タイトル: | 公開特許公報(A)_強熱残分の定量方法 |
出願番号: | 2009095654 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 25/20 |
岡本 昌彦 細野 麻記子 JP 2010243467 公開特許公報(A) 20101028 2009095654 20090410 強熱残分の定量方法 住友化学株式会社 000002093 中山 亨 100113000 坂元 徹 100151909 岡本 昌彦 細野 麻記子 G01N 25/20 20060101AFI20101001BHJP JPG01N25/20 C 3 OL 7 2G040 2G040AB05 2G040BA29 2G040CA16 2G040EB02本発明は、医薬品や農業化学品中の強熱残分の含有量を測定する強熱残分の定量方法に関する。強熱残分試験は、医薬品や農業化学品(以下、場合により「医薬品等」という。)に含まれる無機不純物(例えば、アルカリ土類金属塩、アルカリ金属塩等)の量を測定するための試験であり、医薬品等の品質管理の一つとされている。日本薬局方をはじめとする米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)など主要な薬局方においては、医薬品等を600±50℃で加熱することにより灰化し、灰化後の残留物の重量と、灰化に供した医薬品等の重量と、から強熱残分の含有量を定量するといった試験法が規定されている(非特許文献1及び非特許文献2)。第15改正日本薬局方 2.44 強熱残分試験法 42頁日本薬局方技術情報 2006 財団法人 日本公定書協会編 2.44 強熱残分試験法 100〜104頁しかしながら、上記強熱残分試験は高温での灰化を行うため、危険物5類に分類されるような爆発性を有する化合物(以下、場合により「危険物5類化合物」という。)の強熱残分の含有量を定量することは防災面から困難であるという問題がある。従来、このような危険物5類化合物の強熱残分の含有量を定量するには、適切な前処理(たとえば、マイクロウェーブによる前処理等)により、当該危険物5類化合物を爆発性のない測定試料に転換せしめ、転換せしめた測定試料の無機不純物を測定することにより、間接的に強熱残分の含有量を求めるといった煩雑な操作が必要であった。また、再現性良く強熱残分を定量するためには、灰化に係わる操作は熟練を要するという問題もあり、多検体処理の観点からも代替法の開発が強く望まれていた。そこで本発明は、たとえば危険物5類化合物の強熱残分の含有量を定量する場合であっても、前処理を伴う煩雑な測定を必要とせず、操作が簡便な強熱残分の定量方法を提供することを目的とする。本発明者らは、上記強熱残分試験において熱分析法を適用することにより、従来の技術では測定が煩雑であった危険物5類化合物に対しても、前処理を必要とせず、強熱残分の含有量を定量することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、医薬品又は農業化学品の強熱残分の測定方法であって、熱分析装置を用い、600±50℃で加熱処理することを特徴とする強熱残分の測定方法、に関するものである。以下、この強熱残分の定量方法を「本発明の定量方法」ということもある。本発明の定量方法において使用する熱分析装置は、熱重量測定(TG)装置であることが好ましい。当該熱重量測定装置を用い、医薬品等を所定時間、600±50℃の温度で加熱処理して、加熱処理後の残分の重量を測定することにより、より容易に強熱残分の含有量を定量することができる。また、本発明の定量方法において使用する熱分析装置は、熱質量測定に加え、示差熱測定が可能な装置(以下、「TG−DTA装置」という)であるとさらに好ましい。TG−DTA装置を用いることにより、危険物5類化合物を加熱処理する過程で生じる熱量変化を追跡することにより、急激に熱量変化が生じないような加熱処理条件(たとえば、昇温速度等)を求めることができるので、より容易に強熱残分の含有量を定量することができる。本発明の定量方法によれば、危険物5類化合物を測定試料とする場合であっても、強熱残分の含有量を容易に定量することができる。実施例1においてTG−DTA装置を用いて測定した、(E)-1-(2-chloro-1,3-thiazol-5-ylmethyl)-3-methyl-2-nitroguanidine Lot Aの測定チャートである。実施例2においてTG−DTA装置を用いて測定した、4,5,6,7-テトラクロロフタリドのLot Aの測定チャートである。実施例2においてTG−DTA装置を用いて測定した、4,5,6,7-テトラクロロフタリドのLot Bの測定チャートである。実施例2においてTG−DTA装置を用いて測定した、4,5,6,7-テトラクロロフタリドのLot Cの測定チャートである。実施例2においてTG−DTA装置を用いて測定した、4,5,6,7-テトラクロロフタリドのLot Dの測定チャートである。実施例2においてTG−DTA装置を用いて測定した、4,5,6,7-テトラクロロフタリドのLot Eの測定チャートである。以下、本発明について詳細に説明する。本発明の定量方法に供する測定試料は、医薬品や農業化学品であり、医薬品には生薬などが含まれる。以下、本発明の定量方法に関し、好適な方法であるTG装置を用いる方法(TG測定)に関し詳述する。まず、上記TG装置の試料容器および比較試料容器を準備する。そして、上記試料容器には測定試料を精密に量りとる。比較試料容器は空のままでもよいが、TG測定の比較試料用の標準物質(たとえば、アルミナ(Al2O3))を適当量量り取っておいてもよい。上記TG装置の試料部の温度が室温(約25℃)付近の一定温度であることを上記TG装置に付属されたモニターで確認した後、上記TG装置の試料部のリファレンス側に比較試料容器を、サンプル側に測定試料を量りとった試料容器を、それぞれセットした後、この試料部を適切な加熱炉内に移送する。試料容器に量り取る測定試料の重量は、使用するTG装置の形式や試料容器の容量、測定試料の種類等を勘案して適切な量を選択することができるが、1mgから100mg程度の範囲が好ましく、より好ましくは5mgから20mgの範囲である。上記試料容器および上記比較試料容器(以下、これらを「試料容器等」という。)としては、開放型の容器が使用される。試料容器等の材質としては、アルミニウム製のほか、金製、銀製、ステンレス製やグラファイト製のものも用いることができる。かかる試料容器等の材質は、本発明の定量方法に供する測定試料により最適のものを選択することができる。試料容器に量り取る際の測定試料の形態は、固体、液体、ゲル状のいずれも適用できる。測定試料が固体の場合は、フィルム、粉末、フレーク、チップ、糸、繊維などどのような形状ものでもよいが、あらかじめ乳鉢等で粉砕して微粉末にした後に、この微粉末をTG測定に供することが望ましい。上記TG装置の熱重量測定に用いる熱天秤の構造としては特に限定されるものではなく、吊り下げ型、上皿型、水平型などいずれも使用することができる。このようなTG装置は、島津製作所、リガク、日立ハイテク、アルバックイーエス社、NETZSCH(ネッチ)社、京都電子工業、ティー・エイ・インスツルメント社、エスアイアイ・ナノテクノロジー社等から入手することができる。加熱炉に移送された試料部にある測定試料は、当該加熱炉に備えられた加熱手段により加熱される。上述のとおり加熱前の試料部は室温程度であるので、この室温(約25℃)を初期温度とし、600±50℃を終点温度として昇温するといった加熱処理を行う。この終点温度に到達した時点で、上記測定試料は600±50℃の温度で加熱処理されることとなる。また、当該加熱炉に冷却手段が備えられている場合は、たとえば10℃付近まで試料部を冷却してから、終点温度まで昇温するといった加熱処理を行ってもよい。当該終点温度は、測定に供する測定試料の種類により適宜調整することができる。なお、昇温する際の速度(昇温速度)は、20℃/分程度が好ましい。上記加熱処理の際の雰囲気ガスとしては、空気、酸素、窒素等を測定試料の性質に応じて適宜選ぶことができる。より好ましくは、空気をあげることができる。 上記加熱処理は、所定の終点温度(600±50℃)に到達した後、同温度で少なくとも60分間保持する。このように所定の終点温度で60分間保持することにより、TG測定の熱重量減少はほぼ認められなくなる。このように熱重量減少がほぼ認められなくなったときの重量値(終点重量値)を、加熱処理前の試料容器に量り取った測定試料の重量値(初期重量値)と、から重量減少率(%)を求める。具体的には以下の式により、重量減少値(%)は求められる。重量保持率(%)={(終点重量値)/(初期重量値)}×100このようにして求められる重量減少率(%)を、100%から減ずることにより算出される強熱算分の含有量は、同じ測定試料を従来の強熱残分試験(たとえば、日本薬局方等に規定されている強熱残分試験)に供して求められる強熱残分の含有量とほぼ同等となる。したがって、本発明の定量方法は、従来の強熱残分試験を代替し得る方法である。以上、熱分析装置として好適なTG装置を用いる場合の本発明の定量方法に関し説明したが、上記熱分析装置としては、TG測定に加え、その他の分析手段を組み合わせた形式のものでもよい。その他の分析手段としては、示差熱量分析(DTA)、示差走査熱量分析(DSC)、ガスクロマトグラフィー分析(GC)、質量分析(MS)等を挙げることができる。このような熱重量分析と他の分析手段とを組み合わせた測定装置の中でも、入手しやすいことからは、熱重量−示差熱分析(TG−DTA)装置が好ましい。このTG−DTA装置も、上記のTG装置の製造メーカーより容易に入手することができる。上記TG−DTA装置を用いることにより、試料部にある測定試料に対し、TG測定による重量減少率(%)を測定することができるとともに、示差熱分析により熱量変化を測定することができる。そして、この熱量変化を測定することにより、たとえば測定試料として危険物5類化合物を用いる場合、この危険物5類化合物が急激に加熱分解しないような昇温条件等を、適切な予備実験を行うことにより選択することができる。このようなTG装置またはTG−DTA装置を用いる本発明の定量方法は、従来の強熱残分試験に比して、上記重量減少率(%)から容易に強熱残分の含有量を定量することが可能であり、防災面から従来の強熱残分の定量方法では定量が困難であった危険物5類化合物を測定試料とする場合であっても、その強熱残分をより容易に定量することができる。以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。TG−DTA装置およびその測定条件装置:エスアイアイ ナノテクノロジー社製TG−DTA 220U型 熱分析装置 試料量: 約10mg昇温速度: 20K/分雰囲気:空気 300mL/分試料容器:アルミニウム製 開放型標準物質:Al2O3標準物質重量:約10mg[実施例1](((E)-1-(2-chloro-1,3-thiazol-5-ylmethyl)-3-methyl-2-nitroguanidineの強熱残分の含有量の定量)実施例に危険物5類化合物の1つであるに該当するため、前処理なしでは灰化操作に危険が伴い、日本薬局方一般試験法 強熱残分試験法による試験実施は不適切であると考えられたこの(E)-1-(2-chloro-1,3-thiazol-5-ylmethyl)-3-methyl-2-nitroguanidineは、危険物5類化合物に該当する(E)-1-(2-chloro-1,3-thiazol-5-ylmethyl)-3-methyl-2-nitroguanidineの製造Lotの異なる2種(LotA 及びLot B)を測定試料として使用した。この測定試料について上記TG−DTA装置を用い、上記測定条件でTG測定を行うことにより測定試料の加熱処理を行った。なお、終点温度は600℃とし、この終点温度に到達した後、60分間同温度を保持して、重量減少率(%)を求めたところ99.9%であり、これから求められる強熱残分に含有量は0.1%であった。[実施例2]測定試料として、4,5,6,7-テトラクロロフタリドの製造Lotの異なる5種(A,B,C,D,E)を用い、この5 Lotについて、実施例1と同様にして重量減少率(%)から強熱残分の含有量を求めた。その結果を以下に示す。測定試料 強熱残分の含有量(%) A 0.3 B 0.5 C 0.5 D 0.6 E 1.0[参考例1]実施例1と同じ(E)-1-(2-chloro-1,3-thiazol-5-ylmethyl)-3-methyl-2-nitroguanidineのLotAを測定試料として用い、以下のようにして強熱残分の含有量を求めた。上述のとおり、この(E)-1-(2-chloro-1,3-thiazol-5-ylmethyl)-3-methyl-2-nitroguanidineは危険物5類化合物に該当するものであり、防災上の観点から日本薬局方一般試験法 強熱残分試験法の適用が困難なものである。そこで以下のようにして強熱残分の含有量を求めることにした。まず、測定試料をマイクロウェーブ試料前処理装置により分解した。その後、日本薬局方一般試験法 原子吸光光度法によりナトリウム(Na)を定量し、硫酸塩(硫酸ナトリウム)に換算することによって間接的に強熱残分の含有量を求めた。その結果、このような間接的な定量方法による強熱残分の含有量は0.1%であり、本発明の定量方法で求めた強熱残分の含有量(実施例1)0.1%とほぼ同等であった。[参考例2]測定試料として、実施例2で用いた4,5,6,7-テトラクロロフタリドと同一の製造Lotを用い、日本薬局方一般試験法 強熱残分試験により、強熱残分の含有量を求め、その結果を実施例2で求められた強熱残分の含有量と比較した。両法の結果を以下に示す。試料 日本薬局方 試験条件(%) 本発明法(%) A 0.29 0.3B 0.44 0.5C 0.48 0.5D 0.52 0.6E 0.96 1.0両者の値は極めて良く一致し、本発明の定量方法が日本薬局方一般試験法 強熱残分試験法と同等の正確さを有することが確認できた。医薬品又は農業化学品の強熱残分の測定方法であって、熱分析装置を用い、600±50℃で加熱処理することを特徴とする強熱残分の測定方法。前記熱分析装置が、熱重量測定装置であることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。前記熱分析装置が、示差熱量分析と熱重量分析とを組み合わせた形式の分析装置であることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。 【課題】被験物質の強熱残分の測定方法を提供すること。【解決手段】医薬品又は農業化学品を熱分析法により測定し、600±50℃で保持した後の残留量から強熱残分の含有量を測定することを特徴とする被験物質の強熱残分の測定方法。熱分析法が、TGと示差走査熱量(DTA)、示差走査熱量計(DSC)、ガスクロマトグラフィー(GC)又は、質量分析(MS)とを組み合わせて測定できる装置を用いる請求項1又は2に記載の測定方法。【選択図】なし