タイトル: | 公開特許公報(A)_炭素繊維束の樹脂含浸性の評価方法。 |
出願番号: | 2009125224 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 13/04 |
小林 貴幸 渡辺 賢一 松本 誠 若林 巧己 畑山 明人 JP 2010271268 公開特許公報(A) 20101202 2009125224 20090525 炭素繊維束の樹脂含浸性の評価方法。 三菱レイヨン株式会社 000006035 小林 貴幸 渡辺 賢一 松本 誠 若林 巧己 畑山 明人 G01N 13/04 20060101AFI20101105BHJP JPG01N13/04 2 1 OL 16本発明は炭素繊維束の樹脂含浸性の評価方法に関する。繊維束への樹脂の含浸性は繊維複合材料の物性に大きな影響を与える。含浸性が低いと、たとえば繊維束と樹脂が複合していない部分が発生して、複合材料としての特性を発現しない問題がある。逆に、含浸性が高いと成型方法にもよるが、繊維束が樹脂を余分に保持するため、その余分な樹脂を系外へ放出する際に繊維束が蛇行し、繊維複合材料の物性低下をおこす問題がある。繊維束への樹脂の含浸性を定量的に評価する手法として特許文献1によれば、繊維束を樹脂槽に5秒間浸漬して、その後、前記繊維束に含浸した樹脂量を計量する方法が提示されている。また、非特許文献1では、繊維束に樹脂が含浸する過程を経時的に測定することで繊維束の濡れ性を評価している。特開2006−151690号公報A WICKING METHOD FOR MEASURING WETTING PROPERTIES OF CARBON YARNS (JOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE VOLUME42,ISSUE2 298−309) しかし、特許文献1の方法では、繊維束に樹脂が含浸する過程を経時的に測定することはできない問題があった。 一方、非特許文献1の方法では、炭素繊維束を詰めたチューブごと樹脂液に接触させているため、繊維束とチューブとの間にも樹脂が含浸し、これによりチューブの表面張力を考慮する必要があり、データの取り扱いが明確になっていないため、簡便な手法でない問題があった。 本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであって、繊維束の樹脂含浸性を経時的にかつ簡便に測定する評価方法を提供することを目的とする。 本発明が要旨とするところは、下記の(1)〜(4)を順に行う炭素繊維束の下記の手順を順に行う繊維束の樹脂含浸性評価方法である。(1)チューブに、そのチューブの軸方向に繊維束を配向するとともに、繊維束の切断面がチューブ端から3〜10mm突き出すようにして詰めて、試験片を作成する。(2)試験片を荷重計に繊維束の突き出た方を下にして吊り下げる。(3)突き出た繊維束を樹脂液に浸漬する。(4)荷重計の読みの経時変化を記録する。 上記チューブとして、透明または半透明のチューブを用いることが好ましい。繊維束の樹脂含浸性を経時的にかつ簡便に測定する評価方法が得られる。本発明の一実施形態を示す繊維束の樹脂含浸性の評価方法で用いる試験片を表した概略図である。本発明の評価方法で用いる荷重−時間曲線の概念図である。本発明の実施例の荷重−時間曲線である。本発明の比較例の荷重−時間曲線である。120cmに切り出した炭素繊維束を20cm毎に折り返して、20cmに切り出した炭素繊維束とあわせた概念図である。図5の炭素繊維束2に針金3を通した概念図である。本発明の実施例で用いる試験片の調整方法の概念図である。本発明の比較例で用いる試験片の調整方法の概念図である。本発明の実施例で用いる試験片の調整方法の概念図である。本発明の比較例で用いる試験片の調整方法の概念図である。本発明の実施例で用いる試験片の調整方法の概念図である。本発明の比較例で用いる試験片の調整方法の概念図である。本発明の実施例で用いる試験片を表したの概念図である。本発明の比較例で用いる試験片を表したの概念図である。本発明の実施例で用いた試験片の評価方法を表したの概念図である。本発明の比較例で用いた試験片の評価方法を表したの概念図である。本発明は炭素繊維束の樹脂含浸性の評価方法である。『繊維束』 本発明の評価方法は、対象となる繊維束を何ら限定されるものではない。炭素繊維束の樹脂含浸性は、実施例で示したように、よく評価できる。ポリアクリロニトリルを出発物質とするPAN系炭素繊維束であろうと、ピッチを出発物質とするピッチ系炭素繊維束であろうと同じである。『樹脂液』 本発明の評価方法では、樹脂液としては、繊維束に含浸する粘度を持つものであればよく、対象となる樹脂液を選ばない。仮に常温で固体であっても加温によって低粘度化できればよい。『チューブ』 本発明の評価方法で用いるチューブは、チューブ内の状況が確認できる点で透明または半透明が好ましい。 作業性の観点からチューブは、長さ5〜100mm、内径0.5〜10mmであることが好ましい。 チューブの厚みは、吊り下げに耐える機械的強度が満足される範囲でより薄いことが好ましい。 チューブの材質は、繊維束の切断面がチューブ端から3〜10mm突き出すように加工できるよう、刃物など手作業で切断できる材質であることが好ましい。『チューブへの繊維束の詰め込み』 本発明では、チューブに、そのチューブの軸方向に繊維束を配向するとともに、繊維束の切断面がチューブ端から3〜10mm突き出すようにして詰めて、試験片を作成する。 繊維束の切断面がチューブ端から3〜10mm突き出すようにするのは、チューブの軸方向に繊維束を配向させて詰め込んでおき、繊維束の切断面を得るためチューブごと繊維束を切断し、そののち、繊維束を他方から押し出す方法や繊維束の切断面を得るためチューブごと繊維束を切断し、そののち、チューブ部のみ3〜10mm切除する方法が採用できる。 測定精度の観点から繊維束の突出した切断面は、繊維軸に垂直な平面状であることが好ましく、また繊維束の上端はチューブ上端と同位置であることが好ましい。『試験片の吊り下げ』 本発明では、以上のようにして得られた試験片をそれに設けたフック等により、繊維束の突き出た方を下にして荷重計に吊り下げる。フックの一端とチューブを接合するために粘着テープを用いても構わない。『荷重計』 本発明で用いる荷重計は、吊り下げ型で荷重が検出できる機構を備えていれば特に限定されない。例えば表面張力計を用いることも可能である。『樹脂液への浸漬』 本発明で試験片の繊維束の突出した切断面は、樹脂槽中の樹脂液に浸漬される。樹脂層は、樹脂液による変性が無い材質が好ましい。また樹脂液を加温する場合があるので、耐熱性の材質が好ましい。好ましい樹脂槽としてガラス製シャーレが挙げられる。 浸漬に際して、荷重計を上下させることは荷重検出の誤差が生じるため、樹脂槽を上下させることが好ましい。 本発明の最大のポイントは、繊維束の突出した切断面のみを樹脂液を接触させ、チューブは浸漬しないことである。これによりチューブの表面張力を考慮する必要が無くなる。『荷重計読みの経時変化の記録』 本発明では、荷重計読みの経時変化を記録する。これにより荷重−時間曲線W(t)(図2、tは時間)を得る。時間は、ストップウォッチなどの計測器具、荷重は荷重計の指示値を読み取れば良い。 荷重計に表面張力計を用いた場合は、力から荷重を換算すればよい。測定終了は、得たい含浸性の情報によって異なるので特に限定されない。『含浸性の評価』 本発明で得られたデータの処理は以下のようにして行うことができる。 測定終了時の荷重計の読みWa(gf)を得たのち、試験片を樹脂液から放し、荷重計を読む(Wb(gf))。そして、荷重−時間曲線w(t)を、下式により計算する。 w(t)=W(t)−(Wa−Wb) =W(t)−Wa+Wbここで、荷重Wa(gf)は、繊維束に含浸した樹脂液量と繊維束の周囲に沿ってはたらく表面張力の和である。荷重Wb(gf)は、繊維束に含浸した正味の樹脂液量である。したがって、Wa−Wbは、繊維束の周囲に沿ってはたらく表面張力に相当する値である。 時間tにおける荷重計の読みW(t)からWa−Wbを差し引いたw(t)(図2の荷重−時間曲線B)は、繊維束に含浸した樹脂液量ということになる。 繊維束に樹脂液が接触したとき、極めて短時間で大量の樹脂液が含浸され、さらに含浸量が徐々に増加する領域があり、最後に樹脂液が含浸しなくなる。例えば測定時間を1秒にすることにより、極短時間で樹脂液が含浸される挙動を把握することが可能であり、測定時間を5分にすれば5分後の樹脂液の含浸量が把握することが可能である。 なお、炭素繊維束とチューブとの間にも樹脂が含浸する場合がある。この現象はチューブ内壁がぬれた状態となって判断できる。このぬれた部分が3箇所以下でそれぞれ3mm角に収まっていれば、炭素繊維束とチューブとの間に含浸した樹脂量は無視できるくらい小さいと判断できる。 試験片を複数用意して、試験数を増やすことによって、測定精度が向上する。必要な測定点数は、測定のバラツキにも依るため特に限定されない。以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。<繊維束> 炭素繊維束1と2を用意した。炭素繊維束1は、ストランド強度が506kgf/mm2、目付け828g/m、密度1.831g/cm3の炭素繊維束であり、炭素繊維束2は、ストランド強度が518kgf/mm2、目付け822g/m、密度1.827g/cm3の炭素繊維束である。さらに、炭素繊維束1と2とは、付着されたサイズ剤の種類および量が異なる。<樹脂液> 樹脂液として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製 JER828)を用意した。<試験片の作製> チューブとして、外径6mm、内径4mmのシリコンチューブを用意した。 まず炭素繊維束から120cmと20cmを切りだす。次に120cmに切り出したものを20cm毎に折り返して20cmに切り出したものとあわせた(図5)。この繊維束の中心部分を針金で引っ掛けて繊維束を半分に折りたたみ(図6)、続いて長さ25mm、10mm、25mmにカットしたチューブの片側から針金を通して(図7a)、針金の先端をもう一方の側から引き出し、図8aの形状物を得た。次にこの形状物のチューブ中央部および両端からチューブ中央部に向かって5mmのところを、チューブ軸に垂直な向きにカミソリで切断した。この段階で長さ5mm、20mmにカットしたチューブに14本の繊維束が満たされた形状物が2つ出来る。次に前記形状物から長さ5mmにカットしたチューブをはずした形状物を得た(図9a)。次にフック10を前記形状物に粘着テープ4で固定させた。以上の操作により試験片(図10a)を得た。<樹脂槽>樹脂を低粘度化することを目的に、ガラス製シャーレに樹脂を注いだ樹脂槽を恒温槽(協和界面科学社製、製品名:TC−1型恒温槽)に取り付けて温度を120℃に設定した。<荷重計>荷重計には表面張力計(協和界面科学社製、製品名:CBVP-A3型)を用いた。なお、前記表面張力計は前記恒温槽が取り付けられる機構および恒温槽に取り付けた樹脂槽を恒温槽ごと上下させる機構を有している。<荷重−時間曲線A> 試験片を表面張力計に取り付け、その下部に恒温槽に取り付けられた樹脂槽を配置した。次に恒温槽を上昇させて、試験片の下部が樹脂槽に接触した時点で上昇を停止させ、この時間を0秒とした。測定終了時間を5分として、時間が5秒、15秒、30秒、これ以降30秒おき5分まで荷重計が示す数値を読み取って荷重−時間曲線Aを得た。<荷重−時間曲線B>測定終了時間になったらその時の荷重aを読み取り、次に恒温槽を下降させ試験片の下部を樹脂槽から離れた時点で下降を停止させ、この時の荷重bを読み取った。荷重−時間曲線Aから荷重(a−b)を差し引いた荷重−時間曲線Bを得た。<炭素繊維束の樹脂含浸性>上記操作を炭素繊維束a、bについてそれぞれ6回実施して、読み取った数値の平均値を横軸に時間[分]、縦軸に重量[mg]でプロットした(図3)。測定終了時刻(5分後)の荷重は平均±標準偏差で記すと、炭素繊維束aは81±7mg、炭素繊維束bは69±3mgであった。以上の結果から、炭素繊維束aは炭素繊維束bに比べて樹脂含浸性が良いことが分かった。この結果からサイズ剤の種類および量が樹脂含浸性に影響を与え、さらには物性に影響を与えていることが推定された。なお、炭素繊維束とチューブとの間に含浸した樹脂量は無視できるくらい小さかった。<比較例>実施例の<試験片の作製>において次の操作を行うことにより、チューブから繊維束が露出していない試験片を作製した。<比較例の試験片の作製>チューブは外径6mm、内径4mmのシリコンチューブを用いた。まず炭素繊維束を120cmと20cmを切りだす。次に120cmに切り出したものを20cm毎に折り返して20cmに切り出したものとあわせた(図5)。この炭素繊維束の中心部分を針金で引っ掛けて炭素繊維束を半分に折りたたみ(図6)、続いて長さ50mmにカットしたチューブの片側から針金を通して(図7b)、針金の先端をもう一方の側から引き出し、図8bの形状物を得た。次にこの形状物のチューブ中央部および両端からチューブ中央部に向かって5mmのところを、チューブ軸に垂直な向きにカミソリで切断した。この段階で長さ20mmにカットしたチューブに14本の炭素繊維束が満たされた形状物が2つ出来る(図9b)。次にフック10に前記形状物に粘着テープ4で固定させた。以上の操作により試験片(図10b)を得た。試験片の作製以外は実施例と同じ方法で樹脂含浸性を評価した。すなわち比較例において『試験片の下部』を樹脂に接触させることは、チューブも樹脂に接触することである。荷重−時間曲線Bを図4に示す。測定終了時刻(5分後)の荷重は平均±標準偏差で記すと、炭素繊維束aは116±4mg、炭素繊維束bは117±9mgであった。以上の結果から、炭素繊維束a、bの樹脂含浸性に有意差は確認できなかった。また、炭素繊維束とチューブとの間に含浸した樹脂量は無視できない量であり、この寄与の取り扱いを明確にする必要性が生じたが、解決できなかった。1 チューブ2 炭素繊維3 針金4 粘着テープ5 樹脂6 樹脂槽10 フック 下記の(1)〜(4)を順に行う炭素繊維束の下記の手順を順に行う繊維束の樹脂含浸性評価方法。(1)透明または半透明のチューブに、そのチューブの軸方向に繊維束を配向するとともに、繊維束の切断面がチューブ端から3〜10mm突き出すようにして詰めて、試験片を作成する。(2)試験片を荷重計に繊維束の突き出た方を下にして吊り下げる。(3)突き出た繊維束を樹脂液に浸漬する。(4)荷重計の読みの経時変化を記録する。チューブとして、透明または半透明のチューブを用いる、請求項1記載の繊維束の樹脂含浸性評価方法。 【課題】本発明は繊維束の樹脂含浸性の評価方法に関する。【解決手段】下記の(1)〜(4)を順に行う炭素繊維束の下記の手順を順に行う繊維束の樹脂含浸性評価方法。(1)透明または半透明のチューブに、そのチューブの軸方向に繊維束を配向するとともに、繊維束の切断面がチューブ端から3〜10mm突き出すようにして詰めて、試験片を作成する。(2)試験片を荷重計に繊維束の突き出た方を下にして吊り下げる。(3)突き出た繊維束を樹脂液に浸漬する。(4)荷重計の読みの経時変化を記録する。【選択図】図120090526A16333請求項13 下記の(1)〜(4)を順に行う繊維束の樹脂含浸性評価方法。(1)チューブに、そのチューブの長手方向と繊維束の長手方向を一致させるとともに、繊維束の切断面がチューブ端から3〜10mm突き出すようにして詰めて、試験片を作成する。(2)試験片を荷重計に繊維束の突き出た方を下にして吊り下げる。(3)突き出た繊維束を樹脂液に浸漬する。(4)荷重計の読みの経時変化を記録する。A1633000083本発明が要旨とするところは、下記の(1)〜(4)を順に行う繊維束の樹脂含浸性評価方法である。(1)チューブに、そのチューブの長手方向と繊維束の長手方向を一致させるとともに、繊維束の切断面がチューブ端から3〜10mm突き出すようにして詰めて、試験片を作成する。(2)試験片を荷重計に繊維束の突き出た方を下にして吊り下げる。(3)突き出た繊維束を樹脂液に浸漬する。(4)荷重計の読みの経時変化を記録する。 上記チューブとして、透明または半透明のチューブを用いることが好ましい。A1633000153チューブの材質は、繊維束の切断面がチューブ端から3〜10mm突き出すように加工できるよう、刃物など手作業で切断できる材質であることが好ましい。『チューブへの繊維束の詰め込み』 本発明では、チューブに、そのチューブの長手方向と繊維束の長手方向を一致させるとともに、繊維束の切断面がチューブ端から3〜10mm突き出すようにして詰めて、試験片を作成する。A1633000163繊維束の切断面がチューブ端から3〜10mm突き出すようにするのは、チューブの長手方向と繊維束の長手方向を一致させて詰め込んでおき、繊維束の切断面を得るためチューブごと繊維束を切断し、そののち、繊維束を他方から押し出す方法や繊維束の切断面を得るためチューブごと繊維束を切断し、そののち、チューブ部のみ3〜10mm切除する方法が採用できる。