生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_テストステロン増強剤
出願番号:2009128006
年次:2010
IPC分類:A61K 31/045,A61P 5/26


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駒井 三千夫 白川 仁 ギリウノ プスポ エディ 伊東 あさぎ 畠 修一 JP 2010275214 公開特許公報(A) 20101209 2009128006 20090527 テストステロン増強剤 タマ生化学株式会社 000108812 国立大学法人東北大学 504157024 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 安田 徹夫 100107168 藤田 節 100118773 駒井 三千夫 白川 仁 ギリウノ プスポ エディ 伊東 あさぎ 畠 修一 A61K 31/045 20060101AFI20101112BHJP A61P 5/26 20060101ALI20101112BHJP JPA61K31/045A61P5/26 2 OL 8 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206CA03 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZC10 本発明はテストステロン増強剤に関する。より詳細には、ゲラニルゲラニオールを有効成分としたテストステロン増強剤に関し、ゲラニルゲラニオールは、血中テストステロンを増加させる作用を有する。 ゲラニルゲラニオールは、今日、主に化学合成法により合成されている。化学合成法によると、炭素骨格が同じで1種あるいは2種以上の二重結合がシス体である混合物として得られるが、工業的に利用価値のあるのは、二重結合が全てトランス体であるゲラニルゲラニオールである(特開平8-133999号公報(特許文献1))。また、近年、生物学的にトランス体のゲラニルゲラニオール及びその誘導体の生産法が開示されている(特開平9-238692号公報(特許文献2)、特開2005-137287号公報(特許文献3))。一方、天然界において、ゲラニルゲラニオール及びゲラニルリナロールがマツ類の樹脂中に存在するほか、ゲラニルリナロールのニトリル置換体がサンゴの仲間から得られたことは知られている。 アナトー(ベニノキ科ベニノキ、Bixa orellana)は、中央〜南アメリカに自生する植物であるが、今日では、インド、アフリカ等全世界的に栽培されている。その種子は、赤色を帯び、色素抽出原料として数万トンが収穫されている。その内容成分は、カロチノイドであるビキシン、ノルビキシンが主であり、有機溶剤にてアナトー種子より抽出された抽出物は、油溶性、水溶性色素としてチーズ、バター等の乳製品、加工食品、菓子等の食品用着色に使用されている。 ところで、このアナトー色素を除去した抽出残渣からのゲラニルゲラニオールおよびトコトリエノールの分子蒸留による回収法が開示されている(米国特許第6,350,453号明細書(特許文献4))。また、アナトー種子からの主要産物である赤色色素を製造した後の油状残渣を、アルカリ性水溶液を加え液液分配後、イオン交換樹脂で非吸着画分を得る方法については、本出願人が特許出願(特開2007-238508号公報(特許文献5))をしている。 ゲラニルゲラニオールは、ビタミンE、ビタミンK2、胃炎薬ブラウノトール、制ガン剤であるゲラニルゲラニルアミン誘導体(特開平9-291030号公報(特許文献6))の原料となる重要な物質である。 一方、ゲラニルゲラニオール自身が、生体内での何らかの役割を示唆する報告も存在する。HMG‐CoA還元酵素は、ゲラニルゲラニオールなどのイソプレノイド化合物生合成の律速酵素であるが、高脂血症に用いるスタチン系製剤は、このHMG‐CoA還元酵素を阻害する(薬学雑誌、2004 Jul; 124(7) : 371-396(非特許文献1))。PDGFレセプターのチロシンリン酸化には、ゲラニルゲラニオールによるレセプターの修飾が必要である(J Biol. Chem.、1996 Nov 1; 271(44) : 27402-27407(非特許文献2))。ゲラニルゲラニオールは、HL-60など、種々のがん細胞に対してアポトーシスを誘導する(Biochem. Biophys. Res. Commun.、1996 Sep24; 226(3): 741-745(非特許文献3)、日本ビタミン学会第58回大会プログラム・講演要旨、2006 Apr; 80(4) : 202(非特許文献4))。 更には、ゲラニルゲラニオール自身に関して、破骨細胞形成抑制作用を有し、抗骨粗鬆症剤としての有用性(特開平7-215849号公報(特許文献7))が開示され、ゲラニルゲラニオールを有効成分とする抗動脈硬化治療剤(特開平10-87480号公報(特許文献8))、熱ショック蛋白質誘導剤(特開2001-172171号公報(特許文献9))、血漿アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ及びアラニンアミノ基転移酵素生成抑制剤(特開2009-13076号公報(特許文献10))についての開示がされている。 テストステロンは、アンドロゲン(男性ホルモン)の代表的なものとして知られ、男性では、精巣のライディッヒ細胞で合成され血中に分泌され、女性では副腎および卵巣から産生されることが多い。また、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロンなどの男性ホルモンは副腎で産生され、これら男性ホルモンは末梢神経でテストステロンに変換される。特に成人男性では精巣で合成されるアンドロゲンの85%がテストステロンである(特開2004-256513号公報(特許文献11)、特開2005-306752号公報(特許文献12))。 テストステロンは、C19ステロイドである男性ホルモンの中で最も強い男性ホルモン作用を有し、テストステロンの働きは、性器および骨格の男性化、ならびにタンパク質同化促進である。男性生殖器の発達、骨格や筋肉の発達、性欲・性衝動の亢進、及び脳や精神面の活力亢進にも影響を及ぼすといわれ、血中テストステロンは強いストレスを受けた場合にその濃度が低下し、その低下は男性更年期障害や思春期遅発症などの疾病を引き起こす(特開2004-256513号公報(特許文献11)、特開2006-306889号公報(特許文献13))。 ところで、ゲラニルゲラニオールに関しては、生体において有効成分として機能する可能性を示唆する報告があるにもかかわらず、テストステロン増強作用に関しての検討はなされていなかった。特開平8-133999号公報特開平9-238692号公報特開2005-137287号公報米国特許第6,350,453号明細書特開2007-238508号公報特開平9-291030号公報特開平7-215849号公報特開平10-87480号公報特開2001-172171号公報特開2009-13076号公報特開2004-256513号公報特開2005-306752号公報特開2006-306889号公報薬学雑誌、2004 Jul; 124(7) : 371-396J Biol. Chem.、1996 Nov 1; 271(44) : 27402-27407Biochem. Biophys. Res. Commun.、1996 Sep24; 226(3): 741-745日本ビタミン学会第58回大会プログラム・講演要旨、2006 Apr; 80(4) : 202 本発明は、テストステロン増強剤となりうる新規物質の開発を課題とする。 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ゲラニルゲラニオールに血中テストステロン増強作用を認め、本発明を完成した。 すなわち本発明は、(1) ゲラニルゲラニオールを有効成分として含有するテストステロン増強剤、(2) (1)記載のテストステロン増強剤と医薬的に許容される担体と、を含む医薬組成物に関するものである。 ゲラニルゲラニオールは非環状ジテルペンとして知られ、下記に示される構造式を有している。 ゲラニルゲラニオールは、アナトー種子若しくはその色素抽出油状残渣より抽出することによって得られる。 ゲラニルゲラニオールを取得するためのフローを図1に示した。アナトー種子からの抽出方法は、ベニノキ科ベニノキの種子の被覆物より、油脂又は有機溶剤で抽出若しくは加水分解を経る。有機溶剤での抽出は、油脂分が抽出される有機溶媒であれば限定されず、好ましくはアルコールの使用が良い。 アナトー種子からの抽出にて、ゲラニルゲラニオールの製造は可能であるが、経済的な観点から、アナトー色素抽出油状残渣(図1の「油状物」)を使用することが出来る。 生体におけるテストステロンは、最も強い男性ホルモン作用を有し、男性生殖器の発達、骨格や筋肉の発達、性欲・性衝動の亢進、及び、脳や精神面の活力亢進にも影響を及ぼし、男性性的機能老化の改善、骨格や筋肉の増量、男性更年期障害の予防や改善に有用な作用をもつ。 本発明では、ラットを用いたin vivo試験において、ゲラニルゲラニオールの摂取により血中テストステロンが上昇することを突き止め、更には、マウス精巣癌ライディッヒ細胞株において、ゲラニルゲラニオールによるテストステロン産生能増加、テストステロン生合成関連遺伝子の発現増大を確認し、ゲラニルゲラニオールにテストステロン増強作用のあることを見出したものである。 本発明によって、ゲラニルゲラニオールがテストステロン増強剤として有効であることを確認した。すなわち、ゲラニルゲラニオールが男性性的機能老化の改善、骨格や筋肉の増量、男性更年期障害の予防や改善に有用な作用をもつことを見出した。ゲラニルゲラニオールを取得するためのフローを示す図。動物におけるゲラニルゲラニオール摂取によるテストステロンの上昇を示す図。マウス精巣癌におけるゲラニルゲラニオール摂取によるテストステロンの上昇を示す図。ライディッヒ細胞におけるテストステロン産生経路を示す図。 図1に示された工程により調製したゲラニルゲラニオールについて、テストステロン増強作用に対する効果について検証した。 以下に本発明の実施例を挙げて、より詳細に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。[動物飼育] Wistar雄ラット(日本SLC社製)を7週齢で購入し、明期8:00〜20:00、室温23±2℃、相対湿度50±5%の空調飼育室内で飼育した。Wistar雄ラットは調製飼料(Harlan Teklad 社製TD90753、ビタミンKフリー食)を与え、水道水と共に自由摂取させた。Wistar雄ラットは2群に分け、対照群(n=7)にはゲラニルゲラニオールを含まないTD90753を、実験群(n=8)には、ゲラニルゲラニオールを48.3mg/kg含有するTD90753飼料を与え10日間飼育した。10日間摂取後、ラット血漿テストステロン濃度を測定した。テストステロンの測定は、Testosterone EIA kit(Cayman Chemical Corporate)を用いた。血漿は、5倍量のジエチルエーテルで抽出し、有機相を分取し減圧乾固させた後、キット添付の溶解液に溶かしELISAに供した。ゲラニルゲラニオールを摂取した実験群は対照群に比較し有意なテストステロンの上昇を認めた。(図2)[マウス精巣癌ライディッヒ細胞株I-10による試験] マウス精巣癌ライディッヒ細胞株I-10は、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団(大阪)より入手した。 I-10を10%ウシ胎児血清、100 units/mlペニシリンGおよび100μg/mlストレプトマイシンを含有するHam’s F10培地中で継代培養した。細胞を24穴プレートに5 × 105cells/mlの密度で、各ウェルに500μlづつ播種した。24時間培養後、ゲラニルゲラニオール(GGOH)、ゲラニオール(GOH)、ファルネソール(FOH)、フィトール(POH)、ゲラニルゲラニルアセトン(GGAc)をそれぞれ100μM溶解したHam’s F10培地(n=3)を50μl添加し、4時間培養後、細胞を培地とともに回収し、遠心分離により培養上清を回収した。培養上清中のテストステロンの測定は、Testosterone EIA kitを用い、培地をそのまま溶解液で希釈し測定した。無添加の培地中には、23.3±2.1pg/ml、ゲラニルゲラニオール添加培地中には、100.4±24.0pg/mlのテストステロンを検出し、ゲラニルゲラニオールによってテストステロンの上昇を認めた。Student’s T testにより、無添加群とゲラニルゲラニオール間にはp<0.05で有意差を認めた(図3)。[ウェスタンブロット] ライディッヒ細胞におけるテストステロン産生経路を図4に示す。図4に示すようにテストステロン産生には、プロテインキナーゼA (PKA)、cAMP応答配列結合蛋白質(CREB)といったPKAシグナル経路、ステロイド産生関連酵素でシトロームp450の一種CYP11aが深く関わる。I-10を10%ウシ胎児血清、100 units/mlペニシリンGおよび100μg/mlストレプトマイシンを含有するHam’s F10培地中で継代培養した。細胞を24穴プレートに5 × 105cells/mlの密度で、各ウェルに500μlづつ播種した。24時間培養後、ゲラニルゲラニオールを100μM溶解したHam’s F10培地を50μl添加し、1時間および3 時間培養後の細胞を培地とともに回収し、遠心分離により細胞を回収した。細胞をホモジナイズ後、電気泳動で展開後、ウェスタンブロットにより、CYP11a、PKA、CREBを検出した。特にテストステロン生合成の律速酵素と考えられるCYP11aの有意な上昇を認め、CREBおよびリン酸化CREBの上昇傾向も確認し、ゲラニルゲラニオールによるテストステロン増加作用を支持した(図4)。 統計処理はいずれもOne-way Analysis of Varianceの後,Tukey test または、2群間検定では、Student’s T testを実施した。 ゲラニルゲラニオールを有効成分として含有するテストステロン増強剤。 請求項1記載のテストステロン増強剤と医薬的に許容される担体と、を含む医薬組成物。 【課題】本発明は、テストステロン増強剤となりうる新規物質の開発を課題とする。【解決手段】ゲラニルゲラニオールに血中テストステロン増強作用を認めた。すなわち、本発明では、ラットを用いたin vivo試験において、ゲラニルゲラニオールの摂取により血中テストステロンが上昇することを突き止め、更には、マウス精巣癌ライディッヒ細胞株において、ゲラニルゲラニオールによるテストステロン産生能増加、テストステロン生合成関連遺伝子の発現増大を確認し、ゲラニルゲラニオールにテストステロン増強作用のあることを見出した。【選択図】なし


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特許公報(B2)_テストステロン増強剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_テストステロン増強剤
出願番号:2009128006
年次:2014
IPC分類:A61K 31/045,A61P 5/26


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駒井 三千夫 白川 仁 ギリウノ プスポ エディ 伊東 あさぎ 畠 修一 JP 5382512 特許公報(B2) 20131011 2009128006 20090527 テストステロン増強剤 タマ生化学株式会社 000108812 国立大学法人東北大学 504157024 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 安田 徹夫 100107168 藤田 節 100118773 駒井 三千夫 白川 仁 ギリウノ プスポ エディ 伊東 あさぎ 畠 修一 20140108 A61K 31/045 20060101AFI20131212BHJP A61P 5/26 20060101ALI20131212BHJP JPA61K31/045A61P5/26 A61K 31/045 A61P 5/26 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/NAPRALERT(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特表平3−500044(JP,A) 特開平10−25226(JP,A) 2 2010275214 20101209 7 20120510 福永 千尋 本発明はテストステロン増強剤に関する。より詳細には、ゲラニルゲラニオールを有効成分としたテストステロン増強剤に関し、ゲラニルゲラニオールは、血中テストステロンを増加させる作用を有する。 ゲラニルゲラニオールは、今日、主に化学合成法により合成されている。化学合成法によると、炭素骨格が同じで1種あるいは2種以上の二重結合がシス体である混合物として得られるが、工業的に利用価値のあるのは、二重結合が全てトランス体であるゲラニルゲラニオールである(特開平8-133999号公報(特許文献1))。また、近年、生物学的にトランス体のゲラニルゲラニオール及びその誘導体の生産法が開示されている(特開平9-238692号公報(特許文献2)、特開2005-137287号公報(特許文献3))。一方、天然界において、ゲラニルゲラニオール及びゲラニルリナロールがマツ類の樹脂中に存在するほか、ゲラニルリナロールのニトリル置換体がサンゴの仲間から得られたことは知られている。 アナトー(ベニノキ科ベニノキ、Bixa orellana)は、中央〜南アメリカに自生する植物であるが、今日では、インド、アフリカ等全世界的に栽培されている。その種子は、赤色を帯び、色素抽出原料として数万トンが収穫されている。その内容成分は、カロチノイドであるビキシン、ノルビキシンが主であり、有機溶剤にてアナトー種子より抽出された抽出物は、油溶性、水溶性色素としてチーズ、バター等の乳製品、加工食品、菓子等の食品用着色に使用されている。 ところで、このアナトー色素を除去した抽出残渣からのゲラニルゲラニオールおよびトコトリエノールの分子蒸留による回収法が開示されている(米国特許第6,350,453号明細書(特許文献4))。また、アナトー種子からの主要産物である赤色色素を製造した後の油状残渣を、アルカリ性水溶液を加え液液分配後、イオン交換樹脂で非吸着画分を得る方法については、本出願人が特許出願(特開2007-238508号公報(特許文献5))をしている。 ゲラニルゲラニオールは、ビタミンE、ビタミンK2、胃炎薬ブラウノトール、制ガン剤であるゲラニルゲラニルアミン誘導体(特開平9-291030号公報(特許文献6))の原料となる重要な物質である。 一方、ゲラニルゲラニオール自身が、生体内での何らかの役割を示唆する報告も存在する。HMG‐CoA還元酵素は、ゲラニルゲラニオールなどのイソプレノイド化合物生合成の律速酵素であるが、高脂血症に用いるスタチン系製剤は、このHMG‐CoA還元酵素を阻害する(薬学雑誌、2004 Jul; 124(7) : 371-396(非特許文献1))。PDGFレセプターのチロシンリン酸化には、ゲラニルゲラニオールによるレセプターの修飾が必要である(J Biol. Chem.、1996 Nov 1; 271(44) : 27402-27407(非特許文献2))。ゲラニルゲラニオールは、HL-60など、種々のがん細胞に対してアポトーシスを誘導する(Biochem. Biophys. Res. Commun.、1996 Sep24; 226(3): 741-745(非特許文献3)、日本ビタミン学会第58回大会プログラム・講演要旨、2006 Apr; 80(4) : 202(非特許文献4))。 更には、ゲラニルゲラニオール自身に関して、破骨細胞形成抑制作用を有し、抗骨粗鬆症剤としての有用性(特開平7-215849号公報(特許文献7))が開示され、ゲラニルゲラニオールを有効成分とする抗動脈硬化治療剤(特開平10-87480号公報(特許文献8))、熱ショック蛋白質誘導剤(特開2001-172171号公報(特許文献9))、血漿アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ及びアラニンアミノ基転移酵素生成抑制剤(特開2009-13076号公報(特許文献10))についての開示がされている。 テストステロンは、アンドロゲン(男性ホルモン)の代表的なものとして知られ、男性では、精巣のライディッヒ細胞で合成され血中に分泌され、女性では副腎および卵巣から産生されることが多い。また、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロンなどの男性ホルモンは副腎で産生され、これら男性ホルモンは末梢神経でテストステロンに変換される。特に成人男性では精巣で合成されるアンドロゲンの85%がテストステロンである(特開2004-256513号公報(特許文献11)、特開2005-306752号公報(特許文献12))。 テストステロンは、C19ステロイドである男性ホルモンの中で最も強い男性ホルモン作用を有し、テストステロンの働きは、性器および骨格の男性化、ならびにタンパク質同化促進である。男性生殖器の発達、骨格や筋肉の発達、性欲・性衝動の亢進、及び脳や精神面の活力亢進にも影響を及ぼすといわれ、血中テストステロンは強いストレスを受けた場合にその濃度が低下し、その低下は男性更年期障害や思春期遅発症などの疾病を引き起こす(特開2004-256513号公報(特許文献11)、特開2006-306889号公報(特許文献13))。 ところで、ゲラニルゲラニオールに関しては、生体において有効成分として機能する可能性を示唆する報告があるにもかかわらず、テストステロン増強作用に関しての検討はなされていなかった。特開平8-133999号公報特開平9-238692号公報特開2005-137287号公報米国特許第6,350,453号明細書特開2007-238508号公報特開平9-291030号公報特開平7-215849号公報特開平10-87480号公報特開2001-172171号公報特開2009-13076号公報特開2004-256513号公報特開2005-306752号公報特開2006-306889号公報薬学雑誌、2004 Jul; 124(7) : 371-396J Biol. Chem.、1996 Nov 1; 271(44) : 27402-27407Biochem. Biophys. Res. Commun.、1996 Sep24; 226(3): 741-745日本ビタミン学会第58回大会プログラム・講演要旨、2006 Apr; 80(4) : 202 本発明は、テストステロン増強剤となりうる新規物質の開発を課題とする。 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ゲラニルゲラニオールに血中テストステロン増強作用を認め、本発明を完成した。 すなわち本発明は、(1) ゲラニルゲラニオールを有効成分として含有するテストステロン増強剤、(2) (1)記載のテストステロン増強剤と医薬的に許容される担体と、を含む医薬組成物に関するものである。 ゲラニルゲラニオールは非環状ジテルペンとして知られ、下記に示される構造式を有している。 ゲラニルゲラニオールは、アナトー種子若しくはその色素抽出油状残渣より抽出することによって得られる。 ゲラニルゲラニオールを取得するためのフローを図1に示した。アナトー種子からの抽出方法は、ベニノキ科ベニノキの種子の被覆物より、油脂又は有機溶剤で抽出若しくは加水分解を経る。有機溶剤での抽出は、油脂分が抽出される有機溶媒であれば限定されず、好ましくはアルコールの使用が良い。 アナトー種子からの抽出にて、ゲラニルゲラニオールの製造は可能であるが、経済的な観点から、アナトー色素抽出油状残渣(図1の「油状物」)を使用することが出来る。 生体におけるテストステロンは、最も強い男性ホルモン作用を有し、男性生殖器の発達、骨格や筋肉の発達、性欲・性衝動の亢進、及び、脳や精神面の活力亢進にも影響を及ぼし、男性性的機能老化の改善、骨格や筋肉の増量、男性更年期障害の予防や改善に有用な作用をもつ。 本発明では、ラットを用いたin vivo試験において、ゲラニルゲラニオールの摂取により血中テストステロンが上昇することを突き止め、更には、マウス精巣癌ライディッヒ細胞株において、ゲラニルゲラニオールによるテストステロン産生能増加、テストステロン生合成関連遺伝子の発現増大を確認し、ゲラニルゲラニオールにテストステロン増強作用のあることを見出したものである。 本発明によって、ゲラニルゲラニオールがテストステロン増強剤として有効であることを確認した。すなわち、ゲラニルゲラニオールが男性性的機能老化の改善、骨格や筋肉の増量、男性更年期障害の予防や改善に有用な作用をもつことを見出した。ゲラニルゲラニオールを取得するためのフローを示す図。動物におけるゲラニルゲラニオール摂取によるテストステロンの上昇を示す図。マウス精巣癌におけるゲラニルゲラニオール摂取によるテストステロンの上昇を示す図。ライディッヒ細胞におけるテストステロン産生経路を示す図。 図1に示された工程により調製したゲラニルゲラニオールについて、テストステロン増強作用に対する効果について検証した。 以下に本発明の実施例を挙げて、より詳細に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。[動物飼育] Wistar雄ラット(日本SLC社製)を7週齢で購入し、明期8:00〜20:00、室温23±2℃、相対湿度50±5%の空調飼育室内で飼育した。Wistar雄ラットは調製飼料(Harlan Teklad 社製TD90753、ビタミンKフリー食)を与え、水道水と共に自由摂取させた。Wistar雄ラットは2群に分け、対照群(n=7)にはゲラニルゲラニオールを含まないTD90753を、実験群(n=8)には、ゲラニルゲラニオールを48.3mg/kg含有するTD90753飼料を与え10日間飼育した。10日間摂取後、ラット血漿テストステロン濃度を測定した。テストステロンの測定は、Testosterone EIA kit(Cayman Chemical Corporate)を用いた。血漿は、5倍量のジエチルエーテルで抽出し、有機相を分取し減圧乾固させた後、キット添付の溶解液に溶かしELISAに供した。ゲラニルゲラニオールを摂取した実験群は対照群に比較し有意なテストステロンの上昇を認めた。(図2)[マウス精巣癌ライディッヒ細胞株I-10による試験] マウス精巣癌ライディッヒ細胞株I-10は、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団(大阪)より入手した。 I-10を10%ウシ胎児血清、100 units/mlペニシリンGおよび100μg/mlストレプトマイシンを含有するHam’s F10培地中で継代培養した。細胞を24穴プレートに5 × 105cells/mlの密度で、各ウェルに500μlづつ播種した。24時間培養後、ゲラニルゲラニオール(GGOH)、ゲラニオール(GOH)、ファルネソール(FOH)、フィトール(POH)、ゲラニルゲラニルアセトン(GGAc)をそれぞれ100μM溶解したHam’s F10培地(n=3)を50μl添加し、4時間培養後、細胞を培地とともに回収し、遠心分離により培養上清を回収した。培養上清中のテストステロンの測定は、Testosterone EIA kitを用い、培地をそのまま溶解液で希釈し測定した。無添加の培地中には、23.3±2.1pg/ml、ゲラニルゲラニオール添加培地中には、100.4±24.0pg/mlのテストステロンを検出し、ゲラニルゲラニオールによってテストステロンの上昇を認めた。Student’s T testにより、無添加群とゲラニルゲラニオール間にはp<0.05で有意差を認めた(図3)。[ウェスタンブロット] ライディッヒ細胞におけるテストステロン産生経路を図4に示す。図4に示すようにテストステロン産生には、プロテインキナーゼA (PKA)、cAMP応答配列結合蛋白質(CREB)といったPKAシグナル経路、ステロイド産生関連酵素でシトロームp450の一種CYP11aが深く関わる。I-10を10%ウシ胎児血清、100 units/mlペニシリンGおよび100μg/mlストレプトマイシンを含有するHam’s F10培地中で継代培養した。細胞を24穴プレートに5 × 105cells/mlの密度で、各ウェルに500μlづつ播種した。24時間培養後、ゲラニルゲラニオールを100μM溶解したHam’s F10培地を50μl添加し、1時間および3 時間培養後の細胞を培地とともに回収し、遠心分離により細胞を回収した。細胞をホモジナイズ後、電気泳動で展開後、ウェスタンブロットにより、CYP11a、PKA、CREBを検出した。特にテストステロン生合成の律速酵素と考えられるCYP11aの有意な上昇を認め、CREBおよびリン酸化CREBの上昇傾向も確認し、ゲラニルゲラニオールによるテストステロン増加作用を支持した(図4)。 統計処理はいずれもOne-way Analysis of Varianceの後,Tukey test または、2群間検定では、Student’s T testを実施した。 ゲラニルゲラニオールを有効成分として含有するテストステロン増強剤。 請求項1記載のテストステロン増強剤と医薬的に許容される担体と、を含む医薬組成物。


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