生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_柑橘果実の自然な香味を向上させる柑橘果実混合物及びそのアルコール抽出液
出願番号:2009103473
年次:2010
IPC分類:A23L 1/222,C12G 3/06


特許情報キャッシュ

日高 幸一郎 JP 2010252640 公開特許公報(A) 20101111 2009103473 20090421 柑橘果実の自然な香味を向上させる柑橘果実混合物及びそのアルコール抽出液 サントリーホールディングス株式会社 309007911 小野 新次郎 100140109 社本 一夫 100089705 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 中田 尚志 100133765 日高 幸一郎 A23L 1/222 20060101AFI20101015BHJP C12G 3/06 20060101ALI20101015BHJP JPA23L1/222C12G3/06 6 OL 12 4B015 4B047 4B015MA03 4B047LB03 4B047LE01 4B047LF07 4B047LG38 4B047LP01 本発明は、柑橘果実より得られるピールオイル及びパルプセルを混合してなる組成物、該組成物から製造されるアルコール抽出液、及び該アルコール抽出液の製造方法に関する。 柑橘果実には、レモン、ライム、グレープフルーツ、オレンジ、ミカン、ハッサク、などがあるが、爽やかな芳香や甘酸味を有することから果実飲料を始めとする飲食品の原料として大変人気がある。特にアルコール飲料のチューハイでは、売上の大部分をレモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘果実風味のものが占めている。 柑橘果実風味のアルコール飲料の品質設計にあたっては、果実から得られる果汁原料の品質が重要であるが、香料の品質もまた、それに勝るとも劣らず重要である。例えば、柑橘果実から得た各種香気成分を濃縮・精製することにより、柑橘風味の香料が多数開発されている。具体的には柑橘果実の外果皮に存在する油胞から抽出した精油を原料とするもの(ピールオイル)、果汁中に微量含有されている香気成分を濃縮工程で回収したもの(エッセンスオイル)、TASTE濃縮機から回収されるエッセンス(又はアロマ)などが知られている。そのような香料を各種調合したものが柑橘果実風味のアルコール飲料に利用されている。 一方、リキュールにおいては、種々の芳香性原料を処理することによって多様な品質を実現していることが知られている。芳香性原料としては、ハーブ、果実、ビーンズなど様々原料が使用される。芳香性原料から抽出された香味を賦与された原酒は、リキュール製品のみならず、アルコール飲料を始めとする各種飲食品の原料として利用されている。 芳香性原料から香味を抽出する方法としては、浸漬法、蒸留法があり、浸漬法はさらに冷浸法、温浸法に分けられる。これらの処理方法は、芳香性原料の特性と目標品質に応じて設定される。冷浸法は、主に果実からの香味抽出に多用される方法で、梅酒がその代表である。温浸法は、ハーブ等に使用される方法で、温湯に浸し、数日後湯温が下がってからニュートラルスピリッツなどを加えて浸漬抽出を継続する特殊な浸漬法である。蒸留法は、ハーブ、キュラソー柑皮など精油分を主とする香気成分の抽出に適している。 柑橘果実の香味成分の抽出には、蒸留法や冷浸法が適している。冷浸法によれば、柑橘果実をそのまま、または粉砕して、アルコールに浸漬することによって製造される。 得られた柑橘果実の浸漬液を蒸留する方法が、蒸留法である。これは、キュラソーなどのリキュールで実施されている。香料のような刺激的な香りではなく、調和のとれた香りが得られる特徴がある。最新果汁・果実飲料事典(社団法人 日本果汁協会監修)酒の科学、1995年2月1日初版第1刷、編集者:吉澤淑、発行所:朝倉書店 このように、柑橘果実を用いて、その風味を活かした多様なアルコール飲料が開発されている。しかし、柑橘果実の持つ自然な風味を表現するという点では、必ずしも十分なものではない。 例えば、柑橘果実から得た香料は、果実の一部の香気成分を濃縮・精製したものであるため、複数の香料を調合したとしても、香り全体として強調されすぎる部分や、逆に不足して感じられる部分ができ、柑橘果実の持つ自然な風味を表現することは難しい。 また、リキュールの手法によって製造された原酒をアルコール飲料の原料として用いる場合にも問題がある。 例えば、冷浸法によって香味成分を多く抽出するためには、長期間が必要とされることが多い。そのため、柑橘果実の香味成分は、酸性下に長期間置かれることになり、劣化を受けやすいという欠点がある。また、水溶性成分も抽出されるため、アルコールと共存することで沈殿を生じやすいという問題もある。 蒸留法による場合は、香料のような刺激的な香りではなく、調和のとれた香りが得られる特徴があるが、味わいに効果のある成分を得ることができないため、果実らしい味わいに欠けるという問題がある。 そのため、柑橘果実の自然な風味と、味わい豊かな果汁感を有するアルコール飲料を製造する新たな技術が切望されている。 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、柑橘果実のパルプセルと、ピールオイルとを混合してなる組成物を用いてアルコール抽出液を製造し、さらにこのアルコール抽出液を使用したアルコール飲料を製造したところ、驚くべきことに、このアルコール飲料は、香りが自然で、果汁の味わいが強く感じられることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、1.柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られるピールオイルとを混合してなる組成物、2.前記1に記載の組成物にアルコールを添加し混合すること、及び、該混合物から不溶性成分を除去することによって得られるアルコール抽出液、3.前記添加するアルコールの濃度が35v/v%〜60v/v%である、前記2に記載のアルコール抽出液、4.柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られるピールオイルとを混合してなる組成物にアルコールを添加し混合する工程、及び、該工程で得られた混合物から不溶性成分を除去する工程、を含むアルコール抽出液の製造方法、5.前記添加するアルコールの濃度が35v/v%〜60v/v%である、前記4に記載の製造方法、6.柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られたピールオイルとを混合してなる柑橘果実混合物に、アルコールを添加し、混合後、不溶性成分を除去してなるアルコール抽出液によって、アルコール飲料の柑橘果実由来の香味を向上させる方法、に関する。 本発明により、柑橘果実の香味が向上したアルコール抽出液、及び該アルコール抽出液より製造されるアルコール飲料を提供することができる。図1は、実施例1のレモンチューハイについての官能評価結果を示す。図2は、アルコール抽出液のGC/MS分析結果を示す。図3は、実施例3のレモンチューハイについての官能評価結果を示す。<組成物> 本発明の組成物は、柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られるピールオイルとを混合することによって得られる混合物である。パルプセルとピールオイルとが混合されることにより、柑橘果実の自然な香味と味わい豊かな果汁感が形成される。また、該組成物をアルコール抽出した場合、それぞれの原料単体でアルコール抽出しても生成されない香気成分が生成される。該組成物及びそのアルコール抽出液を、飲食品に添加することによって、該飲食品に柑橘果実の自然な香味と味わい豊かな果汁感を賦与することができる。 柑橘果実のパルプセルとは、柑橘果実の搾汁工程において細断されたじょうのう膜を収集したものであり、具体的には、果実搾汁工程で得られた果汁に混入しているじょうのう膜を、パルパーフィニッシャーによって果汁から分離除去して得られる。該パルプセルの大きさ・性状は特に制限されない。20メッシュスクリーンで篩別したとき重量比で40%以上のパルプセルが残存するものを好適に用いることができる。微細粒子は除去されてもよい。微細粒子は、ハイドロサイクロン、遠心分離機などによって除去することができる。パルプセルは、乾燥処理によって乾燥品となったものでも、生のままのものでも、あるいは両者の混合物であっても、利用することができる。パルパーフィニッシャーから得られたパルプセルを水洗してウォッシュドパルプとしたものであっても、単体で、あるいは生のパルプセルと混合して、利用することができる。また、香味品質に悪影響を与ええる酵素の失活、または微生物汚染防止のために、加熱工程を経たものであっても好適に用いることができる。搾汁工程で使用される搾汁機は特に制限されない。チョッパーパルパー式搾汁機、インライン搾汁機、ブラウン式搾汁機など、いずれの搾汁機を用いてもよいが、外果皮の混入は香味に悪影響を及ぼすので、外果皮の混入を極力排除するため、チョッパーパルパー搾汁機、ブラウン搾汁機を使用することが好ましい。 ピールオイル(果皮油)とは外果皮の精油であり、外果皮に存在する油胞を破壊して精油を放出させ、オイルとして分離することによって得ることができる。 本発明のピールオイルは、柑橘果実の外果皮に存在する油胞中の精油から、不溶性のワックス分を除去したものをいう。具体的には、柑橘果実の外果皮を、細断・圧搾などの手段によって機械的に破壊するときに得られる精油に、水を添加してエマルジョンとして捕集し、遠心分離機で水を分離除去して精油を採取し、得られた精油を脱ワックス処理して得られたものである。エマルジョンを得る方法は、搾汁工程によって様々であり、例えば、インライン搾汁機の場合、外果皮が細断される瞬間に水をスプレーし、飛散する精油をエマルジョンにして捕集する。そのほかにも、搾汁前の果実をパンチ加工したステンレスの筒あるいはステンレスの板上を転がし、果皮に傷をつけ、水をかけて水と精油のエマルジョンを作る方法、スクリュープレスを用い、スプレー水を加えながら果皮を圧搾してエマルジョンを採取する方法、搾汁後、粕から外果皮を分別し、その外果皮に水を加えてエマルジョンを作る方法などがある。エマルジョンから水を除去した精油の脱ワックス工程は、通常実施される工程であれば特に制限されない。具体的には、冷却濾過によってワックス分を除去することができる。 本発明のパルプセル及びピールオイルを得るために用いることができる柑橘果実の種類に特に制限はなく、本発明の組成物の利用形態と求められる品質に応じて決めることができるが、例えば、バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジなどのオレンジ類、グレープフルーツなどのグレープフルーツ類、レモン、ライム、シークヮーサー、ダイダイ、ユズ、カボス、スダチ、シトロン、ブッシュカンなどの香酸柑橘類、ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、スウィーティー、デコポンなどの雑柑類、イヨカン、タンカンなどのタンゴール類、セミノールなどのタンゼロ類、ブンタンなどのブンタン類、マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、紀州ミカンなどのミカン類が挙げられる。 本発明の組成物は、ピールオイルとパルプセルとの混合物である。組成物におけるピールオイルとパルプセルとの割合は、該組成物がアルコール抽出液の製造に用いることができる範囲において特に制限はない。例えば、100質量部のパルプセル(湿重として)に対して5〜100質量部のピールオイルを混合して、本発明の組成物を製造することができる。 例えば、柑橘果実がレモンの場合、パルプセルとピールオイルとの混合比が質量比で1:1〜5:1である組成物とすることが好ましく、このような組成物によって柑橘果実の自然な香味や、味わい豊かな果汁感を有するアルコール抽出液を製造することができる。 ピールオイルに対するパルプセルの量が少ない場合は、本発明の態様のひとつであるアルコール抽出液において、柑橘フレーバーの軽快さが感じられるが、果汁様のみずみずしさを欠くことになる場合がある。また、ピールオイルに対するパルプセルの量が多い場合は、アルコール抽出液において、柑橘のフレーバーリリースが抑えられて香味が薄く感じられる場合がある。<アルコール抽出液> 本発明のアルコール抽出液は、本発明の組成物に、アルコール(エタノール)を添加し、混合した後、不溶性成分を除去することにより製造することができる。本発明のアルコール抽出液は、従来の香料や果実浸漬酒単独では実現が困難であった柑橘果実の自然な香味や、味わい豊かな果汁感を実現することができる。また、アルコール飲料に添加することによって、該アルコール飲料に対しても、柑橘果実の自然な香味や味わい豊かな果汁感を賦与することができる。ここでいう味わい豊かな果汁感とは、柑橘果実の特徴であるフレッシュな香気と、飲み応えがあって後味がよい香味特徴のことである。さらに、それぞれの原料単体でアルコール抽出しても生成されない香気成分が生成される。例えば、本発明のアルコール抽出液を、GC/MSを用いて分析すると、4−テルピネオール(terpineol)が新規に生成していることが認められる。詳細なメカニズムは不明であるが、レモンパルプセルとレモンピールオイルの混合により、単体では抽出されない成分が抽出され、このような優れた香味品質が獲得されたことが推測される。 本発明で使用できるアルコールは、本発明の効果を妨げないものであれば特に制限されない。柑橘果実の自然で爽快な香味が感じられることが好ましいため、ニュートラルスピリッツ、ウォッカ、連続式蒸留焼酎などの、香りの少ない、スッキリした品質の蒸留酒が好ましく用いられる。 添加するアルコールの濃度としては、例えば、35〜60v/v%(容量/容量%)、または45〜60v/v%である。 アルコール濃度が前記値未満の場合には、ピールオイルがアルコールに十分溶解することができずに白濁し、不溶性成分除去工程において、必要な香味成分も共に除去されてしまうことがある。一方、アルコール濃度が前記値を超える場合には、好ましくない香味成分までもがアルコールに可溶化してしまい、不溶性成分除去工程においても除去できず、アルコール抽出液中に移行してしまうことがある。 組成物に対するアルコールの添加量としては特に制限はなく、使用する果実の種類や求める品質の特性に応じて適宜定めることができるが、例えば、1gの組成物に対して2〜1000mLの割合でアルコールを添加することができ、好ましくは3.5〜200mL、より好ましくは5〜100mLの割合でアルコールを添加することができる。 本発明の組成物にアルコールを添加して混合した後、不溶性成分除去する前に一定時間保持してもよい。保持時間は、特に制限されないが、例えば1時間〜7日間保持することが好ましい。5時間〜5日間保持するとより好ましく、5時間〜2日間保持するとさらに好ましい。保持温度は、香味品質に悪影響が出るような高温でなければ特に制限されず、例えば5〜40℃にて行なうことができる。 次いで、不溶性成分を除去することによって、本発明のアルコール抽出液を得ることができる。除去される不溶性成分は、パルプセルの固形分や、ピールオイル中のアルコール水溶液に難溶性のオイル分である。この不溶性成分の除去する手段は特に制限されないが、例えば、遠心分離、冷却濾過等が挙げられる。<アルコール飲料> 本発明のアルコール抽出液に、水、炭酸水及び/または果汁等を配合して、所望のアルコール濃度を有するアルコール飲料を製造することができる。製造されるアルコール飲料の種類及びアルコール濃度等に制限はないが、本発明のアルコール抽出液は味の濃さ・飲み応えがあり、香りが自然で、果実感が強く感じられることから、低アルコール飲料の態様、特に果汁配合量が少ないチューハイの態様がより好ましい。ここでいう低アルコール飲料とは、アルコール分が9v/v%以下のものを指す。 本発明のアルコール抽出液を配合したアルコール飲料には、その他の成分として、例えば、果汁、糖類、酸類、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、酸味料、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤及び品質安定剤等を配合することができる。柑橘果実の爽快感を増大させる目的で、炭酸ガスを含有させることもできる。 本発明のアルコール抽出液を配合したアルコール飲料は、その特徴を長期間維持するため、容器に充填して容器詰めとすることが好ましい。容器の形態は何ら制限されず、プラスチックを主成分とする成形容器、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと積層されたラミネート紙容器及びガラス瓶等の通常の形態で提供することができる。特に本発明のアルコール飲料が炭酸を含んでいる場合には容器詰めとすることが好ましく、通常の缶容器のみならず、例えばボトル缶等を用いることができる。容器詰めとすることにより、炭酸ガスが抜けることを防ぎ、アルコール飲料の爽快感を長期間維持することが可能である。 以下、本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。(実施例1) レモン果実の搾汁工程において、パルパーフィニッシャーによってレモン果汁から分離収集されたレモンパルプセルと、搾汁前のレモン果実をステンレスの針によって外果皮に傷をつけ、水をかけて水と精油のエマルジョンを脱ワックス処理して得られたレモンピールオイルとを用いて、アルコール抽出液を作製し、パルプセルとピールオイルを予め混合する効果について検討した。(アルコール抽出液の作成) (表1)の配合表に従って、300ml容三角フラスコ中に、レモンピールオイルとレモンパルプセルとを混合し、59%アルコールを添加した。マグネチックスターラーで室温にて5時間攪拌した後、遠心分離(3000rpm、10分間)によってアルコール水溶液に不溶のパルプ分とオイル分を除去し、次いで珪藻土ろ過して、アルコール抽出液A1、A2、A3を得た。(レモンチューハイの作製) (表2)の配合表に従って、アルコール抽出液A1、A2、A3と、各種原料及び炭酸水を混合して、レモンチューハイ(比較例及び実施例)を作製した。(官能評価) 比較例及び実施例のレモンチューハイについて、12名の専門パネラーによって官能評価を行った。(図1)の横軸に示した各項目(甘味、酸味、苦味、味の濃さ、香りの自然さ等13の項目)について、比較例と実施例でどちらが強く感じられるかを比較し、強く感じられたほうへ、以下の基準に従って得点を与えた。 やや強く感じられる :1点 強く感じられる :2点 非常に強く感じられる:3点 それぞれの項目について与えられた得点の合計を、図1に表した。 実施例は、比較例に対して味の濃さや飲みごたえを感じながら、後味がよいとの評価であった。「酸味」、「スッキリさ」以外の項目で、いずれも実施例のほうが高評価であった。特に、「味の濃さ」、「香りの自然さ」、「果実感」、「後味のよさ」、「飲み応え」、及び総合評価である「おいしい」の6項目で得点の開きが大きかった。また、実施例には果汁が添加されておらず、レモンの風味に直接寄与するものはレモンピールオイルのみであるが、しっかりした味わいや、自然な香り・味わい豊かな果汁感が感じられ、総合的なおいしさの評価が得られている。 従って、ピールオイル及びパルプセルを混合してからアルコール抽出液を作製することによって、それぞれの原料単体で作成されたアルコール抽出液では得られない、優れた香味品質が得られることが明らかとなった。(実施例2) (実施例1)で作製されたアルコール抽出液A1〜A3を、GC/MSを用いて香気成分を分析した。 蒸留水で10倍溶量に希釈をした試料200mLに、塩化ナトリウム50gを添加し、溶媒(ジエチルエーテル:ペンタン=2:1)200mLにて液−液抽出を行った。得られた抽出液を、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、1mLまでクデルナ・ダニッシュ濃縮しGC/MS分析を行なった。結果を図2に示す。 GC/MS分析の分析条件は以下の通りである。<GC/MS分析条件> 装置:Agilent社製 6890N(GC部)+5973(MS部) カラム:HP−INNOWAX(30m×250μm×0.5μm) モード:パルスドスプリット(スプリット比 20:1) カラム温度:40℃(5分)−10℃/分−250℃(30分) 注入口温度:250℃ キャリアガス:He スキャンパラメーター:m/z=35〜350 アルコール抽出液A3ではA1、A2のいずれにも認められない香気成分である4−テルピネオール(terpineol)(矢印)が顕著に高く検出された。詳細なメカニズムは不明であるが、レモンパルプセルとレモンピールオイルの混合により、単体では抽出されない成分が抽出され、(実施例1)で認められたような優れた香味品質が獲得されたことが強く示唆された。(実施例3) レモンピールオイルとレモンパルプセルとを、各種の重量比で混合し、アルコール抽出液を作製し、ピールオイルとパルプセルとの混合比について検討した。 (表3)の配合表に従って、300ml容三角フラスコ中に、レモンピールオイルとレモンパルプセルとを混合し、59%アルコールを添加した。マグネチックスターラーで5時間攪拌した後、遠心分離によってアルコール水溶液に不溶のパルプ分とオイル分を除去し、次いで珪藻土ろ過して、アルコール抽出液B0、B1、B2、B3を得た。 (表4)の配合表に従って、アルコール抽出液B0、B1、B2、B3と、各種原料及び炭酸水を混合して、レモンチューハイC0、C1、C2、C3を作製した。(官能評価) レモンチューハイC0〜C3について、12名の専門パネラーによって官能評価を行った。4つのレモンチューハイサンプルに対し、レモン感が強いと感じる順に1位〜4位までの順位付けを行った。また、それぞれのサンプルに対するフリーコメントも記述してもらった。ここで、レモン感とは、レモン果実の自然な香りや、みずみずしい果汁らしさを感じる感覚のことを指す。結果を図3に示す。 C1は、1位に評価するパネラー数が最も多く、4位に評価するパネラーが存在しなかった。C2は、1位に評価するパネラー数が2番目に多かった。C1及びC2について、フリーコメントでは、自然な果汁感が得られていることが指摘された。 これに対して、C0は、1位に評価するパネラーが存在しなかった。また、C3は、4位に評価するパネラー数が最も多かった。フリーコメントでは、C0は、軽くて味わいが弱いことが指摘され、C3は、感じる香りが弱く薄い、物足りないという指摘が多かった。従って、パルプセルとピールオイルとの混合比は、1:1〜5:1のとき、レモン感、すなわちレモン果実の自然な香りや、みずみずしい果汁らしさを強く与えることができた。 これに対し、ピールオイルに対してパルプセル量が少ない場合は軽快であるがみずみずしさや果汁様の味わいに欠け、また、パルプセル量が過剰になると、フレーバーリリースが抑えられて香味が薄く感じられ、いずれの場合も好ましくないことが明らかとなった。 柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られるピールオイルとを混合してなる組成物。 請求項1に記載の組成物にアルコールを添加し混合すること、及び、該混合物から不溶性成分を除去することによって得られるアルコール抽出液。 前記添加するアルコールの濃度が35v/v%〜60v/v%である、請求項2に記載のアルコール抽出液。 柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られるピールオイルとを混合してなる組成物にアルコールを添加し混合する工程、及び、該工程で得られた混合物から不溶性成分を除去する工程、を含むアルコール抽出液の製造方法。 前記添加するアルコールの濃度が35v/v%〜60v/v%である、請求項4に記載の製造方法。 柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られたピールオイルとを混合してなる柑橘果実混合物に、アルコールを添加し、混合後、不溶性成分を除去してなるアルコール抽出液によって、アルコール飲料の柑橘果実由来の香味を向上させる方法。 【課題】柑橘果実の風味を有する、優れたアルコール飲料を提供すること。【解決手段】柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られるピールオイルとを混合してなる組成物、並びに該組成物から製造されるアルコール抽出液及びアルコール飲料。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る

特許公報(B2)_柑橘果実の自然な香味を向上させる柑橘果実混合物及びそのアルコール抽出液

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_柑橘果実の自然な香味を向上させる柑橘果実混合物及びそのアルコール抽出液
出願番号:2009103473
年次:2013
IPC分類:A23L 1/222,C12G 3/06


特許情報キャッシュ

日高 幸一郎 JP 5178615 特許公報(B2) 20130118 2009103473 20090421 柑橘果実の自然な香味を向上させる柑橘果実混合物及びそのアルコール抽出液 サントリーホールディングス株式会社 309007911 小野 新次郎 100140109 社本 一夫 100089705 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 中田 尚志 100133765 日高 幸一郎 20130410 A23L 1/222 20060101AFI20130321BHJP C12G 3/06 20060101ALI20130321BHJP JPA23L1/222C12G3/06 A23L 1/222 C12G 3/06 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CAplus(STN) Food Science and Technology Abstracts(DIALOG) Foodline:Science(DIALOG) G−Search 食品関連文献情報(食ネット) 食品関連文献情報(食ネット) 特開2000−245431(JP,A) 特開2008−214223(JP,A) 特開2000−350571(JP,A) 特開2005−124567(JP,A) 特開2007−116939(JP,A) 特開平11−206349(JP,A) 9 2010252640 20101111 12 20120125 北田 祐介 本発明は、柑橘果実より得られるピールオイル及びパルプセルを混合してなる組成物、該組成物から製造されるアルコール抽出液、及び該アルコール抽出液の製造方法に関する。 柑橘果実には、レモン、ライム、グレープフルーツ、オレンジ、ミカン、ハッサク、などがあるが、爽やかな芳香や甘酸味を有することから果実飲料を始めとする飲食品の原料として大変人気がある。特にアルコール飲料のチューハイでは、売上の大部分をレモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘果実風味のものが占めている。 柑橘果実風味のアルコール飲料の品質設計にあたっては、果実から得られる果汁原料の品質が重要であるが、香料の品質もまた、それに勝るとも劣らず重要である。例えば、柑橘果実から得た各種香気成分を濃縮・精製することにより、柑橘風味の香料が多数開発されている。具体的には柑橘果実の外果皮に存在する油胞から抽出した精油を原料とするもの(ピールオイル)、果汁中に微量含有されている香気成分を濃縮工程で回収したもの(エッセンスオイル)、TASTE濃縮機から回収されるエッセンス(又はアロマ)などが知られている。そのような香料を各種調合したものが柑橘果実風味のアルコール飲料に利用されている。 一方、リキュールにおいては、種々の芳香性原料を処理することによって多様な品質を実現していることが知られている。芳香性原料としては、ハーブ、果実、ビーンズなど様々原料が使用される。芳香性原料から抽出された香味を賦与された原酒は、リキュール製品のみならず、アルコール飲料を始めとする各種飲食品の原料として利用されている。 芳香性原料から香味を抽出する方法としては、浸漬法、蒸留法があり、浸漬法はさらに冷浸法、温浸法に分けられる。これらの処理方法は、芳香性原料の特性と目標品質に応じて設定される。冷浸法は、主に果実からの香味抽出に多用される方法で、梅酒がその代表である。温浸法は、ハーブ等に使用される方法で、温湯に浸し、数日後湯温が下がってからニュートラルスピリッツなどを加えて浸漬抽出を継続する特殊な浸漬法である。蒸留法は、ハーブ、キュラソー柑皮など精油分を主とする香気成分の抽出に適している。 柑橘果実の香味成分の抽出には、蒸留法や冷浸法が適している。冷浸法によれば、柑橘果実をそのまま、または粉砕して、アルコールに浸漬することによって製造される。 得られた柑橘果実の浸漬液を蒸留する方法が、蒸留法である。これは、キュラソーなどのリキュールで実施されている。香料のような刺激的な香りではなく、調和のとれた香りが得られる特徴がある。最新果汁・果実飲料事典(社団法人 日本果汁協会監修)酒の科学、1995年2月1日初版第1刷、編集者:吉澤淑、発行所:朝倉書店 このように、柑橘果実を用いて、その風味を活かした多様なアルコール飲料が開発されている。しかし、柑橘果実の持つ自然な風味を表現するという点では、必ずしも十分なものではない。 例えば、柑橘果実から得た香料は、果実の一部の香気成分を濃縮・精製したものであるため、複数の香料を調合したとしても、香り全体として強調されすぎる部分や、逆に不足して感じられる部分ができ、柑橘果実の持つ自然な風味を表現することは難しい。 また、リキュールの手法によって製造された原酒をアルコール飲料の原料として用いる場合にも問題がある。 例えば、冷浸法によって香味成分を多く抽出するためには、長期間が必要とされることが多い。そのため、柑橘果実の香味成分は、酸性下に長期間置かれることになり、劣化を受けやすいという欠点がある。また、水溶性成分も抽出されるため、アルコールと共存することで沈殿を生じやすいという問題もある。 蒸留法による場合は、香料のような刺激的な香りではなく、調和のとれた香りが得られる特徴があるが、味わいに効果のある成分を得ることができないため、果実らしい味わいに欠けるという問題がある。 そのため、柑橘果実の自然な風味と、味わい豊かな果汁感を有するアルコール飲料を製造する新たな技術が切望されている。 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、柑橘果実のパルプセルと、ピールオイルとを混合してなる組成物を用いてアルコール抽出液を製造し、さらにこのアルコール抽出液を使用したアルコール飲料を製造したところ、驚くべきことに、このアルコール飲料は、香りが自然で、果汁の味わいが強く感じられることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、1.柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られるピールオイルとを混合してなる組成物、2.前記1に記載の組成物にアルコールを添加し混合すること、及び、該混合物から不溶性成分を除去することによって得られるアルコール抽出液、3.前記添加するアルコールの濃度が35v/v%〜60v/v%である、前記2に記載のアルコール抽出液、4.柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られるピールオイルとを混合してなる組成物にアルコールを添加し混合する工程、及び、該工程で得られた混合物から不溶性成分を除去する工程、を含むアルコール抽出液の製造方法、5.前記添加するアルコールの濃度が35v/v%〜60v/v%である、前記4に記載の製造方法、6.柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られたピールオイルとを混合してなる柑橘果実混合物に、アルコールを添加し、混合後、不溶性成分を除去してなるアルコール抽出液によって、アルコール飲料の柑橘果実由来の香味を向上させる方法、に関する。 本発明により、柑橘果実の香味が向上したアルコール抽出液、及び該アルコール抽出液より製造されるアルコール飲料を提供することができる。図1は、実施例1のレモンチューハイについての官能評価結果を示す。図2は、アルコール抽出液のGC/MS分析結果を示す。図3は、実施例3のレモンチューハイについての官能評価結果を示す。<組成物> 本発明の組成物は、柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られるピールオイルとを混合することによって得られる混合物である。パルプセルとピールオイルとが混合されることにより、柑橘果実の自然な香味と味わい豊かな果汁感が形成される。また、該組成物をアルコール抽出した場合、それぞれの原料単体でアルコール抽出しても生成されない香気成分が生成される。該組成物及びそのアルコール抽出液を、飲食品に添加することによって、該飲食品に柑橘果実の自然な香味と味わい豊かな果汁感を賦与することができる。 柑橘果実のパルプセルとは、柑橘果実の搾汁工程において細断されたじょうのう膜を収集したものであり、具体的には、果実搾汁工程で得られた果汁に混入しているじょうのう膜を、パルパーフィニッシャーによって果汁から分離除去して得られる。該パルプセルの大きさ・性状は特に制限されない。20メッシュスクリーンで篩別したとき重量比で40%以上のパルプセルが残存するものを好適に用いることができる。微細粒子は除去されてもよい。微細粒子は、ハイドロサイクロン、遠心分離機などによって除去することができる。パルプセルは、乾燥処理によって乾燥品となったものでも、生のままのものでも、あるいは両者の混合物であっても、利用することができる。パルパーフィニッシャーから得られたパルプセルを水洗してウォッシュドパルプとしたものであっても、単体で、あるいは生のパルプセルと混合して、利用することができる。また、香味品質に悪影響を与ええる酵素の失活、または微生物汚染防止のために、加熱工程を経たものであっても好適に用いることができる。搾汁工程で使用される搾汁機は特に制限されない。チョッパーパルパー式搾汁機、インライン搾汁機、ブラウン式搾汁機など、いずれの搾汁機を用いてもよいが、外果皮の混入は香味に悪影響を及ぼすので、外果皮の混入を極力排除するため、チョッパーパルパー搾汁機、ブラウン搾汁機を使用することが好ましい。 ピールオイル(果皮油)とは外果皮の精油であり、外果皮に存在する油胞を破壊して精油を放出させ、オイルとして分離することによって得ることができる。 本発明のピールオイルは、柑橘果実の外果皮に存在する油胞中の精油から、不溶性のワックス分を除去したものをいう。具体的には、柑橘果実の外果皮を、細断・圧搾などの手段によって機械的に破壊するときに得られる精油に、水を添加してエマルジョンとして捕集し、遠心分離機で水を分離除去して精油を採取し、得られた精油を脱ワックス処理して得られたものである。エマルジョンを得る方法は、搾汁工程によって様々であり、例えば、インライン搾汁機の場合、外果皮が細断される瞬間に水をスプレーし、飛散する精油をエマルジョンにして捕集する。そのほかにも、搾汁前の果実をパンチ加工したステンレスの筒あるいはステンレスの板上を転がし、果皮に傷をつけ、水をかけて水と精油のエマルジョンを作る方法、スクリュープレスを用い、スプレー水を加えながら果皮を圧搾してエマルジョンを採取する方法、搾汁後、粕から外果皮を分別し、その外果皮に水を加えてエマルジョンを作る方法などがある。エマルジョンから水を除去した精油の脱ワックス工程は、通常実施される工程であれば特に制限されない。具体的には、冷却濾過によってワックス分を除去することができる。 本発明のパルプセル及びピールオイルを得るために用いることができる柑橘果実の種類に特に制限はなく、本発明の組成物の利用形態と求められる品質に応じて決めることができるが、例えば、バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジなどのオレンジ類、グレープフルーツなどのグレープフルーツ類、レモン、ライム、シークヮーサー、ダイダイ、ユズ、カボス、スダチ、シトロン、ブッシュカンなどの香酸柑橘類、ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、スウィーティー、デコポンなどの雑柑類、イヨカン、タンカンなどのタンゴール類、セミノールなどのタンゼロ類、ブンタンなどのブンタン類、マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、紀州ミカンなどのミカン類が挙げられる。 本発明の組成物は、ピールオイルとパルプセルとの混合物である。組成物におけるピールオイルとパルプセルとの割合は、該組成物がアルコール抽出液の製造に用いることができる範囲において特に制限はない。例えば、100質量部のパルプセル(湿重として)に対して5〜100質量部のピールオイルを混合して、本発明の組成物を製造することができる。 例えば、柑橘果実がレモンの場合、パルプセルとピールオイルとの混合比が質量比で1:1〜5:1である組成物とすることが好ましく、このような組成物によって柑橘果実の自然な香味や、味わい豊かな果汁感を有するアルコール抽出液を製造することができる。 ピールオイルに対するパルプセルの量が少ない場合は、本発明の態様のひとつであるアルコール抽出液において、柑橘フレーバーの軽快さが感じられるが、果汁様のみずみずしさを欠くことになる場合がある。また、ピールオイルに対するパルプセルの量が多い場合は、アルコール抽出液において、柑橘のフレーバーリリースが抑えられて香味が薄く感じられる場合がある。<アルコール抽出液> 本発明のアルコール抽出液は、本発明の組成物に、アルコール(エタノール)を添加し、混合した後、不溶性成分を除去することにより製造することができる。本発明のアルコール抽出液は、従来の香料や果実浸漬酒単独では実現が困難であった柑橘果実の自然な香味や、味わい豊かな果汁感を実現することができる。また、アルコール飲料に添加することによって、該アルコール飲料に対しても、柑橘果実の自然な香味や味わい豊かな果汁感を賦与することができる。ここでいう味わい豊かな果汁感とは、柑橘果実の特徴であるフレッシュな香気と、飲み応えがあって後味がよい香味特徴のことである。さらに、それぞれの原料単体でアルコール抽出しても生成されない香気成分が生成される。例えば、本発明のアルコール抽出液を、GC/MSを用いて分析すると、4−テルピネオール(terpineol)が新規に生成していることが認められる。詳細なメカニズムは不明であるが、レモンパルプセルとレモンピールオイルの混合により、単体では抽出されない成分が抽出され、このような優れた香味品質が獲得されたことが推測される。 本発明で使用できるアルコールは、本発明の効果を妨げないものであれば特に制限されない。柑橘果実の自然で爽快な香味が感じられることが好ましいため、ニュートラルスピリッツ、ウォッカ、連続式蒸留焼酎などの、香りの少ない、スッキリした品質の蒸留酒が好ましく用いられる。 添加するアルコールの濃度としては、例えば、35〜60v/v%(容量/容量%)、または45〜60v/v%である。 アルコール濃度が前記値未満の場合には、ピールオイルがアルコールに十分溶解することができずに白濁し、不溶性成分除去工程において、必要な香味成分も共に除去されてしまうことがある。一方、アルコール濃度が前記値を超える場合には、好ましくない香味成分までもがアルコールに可溶化してしまい、不溶性成分除去工程においても除去できず、アルコール抽出液中に移行してしまうことがある。 組成物に対するアルコールの添加量としては特に制限はなく、使用する果実の種類や求める品質の特性に応じて適宜定めることができるが、例えば、1gの組成物に対して2〜1000mLの割合でアルコールを添加することができ、好ましくは3.5〜200mL、より好ましくは5〜100mLの割合でアルコールを添加することができる。 本発明の組成物にアルコールを添加して混合した後、不溶性成分除去する前に一定時間保持してもよい。保持時間は、特に制限されないが、例えば1時間〜7日間保持することが好ましい。5時間〜5日間保持するとより好ましく、5時間〜2日間保持するとさらに好ましい。保持温度は、香味品質に悪影響が出るような高温でなければ特に制限されず、例えば5〜40℃にて行なうことができる。 次いで、不溶性成分を除去することによって、本発明のアルコール抽出液を得ることができる。除去される不溶性成分は、パルプセルの固形分や、ピールオイル中のアルコール水溶液に難溶性のオイル分である。この不溶性成分の除去する手段は特に制限されないが、例えば、遠心分離、冷却濾過等が挙げられる。<アルコール飲料> 本発明のアルコール抽出液に、水、炭酸水及び/または果汁等を配合して、所望のアルコール濃度を有するアルコール飲料を製造することができる。製造されるアルコール飲料の種類及びアルコール濃度等に制限はないが、本発明のアルコール抽出液は味の濃さ・飲み応えがあり、香りが自然で、果実感が強く感じられることから、低アルコール飲料の態様、特に果汁配合量が少ないチューハイの態様がより好ましい。ここでいう低アルコール飲料とは、アルコール分が9v/v%以下のものを指す。 本発明のアルコール抽出液を配合したアルコール飲料には、その他の成分として、例えば、果汁、糖類、酸類、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、酸味料、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤及び品質安定剤等を配合することができる。柑橘果実の爽快感を増大させる目的で、炭酸ガスを含有させることもできる。 本発明のアルコール抽出液を配合したアルコール飲料は、その特徴を長期間維持するため、容器に充填して容器詰めとすることが好ましい。容器の形態は何ら制限されず、プラスチックを主成分とする成形容器、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと積層されたラミネート紙容器及びガラス瓶等の通常の形態で提供することができる。特に本発明のアルコール飲料が炭酸を含んでいる場合には容器詰めとすることが好ましく、通常の缶容器のみならず、例えばボトル缶等を用いることができる。容器詰めとすることにより、炭酸ガスが抜けることを防ぎ、アルコール飲料の爽快感を長期間維持することが可能である。 以下、本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。(実施例1) レモン果実の搾汁工程において、パルパーフィニッシャーによってレモン果汁から分離収集されたレモンパルプセルと、搾汁前のレモン果実をステンレスの針によって外果皮に傷をつけ、水をかけて水と精油のエマルジョンを脱ワックス処理して得られたレモンピールオイルとを用いて、アルコール抽出液を作製し、パルプセルとピールオイルを予め混合する効果について検討した。(アルコール抽出液の作成) (表1)の配合表に従って、300ml容三角フラスコ中に、レモンピールオイルとレモンパルプセルとを混合し、59%アルコールを添加した。マグネチックスターラーで室温にて5時間攪拌した後、遠心分離(3000rpm、10分間)によってアルコール水溶液に不溶のパルプ分とオイル分を除去し、次いで珪藻土ろ過して、アルコール抽出液A1、A2、A3を得た。(レモンチューハイの作製) (表2)の配合表に従って、アルコール抽出液A1、A2、A3と、各種原料及び炭酸水を混合して、レモンチューハイ(比較例及び実施例)を作製した。(官能評価) 比較例及び実施例のレモンチューハイについて、12名の専門パネラーによって官能評価を行った。(図1)の横軸に示した各項目(甘味、酸味、苦味、味の濃さ、香りの自然さ等13の項目)について、比較例と実施例でどちらが強く感じられるかを比較し、強く感じられたほうへ、以下の基準に従って得点を与えた。 やや強く感じられる :1点 強く感じられる :2点 非常に強く感じられる:3点 それぞれの項目について与えられた得点の合計を、図1に表した。 実施例は、比較例に対して味の濃さや飲みごたえを感じながら、後味がよいとの評価であった。「酸味」、「スッキリさ」以外の項目で、いずれも実施例のほうが高評価であった。特に、「味の濃さ」、「香りの自然さ」、「果実感」、「後味のよさ」、「飲み応え」、及び総合評価である「おいしい」の6項目で得点の開きが大きかった。また、実施例には果汁が添加されておらず、レモンの風味に直接寄与するものはレモンピールオイルのみであるが、しっかりした味わいや、自然な香り・味わい豊かな果汁感が感じられ、総合的なおいしさの評価が得られている。 従って、ピールオイル及びパルプセルを混合してからアルコール抽出液を作製することによって、それぞれの原料単体で作成されたアルコール抽出液では得られない、優れた香味品質が得られることが明らかとなった。(実施例2) (実施例1)で作製されたアルコール抽出液A1〜A3を、GC/MSを用いて香気成分を分析した。 蒸留水で10倍溶量に希釈をした試料200mLに、塩化ナトリウム50gを添加し、溶媒(ジエチルエーテル:ペンタン=2:1)200mLにて液−液抽出を行った。得られた抽出液を、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、1mLまでクデルナ・ダニッシュ濃縮しGC/MS分析を行なった。結果を図2に示す。 GC/MS分析の分析条件は以下の通りである。<GC/MS分析条件> 装置:Agilent社製 6890N(GC部)+5973(MS部) カラム:HP−INNOWAX(30m×250μm×0.5μm) モード:パルスドスプリット(スプリット比 20:1) カラム温度:40℃(5分)−10℃/分−250℃(30分) 注入口温度:250℃ キャリアガス:He スキャンパラメーター:m/z=35〜350 アルコール抽出液A3ではA1、A2のいずれにも認められない香気成分である4−テルピネオール(terpineol)(矢印)が顕著に高く検出された。詳細なメカニズムは不明であるが、レモンパルプセルとレモンピールオイルの混合により、単体では抽出されない成分が抽出され、(実施例1)で認められたような優れた香味品質が獲得されたことが強く示唆された。(実施例3) レモンピールオイルとレモンパルプセルとを、各種の重量比で混合し、アルコール抽出液を作製し、ピールオイルとパルプセルとの混合比について検討した。 (表3)の配合表に従って、300ml容三角フラスコ中に、レモンピールオイルとレモンパルプセルとを混合し、59%アルコールを添加した。マグネチックスターラーで5時間攪拌した後、遠心分離によってアルコール水溶液に不溶のパルプ分とオイル分を除去し、次いで珪藻土ろ過して、アルコール抽出液B0、B1、B2、B3を得た。 (表4)の配合表に従って、アルコール抽出液B0、B1、B2、B3と、各種原料及び炭酸水を混合して、レモンチューハイC0、C1、C2、C3を作製した。(官能評価) レモンチューハイC0〜C3について、12名の専門パネラーによって官能評価を行った。4つのレモンチューハイサンプルに対し、レモン感が強いと感じる順に1位〜4位までの順位付けを行った。また、それぞれのサンプルに対するフリーコメントも記述してもらった。ここで、レモン感とは、レモン果実の自然な香りや、みずみずしい果汁らしさを感じる感覚のことを指す。結果を図3に示す。 C1は、1位に評価するパネラー数が最も多く、4位に評価するパネラーが存在しなかった。C2は、1位に評価するパネラー数が2番目に多かった。C1及びC2について、フリーコメントでは、自然な果汁感が得られていることが指摘された。 これに対して、C0は、1位に評価するパネラーが存在しなかった。また、C3は、4位に評価するパネラー数が最も多かった。フリーコメントでは、C0は、軽くて味わいが弱いことが指摘され、C3は、感じる香りが弱く薄い、物足りないという指摘が多かった。従って、パルプセルとピールオイルとの混合比は、1:1〜5:1のとき、レモン感、すなわちレモン果実の自然な香りや、みずみずしい果汁らしさを強く与えることができた。 これに対し、ピールオイルに対してパルプセル量が少ない場合は軽快であるがみずみずしさや果汁様の味わいに欠け、また、パルプセル量が過剰になると、フレーバーリリースが抑えられて香味が薄く感じられ、いずれの場合も好ましくないことが明らかとなった。 柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られるピールオイルとを混合してなる組成物と、アルコールとを混合すること、及び、該混合物から不溶性成分を除去することによって得られるアルコール抽出液であって、 前記パルプセルと前記ピールオイル混合組成物におけるパルプセル(湿重として)とピールオイルの混合比が質量比で1:1〜20:1である、前記アルコール抽出液。 前記添加するアルコールの濃度が35v/v%〜60v/v%である、請求項1に記載のアルコール抽出液。 前記柑橘果実がレモンであり、前記パルプセルと前記ピールオイル混合組成物におけるパルプセル(湿重として)とピールオイルの混合比が質量比として1:1〜5:1である、請求項1または2記載のアルコール抽出液。 柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られるピールオイルとを混合してなる組成物にアルコールを添加し混合する工程、及び、該工程で得られた混合物から不溶性成分を除去する工程、を含むアルコール抽出液の製造方法。 前記添加するアルコールの濃度が35v/v%〜60v/v%である、請求項4に記載の製造方法。 前記パルプセルと前記ピールオイル混合組成物におけるパルプセル(湿重として)とピールオイルの混合比が質量比で1:1〜20:1である、請求項4または5記載の製造方法。 柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られたピールオイルとを混合してなる柑橘果実混合物に、アルコールを添加し、混合後、不溶性成分を除去してなるアルコール抽出液によって、アルコール飲料の柑橘果実由来の香味を向上させる方法。 前記添加するアルコールの濃度が35v/v%〜60v/v%である、請求項7に記載の方法。 前記パルプセルと前記ピールオイル柑橘果実混合物におけるパルプセル(湿重として)とピールオイルの混合比が質量比で1:1〜20:1である、請求項7または8記載の方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る