タイトル: | 公開特許公報(A)_イオン液体の精製方法および回収方法 |
出願番号: | 2009030920 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07D 233/58 |
林 蓮貞 樋口 泰 槌井 加奈芽 山口 日出樹 水沢 厚志 JP 2010184902 公開特許公報(A) 20100826 2009030920 20090213 イオン液体の精製方法および回収方法 株式会社KRI 591167430 林 蓮貞 樋口 泰 槌井 加奈芽 山口 日出樹 水沢 厚志 C07D 233/58 20060101AFI20100730BHJP JPC07D233/58 8 OL 13 本発明は不純物を含むイオン液体の精製する方法に関する。不純物を含むイオン液体としては、例えば合成後副反応生成物を含有するイオン液体、又はイオン液体を溶媒として利用した後の不純物を含有するイオン液体である。 イオン液体は室温近傍で液体であり、蒸気圧を殆ど有せず、難溶化合物に対して優れた溶解力を持つため、クリーン溶媒として色々な分野で応用されている。一方、イオン液体がほとんど測定可能な蒸気圧を有せず、溶剤として使用する場合に蒸発による溶剤の損失や環境問題を生じないことがメリットであるが、測定可能な蒸気圧を有しないイオン液体のデメリットは、イオン液体に含まれる高沸点不純物や副生成物をイオン液体の蒸留により再び分離することが困難なことである。また、溶解度差の小さい高沸点な不純物の除去には一般的な沈殿、洗浄や抽出方法も不適切である。 溶解や化学反応を実施するためにイオン液体を使用する場合に、使用されるイオン液体の純度が重要である。しかし、繰り返し利用されると不純物や副反応生成物の濃度が増加するため、イオン液体の再生と高純度化する方法が求められている。 また、イオン液体は合成反応の工程または利用される工程において、黄色から褐色まで不純物によるいろいろな着色現象が発生しやすい。98%以上の純度を有するイオン液体でも目で見える黄色に着色している。発色物はイオン液体の化学特性や物理特性には影響しないが、光学特性には大きな影響を与えるため、それらの発色物を除去することが必要である。 イオン液体を精製する方法としては、再結晶法、膜分離法、熱分解分離法などが挙げられる。しかしながら、不純物の種類や含有率により必ず効果があるとは言えない。 例えば、特許文献1はイオン液体溶融物から部分的結晶化によりイオン液体を精製する方法を開示される。その方法によるとイオン液体を加熱により溶融させることが必要である。また不純物はイオン液体結晶体に包まれ、一緒に析出することがあり、特に不純物の濃度は高い場合には効率的に精製効果がより低いため、繰り返し結晶工程が必要である。 また、特許文献2はイオン液体と汚染物を含む使用済みイオン液体組成物を加熱してその部分分解生成物を生成させ、該生成物を該汚染物から分離し、そして分離した生成物を反応体と反応させて該イオン液体を再生する方法を提案した。この方法は高コスト且つ高エネルギー消耗である。 更に特許文献3はイオン液体を蒸留することによりイオン液体を精製する方法を開示されるが、特許文献2と同じ高コスト且つ高エネルギー消耗の問題は残されている。 更に特許文献4では、アルコール類溶媒の中に再結晶する方法も提案されているが、イオン液体の種類によっては、アルコールなどプロトン性有機溶媒は陰イオンと強い溶媒和作用をするため、イオン液体の結晶を妨害したり、イオン液体結晶体に溶媒を取り込む現象(包接化)したりするため、必ず効果があるとは言えない。特表2008−523005特表2003−507185US2007/0095645A1特開2008−133248 本発明は、下記化1化学式で表されるイオン液体に関して、工業的規模で容易に実施することができ、高沸点または発色性のある不純物を含有する前記イオン液体、特に、合成後副反応生成物を不純物として含有する前記イオン液体、又は前記イオン液体を溶媒として利用した後残留する不純物を含有する前記イオン液体から不純物を効率よく分離する方法を提供するものである。 本発明に係る下記化1化学式で表されるイオン液体は、アルコール類などの極性プロトン性有機溶媒とは、強い溶媒和作用をするため極性プロトン性有機溶媒を溶媒とした場合に前記イオン液体の再結晶化は困難であった。 本発明は、以下に示すような特徴を有するイオン液体を精製する方法に関するものである。 (1)不純物を含有する化1化学式で表されるイオン液体を、含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒、又は含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒と無極性有機溶媒の混合溶媒に溶解した後、溶液の温度を下げて前記イオン液体を溶液中から結晶させ、結晶した前記イオン液体を溶液から分離することを特徴とするイオン液体の精製方法。式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基であり、R2は炭素数1〜4のアルキル基またはアリル基である。Xはハロゲン又は炭素数1〜10までのカルボキシル基である。 ここで、含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒とは、含窒素類の極性非プロトン性有機溶媒又はケトン類の極性非プロトン性有機溶媒の単一溶媒であっても良いし、含窒素類の極性非プロトン性有機溶媒の混合溶媒、ケトン類の極性非プロトン性有機溶媒の混合溶媒又は含窒素類の極性非プロトン性有機溶媒とケトン類の極性非プロトン性有機溶媒の混合溶媒であっても良い。 (2)前記(1)記載の含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、1−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル又はアセトンから選ばれる1種または2種以上の溶媒からなる溶媒であることを特徴とする前記(1)に記載のイオン液体の精製方法。 (3)前記(1)記載の含窒素類若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、ピリジン、1−メチル−2−ピロリドン又はアセトンのいずれかであることを特徴とする前記(1)に記載のイオン液体の精製方法。 (4)前記(1)記載の無極性有機溶媒が炭素数2〜6のエステル又はエーテルからから選ばれる1種または2種以上の溶媒からなる溶媒であることを特徴とする前記(1)又前記(2)に記載のイオン液体の精製方法。 (5)前記(1)記載の含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒、又は含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒と無極性有機溶媒の混合溶媒の溶解度パラメータが9.5〜11.5の範囲にあることを特徴とする前記(1)〜前記(4)のいずれかに記載のイオン液体の精製方法。 (6)前記(1)記載のイオン液体が、ハロゲン化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムであることを特徴とする前記(1)〜前記(5)のいずれかに記載のイオン液体の精製方法。 (7)前記(1)記載のイオン液体を含有する処理液中から前記イオン液体を回収する方法であって、処理液中から溶媒を蒸発させた処理物に、含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒、又は含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン有機溶媒と無極性有機溶媒の混合溶媒に溶解した後、溶液の温度を下げて前記イオン液体を溶液中から結晶させ、結晶したイオン液体を溶液から分離することを特徴とするイオン液体の回収方法。 (8)前記(7)記載の処理物に、前記(1)記載のイオン液体が溶解しない又は前記(1)記載のイオン液体の溶解度が低い溶媒を加えて、前記処理物に含まれる不純物を抽出した後、不溶解成分を前記(1)記載の方法によってイオン液体を精製すること特徴とする前記(7)記載のイオン液体の回収方法。 本発明によると、不純物を含む前記化1化学式で表されるイオン液体、特に、合成後副反応生成物を含有する前記イオン液体、又はイオン液体を溶媒として利用した後の不純物を含有するイオン液体を高純度且つ効率よく精製することができる。 更に、前記精製法を用いることにより前記イオン液体を含有する処理液中から前記イオン液体を高純度且つ効率よく回収することができる。本発明の実施例1に係るBASF製95%BMIMCLの精製前後の光透過性を比較する図である。本発明の実施例1に係るBASF製95%BMIMCL精製前の13C−NMRスペクトルを示す図である。本発明の実施例1に係るBASF製95%BMIMCL精製後の13C−NMRスペクトルを示す図である。本発明の実施例9で精製したBMIMCLとFluka製高純度BMIMCLのIRスペクトルを比較する図である。 以下に本発明をさらに詳細に説明する。 本発明は、前記化1化学式で表させるイオン液体を結晶化させることにより精製する方法である。 また、本発明は、前記イオン液体を含有する処理液を前処理した後、前記イオン液体を結晶化させることにより回収する方法である。 本発明に適するイオン液体は、前記化1化学式で表させるイオン液体、すなわちイミダゾリウム塩であって、イミダゾリウム塩のカチオンであるイミダゾリウムカチオンの1位が炭素数1〜10のアルキル基で、3位が炭素数1〜4のアルキル基またはアリル基、イミダゾリウム塩のアニオンがハロゲン又は炭素数1〜10までのカルボキシル基であることを特徴とする。 そして、その中でもイミダゾリウム塩のアニオンがハロゲンであるイミダゾリウム塩は、本発明の有機溶媒への溶解性が良く、結晶性が高いイオン液体であるので好ましい。 本発明でイオン液体を溶解するために使用する有機溶媒は、含窒素類又はケトン類の極性非プロトン性有機溶媒、又は含窒素類若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒と無極性有機溶媒の混合溶媒が適している。 含窒素類の極性非プロトン性有機溶媒としては、ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジンおよびアセトニトリル等が挙げられる。 その中でも、ジメチルアセトアミド、ピリジンおよび1−メチル−2−ピロリドンは、イオン液体に対する溶解度、溶解後の溶液の粘度、結晶回収率において特に好ましい。 ケトン類の極性非プロトン性有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノン等が挙げられるが、その中でも、アセトンは、イオン液体に対する溶解度、溶解後の溶液の粘度、結晶回収率において特に好ましい。 含窒素類又はケトン類の極性非プロトン性有機溶媒と混合する無極性有機溶媒としては、炭素数2〜6のエステル又はエーテルからから選ばれる1種または2種以上の溶媒が好ましい。 さらに、前記(1)記載の含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒、又は含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒と無極性有機溶媒の混合溶媒は、溶解度パラメータが9.5〜11.5の範囲にあることが好ましい。 溶解度パラメータが、9.5から11.5の範囲以外の有機溶媒は、イオン液体に対する溶解度は低すぎたり高すぎたりするため、良好な精製効率が得られない。すなわち、溶解度パラメータは9.5以下であると、イオン液体とその不純物が有機溶媒に対する溶解性が低く、精製効率が低い。 一方、溶解度パラメータが11.5以上であると、イオン液体に対する溶解度が高すぎ、結晶化が困難であるか、結晶回収率が低くなる。 前記したジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ピリジン又はアセトンから選ばれる溶媒は、単一溶媒として上記の溶解度パラメータ範囲内にあり、イオン液体に対する溶解度、溶解後の溶液の粘度、結晶回収率において特に好ましい有機溶媒である。 単一溶媒として上記溶解度パラメータの範囲に入っていない含窒素類又はケトン類の極性非プロトン性有機溶媒は、精製効率を考慮しなければ、単一溶媒として使用可能であるが、溶解度パラメータの異なる含窒素類及び/又はケトン類の極性非プロトン性有機溶媒を2種以上混合することにより、溶解度パラメータを9.5〜11.5の範囲に調整することにより、精製効率の良い好ましい有機溶媒として使用することができる。 ここで、混合溶媒の溶解度パラメータ(SPm)は、溶媒Aの溶解度パラメータをSPa、モル分率をXa、溶媒Bの溶解度パラメータをSPb、モル分率をXbとした場合に、以下のように計算することができる。 混合溶媒の溶解度パラメータ(SPm)=XaSPa+XbSPb また、溶解度パラメータ値の高い含窒素類及び/又はケトン類の極性非プロトン性有機溶媒は、溶解度パラメータ値の低い極性非プロトン性有機溶媒及び/又は無極性有機溶媒と混合して、溶解度パラメータを9.5〜11.5の範囲に調整することにより、好ましい有機溶媒として精製効率よく使用することができる。この場合、溶解度パラメータ値の低い極性非プロトン性有機溶媒及び/又は無極性有機溶媒の混合比率は、50重量%以下であることが好ましい。溶解度パラメータ値の低い極性非プロトン性有機溶媒及び/又は無極性有機溶媒は、イオン液体の貧溶媒であるため、混合液の溶解度パラメータが上記範囲内にあってもその比率が高いとイオン液体の溶解度は低下する。その結果、イオン液体の良好な精製効率を得ることができない。 溶解度パラメータ値の低い極性非プロトン性有機溶媒としては、炭素数3〜6のケトン類が代表的な溶媒である。 また、無極性有機溶媒は、常温で液体であれば特に限定されず、炭化水素類、エーテル類およびエステル類の中から適宜選択して使用することができる。良く用いる溶媒としては、エーテル系溶媒のテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エステル系溶媒の酢酸エチルなどが挙げられる。 また、メタノール、エタノール等のアルコール類および水等の極性プロトン性の溶媒と無極性有機溶媒と混合して、溶解度パラメータを9.5〜11.5の範囲に調整しても、結晶化は良好ではない。極性プロトン性の溶媒は、イオン液体と水素結合により結合するのが原因と考えられる。 次に、前記(1)記載のイオン液体を含有する処理液中から前記イオン液体を回収する方法について説明する。 前記(1)記載のイオン液体を含有する処理液中に固形物又は懸濁性固形物を含む場合は、前処理として、沈殿、遠心分離およびろ過等の通常の個液分離方法によって前記固形物を除去することが望ましい。 その後、固形物を除去した処理液から溶媒を蒸発させてイオン液体と不純物を含むイオン液体処理物を得る。 前記イオン液体処理物に含まれる不純物としては、イオン液体の合成後イオン液体に含まれる発色物(着色物)、イミダゾリウム、塩化炭素等がある。 また、イオン液体をセルロースの溶解等のバイオマスに作用させた場合の不純物は、セルロース、ヘミセルロース、キチン、リグニンなどのバイオマス由来成分及び又はそれらの副反応生成物がある。 その他、イオン液体を溶媒として使用し化学反応をさせた場合の反応副生成物、反応化剤、修飾剤又は触媒等が、イオン液体処理物に含まれる場合がある。 これらの、イオン液体処理物に含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒、又は含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン有機溶媒と無極性有機溶媒の混合溶媒に溶解した後、溶液の温度を下げて前記イオン液体を溶液中から結晶させ、結晶したイオン液体を溶液から分離することができる。 この場合、イオン液体処理物の中にイオン液体と相溶性のない不純物が含まれる場合は、前記結晶化処理をする前に沈殿、遠心分離及びろ過等の方法によって相溶性のない不純物を除去することにより、より効率的にイオン液体を回収することができる。 また、イオン液体処理物又はイオン液体と相溶性のない不純物除去後のイオン液体処理物に、イオン液体が溶解しない又はイオン液体の溶解度が低い溶媒を加えて、前記イオン液体処理物に含まれる不純物を抽出した後、イオン液体を主成分とする不溶解成分を分離し、前記不溶解成分に含窒素類若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒、又は含窒素類若しくはケトン類の極性非プロトン有機溶媒と無極性有機溶媒の混合溶媒に溶解した後、溶液の温度を下げてイオン液体を溶液中から結晶させ、結晶したイオン液体を溶液から分離すれば、より効率的にイオン液体を回収することができる。 前記有機溶媒にイオン液体を溶解し結晶精製用イオン液体溶液の調製方法及び条件に関しては特に限定するものではなく、通常の攪拌溶解など公知な方法で、常温又は加熱下で溶解することができるが、イオン液体の溶解度、溶解速度、副反応の発生や有機溶媒の沸点などを考慮し、溶解温度は室温〜120℃が好ましい、より好ましくは30〜100℃、更に好ましくは45〜90℃である。溶解温度は25℃より低くなるとイオン液体の溶解度が低いから、精製効率低く好ましくない。120℃以上になると溶解度は無限になるが、熱によりイオン液体の分解や副反応の恐れがあるので好ましくない。 イオン液体溶液におけるイオン液体の濃度は特に限定するものではなく、5〜90重量%が好ましい、より好ましくは10〜80重量%である。イオン液体の濃度はこの範囲より低くなると結晶速度は遅すぎるため好ましくない。またこの濃度範囲より高くなると不純物は結晶体に包まれて一緒に析出する恐れがあるから好ましくない。 イオン液体が含有する不純物の濃度は高い場合、結晶体を分離してから再び有機溶媒に溶解してから更に結晶させることが好ましい。再度結晶化することにより精製したイオン液体の純度は更に向上することができる。 本発明の有機溶媒に溶解したイオン液体は容易に結晶析出することができるものであるが、結晶粒子の均一性及び結晶速度制御のために、結晶核を添加することが好ましい。結晶温度は、イオン液体の種類、濃度、結晶核の添加などによるが、−20〜80℃が好ましい、より好ましくは−15〜60℃、更に好ましくは−10〜50℃である。 イオン液体を結晶させる方法及び条件は特に限定するものではなく、動態結晶法、静態結晶法など公知な方法を使用することが出来る。 溶液からイオン液体の結晶が析出した後、結晶体と残留溶液は遠心分離法またはろ過法などにより分離できる。結晶物を同じ溶媒またはより貧溶媒側に調製した溶媒で洗浄する。 以下、実施例および比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に記載のないかぎり、「部」は「重量部」、% は重量% を意味する。実施例1 塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(BMIMCL)の合成後不純物の除去。110mlのバイオル(サンプル瓶)にBASF製純度95%のBMIMCL30gとジメチルアセトアミド(DMAC)30gを加え、50℃で攪拌しながら均一に溶解した後、23℃の室温に戻ったら種結晶を加え、5℃の冷蔵庫に24時間放置した後、結晶体と残留溶液をろ過にて分離回収し、結晶を更に酢酸エチルで洗浄することにより高沸点のDMACを除去した。結晶体を更に50℃減圧下で残留酢酸エチルを留去し、25gのBMIMCLを得た。収率は83%であった。 精製前後のBMIMCLを溶融してから光透過率を測定した。結果は図1に示すように波長400から800nmの範囲内に光透過率は顕著に上がった。又その炭素NMR分析した結果から図2と図3に示すように精製前(図2)の不純物由来ピークは精製後(図3)には検出されなかった。更にDMACを30g一定としてBMIMCLの添加量を変えて結晶収率と外観の変化を検討した。結果は表1の実施例1の欄にまとめて示される。実施例2. DMACの代わりに1−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた以外は実施1と同様に実施した。25.8gBMIMCLを得た。得られたBMIMCL結晶体の着色状況と収率は表1に示す。実施例3. DMACの代わりに、ピリジンを用いた以外は実施1と同様に実施した。26.7gBMIMCLを得た。得られたBMIMCL結晶体の着色状況と収率は表1に示す。実施例4. DMACの代わりに、アセトン15gを用いた以外は実施1と同様に実施した。得られたBMIMCL結晶体の着色状況と収率は表1に示す。実施例5 DMACの代わりにアセトニトリル15gを用いた以外は実施1と同様に実施した。得られたBMIMCL結晶体の着色状況と収率は表1に示す。実施例6 DMACの代わりにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)15gを用いた以外は実施1と同様に実施した。得られたBMIMCL結晶体の着色状況と収率は表1に示す。実施例7 DMACの代わりにDMAC/酢酸エチル=8/2(wt/wt)の混合液を用いた以外は実施1と同様に実施した。得られたBMIMCL結晶体の着色状況と収率は表1に示す。実施例8 DMACの代わりにDMAC/メチルエチルケトン(MEK)=7/3(wt/wt)の混合液を用いた以外は実施1と同様に実施した。得られたBMIMCL結晶体の着色状況と収率は表1に示す。比較例1 DMACの代わりにメタノールを用いた以外は実施例1と同じ条件でBMIMCLを再結晶させたが、結晶の形成を見られなかった。結果は表1に示す。比較例2 無極性の溶媒である酢酸エチル(SP値:9.0)を用いて、実施例1と同様に酢酸エチル30gにBMIMCL30gを加えたが、50℃にまで加温しても酢酸エチルにはBMIMCLはほとんど溶解しなかった。比較例2で用いた酢酸エチルは、無極性の有機溶媒であって、非プロトン性の溶媒である。比較例3 極性非プロトン性溶媒であるメチルエチルケトン(SP値:9.0)を用いて、実施例1と同様にメチルエチルケトン30gにBMIMCL30gを加えたが、50℃にまで加温してもメチルエチルケトンにはBMIMCLはほとんど溶解しなかった。 比較例2及び3より、非プロトン性の溶媒であってもSP値が低い溶媒にはBMIMCLは溶解せず、本発明の方法の溶媒としてSP値の低い溶媒は適していないことが解かった。 実施例1〜9及び比較例1の結果をまとめて表1に溶媒種、濃度と結晶収率、着色性との関係を示す。 表1から結晶溶媒として非プロトン性極性溶媒の中にBMIMCLを溶解させ再結晶することによりBMIMCLが効率よく結晶させることができることが分った。特にSP値が9.5〜11.5の範囲にある非プロトン性溶媒は、より高い収率を得た。一方、プロトン性溶媒のアルコール類のメタノールでは、BMIMCLが結晶化せず、BMIMCLの結晶溶媒として不適切であることが分った。 次に、実施例9〜11として、イオン液体を溶剤又は反応溶媒として使用した後の処理液中からイオン液体を回収した実施例を示す。実施例9 セルロースの溶解溶剤として回収した塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムの精製。 200mlのビーカにFluka製高純度塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(純度98%以上)60gとDMAC30gを加え、60℃で攪拌しながら均一に溶解させた後、微晶セルロース10gを加えて溶解し、得られたセルロース溶液を凝固液をメタノールとする湿式成形法によりフィルムを成形した。その後、回収した塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム及びDMACを含有するメタノール凝固液を減圧で蒸留してメタノールを除去することにより汚れた塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとDMACの混合液を得た。そこにDMAC30gを加えて塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウの比率を約50:50に調整し、室温まで冷却して種結晶を加え、5℃までさらに冷やして、24時間後結晶体と残留液を分離した。得られた結晶体を酢酸エチルで洗浄、乾燥後重さとIR分析を行なった。塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム51gを得た。 回収したBMIMCLのIR分析結果を比較のために溶解に供したFluka製高純度BMIMCLのIR分析結果のチャート上に並べて図4に示す。図4から解るように回収したBMIMCLは利用前のものとほぼ類似した。実施例10. セルロースのアセチル化反応溶剤として回収した塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムの精製。 110mlのサンプル瓶に塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム30gとDMAC15gを加え、60℃で攪拌しながら溶解させた後、微晶セルロース5gを溶解し、得られたセルロース溶液に無水酢酸5gを加え、90℃で2時間反応させた後、メタノールに析出させ、ろ過により析出した酢酸セルロース又は未反応セルロースを分離した。回収したろ液を減圧でメタノールを除去することにより汚れた塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウとDMACの混合液を得た。そこにDMAC15gを加えDMACと塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウの比率を約50:50に調整し、室温で種結晶を加え、更に5℃まで冷やして24時間後結晶体と残留液を分離した。得られた結晶体を酢酸エチルで洗浄、乾燥後重さとIR分析を行なった。塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム26gを得た。 IR分析結果から精製したBMIMCLのIRスペクトルはほぼ利用前のものと同じだった。実施例11. 木材の脱リグニンの溶剤として回収した塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムの精製。110mlのサンプル瓶に塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム30gとDMAC10gを加え、60℃で攪拌しながら溶解させた後、日本杉の粉末3gを加え、更に硫酸0.5gと蒸留水0.5gを更に添加し、90℃で2時間処理させた後、50gのDMACに析出させ、ろ過により析出したリグノセルロースを分離した。回収したろ液を減圧で水を除去することにより汚された塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウとDMACの混合液を得た。混合液に種結晶を加え、5℃で結晶させ、24時間後結晶体と残留液を分離した。得られた結晶体を酢酸エチルで洗浄、乾燥後重さとIR分析を行なった。塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム24gを得た。 IRスペクトルは利用前のものとほぼ同じだった。 本発明の精製方法によりイオン液体であるイミダゾリウム塩を簡単、効率よく且つ、高純度で精製回収することができ、イオン液体製造時のイオン液体の精製方法及びセルロースなどの天然ポリマーや合成ポリマーの溶解、成形、修飾反応等に用いられたイオン液体の回収再利用方法として有用である。不純物を含有する化1化学式で表されるイオン液体を、含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒、又は含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒と無極性有機溶媒の混合溶媒に溶解した後、溶液の温度を下げて前記イオン液体を溶液中から結晶させ、結晶した前記イオン液体を溶液から分離することを特徴とするイオン液体の精製方法。式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基であり、R2は炭素数1〜4のアルキル基またはアリル基である。Xはハロゲン又は炭素数1〜10までのカルボキシル基である。請求項1記載の含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、1−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル又はアセトンから選ばれる1種または2種以上の溶媒からなる溶媒であることを特徴とする請求項1に記載のイオン液体の精製方法。請求項1記載の含窒素類若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、ピリジン、1−メチル−2−ピロリドン又はアセトンのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のイオン液体の精製方法。請求項1記載の無極性有機溶媒が炭素数2〜6のエステル又はエーテルからから選ばれる1種または2種以上の溶媒からなる溶媒であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のイオン液体の精製方法。請求項1記載の含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒、又は含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒と無極性有機溶媒の混合溶媒の溶解度パラメータが9.5〜11.5の範囲にあることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のイオン液体の精製方法。請求項1記載のイオン液体が、ハロゲン化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のイオン液体の精製方法。請求項1記載のイオン液体を含有する処理液中から前記イオン液体を回収する方法であって、処理液中から溶媒を蒸発させた処理物に、含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒、又は含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン有機溶媒と無極性有機溶媒の混合溶媒に溶解した後、溶液の温度を下げて前記イオン液体を溶液中から結晶させ、結晶したイオン液体を溶液から分離することを特徴とするイオン液体の回収方法。請求項7記載の処理物に、請求項1記載のイオン液体が溶解しない又は請求項1記載のイオン液体の溶解度が低い溶媒を加えて、前記処理物に含まれる不純物を抽出した後、不溶解成分を請求項1記載の方法によってイオン液体を精製すること特徴とする請求項7記載のイオン液体の回収方法。 【課題】不純物を含有するイオン液体(イミダゾリウム塩)を精製する方法および該イオン液体を含有する処理液中からイオン液体を回収する方法を提供する。【解決手段】不純物を含有するイオン液体(イミダゾリウム塩)を、含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒、又は含窒素類及び/若しくはケトン類の極性非プロトン性有機溶媒と無極性有機溶媒の混合溶媒に溶解した後、溶液の温度を下げて該イオン液体を溶液中から結晶させ、該結晶したイオン液体を溶液から分離するイオン液体の精製方法。イオン液体を含有する処理液中から溶媒を蒸発させた処理物(不純物を含有するイオン液体)を前記の方法により処理し、結晶したイオン液体を溶液から回収するイオン液体の回収方法。【選択図】なし