生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_X線光電子分光分析方法
出願番号:2009121940
年次:2010
IPC分類:G01N 1/36,G01N 23/227


特許情報キャッシュ

山脇 健太郎 JP 2010271120 公開特許公報(A) 20101202 2009121940 20090520 X線光電子分光分析方法 凸版印刷株式会社 000003193 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ 110000408 山脇 健太郎 G01N 1/36 20060101AFI20101105BHJP G01N 23/227 20060101ALI20101105BHJP JPG01N1/28 RG01N23/227 4 1 OL 12 2G001 2G052 2G001AA01 2G001BA08 2G001CA03 2G001GA01 2G001MA04 2G001NA03 2G001NA18 2G001QA02 2G001RA03 2G001RA10 2G052FD11 2G052GA19 本発明は、X線光電子分光分析方法に関し、特に、簡易的な方法で粉末試料の飛散を防止するX線光電子分光分析方法に関する。 従来から、固体試料面の表面を分析する手法として、X線光電子分光法、オージェ電子分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法が知られている。その中でも、X線光電子分光法(XPS;X−ray Photoelectron Spectroscopy)は、帯電の影響が比較的低く中和機能も有効的であることから、金属以外に各種無機物やセラミックス、有機化合物等の絶縁材料の表層数nm領域における組成分析や化学結合状態の分析方法として広く活用されている。 XPS分析に供する試料としては、固体物質として粉末状の場合がある。粉末状の場合、最も懸念されるのが、高真空下のXPS測定室での微弱な振動(試料台の移動等)や各種ビームの照射により粉末試料が飛散し、測定室を汚染する可能性があることである。 XPS分析では、固体表面の組成元素を0.1%まで検出できるので、測定室内に粉末物質が滞留すると測定結果に影響を与える他に、X線源やイオン銃のフィラメントを汚染して絶縁不良を引き起こし、X線アノードの劣化によるゴーストピークの出現やフィラメント断線等の不具合に繋がる。また、測定室内の排気に使用しているターボ分子ポンプやイオンポンプの早期劣化の原因になる等、諸々な問題の要因になってしまう。 さらに、固体試料のXPS分析では組成元素の化学状態を解析する際、通常その元素のケミカルシフト表やデータ集を参考にしているが、データベースに無いものや100%その化合物である事を裏付ける手段として標準試料と比較する必要がある。しかし、試薬品の多くは粉末状であるため、装置内汚染の恐れからなかなか出来ないのが実情である。 従来の粉末試料のXPS分析法としては、非特許文献1に記載されている粘着法、詰め込み法及びペレット法の3種類の方法がある。粘着法は、両面テープやIn(インジウム)等の柔らかい金属に粉末試料を押し付けて固定化する方法であり、詰め込み法は、穴の空いた板・試料ホルダに粉末試料を詰め込む方法であり、ペレット法は、粉末試料を成形しディスク状にしたものを固定化する方法である。しかし、粘着法、詰め込み法及びペレット法では、何れも試料飛散の可能性があり装置汚染防止に対して完全に有効とは言えない。具体的には、粘着法によれば、固定化する粉末微粒子は粘着テープに接する僅かな微粒子のみなので、それ以外の多くの微粒子が飛散する可能性が高く、詰め込み法によれば、当然、粉末微粒子は穴の中に置かれているだけなので、表面上の微粒子が振動や衝撃で飛散する恐れがあり、ペレット法では、粉末微粒子に圧力を加えて錠剤化した場合、一体化(バルク化)できるものもあるが、多くのものは微粒子間で結着力が無いので、粉々になって微粒子が飛散してしまう。X線光電子分光法、56頁、日本表面化学会編、丸善(1995年) 本発明は、簡易的な方法で粉末試料の飛散を防止するX線光電子分光分析方法を提供することを目的とする。 本発明の請求項1に係る発明は、粉末試料にバインダを混合及び分散し、バインダを混合及び分散した粉末試料を成形して錠剤(ペレット)化し、錠剤を試料とすることを特徴とするX線光電子分光分析方法としたものである。 本発明の請求項2に係る発明は、バインダがパラフィンであることを特徴とする請求項1に記載のX線光電子分光分析方法としたものである。 本発明の請求項3に係る発明は、パラフィンの融点が、44℃以上58℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のX線光電子分光分析方法としたものである。 本発明の請求項4に係る発明は、パラフィンの含有率が、5重量%以上10重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のX線光電子分光分析方法としたものである。 本発明によれば、簡易的な方法で粉末試料の飛散を防止するX線光電子分光分析方法を提供することができる。本発明の実施の形態に係る錠剤試料の作製手順及びXPS分析までのフローを示す図である。本発明の実施例1に係るパラフィン単体のXPSワイドスペクトルを示す図である。(a)〜(c)は、本発明の実施例1に係るパラフィン単体のXPSナロースペクトルを示す図である。本発明の実施例1に係るパラフィン含有率10wt%の酸化チタン錠剤試料のXPSワイドスペクトルを示す図である。(a)〜(c)は、本発明の実施例1に係るパラフィン含有率10wt%の酸化チタン錠剤試料のXPSナロースペクトルを示す図である。本発明の実施例2に係るパラフィン単体のXPSワイドスペクトルを示す図である。(a)〜(c)は、本発明の実施例2に係るパラフィン単体のXPSナロースペクトルを示す図である。本発明の実施例2に係るパラフィン含有率10wt%の酸化チタン錠剤試料のXPSワイドスペクトルを示す図である。(a)〜(c)は、本発明の実施例2に係るパラフィン含有率10wt%の酸化チタン錠剤試料のXPSナロースペクトルを示す図である。本発明の実施例1に係るパラフィン含有率10wt%の酸化チタン錠剤試料のSEM写真である。本発明の実施例2に係るパラフィン含有率10wt%の酸化チタン錠剤試料のSEM写真である。 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。 本発明の実施の形態は、XPS分析に供する試料が粉末の場合、従来の方法では、装置内で粉末試料が飛散する可能性が高く、装置内汚染による測定結果への影響や装置付属機器の不具合に繋がってしまう。そこで、粉末試料1にパラフィンをバインダ2として混合し錠剤化することで固定化し、装置内で粉末試料1の飛散を防止する。 図1は、本発明の実施の形態に係る錠剤試料の作製手順及びXPS分析までのフローを示す図である。図1に示すように、本発明の実施の形態に係る錠剤試料の作製手順及びXPS分析までのフローは、まず、粉末試料1にバインダ2を混合及び分散して、次に、バインダ2に混合及び分散した粉末試料1を錠剤成形3の錠剤成形器4で約3mmの錠剤試料5に成形して、次に、成形した錠剤試料5をXPS分析用試料台6に配置する。 本発明の実施の形態に係るバインダ2にはパラフィンを用いることが好ましい。パラフィンは炭化水素化合物であり、特に直鎖状飽和脂肪族が好適である。また、ほとんどの化合物に対して反応性が低い特徴を有しており、分子量で制御された融点範囲の狭い、すなわち純度の高いパラフィンが安価で市販の試薬品として入手可能である。そのため分析分野では、組織観察用の包埋樹脂として使用されている。包埋樹脂として使用されていることからも、粉末試料1のバインダ2として粉末試料1の飛散防止に好適に用いることができる。 さらに、パラフィンの組成元素としてはC(炭素)と水素(H)のみなので、XPS分析で得られるスペクトルではC1sスペクトルしか検出されず粉末試料の定性分析に対して殆ど妨げにならず、特に無機系化合物では全く影響がない利点を有している。そして、パラフィンはC−C結合しか無いのでXPSスペクトルの帯電によるピーク位置補正が容易で且つ正確であり粉末試料1の化学状態解析の精度が向上し、標準試料を使った標準スペクトルの解析にも有用と考えられる。 粉末試料1とパラフィン2との混合には一般的な乳鉢を使用し、2成分が均一に分散する様に混合する。混合試料は、IR分析のKBr法の際に使用する様な錠剤成形機4で錠剤化すれば良く、作製した錠剤試料5は、導電性の両面粘着テープ等でXPS分析用試料台6に貼り付ければ良い。 また、バインダ2として使用するパラフィンは、融点が44℃以上58℃以下の範囲が好ましい。パラフィンの融点が44℃未満だと、バインダ2としての結着力が低下してしまい、融点が58℃を超えると、バインダ2が硬くて混合し難くなり均一な錠剤(ペレット)が得られなくなってしまう。 さらに、粉末試料1とバインダ2の混合比は出来る限りバインダ2の比率が少ない方が、粉末試料1由来のXPSスペクトルを高感度で解析できるので好ましいが、バインダ2の量が少な過ぎると粉末試料1とバインダ2との結着力が低下して粉末試料1が飛散してしまう。そこで、本発明者が鋭意検討した結果、バインダ2の量が全体の5重量%以上10重量%以下までであれば、粉末試料1の飛散の恐れの無い良好な錠剤が成形できる。 本発明の実施の形態によれば、XPS測定室内で粉末試料1の飛散を防止するばかりでなく、粉末試料1に使用するバインダ2が高純度パラフィンのため、組成元素がC(炭素)、H(水素)のみと粉末試料1の組成元素の検出の妨げに殆ど成らない利点を有している(HはXPSでは検出不可)。 また、通常、XPSスペクトルの帯電によるピーク位置補正にはコンタミ等で必ず検出されるC−C結合ピークの位置で行うが、本発明の実施の形態ではバインダ2として高純度のパラフィンを使用しているためC−C結合ピーク位置による補正が正確であり、粉末試料1の化学状態解析の精度が向上し、標準試料を使った標準スペクトルの解析にも好適に用いることができる。 次に、本発明を具体的な実施例を挙げて以下に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。まず、本発明の参考例について説明する。 酸化チタン粉末(高純度化学研究所製)と融点が44℃−46℃のパラフィン(関東化学社製)との混合比をバインダの含有率が5wt%以上80wt%以下の範囲で適宜調整し、それらを乳鉢で良く混合及び分散させた後、IR分析用錠剤成形機で錠剤化させて成形性や粉末試料の飛散の可能性を評価した。 実施例1のうち使用したパラフィンを融点が56℃−58℃に変更した以外、実施例1と同様な手順を行った。[比較例1] 実施例1のうち使用したパラフィンをKBr結晶に変更した以外、実施例1と同様な手順を行った。[比較例2] 酸化チタン粉末(高純度化学研究所製)に対して、従来の固定方法である粘着法、詰め込み法及びペレット法によって固定化し各粉末試料の飛散の可能性を評価した。 以下の表1に、実施例1、実施例2及び比較例1で作製した各錠剤試料の成形性や粉末試料の飛散の可能性について評価した結果を示し、表2に比較例2で行った従来の固定方法による粉末試料についての評価結果を示す。 上記の表1に示す結果から、本発明の実施例1及び実施例2に係る錠剤試料は、バインダ含有率が10wt%まで低くしても成形性は良好であり、粉末試料の飛散の可能性も無いと評価できた。一方、比較例1のKBr結晶を使用した場合には、含有率が80wt%で割れ易く粉が出る結果となり、表2に示す結果から比較例2の従来の各XPS分析方法でも、粉末試料の飛散が確認された。 以下、実施例1及び実施例2で成形した錠剤の表面分析を行ったXPS分析装置と形態観察を行ったSEM(走査電子顕微鏡)装置は、次の条件で測定した。 XPS分析装置 Quantam−2000 (アルバック・ファイ社製) XPS測定条件 X線源 :モノクロ−Al X線出力:25W(15kV) 測定面積:100μmΦ SEM分析装置 S−4800(日立製作所製) SEM観察条件 加速電圧:10kV 観察視野:×1.5k×5k バインダとして使用しているパラフィンと実施例1及び実施例2で最も実用的と思われるバインダ含有率が10wt%の各錠剤試料について、実際にXPSによる表面分析を行った。 表面分析の結果を図2、3、6及び7に示す。図2は、本発明の実施例1に係るパラフィン単体のXPSワイドスペクトルを示す図である。図3は、本発明の実施例1に係るパラフィン単体のXPSナロースペクトルを示す図であり、(a)は図2のC1sを示し、(b)は図2のN1sを示し、(c)は図2のO1sを示す。図6は、本発明の実施例2に係るパラフィン単体のXPSワイドスペクトルを示す図である。図7は、本発明の実施例2に係るパラフィン単体のXPSナロースペクトルを示す図であり、(a)は図6のC1sを示し、(b)は図6のN1sを示し、(c)は図6のO1sを示す。 図2、3、6及び7より、先ずバインダとして使用した2種類のパラフィンは共にCのみが検出され、不純物由来の元素が無いことを確認でき、C1sナロースペクトル上には、綺麗なガウス型のC−C結合ピークしか無いことが確認できた(図2、3、6及び7参照)。 次に、実施例1及び実施例2で最も実用的と思われるバインダ含有率が10wt%の各錠剤試料のXPS分析の結果を図4、5、8及び9に示す。図4は、本発明の実施例1に係るパラフィン含有率10wt%の酸化チタン錠剤試料のXPSワイドスペクトルを示す図である。図5は、本発明の実施例1に係るパラフィン含有率10wt%の酸化チタン錠剤試料のXPSナロースペクトルを示す図であり、(a)は図4のC1sを示し、(b)は図4のO1sを示し、(c)は図4のTi2pを示す。図8は、本発明の実施例2に係るパラフィン含有率10wt%の酸化チタン錠剤試料のXPSワイドスペクトルを示す図である。図9は、本発明の実施例2に係るパラフィン含有率10wt%の酸化チタン錠剤試料のXPSナロースペクトルを示す図であり、(a)は図8のC1sを示し、(b)は図8のO1sを示し、(c)は図8のTi2pを示す。 図4、5、8及び9より、酸化チタンに対応した元素組成比であることと、O1s、及びTi2pナロースペクトルから酸化チタンに対応したケミカルシフトであることを確認できた(表3、図4、5、8及び9参照)。 また、同様の各錠剤試料面のSEM観察の結果を図10及び11に示す。図10は、本発明の実施例1に係るパラフィン含有率10wt%の酸化チタン錠剤試料のSEM写真である。図11は、本発明の実施例2に係るパラフィン含有率10wt%の酸化チタン錠剤試料のSEM写真である。 図10及び11より、何れの錠剤試料も均一に酸化チタン粉末が分散されていることを確認できた(図10、11参照)。 バインダ含有率が10wt%の各錠剤試料面のXPS測定結果を表3に示す。 以上から、本発明のX線光電子分光分析方法によって粉末試料の飛散を防止し、粉末試料由来のXPSスペクトルを解析できることを確認した。 本発明は、粉末試料をX線光電子分光法(XPS;X−ray Photoelectron Spectroscopy)で好適に分析することができる。1…粉末試料、2…バインダ(パラフィン)、3…錠剤成形、4…錠剤成形機、5…錠剤試料、6…XPS分析用試料台 粉末試料にバインダを混合及び分散し、 前記バインダを混合及び分散した前記粉末試料を成形して錠剤(ペレット)化し、 前記錠剤を試料とすることを特徴とするX線光電子分光分析方法。 前記バインダがパラフィンであることを特徴とする請求項1に記載のX線光電子分光分析方法。 前記パラフィンの融点が、44℃以上58℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のX線光電子分光分析方法。 前記パラフィンの含有率が、5重量%以上10重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のX線光電子分光分析方法。 【課題】XPS分析に供する試料が粉末の場合、従来の方法では、装置内で粉末試料が飛散する可能性が高く、装置内汚染による測定結果への影響や装置付属機器の不具合に繋がってしまうため、簡易的な方法で粉末試料の飛散を防止するX線光電子分光分析方法を提供する。【解決手段】粉末試料にバインダを混合及び分散し、バインダを混合及び分散した粉末試料を成形して錠剤(ペレット)化し、錠剤を試料として、バインダにはパラフィンを用いて、パラフィンの融点が44℃以上58℃以下であり、パラフィンの含有率が5重量%以上10重量%以下であることを特徴とするX線光電子分光分析方法。【選択図】図1


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