タイトル: | 公開特許公報(A)_有機溶液中の硫黄成分の分離法 |
出願番号: | 2009163211 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07D 201/16,C07D 201/04,C07D 225/02 |
松本 紘 杉本 常実 JP 2011016765 公開特許公報(A) 20110127 2009163211 20090710 有機溶液中の硫黄成分の分離法 宇部興産株式会社 000000206 松本 紘 杉本 常実 C07D 201/16 20060101AFI20101224BHJP C07D 201/04 20060101ALI20101224BHJP C07D 225/02 20060101ALI20101224BHJP JPC07D201/16C07D201/04C07D225/02 5 OL 5 4C034 4C034EA07 本発明は硫黄成分を含有する有機溶液中の硫黄成分の分離方法に関わるものである。 硫黄成分を含有する有機溶液の処理は、環境保全の観点等から重要である。 硫黄成分を含有する有機溶液中の硫黄成分の分離方法としては、例えば、特許文献1に、石油及び石炭液化油等から得られる燃料油を酸化剤を用いて酸化処理することにより,含有されている有機硫黄化合物の沸点を上昇させ,燃料油から分離し除去する方法が開示されている。 また、特許文献2には、炭化水素に対する溶解度が小さく且つ有機硫黄化合物に対する溶解度が大きな溶媒(アセトン,メタノール,アセトニトリル,ピリジン,N’N−ジメチルホルムアミド,N−メチルピロリジノン,トリメチル燐酸アミド,ヘキサメチル燐酸アミド等から選択される一種又は数種類の物質,或いは上記物質に対して20%以下の濃度範囲で水を混合させた混合物から選択されるもの)を,燃料油に混合し,含硫黄官能基の2価の硫黄原子上の孤立電子対による求核性を利用して有機硫黄化合物を上記溶媒中に移行させ,沈降,浸透,濾過及び/又は遠心分離によって燃料油から有機硫黄化合物を分離し回収する方法が開示されている。しかし、これらの方法は煩雑である。 硫黄化合物を用いた反応混合液の簡便な処理方法としては、通常、反応混合液を中性の水で洗浄し、油層部と水層部に分液する方法が挙げられる。しかし中性の水による洗浄では硫黄分の分離効率が悪く、洗浄に必要な水の量、洗浄の回数が多くなり、非効率的である。反応混合物からの硫黄分の除去が不十分であると製品の品質に影響を及ぼすことになり、商品の安定的供給に支障が生じる。したがって反応混合液中の硫黄成分の含有量は可能な限り低減する必要がある。 硫黄成分を含有する有機溶液が発生する反応として、特許文献3に、シクロドデカノンオキシムを塩化チオニルを用いてベックマン転位させるラウロラクタムの製造方法が記載されている。 そして、得られた反応溶液を、熱湯で中和するまで洗浄する事により純度の良いラクタムが得られる事が記載されている。 しかしながら、発明者により追試したところ、硫黄成分の除去は充分ではなかった。特開平4−72387号公報特開平7−197036号公報特開昭51−41376号公報 本発明は、硫黄成分を含有する有機溶液、特に酸性領域にある硫黄成分を含有する有機溶液から、硫黄成分を効率よく分離する事を課題とする。更には、塩化チオニルなどの硫黄化合物を用いてシクロアルカノンオキシムをベックマン転位させ、ラクタムを製造するにおいて、その反応混合物から硫黄成分を効率よく分離する事を課題とする。 発明者らは、鋭意検討した結果、硫黄成分を含有する有機溶液、特に酸性領域にある硫黄成分を含有する有機溶液、更には、塩化チオニルなどの硫黄化合物を用いてシクロアルカノンオキシムをベックマン転位させ、ラクタムを製造する際の反応混合物に対して、アルカリ水溶液による処理を施すことによって上記課題が解決される事を見出した。 即ち、本発明は、次の事項に関する。1.硫黄成分を含有する有機溶液を、アルカリ水溶液により洗浄する有機溶液中の硫黄成分の分離法。2.硫黄成分を含有する有機溶液が、硫黄化合物を用いてシクロアルカノンオキシムをベックマン転位させラクタムを製造する際の反応混合物である上記1記載の有機溶液中の硫黄成分の分離法。3.硫黄成分を含有する有機溶液が、硫黄化合物を用いてシクロドデカノンオキシムをベックマン転位させラウロラクタムを製造する際の反応混合物である上記1記載の有機溶液中の硫黄成分の分離法。4.硫黄化合物が、ハロゲン化硫黄化合物である上記2又は3記載の有機溶液中の硫黄成分の分離法。5.ハロゲン化硫黄化合物が、塩化チオニルである上記4記載の有機溶液中の硫黄成分の分離法。 本発明により、硫黄成分を含有する有機溶液から、硫黄成分を効率よく分離する事ができる。特に、硫黄化合物を用いてシクロアルカノンオキシムをベックマン転位させ、ラクタムを製造するにおいて、その反応混合物から硫黄成分を効率よく分離する事ができる。 本発明について、その詳細を以下に説明する。 本発明が対象とする硫黄成分を含有する有機溶液としては、硫黄化合物を用いる反応の混合溶液であれば特に限定されないが、酸性領域にあるものが挙げられる。 硫黄化合物を用いる反応としては、シクロドデカノンオキシムなどのシクロアルカノンオキシムをベックマン転位させるラクタムの合成反応が好適である。 ここで、硫黄化合物に加えて、塩化亜鉛などの助触媒が添加されていても良い。 反応終了時に、反応溶液が、酸性領域にあるものは、熱湯で中和するまで洗浄する程度では硫黄成分は充分除去されないが、本発明による硫黄成分の分離の効果は顕著である。 硫黄化合物としては、塩化チオニル、塩化メタンスルホン酸、塩化パラトルエンスルホン酸、塩化トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、塩化トリフルオロメンタンスルホン酸、無水トリフルオロメタンスルホン酸などベックマン転位反応に触媒として用いられる化合物が挙げられる。なお、これらは単独で用いられてもよく、或いはその二種類以上を混合したものでもよい。好ましくは、塩化チオニルである。 有機溶液は、水と分離する有機物の溶液であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒などの非極性溶媒が好ましい。炭化水素系溶媒としてはトルエン、ベンゼン、キシレンなどが挙げられるが、中でもトルエンが好ましい。 本発明が対象とする硫黄成分を含有する有機溶液中の、硫黄成分、即ち、硫黄化合物の量(例えば、ベックマン転位反応に触媒として用いられる化合物であれば、その仕込み量を示す。)としては、その化合物の種類によらず、通常、60〜60000ppmであり、好ましくは600〜18000ppmである。 硫黄成分を含有する有機溶液としては、酸性領域にあるものが好適である。 本発明で使用するアルカリ水溶液としては、7を超えるpH値を有するアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む無機化合物の水溶液が挙げられる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む無機化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、アルカリ金属の重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)、アルカリ金属の亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウムなど)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウムなど)、アルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、アルカリ土類金属の重炭酸塩(炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素バリウムなど)、アルカリ土類金属の亜硫酸塩(亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウムなど)などが挙げられる。この内、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが好適に用いられる。 アルカリ水溶液の濃度としては、特に制限は無いが、通常、2〜20wt%である。 アルカリ水溶液の使用量は、硫黄成分を含有する有機溶液に対して0.01〜2倍容量であり、好ましくは0.05〜0.3倍容量である。 アルカリ水溶液は、硫黄成分を含有する有機溶液に加えて洗浄しても良いが、あらかじめ中性の超純水などの中性の水で硫黄成分を含有する有機溶液を洗浄処理した後に、アルカリ水溶液で洗浄するのが好ましい。 中性の水の使用量は、硫黄成分を含有する有機溶液に対して0.01〜2倍容量であり、好ましくは0.05〜0.3倍容量である。 アルカリ水溶液による洗浄時の温度は特に限定されないが、通常、25〜100℃、好ましくは65〜85℃である。 洗浄操作は、洗浄後、洗浄液を分離できるものであれば特に限定されない。例えば、攪拌装置付きセパラブルフラスコなどの装置で行う事ができる。 以下、実施例および比較例で本発明を具体的に示す。[実施例1] ジャケットつき1000mlセパラブルフラスコに、約30wt%のシクロドデカノンオキシム-トルエン溶液497.89g(シクロドデカノンオキシム 155.66g)と塩化亜鉛(1.7616g)を90℃で溶融させた。これに、あらかじめ塩化チオニル(1.4608g)、シクロドデカノンオキシム(3.2056g)、脱水トルエン(180.67g)を窒素雰囲気下で混合した混合液を約45分かけて連続滴下し反応させた。2時間後、ジャケットの温度を80℃に下げ、反応液(アシッドバリュー7.26、硫黄の濃度は83ppm)を、その0.1倍容量(10wt%)の超純水とあわせて15分攪拌し、次いで、15分静置して、油層部と水層部の分別を2回行った。得られた油層部を、その0.1倍容量(10wt%)の10wt%水酸化ナトリウム水溶液(pH13.18)で15分攪拌し、次いで、15分静置して、油層部と水層部の分別を行った。分別された油層中(アシッドバリュー0.13)の硫黄の濃度をイオンクロマトグラフ法、自動燃焼ハロゲン・硫黄分析システムによりで測定した。その結果、硫黄の濃度は10ppmであった。[比較例1] ジャケットつき1000mlセパラブルフラスコに、約30wt%のシクロドデカノンオキシム-トルエン溶液151.34g(シクロドデカノンオキシム 45.17g)と塩化亜鉛(0.4673g)を95℃で溶融させた。これに、あらかじめ塩化チオニル(0.4841g)、シクロドデカノンオキシム(0.9220g)及び脱水トルエン(34.37g)を窒素雰囲気下で混合した混合液を約15分かけて断続滴下し反応させた。2時間後、ジャケットの温度を80℃に下げ、反応液(アシッドバリュー7.32、硫黄の濃度は84ppm)に仕込みのシクロドデカノン-トルエン溶液の0.1倍容量(10wt%)の超純水を加え15分攪拌し、次いで、15分静置して、油層部と水層部の分別し、この超純水での洗浄を4回行った。得られた油層部を実施例1と同様に分析したところ、硫黄濃度は46ppmであった。硫黄成分を含有する有機溶液を、アルカリ水溶液により洗浄する有機溶液中の硫黄成分の分離法。硫黄成分を含有する有機溶液が、硫黄化合物を用いてシクロアルカノンオキシムをベックマン転位させラクタムを製造する際の反応混合物である上記1記載の有機溶液中の硫黄成分の分離法。硫黄成分を含有する有機溶液が、硫黄化合物を用いてシクロドデカノンオキシムをベックマン転位させラウロラクタムを製造する際の反応混合物である上記1記載の有機溶液中の硫黄成分の分離法。硫黄化合物が、ハロゲン化硫黄化合物である上記2又は3記載の有機溶液中の硫黄成分の分離法。ハロゲン化硫黄化合物が、塩化チオニルである上記4記載の有機溶液中の硫黄成分の分離法。 【課題】 本発明は、硫黄成分を含有する有機溶液から、硫黄成分を効率よく分離する事を課題とする。特に、塩化チオニルなどの硫黄化合物を用いてシクロアルカノンオキシムをベックマン転位させ、ラクタムを製造するにおいて、その反応混合物から硫黄成分を効率よく分離する事を課題とする。【解決手段】硫黄成分を含有する有機溶液をアルカリ水溶液による処理を施すことによって上記課題は解決される。 即ち、本発明は、硫黄成分を含有する有機溶液を、アルカリ水溶液により洗浄する有機溶液中の硫黄成分の分離法に関する。【選択図】 なし