タイトル: | 公開特許公報(A)_金属イオン酸化作用を抑制した発酵アルコール飲料 |
出願番号: | 2009175087 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12G 3/02,C12G 1/00,C12G 3/04 |
谷口 潔 田村 隆幸 鈴木 由美子 大久保 敏幸 善本 裕之 上原 綾子 成田 有希 JP 2010051309 公開特許公報(A) 20100311 2009175087 20090728 金属イオン酸化作用を抑制した発酵アルコール飲料 メルシャン株式会社 000001915 麒麟麦酒株式会社 307027577 廣田 雅紀 100107984 小澤 誠次 100102255 東海 裕作 100096482 大▲高▼ とし子 100123168 ▲高▼津 一也 100120086 堀内 真 100131093 谷口 潔 田村 隆幸 鈴木 由美子 大久保 敏幸 善本 裕之 上原 綾子 成田 有希 JP 2008195058 20080729 C12G 3/02 20060101AFI20100212BHJP C12G 1/00 20060101ALI20100212BHJP C12G 3/04 20060101ALI20100212BHJP JPC12G3/02C12G1/00C12G3/04 11 OL 16 4B015 4B015AG17 4B015CG17 4B015GG15 4B015GG17 4B015LG03 4B015LH01 4B015MA04 本発明は、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を低減させることにより、該遊離遷移金属イオンによる酸化作用を抑制し、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品の酸化による味覚の低下を防止して、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料、及びその製造方法に関する。すなわち、本発明は、例えば、果実酒(ワイン等)や、ビール類のような発酵アルコール飲料の飲用時に、魚介類のような食品を同時に口にした時に感ずる“生臭み”の発生を防止して、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料、及びその製造方法に関する。 古来より、国の内外を問わず、酒類として、各種の発酵アルコール飲料が製造され、飲用されてきた。アルコール飲料の飲用の仕方には、それぞれのアルコール飲料において、各種の飲用の態様があるが、そのアルコール飲料自体を味わう飲み方と共に、酒のつまみや料理を口にしながら、飲用することも多い。そこで、日本においては、そのような酒のつまみや料理として、魚介類が登場する機会が多い。現代日本は欧米化したとはいえ、未だ世界有数の魚介類消費国であり、伝統的な調理法で調理された魚介料理を食する機会は多い。刺身や干物、魚のシンプルな塩焼きなどがそれに相当する。 ところで、ヒトが本能的に嫌う香りの一つには、魚介類が新鮮さを失うにつれて出てくる“生臭み”がある。刺身や干物、魚のシンプルな塩焼きのような魚介類の料理には、ある程度の“生臭み”は避けられないが、通常の果実酒類やビール類とこれらの食事を一緒にとると、口中に強烈な“生臭み”を感じることがしばしばある。そこで、これらのアルコール飲料については、従来より例えば「刺身は、日本酒に合うがワインやビール類には合わない」というようなことが言われている。したがって、魚介類のような材料を用いた日本の伝統料理にも通用する果実酒類やビール類が開発できれば、酒類飲用者の食を通しての酒類の本質的楽しみはより広がると思われる。しかしながら、従来、発酵アルコール飲料の製造に際して、アルコール飲料と一緒に口にする食品との味の相性をターゲットとして、発酵アルコール飲料の改善を図る試みは、なされないできた。 一方で、従来より、ビールやワインのような酒類において、鉄イオンや銅イオンが含まれていて、製品中のこれらのイオンが、製品の品質の低下や劣化に関与していることが知られている。例えば、果実酒類に関して述べると、ワインの鉄の由来は、(1)ブドウ果実に由来するもの、(2)醸造設備や容器に由来するもの、及び(3)工程使用材や添加物に由来するものの主として3つがあるが(Methods for Analysis Musts and Wines, 2 nded. (J. Wiley&Sons, New York)、 1988;醸造協会誌, 68, 531、1973)、(1)のブドウ果実に由来するものは問題となるような鉄含有レベルではないようである。 すなわち、本発明者が検証した結果、(1)のブドウ品種や栽培地による鉄含有量の違いはほとんど見られず、また、総じて問題となるような鉄含有レベルではなかったことから、果実酒類中に含まれる鉄イオンは主には上記(2)と(3)の醸造設備(機械、器具)やろ過機(ろ過助剤)に由来しているものと考えられる。更に、果実酒類の製造工程で通常使用される亜硫酸は、醸造設備からの金属溶出を高めることから、ワインによって鉄含有量に大きく差があるのは、醸造設備の使用素材や劣化度合い等によるところが大きいものと考えられた。 また、生ブドウからワインを製造する場合には、醸造設備次第で鉄含有量が少ないワインを製造することができるので、鉄含有量が比較的少ない果実酒類の製品は比較的容易に開発できる。一方で、濃縮果汁を使用してワインを製造する場合には、ワイン製造工程以前に、濃縮果汁製造工程での鉄混入の問題が出てくる。すなわち、濃縮工程の前工程である果汁ろ過工程で通常使用される珪藻土や、濃縮工程時の加熱による濃縮機などからの鉄溶出が可能性として考えられる。日本では、濃縮果汁を使用してワインを製造することが法律的に認められているが、実際に、これら濃縮果汁を原料の一部に使用して日本国内で製造されたワインには、生ブドウを使用して日本国内で製造されたワインと比較して総じて鉄の含有量が多いのが特徴である。 ワインの製造に際して、ワインから鉄を除去する方法として、イオン交換樹脂を使用する方法(Mikrobiologie des Weines (E. Ulmer, Stuttgart) p.111, 1977)やフィチン酸(Inds. agr. alim., 71, 833, 1954)の使用などが知られている。また、ドイツ等では黄血塩による除去(Blue fining)が行われているが、日本ではこの方法は許可されていない。これら鉄イオン除去の目的は、従来は、混濁や褐変酸化といった酒質劣化の防止のためであった(Dictionnaire du Vin, p.288, 436, 1962;Food Res., 21, 384, 1956)。このように、従来から、ワインのような果実酒類において、含有される鉄イオン等を除去する方法が知られていたが、その除去の目的は、ワイン等において、鉄が7〜10ppm以上の存在で鉄混濁の発生の危険性が指摘されていることに対処するもので、従来の取組みは、このレベルでの鉄イオン等の除去が対象とされていた。したがって、1ppm以下という極微量の鉄イオン等の含有の問題は提起されておらず、また同時に、従来の方法で、このレベル以下まで鉄イオン濃度を下げるという発想自体もなかった。 また、焼酎、ジン、ブランデー、ウイスキー、ラム酒、ワイン等のアルコール飲料又はアルコールに、糖類を加え、梅などの果実類を浸漬して製造する果実混成酒の製造に際して、陽イオン交換樹脂等を用いて、アルコール飲料又はアルコール中に含有される銅イオンを除去する方法が開示されている(特開平6−327456号公報)。この開示のものは、果実混成酒の製造に際して、その原料の蒸留酒の製造に用いる銅製或いは銅を材質の一部とする蒸留機からアルコール中に溶出される銅イオンを除去して、果実からの成分の抽出が不十分となるのを防止するためのものである。かかる方法は、アルコール中に溶出される銅イオンを除去するだけの処理であるから、アルコール飲料中に含有される鉄イオンや銅イオンのような遷移金属イオンを微量な含有量に低減するという方法ではなく、またそのような観点に着目したものでもない。 更に、ビール類のような発酵アルコール飲料について述べると、ビール類に含まれる微量重金属イオンは原料(麦芽、ホップ、水)や製造方法、設備、更には製品の容器(ビン、缶)等の諸条件によって左右されることが分かっている。これらの微量成分のうち、特に銅イオンと鉄イオンはビール中における酸化反応を触媒し、香味の劣化、混濁発生を促進すると言われている(石井勉編集、「ビール醸造技術」株式会社食品産業新聞社、1999年12月28日、第75−76頁)。ビールに金属イオンが官能閾値以上(例えば鉄の場合は弁別閾値が1ppm以上)含まれていると、いわゆる金属味(メタリック・フレーバー)が生じると言われている。また、ビールの製造に用いる醸造用水においては、ビールの混濁の原因となる銅イオンは、1ppm以下が望ましいことが指摘されている。 しかし、従来、ビール類のような発酵アルコール飲料において、鉄イオンや銅イオンのような重金属イオンの存在を低く抑え、製品の香味の劣化や混濁発生を防止することが検討されてきたが、それらは、発酵アルコール飲料の製造に用いられる製造装置や、包装容器からの該成分の溶出や、用いる醸造用水に含まれる重金属イオンの濃度を抑えることに主眼が置かれ、ビール類のような発酵アルコール飲料中に含まれる鉄イオンや銅イオンのような遷移金属イオンを微量な量に低減するという方法ではなく、またそのような観点に着目したものでもない。 ビール類の製造に際して、イオン交換樹脂を用いて、成分を除去することは知られている。例えば、ビール類の製造に用いる用水を、カチオン或いはアニオンイオン交換樹脂に通じて処理し、該イオン交換樹脂による処理により、マグネシウムやカルシウムを除去して醸造用水の硬度を調整することが知られている(石井勉編集、「ビール醸造技術」株式会社食品産業新聞社、1999年12月28日、第83−84頁)。また、麦芽アルコール飲料の製造に際して、イオン交換樹脂のような吸着剤を用いて、麦芽アルコール飲料の雑味成分であるカルボニル化合物やメイラード化合物を除去するものが開示されている(WO02/004593)。しかし、これらのイオン交換樹脂を用いる方法は、ビール類のような発酵アルコール飲料中に含まれる鉄イオンや銅イオンのような遷移金属イオンを微量な量に低減するという方法ではない。したがって、従来、発酵アルコール飲料の製造に際して、アルコール飲料中に含まれる鉄イオンや銅イオンのような遷移金属イオンを1ppm以下の微量な量に低減するという方法は知られていない。特開平6−327456号公報WO02/004593Methods for Analysis Musts and Wines, 2 nd ed. (J. Wiley&Sons, New York) 1988.醸造協会誌, 68, 531 1973.Mikrobiologiedes Weines (E. Ulmer, Stuttgart) p.111, 1977.Inds. agr. alim., 71, 833, 1954.Dictionnaire du Vin, p.288, 436, 1962.Food Res., 21, 384, 1956.石井勉編集、「ビール醸造技術」株式会社食品産業新聞社、1999年12月28日、第75−76頁石井勉編集、「ビール醸造技術」株式会社食品産業新聞社、1999年12月28日、第83−84頁 本発明の課題は、果実酒(ワイン)や、ビール類のような発酵アルコール飲料の飲用時に、魚介類のような食品を同時に口にした時に感ずる“生臭み”の発生を防止して、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料、及びその製造方法を提供することにある。 すなわち、従来より例えば「刺身は、日本酒に合うがワインやビール類には合わない」というようなことが言われるように、果実酒類(果実酒、甘味果実酒等)や、ビール類のような発酵アルコール飲料と、魚介類のような食品を同時に口にすると“生臭み”を感ずることが知られている。このように、刺身の生臭さと日本酒は互いに融合し合うのに対して、果実酒類やビール類は総じてぶつかり合ってしまう。そこで、本発明の課題は、このようなアルコール飲料と一緒に口にする食品との相互作用によって生ずる生臭みのような味覚の発生メカニズムを解明すると共に、該知見に基く、発酵アルコール飲料の処理により、発酵アルコール飲料の飲用時に、魚介類のような食品を同時に口にした時に感ずる“生臭み”の発生を防止して、発酵アルコール飲料と食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料、及びその製造方法を提供することにある。 本発明者は、数多くの輸入・国産果実酒類の成分分析と、官能検査による魚介類との組み合わせの相性について鋭意検討する中で、遊離した鉄イオン(特に二価鉄)を多く含む果実酒類が、該果実酒類と魚介類との組み合わせにおいて、魚介類の“生臭み”を強く発生させる傾向にあることを突き止めた。更に、“生臭み”の発生メカニズムを調べたところ、これらの酒類と魚介類が一緒になった時、果実酒類中の二価鉄イオンの作用によって、魚介類に含まれるω−3系の不飽和脂肪酸のような成分が瞬時に酸化され、生臭みを生じる物質に変わることが判明した。そして、果実酒類の鉄イオン含有量をコントロールすることで、生臭みを発生しない果実酒類の開発が可能となることを見い出した。 更に、本発明者は、ビール類のような発酵アルコール飲料について、該アルコール飲料の成分分析と、官能検査による魚介類との組み合わせの相性について検討する中で、食品(特に魚介類)とビール類とを同時に口にした時に感じる生臭みは、果実酒類の場合に比べて、より低い金属イオン含有レベルであることが、明らかとなったが、生臭み発生のメカニズムは果実酒類の場合と類似しており、鉄イオンや銅イオンを主とする遷移金属イオンにより、魚介類のような食品に含まれるω−3系の不飽和脂肪酸のような成分が酸化され、生臭みの成分である2,4−ヘプタジエナールのような生臭みを生じる物質に変わることを突き止めた。そして、このようなアルコール飲料と一緒に口にする食品との相互作用によって生ずる生臭みのような味覚の発生メカニズムの解明に基いて、発酵アルコール飲料中から遷移金属イオンを取り除く方法を検討し、更に、発酵アルコール飲料の製造に際して、遊離遷移金属イオンを低減化する工程を採用することにより、遊離遷移金属イオンによる酸化作用を抑制した発酵アルコール飲料の製造が可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、発酵アルコール飲料の製造に際して、遊離遷移金属イオンを低減させる工程を設けることにより、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を1ppm以下に低減させ、遊離遷移金属イオンによる酸化作用を抑制し、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料を製造することからなる。本発明において、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善としては、ω−3系の不飽和脂肪酸を含有する魚介類の生臭みの発生のような味覚の改善を挙げることができる。 本発明において、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオンとしては、二価の鉄イオン及び/又は銅イオンを挙げることができる。本発明において、遊離遷移金属イオンの低減化処理は、金属キレート系イオン交換樹脂処理、EDTA処理、コハク酸或いはクエン酸処理、デフェリフェリクシン処理、及びフィチン或いはフィチン酸処理からなる群より選択されるキレート能のある物質の1又は2以上の処理により行うことができる。また、該遊離遷移金属イオンの低減処理は、発酵アルコール飲料の製造工程において、濾過工程及びそれ以降の工程で行なうことが好ましい。 本発明において、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオンの低減化処理の効果は、飲料中の有機酸濃度と相乗作用があり、飲料中の有機酸濃度が1000ppm以上である発酵アルコール飲料の製造に際しては、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を1ppm以下に低減させることが好ましい。該発酵アルコール飲料としては、果実酒又は甘味果実酒が挙げられる。本発明において、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオンの低減化処理の対象とする果実酒又は甘味果実酒としては、特に、製造原料の一部として、濃縮果汁を用いて製造したものを挙げることができる。 また、本発明において、飲料中の有機酸濃度が1000ppm未満である発酵アルコール飲料の製造に際しては、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を0.040ppm以下に低減させることが好ましい。かかる発酵アルコール飲料としては、麦酒、発泡酒、及びその他の発泡性醸造酒等のビール類を挙げることができる。本発明の発酵アルコール飲料の製造方法によって、遊離遷移金属イオンによる酸化作用を抑制し、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料を提供することができる。 すなわち具体的には本発明は、[1]発酵アルコール飲料の製造に際して、遊離遷移金属イオンを低減させる工程を設けることにより、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を1ppm以下に低減させることを特徴とする遊離遷移金属イオンによる酸化作用を抑制し、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料の製造方法や、[2]発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善が、ω−3系の不飽和脂肪酸を含有する魚介類の生臭みの発生の改善であることを特徴とする上記[1]記載の発酵アルコール飲料の製造方法や、[3]発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオンが、二価の鉄イオン及び/又は銅イオンであることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の発酵アルコール飲料の製造方法からなる。 また本発明は、[4]遊離遷移金属イオンの低減が、金属キレート系イオン交換樹脂処理、EDTA処理、コハク酸或いはクエン酸処理、デフェリフェリクシン処理、及びフィチン或いはフィチン酸処理からなる群より選択されるキレート能のある物質の1又は2以上の処理により行われることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか記載の発酵アルコール飲料の製造方法や、[5]遊離遷移金属イオンの低減処理が、発酵アルコール飲料の製造工程における濾過工程及びそれ以降の工程で行なわれることを特徴とする上記[4]記載の発酵アルコール飲料の製造方法や、[6]飲料中の有機酸濃度が1000ppm以上である発酵アルコール飲料の製造に際して、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を1ppm以下に低減させることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか記載の発酵アルコール飲料の製造方法や、[7]発酵アルコール飲料が、果実酒又は甘味果実酒であることを特徴とする上記[6]記載の発酵アルコール飲料の製造方法からなる。 さらに本発明は、[8]製造原料の一部として、濃縮果汁を用いて製造したものであることを特徴とする上記[7]記載の発酵アルコール飲料の製造方法や、[9]飲料中の有機酸濃度が1000ppm未満である発酵アルコール飲料の製造に際して、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を0.040ppm以下に低減させることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか記載の発酵アルコール飲料の製造方法や、[10]発酵アルコール飲料が、麦酒、発泡酒、又はその他の発泡性醸造酒であることを特徴とする上記[9]記載の発酵アルコール飲料の製造方法や、[11]上記[1]〜[10]のいずれか記載の発酵アルコール飲料の製造方法によって製造された遊離遷移金属イオンによる酸化作用を抑制し、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料からなる。 本発明により、果実酒類や、ビール類のような発酵アルコール飲料中に含まれる遊離遷移金属イオンによる酸化作用を抑制して、例えば、魚介類のような食品と一緒に口にした時に感ずる“生臭み”のような味覚を排除して、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った、どのようなつまみや料理にも相性のよい香味豊かな発酵アルコール飲料を提供することができる。本発明により提供される発酵アルコール飲料により、アルコール飲料自体の飲用の形態を拡大することができ、更に、一緒に食する食品を通してのアルコール飲料の楽しみ方を拡大することができ、本発明は該消費者のニーズを満足する発酵アルコール飲料を提供することができる。 本発明は、発酵アルコール飲料の製造に際して、二価の鉄イオンや銅イオンのような遊離遷移金属イオンを低減させる工程を設けることにより、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を1ppm以下に低減させ、遊離遷移金属イオンによる酸化作用を抑制し、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料を製造することからなる。 (発酵アルコール飲料)本発明における発酵アルコール飲料には、果実酒、甘味果実酒や麦酒、発泡酒、その他の発泡性醸造酒のような発酵アルコール飲料を挙げることができる。本発明において、果実酒としては、製造原料の一部として、濃縮果汁を用いて製造したものの場合、遊離遷移金属イオンを比較的多く含むので、特に効果的に本発明の方法を適用することができる。 (遊離遷移金属イオンの低減)本発明においては、発酵アルコール飲料中の二価の鉄イオン、銅イオンのような遊離遷移金属のイオン濃度を1ppm以下に低減させる。遊離遷移金属イオンの低減手段自体は、公知の遊離遷移金属イオンの除去手段を用いることができる。好ましい遊離遷移金属イオンの除去手段としては、金属キレート系イオン交換樹脂処理、EDTA処理、コハク酸或いはクエン酸処理、デフェリフェリクシン処理、及びフィチン或いはフィチン酸処理を挙げることができ、該キレート能のある物質の処理を1種又は2種以上併用して行うことができる。 本発明において、遊離遷移金属のイオンの除去のために用いるイオン交換樹脂としては、鉄イオン、銅イオンをそれぞれ除去できるイオン交換樹脂或いはそれらを併用して用いることができるが、遊離遷移金属イオンを総合的に除去することが可能な金属キレート系イオン交換樹脂を用いることが好ましい。該樹脂としては、例えば、ホクエツSB(味の素ファインテクノ(株))、ダイヤイオンCR11、ダイヤイオンCR20(いずれも三菱化学(株))、アンバーライトIRC748(オルガノ(株))のようなキレート樹脂を挙げることができる。本発明において、遊離遷移金属のイオンの除去のために、EDTA(エチレンジアミン四酢酸又はその塩)及びフィチン或いはフィチン酸による処理を用いることができる。EDTA及びフィチン或いはフィチン酸による処理自体は、公知の方法と特に変わる点はないが、遊離遷移金属イオン濃度を測定し、目的値以下になるように処理条件を適宜設定すればよい。遊離遷移金属のイオンの除去のための処理において、一回の処理で不十分な場合は連続処理をすることで、また、単独の処理で不十分な場合は、組み合わせて処理することで目的を達成することができる。EDTAを用いて処理を行なう場合には、食品添加物用のEDTAを使用することにより、アルコール飲料中の遊離遷移金属イオンを、所定量まで除去することができる。 (発酵アルコール飲料の処理)本発明において、発酵アルコール飲料の製造工程における遊離遷移金属イオンの低減処理は、発酵アルコール飲料の製造工程のいずれの工程でも行なうことができる。例えば、果実酒(ワイン)の場合には、濃縮果汁、濃縮果汁を使用して発酵させたワイン、又は、これらを一部原料として製造したワインのいずれの段階でも低減処理は可能である。しかしながら、通常は、発酵アルコール飲料の製造工程における濾過工程及びそれ以降の工程で行なわれる。該遊離遷移金属イオンの低減処理は、通常の発酵アルコール飲料の製造工程の中で行っても良く、また、通常の発酵アルコール飲料の製造工程に、遊離遷移金属イオンの低減処理工程を付加しても良い。 本発明において、遊離遷移金属イオンによる酸化作用を抑制し、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図るために、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度は、1ppm以下に低減させることが必要である。発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を該濃度以下に低減させることにより、例えば、発酵アルコール飲料と一緒に食する魚介類のような食品の生臭みの発生を有効に抑制することができる。本発明において、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオンの低減化処理の効果は、飲料中の有機酸濃度と相乗作用がある。 例えば、果実酒(ワイン)には、原料由来の、又は酒の醪の発酵熟成過程において生成される酒石酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸等の有機酸が含まれ、また、麦酒や発泡酒には、麦芽中の主要有機酸であるクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸や、酵母代謝由来のピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、酢酸等の有機酸が含まれる。そして、本発明における発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオンの低減化処理の効果は、飲料中の該有機酸濃度と相乗作用がある。したがって、発酵アルコール飲料の遊離遷移金属イオンの低減化処理における遊離遷移金属イオン濃度は、飲料中の該有機酸濃度との対応で、適当な濃度を定めることができる。例えば、果実酒(ワイン)のように、飲料中の有機酸濃度が1000ppm以上である発酵アルコール飲料の製造に際しては、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を1ppm以下に低減させることが好ましい。一方、麦酒、発泡酒、又はその他の雑酒のように飲料中の有機酸濃度が1000ppm未満である発酵アルコール飲料の製造に際しては、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を0.040ppm以下に低減させることが好ましい。 本発明の発酵アルコール飲料の製造方法において、発酵アルコール飲料の製造に際して、遊離遷移金属イオン低減させる工程を設けること以外の点は、用いる原料、及び製造方法及び製造条件において、通常の発酵アルコール飲料の製造方法と、特に変わるところはない。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。 [実施例1:鉄イオン濃度がワインと魚介の相性に与える影響]食材としてホタテの干物を使用し擬似ワインとの口中での生臭み発生状況を検証した。擬似ワインは、脱イオン水と酒石酸水溶液(ワインを考慮して4000ppm)のそれぞれに、亜硫酸を30ppm添加したものをベースとし、塩化第一鉄と塩化第二鉄を用いて、鉄イオン濃度を変化させた場合のホタテの干物との相性を検討した。 表1より、二価鉄が生臭み発生に大きく寄与していることが明らかとなった。また、脱イオン水に比べ酒石酸水溶液がベースの場合のほうが、生臭みを感じにくいことが分かった。これは、酒石酸のキレート効果によるものと推察された。以上の結果より、ワインを想定した場合、二価鉄濃度が1ppm以下のワインが生臭みを感じない点から望ましいことが示唆された。 [実施例2:遷移金属による魚介類からの“生臭み”発生]市販の貝ひもをミキサーで粉砕し、2gを25mlナスフラスコに採取した。クロロホルム/メタノール(2:1)溶液20mlを加え、50℃で2時間振とうすることで脂質を抽出し、GC−MS分析用のヘッドスペースバイアルに移した。窒素パージで溶媒を除去後に10%エタノール水溶液を2ml加えた。酸化反応生成物を生成させるために硫酸鉄(II)として5,000ppm含む水溶液を40μl添加した。加温すると同時にSPME(スペルコ製)のニードルをヘッドスペースバイアルにさしファイバーを接触させた(60℃、60min)。これを匂い嗅ぎGC−MS分析に供した。詳細な分析条件は以下の通りである:(1)使用GCMSD;Agilent 5973、(2)注入口;スプリット/スプリットレス、(3)カラム;J&W DB−624(30m×0.25mm×1.4μm)、(4)注入高温度;250℃、(5)注入量;SPME 露出時間20min、(6)スプリット比;1:1、(7)ヘッド圧;125kPa(初期流量1.6ml/min)コンスタントフロー、(8)昇温条件;40℃(1min)⇒5℃/min⇒130℃(0min)⇒20℃/min⇒230℃(6min)計30min、(9)トランスファー温度;250℃、(10)MSイオン源;230℃、(11)MS四重極温度;150℃、(12)スキャンレンジ;30m/z〜250m/z。 結果を表2に示す。その結果、二価鉄を加えなかったコントロールからは酸化反応生成物はまったく検出されなかったのに対し、加えたものからは多数の酸化反応生成物が検出された。また、匂い嗅ぎの結果から、生臭い香りは1−オクテン−3−オン(1−Octen−3−one)と2,4−ヘプタジエナール(2,4−Heptadienal)の2成分が代表成分であることが判明した。 [実施例3:キレート剤を利用した鉄除去ワインの製造]二価鉄を含めた遷移金属はHPLCにて分析し、呈色試薬(PAR,4−(2−Pyridylazo)resorcinol)を利用したポストカラム吸光検出を行うことにより、遷移金属を選択的に高感度で検出することで、低濃度の遷移金属を定量した。詳細な分析条件は以下の通りである:(1)供試標準物質;0.2〜1ppm Fe3+、Fe2+、Cu2+、Zn2+、Mn2+/0.1%HCl、(2)使用カラム;Shim−pack IC−C1 カラム(Column size:4.6×150mm,Particle size:10μm[島津製作所])、(3)HPLC分離条件;移動相:0.4M L−乳酸ナトリウム緩衝液(pH2.8),流量:1.0mL/min,温度:40℃,注入量:20μL、(4)HPLC検出条件:検出試薬:0.2mM PAR+3Mアンモニア+1M酢酸,流速:0.3mL/min,温度:40℃,検出波長:520nm。 先ず、A社市販赤ワイン製品(アルコール度数12%)に一連の濃度のEDTA2Na(エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム・2水和物)を添加し、ホタテの干物と同時に食することで生臭みの感じ方を検証した。その結果、表3のようにEDTA2Naの添加終濃度が40ppm以上で生臭みの感じ方が大きく低減された。 次に、別のA社市販赤ワイン製品(アルコール度数12%)の二価鉄含有量を分析したところ、3.0ppmであった。EDTA2Naを終濃度で40ppmとなるよう添加し、その後、遊離鉄濃度を分析した結果、0.2ppmまで減少した。当該ワインをホタテの干物と同時に食したところ、生臭みは全く感じられなかった。 [実施例4:フィチン酸を利用した鉄除去ワインの製造]先ず、フィチン酸とフィチン(フィチン酸カルシウム)の鉄を含めた遷移金属イオンの除去効果を調べた。A社市販赤ワイン製品に一連の濃度となるようフィチン酸とフィチンをそれぞれ添加、20min撹拌後、一夜常温下で静置した。メンブレンフィルター(0.45μm)で濾過後に、実施例3と同様にHPLC分析に供した。表4から明らかのように、フィチン酸及びフィチンは特に二価鉄の除去に効果があることが明らかとなった。また、フィチン酸のほうがより高い除鉄効果を示した。 次に、実際に生臭み低減ワインを製造した。遷移金属濃度の測定は実施例3と同様に実施した。A社赤ワイン製品(アルコール度数12%)の二価鉄含有量は3.0ppmであった。フィチン酸を終濃度で40ppmとなるよう添加、20min攪拌し常温下で一夜静置後に分析したところ、1.4ppmまで減少した。再度フィチン酸で処理したところ1.2ppmまで減少した。さらにこのワインに加水することで、アルコール濃度が9%で二価鉄含有量が0.9ppmのワインが製造できた。当該ワインをホタテの干物と同時に食したところ、生臭みはほとんど感じられなかった。 [実施例5:ビール類への金属キレート剤の添加による生臭み発生低減効果]上記の実験により鉄イオンが生臭みを発生させる原因物質であり、これを取り除くことにより生臭みが低減することが示唆されている。ビール類の生臭みの低減を目的として、製品ビール類へ金属イオンのキレート効果を持つEDTA、フィチン酸及びコハク酸を添加することにより生臭み低減効果を調べた。まずは、製品ビールAに食品添加物用EDTA(商品名“キレートップCA”、丸善薬品産業株式会社)を0.1mM、0.05mM、0.01mM、0.001mM、0.0001mM、0mMの6段階になるように添加した。市販されている瓶詰めのウニを食した後に、これらのビールを飲み、その際の生臭みを官能評価した。官能評価では、生臭みの強さを3段階に示し、強い場合を+とし、わずかに生臭みを感じる場合を±感じない場合を−として記載した。 結果を表5(EDTA添加がビール類の生臭みに及ぼす影響について)に示した。表5に示したとおり、0.0001mM以下では、生臭みを感じていたが、0.01mMでは生臭みを感じなかった。この結果より、0.001mM以上、望ましくは0.01mM以上のEDTA添加で生臭みを低減させる効果があることが示唆された。 次に、金属キレート能を持つ物質としてフィチン酸やコハク酸の添加による生臭み低減効果を調査した。製品ビールAに食品添加物用フィチン酸(築野ライフファインケミカルズ株式会社)を500ppm、250ppm、125ppm、25ppm、5ppm、0ppmの6段階になるように添加し混合した。また、製品ビールAに食品添加物用コハク酸(扶桑化学工業株式会社)を1000ppm、500ppm、250ppm、50ppm、10ppm、0ppmの6段階になるように添加した。市販されている瓶詰めのウニを食した後に、これらのビールを飲み、その際の生臭みを上記実験と同様に官能評価した。 表6及び7(フィチン酸やコハク酸添加がビール類の生臭みに及ぼす影響について)に示したように5ppmまではフィチン酸を添加しても生臭みが感じられたが、125ppmでは感じられなかった。このことより、25ppm以上、望ましくは125ppm以上のフィチン酸添加で生臭み低減効果があることが明らかとなった。また、10ppmまではコハク酸を添加しても生臭みが感じられたが、250ppmでは感じられなかった。以上より、50ppm以上、望ましくは250ppm以上のコハク酸添加で生臭み低減効果があることが示唆された。 [実施例6:ビール類への金属キレート樹脂処理による生臭み発生低減効果]金属キレート樹脂を用いてビール類中の金属イオンを取り除いた際の生臭み低減効果を評価した。金属キレート樹脂として、ダイヤイオンCR11(三菱化学)を用いて、金属イオンの除去を行なった。Pharmacia XK26(Amersham Pharmacia Biotech)カラムにCR11カラム樹脂を充填し、大量の水で洗浄した後に、ビールを供した。水で希釈されたビールを廃棄し、金属キレート樹脂で金属を除去したビールを回収した。これらのビール類の金属イオン濃度を原子吸光光度計(日立製作所社製Z−5700)で測定した。 また、生臭みの成分である2,4−ヘプタジエナールの定量解析は、ヘッドスペース−固相マイクロ抽出(HS−SPME)法によるガスクロマトグラフ質量分析計(以下GC/MS)を用いて行なった。SPME法とは、シリカファイバーの周りにポリジメチルシロキサンをコーティングしたニードル状のファイバーで抽出する方法である。このSPMEファイバーを誘導化試薬であるPFBOA(O−(2,3,4,5,6−pentafluorobenzyl)―hydroxylamine)を入れたバイアルのヘッドスペースに挿入し、SPMEファイバーに誘導化試薬を固定する(SPME Fiber SUPELCO社 57328-U)。次に、SPMEファイバーを試料のヘッドスペースに挿入し、ファイバー上でアルデヒド類をPFBOAと反応させオキシム化する。この反応はカルボニル化合物に特異的であるため、試料中のアルデヒド、ケトンと選択的に反応する。GC/MSの注入口に SPMEファイバーを導入し、抽出されたアルデヒド類の誘導体を加熱脱離させ、導入し、分離・定量した。 ビールAの金属キレート樹脂処理による生臭みへの影響を調査したところ、表8(金属キレート樹脂処理による生臭さ低減の評価)のような結果が得られた。ビールAを金属キレート樹脂で処理することにより、鉄イオンを大幅に取り除くことができた。有機酸濃度に大きな差は見られなかった。更に、市販されている瓶詰めのウニを食した後に、これらのビール類を飲み、その際の生臭みを上記実験と同様に官能評価した。その結果、金属イオンを大幅に取り除くことにより生臭みを大幅に低減することができた。また、キレート樹脂カラム処理後のビールとウニを混ぜて遊離する生臭み成分である2,4−ヘプタジエナールの濃度はN.D.であった。以上より、ビール中の鉄イオン濃度を減少させることにより、生臭みの成分である2,4−ヘプタジエナールの濃度が減少し、生臭みが低減することが示された。このような効果は、ビール以外に発泡酒、その他の発泡性醸造酒、遊離遷移金属イオンを含むビールテイスト飲料についても同様に観察された。 [実施例7:ビール類における金属イオン濃度と生臭みの関係]ビール、発泡酒、新ジャンル、新ジャンル(その他の発泡性醸造酒)における製品ビール類中の鉄イオンや有機酸の濃度を測定したところ、表9(製品中の金属イオン濃度の測定)のようにビール類の種類によって鉄イオン濃度に違いが見られた。有機酸濃度は調査したビール類全てにおいて1000ppm以下であった。市販されている瓶詰めのウニを食した後に、これらのビール類を飲み、その際の生臭みを上記実験と同様に官能評価した。その結果、これらの全てのビール類で生臭みが感じられた。 ビール類の金属イオン濃度と生臭みの関係を明らかにするために、ビールAとCR11カラム処理したビールAとの混合比率を変えたサンプルを作製し、金属イオン濃度を段階的に変化させたビールを作製した。市販されている瓶詰めのウニを食した後に、これらのビールを飲み、その際の生臭みを上記実験と同様に官能評価した。その結果、表10(ビール類中から金属イオン濃度と生臭みの関係)のようにビールAとCR11カラム処理したビールAの混合比率が40:60の際に生臭みを感じなくなった。更に、生臭みの成分である2,4−ヘプタジエナールの濃度もビールAの鉄イオン濃度が0.040ppm以下では検出限界以下となった。従って、ビールAの生臭さを低減させるための鉄イオン濃度は、0.040ppm以下、望ましくは、0.028ppm以下であることが示唆された。 本発明により、果実酒類や、ビール類のような発酵アルコール飲料において、例えば、魚介類のような食品と一緒に口にした時に感ずる“生臭み”のような味覚を排除して、どのようなつまみや料理にも相性のよい香味豊かな発酵アルコール飲料を提供することができる。本発明により提供される発酵アルコール飲料により、アルコール飲料自体の飲用の形態を拡大することができ、更に、一緒に食する食品を通してのアルコール飲料の楽しみ方を拡大することができ、本発明は該消費者のニーズを満足する発酵アルコール飲料を提供することができる。 発酵アルコール飲料の製造に際して、遊離遷移金属イオンを低減させる工程を設けることにより、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を1ppm以下に低減させることを特徴とする遊離遷移金属イオンによる酸化作用を抑制し、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料の製造方法。 発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善が、ω−3系の不飽和脂肪酸を含有する魚介類の生臭みの発生の改善であることを特徴とする請求項1記載の発酵アルコール飲料の製造方法。 発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオンが、二価の鉄イオン及び/又は銅イオンであることを特徴とする請求項1又は2記載の発酵アルコール飲料の製造方法。 遊離遷移金属イオンの低減が、金属キレート系イオン交換樹脂処理、EDTA処理、コハク酸或いはクエン酸処理、デフェリフェリクシン処理、及びフィチン或いはフィチン酸処理からなる群より選択されるキレート能のある物質の1又は2以上の処理により行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の発酵アルコール飲料の製造方法。 遊離遷移金属イオンの低減処理が、発酵アルコール飲料の製造工程における濾過工程及びそれ以降の工程で行なわれることを特徴とする請求項4記載の発酵アルコール飲料の製造方法。 飲料中の有機酸濃度が1000ppm以上である発酵アルコール飲料の製造に際して、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を1ppm以下に低減させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の発酵アルコール飲料の製造方法。 発酵アルコール飲料が、果実酒又は甘味果実酒であることを特徴とする請求項6記載の発酵アルコール飲料の製造方法。 製造原料の一部として、濃縮果汁を用いて製造したものであることを特徴とする請求項7記載の発酵アルコール飲料の製造方法。 飲料中の有機酸濃度が1000ppm未満である発酵アルコール飲料の製造に際して、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を0.040ppm以下に低減させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の発酵アルコール飲料の製造方法。 発酵アルコール飲料が、麦酒、発泡酒、又はその他の発泡性醸造酒であることを特徴とする請求項9記載の発酵アルコール飲料の製造方法。 請求項1〜10のいずれか記載の発酵アルコール飲料の製造方法によって製造された遊離遷移金属イオンによる酸化作用を抑制し、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料。 【課題】果実酒(ワイン)や、ビール類のような発酵アルコール飲料の飲用時に、魚介類のような食品を同時に口にした時に感ずる“生臭み”の発生を防止して、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料、及びその製造方法を提供すること。【解決手段】発酵アルコール飲料の製造に際して、遊離遷移金属イオンを低減させる工程を設けることにより、発酵アルコール飲料中の遊離遷移金属イオン濃度を1ppm以下に低減させ、遊離遷移金属イオンによる酸化作用を抑制し、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善を図った発酵アルコール飲料を製造する。本発明において、発酵アルコール飲料と一緒に食する食品との味覚の改善としては、主にはω−3系の不飽和脂肪酸を含有する魚介類の生臭み、例えば、2,4−ヘプタジエナールのような生臭みの成分の発生抑制のような味覚の改善を挙げることができる。【選択図】なし