| タイトル: | 公開特許公報(A)_ウレアーゼ活性阻害剤 |
| 出願番号: | 2009148850 |
| 年次: | 2011 |
| IPC分類: | A61K 36/18,A61P 43/00,A61P 1/04 |
岸 正孝 坂井田 勉 JP 2011006333 公開特許公報(A) 20110113 2009148850 20090623 ウレアーゼ活性阻害剤 日本メナード化粧品株式会社 592262543 岸 正孝 坂井田 勉 A61K 36/18 20060101AFI20101210BHJP A61P 43/00 20060101ALI20101210BHJP A61P 1/04 20060101ALI20101210BHJP JPA61K35/78 CA61P43/00 111A61P1/04 5 OL 7 4C088 4C088AB12 4C088NA14 4C088ZA68 4C088ZC42 本発明は、ムクロジ科植物の抽出物を含有することを特徴とするウレアーゼ活性阻害剤に関し、更に詳細には、医薬品や食品添加用剤として主にウレアーゼを阻害し、ウレアーゼに起因する疾病を予防または治療することのできるウレアーゼ阻害剤に関するものである。 ウレアーゼは尿素の加水分解を触媒する酵素であり、これにより尿素は二酸化炭素とアンモニアとなる。このウレアーゼは細菌、糸状菌等の微生物、ナタ豆等の高等植物、下等動物、ヒト等の哺乳類の口腔内、胃粘膜、赤血球等から見出されている。 この微生物で見出されているウレアーゼは、当該微生物由来のものであるが、例えば、動物等で見出されているウレアーゼも、動物等に寄生している微生物由来のものであることが多い。そして、ウレアーゼを産生する微生物の中には、宿主である動物等の疾病の原因の一つとなるものもある。 例えば、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、「ピロリ菌」と記す)は胃炎または胃潰瘍患者の胃生検材料中に高率で検出されると報告されており(非特許文献1)、胃炎や胃もしくは十二指腸潰瘍の発症への関与が次第と明らかにされてきているが、このピロリ菌もウレアーゼを産生することが知られている。Wallen et.al.,Lancet,1273-1275,1993 このピロリ菌が胃粘膜細胞を傷害するメカニズムについては、従来より、種々研究がなされており、明らかにされてきている。即ち、その一つのメカニズムとして、ピロリ菌は他の大腸菌と同様に口から入って胃に到達し、鞭毛を使って粘液層を移動して胃粘膜層に至り、胃粘膜細胞に接着する。次いで、ここで自ら産生するウレアーゼにより尿素を分解し、生じるアンモニアにて胃酸を中和し、好ましい生活環境を整備して増殖を開始すると同時に、このアンモニア自体が胃粘膜を攻撃して障害を引き起こすことが知られている。 このように、ピロリ菌の産生するウレアーゼは、消化管関係の疾患の他に、いくつかの疾患の原因となるものであるため、そのウレアーゼの抑制が求められている。 このようなウレアーゼを産生する微生物の増殖を抑制するために、従来は抗菌剤が主に用いられていた。この抗菌剤としては、主に抗生物質の利用が試みられているが、除菌療法は比較的多量の薬剤の投与が必要となるため、その副作用、特に耐性菌の出現は無視できない問題となる。 一方、微生物を殺菌するのではなく、微生物の産生するウレアーゼの活性を阻害することも検討されている。このために使用される薬剤としては、ヒドロキシ尿素や、ヒドロキサム酸誘導体、ランプラゾールおよびその誘導体が知られているが(特許文献1)、重篤な副作用を有するものもあり、より安全性の高い薬剤が求められている。特開平7−118153号公報 そこで本発明の目的は、安全性が高い天然物由来の物質の中から、微生物の産生するウレアーゼの活性を十分に阻害することができる物質を見出し、提供することにある。 本発明者は、上記課題について鋭意研究した結果、ムクロジ科植物の抽出物、特に、レイシ抽出物およびランブータン抽出物に強いウレアーゼ活性阻害効果を見出し、本発明を完成するに至った。 また、本発明はムクロジ科植物であるレイシおよび/またはランブータンの抽出物を含有することを特徴とする医薬品を提供するものである。 本発明のウレアーゼ活性阻害剤の原料である“レイシ”は、ムクロジ科の常緑高木の果樹で、学名をLitchi chinensis、和名をレイシ(茘枝)あるいはライチといい、中国南部原産で熱帯・亜熱帯地方において栽培されている。また、“ランブータン”は、レイシと同じムクロジ科で、学名をNephelium lappaceumといい、東南アジア原産で中型から大型の熱帯の果樹である。本発明に用いるレイシ抽出物およびランブータン抽出物は市販品を利用することができる。レイシ抽出物およびランブータンの抽出方法としては、例えば上記植物を細切したものを、溶媒で抽出する方法が挙げられる。溶媒としては、水、アルコール類(例えば、メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール、あるいはプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール)、アセトンなどのケトン類、エチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステルなどのエステル類、キシレン、ベンゼン、クロロホルムなどの有機溶媒を、単独あるいは2種類以上を任意に組み合わせて使用することができ、また、各々の溶媒抽出物が組み合わされた状態でも使用できる。使用部位については、果実、果皮や種子などが挙げられるが、レイシは種子が、ランブータンは果皮が好ましい。 本発明に係るレイシやランブータン抽出物の摂取量は、形態、症状、年齢、体重などによって異なるが、1〜1000mg/日、好ましくは5〜200mg/日である。 本発明に係るウレアーゼ活性阻害剤の形態は特に問わない。例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉末剤、トローチ、飲料、ガム、チョコレート、キャンディー、麺、パン、ケーキ、ビスケット、缶詰、レトルト食品、畜肉食品、水産練食品、マーガリン、バター、マヨネーズなどの通常の医薬品、医薬部外品、食品の形態を採用することができる。 本発明に係るウレアーゼ活性阻害剤には、発明の効果を損なわない範囲において、生薬、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの他に、乳糖、デンプン、セルロース、マルチトール、デキストリンなどの賦形剤、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤、ゼラチン、プルラン、シェラック、ツェインなどの被膜剤、小麦胚芽油、米胚芽油、サフラワー油などの油脂類、ミツロウ、米糠ロウ、カルナウバロウなどのワックス類、ショ糖、ブドウ糖、果糖、ステビア、サッカリン、スクラロースなどの甘味料、並びにクエン酸、リンゴ酸、グルコン酸などの酸味料などを適宜配合することができる。生薬としては、高麗人参、アメリカ人参、田七人参、霊芝、プロポリス、アガリクス、ブルーベリー、イチョウ葉及びその抽出物などが挙げられる。ビタミンとしては、ビタミンD、Kなどの油溶性ビタミン、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンなどの水溶性ビタミンが挙げられる。 本発明のウレアーゼ活性阻害剤は、ウレアーゼを産生する微生物、例えばピロリ菌等が産生するウレアーゼの活性を阻害し、これらに起因する疾患や病変を予防することができるものである。 また、それに留まらず、例えば胃中のピロリ菌の除菌剤としても作用する。即ち、ピロリ菌はウレアーゼ活性により尿素をアンモニアに代え、これにより胃酸中の塩酸を中和して胃中で生存しているが、このウレアーゼ活性を阻害するため、ピロリ菌がアンモニアにより塩酸を中和できなくなり、結果的に死滅するのである。 このような作用により、本発明のウレアーゼ活性阻害剤は、特にウレアーゼを産生する微生物が原因の一つとなっている疾病の予防剤や治療剤、例えば、ピロリ菌等が原因の一つとなっている胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍等の疾病の予防剤や治療剤となり得るのである。 以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。 レイシの種子100gに50%(v/v)エタノール500mLを加え加熱抽出する。抽出後、ろ過し、得られたろ液を濃縮後凍結乾燥したものをレイシ種子の50%エタノール抽出物として使用した。 レイシの種子100gに100%エタノール500mLを加え加熱抽出する。抽出後、ろ過し、得られたろ液を濃縮後凍結乾燥したものをレイシ種子の100%エタノール抽出物として使用した。 レイシの種子100gに蒸留水500mLを加え加熱抽出する。抽出後、ろ過し、得られたろ液を濃縮後凍結乾燥したものをレイシ種子の熱水抽出物として使用した。 ランブータンの果皮100gに50%(v/v)エタノール500mLを加え加熱抽出する。抽出後、ろ過し、得られたろ液を濃縮後凍結乾燥したものをランブータン果皮の50%エタノール抽出物として使用した。 ランブータンの果皮100gに100%エタノール500mLを加え加熱抽出する。抽出後、ろ過し、得られたろ液を濃縮後凍結乾燥したものをランブータン果皮の100%エタノール抽出物として使用した。 ランブータンの果皮100gに蒸留水500mLを加え加熱抽出する。抽出後、ろ過し、得られたろ液を濃縮後凍結乾燥したものをランブータン果皮の熱水抽出物として使用した。 処方例1 錠菓 配合量(g)1.レイシ種子の50%エタノール抽出物 1.02.砂糖 79.83.グルコース 19.04.ショ糖脂肪酸エステル 0.2 <製法>成分1〜3に70%(v/v)エタノールを適量加えて練和し、押出し造粒した後に乾燥して顆粒を得る。成分4を加えて打錠成形し、1gの錠菓を得る。当該錠菓を1日3錠摂取することで、レイシ種子の50%エタノール抽出物を30mg/日摂取できる。 処方例2 錠菓 配合量(g)1.ランブータン果皮の熱水抽出物 3.02.砂糖 77.83.グルコース 19.04.ショ糖脂肪酸エステル 0.2 <製法>成分1〜3に70%(v/v)エタノールを適量加えて練和し、押出し造粒した後に乾燥して顆粒を得る。成分4を加えて打錠成形し、1gの錠菓を得る。当該錠菓を1日3錠摂取することで、ランブータン果皮の熱水抽出物を90mg/日摂取できる。 処方例3 キャンディー 配合量(g)1.レイシ種子の100%エタノール抽出物 2.02.マルチトール 70.03.デンプン糖化物 28.0 <製法> 成分1〜3を120〜170℃で加熱溶解し、金型にて固化させ、3gの飴を得る。当該飴を1日3個摂取することで、レイシ種子の100%エタノール抽出物を180mg/日摂取できる。 処方例4 キャンディー 配合量(g)1.ランブータン果皮の50%エタノール抽出物 1.02.マルチトール 70.03.デンプン糖化物 29.0 <製法> 成分1〜3を120〜170℃で加熱溶解し、金型にて固化させ、3gの飴を得る。当該飴を1日3個摂取することで、ランブータン果皮の50%エタノール抽出物を90mg/日摂取できる。 処方例5 顆粒剤 配合量(g)1.レイシ種子の熱水抽出物 3.02.乳糖 82.03.セルロース 15.0 <製法> 成分1〜3に70%(v/v)エタノールを適量加えて練和して押出し造粒し、乾燥して顆粒剤を得る。当該顆粒剤は、1回1gずつ1日3回摂取することで、レイシ種子の熱水抽出物を90mg/日摂取できる。 処方例6 顆粒剤 配合量(g)1.ランブータン果皮の100%エタノール抽出物 1.02.乳糖 84.03.セルロース 15.0 <製法> 成分1〜3に70%(v/v)エタノールを適量加えて練和して押出し造粒し、乾燥して顆粒剤を得る。当該顆粒剤は、1回1gずつ1日3回摂取することで、レイシ種子の熱水抽出物を30mg/日摂取できる。 処方例7 飲料 配合量(g)1.レイシ種子の50%エタノール抽出物 1.02.ショ糖 60.03.クエン酸 7.04.香料 適量5.精製水で全量を1000mLとする。<製法> 成分5に成分1〜4を加え、撹拌溶解して濾過し、加熱殺菌して1000mLとし、これを50mLガラス瓶に充填する。当該飲料は、1日1本摂取することでレイシ種子の50%エタノール抽出物を50mg/日摂取できる。 処方例8 飲料 配合量(g)1.ランブータン果皮の50%エタノール抽出物 1.02.ショ糖 60.03.クエン酸 7.04.香料 適量5.精製水で全量を1000mLとする。<製法> 成分5に成分1〜4を加え、撹拌溶解して濾過し、加熱殺菌して1000mLとし、これを50mLガラス瓶に充填する。当該飲料は、1日1本摂取することでランブータン果皮の50%エタノール抽出物を50mg/日摂取できる。レイシ種子抽出物およびランブータン果皮抽出物のウレアーゼ活性阻害効果 実施例1〜6で得られたレイシ種子抽出物およびランブータン果皮抽出物のウレアーゼ活性阻害効果を、ナタ豆由来ウレアーゼを用いて試験した。即ち、エッペンチューブに100mMのリン酸緩衝液に溶解した諸種の濃度の試料溶液20μL、100mMのリン酸緩衝液に溶解したナタ豆由来ウレアーゼ(シグマ製)溶液(0.8U/mL)20μLを添加し、37℃で15分間静置反応させた。次いで、リン酸緩衝液に溶解した60mMの尿素溶液40μLを添加し、37℃で15分間静置反応させた後に、1N硫酸を20μL添加することにより反応を停止させた。得られた反応液に、溶液A(フェノール5.0g及びニトロプルシドナトリウム25mgを蒸留水500mLに溶解させたもの)500μLと溶液B(300mLの蒸留水にリン酸水素二ナトリウム2.2g及び水酸化ナトリウム2.5gを溶解し、有効塩素10%以上の次亜塩素酸ナトリウム3.0mLを添加し、蒸留水で500mLとしたもの)500μLを添加し、65℃で20分間反応させた。反応後、630nmにおける吸光度を測定した。また、対照として、試料非添加コントロールについても同様に測定した。なお、阻害活性(%)は以下の式にて算出した。 (式1) 阻害活性(%)=(対照群の吸光度−試料添加群の吸光度)/対照群の吸光度×100 表1に示すように、レイシ種子抽出物およびランブータン果皮抽出物はウレアーゼ活性阻害効果を示した。 本発明のウレアーゼ活性阻害剤は、微生物由来のウレアーゼの活性を阻害可能なため、ウレアーゼの活性が阻害されると生存出来ないような微生物の除菌も可能である。従って、このウレアーゼ活性阻害剤を有効成分とする医薬品や飲食品は、微生物が産生するウレアーゼが原因の一つとなっている疾病の予防及び治療や、ウレアーゼを産生する微生物自体の除菌を目的として好適に用いることが出来るものである。 ムクロジ科植物の抽出物を含有することを特徴とするウレアーゼ活性阻害剤。 レイシ抽出物および/またはランブータン抽出物を含有することを特徴とするウレアーゼ活性阻害剤。 請求項1または請求項2記載のウレアーゼ活性阻害剤を含有することを特徴とする医薬品。 胃炎の予防剤または治療剤であることを特徴とする請求項3記載の医薬品。 胃潰瘍または十二指腸潰瘍の予防剤または治療剤であることを特徴とする請求項3記載の医薬品。 【課題】日常的に連用可能で、安全かつ十分なウレアーゼ活性阻害効果を示す医薬品または飲食品を提供する。【解決手段】ムクロジ科植物の抽出物を含有することを特徴とするウレアーゼ活性阻害剤を提供する。本発明のウレアーゼ活性阻害剤の原料である“レイシ”は、ムクロジ科の常緑高木の果樹で、学名をLitchi chinensis、和名をレイシ(茘枝)あるいはライチといい、中国南部原産で熱帯・亜熱帯地方において栽培されている。また、“ランブータン”は、レイシと同じムクロジ科で、学名をNephelium lappaceumといい、東南アジア原産で中型から大型の熱帯の果樹である。本発明に用いるレイシ抽出物およびランブータン抽出物は市販品を利用することができる。本発明に係るウレアーゼ活性阻害剤の形態は特に問わず、錠菓、キャンディー、顆粒剤、飲料などの通常の医薬品、医薬部外品、飲食品の形態を採用できる。【選択図】なし