タイトル: | 公開特許公報(A)_高品質な清酒の製造方法及び同方法に使用される蒸米の製造装置 |
出願番号: | 2009179886 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12G 3/02 |
河村 傳兵衛 大辻 英郎 JP 2011030499 公開特許公報(A) 20110217 2009179886 20090731 高品質な清酒の製造方法及び同方法に使用される蒸米の製造装置 株式会社RIVERSON 504428636 新洋技研工業株式会社 592225353 村田 幸雄 100090985 河村 傳兵衛 大辻 英郎 C12G 3/02 20060101AFI20110121BHJP JPC12G3/02 119DC12G3/02 119E 4 4 OL 7 4B015 4B015CG02 4B015DP02 4B015DP03 4B015EP03 4B015FP04 本発明は、高品質な清酒の製造方法及び同方法に使用される蒸米の製造装置の提供に関する。 従来清酒の醸造工程における蒸米の製造では、浸漬米を蒸煮し、その蒸米を急冷送風機で急冷し、次いで蒸米をコンベア上で空気で連続的に乾燥することが行われていた。(特許公開平5−317022公報参照) すなわち、清酒の仕込みのためには、従来原料処理として白米を「甑」又は「連続蒸米機」で蒸煮し、これを空気で人為的に若しくは連続的に冷却して目標の温度に下げさせなければならず、冷却空気による雑菌汚染が生じた。また、連続蒸米機・連続放冷機を用い、それぞれの工程を経なければならず、大きな装置と人手も多く必要とした。 そして特に、味・香味の良い清酒を醸造するには、使用する酒米を精米歩合の数値を小さくなるまで磨かなければならず、コスト高となっていた。特許公開平5−317022 したがって、本願発明が解決しようとする課題は、酒米の精米歩合(精白率)をあまり上げることなしにを味・香味の良い清酒を醸造することと、かつ蒸米〜冷却までの処理工程において雑菌が混入することがなく、また作業も簡単に実施できるようにすることである。 本発明の技術的な要旨は、一つの密閉容器の中で加圧して特定温度範囲で蒸煮を行い、その後、蒸米を移動することなく、真空冷却により目的温度まで冷却し、麹製造又はもろみの掛米を造り上げるものである。 すなわち、本願発明は下記構成の方法及び装置である。[1] (1)水中に浸漬されて得られた水分含有率20〜40%の浸漬米を密閉容器内において105〜135℃で蒸す第1工程と、(2)同容器内を真空吸引して590〜750mmHgに減圧して5〜35℃に冷却し、水分含有率30〜35%の蒸米を取得する第2工程と、(3)得られた蒸米を使用して清酒を醸造する第3工程とからなることを特徴とする高品質な清酒の製造方法。[2] (1)水中に浸漬されて得られた水分含有率20〜40%の浸漬米を密閉容器内において115〜130℃で5〜30分間蒸す第1工程と、(2)同容器内を真空吸引して600〜730mmHgに減圧して10〜30℃に冷却し、水分含有率31〜34%の蒸米を取得する第2工程と、(3)得られた蒸米を使用して清酒を醸造する第3工程とからなることを特徴とする高品質な清酒の製造方法。[3] 水中に浸漬されて得られた水分含有率20〜40%の浸漬米を収容する密閉容器と、同密閉容器内の温度を105〜135℃に昇温させる加熱手段と、同密閉容器内を590〜750mmHgに減圧して蒸発潜熱により5〜35℃に冷却する減圧・冷却手段とからなることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の高品質な清酒の製造方法に使用するための蒸米製造装置。[4] 水中に浸漬されて得られた水分含有率20〜40%の浸漬米を収容する密閉容器と、同密閉容器内の温度を115〜130℃に昇温させる加熱手段と、同密閉容器内を600〜730mmHgに減圧して蒸発潜熱により10〜30℃に冷却する減圧・冷却手段とからなることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の高品質な清酒の製造方法に使用するための蒸米製造装置。 本願発明によれば、酒米の精米歩合(精白率)をあまり上げることなしに、味・香味の良い清酒を醸造することができ、かつ蒸米〜冷却までの処理工程において雑菌が混入することがなく、また作業も熟練を要することなく簡単に実施できる。 蒸米〜冷却を同じ密閉容器内で実施されるため、移動作業が不要であり、時間も短時間で済む。 蒸米〜冷却が外部に曝されずに実施されるため、雑菌の侵入が防止される。 また、蒸米のα澱粉化が早い。減圧により蒸米の蒸気・水分が気化除去されて冷却されるため、特別な冷却手段がいらない。減圧により、蒸米の各米粒子間まで冷却され、全体として蒸米の内部まで均一に水分調整と冷却が進行する。 そして、最大の特徴は蒸米の温度調整を105〜130℃、好ましくは115〜130℃、より好ましくは120〜125℃で実施することにより、蒸米のタンパク変性によると考えられる改善された蒸米が得られ、その蒸米で製造された清酒はアミノ酸の生成が少ないため、優れた味・香気を有するものとなる。すなわち、あまり磨きせず、精米歩合を高く維持しても味・香気の優れた清酒を製造することができ、コストの低減も図れる。本願発明実施例装置の側面図、開蓋状態の装置の正面図、装置の平面図、本願発明実施例のフローシート図1:加圧・減圧型蒸気加熱式密閉容器装置2:容器本体3:蓋扉4:水蒸気導入管5:真空吸引管6:排気管7:ドレーン抜き管8:制御盤9:支持脚10:気圧計11:安全排気管31:ロックレバー32:取っ手33:アーム34:支持軸 本願発明の方法の内の酒米の蒸煮工程を以下に具体的に説明する。1.精米歩合60%の白米を浸漬、水切りし、台車の上に載置されたトレーに、敷布を敷いて盛り込む。(1トレー当たり、60kgを盛りこむ)2.前記台車の上のトレーを、蒸気加熱式密閉容器(加圧・減圧型蒸気加熱式密閉容器装置:例えば株式会社サムソン製の横型スチーマーSCS120/10SVT)の扉を開いて内部まで導入する。3.蒸気加熱式密閉容器の扉を閉めて、ロックする。4.操作手順にしたがって、加熱運転をする。加熱条件は全加熱時間25分間で、その内前後各5分間の昇温・降温時間を除く15分間は120〜125℃に保持する。なお、加熱運転は20分間で停止し、5分間は放冷時間とする。5.次いで、機外の真空ポンプを作動させ容器内を減圧にし、真空冷却工程を30分間実施する。6.容器の扉を開いて、トレーを引き出し、台車の上に載せる。 以上1〜6工程のより得られた蒸米を使用して、例えば図1に示すフローシート(小仕込みプラン用)にしたがって清酒を醸造する。 まず、蒸米の製造については、「精米された原料の白米(酒米)を水に浸漬」→「スチーマー内で蒸煮」→「真空冷却」→[蒸米]の工程が採用される。 得られた蒸米は、〈1〉麹造り(クリーン培養で)、〈2〉発酵タンク(サーマル小型タンク)、〈3〉酒母造りに、あるいは〈4〉四段(仕込み)に、供給される。 その後、発酵タンクから取り出されたもろみは、圧搾機に掛けられ、濾液分(清酒)が「検定」→「濾過」→「火入」→「貯蔵」・「コンテナータンク」→「ビン詰」→「製品出荷」の工程を経る。なお、ボイラーで生成された各種温度の水蒸気は、スチーマー、火入、ビン詰工程に供給・利用される。 酒米の蒸煮温度と清酒品質の相関性について調査するため、品質に及ぼす一つの要素であるアミノ酸の生成量を測定した。 すなわち、各蒸米のアミノ酸度(F−N:フォルモール窒素)を、酒米統一分析法にしたがって行った。 なお、供試体の米は、精米歩合70%の五百万石を使用し、水に14.5時間浸漬した後、オートクレーブに入れて各種温度下で蒸煮したものである。 その結果、アミノ酸度(フォルモール窒素)の低いものは、120℃以上の蒸煮温度で処理されたものであって、それで醸造された清酒は香気生成が良く特に好ましいことが解った。 一般的な仕込配合の三段仕込で清酒製造を行つた。(1)仕込み配合(比較例、実施例共に)は、表1に示すとおりである。(2)原料米 山田錦を用い、精白率(精米歩合)は50%とした。(3)酒米の吸水 麹米の吸水率は135%、掛米は125%とした。(4)蒸米の製法 1)対照区(比較例)(和釜法) 従来の蒸米製造法:和釜に甑(こしき)を乗せて、蒸気が抜けてから50分間蒸した。蒸し温度は100℃。放冷法は自然放冷法とした。 2)試験区(スチーマー使用) 本願発明の蒸米製造法:図1〜図3に示す「スチーマー(SCS120/10SVT):商品名」(株式会社サムソン製の加圧・減圧型蒸気加熱式密閉容器装置)を用いて、表1に示すごとく、各種温度で20分間蒸煮した。 図1は装置の側面図、図2は開蓋状態の装置の正面図、図3は装置の平面図である。 図において、1は加圧・減圧型蒸気加熱式密閉容器装置、2は容器本体、3は蓋扉、4は水蒸気導入管、5は真空吸引管、6は排気管、7はドレーン抜き管、8は制御盤、9は支持脚、10は気圧計、11は安全排気管、31はロックレバー、32は取っ手、33はアーム、34は支持軸である。 作業は、まず図2に示す開蓋状態の装置1の容器本体2中に、酒米が盛られたトレイ(図示せず)を挿入する。 次いで、蓋扉3の取っ手32を押して閉め、ロックレバー31により蓋扉3を閉塞ロックする。 その後、水蒸気導入管4から水蒸気を容器本体2内に導入し、トレーの酒米を特定温度で20分間蒸煮する。 次いで、真空吸引管5を介して容器本体2内を減圧して、冷却する。 その後、蓋扉3を開いて、蒸煮処理された蒸米が盛られたトレーを機外へ引き出す。 冷却は、麹米は真空冷却で50℃まで冷やし、掛米は真空冷却で5℃まで冷やした。 (5)酒母 普通速醸酒母、使用は14日とした。仕込み温度は20℃とした。 (6)もろみ 添仕込み13℃、踊り14℃、仲仕込み8℃、留仕込み6℃とした。 最高温度は10℃とした。もろみ30日で上槽した。 以上の作業を、各供試体毎に行った。 (7)生成酒の成分は表2に示すとおりであった。 (8)酒質 表2に示すごとく、試験区はアミノ酸が低く、香気生成が高いものであった。 (1)水中に浸漬されて得られた水分含有率20〜40%の浸漬米を密閉容器内において105〜135℃で蒸す第1工程と、(2)同容器内を真空吸引して590〜750mmHgに減圧して5〜35℃に冷却し、水分含有率30〜35%の蒸米を取得する第2工程と、(3)得られた蒸米を使用して清酒を醸造する第3工程とからなることを特徴とする高品質な清酒の製造方法。 (1)水中に浸漬されて得られた水分含有率20〜40%の浸漬米を密閉容器内において115〜130℃で5〜30分間蒸す第1工程と、(2)同容器内を真空吸引して600〜730mmHgに減圧して10〜30℃に冷却し、水分含有率31〜34%の蒸米を取得する第2工程と、(3)得られた蒸米を使用して清酒を醸造する第3工程とからなることを特徴とする高品質な清酒の製造方法。 水中に浸漬されて得られた水分含有率20〜40%の浸漬米を収容する密閉容器と、同密閉容器内の温度を105〜135℃に昇温させる加熱手段と、同密閉容器内を590〜750mmHgに減圧して蒸発潜熱により5〜35℃に冷却する減圧・冷却手段とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の高品質な清酒の製造方法に使用するための蒸米製造装置。 水中に浸漬されて得られた水分含有率20〜40%の浸漬米を収容する密閉容器と、同密閉容器内の温度を115〜130℃に昇温させる加熱手段と、同密閉容器内を600〜730mmHgに減圧して蒸発潜熱により10〜30℃に冷却する減圧・冷却手段とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の高品質な清酒の製造方法に使用するための蒸米製造装置。 【課題】 酒米の精米歩合(精白率)をあまり上げることなしに、味・香味の良い清酒を醸造することができ、かつ蒸米〜冷却までの処理工程において雑菌が混入することがなく、また作業も熟練を要することなく簡単に実施できる高品質な清酒の製造方法を提供する。【解決手段】 蒸米の温度調整を105〜130℃、好ましくは115〜130℃、より好ましくは120〜125℃で実施し、得られたその蒸米で清酒を製造することにより、優れた味・香気を有する清酒が提供される。【選択図】図4