タイトル: | 公開特許公報(A)_輸液 |
出願番号: | 2009142919 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 33/00,A61M 1/36,A61M 5/14,A61K 9/08,A61P 7/00,A61P 9/00,A61K 47/02,A61K 47/12 |
太田 富雄 JP 2011001271 公開特許公報(A) 20110106 2009142919 20090616 輸液 太田 富雄 596058823 鮫島 睦 100100158 田村 恭生 100068526 玄番 佐奈恵 100107180 太田 富雄 A61K 33/00 20060101AFI20101203BHJP A61M 1/36 20060101ALI20101203BHJP A61M 5/14 20060101ALI20101203BHJP A61K 9/08 20060101ALI20101203BHJP A61P 7/00 20060101ALI20101203BHJP A61P 9/00 20060101ALI20101203BHJP A61K 47/02 20060101ALI20101203BHJP A61K 47/12 20060101ALI20101203BHJP JPA61K33/00A61M1/36 510A61M5/14 345A61K9/08A61P7/00A61P9/00A61K47/02A61K47/12 14 OL 7 4C066 4C076 4C077 4C086 4C066AA10 4C066BB02 4C066CC01 4C066DD01 4C066DD02 4C066EE02 4C066FF04 4C066HH07 4C066QQ22 4C066QQ32 4C076AA12 4C076BB17 4C076CC11 4C076CC14 4C076DD23 4C076DD41 4C076DD43 4C076FF70 4C077AA09 4C077AA16 4C077AA25 4C077BB09 4C077DD18 4C077EE02 4C077JJ04 4C077JJ18 4C086AA01 4C086AA02 4C086HA08 4C086HA15 4C086HA20 4C086HA24 4C086MA02 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA17 4C086MA66 4C086NA14 4C086ZA36 4C086ZA51 本発明は、ナノバブル状態にある酸素(以後、「酸素ナノバブル」と称する。)を含んでなる輸液(または補液)、該輸液の製造方法、該輸液の脳の「選択的冷却法」による脳卒中および脳外傷に対する「脳低温療法」への使用、該輸液の脳の「選択的冷却法」による脳外科手術、即ち「無血手術」(したがって無輸血手術)への使用、ならびに該輸液の末梢循環不全症の治療への使用に関する。 血液中の酸素には、赤血球と結合している「結合型酸素」と、血液中に溶解している「溶解型酸素」とがある。赤血球の直径は約7〜8μmと大きく、動脈硬化をきたした毛細血管の全領域を容易に通過することはできない。一方、溶解型酸素は毛細血管を通って先端にまで運ばれて、末梢細胞に酸素を供給することができるが、溶解型酸素の割合は、血液中の全酸素の約3%程度に過ぎない。 一方、末梢血管の動脈硬化または閉塞に伴う慢性及び急性の低酸素状態の治療において、輸血で対処する場合、酸素運搬体としての赤血球は毛細血管を通って末端にまで十分に到達することは難しい。また、輸液で対処する場合であっても、輸液中の酸素含量を飽和溶解度以上に高めることは難しい(例えば、大気圧下での溶存酸素量は、0℃で約14ppm、15℃で約10ppm、40℃で、8ppmであり、酸素圧下での溶存酸素量は、0℃で約70ppmである)。 また、脳卒中および外傷性脳損傷などの脳障害の治療法として、従来から脳を選択的に冷却して行う「脳低温療法」が行われている(特開2002−119586号公報参照)。この治療法では、損傷脳組織の新陳代謝率を低下させ、二次的脳損傷を極力抑制し、脳損傷予防に対する好ましい治療効果を得るものである。 更に、外科的処置において、処置対象(例えば脳)の状態を維持する点から、対象臓器ないし組織を低温に維持して、代謝を抑制し、二次損傷を抑制しようという「超低体温法」がある。1960年にウッドホール(Woodhall)が、開頭術時の止血困難な出血を防止し、かつ脳を保護する目的で、開心術で使用される全身超低体温下に心停止する方法を用いることを提唱して以来、「全身超低体温法」は多くの手術で用いられている。しかし、この方法では、人工心肺を用いるので、その操作の煩雑さ、諸臓器への血液潅流が不全となること、抗凝固剤であるヘパリン量が多く必要であることから生じる、脳内での後出血などの問題が生じている。 これらの問題点に鑑み、これまでと同様に人工心肺を用いるが、脳を選択的に所定温度に冷却する方法(「選択的冷却法」)が開発され、これを開頭術等に応用されてきた(J.Neurosurg;第24巻,第994〜1001頁,1966年,参照)。この選択的冷却法によって安全に脳の低血圧状態が得られるようになったが、まだ多量のヘパリンを使用せざるを得ないため、術中・術後の出血の危険があるという問題点が依然として未解決のままで残っていた。 この問題点に対して、更に、補液としての乳酸リンゲル液を冷却して脳動脈に注入する方法が見出され、これによって脳のみを選択的に冷却し、また、人口心肺装置を用いないので、へパリン使用量を減らすことができ、出血の危険を低減させることができる(Neurosurgery;第31巻,第1049〜1055頁,1992年)参照)。この方法では、酸素欠乏を起こさずに、可逆的に極低血圧状態を作り出すことができ、また、低温に冷やした補液を用いることによってヘパリン使用量を激減することができ、その量は、通常の血管造影を行う時と大差ない量となった。具体的には、脳動脈瘤クリッピング時の一時的血流遮断の外科的処置の場合、対象としての脳の温度を33±1℃程度の低温に維持して手術が行なわれる。 これらの外科的処置において、出血量を最小限にする装置(以下、「無血処置装置」とも呼ぶ)も提案されている(WO00/047251号)。例えば脳のような対象に対して可及的に対象のみに補液を供給することにより、大量出血による臓器の損傷、壊死等のような課題を解決できる。この方法は、動脈内を血液の代わりに冷却晶質液(晶質液:電解質補液と同義。)が循環するシステムである。この補液は、外科的処置および対象に対して悪影響を及ぼさない液体であれば特に限定されず、例えば、通常水を主成分とするものであり、電解質、栄養分、安定剤などを含んでいてもよい。特に好ましい補液は、5〜10℃において安定なものであり、例えばリンゲル液、乳酸リンゲル液、低分子デキストリン含有リンゲル液(例えば5%含有)、特にL体タイプのものなどを補液として使用するのが特に好ましい。冷却用補液温度は上記の通り5〜10℃であるが、脳の温度は30〜35℃程度に維持される。補液は、ある程度の時間体内に滞留し、その後、体液が大過剰となることを防ぐため、透析装置を用い、体内から徐々に導出除去される。 これらの外科的処置において、補液を体内に供給する前に酸素ガスをバブリングして、ここを通過する補液を酸素化し、酸素を飽和溶解度近くにする方法も行なわれているが、対象組織の酸素化を更に効率よく行なうことが求められている。 また、末梢循環不全症は、手足の冷え症・しびれ等のみならず、酸素利用障害やエネルギー代謝不全による臓器、細胞の虚血・低酸素に起因する臓器機能不全を招き得て、末梢細胞・組織の壊死・機能不全に至る可能性もある。末梢循環不全症に対する一つの対症療法としては、晶質液の応用が示唆される。晶質液としては、従来からの生理食塩水(食塩濃度0.9%)、1号液〜4号液、リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液等の輸液が知られている。これらの輸液においても、より効率的に末梢組織の酸素利用を促進し得る輸液の開発が求められている。特開2002−119586号公報WO00/047251号公報太田富雄他、J.Neurosurg;第24巻,第994〜1001頁,1966年太田富雄他、J.Neurosurg;第31巻,第1049〜1055頁,1992年。 本発明は、上記課題を解決する輸液を提供することにある。 本発明者らは、前記問題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、驚くべきことに、超微細化気泡の状態にある酸素ナノバブルを含有する輸液が、これらの問題点を解決し得る事を発見し、本発明に到達した。 即ち、本発明は、酸素ナノバブルを含んでなる、輸液を提供するものである。前記ナノバブルの気泡径(直径)は1〜1000nmの範囲にあり、好ましくは50〜500nmの範囲にある。 前記輸液は塩分を0.01〜3.5重量%で含むことが好ましい。 前記輸液は生理食塩水、リンゲル液、1号〜4号液、酢酸リンゲル液または乳酸リンゲル液から選ばれた少なくとも1つであってよい。 本発明は、前記輸液を製造する方法を提供するものである。 本発明は、全身および局所超低体温法による外科手術用としての前記輸液、及びそれを用いる全身および局所超低体温法による外科手術方法を提供するものである。ここで、局所超低体温法とは、処置すべき対象臓器部位を超低体温に保ってする外科手術をいう。 本発明は、脳の選択的冷却法による脳外科手術用としての前記輸液、及びそれを用いる脳の選択的冷却法による脳外科手術方法を提供するものである。 本発明は、脳の選択的冷却法による脳低温療法用としての前記輸液、及びそれを用いる脳低温療法、特に、脳卒中および外傷性脳損傷の治療法を提供するものである。 本発明は、末梢循環不全症の治療用としての前記輸液、及びそれを用いる末梢循環不全症の治療方法を提供するものである。 本発明は、前記ナノバブル酸素を含有する輸液の製造方法を提供するものである。 本発明の輸液は、例えば、脳の選択的冷却法による脳外科手術において、低酸素状態を回避するため、低温状態で超微細な酸素ナノバブル状態を安定に保持し、手術中の脳へ酸素供給を効率的に行なうことができる。本発明の輸液は、動脈硬化をきたした毛細血管を通して末梢細胞・組織へ効率的に酸素を運搬することができるため、例えば、脳の選択的冷却法による脳低温療法、例えば、脳卒中および外傷性脳損傷の治療や、末梢循環不全症の治療に安全に用いることがでる。 以下、本発明の実施態様を詳細に説明する。 本発明で用いる酸素ナノバブルは、輸液中における気泡径(直径)がナノサイズ(1〜1000nmの範囲)にある酸素をいう。好ましくは、前記気泡径は200nm以下である。特に、ナノバブルの安定性の点からは、前記気泡径は100nm以下であることが好ましい。一般的に、前記気泡径が小さいほど、保存安定性に優れる。 前記ナノバブルの気泡径は、例えば、逆浸透膜などを利用して所望のサイズに調整できることが知られており(例えば、WO2008/72370号、[0016])、これを利用してナノバブルの気泡径分布を狭くすることができる。ナノバブルの気泡径は、平均値として上記範囲に入ればよい。気泡径分布は、後に述べるナノバブルの製造条件(電解質の種類、イオン濃度、物理的撹拌・刺激付与条件、温度等)に依存するが、これらの条件は、当業者が適宜制御し得る。酸素ナノバブルの気泡径分布は、動的光散乱光度計で測定することができる。 本発明の輸液(または、補液)には、塩分を0.01〜3.5重量%で含むことが好ましい。塩分は、生理活性的観点から、Na+、K+、Ca2+等の陽イオンが200mEq/L以下の濃度で含まれ、Cl−、CH3CO2−,CH3CH(OH)CO2−等の陰イオンが陽イオンと当量含まれる。例えば、生理食塩水の場合には、NaClとして0.9重量%含まれる。生理食塩水とブドウ糖液との所定の混合物である1号液〜4号液の場合には、ブドウ糖が所定量含まれる。リンゲル液は、生理食塩水に対して、緩衝剤としての酢酸や乳酸陰イオンが含まれる。 本発明の輸液には、上記イオンや電解質の他に、またはそれに代えて治療や外科処置目的に沿って必要とされる他の成分を含んでよい。例えば脳の選択的冷却法による脳低温療法、例えば脳卒中や外傷性脳障害の治療、または脳の選択的冷却法による脳外科手術に用いる場合には、血液凝固防止剤としてのヘパリンを更に含有していてよく、また末梢循環不全症の治療に用いる場合には末梢血管拡張剤を更に含有していてよい。 本発明の輸液は、更に治療剤成分を含んでいてよい。 本発明の酸素ナノバブルを含有する輸液は、酸素ナノバブルを含有するナノバブル水を製造後に、輸液成分(Na+、K+、Ca2+等の陽イオン、Cl−、CH3CO2−,CH3CH(OH)CO2−等の陰イオン、および糖など)を添加して製造することができる。また、輸液成分を添加後に、酸素ナノバブルを発生させて輸液を製造することができる。酸素ナノバブルは、Na+等の電解質の存在下に安定的に発生し得ることから、前記輸液成分を添加後に、酸素ナノバブルを発生させて輸液を製造することが好ましい。 酸素ナノバブルを発生させる方法としては特に制限は無く、既存の方法が使用できる。例えば、特開2005−245817号公報及び特開2005−264294号公報等に記載の製造方法に従って製造することができる。例えば、生理食塩水中に加圧溶解した酸素を、減圧して再気泡化することによって気泡径が50μm以上の酸素マイクロバブルを発生させ、続いて、前記酸素マイクロバブルを含む生理食塩水に、水中放電衝撃波、超音波、またはパンチング板の狭い穴部分を強制的に通過させる等の物理的刺激を加えてマイクロバブルを破砕し急激に縮小させると、気泡径が1〜1000nm、好ましくは50〜500nmの酸素ナノバブルを安定的に製造することができる。このようにして得られた酸素ナノバブル含有生理食塩水は、1月以上安定に存在する。 本発明の輸液の医療での使用方法は、通常の医療現場で使用する方法に従ってよい。例えば、外科的処置、例えば、脳の選択的冷却法による脳治療および開頭手術における無血手術の場合には、体外に設置した温度制御の可能な輸液循環装置を用いて本発明輸液を循環使用することができる。また、末梢循環不全症の治療に用いる場合には、注射による投与、カテーテルによる局所投与等の方法をとることができる。 以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 引用文献2(特開2005−246294号)の実施例に従って、以下の様に酸素ナノバブル含有生理食塩水を製造することができる。即ち、気泡径(直径)が10〜50μmの酸素マイクロバブルを含有する水に食塩を0.9重量%添加して、生理食塩水とする。次いで、水中放電による衝撃波を加えることにより、酸素ナノバブルを含有する生理食塩水を得ることができる。 次に、酸素分析計を用いて、この酸素ナノバブルを含有する生理食塩水の酸素含有量を測定すると、酸素ナノバブルを含有しない生理食塩水の酸素含有量に比較して、高い濃度の酸素を検出することができる。 実施例2 低体温外科手術における酸素ナノバブル含有輸液の使用モデル実験を以下に示す。 輸液として乳酸リンゲル液を用い、実施例1に準じて、10℃において酸素ナノバブル含有リンゲル液を製造する。この酸素ナノバブル含有乳酸リンゲル液の温度を、撹拌下、1時間かけて徐々に40℃まで昇温する。このリンゲル液中の酸素ナノバブルの気泡分布を、動的光散乱光度計を用いて測定すると、昇温前後で酸素ナノバブルの気泡径分布は殆ど変化していないことが判る。 実施例3 ラットを用いて、脳の選択的冷却法適用する。 輸液として乳酸リンゲル液を用い、実施例2と同様に、10℃において酸素ナノバブル含有リンゲル液を製造する。このリンゲル液をラットの脳動脈に注入し、脳を選択的に33℃の低温に1時間保持する。この状態での脳の酸素分圧を測定すると、酸素ナノバブルを含有しないリンゲル液を用いて33℃に保持した場合に比べて、高い酸素分圧を観測することができる。 本発明の、酸素ナノバブル含有輸液は、全身または局所超低体温法による外科手術、脳の選択的冷却法による開頭手術、脳の選択的冷却法による脳低温療法、例えば脳卒中(特に脳梗塞)および外傷性脳損傷の治療、末梢循環不全症の治療、及び末梢循環不全により活性の低下した末梢細胞・組織の活性化などに用いることができる。 酸素ナノバブルを含んでなる、輸液。 前記酸素ナノバブルの気泡径が1〜1000nmである、請求項1に記載された輸液。 前記酸素ナノバブルの気泡径が50〜500nmである、請求項1に記載された輸液。 塩分を0.01〜3.5重量%で含む、請求項1〜3いずれか1つに記載された輸液。 生理食塩水、リンゲル液、1号〜4号液、酢酸リンゲル液または乳酸リンゲル液から選ばれた少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれか1つに記載された輸液。 全身および局所超低体温法による外科手術用である、請求項1〜5のいずれか1つに記載された輸液。 脳の選択的冷却法による脳外科手術用である、請求項1〜5のいずれか1つに記載された輸液。 脳の選択的冷却法による脳低温療法用である、請求項1〜5のいずれか1つに記載された輸液。 脳低温療法が脳卒中、特に脳梗塞および外傷性脳損傷の治療である、請求項8に記載された輸液。 ヘパリンを含有する、請求項6〜9のいずれか1つに記載された輸液。 末梢循環不全症の治療用である、請求項1〜5のいずれか1つに記載された輸液。 末梢血管拡張剤を含有する、請求項11に記載された輸液。 酸素ナノバブルを含有する水に輸液成分を添加する工程を含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載された輸液を製造する方法。 輸液成分を含有している水に酸素ナノバブルを発生させる工程を含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載された輸液を製造する方法。 【課題】低温外科手術において脳などの臓器に効率的且つ安定的に酸素を運搬し得る輸液(または、補液)の提供。動脈硬化をきたした毛細血管の末端まで酸素を運搬し得る輸液の提供。【解決手段】超微細状態の酸素ナノバブルを含有する輸液。前記ナノバブルの直径は1〜1000nmの範囲にある。前記輸液は塩分を0.01〜3.5重量%で含む。前記輸液は、脳の選択的冷却法による脳外科手術や脳低温療法、及び末梢循環不全症の治療等に用いることができる【選択図】なし