タイトル: | 公開特許公報(A)_ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類の製造方法 |
出願番号: | 2009045685 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 201/08,C07C 205/22 |
井田 豊 横田 圭一 JP 2010195748 公開特許公報(A) 20100909 2009045685 20090227 ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類の製造方法 エア・ウォーター株式会社 000126115 住友ベークライト株式会社 000002141 広瀬 章一 100081352 井田 豊 横田 圭一 C07C 201/08 20060101AFI20100813BHJP C07C 205/22 20060101ALI20100813BHJP JPC07C201/08C07C205/22 1 OL 6 4H006 4H006AA02 4H006AC51 4H006BB21 4H006BE02 本発明は、下記の化学式(1)で表されるビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類のうち、X=CH2、CHCH3の化合物の製造法に関する。更に詳しくは、化学式(1)で表されるビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類のうち、X=CH2、CHCH3の化合物を高純度で製造する方法に関する。 ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)類は耐熱性ポリマー等の原料として重要な化合物であり、対応するビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)化合物を還元することで得られる。 ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類の製造方法としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)を原料として、クロロホルム溶媒中で硝酸によりニトロ化反応を行う方法(特許文献1)、酢酸溶媒中で硝酸によりニトロ化反応を行う方法(特許文献2)、硫酸水溶媒中で硫酸と硝酸より調製した混酸によりニトロ化反応を行う方法(特許文献3)等が知られている。 また、ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類の製造する他の方法として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を原料として、酢酸溶媒中で硝酸によりニトロ化反応を行う方法(特許文献4)、塩化メチレン溶媒中で硝酸によりニトロ化反応を行う方法(特許文献5)等が知られている。特許第2534267号特開平01−301653号特開平11−106365号特開平11−60545号WO2004−90070パンフレット しかしながら、従来公知のビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類の製造方法には、化学式(1)で示される化合物のうちX=CH2、CHCH3の化合物を原料として反応した例はなく、実際に前記記載の溶媒で反応してみたところ、ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)の収率及び品質は、著しく低いものであった。2つの芳香環に挟まれたメチレン基、または2つの芳香環のベンジル位に水素を有することから、反応性に富み、容易に分解しやすいためと思われる。 本発明の目的は、化学式(1)で表わされるビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類でX=CH2、CHCH3の化合物について、高収率及び高純度で得る手段を提供することにある。 本発明者は、上記にあげた課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、化学式(2)で表わされるビス(4−ヒドロキシフェニル)類でX=CH2の化合物であるビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、或いはX=CHCH3の化合物であるビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンをアセトニトリル溶媒中、硝酸でニトロ化することによりビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)エタンが高収率、高純度で得られることを見出し、本発明に到達したものである。 すなわち、本発明は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンまたはビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンをアセトニトリル溶媒中、硝酸でニトロ化することを特徴とするビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)エタンの製造方法に関する。 本発明によれば、化学式(1)で表わされるビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類で従来使用されていた溶媒である酢酸に比べて純度および収率が高くなる。すなわち、本発明に係る製造方法を採用することで初めて工業的レベルでの生産が可能となる。 以下、本発明の製造方法、すなわち、ビス(4−ヒドロキシフェニル)類を硝酸によりニトロ化してビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類を製造する方法において、溶媒としてアセトニトリルを用いる方法を詳細に説明する。 使用する溶媒としてはアセトニトリルを用いる。溶媒使用量は特に限定されず、経済性も考慮しつつニトロ化の反応が適切に進行するように適宜決定すればよい。通常、ビス(4−ヒドロキシフェニル)類に対して0.1〜50倍(重量比)であり、好ましくは1〜10倍である。 アセトニトリルが好ましい理由は必ずしも明らかではないが、実施例において後述するように、1回の再結晶で99%以上の純度とすることができたことから、アセトニトリルを溶媒として使用することで、ジニトロ化の転化率のみならずジニトロ化の選択率も従来技術に係る溶媒に比べて高まっているものと推測される。 ニトロ化剤として使用する硝酸は濃度が10〜98%(%は質量%を意味する。以下特に断らない限り同じ)水溶液であり、市販の工業用硝酸をそのまま、または水で希釈して使用する。収率を高めつつジニトロ化の選択性を高める観点から好ましい硝酸濃度は40〜80%である。硝酸の使用量は通常、ビス(4−ヒドロキシフェニル)類1モルに対して1.8〜3モルであり、使用量が過度に少ない場合には反応が進行しにくくなり、過度に多い場合にはニトロ化が進みすぎるばかりでなく、分解反応も起こりやすくなる。好ましくは1.9〜2.5モルである。 反応温度は通常、−20〜50℃であり、過度に低い場合には反応が進行せず、過度に高い場合には副反応の影響が多くなり純度、収率が低下してしまう。純度および収率を高度に両立する観点から好ましい反応温度は−10〜30℃である。 反応の操作方法としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)類を溶媒中に分散させたまま撹拌し、所定の温度にしてから所定量の硝酸水溶液を滴下して加える。または、溶媒中にまず所定量の硝酸水溶液を添加後、所定の温度にしてからビス(4−ヒドロキシフェニル)類を添加する。硝酸水溶液の滴下やビス(4−ヒドロキシフェニル)類の添加によって温度が上昇するため、上記の温度範囲になるように滴下/添加速度を調整したり、適宜冷却手段を動作させたりすることが好ましい。 反応混合物を所定の温度で原料がほぼなくなるまで撹拌する。なお、反応中の反応混合物における原料濃度は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)など公知の方法により確認すればよい。攪拌時間は典型的には30分〜2時間である。反応終了後、反応液に含まれる混合物をろ過する。ろ過ケーキを水で洗浄後、乾燥することで目的物を得る。 また、得られた目的物を適当な溶媒(例えばN−メチル−2−ピロリジノン)を用いて溶解し、これを再結晶することにより、容易に高純度にすることができる。 次に実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がこれらの具体例にのみ限定されるものではない。 なお、純度分析はHPLCを用いて実施し、純度は面積比率(単位:面積%)により求めた(以下、「HPLC純度」という。)。また、HPLCの測定条件は以下に示す: カラム:L−Column ODS((財)化学物質評価研究機構製、4.6×150mm)、 カラム温度:40℃、 注入量:10μL、 流 量:1.0mL/分、 検出器:UV=254nm、 移動相:A/B=60/40(0分)→90/10(20〜30分)、 A:メタノール、 B:20mMリン酸二水素カリウム(pH=3.6)、 サンプル調製: メタン:固体10mgをDMF50mLに溶解、 エタン:固体10mgをメタノール50mLに溶解。 実施例1温度計、ジムロート冷却器及び攪拌機を備えた300mL四つ口フラスコに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン10g(0.050モル)、アセトニトリル100gを加えて撹拌し、15〜20℃で温度を保持しながら69%硝酸10.0g(理論モル比:2.2)を1時間かけて滴下した。温度を保持しながら1時間撹拌後にろ過し、アセトニトリル10g、さらに水10gで洗浄してウェットケーキ10.1gを得た。真空乾燥機で乾燥し、乾燥品8.1gを黄橙色結晶として得た。HPLC純度92.8%、収率54.7%(対理論)。 実施例2温度計、ジムロート冷却器及び攪拌機を備えた300mL四つ口フラスコに、アセトニトリル100g、69%硝酸10.0g(理論モル比:2.2)を加えて撹拌し、15〜20℃で温度を保持しながらビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン10g(0.050モル)を1時間かけて添加した。温度を保持しながら1時間撹拌後にろ過し、アセトニトリル10g、さらに水10gで洗浄してウェットケーキ11.5gを得た。真空乾燥機で乾燥し、乾燥品9.1gを黄色結晶として得た。HPLC純度95.4%、収率60.3%(対理論)。 実施例3温度計、ジムロート冷却器及び攪拌機を備えた5L四つ口フラスコに、アセトニトリル1000g、69%硝酸200.9g(理論モル比:2.2)を加えて撹拌し、0〜5℃に冷却後、温度を保持しながらビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン200.3g(1.00モル)を4時間かけて滴下した。温度を保持しながら1時間撹拌後にろ過し、アセトニトリル200g、さらに水200gで洗浄してウェットケーキ226.0gを得た。真空乾燥機で乾燥し、乾燥品178.5gを黄色結晶として得た。HPLC純度93.4%、収率54.2%(対理論)。 これにN−メチル−2−ピロリジノン1000gを加え、加熱溶解後、水167gを加えてから15〜20℃に冷却した。温度を保持しながら1時間撹拌後にろ過し、水167gで洗浄してウェットケーキ157.8gを得た。真空乾燥機で乾燥し、乾燥品142.0gを黄色結晶として得た。HPLC純度99.1重量%、収率45.7モル%(対理論)であった。 実施例4温度計、ジムロート冷却器及び攪拌機を備えた100mL四つ口フラスコに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン5g(0.023モル)、アセトニトリル10gを加えて撹拌し、0〜5℃に冷却後、温度を保持しながら61%硝酸5.3g(理論モル比:2.2)を1時間かけて滴下した。温度を保持しながら1時間撹拌後、さらに61%硝酸1.2g(理論モル比:0.5)を滴下し、温度を保持しながら1時間撹拌後、室温まで徐々に昇温した。温度を保持したまま1時間撹拌後にろ過し、アセトニトリル5g、さらに水5gで洗浄してウェットケーキ6.1gを得た。真空乾燥機で乾燥し、乾燥品4.5gを黄色結晶として得た。HPLC純度90.9%、収率59.6%(対理論)。 比較例1 温度計、ジムロート冷却器及び攪拌機を備えた500mL四つ口フラスコに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン30g(0.15モル)、酢酸150gを加えて撹拌し、15〜20℃で温度を保持しながら69%硝酸27.4g(理論モル比:2.0)を1時間かけて滴下した。温度を保持したまま1時間撹拌後にろ過し、水90gで洗浄してウェットケーキ36.1gを得た。真空乾燥機で乾燥し、乾燥品30.3gを赤橙色結晶として得た。HPLC純度78.4%、収率47.2%(対理論)。 比較例2 温度計、ジムロート冷却器及び攪拌機を備えた100mL四つ口フラスコに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン5g(0.023モル)、酢酸10gを加えて撹拌し、5〜10℃に冷却後、温度を保持しながら61%硝酸5.3g(理論モル比:2.2)を1時間かけて滴下した。温度を保持したまま1時間撹拌後、さらに61%硝酸1.2g(理論モル比:0.5)を滴下し、温度を保持しながら1時間撹拌後、室温まで徐々に昇温した。温度を保持したまま1時間撹拌後にろ過し、水5gで洗浄してウェットケーキ7.2gを得た。真空乾燥機で乾燥し、乾燥品4.9gを黄茶色結晶として得た。HPLC純度75.6%、収率49.4%(対理論)。 ビス(4−ヒドロキシフェニル)類をニトロ化してビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類を製造する方法において、溶媒としてアセトニトリルを用いることを特徴とするビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類の製造方法。 【課題】耐熱性ポリマー等の原料として重要な化合物であるビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類でX=CH2、CHCH3について、高収率及び高純度で得る手段を提供する。【解決手段】ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン或いはビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンをアセトニトリル溶媒中、硝酸でニトロ化することにより、高収率及び高純度で製造できる。N−メチル−2−ピロリジノンで再結晶することにより容易に高純度にすることができる。【選択図】なし