タイトル: | 公表特許公報(A)_オキシドレダクターゼによるNAD(P)/NAD(P)H比を制御するための方法 |
出願番号: | 2008555159 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 31/343,A61K 45/00,A61P 3/04,A61P 3/10,A61K 31/352,C07D 307/92,C07D 311/92 |
パク,ミュン−ギュ ヨ,サン−ク ジョ,イン グン カク,テファン JP 2009526839 公表特許公報(A) 20090723 2008555159 20070215 オキシドレダクターゼによるNAD(P)/NAD(P)H比を制御するための方法 エムディー バイオアルファ カンパニー リミテッド 504435416 河備 健二 100106596 パク,ミュン−ギュ ヨ,サン−ク ジョ,イン グン カク,テファン KR 10-2006-0014520 20060215 A61K 31/343 20060101AFI20090626BHJP A61K 45/00 20060101ALI20090626BHJP A61P 3/04 20060101ALI20090626BHJP A61P 3/10 20060101ALI20090626BHJP A61K 31/352 20060101ALI20090626BHJP C07D 307/92 20060101ALI20090626BHJP C07D 311/92 20060101ALN20090626BHJP JPA61K31/343A61K45/00A61P3/04A61P3/10A61K31/352C07D307/92C07D311/92 101 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW KR2007000829 20070215 WO2007094632 20070823 70 20080813 4C037 4C062 4C084 4C086 4C037TA01 4C062HH31 4C062HH33 4C062HH55 4C084AA17 4C084NA14 4C084ZA702 4C084ZC352 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA05 4C086BA08 4C086MA01 4C086NA14 4C086ZA70 4C086ZC35 本発明は、オキシドレダクターゼ、好ましくはNAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ(NQO1)によりNAD(P)+/NAD(P)H比を制御するための方法に関する。より詳細には、本発明は、過剰なエネルギー摂取または異常なレドックス状態に伴う課題、例えば低いNAD(P)+/NAD(P)H比により発症しうる疾患に伴う課題を、エネルギーレベルを反映するNAD(P)+/NAD(P)Hの高い比の誘導により解決可能な技術に関する。例えば、NQO1は、基質としてNAD(P)Hを用いてインビボまたはインビトロでNAD(P)+レベルを上昇させ、結果的にNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させる。従って、エネルギー過剰から生じうる様々な疾患、例えば肥満、糖尿病、代謝症候群、変性疾患およびミトコンドリア機能障害に関連する疾患に伴う課題を解決することが可能である。 体脂肪の量が標準体重に対して異常に高い状態である肥満は、カロリー摂取がカロリー消費よりも多い場合での身体の脂肪組織内での余剰カロリーの蓄積に起因する疾患を指す。肥満により引き起こされる合併症は、例えば高血圧、心筋梗塞、静脈瘤、肺塞栓、冠動脈疾患、脳出血、老人性痴呆、パーキンソン病、II型糖尿病、高脂血症、脳卒中、様々な癌(例えば子宮癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌など)、心臓疾患、胆嚢疾患、睡眠時無呼吸症候群、関節炎、不妊症、静脈性潰瘍、突然死、脂肪肝、肥大型心筋症(HCM)、血栓塞栓症、食道炎、腹壁ヘルニア(Ventral Hernia)、尿失禁、心血管疾患、内分泌疾患などを含む(非特許文献1)。 糖尿病は複数の環境因子および遺伝因子に起因する全身性代謝異常であり、体内のインスリンの絶対的または相対的欠乏による血中グルコースレベルの異常な上昇によって特徴づけられる症状を指す。糖尿病の合併症は、例えば低血糖症、ケトアシドーシス、高浸透圧性昏睡、大血管合併症、勃起不全(インポテンス)、糖尿病性網膜症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性ネフロパチーなどを含む。 代謝症候群は、中性脂肪血症、高血圧、糖代謝障害、血液凝固障害および肥満などの健康リスク因子を伴う症候群を指す。2001年に発行された国立コレステロール教育プログラム(National Cholesterol Education Program)(NCEP)のATP III分類によると、1)男性で40インチ(102cm)以上および女性で35インチ(88cm)以上のウエストライン(ウエスト周囲で測定したときの中心的な肥満)、2)150mg/dLを超えるトリグリセリドレベル、3)40mg/dL未満(男性)または50mg/dL未満(女性)の高密度リポタンパク質(HDL)レベル、4)130/85mmHg以上の血圧、並びに5)110mg/dLを超える空腹時血中グルコースレベルという要素のうちの3つ以上の存在により、個人が代謝症候群と診断される。 インスリン抵抗性は、インスリンが体内で正常に分泌される場合でも、インスリンによってなされる「グルコースの細胞への供給」が正常に機能しない現象を指す。従って、血中のグルコースが細胞に入ることができないことから、高血糖が誘発され、更に細胞自体がグルコースの欠乏によりその正常な機能を発揮することができず、それが原因で代謝症候群の徴候が現れる。 変性は病理所見に由来する用語であることから「酸素の消費における低下」を伴う症状を意味し、細胞内の酸素を用いてエネルギーを生成するオルガネラであるミトコンドリア機能障害が老化に関連する場合の変性疾患を示す。変性疾患の例として、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性疾患が挙げられうる(非特許文献2)。 ミトコンドリア機能障害に起因する疾患は、例えば、ミトコンドリア膜電位異常に起因するミトコンドリアの腫脹、例えば活性酸素種またはフリーラジカルの活性による酸化ストレスに起因する機能障害、遺伝因子に起因する機能障害、およびミトコンドリアのエネルギー生成における酸化的リン酸化機構の機能欠損に起因する疾患を含みうる。上記の病因により発症する疾患の特定の例として、多発性硬化症、脳脊髄炎、脳神経根炎(cerebral radiculitis)、末梢性ニューロパチー、ライ症候群、フリードリヒ運動失調症(Friedrich’s ataxia)、アルパース症候群(Alpers syndrome)、MELAS、片頭痛、精神疾患、うつ病、発作および痴呆、麻酔性発作(paralytic episode)、視神経萎縮、視神経ニューロパチー、網膜色素変性、白内障、高アルドステロン血症(hyperaldosteronemia)、副甲状腺機能低下症、ミオパチー、筋萎縮、ミオグロビン尿症、筋緊張低下、筋肉痛、運動耐性の低下、腎尿細管炎(renal tubulopathy)、腎不全、肝不全、肝機能不全、肝腫脹、赤血球貧血(鉄欠乏性貧血)、好中球減少症、血小板減少症、下痢、絨毛萎縮、複数の嘔吐、嚥下障害、便秘、感音難聴(SNHL)、てんかん、知的障害、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病が含まれうる(例えば、(特許文献1);(特許文献2);(非特許文献3);(非特許文献4);および(非特許文献5)を参照)。 以下、上記の肥満、糖尿病、代謝症候群、変性疾患およびミトコンドリア機能障害に関連する疾患は集合的に「疾患症候群(disease syndrome)」と称されることになる。 現在、かかる疾患症候群に伴う症状を改善するかまたはそれと戦うのに最も有効な方法は運動増進、減量、および食事制限であることが知られている。現在、「疾患症候群」と戦うのに有効なあらゆる方法は、それらがエネルギー代謝を促進することから、結果として体内の余剰エネルギーの消費が最大になり、エネルギー蓄積の阻止がもたらされるという事実を共通に有している。かかる余剰エネルギーの有効な消費が、疾患症候群を治療するための方法であると考えられる。代謝活性の促進が余剰エネルギーの有効な除去に不可欠である。このため、脂肪生成の阻害、グルコース新生の阻害、グルコース消費の促進、脂肪酸化の促進、エネルギー代謝の中央装置であるミトコンドリアの新生(biogenesis of mitochondria)の促進、および代謝活性化に関与する因子の集合的な活性化を行うことが不可欠である。 しかし、疾患症候群の治療標的についてはほとんど知られていないが、専ら個々の疾患を治療するための極めて多数の標的タンパク質または遺伝子が知られており、それ故、上記の対応する標的タンパク質または遺伝子の使用を介する、かかる疾患を予防または治療するための方法がいくつか提案されている。しかし、個々の疾患、例えば肥満、糖尿病などを含む代謝症候群の治療であっても、まだ更なる有意な改善の余地が存在する。疾患の治療に関して極めて多数の研究が行われているという事実にもかかわらず、過剰なエネルギー摂取および老化に起因する様々な疾患の治療において使用可能な薬剤は今のところ全く存在しない。 肥満、糖尿病、代謝症候群、変性疾患およびミトコンドリア機能障害に関連する疾患を含む疾患の大部分、即ち「疾患症候群」を含む疾患の多数は、エネルギー代謝および酸化還元状態の不均衡が原因である。疾患のすべてが余分なNAD(P)Hに起因するエネルギー過剰により生じると考えられる。 NADPHは脂肪合成に関与する重要な因子であり、パルミチン酸塩の合成には14個のNADPH分子が必要である。NADPHは還元剤であり、脂肪合成を含む生合成プロセスにて用いられる。他方、NADHはエネルギー生成反応にて用いられる。しかし、脂肪合成およびエネルギー生成の後に残存する余剰のNAD(P)Hが、反応性酸素種(ROS)などのフリーラジカルが生成される間、原形質膜上に存在するNAD(P)Hオキシダーゼと称される酸化酵素により除去される。肥満および糖尿病における酸化ストレスの増大を担う主な原因がNAD(P)Hオキシダーゼであることが見出された(非特許文献6)。NAD(P)Hオキシダーゼにより生成される反応性酸素種(ROS)などのフリーラジカルが、癌、心血管疾患、高血圧、動脈硬化、心肥大、虚血性心疾患、敗血、炎症状態および疾患、血栓症、脳神経疾患(例えば脳溢血(脳卒中)、アルツハイマー病およびパーキンソン病)、老化促進などの様々な疾患の病原を担う主要な因子であることも見出された(非特許文献7)。 従って、NAD+/NADH比およびNADP+/NADPH比がインビボまたはインビトロで低下することから余剰のNADHおよびNADPH分子が残存する場合、それらは脂肪生合成プロセスにて用いられる。更に、NADHおよびNADPHが、過剰量で存在する場合に反応性酸素種(ROS)の生成を引き起こす主な基質としても用いられることから、NADHおよびNADPHはROSによって誘発される炎症性状態および疾患を含む重要な疾患における病原因子でありうる。これらの理由のため、インビボまたはインビトロにおける環境を確立することでNAD+/NADH比およびNADP+/NADPH比の上昇した状態での安定な維持が保証されうる場合、NAD+およびNADP+による脂肪酸化および様々なエネルギー消費(代謝)が活性化されることになると考えられる。その結果、作用機序を持続的に活性化することでNAD(P)H濃度が低いレベルで維持可能である場合、肥満を含む様々な疾患がかかる余剰エネルギーの完全な消費の誘発により治療されうると考えられる。 最近、NA(D)P+に対して多大な関心が向けられている。NA(D)P+は、脂肪酸化を含む極めて多数の代謝に関与する様々な酵素に対する基質または補酵素として機能する。詳細には、NA(D)P+は、インビボで極めて多数の生物学的代謝プロセスに関与する物質であり、エネルギー代謝、DNAの修復および転写の調節を担う様々な酵素の補酵素として用いられる。他方でNAD+は、NAD+依存性DNAリガーゼ、NAD+依存性オキシドレダクターゼ、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)、CD38、AMPK、CtBPおよびSir2pファミリーメンバーを含む様々な種類の酵素に対する基質または補酵素として用いられる。NAD+は、転写調節、寿命、カロリー制限で媒介される寿命延長および老化関連疾患における上記のインビボでの作用を通じて重要な役割を果たすことが見出された。NAD+は、寿命および推定上のNAD+依存性デアセチラーゼのSir2pファミリーメンバーの調節を介する転写サイレンシングに作用する。 その一方で、細胞内のレドックス状態の主な調節因子であるNAD(P)+/NAD(P)H比は、生体の代謝状態を反映する指標として見なされることが多い。NAD(P)+/NAD(P)H比は、代謝プロセスにおける変化とともに変化する。特に、NAD+が代謝調節因子として機能することが知られている。種々の老化関連疾患は、直接的または間接的にNAD+またはNAD(P)+/NAD(P)Hのレドックス状態における変化に関連する。 タンパク質および遺伝子の代表例として、NAD(P)+により作用を受けるかまたは調節される場合の活性は以下の通りである。転写コリプレッサーCtBP(C末端結合タンパク質)は、NAD+依存性の抗老化遺伝子Sir2と相まって、細胞内のエネルギー状態に応じてクロマチンの転写を制御するためのエネルギーセンサとして役立ち、腫瘍発生の調節において重要な役割を果たす(非特許文献8)。NAD+は、Sir2の作用を通じてp53抗癌遺伝子を制御する(非特許文献9)。 NAD+依存性の遺伝子Sirt1はPGC1−αの脱アセチル化を誘導して糖新生および解糖遺伝子を制御し、肝グルコース放出の刺激による、エネルギー恒常性、糖尿病、および寿命の調節に関連する(非特許文献10)。 Sirt1は、カロリー制限媒介性の寿命延長、老化関連疾患(例えば糖尿病、癌および心血管疾患)、脂肪組織ホルモン(アディポネクチン、レプチン、TNFαおよびレジスチン)の産生、インスリン感受性の増大、並びに脳神経疾患(例えばハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病および脳卒中)および反応性酸素種を含むフリーラジカルに起因する酸化損傷の低下による抗老化作用にて中心的な役割を果たすことが知られている(非特許文献11)。Sirt1がニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(Nmnat)の活性を増大させて大脳および脊髄を保護することから、神経線維疾患および変性脳疾患(多発性硬化症、脳脊髄炎、パーキンソン病、アルツハイマー病、ライ症候群、フリードリヒ運動失調、痙性対麻痺、難聴−失調(Deafness−dystonia)症候群、ウイルソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病)の治療として治療的に有効であることが見出された(非特許文献12)。Sirt1は、PPAR−γ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)の抑制により白色脂肪細胞内での脂肪動員を促進する(非特許文献13)。Sirt1がTat脱アセチル化を介してHIV転写を調節することから、Sirt1がHIV感染症の治療における新しい標的であることが示される(非特許文献14)。 更に、カロリー制限が、血中グルコース、トリグリセリドおよびホルモンのレベルを含む生理的特性の変化並びに生体の運動、活性および耐久力を含む挙動特徴に対する効果を有することが知られている。従って、Sirt1遺伝子を用いる実験を通じ、カロリー制限に作用するSirt1が運動能、活性能および耐久力の促進に密接に関与することが高い有意性で実証された(非特許文献15)。 その一方、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)が、生体におけるエネルギー状態、レドックス状態およびリン酸化度を検知するタンパク質であり、かつAMPだけでなくNAD+によっても活性化されることが確認された(非特許文献16)。リン酸化により活性化されるAMPKは、例えば、脂肪合成の阻害、グルコース取り込みの促進、脂肪分解(リポリーシス)および脂肪酸化の促進、解糖の促進、インスリン感受性の向上、グリコーゲン合成の抑制、トリグリセリドおよびコレステロール合成の抑制、炎症の緩和(抗炎症作用)、血管拡張活性、心血管系の機能改善、ミトコンドリアの再生および筋肉の構造変化、抗酸化機能、抗老化および抗癌効果において様々な機能および作用を示すことが報告されている。更に、AMPKは、上記の様々な活性および機能を用いることから、肥満、糖尿病、代謝症候群、脂肪肝、虚血性心疾患、高血圧、変性脳疾患、高脂血症、糖尿病合併症および勃起不全などの疾患の治療における標的タンパク質として認識されている((非特許文献17);(非特許文献18);および(非特許文献19))。 NAD(P)+の補酵素または基質としての直接的使用に加え、NAD+はADPリボシルシクラーゼ(CD38)の作用により環状アデノシン二リン酸−リボース(cADPR)に変換する一方、NADP+はADPリボシルシクラーゼ(CD38)の作用によりニコチン酸アデニンジヌクレオチドリン酸塩(NAADP)に変換する。CD38により生成されるcADPRおよびNAADPは、細胞内のカルシウム(Ca2+)の動員に関与する二次メッセンジャーとして機能する。 かかる様々な機能を有することが知られるシグナルトランスデューサであるNAD(P)+の濃度および比を増大させるための方法として、1)NAD(P)+生合成プロセスであるサルベージ合成の調節、2)NAD(P)Hを基質または補酵素として用いる酵素の遺伝子またはタンパク質の活性化によるインビボでのNAD(P)+濃度の上昇、並びに3)外部供給源からのNAD(P)+或いはその類似体、誘導体、前駆体またはプロドラッグの供給を介するNAD(P)+濃度の上昇に対して十分に検討することが可能である。 その一方、NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ(EC1.6.99.2)(NQO)は、DT−ジアホラーゼ、キノンレダクターゼ、メナジオンレダクターゼ、ビタミンKレダクターゼ、またはアゾ染料レダクターゼとも称され、かかるNQOはNQO1およびNQO2と称される2種のアイソフォームで存在する(非特許文献20)。NQOはフラビンタンパク質であり、2電子還元およびキノンまたはキノン誘導体の解毒を触媒する。NQOは電子供与体としてNADHおよびNADPHの双方を用いる。NQOの活性は、極めて高度に反応性のあるキノン代謝産物の形成を阻害し、ベンゾ(d)ピレンおよびキノンを解毒し、クロムの毒性を低下させる。NQOの活性は、あらゆる種類の組織内に見出されるが、組織間で変化する。一般にNQOの高レベルの発現が癌細胞、肝臓、胃および腎臓の組織において確認された。NQO遺伝子の発現が、外来異物(xenobiotics)、酸化防止剤、酸化剤、重金属、UV光、被ばくなどにより引き起こされる。NQOは、酸化ストレスにより誘発される極めて多数の細胞防御機構の一部である。それに伴うNQO遺伝子発現を含むかかる細胞防御機構に関与する遺伝子の発現が、酸化ストレス、フリーラジカルおよび新生組織形成に対して細胞を保護するのに役立つ。NQOは極めて広範な基質特異性を有することから、そこではキノンに加え、基質としてキノン−イミン、ニトロおよびアゾ化合物の使用が可能である。米国特許第6,183,948号明細書韓国特許出願第2004−7005109号公報Obesity Research 第12巻(8)、2004年、1197−1211頁Korean Society of Medical Biochemistry and Molecular Biology News、2004年、11(2)、16−22頁Journal of Clinical Investigation 111、303−312頁、2003年Mitochondria 74、1188−1199頁、2003年Biochimica et Biophysica Acta 1658(2004年)80−88頁Free Radical Biology & Medicine.第37巻、第1号、115−123頁、2004年J.Pharm.Pharmacol.2005年、57(1):111−116頁Nature Struct.Mol.Biol.2005年 12(5):423−8頁Molecular&Cellular Biology 2004年、24(22)、9958−67頁Nature、434(3)、113−118頁、2005年Nature Reviews Molecular Cell Biology 6,298−305頁、2005年Science、305(13)、1010−1013頁、2005年Nature 429(17)、771−776、2004年PLoS Biology 3、210−220頁、2005年Science、310(9)、2005年、1641頁J.Biol.Chem.2004年12月 17;279(51):52934−9頁Nat.Med.2004年7月;10(7):727−33頁Nature reviews 3、340−351頁、2004年Genes & Development 27、1−6頁、2004年ROM.J.INTERN.MED.2000−2001年、第38−39巻、33−50頁「Remington’s Pharmaceutical Sciences」 ペンシルバニア州イーストン(Easton)のマック・パブリッシング(Mack Publishing Co.)、第18版、1990年 NQO酵素の中ではNQO1が上皮および内皮細胞内に広く分布している。これはNQO1が空気、食道または血管を介して吸収される化合物に対する防御機構として作用しうることを意味する。レドックス機構によるp53腫瘍サプレッサー遺伝子の安定化へのNQO1の関与を示す最近の研究では、NQO1が腫瘍発生の抑制において重要な役割を果たすことが期待される。NQO1が特に多数の固体腫瘍細胞内に高レベルで存在することから、特にキノン化合物により活性化されるNQO1には多大な注目が集まっている。 本発明は、インビボでのNAD(P)+/NAD(P)H比の人為的上昇により、運動能力および/または耐久力を必要とする対象においてそれらを増大させるための方法をも目的とする。更に本発明によると、インビボでのNAD(P)+/NAD(P)H比の人為的上昇により、エネルギーの生成能力の向上、疲労からの速やかな回復、生命力の増進、および反応性酸素種およびフリーラジカルの除去能力の改善ももたらされうる。 NAD(P)+/NAD(P)H比の人為的上昇における方法の例として、限定はされないが、NAD(P)+或いはその類似体、誘導体、前駆体またはプロドラッグの外部供給によるNAD(P)+の濃度および比の人為的上昇のための方法、および基質または補酵素としてNAD(P)Hを用いる酵素の遺伝子またはタンパク質を活性化する化合物の外部供給によるNAD(P)+の濃度の人為的上昇のための方法が含まれうる。 上記の事実に基づく種々の大規模かつ徹底的な研究および実験の結果として、本発明の発明者は、オキシドレダクターゼ、好ましくはNAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ、および特にNAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ1(NQO1)が、酸化還元反応を通じたNAD(P)HからのNAD(P)+の生成を介して細胞内のレドックス状態およびエネルギーレベルを制御する酵素として機能することを発見している。NAD(P)+/NAD(P)H比がインビボまたはインビトロで上昇する場合、細胞がこの事象をエネルギー不足状態として認識することから、基質としてグルコース、脂肪およびグリコーゲンを含むエネルギー源を用いて不足したエネルギーを補償するため、細胞代謝はエネルギー生成系に変換されるように調節される。従って、NQO1の活性化状態がエネルギー過剰または不均衡なレドックス状態の下で確立される場合、NQO1が基質としてNAD(P)Hを用いてNAD(P)+を生成する結果、細胞質内のNAD(P)+/NAD(P)H比が上昇する。 即ち、NAD(P)+/NAD(P)H比の上昇した状態はエネルギーの欠乏として認識され、ここでそれにより細胞(生体)におけるエネルギー生成およびレドックスに関連する系が活性化され、NAD(P)Hの欠乏が補償されうるように代謝活性の増大が可能になる。この事実は、NQO1タンパク質(またはNQO1遺伝子)が疾患、例えば肥満、糖尿病、代謝症候群、変性疾患およびミトコンドリア機能障害に関連する疾患、即ち「疾患症候群」を治療可能な新しい標的タンパク質(または遺伝子)であることを意味する。 これらの事実に基づき、本発明者は、NQO1を活性化するかまたはNQO1の生成を誘導する化合物が肥満、糖尿病および代謝症候群を含む変性疾患に対する治療薬の開発において有効であることを確認している。更に、かかる化合物の治療上の妥当性および治療薬の開発がNAD(P)+/NAD(P)H比をインビボまたはインビトロ条件下で高レベルで維持することにより確実になりうることも確認した。これに関連し、本発明者は、エネルギー過剰または異常なレドックス状態から生じる低いNAD(P)+/NAD(P)H比に起因して発症しうる疾患を予防しかつ治療することが可能な方法として、NAD(P)Hを基質または補酵素として用いるNQO1の作用を介するNAD(P)+濃度の上昇および結果として生じるNAD(P)+/NAD(P)H比の上昇により、エネルギー過剰または不均衡なレドックス状態に関連する問題に起因して発症しうるあらゆる種類の疾患を有効に治療することが可能であることを確認している。従って、本発明の発明者は、NQO1がエネルギー過剰または異常なレドックス状態に起因して発症しうるあらゆる種類の疾患に対する治療標的であることを確認すると同時に、結果としてNQO1が、NAD(P)+/NAD(P)H比の上昇、それによりNAD(P)+を基質または補酵素として必要とするタンパク質および遺伝子を活性化する結果としての代謝の調節による疾患の予防および治療にとって有効であることを実証した。 本発明の一態様によると、オキシドレダクターゼ、好ましくはNAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ、特にNAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ1(NQO1)によりインビボまたはインビトロでNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させるための方法の提供により、上記および他の目的が達成されうる。 上記のNAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼに加え、基質または補酵素としてのNAD(P)Hの使用を介してNAD(P)HをNAD(P)+に変換可能な相同酵素の例として、一酸化窒素シンターゼ(NOSまたはNOS NADPH DT−ジアホラーゼ)、チオレドキシン還元酵素(NADPHで酸化されるチオレドキシンオキシドレダクターゼ、E.C.1.6.4.5)、グルタチオン依存性オキシドレダクターゼ(チオール−ジスルフィドオキシドレダクターゼ)、NADPHデヒドロゲナーゼ(E.C.1.6.99.6)、NADH:ユビキノンオキシドレダクターゼ、琥珀酸塩:ユビキノンオキシドレダクターゼ、原形質膜オキシドレダクターゼ、チトクロームcオキシドレダクターゼ(EC1.10.2.2、bc(1)複合体)、オキソグルタル酸オキシドレダクターゼなどが含まれうる。 本発明の方法によると、NAD(P)HのNAD(P)+への変換が、インビボまたはインビトロ条件下での特定の化合物の添加を介してNQO1を活性化するかまたはNQO1の量を増加させ、結果としてNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることにより誘導される。従って、エネルギー過剰または異常なレドックス状態によってもたらされる低いNAD(P)+/NAD(P)H比に応じて生じうる、肥満を含む種々の疾患を予防しかつ治療することが可能である。更に、NAD(P)+/NAD(P)H比が主にインビボでのエネルギー消費に伴って上昇し、かつかかるエネルギー消費が運動によりもたらされるという事実を考慮する際、NQO1の活性または量の増大により、対象の活性および耐久力が増大する可能性がある。NQO1の活性または量のかかる増大は、まさに運動に準じるもの(quasi−exercise)に誘発される効果として表現される場合がある。 本明細書で用いられる「インビボ」という用語は生物学的対象における生理的状態を示し、「インビトロ」という用語は生物学的対象から単離された細胞の状態および細胞成分またはその一部よりなる細胞状態を包含する概念を示す。以下、「インビボおよびインビトロ」という用語は場合により単に「インビボ/インビトロ」と称されることになる。 本発明に記載の「インビボ」という用語が細胞レベルまでを包含する概念であることから、対象が生存可能である限り、インビボでの対象に対する特別な制限は全くない。好ましくは、対象は哺乳動物でありうる。好ましくは哺乳動物はヒトでありうる。 NQO1の活性化を介するNAD(P)+/NAD(P)H比の上昇とともに、細胞がインビボ/インビトロでのNAD(P)+比の上昇によりエネルギーの欠乏を認識し、次いで細胞がエネルギー生成に関与する遺伝子およびタンパク質を活性化するか、またはNAD(P)+がドナー因子として直接機能することで、種々の代謝プロセスが調節される。 NQO1によりNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させるための方法の例として、好ましくは、1)NQO1の活性の増大による上記の限界率でのNAD(P)HからのNAD(P)+の生成、2)NQO1タンパク質の量またはNQO1遺伝子の発現における増大によるNAD(P)H基質の消費の促進、および3)NAD(P)+或いはその誘導体またはプロドラッグの直接添加によるNAD(P)+/NAD(P)H比の上昇が含まれうる。 NQO1に対する活性化物質の不在下でのNAD(P)Hの量に基づいて、NAD(P)+/NAD(P)H比における変化が、好ましくはNQO1活性化物質により有効となるNAD(P)Hの量の20%を超える減少の範囲内にある場合があり、その結果、NAD(P)+/NAD(P)H比の上昇がもたらされる。より好ましくは、NAD(P)Hの低下は30%を超える場合がある。しかし、NAD(P)Hの低下が過剰である場合、これはインビボ/インビトロでの代謝プロセスにおける課題を引き起こしうる。従って、NAD(P)Hの低下が好ましくは80%未満の範囲内でありうる。 NQO1の活性および/またはNQO1タンパク質の量またはNQO1遺伝子の発現を増大させるため、例えばNQO1の活性または量を増大させる特定の化合物の使用が検討されうる。 かかる化合物はヒドリド受容体(H−受容体)として役立つ。本発明において使用可能な化合物の具体例として、限定はされないが、キノン化合物、キノン−イミン化合物、ニトロ化合物、およびアゾ化合物が含まれうる。更に、これらの化合物は単独またはそれらの任意の組み合わせで用いられうる。 キノン化合物の代表例として、ナフトキノン化合物およびその誘導体、例えば4−アミノアルキル−1,2−ナフトキノン、4−チオアルキル−1,2−ナフトキノン、4−アルコキシ−1,2−ナフトキノン、フラノ−o−ナフトキノン、ピラノ−o−ナフトキノンまたはそれらの誘導体が含まれうる。好ましい4−置換−1,2−ナフトキノンが、下記の式Iで表される。本明細書中で他に特に規定されない限り、治療的に有効なものとして表される化合物は、薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、溶媒和物およびそれらの異性体を包含する。(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシまたは1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルであり、 R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ独立に水素、ヒドロキシ、C1〜C20アルキル、アルケン若しくはアルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール若しくはヘテロアリールであるか、或いはR3からR8のうちの2つの置換基が環状構造を形成する場合があり、 Xは酸素、窒素または硫黄であり、かつ、 mおよびnはそれぞれ独立に0または1である、但し、mおよびnのうちのいずれかが0である場合に、mまたはnに近接する炭素原子が直接結合を介して環状構造を形成しうる) これらの化合物の中で、式Iの化合物が特に好ましい(式中、Xは酸素であり、mは1であり、かつnは0若しくは1である、但し、nが0である場合に、nに近接する炭素原子が直接結合を介して環状構造を形成する) 好ましい化合物の例では、式Iの化合物(式中、nは0である)はフラノ−O−ナフトキノンとして表されうる一方、n=1を伴う式Iの化合物はピラノ−O−ナフトキノンとして表されうる。フラノ−O−ナフトキノンまたはピラノ−O−ナフトキノンの典型例として、式IIまたはIIIの化合物が含まれうる。(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は式Iにおける定義と同じである)(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は式Iにおける定義と同じである) 上記の物質は、ハーブ系医用植物、例えばタンジン(Danshen)(サルビア・ミルティオリザ(Salvia miltiorrhiza))、ロシアンセージの花(Perovskia abrotanoides)などから人工的に合成されるかまたは抽出される場合がある。本発明に関係する当業者であれば、有機化学合成分野における一般の技術および慣行に基づき、上記の化学構造を有する化合物の合成を特別の困難を伴うことなく容易に行うであろう。更に、目的の活性成分をハーブ系医用植物、例えばタンジン(Danshen)から抽出する方法が当該技術分野で周知であることから、本開示ではその詳細な説明が省略されることになる。 本発明におけるNQO1とNAD(P)+/NAD(P)H比の間の関係を明らかにするため、以下の実験的試験が行われた。NQO1は、天然および合成キノンに対して高い親和性を有する細胞質内のNAD(P)H依存性オキシドレダクターゼ中に豊富に存在することから、NQO1は治療標的におけるオキシドレダクターゼとして選択される。 (1)NQO1の活性を測定するためのDCPIP(2,6−ジクロロフェノール−インドフェノール)方法を用い、NAD(P)+/NAD(P)H比における変化を測定し、組織内でのNQO1の分布および活性が確認された。 (2)NAD(P)+/NAD(P)H比がNQO1によってのみ上昇されうることを確認するため、NQO1活性化薬がNQO1−/−細胞および正常細胞に添加され、NAD(P)+/NAD(P)H比における変化が調べられ、NQO1が細胞内のNAD(P)+/NAD(P)H比の調節において極めて重要な役割を果たすか否かが確認された。 (3)細胞内のNAD(P)+/NAD(P)H比がNQO1により上昇することを実証するための別の実験として、NAD(P)+/NAD(P)H比における変化がNQO1−/−細胞上のNQO1活性化薬のNQO1遺伝子の取り込みによる処理により測定された。 (4)NQO1の存在/不在および活性化による作用を受けるタンパク質の確認においては、タンパク質の発現および活性に対するNQO1活性の効果が、AMP−活性化キナーゼ(AMPK)のリン酸化というNAD(P)+/NAD(P)H比の変化による作用を受けることで知られる活性化についての確認を通じて確認された。NQO1−/−細胞およびNQO1−/−細胞の上のNQO1活性化薬の各々のNQO1遺伝子の挿入による処理を介してAMPKタンパク質のリン酸化を確認することにより、NQO1の活性化によるエネルギーレベルおよびレドックス状態における差異の影響を受けやすいタンパク質の発現および活性化に関するNQO1の効果が試験された。 (5)NQO1の存在/不在および活性化による細胞内カルシウム流入を測定するため、NQO1+/+細胞内およびNQO1−/−細胞内のNQO1活性化薬によりカルシウム流入の存在および程度を確認するための試みを行った。他方、NQO1活性化薬およびNQO1阻害薬をNQO1+/+細胞上で処理し、カルシウム流入がNQO1活性化の抑制を介して作用を受けるか否かを確認した。 (6)NQO1活性化薬がミトコンドリア新生および勃起不全を担う内皮での一酸化窒素(NO)生成に関与するか否かを試験するため、eNOS(内皮の一酸化窒素シンターゼ)タンパク質のリン酸化およびリン酸化度が確認された。 (7)NQO1によるインビボでのレドックス状態における変化を確認するため、NQO1活性化薬がマウスの静脈内に注射され、肝組織が摘出され、NAD+およびNADHの量における変化が測定された。 (8)NAD+の外部からの添加を介する治療効果が、NAD+またはその類似体、前駆体またはプロドラッグの外部からの添加後における、インビボでのNAD+濃度の上昇に起因する体重変化、血液学的変化、組織学的変化、遺伝子発現およびタンパク質活性変化、脂肪分布の変化、ホルモンの変化、呼吸商、運動能力および耐久力についての確認を通じて試験された。 従って、本発明における様々なインビボおよびインビトロ実験を通じて実証されるように、NQO1がインビボ/インビトロでのNAD(P)+/NAD(P)H比の上昇に対する直接的効果を有することから、NQO1(またはNQO1遺伝子)が肥満、糖尿病、代謝症候群、変性疾患およびミトコンドリア機能障害に関連する疾患の予防および治療並びに活性、運動性および耐久力の改善にとって有効な優れた標的タンパク質(または遺伝子)であることが確認された。 より詳細には、上記の実験を通じ、NAD(P)+/NAD(P)H比の上昇が細胞質内およびミトコンドリアのカルシウムレベルにおける更なる上昇を促進し、AMPKおよびSirtタンパク質を活性化し、かつミトコンドリアの酸化的リン酸化および脂肪酸酸化を促進することが確認された。 NQO1活性化物質および高レベルのNAD+が、少なくとも2つのステップ、例えばAMPのAMPKへの直接結合およびAMPKのCaMKKおよびLKB1によるリン酸化を含む反応機構を通じてAMPKを活性化する。CaMKKが速やかな初期の活性化およびAMPKα T172のリン酸化に関与し、かつLKB1が持続的なAMPKの活性化において特定の役割を果たすことが推定される。他方、NQO1活性化物質がDIO(食餌誘導性肥満)マウスの視床下部におけるAMPK活性を阻害することから、食欲低下、食餌摂取量の低下および体重減少がもたらされることが確認された。これらの実験結果は、NQO1活性化物質による処理によりエネルギー消費が増大して体重減少が促進されうることを示唆する。 本発明の別の態様によると、NAD(P)+/NAD(P)H比を制御するための化合物を同定するための方法であって、候補化合物群をNQO1と接触させ、NQO1を介してNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させる化合物を同定するステップと、前記候補化合物群によりNQO1の量または活性を監視するステップと、を含む、方法が提供される。 本明細書で用いられる「接触させる」という用語は、候補化合物群を含有する溶液とNQO1+/+細胞が注入される液体培地とを混合させることを指す。候補化合物群を含有する溶液は、化合物の細胞内への取り込みを促進するジメチルスルホキシド(DMSO)を含む他の成分を更に含有しうる。候補化合物を含有する溶液は、ピペットまたは注射器などの送達デバイスを用いて細胞が注入される培地に添加されうる。 本明細書で用いられる「監視する」という用語は、化合物の添加によって発揮される効果の観察を指す。例えば、化合物添加の効果は、NAD(P)+/NAD(P)H比における変化、AMPKの活性化、ACC活性の阻害、eNOSリン酸化の増大、エネルギー代謝に関与する遺伝子の発現、ミトコンドリア新生に関与する遺伝子の発現などとして観察されうる。 目的化合物を同定するための上記の方法の具体例として、NQO1をスクリーニング対象の化合物およびNAD(P)Hと所定の時間反応させるステップと、得られるNAD(P)+または残存するNAD(P)Hを定量するステップと、を含む方法が挙げられうる。 生成されるNAD(P)+の量を定量するための方法の例として、ヒドリド(H−)受容体として用いられるDCPIPの還元を介する吸収波長における変化に起因する着色の誘導により吸光度における変化を測定する方法が用いられうる。NAD(P)Hの残存量を定量するための方法の例として、テトラゾリウム塩の着色に起因する吸光度における変化の測定を介してNAD(P)Hの残存量を定量する方法が挙げられうる。 NQO1活性化化合物の具体例として、ナフトキノン化合物、フマル酸のエステル、オルチプラズ(oltipraz)(4−メチル−5(2−ピラジニル)−1,2−ジチオール−3−チオン)、クルクミン、アネトールジチオールチオン(anethole dithiolethione)、スルフォラファン、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート、コーヒー酸フェネチルエステル、4’−ブロモフラボン、アヴィシンズ(Avicins)、フィセチン、レスベラトロールおよびこれらの誘導体が含まれうる。フマル酸エステルの代表例として、ジメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノメチルフマレートおよびこれらの塩が含まれうる。好ましい例では、化合物は4−アルコキシ−1,2−ナフトキノン化合物およびその誘導体並びにジメチルフマレートおよびその類似体でありうる。 本発明の更なる態様によると、NAD(P)+/NAD(P)H比の低下を伴う疾患の治療または予防における薬剤の製造においてのNQO1の量または活性を増大させることが可能な化合物の使用が提供される。 本発明の更に別の態様によると、NAD(P)+/NAD(P)H比の低下を伴う疾患を治療または予防するための方法であって、NQO1の量または活性を増大させることが可能な化合物の治療有効量を、それらを必要とする対象に投与するステップを含む、方法が提供される。 本明細書で用いられる「NAD(P)+/NAD(P)H比の低下を伴う疾患」という語句は、NAD(P)+/NAD(P)H比の低下により直接的または間接的に引き起こされる様々なタイプの疾患を示し、例えば肥満、肥満合併症、糖尿病、糖尿病合併症、代謝症候群、変性疾患、およびミトコンドリア機能障害を含みうる。 本明細書で用いられる「治療」という用語は、目的の薬剤が、発症の徴候を呈する対象において用いられる場合での疾患の進行の停止または遅延を指す。「予防」という用語は、目的の薬剤が、発症の徴候を全く呈さないが発症に対して高いリスクを有する対象において用いられる場合での発症の徴候の停止または遅延を指す。 上記方法の実験的実証においては、肥満、糖尿病などに罹患した動物へのNQO1活性化薬の投与後での、NQO1の活性化に起因する体重変化、血液学的変化、組織学的変化、遺伝子発現およびタンパク質活性変化、脂肪分布の変化、ホルモンの変化、呼吸商(RQ)、対象の運動能力および耐久力についての確認を介し、NQO1の活性化により治療可能な疾患の治療分野を確立する基礎を築くための試みがなされている。 具体的には、NQO1の作用に基づくレドックスおよびエネルギー状態における変化を通じてNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることにより、代謝症候群に関連する臨床的疾患の予防および/または治療を行うことが可能である。これらの臨床疾患の例として、限定はされないが、特徴的にインスリン抵抗性とともに出現する、一般的肥満、腹部肥満、高血圧、動脈硬化、高インスリン血症、高血糖、II型糖尿病および脂質異常症が含まれうる。B表現型(phenotype B)の粥腫形成性リポタンパク質(atherogenic lipoprotein)の特性があるものとしても知られる脂質異常症は、非エステル化脂肪酸の有意な上昇、超低密度リポタンパク質(VLDL)トリグリセリドに富む粒子の増加、ApoBの高値、小さく密度の高い低密度リポタンパク質(LDL)粒子の存在、表現型Bの存在下でのApoBの高値、およびApoAI粒子の低値に関連する高密度リポタンパク質(HDL)の低値によって特徴づけられる。 本発明の方法は、レドックスおよびエネルギー状態における変化を通じてNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることにより、合併型または混合型脂質異常症、または代謝症候群の他の徴候を有するか若しくは有しないハイパートリグリセリミア(hypertriglycerimia)を患う患者および様々な重症度の食後脂質異常症を患う患者を治療するのに有用であることが期待される。 本発明の方法は、レドックスおよびエネルギー状態における変化を介してNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることにより、抗炎症特性および抗脂質代謝異常特性に起因する動脈硬化を伴う心血管疾患の罹患率および死亡率を低下させることが期待される。心血管疾患の例として、心筋梗塞、心不全、脳血管疾患、および下肢の末梢動脈不全を引き起こす様々な内部器官の大血管障害(macro−angiopathies)が挙げられる。他方、本発明の方法は、そのインスリン感作効果故に、代謝症候群の中のII型糖尿病の進行および妊娠中の糖尿病の発症を予防するかまたは遅延させることも期待される。従って、本発明の方法は、糖尿病における臨床的高血糖を伴う慢性合併症、例えば腎疾患、網膜障害および下肢の末梢血管疾患を引き起こす小血管障害(micro−angiopathies)の進行を遅延させることも期待される。更に、本発明の方法は、インスリン抵抗性との関連性と無関係に、心血管系の障害以外の様々な疾患および症状、例えば多嚢胞卵巣症候群(polycystic ovarian syndrome)、肥満、癌、炎症性疾患、並びに軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment)(MCI)、アルツハイマー病、パーキンソン病および多発性硬化症などの神経変性疾患の治療において有用でありうる。 本発明の方法は、NAD(P)+/NAD(P)H比をレドックスおよびエネルギー状態における変化を通じて上昇させることにより、脂肪肝(肝脂肪症)の発症に対する阻害効果を示し、更に脂肪酸のβ酸化を活性化することで、トリグリセロールの濃度の低下における役割を果たし、それ故にアルコール性および非アルコール性肝臓の脂肪代謝異常(dysmetabolism)から発症する脂肪肝、肝炎および肝硬変の予防または治療において有用であることが期待される。 本発明は、NAD(P)+/NAD(P)H比をレドックスおよびエネルギー状態における変化を通じて上昇させることにより、様々な組織内の脂質組成物を変化させる。更に、本発明が脂肪含量並びに脂肪分布を変化させうることが確認された。 更に、本発明は血漿コレステロールおよびトリアシルグリセロールのレベルも低下させる。従って、血漿トリグリセリドおよびコレステロールのレベルが本発明により低下することが分かる。 本発明の方法は、レドックスおよびエネルギー状態における変化を通じてNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることにより、eNOS(内皮の一酸化窒素シンターゼ)の活性化を介する内皮での一酸化窒素(NO)の生成にとって有効であることから、虚血性心疾患、ミトコンドリアミオパチー、変性脳疾患、糖尿病、心筋ミオパチー、老化関連疾患、血管疾患、高血圧および勃起不全の予防または治療にとって有用であることが期待される。高血圧を誘発する疾患として、心不全、心筋梗塞、脳血管系の破裂、血栓症および腎障害が挙げられうる。 本発明の方法は、レドックスおよびエネルギー状態における変化を通じてNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることにより、周囲組織内での脂肪酸化およびエネルギー消費の促進を誘導することから、一般的な肥満の治療または予防や、例えば、脂肪が局所的に沈着した特定の領域に由来する脂肪の除去、例えば眼瞼(eye−lids)、腕および尻の隆起部分に由来する皮下脂肪、腹部脂肪および特定の領域の脂肪、例えばセリュライトの除去などが望ましい場合、皮下脂肪および腹部脂肪などの局在化された沈着脂肪の除去においても有効であることが期待される。 更に、本発明の方法がインスリン過剰症を患う動物の血中グルコースレベル、それに関する血漿インスリン濃度を低下させることが確認された。更に、本発明の方法が低下したインスリン感受性を有する動物におけるインスリンの効果を高めることが確認された。 本発明の方法は、レドックスおよびエネルギー状態における変化を通じてNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることにより、ミトコンドリア新生を促進し、それによりミトコンドリアの活性能を増大させ、それと同時に筋肉組織の運動組織への変換を誘発し、それにより運動能力の改善、耐久力の向上、エネルギー生産性の改善、疲労からの回復、生命力の増進、反応性酸素種(ROS)およびフリーラジカルに対する除去能の増強を通じての酸化ストレスの低下がもたらされ、それ故に本方法は関連疾患の治療にとって有効であることが期待される。反応性酸素種(ROS)により誘発されうる疾患としては、動脈硬化、糖尿病、虚血性心疾患、心肥大、神経疾患、腎疾患、肝硬変、血栓症、炎症状態および炎症性疾患、関節炎、未熟児網膜症、片眼性ブドウ膜炎(ocular uveitis)、老人性白内障、放射線療法の副作用による障害、喫煙による気管支損傷、制癌薬の副作用による障害、脳浮腫、敗血症、肺浮腫、足の浮腫、脳梗塞、溶血性貧血、早老症、てんかん、アルツハイマー病、ダウン症候群、クローン病および膠原病が挙げられうる。 本発明は、レドックスおよびエネルギー状態における変化を通じてNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることにより、肥満および肥満合併症、例えば高血圧、心筋梗塞、静脈瘤、肺塞栓、冠動脈疾患、脳出血、老人性痴呆、パーキンソン病、II型糖尿病、高脂血症、脳卒中、様々な癌(子宮癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌など)、心臓疾患、胆嚢疾患、睡眠時無呼吸症候群、関節炎、不妊症、静脈性潰瘍、突然死、脂肪肝、肥大型心筋症(HCM)、血栓塞栓症、食道炎、腹壁ヘルニア(Ventral Hernia)、尿失禁、心血管疾患、内分泌疾患などを含む疾患を治療するための治療標的として有効であることが期待される。 本発明は、レドックスおよびエネルギー状態における変化を通じてNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることにより、糖尿病並びに例えば低血糖症、ケトアシドーシス、高浸透圧性昏睡、大血管合併症、糖尿病性網膜症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性ネフロパチーなどを含む糖尿病合併症の予防または治療において有効であることが期待される。 本発明は、レドックスおよびエネルギー状態における変化を通じてNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることにより、酸素消費の低下に起因するミトコンドリア機能障害、細胞のオルガネラにおける少ないエネルギー生成、および老化関連変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性疾患を治療するための治療標的として有効であることが期待される。 具体的には、本発明は、レドックスおよびエネルギー状態における変化を通じてNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることにより、多発性硬化症、脳脊髄炎、脳神経根炎、末梢性ニューロパチー、ライ症候群、フリードリヒ運動失調、アルパース症候群、MELAS、片頭痛、精神疾患、うつ病、発作および痴呆、麻酔の発作、視神経萎縮、視神経ニューロパチー、網膜色素変性、白内障、高アルドステロン症、副甲状腺機能低下症、ミオパチー、筋萎縮、ミオグロビン尿症、筋緊張低下、筋肉痛、運動耐性の低下、腎尿細管炎、腎不全、肝不全、肝機能不全、肝腫脹、赤血球貧血(鉄欠乏性貧血)、好中球減少症、血小板減少症、下痢、絨毛萎縮、複数回の嘔吐、嚥下障害、便秘、感音難聴(SNHL)、てんかん、知的障害、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病を含むミトコンドリア機能障害、例えばミトコンドリアの膜機能障害に起因する腫脹、例えば反応性酸素種またはフリーラジカルの作用による酸化ストレスに起因する機能障害、遺伝因子に起因する機能障害、並びにエネルギー生成のためのミトコンドリアの酸化的リン酸化における欠陥に起因する疾患から発症する疾患を治療するための治療標的として有効であることが期待される。 本発明は、レドックスおよびエネルギー状態における変化を通じてNAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることにより、特徴的に、特にインスリン過剰症、インスリン抵抗性、肥満、グルコース不耐性、II型糖尿病、脂質異常症、心血管疾患または高血圧とともに出現する多発性(multiple)代謝症候群(代謝症候群)の治療および/または予防における治療標的として有効であることが期待される。 必要に応じ、望ましい治療または効果がNAD+の外部供給源から対象への直接添加によりなされうる。これに関連し、本発明では、対象における体重変化、血液学的変化、組織学的変化、遺伝子発現およびタンパク質活性変化、脂肪分布の変化、ホルモンの変化、呼吸商(RQ)、運動能力および耐久力についての確認により、NAD+濃度の上昇を通じての外部からのNAD+の添加の治療効果が確認されている。 更に、本発明は、(a)NQO1の量または活性を増大させることが可能な治療有効量の化合物および(b)薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤、或いはそれらの任意の組み合わせを含有する医薬組成物、即ちNQO1を促進する(NQO1−enhancing)組成物を提供する。 本明細書で用いられる「医薬組成物」という用語は、上記化合物と担体または希釈剤などの他の化学成分との混合物を意味する。医薬組成物は化合物の生物への投与を容易にする。化合物を投与する様々な技術は当該技術分野で既知であり、限定はされないが、経口投与、注射投与、エアロゾル投与、非経口投与および局所投与を含む。医薬組成物は、目的化合物を塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などの酸と反応させることによっても得られうる。 「治療有効量」という用語は、化合物が投与される場合での、治療を必要とする疾患の1つ若しくは複数の徴候をある程度軽減または低減するか或いは予防を必要とする疾患の臨床マーカーまたは徴候の開始を遅延させるのに有効な活性成分の量を意味する。従って、治療有効量は、(i)疾患の進行の速度を逆転させ、(ii)疾患の更なる進行をある程度阻害し、かつ/或いは、(iii)疾患に関連する1つ若しくは複数の徴候をある程度軽減する(または好ましくは取り除く)効果を示す活性成分の量を示す。治療有効量は、治療を必要とする疾患における既知のインビボおよびインビトロモデル系において関連する化合物を用いて実験することにより経験的に決定されうる。 「担体」という用語は、細胞または組織への化合物の取り込みを促進する化合物を意味する。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物の細胞または組織への多数の有機化合物の取り込みを促進することから一般に用いられる担体である。 「希釈剤」という用語は、目的化合物を溶解させるとともに化合物の生物活性形態を安定化することになる水中で希釈される化合物を規定する。当該技術分野では、緩衝溶液中に溶解される塩が希釈剤として用いられる。一般に用いられる1つの緩衝溶液が、ヒト体液のイオン強度条件を再現することからリン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)である。緩衝塩が低濃度で溶液のpHを制御可能であることから、希釈緩衝液が化合物の生物学的活性を修飾することはまれである。 本明細書中に記載の化合物は、本質的にヒト患者に、または併用療法などでの他の活性成分または適切な担体または賦形剤と混合される医薬組成物の形態で投与可能である。化合物の調合および投与における技術については、(非特許文献21)にて見出されうる。 本発明の医薬組成物は、例えば、従来式の混合、溶解、粒状化、ドラジェ(Dragee)作製、粉末化、乳化、カプセル化、包括固定化または凍結乾燥化プロセスを利用し、本質的に既知の方法で製造可能である。 従って、本発明に従って用いられる医薬組成物が、活性化合物の薬学的に使用可能な製剤への加工を容易にする賦形剤および助剤を含有する1種若しくは複数種の薬学的に許容できる担体を用いて従来の方法で調合されうる。適切な製剤については選択される投与の経路に依存する。周知の技術、担体、および賦形剤のいずれかを、適切であり、例えば上記の(非特許文献21)にて当該技術分野で理解されているものとして利用可能である。本発明では、式Iの化合物は、意図される目的に応じて注射可能でかつ非経口の製剤に調合可能である。 注射においては、本発明の作用物質は、水溶液中、好ましくはハンクス溶液、リンガー溶液、または生理食塩緩衝液などの生理学的に適合性のある緩衝液中で調合されうる。経粘膜投与においては、浸透されるべき障壁に対して適切な浸透剤が製剤において用いられる。かかる浸透剤は、一般に当該技術分野で既知である。 経口投与においては、化合物は活性化合物を当該技術分野で周知の薬学的に許容できる担体と結合させることによって容易に調合されうる。かかる担体は、本発明の化合物における、患者による経口摂取用のタブレット、ピル、粉末、顆粒、ドラジェ、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとしての調合を可能にする。カプセル、タブレット、ピル、粉末および顆粒は好ましく、かつカプセルおよびタブレットは特に有用である。タブレットおよびピルは、好ましくは腸溶コーティング中で調製される。経口使用における医薬製剤については、必要に応じて適切な助剤を添加してタブレットまたはドラジェコアを得た後、1種若しくは複数種の賦形剤を本発明の1種若しくは複数種の化合物と混合し、場合により得られた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工することにより得られうる。適切な賦形剤が、乳糖、スクロース、マンニトールおよびソルビトールを含む糖類、並びに例えばトウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、ゴムトラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース物質などの充填剤でありうる。必要に応じ、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩を例とする崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、並びに結合剤などの担体(carries)が添加されうる。 経口で使用可能な医薬製剤には、ゼラチン製の押し込み型カプセルおよびゼラチン製の密封型ソフトカプセル並びにグリセリンまたはソルビトールなどの可塑剤が含まれうる。押し込み型カプセルは、乳糖などの充填剤、澱粉などの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤と混合される活性成分を含有しうる。ソフトカプセルでは、活性化合物は、脂肪酸、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な溶媒中に溶解または分散されうる。更に、安定化剤も添加されうる。経口投与用のすべての製剤が、かかる投与に適する剤形である必要がある。 化合物は、注射、例えばボーラス注射または連続注入による非経口投与用に調合されうる。注射用製剤は、防腐剤が添加された単位剤形、例えばアンプルまたはマルチドーズ容器でありうる。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとるとともに、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤(formulatory agents)を含有しうる。 或いは、活性成分は、使用前では適切な賦形剤、例えば無菌のパイロジェンを含まない水との併用における粉末形態でありうる。 化合物は、例えばココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤の基剤を含有する坐剤または保持浣腸(retention enemas)などの直腸組成物中にも調合可能である。 本発明での使用に適する医薬組成物には、活性成分がその意図される目的を達成するのに有効な量で含有される場合の組成物が含まれる。より詳細には、治療有効量とは疾患の徴候を予防、緩和または改善するか或いは治療対象を延命するのに有効な化合物の量を意味する。治療有効量についての判定は、特に本明細書で提供される詳細な開示の観点から当業者の能力の範囲内で十分に行われる。 本発明の医薬組成物が単位剤形内に調合される場合、活性成分としての化合物は好ましくは約0.1〜5,000mgの単位用量中に含有される。投与される化合物の量は、治療される患者の体重および年齢、疾患の性質および重症度に応じて担当医により決定されることになる。しかし、成人患者においては、患者に投与される活性成分の用量が、投与の頻度および強度に応じ、典型的には約1〜1000mg/kg BW/日の範囲内にある。成人患者への筋肉内または静脈内投与においては、単回投与として全部で1日当たり約1〜500mgが十分となるが、一部の患者においては1日当たりより高用量の使用が好ましい場合がある。 本発明の上記および他の目的、特徴並びに他の利点が添付の図面とともに記載される以下の詳細な説明からより明白に理解されるであろう。 ここで本発明は、以下の実施例についてより詳細に記載されることになる。これらの実施例はあくまで本発明を図示する目的で提供され、本発明の範囲および趣旨を限定するものとして解釈されるべきではない。材料および方法 以下に、本発明で用いられる材料および方法が提供されることになる。(1)材料 実験で用いられる培地、細胞培養試薬および材料をそれぞれ、ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies,Inc.)、シグマ(Sigma)、およびフィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)から購入した。NQO1抗体をサンタクルーズ(Santa Cruz)から購入し、ACC、pS79ACC、AMPK、pT172AMPKおよびHA抗体をニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)から購入し、Fluo−4をモレキュラー・プローブ(Molecular Probe)から購入し、Cell Counting Kit−8(CCK−8キット)をドジンド・ラボラトリーズ(Dojindo Laboratories)から購入した。14C−パルミチン酸をパーキン・エルマー(Perkin Elmer)から購入した。アクチン抗体およびNAD+、NADHおよびhrNQO1を含む他の試薬をシグマ(Sigma)から購入した。(2)プラスミド この実験で用いられるプラスミドはpSG5α−HA(ヘマグルチニン)−NQO1(NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ)およびpSG5α−HA−NQO1−C609T(1)であった。(3)細胞培養 HEK293、MCF−7、MN9DおよびMN9X細胞を培養し、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したDMEM内、5%CO2下、37℃で成長させた。ヒトヘパトーマ細胞系HepG2を10%FBSを補充したRPMI 1640培地内で成長させた。これらの培地は100U/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを含有した。(4)形質移入 プラスミドの細胞への形質移入をLipofectAMINE Plus試薬(カルフォルニア州サンディエゴ(San Diego)のインヴィトロジェン(Invitrogen))を用いて行った。まずプラスミドを混合し、Plus試薬と15分間反応させ、次いで反応混合物を、LipofectAMINEの添加とともに更に15分間反応させた。得られた反応生成物を細胞上で処理し、次いで3時間維持した。その後、培地を血清を含む培地と交換し、細胞を24時間更に成長させた。(5)イムノブロッティング 細胞をSDS試料緩衝液(62.5mMトリス−HCl(pH6.8)、6%(w/v)SDS、30%グリセリン、125mM DTT、および0.03%(w/v)のブロモフェノールブルー(bromophenol blue))中に溶解した。細胞溶解液全体を100℃の温度で5分間沸騰させ、ナトリウムドデシルサルフェート−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、タンパク質をニトロセルロース膜上に移した。膜をTBS(5%(w/v)ミルクおよび0.1%トゥイーン(Tween)20)中で1時間反応させ、次いで一次抗体と2時間反応させた。次いで、膜をHRPとの複合二次抗体(Phototope−HRPウエスタンブロット検出キット、マサチューセッツ州ベバリー(Beverly)のニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs))を用いて展開した。(6)カルシウム流入 細胞を培地内のカバースリップ上で24時間成長させ、RPMI 1640血清を含まない培地内で1時間維持し、カルシウム指示薬Fluo−4(5μM)で30分間前処理した。前処理後、カバースリップをスライドグラス上に載せた。細胞内のカルシウム濃度における変化を蛍光顕微鏡(カール・ツァイス(Carl Zeiss))を用いて30秒間観察し、細胞を候補化合物(例えばピラノ−1,2−ナフトキノン)で処理すると同時に、蛍光顕微鏡(カール・ツァイス(Carl Zeiss))を用いてカルシウム変化を2秒間連続撮影した。ジクマロールをFluo−4(5μM)で30分間前処理し、カバースリップをスライドグラス上に載せた。細胞内のカルシウム濃度における変化を蛍光顕微鏡(カール・ツァイス(Carl Zeiss))を用いて30秒間観察し、細胞をピラノ−1,2−ナフトキノン(10μM)で処理した後、蛍光顕微鏡を用いてカルシウム変化を2秒間連続撮影した。LSM Image Browserプログラム(カール・ツァイス(Carl Zeiss))を用い、2秒ごとに10分間撮影した300枚の画像を時系列にソートして整理し、グラフ上にプロットした。(7)NQO1を介したNAD+の生成の増大についての検出および確認(NADHの低下についての確認) HPLC−MS(高性能液体クロマトグラフィー質量分析)を用いてマウス組織(肝臓および筋肉)内のNAD+およびNADHを定量することが可能でありうる一方、細胞培養を介するNADHの定量がNADHのレベルが極めて低い(検出範囲内に該当しない)ことから容易ではない。従って、Cell Counting Kit−8(CCK−8)を用いて相対比較を行った。 1)LC−MS:試料を、G1322A脱気装置、G1312Aバイナリポンプ、G1315Aフォトダイオードアレイ検出器、59987Aエレクトロスプレーインタフェースおよび5989B質量分析器を具備するAgilent 1100シリーズLC/MSDシステムを用いて分析した。ES−MS分析を、六重極イオンガイドが取り付けられたAgilent Atmospheric Pressure Ionization(API)インタフェースを具備するAgilent 5989エレクトロスプレー(ES)質量分析器(MS)を用いて行った。クロマトグラムをケムステーション(Chemstation)ソフトウェアを活用して自動的に取り込み、濃度を標準検量曲線を用いて判定した。 1−1)細胞および肝組織からのアデニンおよび酸化されたピリジンヌクレオチド(AOPN)の抽出:細胞および肝組織におけるAOPN濃度を分析するため、酸抽出を用いた。6% HClO4 400μlを100mmのディッシュ内で培養した細胞に添加する一方、6% HClO4の2倍の容量を肝組織に添加し、次いでそれを直ちに均質化した。各混合物を14,000gおよび4℃で10分間遠心し、得られた上清を、75%の量で4mM EDTAを含有する1Mホウ酸塩緩衝液(pH11)の添加により中和した。試料を分取し、−80℃の温度で保存した。 1−2)肝組織由来の還元されたピリジンヌクレオチド(RPN)の抽出:組織内でのRPN濃度の分析をアルカリ抽出を用いて行った。等容量の氷冷した0.5M KOHを肝組織に添加し、次いでそれを直ちに均質化した。その後、氷冷した蒸留水の2倍の容量を添加し、肝組織と2分間混合し、混合物をアミコン(Amicon)限界濾過膜(ミリポア(MILLIPORE))を用いて14,000gおよび4℃で40分間遠心した。このようにして得られた濾過物を、1M KH2PO4(pH6.5)の10%の量で添加することにより中和した。試料を分取し、−70℃の温度で保存した。濃度の判定を72時間以内に行った。 1−3)クロマトグラフィー分析条件:移動相は100mMの酢酸アンモニウム:MeOH(98:2、v/v)であり、製剤を0.22μmのミリポア(Millipore)フィルタを通して濾過した。流速を0.8mL/分に設定し、254nmで検出を行った。分離をゾルバックス(ZORBAX)Bonus−RP C18カラム(3.5μm、4.6×150mm I.D.、米国ウォーターズ(Waters))を用いて行った。試料を、カラム上に負荷されるまで、サーモスタット付きのオートサンプラー内に4℃で維持した。 2)生体細胞内の水溶性のテトラゾリウム塩−8(WST−8)を用いる細胞内のNAD(P)Hの測定:水溶性のテトラゾリウム塩を用い、NAD(P)Hの量を黄色のホルマザン染料へのその還元を通じて監視した。培地内の生存細胞内部のNAD(P)Hの総量を分光光度計により周期的に測定した。細胞を96ウェルプレート(2×104細胞/ウェル)内に播種し、ウシ胎仔血清(FBS)および抗生物質を有する100μlの培地内で24時間培養した。候補化合物(例えばピラノ−1,2−ナフトキノン)によるCCK−8溶液(ドジンゴ・モレキュラー・テクノロジー(Dojindo Molecular Technology))の指示濃度および1/10容量での細胞の処理の直後、吸光度の測定を分光光度計を用いて行った。CCK−8溶液は、電子メディエーターとして水溶性の2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウムモノナトリウム塩(WST−8、5mM)および1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルサルフェート(1−メトキシPMS、0.2mM)からなるものであった。WST−8により、電子担体の1−メトキシPMSおよびNAD(P)Hの存在下でまたはNAD(P)Hにより直接にその生物還元を通じて水溶性の黄色のホルマザン染料が生成された。従って、テトラゾリウム塩における還元の大部分は細胞内のNAD(P)Hの量に依存する。培地内の生体細胞によって生成されるホルマザン染料の量を分光光度計により450nm(参照フィルタ:650nm)の波長で周期的に測定し、対照の値と比較した。更に、ブランク培地を培地および生理食塩水のみで調製した。(8)S9上清の分離 様々な組織(肝臓、脳、筋肉、肺、腎臓など)をDIO(食餌誘導性肥満)マウスから摘出し、0.25Mスクロースを含有する4倍の容量の50mMトリス(pH7.4)緩衝液およびプロテアーゼ阻害剤のカクテル(ロシェ(Roche))を添加して組織を均質化した。均質化物に105,000gおよび4℃での超遠心分離を1時間施し、細胞質内画分を取得した。上清の蓄積がNQO1活性における低下をもたらすことから、その調製直後に上清を用いることが好ましい。NADHリサイクリングアッセイにおけるS9上清を分取し、その使用まで−80℃で保存し、72時間以内に測定を行った。(9)NQO1活性の測定 酵素反応溶液が、25mMトリス/HCl(pH7.4)、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)、200μM NADH(電子供与体)、50μM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP、電子受容体)および10μgのS9タンパク質を含有した。ジクマロールに感受性があるNQO1活性を10μMジクマロールの存在/不在下で測定した。酵素反応をS9上清の添加で開始し、37℃で実施した。反応速度を、600nmでのDCPIPの還元による吸光度の低下を10分間観察することにより判定した。NQO1活性の測定においては、ジクマロールに感受性があるNQO1活性を10μMジクマロールの存在/不在下での反応速度の差異に基づいて測定した。(10)NAD(P)Hリサイクリングアッセイ NADHリサイクリングアッセイを上で抽出したS9上清またはヒト組換えNQO1(hrNQO1)を用いて実施した。20μgのS9上清または0.5単位のhrNQO1を200μMのNAD(P)Hと併せて、0.2mg/mLウシ血清アルブミンを含有する25mMトリス/HCl(pH7.4)溶液に添加した。酵素反応を200μM候補化合物の添加で開始し、吸光度の変化を340nmで10分間監視して記録した。NQO1活性アッセイのように、10μMのジクマロール(NQO1阻害剤)の存在/不在下での反応速度の差異に基づき、NAD(P)Hリサイクリングの程度を計算することが可能である。(11)β酸化アッセイ 1)14C−パルミチン酸の注射の調製:0.02N NaOHを100%EtOH中に溶解した1−14Cパルミチン酸に添加し、次いでそれを乾燥した。このように粉末にしたパルミチン酸ナトリウムを溶解し、0.1%BSA/PBS中で均質的に混合し、40℃に温めた。 2)アルブミンに結合した14C−パルミチン酸の注射:セクション1で調製した注射溶液をDIOマウスの尾静脈に10μCi/150μl/頭部の用量で注射し、肝臓を10分後に摘出した。 3)肝組織からの脂肪抽出:摘出した肝臓をすぐに速やかに液体窒素中で凍結させ、秤量した。0.25Mスクロース、5mM MgCl2、1mMメルカプトエタノールおよび0.5mM EDTAを含有する5倍の重量の5mMトリス−HCl緩衝溶液を肝組織に添加し、次いでそれらを均質化した。同量の各試料を採取し、各々を2.5倍の量のC/M溶液(クロロホルム:MetOH=2:1)が添加された新しい15mLの容器に移した。混合物を、ホモジナイザーを用いて2分間完全に混合し、2500rpmで20分間遠心し、クロロホルム層を分離し、次いでそれを新しい容器に移した。残存物質を2倍の量のC/M溶液と2分間完全に混合し、遠心し、クロロホルム層を分離した。このサイクルを2〜3回繰り返した。このようにプールしたクロロホルム層を濃縮した後、5mMデオキシコール酸塩を添加し、シンチレーションバイアルに移した。次いで、10倍を超える量のトルエンカクテル溶液をバイアルのクロロホルム層に添加し、混合物を撹拌器を用いて完全に混合し、放射能をシンチレーションカウンターを用いて測定した。(12)光学顕微鏡観察 従来の方法により、摘出された組織を適切な大きさに切断し、10%ホルマリンに固定し、水で洗浄し、パラフィン包埋してブロックを調製した。このように調製したブロックを4μmの厚みに切断し、全般的変化の観察のため、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を施した。(13)透過電子顕微鏡観察 細胞微細構造の観察においては、摘出された組織を1mm3の大きさにスライスし、2.5%グルタルアルデヒド(0.1M PBS、pH7.4、4℃)中に2〜4時間、前固定し、洗浄し、1%四酸化オスミウム溶液中に2時間、後固定した。次いで従来の方法により、組織を連続濃度のエタノールで脱水し、溶媒を酸化プロピレンと交換した。組織をエポキシ樹脂混合物中に包埋し、包埋組織に熱重合を施してブロックを調製した。このように調製したブロックを、超ミクロトームを用いて0.5〜1μmの厚みに切断し、トルイジン(toludine)ブルーで染色した。観察部位を光学顕微鏡下で選択し、組織を60〜70nmの厚みに細切断した。細切断された標本に酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛の二重染色を施し、それを75kVの加速電圧での透過電子顕微鏡(H−600、日本の日立(Hitachi))下で観察した。(14)オイルレッドO染色 凍結切断した(cryosectioned)組織を5μmの厚みに切断し、大気中で1時間乾燥し、濾過された0.5%オイルレッドO溶液中で20分間反応させた。組織切片を生水で洗浄し、それらにギルヘマトキシリンで二重染色を20〜30秒間施し、水で洗浄し、観察した。(15)ペリリピン染色 脂肪組織を3μmの厚みに切断し、脱パラフィン化し、クエン酸塩緩衝液中の抗原に高圧下で4分間暴露し、洗浄した。混合物を3%過酸化水素溶液中で10分間反応させ、反応生成物をTBST溶液で3分間、3回洗浄した。生成物を、200倍希釈したペリリピンに対する一次抗体(モルモット、抗ペリリピン)と1時間反応させ、TBST溶液で洗浄した。二次抗体(ロバ抗モルモット、cy3と複合)を添加し、生成物と30分間反応させた。反応生成物をTBST溶液で3分間、3回洗浄し、Fluormount Gとともにマウントし、次いで蛍光顕微鏡下で観察した。(16)オリゴヌクレオチド配列(17)食餌摂取を介するDIOマウスの作成およびマウスに対する候補化合物の処理 動物に高脂肪食ペレットを3〜4週間連続与えることにより、DIOマウスを確立した。マウスを飼育室内で12時間/12時間の明/暗(L/D)サイクル下で飼育した。動物を3群、即ち生理食塩水の投与を伴う群(n=3)、賦形剤の投与を伴う群(n=5)および候補化合物50mg/kgの投与を伴う群(n=7)に分けた。試料を動物に毎日経口投与した。7、28および56日目に各組織を摘出し、液体窒素中に凍結させ、−80℃で短期間および長期間保存した。(18)リアルタイム定量PCR 7、28および56日目に肝臓、脂肪および筋肉組織を食餌誘導されたDIOマウスの2群から単離し、全RNAを、トリゾル(Trizol)を用いて抽出した。cDNAを1μgの全RNAを用いて合成し、製造業者により指示される方法に従い、PCR用に用いられるポリメラーゼをM−MLVポリメラーゼを用いて調製した。リアルタイム定量PCRを調製されたcDNAを用いて実施した。各オリゴにおけるPCRを上記の表で示されるTm値を用いて実施した。(19)cDNAマイクロアレイ分析 cDNAマイクロアレイ分析をアフィメトリクス(affymetrix)マウスゲノム430A 2.0アレイチップを用いて実施した。7、28および56日目に、トリゾルを用い、DIOマウスの肝臓、脂肪および筋肉組織に由来する約13μgの全RNAを1μg/1μlを超える濃度で抽出してからマイクロアレイ分析を行った。機能分類をアフィメトリクス(Affymetrix)ウェブサイトから利用可能なNetAffxを用いて行った。(20)AMPKキナーゼアッセイ AMPKキナーゼの活性を試験するため、実験で用いられる組織をAMPK反応溶液(20mMヘペス(HEPES)−NaOH、pH7.0、0.4mMジチオトレイトール、および0.01% ブリッジ−35)中に溶解し、タンパク質を分離した。タンパク質をAMPK認識抗体と2時間結合させた。その後、タンパク質A/Gアガロースを用い、AMPKタンパク質を1時間の反応後にタンパク質全体から分離し、SAMS基質ペプチド7μlおよびγ[32P]ATP(1mCi/100μl)10μlをそれに添加し、30℃で15分間反応させた。反応生成物を2cm×2cm四方のP81紙上にスポットし、0.75%リン酸で5分間、3回洗浄し、紙と併せてシンチレーションカクテル5mLをバイアル内に蒔き、シンチレーションカウンターを用いてカウント毎分(CPM)を測定した。(21)動物モデル すべての実験動物の手順を動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)、忠南大学医学校(Chungnam National University School of Medicine)のガイドラインに従って行った。OLETFラットをOtsuka Research Instituteから購入した。雄ob/obおよびC57BL/6マウスをジャクソン研究所(Jackson Laboratory)から購入した。動物を2℃の一定温度および12時間/12時間の明/暗(L/D)サイクルで維持された飼育室内に収容した。4週齢C57BL/6雄マウスに高脂肪食(HFD、24%(w/w)および脂肪分として45%のカロリー、米国ニュージャージー州08901ニューブランズウィック(New Brunswick)のリサーチ・ダイエット(Research Diets Inc.))を7週間、無制限に与えた。マウス群を未処理群、賦形剤で処理された群(ケイ酸カルシウム)、ペアフェド(pair−fed)群および候補化合物で処理された群(ケイ酸カルシウムでコーティングされたβLナノ粒子)に分けた。動物の体重および食餌摂取量を毎日測定した。実験の終了時、各群における一部のマウスは麻酔され、MRI検査を受けた。各群における残りのマウスを解剖し、それらの組織重量を測定した。精巣上体(Epidydimal)脂肪、肝臓、ヒラメ筋および長趾伸筋(extensor digitorum longus)(EDL)を調製し、分析のために免疫組織化学的なオイルレッドOおよびpHに感受性のあるATPase染色を行った。(22)細胞およびウエスタンブロット分析 HepG2(ヒトヘパトーマ細胞系)、HEK293(ヒト胚腎細胞系)、およびC2C12/L6筋芽細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(米国バージニア州マナサス(Manassas)のATCC)から購入した。LKB−/−MEFをR.A.デピンホ(R.A.DePinho)から購入した。ラットの心室筋細胞を、既知の方法により成体マウスの心臓から酵素的に単離した。AMPK(Thr172)およびACC(Ser79)のリン酸化について、セル・シグナリング・テクノロジー(Cell Signaling Technologies)および汎特異的抗体およびリン特異的抗体(ニューヨーク州レイクプラシッド(Lake Placid)のアップステート・バイオテクノロジー(Upstate Biotechnology,Inc.))を用い、ウエスタンブロット分析により測定した。(23)蛍光イメージング 実験を、乾式蛍光対物レンズ(40倍、開口数0.85)、光電子増倍管(R1527型、日本、浜松の浜松ホトニクス(Hamamatsu Photonics))、およびデルタスキャン(Deltascan)照明器(ニュージャージー州ローレンスヴィル(Lawrenceville)のフォトン・テクノロジー・インターナショナル(Photon Technology International Inc.))を具備する反転型蛍光顕微鏡(Eclipse TE300、日本のニコン(Nikon))を含むマイクロフルオロメトリック(microfluorometric)システムを用いて行った。 単色蛍光(350nm)を監視するため、10Hzのチョッパーホイールを介して指向させた75Wキセノンアークランプを用いて光を照明し、特定の蛍光強度を405±15nmおよび460±10nmの波長で測定した。460nmでの自己蛍光が未知の細胞内成分または細胞質内NAD(P)Hから生じうるとしても、本発明の方法により検出される光の大部分がミトコンドリアのNAD(P)Hから発生した。(24)ミトコンドリア膜電位の測定 内部ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)の測定においては、蛍光指示薬として20nMのTMRE(テトラメチルローダミンエチルエステル)を連続的に適用し、細胞上に負荷した。ミトコンドリアのCa2+を監視するため、グラスカバースリップ上の細胞に、冷却負荷/温かい温度のインキュベーションを介して10μM Rhod−2 AMを負荷した。細胞質内Ca2+を監視するため、細胞に10μM Fluo−4 AMを37℃で30分間、同時負荷した。細胞をKB溶液で2回洗浄し、灌流チャンバー内にマウントした。蛍光イメージングを、適切なレーザー線およびフィルタセットと連携した200倍および400倍の倍率の共焦点レーザー走査顕微鏡(LSM−510 META、カール・ツァイス(Carl Zeiss))を用いて行った。画像分析をLSM−510 METAソフトウェア(ツァイス(Zeiss))を用いて行った。TMRE(赤色蛍光)、Rhod−2(赤色蛍光)およびFluo−4(緑色蛍光)における画像を63倍の開口数、1.4油浸planapochromatレンズを具備するツァイス(Zeiss)の反転型510META共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて取得した。緑色蛍光および赤色蛍光を488nmおよび543nmの光で照射した。入射光を545nmダイクロイックミラーを通過させ、500〜530nmのバンドパス(緑色)フィルタおよび560nmのロングパス(赤色)バリアフィルタを介して観察した。(25)酵素アッセイ 酵素アッセイにおいては、細胞質をマウス組織から抽出した。ジクマロールに感受性があるNQO1活性を当該技術分野で既知の従来の方法により測定した。この方法はDCPIPの生物還元に起因する600nmでの吸光度の低下に基づくものである。AMPK活性全体を合成「SAMS」ペプチドおよび[γ−32P]ATPを用いる既知の方法で測定した。ACC活性を、ACCのアロステリック活性化物質としてのクエン酸塩(2mM)の存在/不在下で14CO2の酸に安定な生成物への固定を定量することにより測定した。CPT(カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ)活性を、既知の方法により、L6筋芽細胞およびヒラメ筋において測定した。HAD(3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼ)活性をL6筋芽細胞およびヒラメ筋において、アセトアセチル−CoAのL−3−ヒドロキシブチリルCoAへの変換およびNADHのNAD+への同時酸化を監視することにより測定した。反応を既知の方法により340nmで監視した。(26)脂肪酸酸化 [14C]パルミトイル−CoA(パーキン・エルマー(Perkin Elmer))酸化を、L6筋芽細胞およびヒラメ筋において、標識されたCO2および塩化ベンゼトニウム溶液0.2mLを用いて既知の方法により測定した。(27)マロニル−CoA含量の測定 マロニル−CoAの含量を既知の方法、例えばHPLCにより測定した。Acyl−CoAエステルを0.2M酢酸アンモニウムを含有するアセトニトリル/水(1.75:98.25)を用いてHPLCにより分離した。試料を20分間洗浄し、それに0.2M酢酸アンモニウムを含有するアセトニトリル/水(10:90)から100分の線形勾配溶離を施した。(28)生理学的測定 動物におけるO2消費を既知の方法により記録した。間接熱量測定においては、マウスを個別に熱量測定チャンバー(Oxymax OPTO−M3システム;オハイオ州コロンバスのコロンバス・インスツルメンツ(Columbus Instruments))内に収容した。実験に先立ち動物を新しい環境に48時間慣れさせておき、O2の消費量およびCO2の生成量を24時間、30分ごとに測定した。最初の24時間はマウスを食料および飲み水に自由に近寄れるようにし、次の24時間は動物を飲み水のみに近寄れるようにした。血液試料をヘパリン処理した毛細管から採取するとすぐに氷上に置き、遠心し、以降の使用に備えて−20℃で保存した。トリグリセリド(TG)、総コレステロール、遊離脂肪酸、およびグルコースの定量においては酵素呈色法を用いた(ベックマン・インスツルメンツ(Beckman Instruments)、カリフォルニア州)。血漿インスリン(ミズーリ州のリンコ・リサーチ(Linco Research))、TNFα(アールアンドディー・システム(R&D System))、アディポネクチン(ミズーリ州のリンコ・リサーチ(Linco Research))、レジスチン(コメッド(KOMED))およびレプチン(ミズーリ州のリンコ・リサーチ(Linco Research))を、ELISAを用いて定量した。(29)HPLC−MS/MS分析 アッセイATP、ADP、AMP、NADおよびNADPレベルのアッセのため、5mM酢酸アンモニウム450μlを、過塩素酸(HClO4)を用いて抽出した肝臓試料50μlに添加し、次いでそれを10倍に希釈した。希釈試料をボルテックスし、1分間混合し、混合物を0.2μmのナイロンシリンジフィルタ(英国ブレントフォード(Brentford)のワットマン(Whatman))を通して濾過した。次いで、各一定分量5μlをHPLCシステムに注射した。これらの分析物用の各標準溶液(50μl)を2−クロロアデノシン(内部標準)を含有する抽出溶液50μlおよび5mM酢酸アンモニウム400μlに添加し、上記の試料などと同様に混合しかつ濾過した。NADHおよびNADPHの分析においては、水酸化カリウム(KOH)溶液で抽出された肝臓試料の各100μlを同量の5mM酢酸アンモニウム(標準用KOH溶液)で2倍に希釈した。HPLCシステムは、Agilent1100シリーズの真空脱気装置、バイナリーポンプ、オートサンプラー、サーモスタット付きカラム区画、およびDAD検出器(カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto)のアジレント・テクノロジー(Agilent Technologies))からなるものである。アデニンおよびヌクレオチド類似体を、勾配方法を用いるウォーターズ(Waters)XTerra MS C18 2.1×150mm、3.5μmカラム(米国マサチューセッツ州ミルフォード(Milford)のウォーターズ(Waters))クロマトグラフィーにより分離した。アデニンおよびヌクレオチド類似体における移動相は、5mM酢酸アンモニウム(A)およびメタノール(B)であった。NAD+−関連化合物を8分の時点で初期の98%(A)から最終の70%(B)にかけての線形勾配溶離により分離した。移動相を70%(B)で7分間展開した。最後に移動相を16の時点で98%(A)に戻し、98%(A)に12分間再平衡化した。すべての時点にわたり流速を0.2mL/分に設定した。注射容量は5μlであった。エレクトロスプレー−イオン化質量分析(ESI−MS)をMDS Sciex API 4000 Triple Quadrupole Mass Spectrometer(カリフォルニア州オンタリオ(Ontario)のアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems))を用いて陽イオンモードで行った。分析物を複数の反応監視(MRM)モードにおける単位分解能で観察し、遷移m/z:ATP、m/z508→136;ADP、m/z428→136;AMP、m/z348→136;NAD、m/z664→136;NADP、m/z744→136;NADH、m/z665→136;NADPH、m/z745→136;および2−クロロアデノシン、m/z302→170を監視した。(30)グルコース寛容性試験およびインスリン刺激試験 12時間絶食したマウスにおいて、グルコース寛容性試験(GTT)を既知の方法により行った。上記のように、12時間絶食したマウスはインスリン刺激試験を受けた。(31)DNAマイクロアレイおよび定量PCR 賦形剤または候補化合物で4週間処理した雄マウスに由来する脂肪、肝臓または筋肉組織をプールし、プールした組織にマイクロアレイ分析を施した。全RNAを、トリゾル試薬(カルフォルニア州カールスバッド(Carlsbad)のインヴィトロジェン(Invitrogen))で均質化した組織から調製した。マイクロアレイ分析用プローブを10μgの全RNAから調製し、マウス430A GeneChips(カルフォルニア州サンタクララ(Santa Clara)のアフィメトリクス(Affymetrix))にハイブリダイズした。ハイブリダイズされたアレイを走査し、生データをMicroarray Analysis Suite 5.0(アフィメトリクス(Affymetrix))を用いて抽出した。PCR定量においては、1μgの全RNAをSuperscript IIおよびオリゴ(dT)プライマーを用いてcDNAに逆転写した。作成されたcDNAを、製造業者の使用説明書(インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis)のロシェ・ダイアグノスティクス(Roche Diagnostics))に従い、LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green IキットおよびLightCyclerを用いて増幅した。発現データをβ−アクチン発現に対して正規化した。(32)ICVの挿管および注射 既知の方法を用い、23ゲージのステンレス鋼製カニューレ(バージニア州ロアノケ(Roanoke)のプラスティクス・ワン(Plastics One))をマウスの第三心室に移殖した(ブレグマに対して1.8mmの尾部および矢状静脈洞に対して5.0mmの腹部)。7日の回復期および一晩の絶食の後、マウスに対し、1分かけて2μlの用量で賦形剤(0.2%DMSO)または候補化合物の脳室内(ICV)注射を行った。動物の食餌摂取量を化合物の注射の7時間後に監視し、マウスの体重を化合物の注射の24時間後に測定した。別々に評価した後、分析においては正確な位置にカニューレを有する動物から得た結果のみを含めた。(33)統計分析 実験結果を平均±SDまたは平均±SEM(平均の標準誤差)として表した。各群間の統計的有意性における差異をスチューデントのt検定(Student’s t−test)および分散分析(ANOVA)を用いて試験した。統計的有意性における差異をP<0.05について考慮した。(34)他の方法 タンパク質の濃度をブラッドフォード(Bradford)法(バイオ・ラッド(Bio−Rad))を用いて測定した。参照タンパク質としてウシ血清アルブミン(BSA)を用いた。すべての実験を3通りに行った。実施例1:NQO1活性化物質による細胞内のNADHにおける変化 この実験では、NQO1活性化物質ピラノ−1,2−ナフトキノン(以下「βL」と称されることが多い)の還元がNQO1に依存するように様式で生じることを実証しようとした。 図1Aは、NQO1活性を有するヒトヘパトーマ細胞系HepG2をNQO1活性化物質ピラノ−1,2−ナフトキノンにより2時間処理した後の細胞内のNADH濃度のリアルタイム測定時に、NADHがNQO1活性化物質の濃度に依存して低下することを示す。 図1Bは、NQO1活性を全く有しないHEK293細胞をピラノ−1,2−ナフトキノンにより2時間処理する間の細胞内のNADH濃度のリアルタイム測定時に、NQO1活性化物質の濃度および時間と無関係にNADH濃度が全く変化しないことを示す。 図1Cは、NQO1活性を全く有しないHEK293細胞にNQO1遺伝子を挿入した後の、細胞のピラノ−1,2−ナフトキノンにより2時間処理する間の細胞内のNADH濃度のリアルタイム測定時に、NADHがNQO1活性化物質の濃度に依存して低下することを示す。この結果は、ピラノ−1,2−ナフトキノンによるNADHの低下がNQO1依存性であることを示す。 具体的には、NQO1活性およびNQO1活性の存在/不在下での細胞内のNAD(P)Hの蛍光濃度の変化が、HepG2、HEK293細胞内およびpSG5 HA−NQO1若しくはpSG5 HA−NQO1 C609Tが挿入されたHEK293細胞内で測定される。結果は、βLがNQO1依存性のNAD(P)Hの酸化を促進することにより、NQO1活性を有するHepG2細胞内および心筋細胞内でNAD(P)Hにおける約40%の低下がもたらされることを示した(図2および3を参照)。 しかし、NQO1活性を有しないHEK293細胞の対照群がかかる変化を全く示さず、野生型NQO1遺伝子の挿入を伴うHEK293細胞がβLで促進されるNAD(P)Hの酸化を示し、触媒活性のないNQO1C609T遺伝子の挿入を伴うHEK293細胞がNAD(P)Hの酸化を全く示さなかった(図4参照)。更に、βLで促進されるNAD(P)Hの酸化が特異的NQO1阻害剤ジクマロールにより制限された(図5参照)。実施例2:少脂肪(Lean)マウスおよびDIOマウスの組織内でのNQO1の量および活性における変化 組織内および細胞内でのNQO1の分布を確認するため、マウスの様々な組織を採取し、超遠心分離した。精製した細胞質内画分を用い、ジクマロール感受性のNQO1活性を10μMジクマロールの存在/不在下での反応速度における差異に基づいて測定した。NQO1の活性値を、還元された2,6−ジクロロフェノールインドフェノール/分/mgのタンパク質として表した。 図6は、少脂肪マウスおよびDIOマウスの様々な組織のNQO1活性の存在を示す。少脂肪マウスおよびDIOマウスの組織間でNQO1活性を比較した。図6に示されるように、DIOマウスの筋肉および肝臓におけるNQO1活性は、少脂肪マウスの場合よりも特に高かった。実施例3:NQO1活性化物質による細胞内のATP濃度の変化 図7は、ピラノ−1,2−ナフトキノンにより神経細胞の細胞内のATP濃度が急激に低下することを示す。ドーパミン作動性(MN9D)および非ドーパミン作動性(MN9X)神経細胞を5μMのピラノ−1,2−ナフトキノンで処理し、ATP濃度を周期的に測定した。その結果、ATP濃度はMN9DおよびMN9X細胞内で低下し、MN9D細胞はピラノ−1,2−ナフトキノンに対してMN9X細胞よりも高感度の応答性を示した。実施例4:NQO1による細胞内のエネルギーレベルにおける変化 この実施例では、細胞内でNQO1を活性化する薬剤での細胞の処理によりエネルギー濃度の変化を確認することにより、NQO1がエネルギー濃度の制御において重要な役割を果たすか否かを検討しようとした。 図8Aは、ヘパトーマ細胞系HepG2を10μMのピラノ−1,2−ナフトキノンで2時間処理する間、LC−MSによる細胞内でのATP、ADPおよびAMPレベルの経時的測定時、細胞をピラノ−1,2−ナフトキノンで処理した30分後、ATPの量が最小値に低下しかつAMPの量が最大値に増加したことを示す。図8Bは、NQO1活性を全く有しないHEK293細胞をピラノ−1,2−ナフトキノンで2時間処理する間、LC−MSによる細胞内でのATP、ADPおよびAMPレベルの経時的測定時、HEK293細胞が示す細胞内でのATPレベルにおける変化がHepG2細胞の場合と比べて全く有意でないことを示す。従って、NQO1活性化物質によるATP濃度の低下がNQO1依存性であることが分かる。実施例5:NQO1活性化物質による生体内でのNAD+/NADH、AMP/ATPおよびNADP+/NADPH比における変化 この実施例では、NQO1活性化物質が、NQO1によるインビボでのNAD+/NADH比の変化に対する効果を有するか否かを検討しようとした。5mg/kgのピラノ−1,2−ナフトキノンをDIOマウスの尾静脈に静脈内投与し、肝組織でのNADHの量およびNAD+/NADH比における変化を6時間かけて試験した。 図9Bは、細胞に対するβLの処理の結果、30分時点でAMP濃度の最大の増加が得られ、AMP濃度が120分時点で正常レベルに回復する一方、AMP/ATP比が30分時点で最高レベルに上昇し、続いて漸減し、360分時点で初期状態に回復したことを示す。 図9Cは、NAD+/NADH比の観点でのNAD+およびNADHの量における変化のパターンを示す。図示のように、NAD+の量およびNAD+/NADH比が120分時点で最大値に増加し、続いて漸減した。即ち、βLの静脈内(IV)注射の結果、NAD+およびAMPレベルの一時的な上昇がもたらされたことから、実験群は、対照群と比べて肝臓内でのAMP/ATPおよびNAD+/NADH比の上昇を示した。 更に、図9Dは、βL処理の結果として得られたNADP+の数値における変化が全く有意でなかったが、120分時点でNADP+/NADPH比はNADPH濃度の低下に起因して最大値に上昇したことを示す。上記と同じ実験方法に従い、βLを少脂肪マウスおよびDIOマウスの各々に投与した。AMP/ATP比およびNAD+/NADP比における変化の結果をそれぞれ図10および11に示す。図10および11から分かるように、少脂肪マウスが示すAMP/ATP比およびNAD+/NADP比における変化が対照群と比べて少ない一方、DIOマウスが示すAMP/ATPおよびNAD+/NADP比における変化は有意であり、それはそれらの比が少脂肪マウスにおける値に経時的に変換することを示した。従って、肥満対象においてはNQO1活性化化合物がAMP/ATP比およびNAD+/NADP比における変化に多大に寄与することが分かる。実施例6:C57BL/6マウスのβ酸化に対するNQO1の効果 C57BL/6マウスのβ酸化に対するNQO1活性化物質ピラノ−1,2−ナフトキノンの効果を検討するための試験を実施した。 図12は、14C−パルミチン酸を、賦形剤または50mg/kgのピラノ−1,2−ナフトキノンを7日間与えられたDIOマウスの尾静脈にIV注射した後の、肝臓(トリグリセリド、TG)に取り入れられた14C−パルミチン酸の量の測定結果を示す。10μCiの14C−パルミチン酸をマウスの尾静脈にIV注射し、10分後、肝臓を摘出し、均質化した。脂肪を均質化物から抽出し、放射能を液体シンチレーションカウンターにより測定した。ピラノ−1,2−ナフトキノンで処理されたマウスにおける肝性トリグリセリド(TG)に取り入れられた14C−パルミチン酸の量は、賦形剤で処理されたマウス(対照群)の場合に対して約45%低かった。この結果は、ピラノ−1,2−ナフトキノンで処理されたマウスが肝外組織内で対照群の場合よりも多い量のパルミチン酸を利用することを示す。 図13−jおよび13−kは、CPTおよびミトコンドリアの脂肪酸酸化の重要な阻害剤であるACC活性およびマロニルCoAレベルがβL処理に応答して低下したことを示す。他方、図13−l、13−mおよび13−nは、βLで処理されたDIOマウスの筋肉内でCPTおよびHADの活性並びに14C−パルミトイルCoAのβ酸化が対照群と比べて有意に増大したことを示す。これらの結果は、βL処理により、NQO1媒介性のNAD(P)/NAD(P)H比の一時的上昇がもたらされ、次いでそれによりインビボでAMPKが活性化され、かつミトコンドリアの酸化的リン酸化および脂肪酸の酸化が促進されることを示唆する。即ち、かかる事実は、βLの長期にわたる処理により、ミトコンドリアの酸化的リン酸化が促進され、適応的なミトコンドリア新生が促進されることを意味する。従って、βLを代謝疾患用の治療薬として使用してもよい。実施例7:NQO1活性化物質によるAMPKおよびACCのリン酸化の調節 NQO1活性化物質がNQO1を通じて、細胞内のエネルギーを調節するタンパク質であるAMPKおよびACCのリン酸化に対して効果を有するか否かを確認するために、この実施例を実施した。NQO1活性化物質ピラノ−1,2−ナフトキノンによるAMPキナーゼおよびACC(アセチル−CoAカルボキシラーゼ)のリン酸化について試験するため、HepG2細胞(ヒトヘパトーマ細胞系)を1×105細胞/ウェルの密度で6ウェルプレート上に播種し、RPMI+10% FBS培地内で培養した。細胞を24時間成長させた後、培地を、血清を含まないRPMI培地と交換し、細胞を対照(DMSO)と併せ、ピラノ−1,2−ナフトキノン(10μM)で30分間、1時間、2時間、4時間および6時間処理した。Anti−ACCおよびAnti−pS79−ACCを用いてリン酸化ACCを観察する一方、Anti−AMPKおよびAnti−pT172−AMPKを用いてリン酸化AMPキナーゼを観察した。図14に示されるように、ピラノ−1,2−ナフトキノンによるAMPキナーゼのリン酸化を最初の時点(30分)から観察でき、かかるリン酸化効果が最大で6時間持続したことを確認できる。更に、AMPキナーゼの標的タンパク質として知られるACCもリン酸化されたことが確認されうる。これらの結果は、NQO1活性化物質によるAMPKの活性化が、脂肪生成における重要な調節酵素であるアセチル−CoAカルボキシラーゼの活性を抑制可能であり、結果としてNQO1が脂肪酸酸化において特定の役割を果たしうることを示す。 賦形剤またはβLで2日間処理したDIOマウスの肝臓、性腺脂肪(gonadal fat)(WAT)、EDLおよびヒラメ筋から抽出した様々なタンパク質を用い、各組織内のAMPKαのT172リン酸化およびACCのS79リン酸化をウエスタンブロット分析により測定した。結果として、ACCのS79リン酸化およびAMPKαのT172リン酸化が肝臓内および筋肉(EDL、ヒラメ筋)内で増大する一方、βL処理に対応するDIOマウスの性腺脂肪がかかる効果を全く示さなかった(図15参照)。実施例8:AMPKのリン酸化に対するNQO1の効果 AMPキナーゼのリン酸化におけるNQO1タンパク質の重要性について検討するため、HepG2、MCF−7およびHEK293細胞を60mmプレート上に1×106細胞/プレートの密度で播種した。細胞を24時間成長させた後、培地を血清を含まない培地と交換し、対照群(DMSO)と併せ、細胞をそれぞれピラノ−1,2−ナフトキノン(10μM)で30分間処理した。細胞をRIPA緩衝液中に溶解させ、すべてのタンパク質の量を分光光度計を用いて定量し、50μgのタンパク質に電気泳動を施した。AMPキナーゼのリン酸化についてAnti−AMPKおよびAnti−pT172−AMPKを用いて試験する一方、NQO1タンパク質をAnti−NQO1を用いてアッセイした。ピラノ−1,2−ナフトキノン(10μM)によるAMPキナーゼのリン酸化がHEK293細胞内で観察されなかったという事実から、NQO1タンパク質がAMPキナーゼのリン酸化にとって重要であることが分かる。 図16は、AMPキナーゼのリン酸化に対するNQO1の効果を示す。NQO1の活性がAMPキナーゼのリン酸化にとって重要であることについて試験するため、HEK293細胞を6ウェルプレート上に1×105細胞/ウェルの密度で播種し、24時間培養し、pSG5−HA−NQO1(500ng)およびpSG5−HA−NOQ1−C609T(500ng)プラスミドを形質移入した。24時間後、培地を血清を含まない培地と交換し、対照(DMSO)と併せ、細胞をピラノ−1,2−ナフトキノン(10μM)およびAICAR(2mM)で30分間処理した。AMPキナーゼのリン酸化をAnti−AMPKおよびAnti−pT172−AMPKを用いてアッセイする一方、形質移入されたNQO1をAnti−HAを用いてアッセイした。NQO1活性を全く有しないNQO1−C609TにおいてAMPキナーゼがリン酸化されないことから、NQO1タンパク質の酵素活性はピラノ−1,2−ナフトキノンによるAMPキナーゼのリン酸化にとって重要である。 更に、NQO1の活性によるNAD(P)Hの酸化とAMPKのリン酸化/活性化の関係が、NQO1の高発現を伴うβLで処理されたHepG2細胞内、NQO1の低発現を伴うMCF−7細胞内、およびNQO1の発現を全く伴わないHEK293細胞内で観察された。 図17−jは、βLで処理された細胞内でのNQO1の活性化がAMPKのT172リン酸化と相関することを示す。図17−kは、HEK293細胞をAICAR(5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミド−1−β−D−リボフラノシド)で処理することで、AMPKのリン酸化における増大ももたらされることを示す。更に、AMPKのリン酸化/活性化が、野生型NQO1を形質移入したHEK293細胞を除くHEK293細胞内で促進されなかった。図17−lおよび図18は、βLがHepG2細胞内でACC(アセチル−CoAカルボキシラーゼ)のリン酸化およびAMPKのリン酸化/活性化を促進しかつACCの活性化を低下させることを示す。実施例9:細胞内のカルシウム濃度およびミトコンドリア膜電位における変化に対するNQO1の効果 この実施例では、NQO1活性化物質ピラノ−1,2−ナフトキノンによるHepG2細胞内のカルシウム流入、およびNQO1阻害剤ジクマロールによるカルシウム流入における変化について試験しようとした。細胞を24時間培養し、次いでFluo−4で30分間前処理した。カバースリップ上に固定化した細胞をスライドガラスに移し、ピラノ−1,2−ナフトキノン(10μM)で処理し、同時に画像を蛍光顕微鏡を用いて10分間、2秒ごとに取得した。ジクマロール(5μM)による細胞内カルシウム流入における変化を監視するため、細胞をFluo−4(5μM)およびジクマロールで30分間前処理した後、ピラノ−1,2−ナフトキノン(10μM)での処理および蛍光顕微鏡観察を行った。 図19に示されるように、ピラノ−1,2−ナフトキノンによるカルシウム流入がその処理の約10秒後の時点でカルシウムのピークを示し、カルシウム流入がジクマロールにより阻害されることが観察された。更に、カルシウムのピークは、NQO1が欠けたHEK293細胞内では見られなかった。この事実は、NQO1活性がカルシウム流入と密接に関連することを示す。 図20に示されるように、TMRE(テトラメチルローダミンエチルエステル)蛍光がβLで処理されたNQO1が十分に存在するHepG2細胞内および心筋細胞内で約20%低下することにより、ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)における変化がもたらされた。しかし、かかる効果はHEK293細胞内で観察されなかった。ΔΨmに対するβLの効果は一時的なものであり、ジクマロールで処理された細胞はかかる効果を示さなかった。従って、ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)における変化がNQO1依存性であることが分かる。 他方、カルシウム依存性キナーゼ(CDK)、ミトコンドリア酵素または任意の他のカルシウム依存性プロセスの活性が、カルシウム恒常性における変化で調節される。図21は、Fluo4およびRhod−2−AM蛍光の測定結果を示し、各々、細胞質内のCa2+濃度([Ca2+]c)およびミトコンドリアのCa2+濃度([Ca2+]m)を表す。即ち、βLで処理された細胞内での細胞質内のCa2+濃度([Ca2+]c)およびミトコンドリアのCa2+濃度([Ca2+]m)の上昇が類似の速度論的挙動を示すことが持続的に観察された。更に、細胞内のカルシウム濃度に対するβLの効果がジクマロールによるNQO1活性の阻害の影響を受けやすいことが示された。これらの結果は、NQO1活性がカルシウム濃度と密接に相関することを示唆する。 更に図22は、HepG2細胞内および心筋細胞内のミトコンドリアの酸素消費がβLにより増大するが、かかる増大した酸素消費がHEK293細胞内で観察されないことを示す。これらの結果は、NAD(P)Hの速やかな酸化を伴うNQO1媒介性のβLの還元により細胞のレドックス状態が変化しかつミトコンドリアの酸化的リン酸化が促進されることを示唆する。実施例10:NQO1とAMPKα、βまたはγとの間の結合の確認 NQO1とAMPKα、βまたはγとの間の結合を確認するため、HEK293細胞を100mmプレート内のDMEM+10%FBS培地上に播種し、培養することで細胞質量が80%に達し、HA−NQO1を形質移入した。形質移入の24時間後、細胞を溶解させ、500μgのタンパク質を用いて免疫沈降を行った。 図23に示されるように、NQO1がAMPKα、βおよびγのいずれにも全く結合しなかったことが分かる。実施例11:内皮の一酸化窒素シンターゼ(eNOS)のリン酸化に対するNQO1活性化物質の効果 AMPKの活性化によりNRF−1が活性化されかつミトコンドリア新生が促進されることは周知である。更に、NO/cGMPがPGC−1αおよびNRF−1を活性化することでミトコンドリア新生が促進される。AMPKを活性化するNQO1活性化物質が一酸化窒素(NO)の生成に関与するか否かを確認するため、内皮の一酸化窒素シンターゼ(eNOS)の活性における増大をもたらすリン酸化の程度を判定した。NQO1活性化物質の活性によるeNOSのリン酸化について試験するため、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を60mmプレート上に1×105細胞の密度で播種し、EBM2+5% FBS培地内で24時間培養した。培地を血清を含まないEBM2培地と交換し、細胞をピラノ−1,2−ナフトキノン(10μM)で所定の時間処理した。リン酸化eNOSをAnti−pS1177 eNOSを用いて観察した。 図24に示されるように、eNOSのリン酸化がピラノ−1,2−ナフトキノンでの処理の30分後に最大の増大に至り、次いで漸減したことから2時間後には観察されなかった。ピラノ−1,2−ナフトキノンによるeNOSのリン酸化における増大が、ピラノ−1,2−ナフトキノンが虚血性心疾患およびミトコンドリアミオパチー並びにミトコンドリア機能障害に関連する疾患(例えば、変性脳疾患、糖尿病、心筋ミオパチー、および老化に関連する疾患)に対して治療的に使用可能であるという可能性を提示する。実施例12:C57BL/6マウスにおけるAMPKの活性化に対するNQO1活性化物質の効果 図25は、NQO1活性化物質がC57BL/6マウスにおけるAMPKを活性化することを示す。賦形剤および5mg/kgのピラノ−1,2−ナフトキノンをC57BL/6マウスの尾静脈にそれぞれ2時間および4時間かけて投与した。肝組織および性腺脂肪組織を摘出し、AMPKキナーゼの活性に対してアッセイした。活性化の程度を放射性同位体のCPM値として表した。同様の方法を用い、ヒト肝臓由来の細胞系HepG2細胞を10μMピラノ−1,2−ナフトキノンで30分間処理し、次いでAMPKキナーゼ活性に対するアッセイを行った。HepG2細胞内でAMPKの活性が増大することが確認された。図25における結果から分かるように、ピラノ−1,2−ナフトキノンの投与により、肝組織および性腺脂肪組織内並びに肝細胞内でAMPK活性の増大がもたらされる。実施例13:DIOマウスにおけるAMPKおよびACCのリン酸化に対するNQO1活性化物質の効果 図26は、C57BL/6マウスにおけるAMPKおよびACCのリン酸化に対するNQO1活性化物質の効果を示す写真である。NQO1活性化物質の抗肥満効果について検討するため、NQO1活性化物質をDIOマウスに毎日、経口経路を介して50mg/kgの用量で投与し、肝組織および性腺脂肪組織におけるエネルギー代謝および脂肪生成において重要な役割を果たすAMPKおよびACCのリン酸化に対するNQO1活性化物質の効果について試験した。図26に示されるように、NQO1活性化物質ピラノ−1,2−ナフトキノンがC57BL/6 DIOマウスの性腺組織および肝組織におけるAMPKおよびACCのリン酸化に対する効果を有することがウエスタンブロット分析を通じて確認された。リン酸化AMPKは、エネルギーに関連する代謝を活性化すると考えられる。それ故、AMPKの活性化による影響を受けるACCがリン酸化され、次いでその脂肪合成活性が阻害され、次いでそれが肥満の阻害を含む脂質代謝に対して何らかの効果を発揮することになると考えられる。 図27は、DIOマウスの肝臓、EDL(長趾伸筋)およびヒラメ筋におけるAMPK活性が、βLの50mg/kgの用量での経口投与に伴い、賦形剤で処理された対照群の場合よりも高まったことを示す。βLの経口投与効果が投与の2時間後に最大に達し、その投与の約6時間後まで持続した(データは示さず)。実施例14:DIOマウスの脂質代謝に関与する遺伝子の発現に対するNQO1活性化物質の効果 NQO1活性化物質の抗肥満効果について検討するため、NQO1活性化物質をDIOマウスに経口経路を介して50mg/kgの用量で毎日投与し、かつ、リアルタイム定量PCRにより、肝組織および性腺脂肪組織における脂質代謝に関与する、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)1、ACC2、脂肪酸シンターゼ(FAS)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、およびステアロイル−CoAデサチュラーゼ1(SCD1)のmRNAのレベルを確認しようと試みた。これらの酵素は脂質代謝にとって極めて重要である。即ち、ACCがアセチルCoAからのマロニルCoAの形成を触媒し、FASがマロニルCoAからのパルミチン酸塩の形成を触媒し、かつSCD1が一価不飽和脂肪の形成を触媒することで、主なエネルギー貯蔵であるトリアシルグリセロールの形成において重要な役割を果たすことは知られている。従って、これらの酵素は肥満、糖尿病、および脂質代謝関連疾患と密接に相関する。図28に示されるように、ピラノ−1,2−ナフトキノンが投与された実験群におけるACC1およびACC2、FAS、LPL、並びにSCD1のmRNAの発現レベルが対照群の場合と比べて著しく低下し、実験群におけるLPL mRNAレベルが対照群の場合と比べて約2倍高まった。従って、上記の酵素に対する遺伝子の発現におけるかかる増大または低下についての結果から、NQO1が代謝疾患の治療における治療標的として有望となることが示唆されうる。実施例15:DIOマウスのグルコース代謝に関与するタンパク質の遺伝子発現に対するNQO1活性化物質の効果 ピラノ−1,2−ナフトキノンを、DIOマウスに経口経路を介して50mg/kgの用量で毎日投与し、肝組織および性腺脂肪組織におけるヘキソキナーゼ2(HK2)、グルコーストランスポーター(GLUT)2およびGLUT4におけるmRNAのレベルをリアルタイム定量PCRにより確認した。GLUTは肝臓などの器官、脂肪細胞および筋細胞における血中グルコースの細胞内取り込みおよび消費を媒介するタンパク質として周知である一方、グルコキナーゼクラスに属する酵素HK2が、このようにグルコース分解経路に入ることが許容されるタンパク質をリン酸化する。図29の結果から分かるように、HK2のmRNAレベルが対照群の場合と比べて低下する一方、グルコース輸送に関与する2種の酵素、GLUT2およびGLUT4のmRNAがそれらの発現において有意な上昇を示した。GLUT2およびGLUT4の上昇レベルが血中グルコースの細胞内取り込みを促進することから、糖尿病の治療における標的としてのNQO1の可能性が提示される。実施例16:DIOマウスのミトコンドリア新生に関与するタンパク質の遺伝子発現に対するNQO1活性化物質の効果 ピラノ−1,2−ナフトキノンをDIOマウスに経口経路を介して50mg/kgの用量で毎日投与し、肝組織および性腺組織におけるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体コアクチベーターα1(PGC1α)、核呼吸因子1(NRF1)、ミトコンドリア転写因子(mtTFA)、並びにチトクロームcオキシダーゼ(COX)4およびCOX7のmRNAのレベルをリアルタイム定量PCRにより確認した。図30に示されるタンパク質が、細胞内でのエネルギーの生合成において重要な役割を果たすミトコンドリアの新生の調節を担う代表的酵素であり、様々な細胞生理的プロセスの調節に関与することも知られている。これらの酵素の間のmRNAの量にわずかな差異があるが、ピラノ−1,2−ナフトキノンの投与群におけるあらゆる酵素のmRNAのレベルが対照群の場合と比べて上昇することが示された。ミトコンドリアの異常な活性が種々の代謝症候群において報告されていることから、これらの結果は、NQO1が代謝疾患、ミトコンドリア機能障害に関連する疾患およびエネルギー代謝に関連する疾患の治療におけるかかる現象の改善を介する治療標的でありうるという可能性を示す。実施例17:DIOマウスのエネルギー代謝に関与する遺伝子の発現に対するNQO1活性化物質の効果 ピラノ−1,2−ナフトキノンをDIOマウスに経口経路を介して50mg/kgの用量で毎日投与し、肝組織および性腺組織におけるエネルギー代謝に関与する遺伝子の転写因子のレベルをリアルタイム定量PCRを用いて測定した。図31に示される酵素によると、PPARαおよびγはエネルギー消費に関与する酵素の転写調節を担う酵素であり、AMPKは細胞内のAMP/ATP比の検知による細胞でのエネルギー恒常性の維持において中心的な役割を果たし、AOXは脂質代謝プロセスにおける特定のステップにて存在するアシルCoAの酸化を介して酸化的リン酸化の活性化を触媒する。更に、CPT1はエネルギー代謝に関与する酵素でもあり、トリアシルグリセロールの合成に向けての経路をとることなく長鎖アシルCoAのミトコンドリアへの通過を可能にする酵素として周知である。ピラノ−1,2−ナフトキノンが投与された群においては、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)αのmRNAのレベルが変化しない一方で、PPARγはそのmRNAレベルにおいて約2倍の上昇を示した。更に、アシルCoAオキシダーゼ(AOX)、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)α1およびAMPKα2、並びにカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1の間においてはある程度のmRNAレベルでの差異があるとはいえ、ピラノ−1,2−ナフトキノンの投与群におけるかかる酵素のmRNAのレベルが対照群の場合と比べて上昇することが示された。かかる遺伝子の発現レベルの上昇は、NQO1がエネルギー代謝に関連する疾患の治療におけるタンパク質標的としてありうるという可能性を示す。実施例18:DIOマウスにおけるSIRT関連転写因子の発現に対するNQO1活性化物質の効果 ピラノ−1,2−ナフトキノンをDIOマウスに経口経路を介して50mg/kgの用量で毎日投与し、性腺脂肪組織内のサーチュイン(Sirtuin)(SIRT)遺伝子の転写因子のレベルを、リアルタイム定量PCRを用いて投与の7、28および56日目に測定した。SIRT関連転写因子については、ヒトにおける転写因子として既知の7種が存在する。特に、SIRT1は寿命に関与する酵素として周知であり、カロリーが制限付きで消化される場合にSIRT1が著しく増大することも報告されている。図32から分かるように、実験群と対照群の間でのSIRT2、SIRT5およびSIRT7が示す差異が全く注目に値しない一方、SITR1、SIRT3およびSIRT6が有意に増大した。実施例19:DIOマウスにおけるUCP1およびUCP2遺伝子の転写因子の発現に対するNQO1活性化物質の効果 ピラノ−1,2−ナフトキノンをDIOマウスに経口経路を介して50mg/kgの用量で毎日投与し、肝組織および性腺組織における脱共役タンパク質1および2(UCP1および2)遺伝子の転写因子のレベルを、リアルタイム定量PCRを用いて測定した。UCP1および2は、発熱を介してエネルギーを消費する酵素であり、これらの酵素が反応性酸素種(ROS)の生成を伴うことなくエネルギーを消費するように機能し、肥満の発生率とも密接に相関することが報告されている。図33に示されるように、ピラノ−1,2−ナフトキノンの投与により、UCP1および2のmRNAレベルにおける有意な増大がもたらされている。これらの結果は、NQO1が、エネルギー生成プロセスにおいて追加的に生成されるROSに起因するストレスの低下による代謝症候群の治療における安全な治療薬として有望であることを示す。実施例20:様々な器官内でのグルコースおよび脂質代謝に関与する遺伝子の発現に対するNQO1活性化物質の効果 肝臓、骨格筋および白色脂肪組織(WAT)内でのグルコースおよび脂質代謝に関与する遺伝子の発現に対するβLの効果を検討するため、遺伝子発現マイクロアレイ分析およびマウスA42用アフィメトリクス(Affymetrix)GeneChipを用いて実験を行った。 図34は、賦形剤で処理されたマウスおよびβLで処理されたマウスにおける指定の遺伝子の遺伝子発現率についてのRT−PCR定量の結果を示す。図34−hおよび34−iは、βLで処理されたマウスにおけるミトコンドリア新生およびエネルギー代謝に関連する数種の遺伝子の発現が増大することを示す。例えば、βL処理が肝臓内および筋肉内(図34−hおよび34−i)でのミトコンドリア新生に関与するPGC−1αおよびNRF−1の発現を有意に誘発し、ミトコンドリア遺伝子COX4、COX7、AOX、UCP2およびUCP3がβL処理群の筋肉内で強力に上方制御された(図34−i)。 グルコーストランスポーター(GLUT)2およびGLUT4の発現がβLで処理されたマウスの筋肉において誘発された(図34−i)。興味深いことに、重要なことにカロリー制限を担うSirt1およびSirt3が、βLで処理されたマウスの筋肉およびWATにおいて誘発された(図34−Iおよびj)。 更に、βLで処理されたマウスにおける脂肪組織内での脂肪分解遺伝子LPLおよびATGL、脂肪酸酸化遺伝子PPARαおよびSIRT1、並びにグルコース取り込み遺伝子Glut2およびGlut4の発現が賦形剤で処理されたマウスにおける場合よりも高かった(図34−j)。実施例21:DIOマウスでの体重および食餌摂取量における経時的変化に対するNQO1活性化物質の投与の効果 図35は、ピラノ−1,2−ナフトキノンを肥満マウスに経口経路を介して50mg/kgの用量で毎日投与した後の56日間の食餌摂取量/体重および重量変化における変化を示す。ピラノ−1,2−ナフトキノン投与群における食餌摂取量が最初の2週間で減少を示し、その後、食餌摂取レベルは対照群のレベル並みに回復した。これらの結果は、脂肪の分解の促進故に十分な量のエネルギーが生成されることに起因すると考えられる。更に、マウスに高脂肪食が与えられても、動物は対照群と比べて56日間にわたる継続的な体重減少を示した。図36における冠状断面および横断面のMRI画像で示されるように、かかる体重減少は皮下および内臓脂肪組織における減少に起因するものであった。 図37は、ピラノ−1,2−ナフトキノンのC57BL/6 DIOへの56日間の投与後での、処理群と対照群の間における様々な器官内での重量変化を比較するグラフである。図37に示されるように、皮下脂肪、腸間膜脂肪、脂肪被膜および性腺脂肪の量がピラノ−1,2−ナフトキノンの投与後の最初の4週間にわたり漸減した後、残りの4週間は安定状態であった。 図38は、ピラノ−1,2−ナフトキノンのC57BL/6 DIOマウスへの56日間の投与後での動物の全開腹状態並びに肝組織内での脂肪蓄積に関するオイルレッドO染色およびEM試験の結果について示す。 図38Aから分かるように、ピラノ−1,2−ナフトキノンの56日間の投与を受けたC57BL/6 DIOマウスが、内臓脂肪および体重における著明な減少および赤色に変化した肝組織の大きさの減少を示した。脂肪肝の症状における改善を確認するため、肝臓内の蓄積脂肪を、オイルレッドO染色を用いて染色し、その結果、対照群と比べて脂肪が90%以上減少していることを確認した(図38B)。図38Cは肝組織のEMであり、対照群と比べて脂肪胞およびグリコーゲン貯蔵における著明な低下、正常なミトコンドリアの形態の回復、ミトコンドリア数の有意な増加、および小胞体の形態の改善を示している。 図39に示されるように、未処理の動物の筋肉が腫脹、ミトコンドリアの拡大および不十分な数を呈する一方、βLで処理されたDIOマウスおよびob/obマウスが正常な形態およびミトコンドリアの数の増加を示した。更に、図40に示されるように、βLで処理されたDIOマウスのヒラメ筋においてはタイプ1の筋線維の数が増加した。 図41は、ピラノ−1,2−ナフトキノンをC57BL/6 DIOマウスに経口経路を介して50mg/kgの用量で毎日投与してから56日目での、動物における開腹後の性腺脂肪組織のペリリピン染色の結果を示す。図41から分かるように、脂肪細胞の大きさは著しく減少した。 図42は、ピラノ−1,2−ナフトキノンをC57BL/6 DIOマウスに経口経路を介して50mg/kgの用量で毎日投与してから3、7、14、28および56日目に回収した血中のトリグリセリド(TG)、コレステロール、遊離脂肪酸、グルコース、インスリン、TNFα、レジスチンおよびレプチンのレベルにおける変化を示す。同図から分かるように、血中の脂肪およびグルコースのレベルが有意に改善され、更にインスリン抵抗性およびレプチン抵抗性も改善された。更に、インスリン抵抗性を誘発するレジスチンの血中レベルも有意に改善された。これらの結果から、ピラノ−1,2−ナフトキノンが脂肪肝、高脂血症、II型糖尿病およびインスリン抵抗性の治療において極めて有効となることが期待される。 図43は、ピラノ−1,2−ナフトキノンをC57BL/6 DIOマウスに経口経路を介して50mg/kgの用量で毎日投与してから56日目でのマウスの褐色脂肪組織のH&E染色結果を示す。図43から分かるように、脂肪細胞の大きさは著しく減少した。 図44は、ピラノ−1,2−ナフトキノンをC57BL/6 DIOマウスに経口経路を介して50mg/kgの用量で毎日投与してから56日目に採取した褐色脂肪組織のEM試験の結果を示す。同図から分かるように、脂肪細胞の大きさは著しく減少した。実施例22:OLETFラットのインスリン感受性およびグルコース寛容性における経時的変化に対するNQO1活性化物質の投与の効果 図45は、賦形剤で処理されたOLETFラットおよびβLで処理されたOLETFラットにおいて測定されたグルコース寛容性およびインスリン感受性を示すグラフである。グルコースおよびインスリンをi.p.およびi.v.でそれぞれ注射し、血中グルコースレベルを測定した。その結果、図45aおよび45cと図45bおよび45dに示されるように、OLETFラットはβL処理後の3日目および21日目にグルコース寛容性およびインスリン感受性における改善を示した。実施例23:NQO1活性化物質の投与によるレプチン受容体の欠損した(ob/ob)マウスにおける変化 図46および47は、ピラノ−1,2−ナフトキノンをレプチン受容体の欠損した(ob/ob)マウスに経口経路を介して200mg/kgの用量で毎日投与して56日間の食餌摂取量/体重における変化および体重における変化を示す。食餌摂取量/体重は投与の約10日目に著しく減少し、その後、食餌摂取レベルが対照群のレベルの70%に回復した。これらの結果は、ピラノ−1,2−ナフトキノンの投与によりレプチン受容体の欠損した(ob/ob)マウスにおいても体重が有効に減少することを示す。 肝組織内での脂肪蓄積を試験するため、ピラノ−1,2−ナフトキノンの投与後の56日目に動物を開腹し、肝組織上でH&E染色およびEM試験を行った。図48は、肝組織上のH&E染色の結果を通じ、脂肪胞のほぼ全部が対照群の場合と比べて消失していることを示す。かかる結果は、ピラノ−1,2−ナフトキノンの投与がレプチン受容体の欠損した(ob/ob)マウスにおける脂肪肝の治療においても極めて有効となるという予想を表している。図49から、肝組織に対するEM試験の結果は、対照群と比べて脂肪胞およびグリコーゲン貯蔵における著明な低下、正常なミトコンドリアの形態の回復、ミトコンドリア数の有意な増加および小胞体の形態の改善を示した。図50から、動物の四肢の筋肉組織に対するEM試験の結果は、対照群にて示されるミトコンドリアの奇妙な形態に対する処理群における正常なミトコンドリアの形態の回復、およびミトコンドリア数の有意な増加を示した。実施例24:自発運動活性に対するNQO1活性化物質の効果 ピラノ−1,2−ナフトキノンをC57BL/6 DIOマウスに投与し、3時間後、自発運動活性をVersa MAX Activity Monitors & Analyzer(米国オハイオ州コロンバス(Columbus)のアキュスキャン・インスツルメンツ(AccuSan Instruments))を用いて測定した。動物の運動の測定に用いられるモニターは、赤外線をx軸およびy軸に沿って各々2.5cmの間隔で装備する41cmx41cmのプレキシグラス(Plexiglas)チャンバー(高さ:30cm)であったが、それにより16本の走査線の各々がチャンバーの前側/後側および右側/左側に並べられる。自発運動と常同/グルーミング行動を識別するため、マウスによって引き起こされる2つの異なる走査線の連続的干渉を有効な判定基準とすることにより動物の活動を測定した。ピラノ−1,2−ナフトキノン投与群、賦形剤投与群および対照群をそれぞれ各測定装置に入れ、動物の活動および運動を7時間測定した。動物を新しい環境に順応させるため、マウスを測定の2時間前に装置に入れた。このようにして得られた測定結果を図51に示す。図51に示されるように、賦形剤投与群および対照群は両者間で実質的な差異を全く示さなかったが、ピラノ−1,2−ナフトキノン投与群は動物の運動および活動において有意な差異を示した。実施例25:身体耐久力の向上に対するNQO1活性化物質の効果 この実施例では、水泳試験を通じてマウスの身体耐久力における差異を測定しようとした。このため、水を9.5cmの直径および25cmの高さを有する円筒状の餌入れ(cylindrical trough)内に入れ、ピラノ−1,2−ナフトキノンをC57BL/6 DIOマウスに投与した。3時間後、試料投与群および対照群を測定のために円筒状の餌入れの各々に同時に入れ、各群の身体耐久力を測定し、比較した。このようにして得られた結果を図52に示す。図52に示されるように、ピラノ−1,2−ナフトキノン投与群が、対照群と比べ、ピラノ−1,2−ナフトキノンの単回投与の場合であっても水泳時間が約2倍長くなることを示すことが確認された。実施例26:呼吸商(RQ)に対するNQO1活性化物質の効果 この実施例では、呼吸商(RQ)の測定を介し、脂肪代謝に対するピラノ−1,2−ナフトキノンの効果について試験しようとした。酸素消費および二酸化炭素の生成についてOxyscan開回路の間接熱量計(オハイオ州コロンバス(Columbus)のアキュスキャン・インスツルメンツ(AccuSan Instruments))を用いて測定した。この装置はアクリル製の閉鎖チャンバー(21×21×21cm)からなるものであった。新鮮な空気を1500mL/分の速度で各チャンバーに引き込み、次いでO2およびCO2を検出器に通過させておいた。気体の濃度をmL/kg体重/分で記録した。CO2の生成量(VCO2)をO2の消費量(VO2)で除したものとしてRQを計算した。ピラノ−1,2−ナフトキノン投与群、賦形剤投与群および対照群を各装置に入れ、RQを7時間測定した。動物を新しい環境に順応させるため、マウスを測定の2時間前に装置に入れた。図53に示されるように、このように測定された結果では、ピラノ−1,2−ナフトキノン投与群がRQ値において賦形剤投与群および対照群と比べて有意な差異を示すことが確認されている。 間接熱量測定では、夜間および昼間での酸素消費が増大し(図54)、かつβLで処理されたマウスにおけるエネルギー消費が対照群の場合と比べて増大すること(図55)が示された。マウスを4℃の周囲温度に12時間暴露した後、動物の平均体温の測定時に、βLで処理されたマウスにおける低温に対する耐性が高まった(図56)。実施例27:体重減少に対するNAD+投与の効果 この実施例では、NAD(P)+/NAD(P)H比をインビボで上昇させることが可能な方法である、NAD(P)+の任意の外部供給により変化するインビボでのNAD(P)+/NAD(P)H比の効果について試験しようとした。100mg/kgのNAD+をレプチン受容体の欠損した(ob/ob)マウスに腹腔内(i.p.)経路を介して毎日投与した。対照マウス群に生理食塩水を同用量で腹腔内投与した。食餌摂取量/体重における変化(A)および体重における変化(B)を30日間測定した。 図57で示されるように、処理群の食餌摂取量/体重はNAD+投与の約10日目に著しく減少し、その後、動物が対照群と同様の食餌摂取量を示した。これは、処理群と対照群の間での食餌摂取量が類似するのに対し、NAD+投与群においては脂肪分解が促進され、それ故に十分な量のエネルギーが生成されたためである。更に、それらが遺伝的にレプチンの欠損したob/obマウスであるにしても、NAD+が投与されたマウスは対照群と比べて30日間にわたる連続的な重量減少を示した。これらの結果は、NAD(P)+の処理により、レプチン受容体の欠損した(ob/ob)マウスの体重が、NAD(P)+の外部投与を介するNAD(P)+/NAD(P)H比の上昇によって有効に減少しうることを示す。実施例28:体重減少に対するNQO1活性化物質ジメチルフマレート(DMF)の投与の効果 図58は、NQO1活性化物質ジメチルフマレート(DMF)のレプチン受容体の欠損したob/obマウスへの投与後での体重および食餌摂取量における変化を示す。200mg/kgのDMFをレプチン受容体の欠損した(ob/ob)マウスに経口経路を介して毎日投与した。対照群には生理食塩水を同用量で毎日、腹腔内投与した。体重における変化(A)および食餌摂取量における変化(B)を30日間測定した。処理群の食餌摂取量が対照群の60〜70%レベルに調節されることが確認された。これらの結果は、NQO1活性化物質ジメチルフマレート(DMF)の投与によりレプチン受容体の欠損した(ob/ob)マウスの体重が有効に減少することを示す。実施例29:ob/obマウスにおけるNAD(P)Hの低下および体重減少に対して様々なNQO1を活性化する候補化合物の効果があるか否かについての実験 下記の表1に挙げる種々のNQO1を活性化する候補化合物においては、NAD(P)Hの低下を上記の実験方法(上記セクション10で開示:NADHリサイクリングアッセイ)に基づいて測定した。更に、実施例23で示した実験方法により、4週後にob/obマウスの体重を測定した。 このようにして得られた結果を下記の表1に示す。これに関連し、NAD(P)Hの低下度を、NQO1活性化物質NAD(P)Hの不在下でのNAD(P)Hの量を100にすることによる、NQO1を活性化する候補化合物の投与時に測定されるNAD(P)Hの相対量として表した。更に、体重減少の程度を、NQO1を活性化する候補化合物の投与を受けたob/obマウスの体重の、4週後にNQO1を活性化する候補化合物の投与を受けていないob/obマウスの体重(対照)に対する百分率として表した。 表1から分かるように、NAD(P)Hの低下が有意な体重減少を伴った。特に、4−置換−1,2−ナフトキノン、例えば2−メチル−2,3−ジヒドロ−ナフト[1,2−b]フラン−4,5−ジオン、2,3,3−トリメチル−2,3−ジヒドロ−ナフト[1,2−b]フラン−4,5−ジオン、2,2−ジメチル−2,3−ジヒドロ−ナフト[1,2−b]フラン−4,5−ジオン、2,2,3−トリメチル−2,3−ジヒドロ−ナフト[1,2−b]フラン−4,5−ジオン、2,2−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[h]クロメン−5,6−ジオン、または10−イソプロピル−7a−メチル−7a,8,9,11a−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[c]キサンテン−5,6−ジオンの投与により、NAD(P)Hの有意な低下、ひいては体重減少がもたらされることが確認されうる。 上記から明らかなように、本発明によると、NAD(P)+/NAD(P)H比をインビボまたはインビトロでNQO1などのオキシドレダクターゼの活性化を介して上昇させることにより、肥満、糖尿病、代謝症候群、変性疾患およびミトコンドリア機能障害に関連する疾患を含む様々な疾患を治療しかつ生物の運動活性および耐久力を増大させることが可能である。更に、標的としてNQO1タンパク質および遺伝子を用い、NAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることが可能な薬剤化合物をスクリーニングしかつ開発することが可能である。 本発明の好ましい実施形態が例示目的で開示されているが、当業者は添付の特許請求の範囲にて開示される本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく様々な改良、付加および置換を行うことが可能であることを理解するであろう。NQO1による細胞内のNADH濃度の変化を示すグラフである。NQO1−活性化酵素の存在/不在におけるNQO1の活性を示す棒グラフである。NQO1活性の存在/不在における細胞内のNAD(P)H蛍光濃度の変化を示す図面である。NQO1遺伝子の存在/不在におけるHEK細胞のNAD(P)H蛍光濃度の変化を示す図面である。ジクマロールの処理による細胞内のNAD(P)H蛍光濃度の変化を示す図面である。少脂肪マウスおよびDIOマウスの組織内で測定されたNQO1の量および活性を示す棒グラフである。NQO1活性化物質による細胞内のATP濃度の変化を示す棒グラフである。NQO1による細胞内のエネルギー濃度の経時的変化を示すグラフである。インビボでのNQO1活性化物質によるAMP/ATP、NAD+/NADHおよびNADP+/NADPH比の変化を示す棒グラフである。NQO1活性化物質の少脂肪マウスおよびDIOマウスへの各投与後におけるAMP/ATPの経時的変化を示す棒グラフである。NQO1活性化物質の少脂肪マウスおよびDIOマウスへの各投与後におけるNAD+/NADH比の経時的変化を示す棒グラフである。C57BL/6マウスにおける脂肪酸のβ酸化に対するNQO1の効果を示す棒グラフである。ACC、CPTおよびHADの活性並びにDIOマウスにおけるマロニル−CoAおよび14Cパルミトイル−CoAの酸化に対するNQO1活性化物質の効果を示す棒グラフである。細胞内でのAMPKおよびACCのリン酸化の調節に対するNQO1の効果を示す写真である。DIOマウスの肝臓、WAT、EDLおよびヒラメ筋において測定されたAMPKαおよびACCのリン酸化を示す写真である。AMPKのリン酸化に対するNQO1の効果を示す写真である。AMPKαおよびACCのリン酸化に対するNQO1活性化物質の効果を示す写真である。AMPKおよびACCの活性に対するNQO1活性化物質の効果を示す棒グラフである。細胞内のカルシウム濃度の変化に対するNQO1の効果を示すグラフである。TMRE蛍光および共焦点顕微鏡を用いて測定されたミトコンドリア膜電位におけるリアルタイム変化を示すグラフである。細胞質([Ca2+]c)内およびミトコンドリア([Ca2+]m)内でのCa2+イオンの濃度をそれぞれ表すFluo4およびRhod−2−AM蛍光の測定結果を示すグラフである。クラーク型酸素電極を用いてのミトコンドリアの酸素消費の監視結果を示すグラフである。NQO1とAMPKα、βまたはγとの結合を確認する写真である。内皮の一酸化窒素シンターゼ(eNOS)のリン酸化に対するNQO1活性化物質の効果を示す写真である。C57BL/6マウスにおけるAMPKの活性化に対するNQO1活性化物質の効果を示す棒グラフである。C57BL/6マウスにおけるAMPKおよびACCリン酸化に対するNQO1活性化物質の効果を示す写真である。DIOマウスの様々な器官におけるAMPK活性に対するNQO1活性化物質の効果を示す棒グラフである。C57BL/6マウスの脂肪代謝に関与するタンパク質の転写産物発現に対するNQO1活性化物質の効果を示す棒グラフである。C57BL/6マウスのグルコース代謝に関与するタンパク質の転写産物発現に対するNQO1活性化物質の効果を示す棒グラフである。C57BL/6マウスのミトコンドリア新生に関与するタンパク質の転写産物発現に対するNQO1活性化物質の効果を示す棒グラフである。C57BL/6マウスにおけるエネルギー代謝に関与するタンパク質の転写産物発現に対するNQO1活性化物質の効果を示す棒グラフである。C57BL/6マウスにおけるSIRT関連タンパク質の転写産物発現に対するNQO1活性化物質の効果を示す棒グラフである。C57BL/6マウスにおけるUCP1およびUCP2遺伝子の転写産物発現に対するNQO1活性化物質の効果を示す棒グラフである。様々な器官内の指定される遺伝子の遺伝子発現率に対するNQO1活性化物質の効果を示す棒グラフである。NQO1活性化物質のC57BL/6 DIOマウスへの投与後での体重および食餌摂取量における経時的変化を示すグラフである。未処理の少脂肪マウス群(n=5)、未処理のDIOマウス群(n=10)、賦形剤で処理されたDIOマウス群(n=10)およびβLで処理されたDIOマウス群(n=10)(8週間の処理後に開腹)における内臓脂肪を示すMRIである。NQO1活性化物質のDIOマウスへの投与後における非処理群、処理群および対照群の間での様々な器官内での重量変化を比較するグラフである。NQO1活性化物質のC57BL/6 DIOマウスへの投与後における動物の全開腹状態並びに肝組織内の脂肪蓄積に対するオイルレッドO染色およびEM試験の結果を示す写真である。賦形剤で処理されたDIOマウスおよびβLで処理されたDIOマウスにおけるヒラメ筋についてのEM試験の結果および分析を示す顕微鏡写真である。賦形剤で処理されたDIOマウスおよびβLで処理されたDIOマウスにおけるタイプ1のヒラメ筋線維のEMである。NQO1活性化物質のC57BL/6 DIOマウスへの投与後における性腺脂肪組織内の脂肪細胞の大きさの比較結果を示す写真である。代謝パラメーター(TG、総コレステロール、遊離脂肪酸、グルコース、インスリン、TNFα、アディポネクチン、レジスチン、レプチンなど)に対するNQO1活性化物質の効果を示すグラフである。NQO1活性化物質のC57BL/6 DIOマウスへの投与後における褐色脂肪組織のH&E染色の比較結果を示す写真である。NQO1活性化物質のC57BL/6 DIOマウスへの投与後における褐色脂肪組織のEMである。賦形剤またはβLで処理されたOLETFラットにおけるグルコース寛容性およびインスリン感受性を示すグラフである。ob/obマウスに対する賦形剤またはβLの処理後における食餌摂取量/体重における変化を示すグラフである。ob/obマウスに対する賦形剤またはβLの処理後における体重における変化を示すグラフである。ob/obマウスに対する賦形剤またはβLの処理後における脂肪蓄積量および組織を示すEMであり、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色された肝組織の顕微鏡写真(スケールバー、100μm)である。ob/obマウスに対する賦形剤またはβLの処理後における脂肪蓄積量および組織を示すEMであり、肝組織のTEM分析を示す顕微鏡写真(スケールバー、5μm)である。ob/obマウスに対する賦形剤またはβLの処理後における脂肪蓄積量および組織を示すEMであり、EDL筋肉組織のTEM分析を示す顕微鏡写真(スケールバー、20μm)である。NQO1活性化物質のC57BL/6 DIOマウスへの投与後における自発運動活性に対するNQO1活性化物質の効果を示すグラフである。NQO1活性化物質のC57BL/6 DIOマウスへの投与後における身体耐久力の増進に対するNQO1活性化物質の効果を示すグラフである。NQO1活性化物質のC57BL/6 DIOマウスへの投与後における呼吸商(RQ)に対するNQO1活性化物質の効果を示すグラフである。間接熱量測定による、賦形剤またはβLで処理された動物におけるVO2の測定結果を示すグラフである。間接熱量測定による、賦形剤またはβLで処理された動物におけるエネルギー消費の測定結果を示すグラフである。賦形剤またはβLで処理された動物において測定された平均体温を示すグラフである。レプチン受容体の欠損したob/obマウスへのNAD+の投与後での体重および食餌摂取量における変化を示すグラフである。レプチン受容体の欠損したob/obマウスへのジメチルフマレートの投与後での体重および食餌摂取量における変化を示すグラフである。 NAD(P)+/NAD(P)H比を、オキシドレダクターゼの調節または添加によりインビボまたはインビトロで上昇させる方法。 前記NAD(P)+/NAD(P)H比の上昇を、哺乳動物において行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記哺乳動物がヒトであることを特徴とする請求項2に記載の方法。 前記オキシドレダクターゼが、NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ1(NQO1)であることを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記NAD(P)+/NAD(P)H比を、NQO1の活性を増大させることにより上昇させることを特徴とする請求項4に記載の方法。 NQO1による前記NAD(P)+/NAD(P)H比における変化が、NQO1における活性化物質の不在下でのNAD(P)Hの量を基準としてNAD(P)Hの20%を超える低下であり、それにより前記NAD(P)+/NAD(P)H比を上昇させることを特徴とする請求項5に記載の方法。 NAD(P)Hの低下が30%を超えることを特徴とする請求項6に記載の方法。 AMP/ATP比を、前記NAD(P)+/NAD(P)H比の上昇により上昇させることを特徴とする請求項5に記載の方法。 補酵素または基質としてのNAD(P)Hの消費を、NQO1タンパク質の量またはNQO1遺伝子の発現を高めることにより増大させることを特徴とする請求項4に記載の方法。 NQO1の活性または量を増大させることが可能な化合物を用いてNQO1の活性を増大させることを特徴とする請求項5に記載の方法。 前記化合物がH受容体であることを特徴とする請求項10に記載の方法。 前記化合物が、キノン化合物、キノン−イミン化合物、ニトロ化合物、アゾ化合物およびそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項11に記載の方法。 前記化合物が、ナフトキノン化合物およびその誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項12に記載の方法。 前記化合物が、フマル酸エステルおよびその誘導体、オルチプラズ(4−メチル−5(2−ピラジニル)−1,2−ジチオール−3−チオン)、クルクミン、アネトールジチオールチオン、スルフォラファン、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート、コーヒー酸フェネチルエステル、4’−ブロモフラボン、アヴィシンズ、フィセチン、レスベラトロールおよびそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項12に記載の方法。 前記ナフトキノン化合物が、4−アミノアルキル−1,2−ナフトキノン、4−チオアルキル−1,2−ナフトキノン、4−アルコキシ−1,2−ナフトキノン、フラノ−o−ナフトキノン、ピラノ−o−ナフトキノンまたはそれらの誘導体であることを特徴とする請求項13に記載の方法。 前記フマル酸エステルが、ジメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノメチルフマレートまたはそれらの塩であることを特徴とする請求項14に記載の方法。 前記ナフトキノン化合物またはその誘導体が、式I:(式中、 R1およびR2は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシまたは1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルであり、 R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、C1〜C20アルキル、アルケン若しくはアルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール若しくはヘテロアリールであるか、或いはR3からR8のうちの2つの置換基が環状構造を形成する場合があり、 Xは酸素、窒素または硫黄であり、 mおよびnはそれぞれ独立に0または1であり、但し、mおよびnのうちのいずれかが0である場合に、mまたはnに隣接する炭素原子が直接結合を介して環状構造を形成しうる)によって表される化合物であることを特徴とする請求項13に記載の方法。 Xは酸素であり、mは1であり、nは0または1であり、但し、nが0である場合に、nに隣接する炭素原子が直接結合を介して環状構造を形成することを特徴とする請求項17に記載の方法。 前記化合物が、式II:(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は式Iにおける定義と同じである)によって表されることを特徴とする請求項17に記載の方法。 前記化合物が、式III(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は式Iにおける定義と同じである)によって表されることを特徴とする請求項17に記載の方法。 前記化合物が2,2−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[h]クロメン−5,6−ジオンであることを特徴とする請求項20に記載の方法。 NAD(P)+/NAD(P)H比を、インビボまたはインビトロでNQO1を介して上昇させることが可能な化合物を同定する方法であって、 候補化合物群をNQO1に接触させる工程;および NQO1の量または活性を監視する工程を含むことを特徴とする方法。 NQO1を、スクリーニング対象の化合物およびNAD(P)Hと所定の時間反応させる工程;および 得られたNAD(P)+または残存するNAD(P)Hを定量する工程を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。 生成されたNAD(P)+の定量が、ヒドリド(H−)受容体として用いられるDCPIPの還元を介する、吸収波長における変化に起因する着色の誘導による吸光度の変化を測定する工程を含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。 前記残存するNAD(P)Hの定量が、テトラゾリウム塩の着色に起因する吸光度の変化を測定する工程を含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。 NQO1を、スクリーニング対象の化合物と所定の時間反応させる工程;および NAD(P)Hの低下を定量する工程を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。 NQO1を、スクリーニング対象の化合物と所定の時間反応させる工程;および 細胞内のATP濃度の低下または細胞内のAMP濃度の上昇を定量する工程を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。 前記監視する工程が、細胞内のカルシウム濃度の上昇を観察する工程を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。 前記監視する工程が、AMPKのリン酸化および活性化の程度を観察する工程を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。 前記監視する工程が、ACCのリン酸化の増大および/またはACC活性の低下を観察する工程を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。 NAD(P)+/NAD(P)H比の低下を伴う疾患を治療または予防するための薬剤の製造における、NQO1の量または活性を増大させることが可能な化合物の使用。 前記化合物が、キノン化合物、キノン−イミン化合物、ニトロ化合物、アゾ化合物およびそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項31に記載の使用。 前記化合物が、ナフトキノン化合物およびその誘導体、フマル酸エステルおよびその誘導体、オルチプラズ(4−メチル−5(2−ピラジニル)−1,2−ジチオール−3−チオン)、クルクミン、アネトールジチオールチオン、スルフォラファン、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート、コーヒー酸フェネチルエステル、4’−ブロモフラボン、アヴィシンズ、フィセチン、レスベラトロール並びにそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項32に記載の使用。 前記化合物が、4−アルコキシ−1,2−ナフトキノン化合物およびその誘導体、並びにジメチルフマレートおよびその類似体よりなる群から選択されることを特徴とする請求項33に記載の使用。 NAD(P)+/NAD(P)H比の低下を伴う疾患を治療または予防する方法であって、NQO1の量または活性を増大させることが可能な治療有効量の化合物を、それらを必要とする対象に投与する工程を含むことを特徴とする方法。 前記疾患が、肥満、肥満合併症、糖尿病、糖尿病性合併症、代謝症候群、変性疾患またはミトコンドリア機能障害であることを特徴とする請求項35に記載の方法。 前記化合物が、キノン化合物、キノン−イミン化合物、ニトロ化合物、アゾ化合物およびそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項35に記載の方法。 (a)NQO1の量または活性を増大させることが可能な治療有効量の化合物;および (b)薬学的に許容できる担体、希釈剤、賦形剤またはそれらの任意の組み合わせを含有することを特徴とするNQO1を促進する組成物。 前記化合物が、キノン化合物、キノン−イミン化合物、ニトロ化合物、アゾ化合物、およびそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項38に記載の組成物。 前記化合物が、ナフトキノン化合物およびその誘導体、フマル酸エステルおよびその誘導体、オルチプラズ(4−メチル−5(2−ピラジニル)−1,2−ジチオール−3−チオン)、クルクミン、アネトールジチオールチオン、スルフォラファン、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート、コーヒー酸フェネチルエステル、4’−ブロモフラボン、アヴィシンズ、フィセチン、レスベラトロール並びにそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項39に記載の組成物。 前記化合物が、4−アルコキシ−1,2−ナフトキノン化合物およびその誘導体、並びにジメチルフマレートおよびその類似体よりなる群から選択されることを特徴とする請求項40に記載の組成物。 NAD(P)+/NAD(P)H比をインビボで上昇させる方法であって、NAD(P)+或いはその誘導体、前駆体またはプロドラッグを、それらを必要とする対象に投与する工程を含むことを特徴とする方法。 インビボでのNAD(P)+/NAD(P)H比の人為的上昇によって、対象の運動能力および/または耐久力の改善を誘発する方法。 肥満、糖尿病、代謝症候群、変性疾患およびミトコンドリア機能障害に関連する疾患などのエネルギー過剰を伴う様々な疾患を、インビボまたはインビトロで、基質または補酵素としてNAD(P)Hの使用を通じて、NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ(NQO1)などのオキシドレダクターゼによりNAD(P)+濃度を上昇させることによるNAD(P)+/NAD(P)H比の上昇を介して有効に治療することが可能な方法と、それらに対する薬剤および治療薬のスクリーニング方法が提供される。