タイトル: | 特許公報(B2)_超耐熱性イオン液体 |
出願番号: | 2009141547 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07F 9/54,C07C 317/28 |
高野 香織 前川 俊輔 池田 雅一 JP 5525191 特許公報(B2) 20140418 2009141547 20090612 超耐熱性イオン液体 JX日鉱日石エネルギー株式会社 000004444 一般財団法人石油エネルギー技術センター 590000455 長谷川 芳樹 100088155 黒木 義樹 100113435 清水 義憲 100128381 高野 香織 前川 俊輔 池田 雅一 20140618 C07F 9/54 20060101AFI20140529BHJP C07C 317/28 20060101ALI20140529BHJP JPC07F9/54C07C317/28 C07F 9/54 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開2007−326821(JP,A) 国際公開第2007/023814(WO,A1) 特開2008−222592(JP,A) 特表2005−521750(JP,A) 国際公開第2008/154998(WO,A1) 国際公開第2007/143051(WO,A2) 米国特許第04035346(US,A) 特開平02−229862(JP,A) ZHOU,G. et al.,A Force Field for Molecular Simulation of Tetrabutylphosphonium Amino Acid Ionic Liquids,Journal of Physical Chemistry B ,2007年,111(25),7078-7084 POOLE,S.K. and POOLE,C.F.,Chemometric evaluation of the solvent properties of liquid organic salts,Analyst (Cambridge, United Kingdom) ,1995年,120(2),289-94 3 2010285398 20101224 7 20111021 上村 直子 本発明は、超耐熱性イオン液体に関する。 イオン液体とは融点が100℃程度以下の溶融塩の総称であるが、近年、その極めて低い蒸気圧のため潤滑油として、また高温反応において繰り返し使用可能な反応溶媒として注目されている(例えば、非特許文献1参照)。 イオン液体はカチオンとアニオンとから構成されるが、代表的なカチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、テトラアルキルアンモニウム、環状のピロリジニウムなどが知られている。一方アニオンとしては、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物やテトラフルホロボレート、テトラフルオロホスフェート、トリフルオロメタンスルホネートやビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどの含フッ素系アニオンが多く報告されている(例えば、非特許文献2参照)。J.S.Wilkes, Green Chemistry, 4, 73(2002)大野弘幸、イオン液体II、2006、P16−22 ところで、例えば潤滑油として用いられるイオン液体は、高温での使用に耐えられるように、耐熱性に優れることが望ましいが、耐熱性に優れたイオン液体は通常分子内にハロゲン元素を含んでいる。ハロゲン元素を含むイオン液体を高温で使用した場合には、フッ酸や塩酸などが発生し、配管腐食などを引き起こすおそれがあるため、実際に潤滑油として使用することは困難である。 また、例えば反応溶媒として用いられる一般的な有機溶媒(アセトンやアセトニトリル)は、蒸気圧が高いために高温での反応において気化してしまう。気化を防ぐために高圧とすると高温・高圧条件に耐えられず溶媒が分解してしまうため、繰り返し使用することが困難であり、使い捨てにせざるを得ない。 さらに、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含むイオン液体は耐熱性に優れていることが知られているが、このようなイオン液体は疎水性であり、親水性で耐熱性に優れた(例えば、5%重量減少温度が390℃以上である)イオン液体は知られていなかった。 そこで本発明は、親水性であり、かつ耐熱性に優れる非ハロゲン系のイオン液体を提供することを目的とする。 本発明は、下記一般式(I)で表されるホスホニウム塩からなるイオン液体を提供する。[式(I)中、R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜12の環状、直鎖又は分岐状のアルキル基を示し、Xは炭素数1〜10のアルキレン基を示す。] かかるイオン液体は、非ハロゲン系であるにもかかわらず、親水性であり、かつ耐熱性に優れる。 上記Xはエチレン基であると好ましく、上記R1〜R4は炭素数1〜6の直鎖又は分岐状のアルキル基であると好ましい。 上記イオン液体においては、5%重量減少温度が390℃以上であることが好ましい。なお、「5%重量減少温度」は、例えば実施例に記載の方法により測定されるものをいう。 本発明によれば、非ハロゲン系であるにもかかわらず、親水性であり、かつ耐熱性に優れるイオン液体を提供することができる。 かかるイオン液体は、気体のキャリアとして使用することができる。また、本発明のイオン液体は、親水性であるので、水系切削油や水系作動油などの水系潤滑油として好適に使用することができる。 さらに、本発明のイオン液体は、耐熱性に優れるので、繰り返し使用可能な反応溶媒として使用することができる。アセトンやアセトニトリル等の使い捨てで使用する溶媒に代えて、本発明のイオン液体を反応溶媒として用いると、反応溶媒の使用量を大幅に削減することができ、環境保護の観点から非常に好ましい。実施例1で得られたテトラメチルホスホニウムタウリン塩の1H−NMR測定結果を示す図である。実施例2で得られたテトラエチルホスホニウムタウリン塩の1H−NMR測定結果を示す図である。参考例3で得られたテトラブチルホスホニウムタウリン塩の1H−NMR測定結果を示す図である。 以下、本発明の一実施形態について詳述するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。 上記式(I)において、R1〜R4は、炭素数1〜12の環状、直鎖又は分岐状のアルキル基であり、炭素数1〜6の直鎖又は分岐状のアルキル基であると好ましい。直鎖又は分岐状のアルキル基の炭素数は、1〜4個であると好ましく、1,2,4個であるとより好ましい。 炭素数1〜12の環状、直鎖又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、シクロヘキシル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−ブチル基である。 上記式(I)において、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基であり、炭素数1〜6のアルキレン基であると好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であるとより好ましい。 炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が挙げられ、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であると好ましく、エチレン基であるとより好ましい。(ホスホニウム塩の一般的製造方法) 上記ホスホニウム塩は、例えば以下に示す方法で製造することができる。 陰イオン交換樹脂(OH体)に対して、上記式(I)のアニオン部に対応するアミノスルホン酸を水溶液として展開して、陰イオン交換樹脂のOH−部分をアミノスルホン酸由来のアニオンで置換する。続いて、上記式(I)のカチオン部に対応するテトラアルキルホスホニウムハライド、好ましくはテトラアルキルホスホニウムブロミドの水溶液を陰イオン交換樹脂に通し、得られた混合溶液における溶媒を減圧留去し、残渣から適当な方法で未反応のアミノスルホン酸を除去することで、所望のイオン液体が得られる。 上記アミノスルホン酸としては、例えばアミノメタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸(タウリン)、3−アミノプロパンスルホン酸を用いることができ、2−アミノエタンスルホン酸を用いると好ましい。 上記カチオン部に対応するテトラアルキルホスホニウムハライドとしては、例えばテトラメチルホスホニウムブロミド、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、オクチルトリエチルホスホニウムブロミド、ドデシルトリメチルホスホニウムブロミド、トリオクチルエチルホスホニウムブロミド;これらのブロミドに対応するクロリドを用いることができ、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミドを用いると好ましい。 また、上記式(I)のカチオン部に対応するテトラアルキルホスホニウムヒドロキシドが、例えばテトラブチルホスホニウムヒドロキシドのように、水酸化物又はその水溶液の形で市販されている場合には、上記ホスホニウム塩を以下の製造方法により製造することもできる。 テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドの水溶液に対して、上記式(I)のアニオン部に対応するアミノスルホン酸を滴下し、室温で攪拌する。得られた混合溶液の溶媒を減圧留去し、残渣から適当な方法で未反応のアミノスルホン酸を除去することで、所望のイオン液体が得られる。 上述のイオン液体は、特に耐熱性に優れ、その5%重量減少温度は好ましくは390℃以上である。 以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。(実施例1) タウリン1.3gに水13mLを加え、均一溶解させた後にこれを陰イオン交換樹脂(OH体)に通した。テトラメチルホスホニウムブロミド1.2gをイオン交換水20mLに均一溶解させ、先ほどの陰イオン交換樹脂に通した。得られた水溶液を減圧乾燥し、これにアセトニトリル20mlとメタノール5mlを加えて氷冷し、沈殿した未反応のタウリンをろ別した。得られたろ液を減圧乾燥することにより、テトラメチルホスホニウムタウリン塩1.5g(収率99%)を得た。本品の1H−NMR測定を行った結果は図1に示したとおりであり、プロトンの化学シフトと積分強度から目的物の生成が確認された。(実施例2) タウリン2gに水13mLを加え、均一溶解させた後にこれを陰イオン交換樹脂(OH体)に通した。テトラエチルホスホニウムブロミド2.3gをイオン交換水20mLに均一溶解させ、先ほどの陰イオン交換樹脂に通した。得られた水溶液を減圧乾燥し、これにアセトニトリル20mlとメタノール5mlを加えて氷冷し、沈殿した未反応のタウリンをろ別した。得られたろ液を減圧乾燥することにより、テトラエチルホスホニウムタウリン塩2.6g(収率96%)を得た。本品の1H−NMR測定を行った結果は図2に示したとおりであり、プロトンの化学シフトと積分強度から目的物の生成が確認された。(参考例3) テトラブチルホスホニウムヒドロキシドの40%水溶液6.9gに対してタウリン1.5gを加え、室温で1時間攪拌した。得られた混合溶液の溶媒を減圧留去し、これにアセトニトリル20mlとメタノール5mlを加えて氷冷し、沈殿した未反応のタウリンをろ別した。得られたろ液を減圧乾燥することにより、テトラブチルホスホニウムタウリン塩3.8g(収率99%)を得た。本品の1H−NMR測定を行った結果は図3に示したとおりであり、プロトンの化学シフトと積分強度から目的物の生成が確認された。[5%熱重量減少温度の測定] 実施例及び参考例で得られた化合物について、5%熱重量減少温度を測定した。なお、5%熱重量減少温度とは、試料を120℃で6時間乾燥させた後、熱重量測定装置(島津製作所製、商品名:TGA−50)で50℃から5℃/分で昇温したときに、初期質量の5質量%だけ質量が減少したときの温度である。 実施例1のテトラメチルホスホニウムタウリン塩の5%熱重量減少温度は394.1℃であり、実施例2のテトラエチルホスホニウムタウリン塩の5%熱重量減少温度は393.7℃であり、参考例3のテトラブチルホスホニウムタウリン塩の5%熱重量減少温度は392.5℃であり、いずれも耐熱性に優れることが明らかとなった。 下記一般式(I)で表されるホスホニウム塩からなるイオン液体。[式(I)中、R1〜R4はそれぞれ独立にメチル基、エチル基又はプロピル基を示し、Xは炭素数1〜10のアルキレン基を示す。] 前記Xがエチレン基である、請求項1に記載のイオン液体。 5%重量減少温度が390℃以上である、請求項1又は2に記載のイオン液体。