実験を行った(表7)。露光時間とは分光器が測定を行う時間を表し、本実験で用いた分光器における最も短い露光時間である30msを用いた。遅延時間(delay time)とはレーザの発進後、分光器が測定を開始するまでの時間を指す。遅延時間を設定すると、プラズマの制動輻射を避けて測定を行うことができる。本実験では分光器に遅延時間を設定することができなかったので、レーザの発進と分光器の測定開始が同時に始まる状態で実験を行った。レーザ照射条件と分光器測定条件 また、実験はCrやAsなど毒性元素を含む試料をプラズマ化させるため、木製カバー内で排気しながら行った。以上の条件で以下の実施例の実験を行った。プラズマ発光の集光光学系 供試木材をレーザに対し斜めに配置し、プラズマ発光を直接分光器で検出する機器構成とした(図1)。この機器構成は、CCA処理木材の判別装置を現場で用いる際、最も簡便、経済的なシステムを構築することを目的に考案された。 この直接集光系では、図2のように木材の角度や分光器との位置関係を微調整して、最適なスペクトルを得ていた。具体的にはベースラインの上昇を抑え、かつ元素のピーク強度が一定強度、あるいは判別可能な程度に測定できるように設定した。また、分光器の測定可能強度を超え、スペクトルの比較ができなくなるサチュレーションという現象をなるべく起こさない状態で照射を行った。これに対し、検出が難しかったAsのピークを判別可能な程度に検出することと、2発目(回目)以降もある程度安定したスペクトルを測定することを目的として、さらに光学系の改良を試みた。光学系改良後の機器配置を図3に示す。 この光学系でレーザ光を集光する平凸レンズは直接集光系と同様だが、木材由来からの炭素、またCCA処理木材に特有のAs、Crのピークを含む波長範囲にして225〜270nmのプラズマ発光を効率よく反射させるため、45°傾斜穴付誘多膜平面ミラー(シグマ光機(株)製、TFM-30C05-248-KH05-45、以下穴付ミラー)と、穴付ミラーによって反射したプラズマ発光を集光し、分光器へ送るため、焦点距離40mmの平凸レンズ(シグマ光機(株)製、SLSQ-30-40P)を新たに配置した。これら2つの新しい光学機器とレーザ集光用の平凸レンズをあわせたものをトッププレート(シグマ光機(株)製、OBB-1216)の上に配置し、これを改良後の光学系ユニットとして実験に供した。光学系改良後は、供試木材を常にレーザに対して直角に配置しているため、木材の角度を調整する必要はなくなった。しかしプラズマ発光集光用レンズの焦点距離が40mmであるにも関わらず、実測において40mmでは微弱なピークしか測定できず、コリメータレンズとプラズマ発光集光レンズの距離を50mmとするとピーク強度が光学系改良前と同程度に得られたので、光学系改良後の実験はこの距離に分光器を配置して行った。図4に機器の位置関係を示す。 以上の機器配置、設定でそれぞれの実験を行った。 木材由来の炭素ピークとして以前検出されたのは193.20nm、229.96nm、247.96nmのピークである。しかし、光学系改良後に使用した穴付ミラーの反射率が100%に近いのは波長225〜270nmの間であり、この範囲の炭素のピークは229.96nm、247.96nmの2つである。なお、これら元素ピークの同定は米国標準技術局(NIST)の元素発光波長表などにより行った。 光学系の改良前後で同様の波形、また炭素ピークが検出された。このことから、LIBSによる測定は種々の光学系設定に対応できる事、また、光学系などの条件設定に左右されず安定した元素のピークを検出することが可能であると考えられる。炭素について、229.96nm、247.96nmの2つのピークは光学系改良前では照射50回程度まで1回目とほぼ変わらない強度でピークが検出されている。これについては光学系改良後も同様で、同一箇所に対する照射100回以上でも1回目と同様のピークが得られる事から、光学系改良前よりも安定したスペクトルを得る事が可能と考えられる。この理由として、光学系改良前では試料を分光器に対して斜めに配置していたため、同一箇所に対する複数回の照射によって生じた斜めの穴によってプラズマの指向性が妨げられるのに対し、光学系改良後ではレーザ照射によって生じる穴も試料に対し直角であるため、光学系改良前よりも指向性の制限が小さくなったと考えられる。更に、プラズマ発光をミラーによって反射させてから分光器に送るため、光学系改良前よりもプラズマ発光の集光を広範囲に行える。これら2つの効果により、光学系改良前よりも安定したスペクトルを得られることにつながったと考えられる。 As、Crなどの標的元素については、光学系改良前後を問わず、照射回数ごとにピークが小さくなる傾向にあった。しかし、このピーク強度の減衰についても、光学系改良後の方が緩やかであった。これも同様の理由によるものと考えられる。 また、ピーク値の偏差にも違いが見られた。直接集光系においては同一箇所への複数回照射は、サチュレーションが起こった場合を除いて行わず、基本的に1回目のスペクトルをデータとし、10箇所へ照射したものを平均化して1サンプルのスペクトルとしていた。改良後の集光系でも、10箇所分のデータを取ったところ、木材由来の炭素やAs、Crなど標的元素のピーク値の偏差が光学系改良前の3分の1程度であった。この理由についても、上記の安定したスペクトルが得られる事に起因していると考えられる。このため、光学系改良前の実験は以前と同様に行ったが、光学系改良後は同一箇所における照射の2〜5回目を用い、これを3箇所分行ったものを平均化して1サンプルのスペクトルとした。 ここで照射2〜5回目としたのは、表面の異物などによって照射1回目では基準となる炭素のピーク247.96nmが一定強度以上に検出されなかったためである。光学系改良前は、この247.96nmのピーク強度を1500として正規化し、全サンプルのスペクトルを相対的に評価していた。光学系改良前後では炭素247.96nmのピーク値がほぼ同じであったため、2〜5回目のうち、247.96nmのピーク強度が1000を超えたデータを取り、これを3箇所分平均化してスペクトル化した。これによって、廃材においても表面異物の影響を避け、的確な処理薬剤の同定が行えると考えられる。実験条件の検討 以上を踏まえて、本実験での実験条件を検討した。 光学系改良前のものはベースラインが500でほぼ一定であったためベースラインについては補正を行わず、炭素247.96nmのピーク値を1500に正規化することでスペクトルの比較を行っていた。しかし、光学系改良後は改良前に比べ若干ベースラインがシフトする傾向にあった(図6)。このため、1nm区間での最小値を読み取り値ごと(0.05nm)にずらしながら計算し、これをつないだものをベースラインとした。ベースライン補正は、生データからこのベースライン値を減算することで行った。また、サンプル間のスペクトルを比較するために正規化を行ったが、炭素247.96nmのベースラインからの強度は光学系改良前後とも変わらず1000程度であったため、このピーク値を1000として行うこととした(図8)。 なお、スペクトルにおけるピークは光学系改良後の方がより安定していたため、以降のスペクトルはすべて光学系改良後のデータを用いている。また、CCA処理木材を判別する際に、As、Crのピーク強度での散布図を作成した(図13)。このような散布図を作成し、適当な閾値を決めることでCCAであるかどうかを判定できる。ここでは光学系改良前後の比較を行うが、散布図にする際は光学系改良前のデータにも光学系改良後と同様のベースライン補正、正規化を行うものとした。次頁の表7に、光学系改良前後の相違点、また本実験でのデータ処理をまとめる。光学系改良前後の相違点、本実験でのデータ処理方法供試材料への直接照射による定性分析―目的と方法 CCA処理木材の判別を現場で的確に行える手法の開発という目的から、前節までで検討した条件に基づきスペクトルの測定を行い、CCA処理木材判別のための指標を検討した。得られたスペクトルはすべてベースライン補正した後、正規化処理して比較・分析した。この実験ではレーザの照射は全て、供試材料の防腐処理面に行った。CCAなど加圧注入の方式がとられているものについては、木口面の目視によって十分な薬剤注入が確認された部分に行った。レーザー誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)による定性分析結果実験結果から、CCA処理木材の判別に有効なピークが225〜270nmの間に存在することが判明した。Asについては228.89nm、Crについては266〜268nmの3つ(Crは短波長の区間に3つ連続したピークを特徴とする)で、その中でも最も強いピークを持つ267.83nmである。さらに前述した炭素のピーク229.66nmと247.96nmもこの区間に入っている。このため、スペクトルの比較はすべてこの波長区間内で行った。CCAの構成成分であるCuのピークについては実験で213〜225nmに発見されているが、ACQやCUAZなどCCA以外の木材防腐剤もCuを含んでいることから、判別対象としては適当でない。Asのピークは、照射部により多少ピーク値に違いは見られたが、データ処理後は大きな違いは見られなかった(As228.89nmピーク値でおよそ60〜170程度。図10、11)。CCA処理木材のサンプルには未使用材と廃材(築年数10〜30年)があるが、築年数と相対発光強度に相関は見られなかった。また、As 235.01nmのピークについても認められたが、直近に非CCA処理木材からも検出されるピークがあったため、今回は対象としなかった。 Crのピークについても観察された。Cr 267.83nmのピークでCCA処理木材を判別すると誤判定なく判別できた。図12に示すように、CCA処理木木材以外で測定された同じ波長域のスペクトルは最大でも100以下である。一方CCA処理木材からのスペクトルは最低でも300以上を示している(図11)。 なお、本実験で測定された各元素のピーク値は前述した文献の値とわずかにずれていた。具体的には文献値よりも0〜0.12nm短波長側にシフトして観察された。また、処理不明のサンプルのうち、XC1について照射面によってCrのピークが観察される場合があった。以降、XC1については照射によってCrのピークが観察されなかったものをXC1-a、観察されたものをXC1-bとする。 蛍光X線分析による定性分析結果 サンプルについてはLIBS以外での分析結果がなかったため、蛍光X線分析による定性分析を行った。蛍光X線分析(以下XRF)は試料にX線を照射することで発生した蛍光X線を分光・検出し、計数する分析手法である。蛍光X線とは、照射したX線によって内殻電子が励起される際に生じる空孔に外殻電子が遷移する際に放出されるX線で、この蛍光X線によって元素の特定を行うのがXRFである。特長としては、多元素同時分析を迅速に行えること、試料を非破壊で行えること、試料の化学的前処理を必要としないことなどが挙げられる。ICPとXRFの違いを比較すると、超微量元素の定量についてはICPのほうが有利であるが、XRFのほうが全体的な精度は高い。 XRFによる定性分析に用いた機器は、蛍光X線分析装置RIX3000(理学電機工業株式会社)である。この機器では、サンプラーの中に試料を詰め、X線の管理区域内において減圧して照射を行う。このため、各試料は3.5mm四方、厚さ約5mmに調製し、絶乾した後に実験に供した。なお、この木片はすべて薬剤処理面から採取した。 XRFによる定性分析の結果、CCA処理木材、つまりCC1、CJ1、CT1〜11には全てAs、Crが含まれていることが確認された。また、処理不明の木材のうち、XT1からCrとAsが薬剤処理されていると考えられるX線強度で検出されたなお、非CCA処理木材から、As、Crが薬剤処理されていると考えられる強度で検出されたものはなかった。また、XRFでCCA処理木材と判別されたもののうちAs、Crの強度が最も大きかったXT1については裏面についても測定を行った(これをXT1backとする)。表8に各サンプルにおけるCr、Cu、AsのX線強度を示す。(N.D.はNot Detectedの略とする) 蛍光X線分析による定性分析結果比較例市販装置による定性分析結果 緒言でも触れたCCA処理木材判別装置に、近赤外の吸光スペクトルによりCCAを判別するWood scan(ハイウッド株式会社)がある23)。本実験では、LIBSとXRFに加え、このWoodscanによる判定結果から、CCA定性判別の比較を行った。なお、Wood scanによる定性分析は全てLIBS、XRFと同じ面に行った。 Wood scanでは、付属の説明書に従って測定部を木材に押し付け、三箇所の測定値の平均によってCCAを判別した。測定時に出た値が一定以上であるとCCAと判別される設定になっている。Wood scanによる判定ではその値が一定以上であるとBAD、すなわちCCA処理木材であると判定され、それ以外はGOODとなり非CCAとされる。 この装置では、CCA以外の銅系薬剤、ACQやCUAZもBADと判定される事があり正確性に問題がある。この他にも、CCA以前の代表的な木材防腐剤であったクレオソート油がBADと判定される。また、木材表面に塗装が行われていたり、著しい汚れがあったりすると判定できないなど、現場での実用性に応えきれない面がある。Wood scanによる判定結果をGOOD(非CCA)、BAD(CCA)で表9に示す。Wood scanによるCCA処理木材判定結果 蛍光X線・Wood scanの分析とも行った結果、蛍光X線分析ではCCA処理木材以外からはAs、Crが検出されたものはなかった。しかし、Wood scanによる判定結果ではACQ、CUAZが処理された木材は全てBAD、つまりCCA処理木材であると判定された。逆にCCAが処理されていたCT1、CT3ではGOODと判定され、CCAが処理されているにも関わらず非CCA処理木材であると判定された。 本発明は家屋等から出る廃木材のリサイクル事業に利用することができる。レーザー照射手段と、集光手段と、レーザー光を通過させかつ蛍光を反射させる手段と、分光分析手段を有する環境有害物質測定システム。集光手段が2以上である請求項1の環境有害物質測定システム。集光手段が集光レンズである請求項1または請求項2の環境有害物質測定システム。集光レンズの焦点距離と分光分析手段との距離が焦点距離又は焦点距離よりも遠い距離である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の環境有害物質測定システムレーザー光を通過させる手段が穴付ミラーである請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の環境有害物質測定システム。穴付ミラーの穴の直径が1mmないし15mmである請求項5の環境有害物質測定システム。環境有害物質がクロム、銅、ヒ素である請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の環境有害物質測定システム。さらにデータ分析手段を有する請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の環境有害物質測定システム。木材に対し、レーザーを照射する工程と、照射部位からの蛍光を集光する工程と、集光した蛍光を分光分析することからなる環境有害物質検出方法が提供される。さらに、データを分析し、環境有害物質を含むか否かを判定する請求項9の環境有害物質検出方法。環境有害物質が、クロム、銅、ヒ素である請求項9または請求項10の環境物質検出方法。レーザー照射部位からの蛍光を集光する前に反射させる工程を有する請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載の環境有害物質検出方法。 【課題】木材に含まれる環境汚染物質を同定、定量する。【解決手段】環境に有害な薬剤や金属を含有するおそれのある木材にレーザー光を照射することにより、木材表面をプラズマ化し、そこから出る光(蛍光、りん光等)を集光して分光分析により分析することにより、クロム、ヒ素等環境に悪影響を与えるおそれのある物質を検出する。これにより有害物質を含む廃木材を適正に判別でき、廃木材を分別してリサイクル、廃棄または処理できる。【選択図】図3


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