生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_海藻の残渣からセルロース分解物を製造する方法
出願番号:2009159831
年次:2011
IPC分類:C07H 3/02


特許情報キャッシュ

大谷 淨治 小室 秀夫 辻 清昭 JP 2011012036 公開特許公報(A) 20110120 2009159831 20090706 海藻の残渣からセルロース分解物を製造する方法 江南化工株式会社 304040441 小林 洋平 100108280 大谷 淨治 小室 秀夫 辻 清昭 C07H 3/02 20060101AFI20101217BHJP JPC07H3/02 3 1 OL 9 4C057 4C057BB02 4C057CC01 本発明は、海藻の残渣からセルロース分解物を製造する方法に関するものである。 現在、海藻からバイオエタノールを生産するための研究開発が行われている(例えば、特許文献1、2を参照)。陸上植物とは異なり、海藻はリグニンを含まないので、外層のセルロースを分解することによりグルコースを調製し、容易にバイオエタノールを製造できそうに考えられる。 しかしながら、実際に海藻をセルラーゼや酸で分解しても、容易にはグルコースを調製できなかった。従来の研究開発の動向を見ても、海藻からバイオエタノールを製造できている研究成果は、ほとんど見られなかった。 一方、海藻の多くは、固有の多糖類を持つことが知られている。例えば、テングサには、多糖類として寒天が含まれており、これが商品化されている。しかし、これらの多糖類が海藻中で果たす役割については、明確ではなかった。テングサでは、寒天を抽出した後の残渣が多く残ることが知られている。テングサの残渣は、セルラーゼに抵抗性があるために、一部が肥料として使用されるものの、その多くは産業廃棄物として処理されるに過ぎなかった。もし、このような海藻の残渣からセルロース分解物を得ることができれば、産業廃棄物量の減少とともに、バイオエタノールの製造などの再資源化を図れることになる。特開2008−297531号公報特開2008−271910号公報 本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、海藻から容易にセルロース分解物を製造できる方法を提供することにある。 本発明者は、鋭意検討の結果、海藻に含まれる多糖類が、陸上植物のリグニンに相当するのではないかとの思想に至った。つまり海藻は、構造を維持するために、セルロースに加えて、充填剤としての多糖類と結着剤としての蛋白質を活用しているのではないかと考えた。この考えが正しければ、陸上植物においてはリグニンを除去しなければセルロースの分解が困難であるのと同様に、海藻においては多糖類を分解しなければセルロースの分解が困難であることになる。この考察に基づき、商品としての多糖類を抽出した後に、海藻の残渣に残存する多糖類を除去する工程と、セルロースを分解する工程とを分けて実施することにより、海藻を有効に資源化することに成功し、基本的には本発明を完成するに至った。 こうして、本願発明に係るセルロース分解物の製造方法は、(1)海藻に有機酸を添加して温水処理することで多糖類を得る多糖類抽出工程を実施した後、(2)無機酸または酸化剤であって海藻の残渣にセルラーゼが作用し得るホールを作製可能なホール調整剤を海藻の残渣に添加して温水処理することで残った多糖類を除去する多糖類除去工程を実施し、(3)セルラーゼを用いてセルロースを分解するセルロース分解工程を実施することを特徴とする。 海藻とは、肉眼的大きさ以上の海産藻類の総称を意味しており、代表的には、褐藻類(コンブ、ヒジキ、ヒバマタ、ホンダワラ、モズク、ワカメなど)、紅藻類(アサクサノリ、テングサなど)、及び緑藻類(アオサ、アオノリ、カサノリ、サボテングサ、フサイワヅタなど)の三群がある。本発明においては、いずれの上記いずれの群に属する海藻についても実施することができる。但し、事業性の観点から見ると、多糖類抽出工程で得られた多糖類を商品として利用可能な海藻(例えば、テングサ(寒天)、オゴノリ(寒天)、コットニー(カラギーナン)、スピノサム(カラギーナン)、アイリッシュモリス(カラギーナン)、コンブ(フコイダン)、ワカメ(フコイダン)、モズク(フコイダン)、メカブ(フコイダン)、ヒトエグサ(ラムナン硫酸)、スピルリナ(ラムナン硫酸)など:但し、海藻名の後の括弧内は、商品としての多糖類を意味する。)を用いることが好ましい。 多糖類抽出工程に用いる有機酸とは、有機化合物の酸の総称を意味しており、カルボン酸、スルホン酸に加えて、ヒドロキシ基・チオール基・エノール基を持つ弱酸性化合物が含まれる。これらのうち、カルボン酸が好ましく用いられる。カルボン酸とは、カルボン酸構造(R-COOH)を酸成分とする有機化合物であり、ギ酸・酢酸・プロピオン酸・酪酸・吉草酸などのモノカルボン酸、シュウ酸・マロン酸・コハク酸などのジカルボン酸、安息香酸・フタル酸・イソフタル酸・テレフタル酸・サリチル酸・没食子酸・メリト酸・ケイ皮酸などの芳香族カルボン酸、ピルビン酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、アミノ酸などが含まれるが、これらには限定されない。上記カルボン酸のうち、酢酸、シュウ酸、クエン酸から選択される一つのものを用いることが好ましく、酢酸を用いることが経済性の観点から更に好ましい。 一般に、海藻から多糖類を抽出する場合には、その多糖類が付加価値を有しており、商品化されていることが多い。このようにして商品化されている多糖類としては、例えば、寒天、ラムナン硫酸、カラギーナンなどが挙げられる。現在では、多糖類を抽出された海藻の残渣は、セルラーゼを作用させてもセルロースをほとんど分解できないので、大部分が産業廃棄物として処理されている。 多糖類除去工程に用いるホール調整剤とは、無機酸または酸化剤であって、海藻の残渣にセルラーゼが作用し得るホールを作製可能なものを意味している。無機酸とは、無機化合物の化学反応で得られる酸を意味しており、鉱酸(こうさん)ともいう。無機酸には、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸などが含まれる。酸化剤とは、目的物質を酸化するために使用する試薬を意味している。酸化剤には、例えば酸素-オゾン、過酸化水素(H2O2)、過マンガン酸カリウム(KMnO4)、塩素酸カリウム、二クロム酸カリウム(K2Cr2O7)、臭素酸ナトリウム(NaBrO3)-臭素酸カリウム(KBrO3)、酸化マンガン(IV)、ハロゲンの単体、熱濃硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、クロラミン、四酸化オスミウム、ジメチルスルホキシド、過酢酸、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)などが含まれる。 上記ホール調整剤のうち、塩酸、硫酸、過酸化水素、次亜塩素酸からなる群から選択される一つのものを用いることが好ましく、過酸化水素を用いることが更に好ましい。本発明では、ホール調整剤は、海藻の残渣に残った多糖類を分解あるいは除去すると共に、セルラーゼが作用できる環境を与えるものを意味している。本発明者は、海藻の残渣をセルラーゼで処理しても分解されない理由は、残渣中に残っている多糖類がセルラーゼの分解作用を阻害するのではないかと考えた。具体的には、セルラーゼがセルロースを分解するために取り付くための吸着点(以下、「ホール」と言う)を多糖類がブロックすることから、セルラーゼが作用しないものと考えた。そこで、海藻の残渣にホールを作成するために、ホール調整剤を添加して温水処理する工程を実施したところ、セルラーゼが上手く作用することが分かった。 多糖類除去工程を実施した後には、海藻の残渣にホールが形成されているので、セルロース分解工程において、セルラーゼを作用させることで、ほとんど残渣を残すことなくセルロースを分解できる。 セルラーゼとは、エンド−1,4−β−グルカナーゼとも称し、セルロースのβ1→4グルコシド結合を加水分解し、おもにセロビオースを生成する酵素を意味する。セルラーゼは、高等植物、細菌、糸状菌、木材腐朽菌、軟体動物などに存在する。本発明においては、セルラーゼの由来は問われず、上記いずれの生物から抽出・精製したもの、或いは分子生物学的に製造したものを用いることもできる。 なお、海藻から単にグルコースを得るためであれば、必ずしも(1)多糖類抽出工程を経る必要はなく、(2)多糖類除去工程を実施した後に、(3)セルロース分解工程を実施しても良いとも言える。しかしながら、海藻にホール調整剤を添加して温水処理を行い、セルラーゼを作用させることでグルコースを得るだけでは経済性に乏しいために、研究目的としてはともかく、事業としては成立し難いと考える。このため、(1)多糖類抽出工程で得られた多糖類を商品として利用した後に、(2)海藻の残渣を多糖類除去工程にかけて、(3)セルロース分解工程によってグルコースを得るとともに、産業廃棄物を減少させる(あるいは、ほとんど消滅させる)ことで、事業性が確保されると考える。 本発明によれば、従来は産業廃棄物として処理されていた海藻の残渣から、ほとんど廃棄物を残すことなくセルロースを得られる。このセルロースを基にして、従来周知の方法でバイオエタノールを得ることができるので、産業廃棄物の再資源化を図ることができる。海藻から多糖類とセルロース分解物を得るための工程図である。乾燥品1の糖組成分析チャートである。乾燥品2の糖組成分析チャートである。セルラーゼ処理ろ液1のグルコース含量を分析したときのHPLCチャートである。セルラーゼ処理ろ液2のグルコース含量を分析したときのHPLCチャートである。 次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。 図1には、本実施形態の方法を示した。まず、海藻に有機酸を添加する(S100)。このとき、必要であれば、予め海藻を適当な大きさ(例えば、数cm〜10cm程度)に裁断しておいてもよい。本発明によれば、裁断処理は必ずしも必要ではないが、適当な大きさとしておくことにより、各種処理を行いやすくなる。 次に、適当な温度(例えば、80℃〜100℃)で温水処理する(S110)。この処理で、海藻に含まれる多糖類は溶液中に抽出される。 次に、温水処理後の溶液をろ過する(S120)。このろ過処理により、多糖類抽出液(S130)と、有機酸処理残渣(S150)とに分離される。多糖類抽出液は、更に多糖類を精製することにより、高付加価値の多糖類製品を得る(S140)。例えば、海藻のテングサからは、多糖類製品として寒天を得られる。 一方、有機酸処理残渣を乾燥することにより、乾燥品1を得る(S160)。乾燥品1にホール調整剤を添加し(S170)、適当な温度(例えば、80℃〜100℃)で温水処理する(S180)。この温水処理により、有機酸処理残渣に残っていた多糖類が十分に除去される。 次いで、温水処理後の溶液をろ過する(S190)ことで、多糖類除去液(S200)と、ホール調整剤処理残渣(S210)とに分離する。ホール調整剤処理残渣から水を除去する(乾燥する)ことで、乾燥品2を得る(S220)。乾燥品2には、多糖類がほとんど含まれておらず、セルラーゼが作用するホールが調製されている。 次に、乾燥品2にセルラーゼを添加し、適当な温度(約30℃〜60℃)及び時間(約6時間〜12時間)で酵素処理する(S230)。このセルラーゼ処理で、乾燥品2に含まれるセルロースが分解される。セルラーゼとしては、セルロース分解活性を有しているものであればよい。市販品としてのセルラーゼには、不純物として別の酵素活性(例えば、アミラーゼ、プロテアーゼなどの活性)を有しているものがあるが、これらのものも本発明に用いることができる。セルラーゼとしては、特に限定されるものではないが、例えばセルラーゼA「アマノ」3、セルラーゼT「アマノ」4(天野エンザイム製)、スペザイムCP、GC220、マルチフェクトCL、インディエイジ44L、プリマファースト、インディエイジRPW、インディエイジMAX、インディエイジスーパーGXプラス、インディエイジニュートラ、オプチマッシュBG、マルチフェクトA40、ピュラダックスHA(ジェネンコア協和製)、ドリセラーゼKSM、セルロシンAC40、LaminexBG(協和エンザイム製)、GODO−TCF、GODO−TCL、GODO TCDーH、ベッセレックス(合同酒精製)、ソフィターゲン・C−1(タイショーテクノス製)、超耐熱性セルラーゼ(耐熱性酵素研究所)、セルライザー、セルラーゼXL−522、セルチームC、セルライザーHTコンク、セルラーゼXL−531(ナガセケムテックス製)、ベイクザイムXE(日本シイベルヘグナー製)、セルソフト、デニマックス、セルザイム、セルクラスト、セルクラスト1.5LFG、バイオフォードプラス、エネルジェックス(ノボザイムズ製)、セルロシンAC40、セルロシンAL、セルロシンT2、セルロシンME(エイチビィアイ製)、セルラーゼ”オノヅカ”3S、セルラーゼ”オノヅカ”P12S、セルラーゼY−NC、セルラーゼY−2NC、パンセラーゼBR、マセロチーム2A(ヤクルト薬品工業製)、スミチームAC、スミチームC(新日本化学工業製)、エンチロンCM、エンチロンMCH、バイオヒット、バイオスター、フェドラーゼ(洛東化成工業製)などが用いられる。 セルラーゼ処理が終了したら反応物をろ過(S240)し、セルラーゼ処理ろ液(S250)と、セルラーゼ処理残渣(S260)とに分離する。 <試験方法> 1.多糖類抽出工程 50gの乾燥天草を十分に水で戻した後、軽く水切りをした。この天草に3Lの水と25mlの酢酸を加えて、100℃にて1時間煮込んだ。これをザルでこして、多糖類抽出液と有機酸処理残渣とに分離した。多糖類抽出液については、凍結乾燥したところ寒天を得た。一方、有機酸処理残渣については、水分を飛ばして乾燥し、乾燥品1を得た。 2.多糖類除去工程 上記の乾燥品1を1N塩酸溶液に浸漬し、100℃にて4時間加熱した。これをザルでこして、多糖類除去液とホール調整剤処理残渣とに分離した。ホール調整剤処理残渣を水洗いした後、水分を飛ばして乾燥し、乾燥品2を得た。 乾燥品1と乾燥品2のそれぞれについて、糖組成の分析を行った。 糖組成の分析は、次の条件で行った。 カラムは、Shodex Asahipak NH2P−50 4Eを用い、溶離液は、アセトニトリル:水=75:25を使用し、流量を1.0ml/minとした。また、カラム温度は40℃とした。 20mgのサンプルを10mLの2N硫酸液に添加し、沸騰水中で2時間、加熱・分解した。これに飽和塩化バリウム溶液を加えて中和した後、遠心分離して硫酸バリウムを沈降・除去した。上澄液を回収し、乾固するまで減圧乾燥した。この乾固物に10mLのアセトニトリル/水(75/25)液を加え溶解した後、0.2μmのメンブランフィルターでろ過したものを分析に供した。このサンプル液をHPLC装置に注入・分析し、スタンダードとの比較により、糖組成を計算した。 スタンダード(検量線)には、適量(1〜20mg)の標品の糖(試薬)に10mLのアセトニトリル/水(75/25)液を加え溶解した後、0.2μmのメンブランフィルターでろ過したものを用いた。分析結果から、tR(リテンションタイム:保持時間)と検量線を得た。 3.セルロース分解工程 次に、2gの乾燥品1または乾燥品2を0.1%のセルラーゼ溶液に浸漬し、50℃にて8〜10時間に渡ってインキュベーションした。このセルラーゼ処理溶液をザルでろ過し、セルラーゼ処理ろ液とセルラーゼ処理残渣とに分離した。乾燥品1のセルラーゼ処理後の溶液および残渣をそれぞれセルラーゼ処理ろ液1およびセルラーゼ処理残渣1と、乾燥品2のセルラーゼ処理後の溶液および残渣をセルラーゼ処理ろ液2およびセルラーゼ処理残渣2という。セルラーゼ処理ろ液1およびセルラーゼ処理ろ液2のグルコース含量をそれぞれHPLCで分析した。分析方法は、上記と同様であった。 また、セルラーゼ処理残渣1およびセルラーゼ処理残渣2については、乾燥して乾燥品(それぞれ乾燥品3、乾燥品4という)を得た後、それぞれ重量測定した。 <結果および考察> 図2及び図3には、それぞれ乾燥品1と乾燥品2の糖組成を分析したときのHPLCチャートを示した。図2に示すように、乾燥品1には、寒天成分がかなりの割合で残っており、糖組成分析では、寒天の構成糖であるガラクトースが多く含まれていた。一方、図3に示すように、乾燥品2には、ガラクトースはほとんど検出されず、グルコースのみが検出された。1N塩酸による温水処理(沸騰水処理)では、セルロースは分解されないことが知られているので、乾燥品2では、乾燥品1に含まれていた多糖類のほぼ全部が除去され、セルロースのみが残っているものと考えられた。 図4及び図5には、それぞれセルラーゼ処理ろ液1とセルラーゼ処理ろ液2のグルコース含量を分析したときのHPLCチャートを示した。生成したグルコース量は、セルラーゼ処理ろ液1:セルラーゼ処理2=1:1.6となり、ホール調整剤処理後の乾燥品2から得られたグルコースが60%程度多かった。また、乾燥品3の質量は1.3gであり、乾燥品4の質量は1.0gであった。このことから、乾燥品1に比べると、ホール調整剤処理後の乾燥品2の方がセルラーゼによる分解を受けやすく、グルコースを得やすいことが分かった。 再試験として、テングサに酢酸を添加して温水処理し、多糖類抽出液と有機酸処理残渣とに分離し、多糖類抽出液から寒天を得た後(多糖類抽出工程)、残渣を1N塩酸溶液中で4時間沸騰水で処理し(多糖類除去工程)、その残渣をセルラーゼ溶液中に浸漬して50℃で1晩インキュベーションする(セルロース分解工程)という連続した試験を行ったところ、セルロース分解工程後にはほとんど残渣が残らなかった。 このように、海藻から多糖類を含まないセルロースを得られることが分かった。このセルロースを用いることにより、バイオエタノールを製造できる。 テングサは、多糖類成分(寒天)とセルロースとから構成されている。テングサから寒天を製造するには、有機酸の一つである酢酸を添加して加熱処理し、多糖類を抽出する。このとき、残渣として乾燥品1が得られる。従来、乾燥品1は、ほとんどセルロースから構成されていると考えられていたが、セルラーゼでは十分に分解できないことから、産業廃棄物として処理されていた。本実施例によれば、乾燥品1には、無視できない程度の多糖類が含有されていた。この多糖類の影響によりセルラーゼが作用しにくいのではないかと考えた。このため、乾燥品1をホール調整剤の一つである塩酸で処理することにより、多糖類がほとんど除去でき、セルラーゼの分解を受けやすくなることが分かった。 一般に、海藻はセルロースを骨材とし、各海藻に特有の多糖類を有しており、骨材と多糖類とを固着させるタンパク質を備えているように考えられる。従って、海藻から多糖類を十分に除去することにより、セルロース源(すわわちグルコース源)として使用できることを示している。陸上植物では、セルロースを骨材とする一方、骨材間を埋める充填物質がリグニンとなっている。リグニンは、安定性および堅牢性から見ると、固い陸上植物については優れた充填物質であるが、体が硬く折れやすいという問題がある。水中に生息する海藻は、常に水の流れを受けるため、藻体を固くして水流に対抗するよりも、充填物質としてリグニンよりも柔らかい多糖類を選択することにより、水流を受け流すという戦略を取ったように考えられた。 このように本実施形態によれば、従来は産業廃棄物として処理されていた海藻の残渣から、ほとんど廃棄物を残すことなくセルロースを分解できることが分った。このセルロース分解物からは、従来周知の方法でバイオエタノールを得ることができるので、産業廃棄物の再資源化を図ることができる。(1)海藻に有機酸を添加して温水処理することで多糖類を得る多糖類抽出工程を実施した後、(2)無機酸または酸化剤であって海藻の残渣にセルラーゼが作用し得るホールを作製可能なホール調整剤を海藻の残渣に添加して温水処理することで残った多糖類を除去する多糖類除去工程を実施し、(3)セルラーゼを用いてセルロースを分解するセルロース分解工程を実施することを特徴とするセルロース分解物の製造方法。前記海藻が、テングサ、オゴノリ、コットニー、スピノサム、アイリッシュモリス、コンブ、ワカメ、モズク、メカブ、ヒトエグサ、スピルリナからなる群から選択される一つのものであることを特徴とする請求項1に記載のセルロース分解物の製造方法。前記ホール調整剤が、塩酸、硫酸、過酸化水素、次亜塩素酸からなる群から選択される一つのものであることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロース分解物の製造方法。 【課題】 海藻から容易にセルロース分解物を製造できる方法を提供すること。【解決手段】 (1)海藻に有機酸を添加して温水処理することで多糖類を得る多糖類抽出工程を実施した後、(2)無機酸または酸化剤であって海藻の残渣にセルラーゼが作用し得るホールを作製可能なホール調整剤を海藻の残渣に添加して温水処理することで残った多糖類を除去する多糖類除去工程を実施し、(3)セルラーゼを用いてセルロースを分解するセルロース分解工程を実施することを特徴とする海藻の処理方法によって達成できる。この製造方法によれば、従来には産業廃棄物とされていた海藻の残渣からバイオエタノールを供給できるので、再資源化を図れる。【選択図】 図1


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