生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_生体物質固定用基材およびその製造方法
出願番号:2009158090
年次:2011
IPC分類:G01N 33/547


特許情報キャッシュ

川太 規之 神谷 晋司 JP 2011013114 公開特許公報(A) 20110120 2009158090 20090702 生体物質固定用基材およびその製造方法 日本板硝子株式会社 000004008 鎌田 耕一 100107641 天野 浩治 100130605 川太 規之 神谷 晋司 G01N 33/547 20060101AFI20101217BHJP JPG01N33/547 7 OL 9 本発明は、生体物質固定用基材およびその製造方法に関する。 核酸、糖鎖、ペプチド、蛋白質、酵素、抗体、抗原、ウイルス、細菌、細胞等の生体物質は、診断、治療、培養、物質生産等のために様々な担体(生体物質固定用基材)に固定されて用いられる。担体としては、ガラス、シリコンウェーハ、樹脂、セラミックス、金属等の基材に、合成高分子、細胞接着性蛋白、シランカップリング剤、貴金属等をコーティングしたものが知られている。 生体物質を固定化した担体を用いた分析、測定等には、発光、蛍光、吸光、透過、反射、表面プラズモン共鳴などを利用する、光を用いた測定が多く行われている。このような測定に対しては、シリコンウェーハ、セラミックス、金属基材を用いた担体、および貴金属をコーティングした担体は、光透過性の面から不向きである。また、樹脂基材の中には透明なものもあるが、透過率が不十分であり、高感度(高倍率)の測定には不向きである。さらに、樹脂基材は、蛍光顕微鏡観察では、樹脂由来の自家蛍光によって蛍光観察が妨げられるという問題もある。以上のことから、光を用いた生体物質の分析および測定には、光透過性の高いガラス基材が好適であり、例えば、特に高倍率顕微鏡観察においては、対物レンズ特性に合致したカバーガラス上で細胞を培養し、そのままそれを顕微鏡観察に供するということが行われている。 ガラス基材を用いた担体への生体物質の固定化には、ガラス基材上へ生体物質を直接物理吸着させることも可能であるが、この場合、ガラスと生体物質間の結合が弱く安定性に乏しい。そこで、ガラス基材の表面に、アミノ基やカルボキシル基等の官能基をシランカップリング剤により導入し、これらの官能基と生体物質との間で安定な共有結合を形成させて、生体物質を固定することが行われている。 ガラス基材には、安価であることからソーダライムガラス等のアルカリ成分を含有するガラスが一般に用いられている。しかし、このアルカリ成分がガラスから溶出し、シロキサン結合またはガラス−シランカップリング剤間の結合を切断していまい、固定化された生体物質が基材から脱離するという問題があった。 そこで、特許文献1では、アルカリ成分の溶出を抑制するために、ガラス基板表面を、ゾルゲル法によりSiO2層などの表面活性層でコーティングした生体物質固定用基板が提案されている。しかし、特許文献1に記載の生体物質固定用基板では、生体物質の固定化の安定性は向上しているものの、未だ改善の余地があった。特開2003−177129号公報 本発明は、アルカリ成分を含有するガラス基材を用い、アルカリ成分の溶出が抑制され、安定して生体物質を固定することが可能な生体物質固定用基材を提供することを目的とする。 上記課題を解決した本発明は、アルカリ成分を含有するガラス基材、 前記ガラス基材上に形成されたSiO2スパッタ膜、および 前記スパッタ膜と結合したシランカップリング剤層を含む生体物質固定用基材である。 本発明はまた、別の側面から、アルカリ成分を含有するガラス基材の表面にSiO2をスパッタリングして、SiO2スパッタ膜を形成する工程、および 得られたSiO2スパッタ膜の表面をシランカップリング剤で処理する工程を含む生体物質固定用基材の製造方法である。 本発明によれば、ガラス基材からのアルカリ成分の溶出が抑制されるため、長期間安定に生体物質を基材に固定することができる。従って、例えば、細胞培養時には、細胞をより多く増殖させることができる。本発明の生体物質固定用基材は、光透過性に優れるため、光を用いた生体物質の分析および測定に好適である。 本発明においては、光学特性の観点から、ガラス基材が用いられ、中でも、アルカリ成分を含有するガラス基材が用いられる。アルカリ成分としては、Li、Na、K等が挙げられ、これらはガラス中にLi2O、Na2O、K2Oとして含まれる。アルカリ成分を含有するガラスとしては、ソーダライムガラス、ほう珪酸塩ガラス、アルミノほう珪酸塩ガラス、アルミノ珪酸塩ガラス等が挙げられ、コスト面からはソーダライムガラスが好ましく、化学的耐久性の面からはほう珪酸ガラスが好ましく、顕微鏡観察などの光学面からは屈折率が1.5235であるほう珪酸ガラスが好ましい。 ガラス基材の形状としては特に制限がなく、生体物質の取扱い方法、分析方法および測定方法に応じて適宜決定すればよく、汎用性およびSiO2スパッタリングの容易さの観点から、好ましくは板状であり、分析の容易さの観点から、より好ましくはカバーガラスの形状である。 本発明においては、当該ガラス基材上にはSiO2スパッタ膜が形成される。SiO2膜は、透過率等の光学特性に優れるため、光を用いた生体物質の分析および測定には非常に好適である。従来の技術では、アルカリ成分の溶出を抑制するために、ゾルゲル法により、SiO2膜(パッシベーション膜)が形成されていた。しかし、ゾルゲル法により形成されたSiO2膜は、SiO2のネットワーク構造の緻密さに欠け、アルカリ成分が膜を透過する余地が残っていた。一方、スパッタリングにより形成されたSiO2膜は、SiO2のネットワーク構造が緻密に形成されているため、アルカリ成分の膜の透過をより抑制することができる。その結果、アルカリ成分による、シロキサン結合またはガラス−シランカップリング剤間の結合の切断がより起こりにくくなる。 SiO2スパッタ膜の厚さとしては、アルカリ成分の溶出が抑制できる限り特に制限はない。本発明においては、ゾルゲル法により形成されたSiO2膜の厚さよりも小さい膜厚で、高いアルカリ成分の溶出抑制能を発揮することができ、SiO2スパッタ膜の厚さとしては、1〜100nmが好ましく、10〜30nmがより好ましい。膜厚が小さすぎると、アルカリ成分の溶出抑制効果が十分に得られないおそれがある。一方、膜厚が大きすぎると、基材との屈折率差により光学的に悪影響を及ぼす場合がある。 SiO2スパッタ膜は、少なくともガラス基材表面の生体物質の分析または測定を行う領域に形成されていればよい。 本発明の生体物質固定用基材は、前記スパッタ膜と結合したシランカップリング剤層を有する。シランカップリング剤は、一分子中に、有機基等と反応または相互作用が可能な官能基と、加水分解性基とを有する含ケイ素化合物であり、一般的には、Y−R−Si−Z3で表される(式中、Yは、有機基等と反応または相互作用が可能な官能基であり、Rは2価の炭化水素基であり、Zは加水分解性基であり、Zの一部が低級アルキル基である場合もある)。シランカップリング剤の加水分解性基と、SiO2スパッタ膜の表面水酸基との反応により形成された共有結合を介して、シランカップリング剤は、前記スパッタ膜に結合する。あるいは、シランカップリング剤の加水分解性基が加水分解して生成した水酸基と、SiO2スパッタ膜の表面水酸基とが形成する水素結合を介して、シランカップリング剤は、前記スパッタ膜に結合する。 シランカップリング剤の、有機基等と反応または相互作用が可能な官能基としては、生体物質と反応または相互作用可能である官能基、あるいは生体物質と接着性または反応性を有する物質と反応または相互作用可能である官能基である限り、特に制限はない。当該官能基の例としては、アミノ基、SH基、アルデヒド基、カルボキシル基、ハロゲン原子(例、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子)等が挙げられる。シランカップリング剤の加水分解性基としては、アルコキシル基(例、メトキシ基、エトキシ基など)が挙げられる。 シランカップリング剤の具体例としては、アミノ基を有するものとして、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルメチルジメトキシシラン、2−アミノエチルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−アミノブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノブチルメチルジエトキシシラン、2−アミノウンデシルトリメトキシシラン、2−アミノウンデシルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチルアミノプロピル)メチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチルアミノプロピル)メチルジエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリエトキシシランなど;SH基を有するものとして、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなど;アルデヒド基を有するものとして、4−トリメトキシシリルブタナール、4−トリエトキシシリルブタナールなど;カルボキシル基を有するものとして、カルボキシメチルトリメトキシシラン、カルボキシメチルトリエトキシシランなど;ヨウ素原子を有するものとして、ヨードメチルトリメトキシシラン、ヨードメチルトリエトキシシラン、ヨードメチルメチルジメトキシシラン、ヨードメチルメチルジエトキシシラン、2−ヨードエチルトリメトキシシラン、2−ヨードエチルトリエトキシシラン、2−ヨードエチルメチルジメトキシシラン、2−ヨードエチルメチルジエトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、3−ヨードプロピルトリエトキシシラン、3−ヨードプロピルメチルジメトキシシラン、3−ヨードプロピルメチルジエトキシシラン、n−ヨードブチルトリメトキシシラン、n−ヨードブチルトリエトキシシラン、n−ヨードブチルメチルジメトキシシラン、n−ヨードブチルメチルジエトキシシラン、(p−ヨードメチル)フェニルトリメトキシシラン、(p−ヨードメチル)フェニルトリエトキシシラン、(p−ヨードメチル)フェニルメチルジメトキシシラン、(p−ヨードメチル)フェニルメチルジエトキシシラン、(m−ヨードメチル)フェニルトリメトキシシラン、(m−ヨードメチル)フェニルトリエトキシシラン、(m−ヨードメチル)フェニルメチルジメトキシシラン、(m−ヨードメチル)フェニルメチルジエトキシシラン、〔(ヨードメチル)フェニルメチル〕トリメトキシシラン、〔(ヨードメチル)フェニルメチル〕トリエトキシシラン、〔(ヨードメチル)フェニルメチル〕メチルジメトキシシラン、〔(ヨードメチル)フェニルメチル〕メチルジエトキシシラン、〔(ヨードメチル)フェニルエチル〕トリメトキシシラン、〔(ヨードメチル)フェニルエチル〕トリエトキシシラン、〔(ヨードメチル)フェニルエチル〕メチルジメトキシシラン、〔(ヨードメチル)フェニルエチル〕メチルジエトキシシラン、2−(ヨードメチル)アリルトリメトキシシラン、2−(ヨードメチル)アリルトリエトキシシラン、2−(ヨードメチル)アリルメチルジメトキシシラン、2−(ヨードメチル)アリルメチルジエトキシシラン、2−(4−ヨードスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−ヨードスルホニルフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(4−ヨードスルホニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(4−ヨードスルホニルフェニル)エチルメチルジエトキシシラン、3−(4−ヨードスルホニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(4−ヨードスルホニルフェニル)プロピルトリエトキシシラン、3−(4−ヨードスルホニルフェニル)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(4−ヨードスルホニルフェニル)プロピルメチルジエトキシシランなど;臭素原子を有するものとして、ブロモメチルトリメトキシシラン、ブロモメチルトリエトキシシラン、ブロモメチルメチルジメトキシシラン、ブロモメチルメチルジエトキシシラン、2−ブロモエチルトリメトキシシラン、2−ブロモエチルトリエトキシシラン、2−ブロモエチルメチルジメトキシシラン、2−ブロモエチルメチルジエトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−ブロモプロピルメチルジメトキシシラン、3−ブロモプロピルメチルジエトキシシラン、n−ブロモブチルトリメトキシシラン、n−ブロモブチルトリエトキシシラン、n−ブロモブチルメチルジメトキシシラン、n−ブロモブチルメチルジエトキシシラン、(p−ブロモメチル)フェニルトリメトキシシラン、(p−ブロモメチル)フェニルトリエトキシシラン、(p−ブロモメチル)フェニルメチルジメトキシシラン、(p−ブロモメチル)フェニルメチルジエトキシシラン、(m−ブロモメチル)フェニルトリメトキシシラン、(m−ブロモメチル)フェニルトリエトキシシラン、(m−ブロモメチル)フェニルメチルジメトキシシラン、(m−ブロモメチル)フェニルメチルジエトキシシラン、〔(ブロモメチル)フェニルメチル〕トリメトキシシラン、〔(ブロモメチル)フェニルメチル〕トリエトキシシラン、〔(ブロモメチル)フェニルメチル〕メチルジメトキシシラン、〔(ブロモメチル)フェニルメチル〕メチルジエトキシシラン、〔(ブロモメチル)フェニルエチル〕トリメトキシシラン、〔(ブロモメチル)フェニルエチル〕トリエトキシシラン、〔(ブロモメチル)フェニルエチル〕メチルジメトキシシラン、〔(ブロモメチル)フェニルエチル〕メチルジエトキシシラン、2−(ブロモメチル)アリルトリメトキシシラン、2−(ブロモメチル)アリルトリエトキシシラン、2−(ブロモメチル)アリルメチルジメトキシシラン、2−(ブロモメチル)アリルメチルジエトキシシラン、2−(4−ブロモスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−ブロモスルホニルフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(4−ブロモスルホニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(4−ブロモスルホニルフェニル)エチルメチルジエトキシシラン、3−(4−ブロモスルホニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(4−ブロモスルホニルフェニル)プロピルトリエトキシシラン、3−(4−ブロモスルホニルフェニル)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(4−ブロモスルホニルフェニル)プロピルメチルジエトキシシランなど;塩素原子を有するものとして、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン、2−クロロエチルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、n−クロロブチルトリメトキシシラン、n−クロロブチルトリエトキシシラン、n−クロロブチルメチルジメトキシシラン、n−クロロブチルメチルジエトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリエトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルメチルジメトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルメチルジエトキシシラン、(m−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、(m−クロロメチル)フェニルトリエトキシシラン、(m−クロロメチル)フェニルメチルジメトキシシラン、(m−クロロメチル)フェニルメチルジエトキシシラン、〔(クロロメチル)フェニルメチル〕トリメトキシシラン、〔(クロロメチル)フェニルメチル〕トリエトキシシラン、〔(クロロメチル)フェニルメチル〕メチルジメトキシシラン、〔(クロロメチル)フェニルメチル〕メチルジエトキシシラン、〔(クロロメチル)フェニルエチル〕トリメトキシシラン、〔(クロロメチル)フェニルエチル〕トリエトキシシラン、〔(クロロメチル)フェニルエチル〕メチルジメトキシシラン、〔(クロロメチル)フェニルエチル〕メチルジエトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリエトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルメチルジメトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルメチルジエトキシシラン、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルメチルジエトキシシラン、3−(4−クロロスルホニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(4−クロロスルホニルフェニル)プロピルトリエトキシシラン、3−(4−クロロスルホニルフェニル)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(4−クロロスルホニルフェニル)プロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。 本発明の生体物質固定用基材において、SH基を有する化合物を固定可能な基材は有利な実施態様の一つである。この実施態様では、SH基を有する蛋白質等のSH基を有する生体物質を固定することができ、また、生体物質を接着可能なチオール化合物を固定し、観察対象の生体物質の接着用の層を形成することもできる。 よって、有利な実施態様においては、シランカップリング剤層のシランカップリング剤成分は、SH基と反応性を有する官能基を含む。SH基と反応性を有する官能基とは、SH基と反応して共有結合(例えば、ジスルフィド結合またはチオエーテル結合)を生じ得る官能基を指す。SH基と反応性を有する官能基としては、例えば、ハロゲン原子(好適には、ハロゲン原子は、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロアセチル基、酸ハライド基等の形態で含まれる)、ケト基、アルデヒド基、エポキシ基、マレイミド基などが挙げられる。なかでも、入手の容易さの観点からは、ハロゲン原子が好ましく、反応性の観点から、臭素原子、ヨウ素原子がさらに好ましい。ハロゲン原子を含むシランカップリング剤については上記例示した通りである。なお、この実施形態の生体物質固定用基材は、光学特性に特に優れており、様々な形状の基材に適用可能であるという利点を有する。 あるいは、別の有利な実施態様においては、シランカップリング剤層のシランカップリング剤成分が、アミノ基および/またはSH基を含み、当該アミノ基および/またはSH基に貴金属コロイドが結合する。貴金属コロイドの例としては、金コロイド、白金コロイド、銀コロイド等が挙げられ、アミノ基および/またはSH基と結合できれば特にこれらに限定されないが、細胞毒性が無い金コロイドが好適である。アミノ基およびSH基を有するシランカップリング剤については上記例示した通りである。アミノ基は、正電荷を有するために、貴金属コロイドを保持することが可能である。SH基は、貴金属と反応して結合を形成することにより、貴金属コロイドを保持することが可能である。そして、貴金属コロイドは、SH基と高い反応を有する。このため、この実施形態の生体物質固定用基材は、SH基との反応性が特に優れたものとなる 本発明の生体物質固定用基材は、例えば、アルカリ成分を含有するガラス基材の表面にSiO2をスパッタリングして、SiO2スパッタ膜を形成する工程(スパッタリング工程)、および得られたSiO2スパッタ膜の表面をシランカップリング剤で処理する工程(シランカップリング剤処理工程)を実施して製造することができる。 ガラス基材にSiO2をスパッタリングする方法は公知であり、スパッタリング工程は、公知方法に準じて行うことができ、例えば、SiO2をターゲットに用い、RFマグネトロンスパッタリング法により行うことができる。スパッタリング条件は、所望の厚さのSiO2スパッタ膜が得られるように適宜設定すればよい。 シランカップリング剤処理工程は、公知方法に準じて行うことができる。 本発明の生体物質固定用基材では、ガラス基材からのアルカリ成分の溶出が抑制されているため、アルカリ成分による、シロキサン結合またはガラス−シランカップリング剤間の結合の切断がより起こりにくい。また、溶出したアルカリ成分による生体物質への悪影響が低減されている。従って、長期間安定に生体物質を基材に固定することができる。よって、例えば、細胞培養時には、細胞をより多く増殖させることができる。また、本発明の生体物質固定用基材は、光の透過性に優れるため、光を用いた生体物質の分析および測定に好適であり、カバーガラスとして構成することもできる。カバーガラスを構成するには、ガラス基材に、カバーガラスに適したもの(例、ショット社製D263、コーニング社製マイクロシート0211等)を選択すればよい。 以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。参考例 SiO2膜の形成法の違いによるNa溶出量の評価 まず、SiO2膜の形成方法の違いによるアルカリ成分(Na)溶出抑制効果を、シランカップリング剤層を設けていない基材を用いて評価した。(1)スパッタリング法によるSiO2膜の形成 水酸化カリウム水溶液および純水により洗浄した清浄なガラス基板上に、SiO2ターゲットを用いてRFマグネトロンスパッタリング法にてSiO2膜を形成した。成膜条件として、背圧は3.0×10-4Pa以下、成膜温度は室温、スパッタ圧力は0.4Pa、アルゴンガス流量は95sccm、酸素ガス流量は5sccm、入射電力は1.5kWとした。(2)ゾルゲル法によるSiO2膜の形成 水酸化カリウム水溶液および純水により洗浄した清浄なガラス基板に、ゾルゲルコーティング液をフローコートした。ゾルゲルコーティング溶液は、テトラエチルオルトシリケート4gを、エタノール40gおよび水2.6gの混合溶媒に加えた後、さらに塩酸0.25gを添加して調製した。フローコートは、前記ガラス基板を垂直に立て掛け、ガラス基板上部に前記ゾルゲルコーティング溶液1ml程度を垂らす事により行った。コート後、200℃で10分間焼成して、ガラス基板上にSiO2膜を形成した。(3)膜厚およびNa溶出量測定 各ガラス基板上に形成したSiO2膜厚は、接触式段差計にて測定した。各ガラス基板からのNa溶出量は、純水30mlをSiO2膜(SiO2膜がない試料についてはガラス基板)に接触面積28cm2で接触させ、その状態で温度95℃で24時間保持し、純水に溶出したNa量を炎光光度法により定量した。 表1より、スパッタリングにより形成したSiO2膜によれば、ゾルゲル法により形成したSiO2膜に比べ、小さい膜厚でNaの溶出を驚くほどに抑制できることがわかる。 次に、シランカップリング剤層を設けた生体物質固定用基材を作製して、細胞培養実験を行った。実施例1 参考例(1)と同様にして、ガラス基板上にSiO2膜を作製した。得られたガラス基板を、0.5wt%ヨードプロピルトリメトキシシランエタノール溶液に浸漬することにより、SiO2膜上にシランカップリング剤層を設けた。こうして実施例1の生体物質固定用基材を得た。比較例1 参考例(2)と同様にして、ガラス基板上にSiO2膜を作製した。得られたガラス基板を、0.5wt%ヨードプロピルトリメトキシシランエタノール溶液に浸漬することにより、SiO2膜上にシランカップリング剤層を設けた。こうして比較例1の生体物質固定用基材を得た。比較例2 水酸化カリウム水溶液および純水により洗浄した清浄なガラス基板を、0.5wt%ヨードプロピルトリメトキシシランエタノール溶液に浸漬することにより、ガラス基板上にシランカップリング剤層を設けた。こうして比較例2の生体物質固定用基材を得た。 上記作製した実施例1並びに比較例1および2の生体物質固定用基材を15mm×15mmの大きさに切断し、ウェル数12の樹脂製マイクロウェルプレートのウェルにコーティング面が上となるように入れ、70%エタノールで滅菌を行った。生体物質固定用基材が入った各ウェルに、培地で1×104個/mlの濃度に調整したNIH3T3マウス繊維芽細胞を播種し、37℃、5%CO2の条件下で培養した。培養後11日目に生体物質固定用基材をPBSで洗浄し、接着していない細胞を除いた後、DAPIで細胞の核染色を行った。20倍の対物レンズの蛍光顕微鏡でこれを観察し、同一視野面積内の細胞数を計測した。結果を表2に示す。 ガラス基材よりアルカリ成分が溶出すると、アルカリ成分によりシロキサン結合またはガラス−シランカップリング剤間の結合の切断が起こり、基材から細胞の一部がシランカップリング剤ごと脱離する。また、溶出したアルカリ成分によって、細胞の活性が低下し、細胞が死滅などにより基材から脱離する。よって、アルカリ成分の溶出が多いほど、培養される細胞数は少なくなる。表2の結果では、細胞数は、実施例1>比較例1>比較例2という順に多くなっており、本発明の生体物質固定用基材によれば、アルカリ成分の溶出が少なく、多くの細胞を培養できることがわかる。 アルカリ成分を含有するガラス基材、 前記ガラス基材上に形成されたSiO2スパッタ膜、および 前記スパッタ膜と結合したシランカップリング剤層を含む生体物質固定用基材。 前記スパッタ膜の厚さが1〜100nmである請求項1に記載の生体物質固定用基材。 前記シランカップリング剤層のシランカップリング剤成分が、SH基と反応性を有する官能基を含む請求項1または2に記載の生体物質固定用基材。 前記SH基と反応性を有する官能基が、ハロゲン原子である請求項3に記載の生体物質固定用基材。 前記シランカップリング剤層のシランカップリング剤成分が、アミノ基および/またはSH基を含み、当該アミノ基および/またはSH基に貴金属コロイドが結合している請求項1または2に記載の生体物質固定用基材。 カバーガラスである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体物質固定用基材。 アルカリ成分を含有するガラス基材の表面にSiO2をスパッタリングして、SiO2スパッタ膜を形成する工程、および 得られたSiO2スパッタ膜の表面をシランカップリング剤で処理する工程を含む生体物質固定用基材の製造方法。 【課題】アルカリ成分を含有するガラス基材を用い、アルカリ成分の溶出が抑制され、安定して生体物質を固定することが可能な生体物質固定用基材を提供する。【解決手段】アルカリ成分を含有するガラス基材、前記ガラス基材上に形成されたSiO2スパッタ膜、および前記スパッタ膜と結合したシランカップリング剤層を含む生体物質固定用基材とする。当該生体物質固定用基材は、アルカリ成分を含有するガラス基材の表面にSiO2をスパッタリングして、SiO2スパッタ膜を形成する工程、および得られたSiO2スパッタ膜の表面をシランカップリング剤で処理する工程を実施して製造することができる。【選択図】なし


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