タイトル: | 公開特許公報(A)_氷球発射装置および降雹試験方法 |
出願番号: | 2009039687 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 3/34,G01M 7/08 |
中村 敏夫 JP 2010197098 公開特許公報(A) 20100909 2009039687 20090223 氷球発射装置および降雹試験方法 三菱重工業株式会社 000006208 藤田 考晴 100112737 上田 邦生 100118913 中村 敏夫 G01N 3/34 20060101AFI20100813BHJP G01M 7/08 20060101ALI20100813BHJP JPG01N3/34 GG01M7/00 H 8 1 OL 11 2G061 2G061AA13 2G061AB05 2G061BA15 2G061CA18 2G061CC15 本発明は、雹を模した氷球を試験対象物に衝突させる氷球発射装置及び降雹試験方法に関し、特に太陽電池パネルの雹に対する機械的性能を評価するための装置及び方法に関するものである。 太陽電池パネルおよび太陽電池モジュール等の評価として、電気的性能、機械的性能、耐環境特性等の試験が行われている。その中でも、機械的性能を評価する試験として、降ひょう(雹)試験と呼ばれる、雹の衝撃に対する機械的強度を調べる試験が、JIS C 8938−1995(非特許文献1)に規定されている。この規格では、試験装置の条件や試験方法についての記載はあるものの、具体的な装置構成については特に記載されていない。また、氷球を発射させる装置の機構の例として、空気圧式とばね式を挙げている。 また、上記非特許文献1では、簡易試験方法として、氷球の代わりに鋼球を所定の位置から、水平に設置された太陽電池パネルの落下点に落下させて損傷状況を確認する試験方法が規定されている。この簡易試験方法は、特別な装置を必要としないので、従来は、この試験方法が用いられることが多かった。 その他、氷球を太陽電池パネルに衝突させる降雹試験においては、気体の圧力によって氷球を発射させる装置が用いられることがある。このような圧縮気体によって氷球に速度を与える装置には、速度を制御するために圧力調整弁を設けたものがある(特許文献1)。特開2006−47131号公報JIS C 8938−1995(附属書7 降ひょう(雹)試験A−8) しかしながら、近年、技術進歩に伴って、太陽電池パネルも限界設計を行えるようになり、従来、一般に実施されていたJIS(非特許文献1)で規定する鋼球を衝突させる簡易試験をもって、品質要求を満たそうとするには強度過剰な設計となることが問題となっている。雹であれば衝突によって雹自身が破壊することでエネルギーが消費されることによって、太陽電池パネルが受けるエネルギーが緩和されて太陽電池パネルが破壊されことはない。しかし、上述の簡易試験で規定されているような鋼球を用いる場合、衝突によって鋼球が破壊することはないので、衝突エネルギーを太陽電池パネルがすべて受けることになり、太陽電池パネルが破壊される。したがって、簡易試験によって太陽電池パネルが破壊しないように設計することになるが、これでは過剰強度品質となり現実的ではない。 このような理由から、簡易試験ではなく、氷球を発射装置から発射しパネルに衝突させる試験方法を採用することになるが、そのためには、氷球を発射させるための装置が必要となる。 JIS(非特許文献1)で規定された試験方法を実施する場合、特許文献1のように圧縮気体によって氷球を発射させる装置では、圧縮気体を保持するために、発射筒に気密性や強度が要求され、圧縮機なども必要となる。また、このような装置構成の場合、装置に備えられた速度センサーのデータを下に、気体の圧縮量を調整して氷球の速度を制御している場合が多く、そのため、一般に、これら装置全体は、高額となってしまう。 しかし、降雹試験は製品仕様を確認するために行われるものなので、試験を行う頻度は、製品の仕様が更新される数年に一度程度である。そのため、試験装置が高額となることは好ましくない。 そこで、発射機構のもう一つの例としてJIS(非特許文献1)で挙げられているばね式を用いることが可能であれば安価に試験を実施できると考えられる。しかしながら、ばね式は、気体によって弾かれる空気圧式と異なり、氷球を弾くための発射部材が直接氷球に接触して撃力を伝播させなければならない。このような機構の場合、通常の方法では氷球が撃力によって破壊されてしまい、実際には試験が成立しないという問題があり、降雹試験においては、ばね式を採用することは困難とされていた。 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、撃力を直接作用させても氷球が破壊しない氷球発射装置およびこれを用いた降雹試験方法を提供することを目的とする。 上記課題を解決するために、本発明の氷球発射装置および降雹試験方法は以下の手段を採用する。 すなわち、本発明にかかる氷球発射装置は、直線の軌道上で氷球に撃力を作用させ、該撃力によって該氷球に速度を加え、該軌道の端部から該氷球を発射する氷球発射装置において、前記氷球が発射に至るまで前記氷球を保持する氷球ガイドを有し、該氷球ガイドは、前記軌道上に直線運動可能に設置されるとともに、前記直線運動方向に対して、氷球と面で接することを特徴とする。 本発明によれば、氷球は、軌道上に設置された氷球ガイドが直線運動を行うときに、氷球ガイドに押されるようにして、氷球ガイドと共に直線運動を行う。このとき、氷球は、氷球ガイドの運動方向に対して、氷球ガイドと面で接するように保持される。氷球発射装置に蓄えられたエネルギーは、瞬間的に解放され、氷球ガイドに作用することで、氷球ガイドの直線運動を励起しようとする。氷球ガイドが直線運動を始める直前のエネルギーが付与される瞬間においては、氷球ガイドには、撃力が作用する。氷球ガイドと氷球は面で接触しているので、氷球は、撃力を面で受けることができる。氷球は氷球ガイドと面で接触して撃力を伝播されるので、氷球に発生する応力は、点で接触して撃力を受ける場合と比較して格段に小さくなる。したがって、氷球の発生応力を低減できるので、氷球が破壊されることが無い。氷球が破壊されないので、撃力は運動エネルギーに変換されて、氷球は氷球ガイドと一体となって直線運動を行うことができる。 上記の発明において、前記氷球ガイドと前記氷球が接する前記面は、氷球の表面形状に合わせて形成されることを特徴とする。 氷球ガイドと氷球が接する面を氷球の形状に合わせて形成されているので、氷球を可及的に大きな面積で受けることができる。また、氷球の形状が決まっている場合には、氷球ガイドを予め製作しておけるので、面で受けるための細工を行う必要が無い。 上記の発明において、前記氷球ガイドと前記氷球とが接する前記面は、緩衝材によって形成されていることを特徴とする。 氷球ガイドと氷球とが接する面には緩衝材が挟まれて配置されているので、緩衝材は、撃力と、撃力の方向とは逆方向に働く氷球が持つ慣性力によって押しつぶされる。緩衝材は氷球と接する部分から押しつぶされていくので、氷球は、緩衝材にめり込むような形態となる。緩衝材にめり込んだ氷球は、緩衝材に対して面接触となり、撃力を面で受けることができる。また、緩衝材を用いることで、大きさや形状の異なる氷球に対して、共通の氷球ガイドを用いることができる。 上記の発明において、前記氷球ガイドは、その内径が前記氷球と略同等とされるとともに、内表面が滑らかな円筒形状とされていることを特徴とする。 発射の際、氷球は、保持されている円筒形の氷球ガイド内の奥側から発射口側へ向かって、内表面をすべるように移動する。氷球ガイドの内表面は滑らかなので、氷球の移動を阻害しない。また、氷球が滑るときのわずかな摩擦力によって、氷球表面に水の膜が形成され、さらに摩擦力が低減される。氷球ガイドの内径は、氷球と略同等とされているので、氷球ガイド内に保持された氷球が運動中に氷球ガイド内を揺動することがない。氷球ガイド内を揺動することがないので、発射方向が安定する。氷球ガイド内を氷球が移動する時に、阻害物や、摩擦力などの発射方向を不安定にする要因が無いので、氷球の安定した方向性を得ることができる。したがって、氷球を破壊することなく安定した方向性をもって発射することができる。 上記の発明において、前記氷球ガイドは、取り外し可能とされたアダプターを有し、該アダプターを介して氷球を保持することを特徴とする。 氷球ガイドは、取り外しが可能なアダプターを有しており、アダプターは、氷球の大きさに合わせて製作されている。氷球ガイドにアダプター構造を備えることによって、複数の種類の大きさの氷球に合わせたアダプターを用意すれば、氷球の大きさを変更しても、それぞれの氷球の大きさに合わせたアダプターに保持させることができる。したがって、アダプターを交換するだけで複数種類の大きさの氷球に対して衝突試験を行うことが可能である。 上記の発明において、氷球加速試験装置は、前記氷球ガイドに接続され、変形して弾性力を蓄積する弾性体と、前記氷球ガイドまたは該弾性体に接続され、張力を保持する線状部材と、を備え、前記撃力は、該線状部材に張力が負荷され、該張力に連動して前記弾性体が変形することによって弾性力が蓄積された状態で、前記線状部材の張力が瞬間的に解放されることによって発生されることを特徴とする。 氷球ガイドもしくは弾性体に接続された線状部材に張力が負荷されると、線状部材に直接または氷球ガイドを介して接続された弾性体は連動して変形する。線状部材は、負荷される張力に対して耐力を十分有するものであれば良い。変形した弾性体には、弾性力が蓄積される。したがって、線状部材の張力が瞬間的に解放されると、弾性体に蓄積された弾性力も連動して瞬間的に解放される。瞬間的に解放する方法としては、線状部材を切断する方法や、線状部材を係止させておき、係止を外す方法がある。瞬間的に解放された弾性力は、撃力となって、氷球を保持した氷球ガイドに作用される。 上記の発明において、前記氷球は、所定間隔をあけて対向配置された太陽電池パネルに向けて発射されることを特徴とする。 太陽電池パネルの製品検査では、雹(ひょう)に対する耐久性を確認するための降雹試験を行う。本発明の氷球発射装置を用いることによって、氷球に撃力を直接与えて太陽電池パネルへ向けて発射することができるので、発射制御を行いやすく、従来装置よりも簡素な構成で確実な降雹試験を行うことができる。 また、本発明にかかる降雹試験方法は、直線の軌道上に直線運動可能に設置され氷球を面で接しながら保持する氷球ガイドを備え、該氷球ガイドに撃力を作用させ、該撃力によって該氷球に速度を加え、前記軌道の端部から該氷球を発射する氷球発射装置を用いて、前記試験対象物に氷球を衝突させることを特徴とする。 本発明によれば、氷球を試験対象物に衝突させる降雹試験を行う際、直線軌道上に備えられた氷球ガイドに、氷球を面で接するように保持させ、氷球ガイドに撃力を与えることで氷球を発射する氷球発射装置によって、氷球を試験対象物に向かって発射させる。氷球ガイドと氷球は面で接しているので、撃力を受けても氷球には破壊されるような応力は発生しない。そして、氷球発射装置から発射された氷球は、破壊されることなく試験対象物へ衝突する。氷球が破壊されることがないので、適切に降雹試験を行うことができる。 上述した発明によれば、氷球ガイドと氷球を面で接触させることによって、氷球ガイドに撃力が作用し氷球に伝播しても、氷球には局所的に応力が発生しないので、氷球は破壊されること無く、非常に単純な機構で、安全で確実な方向性を持って発射される氷球発射装置および降雹試験を実現することができ、さらに、氷球発射装置を安価に製作することができる。本発明の第1実施形態にかかる氷球発射装置と被試験体の配置を表した側面図である。本発明の氷球の形状に合わせて形成された氷球ガイドを示した部分断面側面図である。本発明の氷球ガイドと氷球の間に緩衝材をセットした状態を示した部分断面側面図である。本発明の氷球ガイドと氷球の間と内側面に緩衝材をセットした状態を示した部分断面側面図である。本発明の氷球ガイドに緩衝材を有するアダプターをセットした状態を示した部分断面側面図である。本発明の第2実施形態にかかる氷球発射装置と被試験体の配置を表した平面図である。 以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。[第1実施形態] 以下、本発明の第1実施形態について、図1から図5を用いて説明する。 まず、第1実施形態の構成について説明する。図1には、降雹試験時における、本発明の第1実施形態にかかる氷球発射装置18と被試験体としての太陽電池パネル14の試験配置の側面図が示されている。氷球発射装置18は、氷球2を保持するための氷球ガイド1を有している。 氷球ガイド1は、図2に示されているとおり、氷球2の大きさに合わせた形状のアダプター15を備えている。すなわち、アダプター15の内径は氷球2の外径と略同等とされる。アダプター15の内部の側面は、摩擦係数の小さい滑らかな内表面とされる。また、このとき、アダプター15は、氷球ガイド1に対して、図示を省略する取り外し可能な構造とされる。 アダプター15の取り外し可能な構造とは、アダプター15が直線運動中には氷球ガイド1に固定され、氷球2の大きさ等の変更時にはアダプター15を氷球ガイド1から外して交換するために、氷球ガイド1からアダプター15を取り外すことが可能な構造のことである。その構造は、氷球ガイド1の内側面とアダプター15との外側面との隙間を保持材19(硬質のスポンジ材等)で埋め込まれている。保持材にアダプター15が圧接されることで、アダプター15が氷球ガイド1に安定的に保持される。氷球ガイド1と保持材とは両面テープ等の接着手段で固定してもよい。 なお、保持材19に変えて、例えば、ねじ式や、フランジ留め式、簡易接着式構造などいずれの方法でも良い。また、アダプター15は、ポリエチレンなどのプラスチック等の樹脂製のケース状のものが扱いやすく、好適である。 アダプター15に保持された氷球2が発射時の撃力による反力を受ける面には、緩衝材5が備えられている。緩衝材5は、通常一般に用いられているもので良く、やわらかいスポンジや、一般の衝撃吸収材でよい。氷球2を氷球ガイド1にセットした状態では、氷球2と緩衝材5は、撃力の作用する面において、接触部分4で接している。 また、図1に示す本実施形態では、弾性体6は圧縮力を蓄えるコイルバネで表されている。弾性体6に対して軌道3が設置されており、弾性体6は軌道3によって弾性方向以外の動きが規制されている。本実施形態では軌道3は、コイルバネを内包する筒状の発射筒とされる。軌道3の前方側(図1の右側)の端部には、氷球ガイド1が軌道3から逸脱することを防止するストッパー13が備えられ、軌道3の後方側(図1の左側)の端部には、弾性体6に蓄えられた弾性力の反力を受けるための反力受け17が備えられている。 また、図示を省略するが、ストッパー13には、氷球2が通過することが可能な程度の隙間または開口などの開部が設けられている。この開部は、氷球2が通過することが可能であれば十分であり、形状、大きさは特に限定されない。そして、この開部は、氷球2の発射口となる。 氷球ガイド1の外面後部側(図1の左側)には、弾性体6と、弾性体6に弾性力を与えるため氷球ガイド1を後部側へ引き寄せる治具としてのロッド7と、さらにロッド7の後方(図1の左側)端部側に線状部材としてのワイヤー8が接続され、設置されている。ワイヤー8の傍らには、ワイヤー8を切断するためのカッター10が設置されている。また、カッター10より前方側(図1での右側)のワイヤー8の外周や、カッター10の後方側(図1での左側)となるチェンブロック9とワイヤー8の接続部外周には、防護筒11,12が設置されている。 ロッド7の後方端部側にはワイヤー8が繋がれ、ワイヤー8の後方端部側は、引き寄せ手段としてのチェンブロック9に掛けられている。また、図示を省略するが、チェンブロック9は強固な支柱または壁に支持されている。 次に、上述した構成の本実施形態にかかる作用と効果について説明する。まず、氷球ガイド1に備えられたアダプター15に氷球2が保持される。次に、動力によって、チェンブロック9のチェンが巻かれると、氷球ガイド1が、後方側(図1の左側方向)へ引き寄せられるとともに、弾性体6は圧縮されて弾性力が蓄えられる。 このとき、弾性体6は、軌道3によって運動方向を規制されているので直線的に圧縮される。軌道3の後方側端部には反力受け17が備えられて弾性体6の後端部に接しており、反力受け17は、弾性体6が圧縮されることによって弾性体6に蓄えられる弾性力の反力を受ける。 チェンブロック9の引き寄せ量は、弾性体6の弾性係数と、氷球1が太陽電池パネル14に衝突する直前の終速から物理的な計算により求めることができる。なお、氷球2の終速は、JIS(非特許文献1)などで規定されている。このとき、太陽電池パネル14は、氷球発射装置18のストッパー13付近となる発射口との間に所定の間隔を設けられて配置される。そして、高速度カメラなどを用いた図示しない速度測定機器によって、この間隔における飛球としての氷球2を撮影し、終速度が求められる。さらに、結果をフィードバックして、引き寄せ量の微調整を行うことによって速度をより精密に制御することも可能である。 弾性体6が圧縮されて、氷球ガイド1の移動量が所定の距離に達したとき、カッター10によってワイヤー8が切断される。ワイヤー8が切断されると、ワイヤー8の張力が解放され、連動して弾性体6に蓄えられていた弾性力は瞬間的に開放される。そして、氷球ガイド1は氷球2とともに軌道3に沿って前方へ弾き出される。軌道3の前方側の端部にはストッパー13が設置されているので、氷球ガイド1は、軌道3から逸脱しないように動きが規制される。 また、ワイヤー8がカッター10によって切断されると、切断の勢いでワイヤー8や、チェンブロック9が撥ねて装置周囲にいる作業員にぶつかる可能性があり非常に危険である。したがって、防護筒11,12を備えることによって、これらの危険を回避することが出来る。なお、本第1実施形態では、ワイヤー8を切断することによって、ワイヤー8に作用する張力を瞬間的に解放させたが、この方法に限定されず、例えば、ワイヤー8にリング状の係止部を設けて、この係止部を設置台から突設された掛け部材に係止させ、チェンブロック9を外してから、掛け部材を倒したり、貫いたりして係止を外すことで張力を瞬間的に解放させる方法でも良い。この場合は、ワイヤー8を切断しないので材料の無駄を抑えることができ、ワイヤー8を交換する手間が省ける。 ワイヤー8がカッター10によって切断され、氷球2を保持した氷球ガイド1が軌道3上に沿って直線運動を開始すると、氷球ガイド1と氷球2が接する面には緩衝材5が挟まれて配置されているので、緩衝材5は、撃力と、撃力の方向とは逆方向に働く氷球2が持つ慣性力によって押しつぶされる。緩衝材5は氷球2と接する部分から押しつぶされていくので、氷球2は、緩衝材5にめり込むような形態となる。緩衝材5にめり込んだ氷球2は、緩衝材5に対して面接触となり、撃力を徐々に面で受けることになる。 氷球2は、氷球ガイド1から伝播された撃力を面で受けているので、氷球に作用する応力は点で受ける場合と比較して格段に低減される。したがって、撃力によって氷球2が破壊されることは無い。 氷球ガイド1は、撃力を受けた後、氷球2を面で保持しながら前方側(図1の右側方向)へと加速し、ストッパー13へ到達する。ストッパー13へ到達した氷球ガイド1はストッパー13によって強制的に直線運動を停止させられる。氷球2は氷球ガイド1に保持されているが固定はされていないので、慣性力によって速度を備えたまま氷球2は、停止した氷球ガイド1から離れて前方に設置された太陽電池パネルへ向かって飛出する。このとき、アダプター15の内側面は摩擦係数が小さくなるように形成されているので、氷球1はアダプター15内を滑るように前方へ移動する。 氷球ガイド1の内表面が、滑らかにされることで、氷球2は移動方向を阻害されないので、発射方向性が向上する。また、氷球2が滑るときのわずかな摩擦力によって、氷球2の表面に氷球1から溶け出した薄い水の膜が形成されて、摩擦力がさらに低減される。これは、スキーが雪面をよく滑る原理と同様である。 アダプター15の内表面は滑らかに仕上げられていれば良いが、アダプター15が上述したプラスチック等の樹脂製のケースではない場合、特に、氷球ガイド1の氷球2の保持部が金属の場合には、氷球の水分によって錆が発生し、氷球2と錆との間に摩擦を起こし、方向性を不安定にする要因となり得るので、内表面は錆びない材質で形成されることが好ましく、樹脂の塗布や、プラスチック材を貼るなどの処置を施しても良い。さらに試験前に、摩擦要因を除くため、氷球2の保持部の内表面は清浄にしておくことが好ましい。 また、アダプター15の氷球2を保持させる部分の内径は、氷球2と略同等とされるので、氷球ガイド1内に保持された氷球2が運動中に上下左右に揺動することがない。氷球ガイド1内を揺動することがないので、発射方向をさらに安定させることができる。 このように、氷球ガイド1に備えられたアダプター内を氷球2が移動する時に、阻害物や、摩擦力、揺動などの発射方向を不安定にする要因を取り除くことで、氷球2の安定した方向性を得ることができる。また、様々な氷球2の大きさに対応した異なる内径を有するアダプター15を複数用意しておけば、アダプター15を交換するだけで、同じ氷球ガイド1を用いて様々な大きさの氷球1に対応でき、それぞれに応じて発射方向を安定させることができる。 図3から図5にはアダプター15を用いない場合の氷球ガイド1の他の変形例が示されている。 図3には、氷球2が氷球ガイド1の運動方向に対して、氷球ガイド1と面で接して保持されるように、氷球ガイド1の氷球2を保持する部分を直接、氷球2の形状に合わせて加工された氷球ガイドの部分側面が表されている。すなわち、接触部分4は、氷球2に合わせた曲面形状とされる。 氷球ガイド1が直線運動を始める直前のエネルギーが付与される瞬間において、氷球ガイド1に、撃力が作用したとき、氷球ガイド1と氷球2は接触部分4の面で接触しているので、氷球2は、撃力を面で受けることができる。したがって、氷球2の発生応力を低減できるので、氷球2が破壊されることが無い。氷球2が破壊されないので、撃力は運動エネルギーに変換されて、氷球2は氷球ガイド1と一体となって直線運動を行うことができる。緩衝材を必要としないので、氷球2の保持部分を拭き取るなど清浄にするときなどに扱いが容易であり、また、緩衝材が経年劣化によって弾力性を失う等の心配もない。 図4および図5には、アダプター15を用いずに緩衝材5を用いた変形例が示されている。アダプター15が用意できない場合に、図4に示すように、撃力が作用する面のみに緩衝材5を備えるだけで効果が期待できる。緩衝材5を用いることによって、緩衝材5が加速によって自然に氷球2の形状に変化して面接触となり、氷球2が破壊されることを防止できる。例えば、広い試験場でバネの変形量を多くとることが出来る場合には、バネ定数の小さいバネを用いて氷球2の加速距離を長くすることができる。このような状況では、氷球ガイド1および氷球2は穏やかに加速されるので、短い加速距離の場合に比べて撃力が小さくなり揺動が抑えられる。したがって、アダプター15を用いなくても大きさや形状の異なる氷球2に対して、方向性が確保され、共通の氷球ガイド1で複数のサイズの氷球2の実験を行うことが可能となる。 また、ランダムな方向性を持った氷球2を故意に作り出したい場合には、図5に示すように側面側も緩衝材5で囲むような形状とすると良い。緩衝材5をこのように配置することで、氷球2の発射方向性が定まらなくなり、ランダムな方向に変化する氷球2を発射することができる。[第2実施形態] 次に、本発明の第2実施形態について、図6を用いて説明する。第1実施形態では弾性体6に圧縮バネを用いた実施形態であったのに対し、本実施形態では、弾性体6に引張りバネを用いた例を示す。図6には、氷球発射装置18と太陽電池パネル14の配置を上からみた平面図が示されており、本図では引っ張りバネが左右に伸びて配置されている。本実施例の場合、軌道16は、発射筒ではなく、レール状のものとし、ブロック状の氷球ガイド1が係合されている。なお、氷球ガイド1は軌道16上を直線運動可能に設置されている。その他の基本構成は第1実施形態とほぼ同様である。 このような形態では、第1実施形態と比較して、バネを2本使用するので、バネ定数の小さいものが使用でき、安価に入手できる。また、第1実施形態と同じバネ定数のバネを使用する場合や、左右の広げ具合によっては、長手方向の占領スペースをより小さくすることができる。実験スペースが限られる場合に有効な方法である。 なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、第2実施形態の二つのバネを左右に広げた配置にせず、第1実施形態の様に直線的に配置したり、または、弾性体6に板バネを採用し、本発明による氷球ガイド1を備えることで氷球2を弾き出す機構にしたりすることも可能である。1 氷球ガイド2 氷球3 軌道4 接触部分5 緩衝材6 弾性体7 ロッド8 ワイヤー9 チェンブロック10 カッター11 防護筒12 防護筒13 ストッパー14 太陽電池パネル15 アダプター16 軌道17 反力受け18 氷球発射装置19 保持材 直線の軌道上で氷球に撃力を作用させ、該撃力によって該氷球に速度を加え、該軌道の端部から該氷球を発射する氷球発射装置において、 前記氷球が発射に至るまで前記氷球を保持する氷球ガイドを有し、 該氷球ガイドは、前記軌道上に直線運動可能に設置されると共に、前記直線運動方向に対して、該氷球と面で接することを特徴とする、氷球発射装置。 前記氷球ガイドと前記氷球が接する前記面は、氷球の表面形状に合わせて形成されることを特徴とする、請求項1に記載の氷球発射装置。 前記氷球ガイドと前記氷球とが接する前記面は、緩衝材によって形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の氷球発射装置。 前記氷球ガイドは、その内径が前記氷球と略同等とされるとともに、内表面が滑らかな円筒形状とされていることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の氷球発射装置。 前記氷球ガイドは、取り外し可能とされたアダプターを有し、該アダプターを介して氷球を保持することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の氷球発射装置。 前記氷球ガイドに接続され、変形して弾性力を蓄積する弾性体と、 前記氷球ガイドまたは該弾性体に接続され、張力を保持する線状部材と、を備え、 前記撃力は、該線状部材に張力が負荷され、該張力に連動して前記弾性体が変形することによって弾性力が蓄積された状態で、前記線状部材の張力が瞬間的に解放されることによって発生されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の氷球発射装置。 前記氷球は、所定間隔をあけて対向配置された太陽電池パネルに向けて発射されることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の氷球発射装置。 雹を模した氷球を試験対象物に衝突させて、該試験対象物の機械的強度を調べる降雹試験方法において、 直線の軌道上に直線運動可能に設置され氷球を面で接しながら保持する氷球ガイドを備え、該氷球ガイドに撃力を作用させ、該撃力によって該氷球に速度を加え、前記軌道の端部から該氷球を発射する氷球発射装置を用いて、前記試験対象物に氷球を衝突させることを特徴とする降雹試験方法。 【課題】氷球を破壊することなく安定した方向性を備えた氷球発射装置および降雹試験方法を提供することを目的とする。【解決手段】直線の軌道3上で氷球2に撃力を作用させ、該撃力によって該氷球2に速度を加え、該軌道3の端部から該氷球2を発射する氷球発射装置18において、前記氷球2が発射に至るまで前記氷球2を保持する氷球ガイド1を有し、該氷球ガイド1は、前記軌道3上に直線運動可能に設置されると共に、前記直線運動方向に対して、該氷球2と面で接する。【選択図】図1