タイトル: | 公開特許公報(A)_金属材料のクリープ損傷評価方法及びクリープ損傷評価装置 |
出願番号: | 2009006970 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 17/00,G01N 23/20,G01N 3/00 |
高久 歴 吉岡 洋明 斎藤 大蔵 伊藤 勝康 石橋 和利 JP 2010164430 公開特許公報(A) 20100729 2009006970 20090115 金属材料のクリープ損傷評価方法及びクリープ損傷評価装置 株式会社東芝 000003078 須山 佐一 100077849 須山 英明 100134223 川原 行雄 100113871 山下 聡 100124073 熊井 寛 100153741 高久 歴 吉岡 洋明 斎藤 大蔵 伊藤 勝康 石橋 和利 G01N 17/00 20060101AFI20100702BHJP G01N 23/20 20060101ALI20100702BHJP G01N 3/00 20060101ALN20100702BHJP JPG01N17/00G01N23/20G01N3/00 R 11 1 OL 14 2G001 2G050 2G061 2G001AA03 2G001BA15 2G001BA18 2G001CA03 2G001GA13 2G001GA14 2G001KA07 2G001KA08 2G001LA02 2G050AA01 2G050AA07 2G050BA10 2G050BA12 2G050EA01 2G050EA05 2G050EA10 2G050EB01 2G050EC01 2G050EC05 2G061AB02 2G061BA15 2G061CA01 2G061CB13 2G061EA04 本発明は、例えば、ガスタービンなどの機器部品を構成する金属材料のクリープ損傷評価方法及びクリープ損傷評価装置に関する。 従来、ガスタービンなどの機器部品を構成する金属材料としては、耐熱鋼やNi基耐熱合金などが用いられている。このような金属材料のクリープ損傷を評価する方法としては、例えば、クリープ過程で生成する粒界上のボイドを評価するAパラメータ法、析出物の形態変化から評価する金属組織学的手法、機器部品の一部からクリープ試験片を採取してクリープ試験を行い評価する機械試験法、材料の硬さの変化から評価する硬さ法、電気抵抗の変化から評価する電気抵抗法などがある。 しかし、上述した評価方法では、以下に示すような問題がある。Aパラメータ法は、クリープボイドが発生、成長する寿命の最終段階でしか適用できずクリープボイドの生じにくい材料では適用できない。金属組織学的手法は、析出物の形態変化が起こりにくい環境(析出物の形態変化がほとんど起こらない温度領域)で使用されている材料については適用できず、急激に組織変化する環境(その材料にとって十分に高い温度域)で使用されている材料では計測誤差が大きくなり、さらには、析出物の生じない材料には適用できない。機械試験法は、試験に長時間を要し、機器部品からの試験片の採取は形状的な制約が多く、クリープ損傷が最も激しい部位からの試験片の採取が困難な場合がある。硬さ法は、材料の変形量に対する硬さの変化が小さい材料では計測誤差が大きくなる。電気抵抗法は、抵抗値の変化に敏感でノイズに左右されやすく、測定誤差が大きくなりやすい。 そこで、近年、次に示すクリープ損傷評価方法が提案されている。この評価方法は、まず、事前に、特定材料の試験材料の材料寿命の加速試験(例えば疲労試験)を行い、一定の材料寿命の進行度に対する結晶方位差のデータを事前に採取し、材料寿命の進行度と結晶方位差との関係を表すマスターカーブを作成しておく。現実に材料寿命の進行が生じた試験材料と同種の調査材料の結晶方位差を測定し、この値を前記マスターカーブに代入して、調査材料の材料寿命の進行度を予測して、破断に至るまでの余寿命を予測する(例えば、特許文献1参照)。 この評価方法は、結晶粒内における結晶方位差をEBSP(Electron Back-Scatter Diffraction Pattern:後方散乱電子回折像)法を用いて計測し、その値から導出されるKAM(Karnel Average Misorientation)値を材料寿命の進行度と関連付ける方法である。 しかしながら、上記した評価方法には、以下のような問題点がある。すなわち、粒内の任意の2点間における結晶方位の角度差は、寿命末期の材料においても数度程度しかないため、材料の寿命末期でしか十分な評価精度が得られないばかりか、測定誤差の影響を受けやすく、データの安定性と信頼性の確保が難しい。特開2004−3922号公報 本発明は、上記従来の事情に対処してなされたものであり、その目的は、高精度で安定して金属材料の継続使用の可否を評価することが可能な金属材料のクリープ損傷評価方法及びクリープ損傷評価装置を提供することにある。 本発明の金属材料のクリープ損傷評価方法の一態様は、クリープ損傷を受けた金属材料の損傷度を評価する金属材料のクリープ損傷評価方法であって、試験材料を用いて、クリープひずみ量と結晶方位分布との相関関係を予め求める工程と、クリープ損傷評価を行う調査材料の結晶方位分布を計測する工程と、計測された前記調査材料の前記結晶方位分布を、前記クリープひずみ量と結晶方位分布との相関関係に当てはめて前記調査材料のクリープひずみ量を推定する工程と、試験材料を用いて、加速クリープ域に到達するひずみ量とクリープ試験応力との相関関係を予め求める工程と、前記加速クリープ域に到達するひずみ量とクリープ試験応力との相関関係と、前記調査材料が受ける応力とから前記調査材料が加速クリープ域に到達するひずみ量を推定する工程と、推定された前記調査材料のクリープひずみ量と、推定された前記調査材料が加速クリープ域に到達するひずみ量とを比較して前記調査材料の損傷度を評価する工程とを具備したことを特徴とする。 本発明の金属材料のクリープ損傷評価装置の一態様は、クリープ損傷を受けた金属材料の損傷度を評価する金属材料のクリープ損傷評価装置であって、試験材料におけるクリープひずみ量と定量化された結晶方位分布との相関関係を表す第1のデータを収容するとともに、試験材料における加速クリープ域に到達するひずみ量とクリープ試験応力との相関関係を表す第2のデータを収容するデータベースと、前記調査材料の結晶方位分布を計測する結晶方位分布計測手段と、前記結晶方位分布計測手段によって計測された前記調査材料の結晶方位分布を定量化する結晶方位分布定量化手段と、前記調査材料の定量化された結晶方位分布を前記第1のデータに当てはめて前記調査材料のクリープひずみ量を推定するクリープひずみ量推定手段と、前記第2のデータと、前記調査材料が受ける応力とから、前記調査材料が加速クリープ域に到達する加速クリープ域到達ひずみ量を推定する加速クリープ域到達ひずみ量推定手段と、推定された前記調査材料のクリープひずみ量と、推定された前記加速クリープ域到達ひずみ量とを比較して前記調査材料の損傷度を評価する判定手段とを具備したことを特徴とする。 本発明によれば、高精度で安定して金属材料の継続使用の可否を評価することが可能な金属材料のクリープ損傷評価方法及びクリープ損傷評価装置を提供することができる。本発明の一実施態様のクリープ損傷評価方法の手順を示すフローチャート。結晶方位分布パラメータP<101>,15とクリープ寿命消費率との関係を示すグラフ。GAM値とクリープ寿命消費率との関係を示すグラフ。結晶方位分布パラメータP<101>,15とクリープひずみ量との関係を示すグラフ。GAM値とクリープひずみ量との関係を示すグラフ。クリープ速度−ひずみ線図の応力依存性を示すグラフ。実機相当の条件において加速クリープ域に到達するひずみ量を、実験データから推定する方法を示す模式図。本発明の一実施態様のクリープ損傷評価装置の構成を示すブロック図。 以下、本発明に係る金属材料のクリープ損傷評価方法及びクリープ損傷評価装置の実施形態について、主に面心立方構造の固溶強化型Ni基耐熱超合金からなる部品のクリープ寿命評価を例として図面を参照して説明する。 本発明においては、材料の結晶方位及びその変化と材料の損傷量とを相関付けることで、材料の余寿命(損傷度)を評価する。結晶方位はEBSP法によって計測することができる。EBSP法は、SEM(走査電子顕微鏡)の反射電子回折における菊池線のパターンを解析することで材料の任意の点における結晶方位を計測する手法である。この手法による結晶方位の全自動解析システム、OIM(ORIENTATION IMAGING MICROSCOPY、TM)が開発されている。通常、数μm間隔で規則的に配置された多数の測定点(通常、数万点〜数十万点)についてそれぞれ結晶方位を計測することで、観察面全体の結晶方位情報を面情報として得ることができる。最近では、コンピュータの演算能力の向上に伴ってOIMの普及が進んでいる。 本発明者等は、面心立方構造の固溶強化型Ni基耐熱超合金(ハステロイX:ハステロイは登録商標)を用いクリープ損傷の進行と結晶方位変化との関係を詳細に調査した。すなわち、新材、任意の時間におけるクリープ中断材、及びクリープ破断材の結晶方位をOIMシステムにて計測した。各試験材の当該部を切り出し、仕上げ研磨を施してSEMへ挿入し、OIMにて応力軸方向から見た結晶方位分布を計測した。その結果、計測された結晶方位分布を定量化した結晶方位分布パラメータP<101>,15(以下、「結晶方位分布パラメータP」と略称することもある。)は、図2のグラフに示すように、クリープ寿命消費率(クリープ破断時間に対する中断時間の比)と良い相関を示した。なお、図2において、縦軸は結晶方位分布パラメータP<101>,15(%)、横軸はクリープ寿命消費率(%)を示している。また、応力軸と特定の結晶方位<uvw>とのなす角がx°以内にある測定点の数の全測定点数に対する比を結晶方位分布パラメータP<uvw>,xと定義した。 また、二次元配列測定データの中で、k番目の結晶粒について、その粒内に含まれる全隣接2点間の方位差を求め、これらを平均したものを、k番目の粒の平均方位差Bkとし、k番目の結晶粒の面積をAk、計測領域の全結晶粒面積をAとして、結晶粒面積の重み付き平均値をGAM値と定義する。なお、GAM値は、以下の式(1)によって表される。式(1)においてmは、結晶粒の数を表している。 このとき、GAM(Grain Average Misorientation)値は、図3のグラフに示すように、クリープ寿命消費率と良い相関を示した。なお、図3において、縦軸はGAM値(deg)、横軸はクリープ寿命消費率(%)を示している。 さらに、縦軸を結晶方位分布パラメータP<101>,15(%)、横軸をクリープひずみ量(%)とした図4のグラフ、及び、縦軸をGAM値(deg)、横軸をクリープひずみ量(%)とした図5のグラフに示すように、結晶方位分布パラメータP及びGAM値はクリープひずみ量ともよい相関があることも見出された。結晶方位分布パラメータP及びGAMの変化メカニズムから、結晶方位分布パラメータP及びGAM値は、クリープ時間よりもクリープひずみ量に対してより直接的に相関していることが確認された。本発明はかかる知見に基づくものである。 以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。この実施形態では、発電用ガスタービンの高温にさらされる部品を例としたクリープ損傷評価方法について説明する。 まず、対象となる発電プラント構成部品の評価部位を選定する。評価部位は、当該部品の寿命を支配する部位であり、類似部品の損傷事例の傾向解析や、FEM(有限要素法)などによる温度・応力解析から把握される、材料的に最も環境の厳しい部位である。 この部位の使用環境(温度・応力)を把握し、当該部品と同一の素材を用い、その環境を模擬した条件の下で、クリープ寿命消費率0%(新材)、クリープ寿命消費率100%(破断材)及びそれらの間の寿命消費率にある試験材(クリープ試験材)を準備し、EBSP法によって計測すれば、図2〜5に示したように、結晶方位分布パラメータP又はGAM値と、クリープ寿命消費率(%)又はクリープひずみ量との相関関係を示すデータ(マスターカーブ)が得られる。しかしながら、実際の部品の使用環境を模擬した試験では破断までに膨大な時間を要する場合が多い。 そこで、マスターカーブを作成する際に、温度や応力の条件を実際の条件よりも厳しくし、より短い時間で試験が終了するクリープ条件を採用することを検討した。本発明者等は、温度や応力を変化させたクリープ試験を実施し、マスターカーブがどのように変化するかを調査した。その結果、結晶方位分布パラメータP及びGAM値ともに、クリープ寿命消費率に対するマスターカーブは、試験温度、応力のいずれを変化させた場合でもその形状が大きく変化した。一方、クリープひずみ量に対するマスターカーブは、試験温度、応力のいずれを変化させた場合でもその変化が小さく、特に応力の変化に対してはほとんど変化しないことが確認できた。 さらに、実用上重要となる低ひずみ側(例えば10%以下)においては、特に温度、応力に対する依存性は小さい。したがって、クリープ損傷を評価する際の指標として、クリープひずみ量を用いる場合は、マスターカーブを得る際のクリープ試験条件が、実際の部品の使用環境と異なっていてもよい。すなわち、加速度試験によって、より短時間でマスターカーブを得ることができる。 この場合、クリープ試験条件を、例えば、実際の部品の使用環境に対して、温度は同等としておき、応力をより厳しい条件に設定することで、より短時間にクリープひずみ量に対するマスターカーブを得ることができる。さらに、クリープ試験条件を、実際の部品の使用環境に対して、温度と応力をより厳しい条件に設定してもよい。 このとき、クリープ試験条件における応力は、実機の応力条件に対してクリープ変形機構が変化しない範囲内で選定することが望ましい。ここで想定している実機の応力は小さいので、加速試験条件の応力も低応力の範囲内に留めることが望ましい。具体的には、クリープ試験において荷重負荷時に瞬間塑性ひずみが生じない範囲内の応力から選定すればよい。この条件内で現実的な破断時間に収まらない場合は、クリープ変形の律速過程が変化しない範囲で温度を上昇させてもよい。これによって、現実的な時間で、結晶方位分布パラメータP又はGAM値と、クリープひずみ量との相関関係を示すデータとしてマスターカーブを得ることができる。 次に、対象とする機器部品の評価部位から試験片を切り出し、EBSP計測により結晶方位分布パラメータP<u v w>, x又はGAM値を求め、上記のマスターカーブと対比させれば、対象部品のクリープひずみ量が推定できる。しかし、これだけでは部品の継続使用の可否(補修・交換の要否)の判断ができない。そこで、部品の継続使用の可否(補修・交換の要否)の判断は、評価部位が加速クリープ域にあるか否かによって行う。 本発明者等の研究によれば、縦軸をクリープ速度(対数)、横軸をクリープひずみ量とした図6のグラフに示すように、ハステロイXのクリープ挙動は、クリープ試験の際の試験応力σ(σ1〜5)によって変化する。なお、図6では、σ1<σ2<σ3<σ4<σ5となっている。そして、加速クリープ域に到達するひずみ量(最小クリープ速度を示す時のひずみ量)をεa(σ)とすれば、クリープ試験応力σとεa(σ)の関係は、縦軸をσ、横軸をεa(σ)とした図7のグラフに示すようになる。 ここで想定している実機の応力をσ1とすると、実機と同等の温度における低応力側でのσとεa(σ)の関係を外挿することで、当該部材の実機の条件において加速クリープ域に到達するひずみ量をεa(σ1)として推定することができる。このようにして推定されたεa(σ1)と、上記のマスターカーブから評価された部品のクリープひずみ量を比較することで、部品の継続使用の可否(補修・交換の要否)の判断を行うことができる。すなわち、例えば、当該部材が加速クリープ域に到達している場合は継続使用を不可とする。図1は、以上に示した発電プラント構成部品のクリープ損傷評価方法の手順を示すフローチャートである。 次に、図1を参照して、本実施形態に係るクリープ損傷評価方法をより具体的な例について説明する。 実際のプラントにおいて高温で用いられる部品の寿命支配因子は、部品の種類や使用環境によって異なるため、それぞれの条件に対して寿命を決定付ける部位を見出し、その部位の材料損傷度を評価する必要がある。そのためには、実際の損傷状況の評価(割れが発生する部位の傾向解析等)や、FEMなどによる解析から求められる温度・応力の分布状況からの推定等で、損傷を評価すべき部位を決定する(ステップS10)。 次に、損傷を評価すべき部位として抽出された部位の温度・応力条件を特定する(ステップS20)。このために、FEM等による解析のほか、金属組織の変化の程度に関する評価や、熱電対による温度の実測等、様々な手法を状況によって使い分ける。 次に、特定された温度・応力条件に基づいてクリープ試験を行う際の試験条件を決定する(ステップS31)。そして、この試験条件に従ってクリープ試験を行うとともに、試験材料の結晶方位分布を計測し(ステップS32)、結晶方位分布の定量化を行って結晶方位分布パラメータPを求め(ステップS33)、結晶方位分布パラメータPとクリープひずみ量との相関関係を示すデータとして、図4に示したようなマスターカーブを導出する(ステップS34)。なお、この場合、結晶方位分布パラメータPの代わりに、図5に示したGAM値によるマスターカーブを使用することもできる。 上記のマスターカーブを得る際に、クリープ試験を短時間で完了するためには、前述したように、加速試験によるクリープ試験を行うことができる。一般的に、プラント部品の使用環境について、温度は転移クリープ領域、応力は当該温度での材料の耐力に対して充分に小さい範囲にある。したがって、加速試験条件としては、温度は転移クリープが起こる範囲で選定し、応力は負荷直後に瞬間塑性ひずみが生じない低応力範囲から選定することが望ましい。なお、クリープ試験に用いられる素材は、対象部品の素材と同一(組成・製造方法・熱処理条件など)であることが望ましいのは言うまでもない。 マスターカーブ作成のためにクリープ中断試験材から試験片を切り出し、EBSP計測用の試料として調整する。このとき、切り出し形状は、円筒状でも直方体状でも楔状でもよいが、最終的にEBSP計測面として、数mm×数mm程度の面積が得られることが望ましい。仮に計測範囲を小さくし過ぎると、計測対象となる結晶粒の個数が減少し、計測のばらつきが大きくなるためである。ここで、主たる応力方向に垂直な面が観察面となるように切り出すことが望ましいが、それが困難な場合には、EBSP試料に調整された後でも、主たる応力方向が見失われないようにすれば問題はない。 また、一般にEBSP試料としては、試料を樹脂に埋め込み研磨仕上げにて試料調整を行うが、EBSP法では、試料の極表層の情報を計測するため、導電性のSEM観察用樹脂を用いることが望ましい。これによって、一般のSEM観察で行われる観察面への導電皮膜(CやAgなど)の蒸着が不要となるからである。 また、研磨による表面へのひずみの導入は、結晶粒内に微小な結晶方位のずれを発生させるため、GAM値等は多大な影響を受ける。したがって、鏡面研磨後に酸等を用いて試料表面のひずみ層を溶出させる等の処理をすることが望ましい。しかし、そのような処理を行ってもGAM値等は、試料調整による計測誤差を生じ易い。そこで、研磨における面圧や時間を一定に保つ管理によって、試料間でのノイズ量を一定に保つことが望ましい。一方、結晶方位分布パラメータPの場合は、特定方位から15°前後の範囲にある結晶粒の比率を示すもので、GAM値等一般に1°前後の角度差を計測する指標に比べて、格段に誤差やばらつきが生じ難い。 次に、試験材料のクリープ特性の応力依存性評価を行う(ステップS41)。プラント部品の評価部位において特定された温度・応力を、それぞれT1、σ1とする。温度をT1に固定し、複数の応力条件においてクリープ試験を実施し、それぞれ加速クリープ域に到達する時点のひずみ量εa(σ)を調べる。一般にσ1は小さい値であるため、このクリープ試験ではそれよりも大きな応力から選定される。ところが、応力が大き過ぎるとクリープ試験では荷重負荷直後に瞬間塑性ひずみが生じ、当該部品で生じている事象を反映しなくなってしまう(図7で高応力側の2点は違う傾きの直線上にある)。すなわち、このクリープ試験では、応力は温度T1における当該材料の耐力に比べて充分に小さい値とし、荷重負荷直後に瞬間塑性ひずみが生じないようにする必要がある。なお、クリープ試験に用いられる素材は、当該部品の素材と同一(組成・製造方法・熱処理条件など)であることが望ましいのは言うまでもない。 上述のようにして得られたクリープ試験応力と加速クリープ域に到達するひずみ量との相関関係(図7参照)に基づいて、温度T1、応力σ1の条件での加速クリープ域に到達するひずみ量をεa(σ1)として推定する(ステップS42)。 次に、対象部品の結晶方位分布の計測を行う(ステップS51)。結晶方位分布の計測では、まず、対象部品の評価部位からEBSP計測用の試験片(調査材料)を採取する。このとき、機械試験等とは異なり試験片は微小なものでよく、切断砥石やグラインダーの他、収束イオンビーム法や放電加工などによって簡単に採取できる。また、サンプル採取痕が微小なため、部品によっては溶接による埋め戻しと部品の継続使用も可能となる。なお、結晶方位分布の変化についてはX線回折法によっても計測が可能であることから、非破壊での評価も可能と考えられる。この場合は、マスターカーブも同様に同一条件のX線回折法による計測で準備することが望ましい。 次に、計測された結晶方位分布の定量化を行う(ステップS52)。この結晶方位分布の定量化は、前述の如く、結晶方位分布パラメータP<u v w>, xによって行う。また、前述したとおり結晶方位分布の代わりにGAM値を用いることもできる。 次に対象部品の変形量(クリープひずみ量)の推定を行う(ステップS53)。ここでは、既に得られたマスターカーブと、評価部品に対して求めた結晶方位分布パラメータP<u v w>, x(GAM値を用いる場合はGAM値)と対照させることで、当該部品のクリープひずみ量を推定する。 最後に対象部品の継続使用可否を判定する(ステップS60)。継続使用可否の判定では、上記の如く推定された対象部品のクリープひずみ量をεbとし、それを前記の、温度T1、応力σ1の条件での加速クリープ域に到達するひずみ量εa(σ1)と比較する。このとき、εb<εa(σ1)であれば対象部品の継続使用を可能と判断し、逆にεb≧εa(σ1)であれば対象部品の継続使用を不可と判断する。すなわち、当該部品が加速クリープ域に到達している場合は継続使用不可と判断し、部材の補修や交換を実施する。 次に、図8を参照して、本実施形態に係るクリープ損傷評価装置100の構成について説明する。 クリープ損傷評価装置100は、プログラムデータベース120に格納されたプログラムを、制御手段130により実行するコンピュータ等によって構成される。 制御手段130は、内部での種々の演算処理を実行するCPU等の演算手段、システム情報等が記憶されたROM等の不揮発性メモリや更新可能に情報を記憶するRAM等の半導体メモリで構成された記憶手段、及び内部での種々の動作や外部との情報授受を司る制御手段等を有する。また、制御手段130は、入出力インターフェース140からの入力やインストールされたプログラムの内容等に応じて様々な情報処理を実行するものとなっており、後述の動作における各種演算の処理を実行したり、各構成部を制御する中核を担う。 また、クリープ損傷評価装置100は、入出力インターフェース140を備えている。入出力インターフェース140は、コンピュータ等が一般に備えるキーボードやポインティング・デバイス等で構成され、使用者等による文字入力や選択入力等を受け付けて制御手段130等へ供給する。さらに、クリープ損傷評価装置100は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等で構成される、制御手段130による制御の下で所定の情報表示をする表示手段160を備えている。また、クリープ損傷評価装置100は、ハードディスク等の記憶手段で構成される、プログラムデータベース120や演算データベース150等を備えている。 演算データベース150は、クリープ損傷評価に係る演算を実行するために必要なデータを収納し、例えば、後述するマスターカーブ導出手段124で導出された各種マスターカーブに関するデータ(例えば、結晶方位分布パラメータP<uvw>,15とクリープ変形量との相関関係を表すデータ等)を収納している。また、演算データベース150は、図7に示したような、試験材料における加速クリープ域に到達するひずみ量とクリープ試験応力との相関関係を表すデータを収納している。 そして、上記した各構成部は、システムバス170で接続されている。 次に、プログラムデータベース120に格納された各種機能手段について説明する。 プログラムデータベース120には、機能手段として、結晶方位分布計測手段121、結晶方位分布定量化手段122、マスターカーブ導出手段123、クリープひずみ量推定手段124、加速クリープ域到達ひずみ量推定手段125、判定手段126が格納されている。 結晶方位分布計測手段121は、試験材料や調査材料の結晶方位分布を計測するものであり、EBSP法を利用したOIMシステムを備えている。そして、SEMで取得した観察面全体の結晶方位の情報に基づいて、応力軸方向から見た特定の結晶方位<uvw>について結晶方位分布を計測する。 結晶方位分布定量化手段122は、結晶方位分布計測手段121によって計測された結晶方位分布を、例えば、結晶方位分布パラメータP<uvw>,15で定量化するものである。 マスターカーブ導出手段123は、結晶方位分布定量化手段122で定量化された結晶方位分布パラメータP<uvw>,15に基づいて、マスターカーブを導出するものであり、結晶方位分布パラメータP<uvw>,15とクリープ変形量との相関関係を表すマスターカーブを導出する。マスターカーブ導出手段123で導出されたマスターカーブは、演算データベース150に収納される。 クリープひずみ量推定手段124は、結晶方位分布定量化手段122で定量化された調査材料の結晶方位分布パラメータP<uvw>,15を、上記マスターカーブ導出手段123で導出され、演算データベース150に収納されたマスターカーブに当てはめて、調査材料のクリープひずみ量を推定する。 加速クリープ域到達ひずみ量推定手段125は、演算データベース150に収納された試験材料における加速クリープ域に到達するひずみ量とクリープ試験応力との相関関係を表すデータに、調査材料が受ける応力を当てはめて、調査材料の加速クリープ域到達ひずみ量を推定する。 判定手段126は、クリープひずみ量推定手段124で推定された調査材料のクリープひずみ量と、加速クリープ域到達ひずみ量推定手段125で推定された調査材料の加速クリープ域到達ひずみ量とを比較する。そして、調査材料のクリープひずみ量が、加速クリープ域到達ひずみ量以上の場合は調査材料を含む対象部品の継続使用を不可と判定し、調査材料のクリープひずみ量が、加速クリープ域到達ひずみ量未満の場合は調査材料を含む対象部品の継続使用が可能と判定する。 なお、上記したクリープ損傷評価装置100における各種機能手段は、上記したように、メモリやHDD(Hard Disk Drive)等の適宜なプログラムデータベース120等の記憶装置に格納したプログラムとして実現してもよいし、ハードウェアとして実現してもよい。プログラムとして実現する場合には、余寿命評価装置100の制御手段130がプログラム実行に合わせてプログラムデータベース120より該当するプログラムを制御手段130のメモリ等に読み出して、これを実行することとなる。 なお、上記実施形態では、面心立方構造を有する材料の場合について説明したが、面心立方構造に限らず、体心立方構造でも六方最密構造でも同様にマスターカーブを作成して、着目すべき結晶方位を適切に選定することで、同様に本発明が適用できる。 100……クリープ損傷評価装置、120……プログラムデータベース、130……制御手段、140……入出力インターフェース、150……演算データベース、160……表示手段、170……システムバス。 クリープ損傷を受けた金属材料の損傷度を評価する金属材料のクリープ損傷評価方法であって、 試験材料を用いて、クリープひずみ量と結晶方位分布との相関関係を予め求める工程と、 クリープ損傷評価を行う調査材料の結晶方位分布を計測する工程と、 計測された前記調査材料の前記結晶方位分布を、前記クリープひずみ量と結晶方位分布との相関関係に当てはめて前記調査材料のクリープひずみ量を推定する工程と、 試験材料を用いて、加速クリープ域に到達するひずみ量とクリープ試験応力との相関関係を予め求める工程と、 前記加速クリープ域に到達するひずみ量とクリープ試験応力との相関関係と、前記調査材料が受ける応力とから前記調査材料が加速クリープ域に到達するひずみ量を推定する工程と、 推定された前記調査材料のクリープひずみ量と、推定された前記調査材料が加速クリープ域に到達するひずみ量とを比較して前記調査材料の損傷度を評価する工程と を具備したことを特徴とする金属材料のクリープ損傷評価方法。 前記結晶方位分布の計測手段として、EBSP(Electron Back-Scatter Diffraction Pattern)法を用いることを特徴とする請求項1記載の金属材料のクリープ損傷評価方法。 前記結晶方位分布の計測手段として、X線回折法を用いることを特徴とする請求項1記載の金属材料のクリープ損傷評価方法。 試験材料を用いてクリープひずみ量と結晶方位分布との相関関係を予め求める工程において実施するクリープ試験の条件が、前記調査材料がさらされていた条件と異なることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の金属材料のクリープ損傷評価方法。 前記クリープ試験の条件が、前記調査材料がさらされていた条件に対して温度は同等で、応力が高いことを特徴とする請求項4記載の金属材料のクリープ損傷評価方法。 前記クリープ試験の条件が、前記調査材料がさらされていた条件に対して温度及び応力が高いことを特徴とする請求項4記載の金属材料のクリープ損傷評価方法。 前記クリープ試験の応力条件が、負荷直後に瞬間塑性ひずみを生じない範囲にあることを特徴とする請求項5又は6記載の金属材料のクリープ損傷評価方法。 前記クリープ試験の温度条件が、前記調査部品がさらされていた条件におけるクリープ変形の律速過程から律速過程が変化しない範囲にあることを特徴とする請求項6記載の金属材料のクリープ損傷評価方法。 前記調査材料の損傷度を評価する工程において、推定された前記調査材料のクリープひずみ量が、推定された前記調査材料が加速クリープ域に到達するひずみ量以上の場合に、前記調査材料を含む部品の継続使用を不可と評価することを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の金属材料のクリープ損傷評価方法。 前記結晶方位分布の代わりにGAM(Grain Average Misorientation)値を用いることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の金属材料のクリープ損傷評価方法。 クリープ損傷を受けた金属材料の損傷度を評価する金属材料のクリープ損傷評価装置であって、 試験材料におけるクリープひずみ量と定量化された結晶方位分布との相関関係を表す第1のデータを収容するとともに、試験材料における加速クリープ域に到達するひずみ量とクリープ試験応力との相関関係を表す第2のデータを収容するデータベースと、 前記調査材料の結晶方位分布を計測する結晶方位分布計測手段と、 前記結晶方位分布計測手段によって計測された前記調査材料の結晶方位分布を定量化する結晶方位分布定量化手段と、 前記調査材料の定量化された結晶方位分布を前記第1のデータに当てはめて前記調査材料のクリープひずみ量を推定するクリープひずみ量推定手段と、 前記第2のデータと、前記調査材料が受ける応力とから、前記調査材料が加速クリープ域に到達する加速クリープ域到達ひずみ量を推定する加速クリープ域到達ひずみ量推定手段と、 推定された前記調査材料のクリープひずみ量と、推定された前記加速クリープ域到達ひずみ量とを比較して前記調査材料の損傷度を評価する判定手段と を具備したことを特徴とする金属材料のクリープ損傷評価装置。 【課題】高精度で安定して金属材料の継続使用の可否を評価することが可能な金属材料のクリープ損傷評価方法及びクリープ損傷評価装置を提供することを目的とする。【解決手段】試験材料のクリープひずみ量と結晶方位分布との相関を予め求めておき、調査材料の結晶方位分布を測定して、予め求められた相関に当てはめることで調査材料のクリープひずみ量を推定する。推定された調査材料のクリープひずみ量を、試験材料が加速クリープ域に到達するひずみ量と比較することで、調査材料の継続使用の可否を判断する。【選択図】図1