タイトル: | 特許公報(B2)_耐熱性ビオチン結合性タンパク質の利用法、および当該タンパク質が結合した固体担体 |
出願番号: | 2008552189 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07K 17/00,G01N 33/53,C07K 14/375,C12Q 1/68,C12P 21/02,C12N 15/09,C07K 16/14 |
高倉 由光 宇佐美 悟 市川 雅子 JP 5437639 特許公報(B2) 20131220 2008552189 20071228 耐熱性ビオチン結合性タンパク質の利用法、および当該タンパク質が結合した固体担体 日本たばこ産業株式会社 000004569 小野 新次郎 100140109 小林 泰 100075270 竹内 茂雄 100101373 山本 修 100118902 泉谷 玲子 100107386 辻本 典子 100162455 高倉 由光 宇佐美 悟 市川 雅子 JP PCT/JP2006/326260 20061228 20140312 C07K 17/00 20060101AFI20140220BHJP G01N 33/53 20060101ALI20140220BHJP C07K 14/375 20060101ALN20140220BHJP C12Q 1/68 20060101ALN20140220BHJP C12P 21/02 20060101ALN20140220BHJP C12N 15/09 20060101ALN20140220BHJP C07K 16/14 20060101ALN20140220BHJP JPC07K17/00G01N33/53 UG01N33/53 MC07K14/375C12Q1/68 AC12P21/02 CC12N15/00 AC07K16/14 C07K 1/00−19/00 C12N 15/00−15/90 UniProt/GeneSeq PubMed Science Direct CiNii WPI 国際公開第2002/072817(WO,A1) 国際公開第99/060400(WO,A1) 欧州特許出願公開第00456304(EP,A1) DIAMANDIS, E.P. et al.,CLINICAL CHEMISTRY,1991年,Vol.37, No.5,P.625-636 TAKAKURA, Y. et al.,JOURNAL OF BIOTECHNOLOGY,2010年 2月15日,Vol.145, No.4,P.317-322,Epub: 2009 Dec 22 8 JP2007075298 20071228 WO2008081938 20080710 21 20101129 野村 英雄 本発明は、耐熱性ビオチン結合性タンパク質を連結させた固体担体に関する。本発明はまた、本発明の固体担体の使用に関する。本発明はさらに、耐熱性ビオチン結合性タンパク質を用いる、ビオチンと連結した物質の精製、濃縮、検出、捕捉などの技術分野に関する。 アビジンとビオチン、あるいはストレプトアビジンとビオチンの間の親和性は非常に高く(Kd=10-15〜-14 M)、生体二分子間の相互作用としては、最も強い相互作用の一つである。現在、アビジン/ストレプトアビジン−ビオチン相互作用は、生化学、分子生物学、あるいは医学の分野で広く応用されている(Green, (1975), Adv. Protein Chem., 29: 85-133;Green, (1990), Methods Enzymol., 184: 51-67)。アビジンは卵白由来の塩基性糖タンパクで、等電点は10を越える。アビジンは、その高い塩基性、あるいは糖鎖の影響で、DNA等に対する非特異的結合が問題となり、これがアビジン使用の限定要因となっている。一方、ストレプトアビジンは放線菌(Streptomyces avidinii)由来で、等電点は中性付近で糖鎖を含まない。両タンパク質とも、4量体を形成し、1つのサブユニット当たり1分子のビオチンと結合する。分子量は60kDa程度である。 タマビジン(タマビジン1:配列番号2)は、イネいもち病菌M.griseaに対して抗菌性を示すタンパク質として、食用キノコタモギタケから精製された第3のビオチン結合タンパク質であり、その遺伝子構造も明らかにされた(WO 02/072817)。またそのホモローグ(タマビジン2:配列番号4)も同キノコから同定され、組換えタンパク質の生産にも成功した(WO 02/072817)。タマビジンホモローグは、大腸菌発現とイミノビオチンカラムを用いた精製により容易に生産でき、これはアビジンやストレプトアビジンの生産系と比較して大きな利点である。 アビジンを大腸菌で発現させた場合、可溶性タンパク質の収量は50ml当たり50 μg程度と少ない(Airenne et al., 1994, Gene, 144: 75-80)。そのため現在ではバキュロウィルスを使った昆虫細胞の系が使われている(Airenne et al., 1997, Protein exp. Purif., 9: 100-108)。また、ストレプトアビジンを大腸菌で発現させた場合、組換えタンパク質は不溶性の封入体を形成する。この封入体を高濃度のグアニジン塩酸で可溶化した後、透析による段階的なグアニジン塩酸の除去によってタンパク質のリフォールディングがおき、可溶性で活性のある組換えストレプトアビジンが得られる(Sano and Cantor, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 142-146)。このように、アビジンやストレプトアビジンの生産には多くの労力と時間を要する。一方、タマビジンホモローグを大腸菌で発現させた場合、50mlの培養当たり1mgの組換えタンパク質が得られた。これはビオチン結合タンパク質の生産効率としては高い値であり、タマビジンホモローグタンパクの潜在的有用性を示している。 これまでに試薬や診断薬の分野においては、アビジン、もしくはストレプトアビジンが結合した固体担体、例えば磁性ビーズや、マイクロプレート、あるいはセンサーチップ等が開発されているが、非特異的結合が低く、かつ高温域における安定性を有するものは未だ報告されていない。国際公開第WO 02/072817号パンフレットGreen, 1975, Adv. Protein Chem., 29: 85-133Green, 1990, Methods Enzymol., 184: 51-67Airenne et al., 1994, Gene, 144: 75-80Airenne et al., 1997, Protein exp. Purif., 9: 100-108Sano and Cantor, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 142-146 本発明は、耐熱性ビオチン結合性タンパク質を連結させた固体担体を提供することを目的とする。本発明はさらに、耐熱性ビオチン結合性タンパク質を用いる、ビオチンと連結した物質の精製、濃縮、検出、捕捉などの方法を提供することを目的とする。その際、本発明の固体担体の使用を提供する。また、本発明は、70℃以上の高温に暴露することを伴うアッセイ系に用いることが可能なビオチン結合性タンパク質を連結した固体担体を提供することを目的とする。 「タマビジン」は、担子菌タモギタケ由来のビオチン結合性タンパク質であり、タマビジン1およびタマビジン2の2種類がある(WO 02/072817を参照)。本発明者らは、鋭意研究の結果、タマビジン2は、ビオチンに対して、従来のアビジン、ストレプトアビジンと同様に、非常に高い親和性を有していることを明らかにした。即ち、タマビジン2とビオチンは、多くの抗原抗体反応のおよそ1000倍の強さの親和性を有していることを明らかにした。また、従来のアビジンにおいて問題となっている、非特異結合性(DNAに対する)が、殆どないことを実証した。さらに、タマビジン2は、ストレプトアビジンよりも10℃以上耐熱性が強いことを見出し、この性質はタマビジン2を固体担体に結合させた後も、維持されることを発見した。さらに本発明者らは、鋭意研究の結果、タマビジン1はビオチンに強く結合し、さらにストレプトアビジンよりも5℃耐熱性が強いことを見出した。これらの研究の結果、本発明者らは高温条件においてもビオチン結合活性を保持する、耐熱性ビオチン結合性タンパク質を連結させた固体担体を提供することが可能であることを見いだし、本発明に想到した。よって、本発明は、耐熱性ビオチン結合性タンパク質を連結させた固体担体、およびその使用、ならびに、耐熱性ビオチン結合性タンパク質を用いる、ビオチンと連結した物質の精製、濃縮、検出、および捕捉方法を提供する。 以下、本発明を詳細に説明する。 耐熱性ビオチン結合性タンパク質を連結させた固体担体 本発明は、耐熱性ビオチン結合性タンパク質を連結させた固体担体を提供する。 本明細書において、耐熱性ビオチン結合性タンパク質は、タマビジン1、タマビジン2、またはそれらの変異体を意味する。具体的には、本発明の固体担体に連結させる耐熱性ビオチン結合性タンパク質は、配列番号2もしくは配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、または、配列番号1もしくは配列番号3の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質、であってよい。あるいは、本発明の固体担体に連結させる耐熱性ビオチン結合性タンパク質は、配列番号2もしくは配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、または、配列番号1もしくは配列番号3の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質、の変異体であって、タマビジン1または2と同様のビオチン結合活性および耐熱性を有するタンパク質であってよい。本明細書において、タマビジン1、タマビジン2、およびそれらの変異体を総称して、単にタマビジンと呼ぶことがある。 タマビジン1または2の変異体は、配列番号2または4のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、タマビジン1または2と同様のビオチン結合活性および耐熱性を有するタンパク質であってもよい。置換は、保存的置換であってもよく、これは、特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることである。保存的置換の非限定的な例には、Ile、Val、LeuまたはAla相互の置換のような脂肪族基含有アミノ酸残基の間の置換、LysおよびArg、GluおよびAsp、GlnおよびAsn相互の置換のような極性残基の間での置換などが含まれる。 アミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加による変異体は、野生型タンパク質をコードするDNAに、例えば周知技術である部位特異的変異誘発(例えば、Nucleic Acid Research, Vol.10, No. 20, p.6487-6500, 1982参照、引用によりその全体を本明細書に援用する)を施すことにより作成することができる。本明細書において、「1または複数のアミノ酸」とは、部位特異的変異誘発法により欠失、置換、挿入および/または付加できる程度のアミノ酸を意味する。また、本明細書において「1または複数のアミノ酸」とは、場合により、1または数個のアミノ酸を意味してもよい。 部位特異的変異誘発法は、例えば、所望の変異である特定の不一致の他は、変異を受けるべき一本鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて次のように行うことができる。即ち、プライマーとして上記合成オリゴヌクレオチドを用いてファージに相補的な鎖を合成させ、得られた二重鎖DNAで宿主細胞を形質転換する。形質転換された細菌の培養物を寒天にプレーティングし、ファージを含有する単一細胞からプラークを形成させる。そうすると、理論的には50%の新コロニーが一本鎖として変異を有するファージを含有し、残りの50%が元の配列を有する。上記所望の変異を有するDNAと完全に一致するものとはハイブリダイズするが、元の鎖を有するものとはハイブリダイズしない温度において、得られたプラークをキナーゼ処理により標識した合成プローブとハイブリダイズさせる。次に該プローブとハイブリダイズするプラークを拾い、培養してDNAを回収する。 なお、生物活性ペプチドのアミノ酸配列にその活性を保持しつつ1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を施す方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法、および遺伝子を選択的に開裂し、次に選択されたヌクレオチドを除去、置換、挿入または付加し、次いで連結する方法もある。 タマビジン1または2の変異体はさらに、配列番号2または4のアミノ酸配列と少なくとも60%以上、好ましくは65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.3%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、タマビジン1または2と同様のビオチン結合活性および耐熱性を有するタンパク質であってもよい。 2つのアミノ酸配列の同一性%は、視覚的検査および数学的計算によって決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman, S. B. 及びWunsch, C. D. (J. Mol. Biol., 48: 443-453, 1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff, S. 及びHenikoff, J. G. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915-10919, 1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。 当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、用いてもよい。同一性のパーセントは、例えばAltschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)に記載されているBLASTプログラムを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。または、2つのアミノ酸配列の同一性%は、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス製)などのプログラム、または、FASTAアルゴリズムなどを用いて決定してもよい。その際、検索はデフォルト値を用いてよい。 2つの核酸配列の同一性%は、視覚的検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。代表的な、好ましいコンピュータ・プログラムは、遺伝学コンピュータ・グループ(GCG;ウィスコンシン州マディソン)のウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.0プログラム「GAP」である(Devereux, et al., 1984, Nucl. Acids Res., 12: 387)。この「GAP」プログラムの使用により、2つの核酸配列の比較の他に、2つのアミノ酸配列の比較、核酸配列とアミノ酸配列との比較を行うことができる。ここで、「GAP」プログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての(同一物について1、および非同一物について0の値を含む)一元(unary)比較マトリックスのGCG実行と、SchwartzおよびDayhoff監修「ポリペプチドの配列および構造のアトラス(Atlas of Polypeptide Sequence and Structure)」国立バイオ医学研究財団、353−358頁、1979により記載されるような、GribskovおよびBurgess, Nucl. Acids Res., 14: 6745, 1986の加重アミノ酸比較マトリックス;または他の比較可能な比較マトリックス;(2)アミノ酸の各ギャップについて30のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の1のペナルティ;またはヌクレオチド配列の各ギャップについて50のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の3のペナルティ;(3)エンドギャップへのノーペナルティ:および(4)長いギャップへは最大ペナルティなし、が含まれる。当業者により使用される他の配列比較プログラムでは、例えば、米国国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlにより使用が利用可能なBLASTNプログラム、バージョン2.2.7、またはUW−BLAST2.0アルゴリズムが使用可能である。UW−BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されている。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを使用し、使用可能である選択パラメーターは以下の通りである:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(WoottonおよびFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry, 1993)により決定される;WoottonおよびFederhen, 1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol., 266: 544-71も参照されたい)、または、短周期性の内部リピートからなるセグメント(ClaverieおよびStates(Computers and Chemistry, 1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、および(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、またはE−スコア(KarlinおよびAltschul, 1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない);好ましいE−スコア閾値の数値は0.5であるか、または好ましさが増える順に、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75、または1e−100である。 タマビジン1または2の変異体はまた、配列番号1または3の塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であって、タマビジン1または2と同様のビオチン結合活性および耐熱性を有するタンパク質であってもよい。 ここで、「ストリンジェントな条件下」とは、中程度または高程度にストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度にストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第3版,第6−7章,Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40−50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark's solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および例えば、約40℃−60℃、0.5−6×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。好ましくは中程度にストリンジェントな条件は、約50℃、6×SSCのハイブリダイゼーション条件(及び洗浄条件)を含む。高ストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。 一般に、こうした条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度および/または低い塩濃度でのハイブリダイゼーション(例えば、約65℃、6×SSCないし0.2×SSC、好ましくは6×SSC、より好ましくは2×SSC、最も好ましくは0.2×SSCのハイブリダイゼーション)および/または洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、およびおよそ65℃−68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液では、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mM クエン酸ナトリウムである)にSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaH2PO4、および1.25mM EDTA、pH7.4である)を代用することが可能であり、洗浄はハイブリダイゼーションが完了した後で15分間行う。 また、プローブに放射性物質を使用しない市販のハイブリダイゼーションキットを使用することもできる。具体的には、ECL direct labeling & detection system(Amersham社製)を使用したハイブリダイゼーション等が挙げられる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションとしては、例えば、キット中のhybridization bufferにBlocking試薬を5%(w/v)、NaClを0.5Mになるように加え、42℃で4時間行い、洗浄は、0.4% SDS、0.5xSSC中で、55℃で20分を二回、2xSSC中で室温、5分を一回行う、という条件が挙げられる。 タマビジン1または2の変異体のビオチン結合活性および耐熱性は、公知の手法のいずれかにより測定することが可能である。例えば、Kadaら(Biochim. Biophys. Acta., 1427: 44-48 (1999))に記載されるように蛍光ビオチンを用いる方法により測定してもよい。この方法は、ビオチン結合タンパク質のビオチン結合サイトに蛍光ビオチンが結合すると、蛍光ビオチンの蛍光強度が消失する性質を利用したアッセイ系である。あるいは、表面プラズモン共鳴を原理としたバイオセンサーなど、タンパク質とビオチンの結合を測定することが可能なセンサーを用いて、変異体タンパク質のビオチン結合活性を評価することもできる。耐熱性は、上記のビオチン結合活性を評価する際に、測定温度を変化させて測定することで評価することができる。 本発明の固体担体に連結させる耐熱性ビオチン結合性タンパク質は、ビオチンに対して高い親和性を有しており、その解離定数Kdは10-8 Mのオーダー以下、好ましくは10-9 Mのオーダー以下、10-10 Mのオーダー以下、10-11 Mのオーダー以下、10-12 Mのオーダー以下、10-13 Mのオーダー以下である。典型的には、その解離定数Kdは10-13〜10-9 Mのオーダーであってよい。 本発明の固体担体に連結させる耐熱性ビオチン結合性タンパク質は、公知の卵白由来のアビジンやストレプトアビジンと比較して高い耐熱性を有する。ここで、耐熱性とは、高温域でのタンパク質安定性および高温域におけるビオチン結合活性の双方をいう。 高温域でのタンパク質安定性は、SDS−PAGE分析においてタンパク質バンドの発色が室温の場合と比較して50%消失する温度として評価することができる。本発明の固体担体に連結させる耐熱性ビオチン結合性タンパク質について、SDS−PAGE分析においてタンパク質バンドの発色が室温の場合と比較して50%消失する温度は、71℃より高く、好ましくは75℃以上、77.5℃以上、80℃以上、82.5℃以上、85℃以上、87℃以上、であってよい。 高温域におけるビオチン結合活性は、ビオチンの結合が室温の場合と比較して50%減少する温度として評価することができる。本発明の固体担体に連結させる耐熱性タンパク質について、ビオチンの結合が室温の場合と比較して50%減少する温度は、73℃より高く、好ましくは75℃以上、78℃以上、80℃以上、82.5℃以上、85℃以上、であってよい。 本発明の固体担体に連結させる耐熱性ビオチン結合性タンパク質は、担子菌由来のタンパク質を精製することにより、または組換えタンパク質として得ることができる。 本発明において、耐熱性ビオチン結合性タンパク質を連結させる固体担体は、固体または不溶性材料(例えば、濾過、沈殿、磁性分離などにより反応混合物から分離することができる材料)である担体であれば特に限定されない。 固体担体を構成する材料は、セルロース、テフロンTM、ニトロセルロース、アガロース、デキストラン、キトサン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ナイロン、ポリジビニリデンジフルオライド、ラテックス、シリカ、ガラス、ガラス繊維、金、白金、銀、銅、鉄、ステンレススチール、フェライト、シリコンウエハ、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリ乳酸、樹脂、多糖類、タンパク(アルブミン等)、炭素またはそれらの組合せ、などを含むがこれらに限定されない。 固体担体の形状は、ビーズ、磁性ビーズ、薄膜、微細管、フィルター、プレート、マイクロプレート、カーボンナノチューブ、センサーチップなどを含むがこれらに限定されない。薄膜やプレートなどの平坦な固体担体は、当該技術分野で知られているように、ピット、溝、フィルター底部などを設けてもよい。 本発明の一態様において、磁性ビーズは、約25nm〜約1mmの範囲の球体直径を有しうる。好ましい態様では、磁性ビーズは約50nm〜約10μmの範囲の直径を有する。磁性ビーズのサイズは特定の適用に応じて選択されうる。いくらかの細菌スポアは約1μmのオーダーのサイズを有するので、かかるスポアを捕捉するための好ましいビーズは1μmよりも大きい直径を有する。 本発明の一態様において、セファロースなどの高架橋球形アガロースからなるビーズは、約24μm〜約165μmの範囲の直径を有しうる。好ましい態様では、高架橋球形アガロースビーズは約24μm〜約44μmの範囲の直径を有する。高架橋球形アガロースビーズのサイズは特定の適用に応じて選択されうる。 疎水性表面を有する固体担体の例には、Polysciences, Warrington, PA または Spherotech, Liberville, IL から市販されているものなどのポリスチレンラテックスビーズが挙げられる。 シリカ(SiO2)−処理またはシリカ(SiO2)ベースの固体担体の例には、Polysciences, Warrington, PAから入手可能な、超常磁性シリカビーズ等が挙げられ、これは、核酸(例えばDNA)を捕捉するために使用されうる。あるいは、Dynal Biotechから市販されているM−280等も使用されうる。 親水性表面を有する磁性ビーズは、増殖期の細菌細胞、核酸および他の成分を捕捉するために使用されうる。かかる磁性ビーズの例としては、Biomag(登録商標)カルボキシルの名称でPolysciences, Warrington, PAから市販されているビーズまたはBangs Laboratory, Inc., Fishers, IN の名称MC02N/2928を有するビーズが挙げられる。あるいは、Dynal Biotechから市販されているM−270等が使用されうる。 耐熱性ビオチン結合性タンパク質と固体担体の連結は、当業者に公知のタンパク質と固体担体のカップリング法を用いて行うことができる。例えば、固体担体表面をカルボキシル基が露出するよう修飾し、当該カルボキシル基とタンパク質のアミノ基を、架橋試薬である1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下でカップリング反応させることにより、タンパク質と固体担体を連結することができる。または、例えば、固体担体表面のカルボキシル基がN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)により活性エステル化された固体担体とタンパク質とを一級アミノ基を含まないpH6.5〜9の緩衝液中で混和することにより、固体担体表面のカルボキシル基とタンパク質のアミノ基を結びつけることができる。 あるいは、架橋試薬BS3(ビス[スルホスクシンイミジル]スベレート) やDSS(ジスクシンイミジルスベレート)を用いて、固体担体表面のアミノ基とタンパク質のアミノ基を、あるいは架橋試薬SPDP(N−スクシンイミジル 3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート)やGMBS(N−(4−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミド)を用いて、固体担体表面のアミノ基とタンパク質のチオール基を結びつけることができる。 本発明の固体担体に連結される耐熱性ビオチン結合性タンパク質は、高温域でのタンパク質安定性およびビオチン結合性を保持する。このため、本発明の固体担体は、従来最も使用されていたストレプトアビジンよりも高い温度で、ビオチン結合能を保持したまま処理することができる。本発明の固体担体は、70℃ないし90℃、好ましくは75℃ないし90℃、80℃ないし90℃、85℃ないし90℃、70℃ないし85℃、70℃ないし80℃、75℃ないし80℃、75℃ないし85℃、75℃ないし87.5℃、の加熱条件下に暴露する処理を受けた場合にも、ビオチン結合能を保持したまま使用することができる。このことは、例えば、より高い温度での核酸ハイブリッド形成やその後の洗浄を行うことができる、即ち、より高いストリンジェンシーでのハイブリダイゼーションが可能となることを意味する。本発明の固体担体の使用により、非特異的なハイブリッド形成を極力抑制することが可能なアッセイ系を構築することが可能である。あるいは、例えば、固体担体にタマビジンを連結させる際に、高温の処理が必須の方法を選択することも可能となる。さらには、タマビジンに耐熱性タンパク、酵素、または蛍光色素などを結合させる際、あるいは結合後ビオチン修飾物と反応させる際に、高温を用いて、より特異的な反応をさせることも可能である。 また、本発明の固体担体に連結する耐熱性ビオチン結合性タンパク質は、DNAに対する非特異結合がほとんどないため、当該技術分野に公知の卵白由来のアビジンにおいて問題となっているDNAに対する非特異結合性の問題を回避することもできる。 耐熱性ビオチン結合性タンパク質を用いた、ビオチンと連結した物質の分離、濃縮、精製、検出および/または捕捉方法 本発明は、ビオチンと連結した物質の分離、濃縮、捕捉、精製、および/または検出方法であって、以下の工程: 1)本発明のタマビジンを連結した固体担体と、ビオチンと連結した物質を接触させて、当該固体担体にビオチンと連結した物質を結合させ; 2)当該固体担体に結合しなかった夾雑物を洗浄し;そして 3)当該固体担体に結合したビオチンと連結した物質を回収することにより当該物質を分離、濃縮、捕捉もしくは精製し、および/または、当該物質を検出する;を含んでなる、前記方法を提供する。好ましい態様において、本発明の方法における上述した工程の少なくとも1つは70℃ないし90℃の加熱条件下で行う、より好ましくは、75℃ないし90℃、80℃ないし90℃、85℃ないし90℃、70℃ないし85℃、70℃ないし80℃、75℃ないし80℃、75℃ないし85℃、75℃ないし87.5℃、の加熱条件下で行うことを含む。 本発明の方法において、ビオチンと連結した物質とは、ビオチンと直接的または間接的に連結した物質の双方をいう。ビオチンと物質の直接的な連結は、共有結合による連結によって達成される。ビオチンと物質の間接的な連結は、ビオチンと共有結合により連結したリガンドに対して、さらに物質が、共有結合、イオン結合、水素結合、または疎水性相互作用により連結することによって達成される。間接的な連結の具体的な例には、ビオチン化抗体を用いる場合の抗原抗体反応による抗原分子の連結や、ビオチン化核酸プローブを用いる場合の核酸のハイブリダイゼーションによる相補的な核酸の連結などが挙げられる。 好ましい態様において、本発明の方法における少なくとも1つの工程は70℃ないし90℃の加熱条件下で行われるので、ビオチンと物質の間接的な連結は、本発明の方法において使用する温度条件下において連結が保持されることが好ましい。例えば、ビオチンと物質の間接的な連結として核酸のハイブリダイゼーションを用いる場合は、ハイブリダイズするヌクレオチドの長さは、少なくとも20ヌクレオチド以上、好ましくは、少なくとも25ヌクレオチド以上、30ヌクレオチド以上、35ヌクレオチド以上、40ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、100ヌクレオチド以上、であってよい。 本発明の方法において使用するタマビジンを連結された固体担体を構成する材質およびその形状は、分離、濃縮、精製、検出および/または捕捉したい物質の特性に応じて選択されうる。 また、本発明の方法の各工程に用いる、緩衝液の組成、適用する温度などは、分離したい物質の性質等を考慮して、当業者が適宜設定することができる。本発明の方法により分離、濃縮、捕捉、および/または精製した物質の検出方法は、当該物質の性質に応じて、当業者が適宜選択することができる。 本発明の方法は、これらに限定されるわけではないが、例えば、核酸の検出(特開2003−125800)、サンプルから核酸を単離するための装置および方法(ボートリンら、WO2004/005553)、核酸増幅法:ハイブリダイゼーションシグナル増幅法(HSAM)(ザンら、WO1998/004745)、あるいはウイルスやウイルスゲノムの濃縮等(玉造, 2004, BIO INDUSTRY, 21(8): 39-47)に倣った方法であってよい。あるいは、細胞や微生物の検出・捕捉・濃縮に用いることもできる。 例えば、体液中のウイルスを濃縮する場合、まず、検体を適当な緩衝液中で、ウイルス表層抗原に特異的に結合する抗体をビオチン化したものとインキュベートする。抗体のビオチン化は例えばPierce等から市販されているキットを用いて行うことができる。次に、本発明のタマビジンを連結した固体担体、例えば磁性ビーズ、を加え、混合する。最後に磁石を用いて、ウイルス−抗体−ビオチン−タマビジン−磁性ビーズの複合体を凝集させ、上清を除去し、適当な緩衝液で数回の洗浄を行った後、磁石をはずし、所望の緩衝液に懸濁し、ウイルスの濃縮を完了する。 あるいは、体液中のウイルスゲノムDNAを濃縮する場合、まず検体を、ウイルス粒子を破壊する適当な溶液中に入れ、ウイルスからゲノムDNAを抽出せしめる。さらに必要であれば、このゲノムを一本鎖化するステップを入れる。続いて、ウイルスゲノムの一部分に相補的な数十ないし数百塩基の一本鎖オリゴDNAをビオチン化したもの、あるいはウイルスゲノムの一部分に相補的な鎖を有する数十ないし数百塩基の二本鎖DNAをビオチン化し熱変性させたもの、とインキュベートし、ビオチン化オリゴDNAとウイルスゲノムをハイブリダイゼーションさせる。本発明のタマビジンを連結した固体担体を用いる場合、従来のアビジンまたはストレプトアビジンを連結した固体担体を用いる場合よりも高い温度、例えば、70℃ないし90℃、好ましくは75℃ないし90℃、80℃ないし90℃、85℃ないし90℃、70℃ないし85℃、70℃ないし80℃、または75℃ないし80℃、75℃ないし85℃、75℃ないし87.5℃、の温度範囲が適用可能である。ハイブリダイゼーション温度に上記のような高い温度を適用することにより、非特異的なDNAの結合が抑制され、所望のウイルスゲノム以外のDNAが極力混入しない、より特異性の高いウイルスゲノムの濃縮が可能となる。次に、本発明のタマビジンを連結した固体担体、例えば磁性ビーズ、を高温状態のサンプル(ビオチン化オリゴDNAが特異的にウイルスゲノムを捕捉している状態)に加え、混合する。最後に磁石を用いて、ウイルスゲノム−オリゴDNA−ビオチン−タマビジン−磁性ビーズの複合体を凝集させ、上清を除去し、適当な緩衝液で数回の洗浄を行った後、磁石をはずし、所望の緩衝液に懸濁し、ウイルスゲノムの濃縮を完了する。この後、ウイルスゲノムの検出は、例えばPCR(Saiki et al. (1985) Science 230: 1350-1354)等を用いて行うことができる。タマビジンは、従来のアビジン、ストレプトアビジンよりも、ビオチン非存在下における耐熱性が高く、しかもDNAに対する非特異的な結合がほとんどない。従って、例えば上記のような方法によるDNAの特異的な濃縮に好適である。 本発明の固体担体に連結されるタマビジンは、高温域でのタンパク質安定性およびビオチン結合性を保持する。このため、本発明の固体担体は、従来最も使用されていたストレプトアビジンよりも高い温度で、ビオチン結合能を保持したまま処理することができる。本発明の固体担体を使用することにより、高温域での処理を含むアッセイ系を構築することが可能となる。図1は、タマビジン2、ストレプトアビジンおよびアビジンのDNAに対する非特異結合試験の結果を示す写真(A)およびグラフ(B)である。図2は、タマビジン2の耐熱性(タンパク質安定性)をストレプトアビジンと比較して評価した結果を示す。図2Aは、SDS−PAGEの結果を示し、図2Bはそのタンパク質バンドの定量結果を示すグラフである。図3は、タマビジン2(A)、ストレプトアビジン(B)およびアビジン(C)の耐熱性(蛍光ビオチン結合活性)を示すグラフである。図4は、タマビジン2磁性ビーズ(A)、市販のストレプトアビジン磁性ビーズ(B)、ストレプトアビジン磁性ビーズ(C)、およびアビジン磁性ビーズ(D)の耐熱性(蛍光ビオチン結合活性)を示すグラフである。図5は、タマビジン2磁性ビーズ(AおよびC)、市販のストレプトアビジン磁性ビーズ(BおよびD)、の耐熱性(蛍光ビオチン結合活性)を示すグラフである。図6は、タマビジン2セファロースビーズの耐熱性(蛍光ビオチン結合活性)を示すグラフである。図7は、タマビジン1の蛍光ビオチン結合活性を示すグラフである。 実施例1:タマビジン2(TM2) 1−1.タマビジン2の特徴づけ タマビジン2の大腸菌発現と精製 タマビジン2(TM2)をコードするDNA(配列番号3)を発現ベクターpTrc99Aに組込んで大腸菌で発現させると、発現したTM2の殆どが可溶性画分に蓄積し、発現量も多い(WO 02/072817)。TM2タンパク質を、組換え大腸菌から、Hofmannら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4666-4668, 1980)の方法に従ってイミノビオチンアガロース(Sigma)を充填したカラムを用いて精製した。具体的には、WO 02/072817に記載されている大腸菌に対して、1mM IPTG、37℃で5時間発現誘導をかけた後集菌し、ペレットを50mM Caps pH11.0, 50mM NaClに懸濁し、超音波によって菌体を破壊した。遠心後の上清を、50mM Caps pH11.0, 50mM NaClで平衡化した自作のイミノビオチンカラム(高さ3cm、体積0.5ml)にアプライした。5mlの50mM Caps pH11.0, 500mM NaClで洗浄後、1.5−2mlの50mM NH4OAc pH4.0で溶出した。精製タンパク質の収量は50mLの培養液からおよそ1mgであった。 質量分析 タマビジン2を、10mg/mlの濃度で、0.1%TFA,50%MeCN飽和溶液に溶解し、このサンプル溶液をZipTip C4(Millipore)にて精製を行い、MALDIプレートに直接アプライした。風乾後、マトリックス溶液(シナピン酸)を重層した。さらに風乾後、レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOFMS)AXIMA−CFR(島津製作所)に搭載し、質量分析を行った(引き出し電圧:20kV、飛行モード:Linear、検出イオン:Positive)。その結果、m/z=15146.3(単量体に相当)、30335.0(二量体に相当)、60932.0(四量体に相当)が観測された。さらに、ビオチン結合型のタマビジン2の場合、四量体に相当するピークが大きくなった。この結果から、タマビジン2は4量体で、質量60932と判断した。タンパク質のN末端配列を解析したところ、翻訳開始メチオニンの次のセリンがN末端であることが判明した。遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス社製)を用いて、タマビジン2の開始メチオニンを除く、140アミノ酸からなるポリペプチドの等電点を計算すると、7.36であった。 分子吸光係数 タマビジン2の分子吸光係数は理論値として、A280=41750M-1cm-1subunit-1(0.25mg/mLで0.68)である。実際にタマビジン2を精製し、酢酸アンモニウムに透析したサンプルを、凍結乾燥させ(酢酸アンモニウムは完全昇華)、秤量したところ3mgであった。このサンプルを20mM KPi(pH6.5)に溶解し、濃度を0.25 mg/mLに調製して、A280を測定したところ、0.67の実測値を得た。これは理論値の98%に相当した。これにより、A280を測定することでタマビジン濃度を簡便に測定することが可能となった。 蛍光ビオチンによる活性測定 蛍光ビオチンによるタマビジン2のビオチン結合活性の測定を、Kadaら(Biochim. Biophys. Acta., 1427: 44-48, (1999))の方法に従って行った。200μLアッセイバッファー(50mM NaH2PO4、100mM NaCl、1mM EDTA(pH7.5))中に、精製したTM2が0pmolから486pmolまで段階的に含まれるように調整をした。この溶液に20pmol/μL蛍光ビオチン溶液(biotin-4-fluorescein: Molecular Probe)50μL(1nmol)を混和し、室温で10分間放置後、Las−3000(FUJIFILM)を用いて蛍光強度を測定した。その結果、1nmolの蛍光ビオチンに0.274nmolのTM2が結合した。すなわち、1molのタマビジンに3.6molの蛍光ビオチンが結合した。このことから、タマビジン1分子に蛍光ビオチン4分子(サブユニット当たり1分子)結合することが示された。同様にストレプトアビジンは、1molに対して3.4molの蛍光ビオチンに結合した。 1−2.タマビジン2(TM2)の非特異結合性 ウサギ抗TM2抗体の精製 大腸菌で発現させたタマビジン2(TM2)タンパク質をイミノビオチンカラムで精製したもの、および、これをさらにゲル精製したものを抗原に用い、二種類の抗体を作成した。アルカリフォスファターゼ標識抗IgG抗体を用いたウェスタン法による検出感度は、精製組換えタマビジン2標品に対して、およそ0.5ngであった。以上の結果から特異性およびタイターともに高い抗体が完成したと結論した。なお抗タマビジン2抗体−タマビジン1の交差反応は、低いものの検出された(本来の抗原に対して1/20程度)。 抗TM2抗体(イミノビオチンカラム精製のみを行った抗原から作成した抗体)は、さらに以下のようにして精製した。TM2 40μgを15%アクリルアミドゲル 2枚を用いてSDS−PAGEによって分離し、タンパクをニトロセルロース膜(BIO−RAD)2枚に転写した。膜を3% BSAを含むTBS緩衝液にて室温で1時間振とうさせることによりブロッキングを行った。続いて、室温で一晩、抗TM2抗体(イミノビオチンカラム精製のみを行った抗原から作成した抗体、1000倍希釈)と反応させた後、TM2が転写されている部位を切り取り、溶出緩衝液(0.2M グリシン、 1mM EDTA pH2.8)中で室温20分間振とうさせた。溶出緩衝液の1/10容量の1M トリス溶液で中和後、同量の10×TBS緩衝液を加え4℃で保存した。 DNAに対する非特異結合性 タマビジン2(TM2)のDNAに対する非特異結合試験 TM2のDNAに対する非特異結合性を解析した。2×SSC緩衝液で10μgから0.3μgまで段階希釈したサケ精子DNAをアルカリ変性させ、Bio−Dot SF(BIO−RAD)を用いて、Hybond N+膜(Amersham Biosceinces)に吸着させた。5×デンハルト液(0.1%BSA、0.1%フィコール、0.1%ポロビニルプロリドン)で膜をブロッキングした後、25μg/mLのTM2、ストレプトアビジン、およびアビジン溶液に室温で90分間浸した。その後、膜をTTBS緩衝液(0.05%Tween20を含むTBS緩衝液)によって、室温で5分間3回洗浄した。0.5%スキムミルク、0.01%Tween20を含むTBS緩衝液で1時間、膜をブロッキングした。1次抗体として、TM2には前述した方法で精製したウサギ抗TM2抗体を、ストレプトアビジンにはウサギ抗ストレプトアビジン抗体(SIGMA)を、アビジンにはウサギ抗アビジン抗体(Abcam)を、抗体価が同等になるように希釈して用いた。1次抗体との抗原抗体反応は、1晩室温で行った。膜をTTBS緩衝液によって室温で5分間3回洗浄後、2次抗体として、アルカリホスファターゼ標識抗ウサギIgG抗体(BIO−RAD)(10000倍希釈)を用い、室温で1時間反応させた。膜をTTBS緩衝液によって室温で5分間3回洗浄後、Alkaline Phosphatase substrate kit II、vector Black(フナコシ)にて発色させ、Las−3000(FUJIFILM)で定量化した。その結果、アビジンはDNAの濃度依存的に染色強度が増加したのに対して、TM2、ストレプトアビジンの染色強度はDNA濃度に強い影響を受けなかった(図1A、B)。この結果から、タマビジン2のDNAに対する非特異活性はほとんどなく、ストレプトアビジンと同等であることが示された。これはタマビジン2のアビジンに対する優位性を示すものである。 1−3.タマビジン2とビオチンとの相互作用解析 ビアコアバイオセンサーを用いたタマビジン2(TM2)とビオチンとの相互作用のカイネティックス分析 高精製度のBSA (Sigma)2mgとNHS−ビオチン(Pierce)1mgを1mlの50mM ホウ酸ナトリウム pH8.0中で溶解し、4℃で2時間インキュベーションした。NHS−ビオチン(EZ-Link NHS-LC-LC-Biotin)はあらかじめ少量のDMSOに溶解してから加えた。これを透析チューブ(MWCO 6−8,000)に入れ、50mM 炭酸ナトリウム pH6.7に対して4℃で一晩透析した。こうして作成したビオチン−BSAコンジュゲート(MW 67kDa,30μM)をビアコア(登録商標)バイオセンサーのリガンド(センサーチップへ貼り付ける物質)とした。一方、アナライト(流路系に流す物質)として組換えタマビジン2を調製し、Biacore(登録商標)3000(表面プラズモン共鳴を原理としたバイオセンサー、Biacore Inc.)による分子間相互作用の分析を行った。ビオチン−BSA、およびネガティブコントロールとしたBSAは、アミンカップリング法によってCM5センサーチップに固定化した。固定化量は、200RU程度になる様に調節した。BSAを固定化したチップは、フローセル1と3に、ビオチン−BSAを固体化したチップは、フローセル2と4に配置した。タマビジン2は、フローセル1と2に、ストレプトアビジンは、フローセル3と4に、流速20μl/minで2分間、ランニングバッファー[10mM HEPES pH7.4,150mM NaCl,3mM EDTA,0.005% Surfactantat20(Biacore Inc.)]中にロードした。その後、60分間、サンプルの解離をモニターした。なお、結合したタマビジン2、ならびにストレプトアビジンを解離させることは不可能であったため、測定では再生操作を行わず、低濃度側から7段階の測定を行った(3.125、6.25、12.5、25、50、100、および200nM)。BSAのデータはレファレンスとして、BSA−ビオチンのデータから差し引いた。測定は25℃で行った。得られたセンサーグラムから、解析ソフトウェア BIAevaluation ver.4.1を用いて、1:1結合モデルを用いて、反応速度論的解析を行い、結合速度定数(ka)と解離速度定数(kd)を計算した。解離定数(Kd) は、kd/kaから求めた。 なお、再生操作を行わない場合、各濃度の測定を行うごとにRmax(アナライトの最大結合量)が減少するが、解析時にはRmaxをローカルフィッティングして濃度ごとに算出を行った。また、1:1結合モデルに近似できたアナライト濃度のデータのみを採用した。 組換えタマビジン2とビオチンとのBiacore(登録商標)3000(表面プラズモン共鳴を原理としたバイオセンサー)による分子間相互作用のカイネティックス分析結果は表1の通りである。 得られたタマビジン2の解離定数は、10-12 Mのオーダーで、今回我々の測定したストレプトアビジンの解離定数と同じオーダーであった。この結果によって、タマビジン2は、アビジン、ストレプトアビジンに次ぐ、ビオチンと非常に高い親和性をもつタンパク質であることが明らかとなった。タマビジン2は、現在広く応用されているアビジン−ビオチン技術に応用が可能であると考えられる。 1−4.タマビジン2の耐熱性 タマビジン2(TM2)の耐熱性を、ストレプトアビジンまたはアビジンとの比較で解析した。 タンパクの安定性 0.2μg/μL TM2、および0.2μg/μL ストレプトアビジンを10μL(2μg)ずつ室温、50、60、70、80、90、99℃で20分間加熱した。続いて、15000rpmで10分間遠心し、上清の可溶性タンパクを等量の2×SDS サンプルバッファー(100mM Tris−HCl pH 6.8,12% 2−メルカプトエタノール,2% SDS,20% グリセロール)と懸濁し、95℃で10分間加熱後、SDS−PAGEを行った。タンパクバンドはCBB染色によって検出した。Las−3000(FUJIFILM)を用いて定量マーカー(LMW ELECTROPHORESIS CALIBRATION KIT; Pharmacia Biotech)をもとに検量線を作成し、タンパク質バンドを定量化した。SDS−PAGEの結果を図2Aに、タンパク質バンドの定量結果を図2Bに示す。50%のタンパク質が消失する温度は、ストレプトアビジンが71℃であるのに対し、タマビジン2は87℃であった。この結果、タマビジン2は、ストレプトアビジンと比較して耐熱性が15℃以上高いことが明らかとなった。また、タマビジン2はビオチンを加えると、耐熱性が極めて強くなり、95℃処理後も、4量体が解離しなくなった。 ビオチン結合活性 ビオチン結合性タンパク質のビオチン結合サイトに蛍光ビオチンが結合すると、蛍光ビオチンの蛍光強度が消失する性質を利用して、タマビジン2の高温度条件下におけるビオチン結合能を、ストレプトアビジン、アビジンと比較した。 約0.25μg/μLのTM2とストレプトアビジンを、室温、50、60、70、80、90℃で20分間加熱後、150μL アッセイバッファー(50mM NaH2PO4、100mM NaCl、1mM EDTA(pH7.5))中に0μLから27μLの加熱処理したTM2、またはストレプトアビジンを段階的に含む溶液を調製した。この溶液に5pmol/μL蛍光ビオチン溶液(ビオチン−4−フルオレセイン:Molecular Probe)50μL(250pmol)を混和し、室温で20分間放置後、Las−3000(FUJIFILM)を用いて蛍光強度を測定した。 ビオチン結合性タンパク質の耐熱性試験は以下の通りに実施した。約0.25μg/μLのビオチン結合性タンパク質を、室温、50、60、70、80、90℃で20分間加熱後、150μL アッセイバッファー中に0μLから12μLの加熱したビオチン結合性タンパク質を段階的に含む溶液に調製した。この溶液に2pmol/μL蛍光ビオチン溶液 50μL(100pmol)を混和し、室温で20分間放置後、Infinite M200(TECAN)を用いて蛍光強度をEx=460nm、Em=525nmにて測定した。 結果を図3に示す。その結果、TM2における蛍光ビオチンとの結合は、70℃以下では室温と変化はみられず、80℃で82%の活性を保持していた。一方、ストレプトアビジンと蛍光ビオチンとの結合活性は70℃で40%、80℃で80%減少した。また、アビジンと蛍光ビオチンとの結合活性は70℃で10%、80℃で70%減少した。蛍光強度の減少割合が、加熱していないサンプルの50%になる温度は、TM2は85℃であるのに対し、ストレプトアビジンは73℃、アビジンは78℃であった。 1−5.タマビジン2固定化担体の耐熱性 タマビジン2磁性ビーズの作成 カルボキシル基で表面をコートされた磁性ビーズ(Dynabeads M-270 Carboxylic Acid, Dynal社)300μlを0.01N 水酸化ナトリウム 300μlで10分間洗浄後、さらに超純水 300μlで10分間3回洗浄した。洗浄済みの磁性ビーズに、冷超純水で溶解した1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・ハイドロクロライド(EDC)(PIERCE社)を最終濃度0.2Mになるように添加し30分間、室温で振とうした。その後、冷超純水 300μl、続いて50mM MES緩衝液(pH5.0)300μlで磁性ビーズを洗浄し、50mM MES緩衝液(pH5.0)に置換した0.6mg/ml TM2を300μl(180μg)混和した。室温で30分間振とうさせることにより、共有結合にてTM2と磁性ビーズを結合させた。磁石で磁性ビーズを回収し、上清を除去した。次に50mM トリス緩衝液(pH 7.0)300μlでビーズの未反応カルボキシル基を消去後、0.5% BSA、0.1% Tween20を含むPBS緩衝液300μlで磁性ビーズをブロッキングした。PBS緩衝液 300μlで磁性ビーズを懸濁し、磁性ビーズを完成させた。ストレプトアビジンおよびアビジンについても同様に磁性ビーズを作成した。 タマビジン2磁性ビーズの加熱試験 (i)耐熱性 蛍光ビオチンを用いて、TM2磁性ビーズの耐熱性を、上記で作製したストレプトアビジン磁性ビーズおよびアビジン磁性ビーズ、ならびに、市販のストレプトアビジン磁性ビーズ(Dynabeads M-270 Streptavidin、Dynal)と比較した。 各磁性ビーズをPBS緩衝液で洗浄後、室温、70、75、80、85、90℃で20分間加熱した。150μL アッセイバッファー中に、加熱した各磁性ビーズを0μLから16μLまで段階的に含む溶液を調製した。この溶液に1pmol/μL ビオチン−4−フルオレセイン溶液 50μL(50pmol)を混和し、室温で20分間放置後、Infinite M200を用いて上清の蛍光強度をEx=460nm、Em=525nmにて測定した。 結果を図4に示す。その結果、TM2磁性ビーズにおいて、蛍光ビオチンとの結合は75℃以下では室温と変化がみられず、80℃で73%、85℃で64%の活性があった。ストレプトアビジン磁性ビーズは80℃で70%失活し、市販のストレプトアビジン磁性ビーズ(Dynal)は80℃で90%失活した。また、アビジン磁性ビーズは80℃で35%、85℃で55%失活した。蛍光強度の減少割合が、加熱してないサンプルの50%になる温度は、TM2は87℃であるのに対し、ストレプトアビジンは78℃、ストレプトアビジン(Dynal)は72℃、アビジンは84℃であった。 (ii)高温域におけるビオチン結合活性ビオチン結合性タンパク質のビオチン結合サイトに蛍光ビオチンが結合すると、蛍光ビオチンの蛍光強度が消失する性質を利用して、TM2磁性ビーズの高温度条件下におけるビオチン結合能を、市販のストレプトアビジン磁性ビーズと比較した。 TM2磁性ビーズは、カルボキシル基で表面をコートされた磁性ビーズ(Dynabeads M-270 Carboxylic Acid, Dynal社)にTM2を共有結合させることによって作成した。また、市販のストレプトアビジン磁性ビーズは、Dynabeads M-270 Streptavidin(Dynal社)を使用した。TM2磁性ビーズは2×109ビーズ/30mg/mLであり磁性ビーズ1mg当り333pmolの蛍光ビオチンが結合する。また、市販のストレプトアビジン磁性ビーズは6.7×108ビーズ/10mg/mLであり磁性ビーズ1mg当り625pmolの蛍光ビオチンが結合する。 TM2磁性ビーズ、および市販のストレプトアビジン磁性ビーズ300μLをPBS緩衝液300μLで2回洗浄し、再びPBS緩衝液300μL中に懸濁した。それぞれの磁性ビーズを42μLずつ7本に分注した。1pmol/μL蛍光ビオチン溶液(ビオチン−4−フルオレセイン:Molecular Probe社)50μL(50pmol)をアッセイバッファー(50mM NaH2PO4、100mM NaCl、1mM EDTA(pH7.5))150、149、148、146、142、140、134μLにそれぞれ添加し、室温、50、60、65、70、80、95℃で10分間プレインキュベーションした。続いて、両磁性ビーズを室温、50、60、65、70、80、95℃で5分間プレインキュベーション後、1、2、4、8、10、16μLを50pmol 蛍光ビオチン溶液に添加して最終容積200μLとし、それらを各温度で20分間加熱し続けた。この間、ピペッティングにより3回混合液を懸濁した。その後、敏速に磁石で磁性ビーズを回収し、上清の蛍光強度をInfinite M200(TECAN)を用いてEx=460nm、Em=525nmにて測定した(実験1)。実験2として、実験1と同様に、室温、70、75、80、85、90℃を解析した。 実験1の結果を図5AおよびBに、実験2の結果を図5CおよびDに示す。その結果、TM2磁性ビーズにおいて、蛍光ビオチンとの結合は70℃以下では室温と変化がみられず、80℃、85℃ではそれぞれ、75%、62%の活性を保持していた(図5A)。一方、市販のストレプトアビジン磁性ビーズにおいては、蛍光ビオチンとの結合は、80℃では60%から80%消失した(図5B)。蛍光強度の減少割合が加熱していないサンプルの50%になる温度は、ストレプトアビジン(Dynal)が77.5℃であるのに対し、タマビジン2は87.5℃であった。 TM2セファロースビーズの作成 表面のカルボキシル基がN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)により活性エステル化されたセファロースビーズ (直径34μm)HiTrap NHS-activated HP(GEヘルスケア社)1mLを冷1mM 塩酸 10mlで洗浄後、さらに冷超純水 1mlで洗浄した。このセファロースビーズに、予め0.5M 塩化ナトリウムを含む0.2M 炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH8.3)中で透析をした1mg/ml TM2を1ml混和した。室温で3時間振とうさせることによりTM2とセファロースビーズを結合させた。次に50mM トリス緩衝液(pH8.0)5mlにて未反応の活性基を消去後、0.5% BSA、0.05% Tween 20を含むPBS緩衝液 5mlでセファロースビーズをブロッキングした。PBS緩衝液 1mlでセファロースビーズを懸濁しTM2セファロースビーズを完成させた。 TM2セファロースビーズの加熱試験 蛍光ビオチンを用いて、TM2セファロースビーズの耐熱性を検証した。TM2セファロースビーズをPBS緩衝液で洗浄後、室温、70、75、80、85、90℃で20分間加熱した。150μL アッセイバッファー中に、加熱したセファロースビーズを0μLから16μLまで段階的に含む溶液を調整した。次に3pmols/μl ビオチン−4−フルオレセイン溶液 50μl(150pmol)を混和し、室温で20分間放置後、Infinite M200を用いて上清の蛍光強度をEx=460nm、Em=525nmにて測定した。 その結果、蛍光ビオチンとの結合は80℃以下では室温と変化がみられず、85℃で64%の活性があった。また、蛍光強度の減少割合が、加熱してないサンプルの50%になる温度は86℃であり、TM2を固定化した磁性ビーズと同等の耐熱性を示した(図6)。 実施例2:タマビジン1(TM1) 2−1.タマビジン1の特徴づけ タマビジン1の大腸菌発現と精製 タマビジン1をコードするDNA(配列番号1)を、発現ベクターpTrc99Aに組込んで大腸菌で発現させると、発現したタマビジン1タンパク質の殆どが可溶性画分に蓄積し、その発現量はタマビジン2と同じレベルに多かった。そこで組換えタマビジン1に関して、以下のように精製を試みた。発現誘導後、集菌した大腸菌のペレットを20 mM Kpi pH7.0に懸濁し、超音波によって菌体を破壊した。15000rpmで10分間の遠心後の上清を、70℃で10分間処理した。熱処理後さらに遠心分離操作を行い、その上清を、50mM Tris−HCl pH7.0、50mM NaClに置換した。このサンプルを同バッファーで平衡化したイオン交換カラムMonoQ HR5/5 (Phaemacia)にアプライし、組換えタマビジン1をカラム素通り画分として回収した。タンパク質の回収量は培養液50mL当たりおよそ1mgであった。 質量分析 タマビジン1の質量分析を実施例1と同様に行った。その結果、m/z=15961.6(単量体に相当)、31922.5(二量体に相当)が観測された。単量体の質量は、タマビジン1をSDS−ポリアクリルアミド電気泳動した後の分子量に良く一致した。一方、タマビジン1にビオチンを過剰量添加し、インキュベートした後のサンプルのSDS−ポリアクリルアミド電気泳動像と、同じ処理を施したタマビジン2の泳動像との比較分析から、タマビジン1は4量体であることが示唆された。遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス社製)を用いて、全長143アミノ酸からなるタマビジン1の等電点を計算すると、6.23であった。 ビオチンとの結合性上記70℃熱処理後の遠心後上清のタマビジン1の蛍光ビオチン結合活性を測定した。方法はタマビジン2の場合に準じた。蛍光ビオチンとのインキュベーションは室温で行った。結果を図7に示す。タマビジン1は、70℃処理後においても蛍光ビオチンと結合することが明らかとなった。 2−2.タマビジン1の耐熱性 タンパク質の安定性 0.2μg/μLの濃度の精製タマビジン1を10μL(2μg)ずつ室温、50、60、70、80、90、99℃で20分間加熱した。続いて、15000rpmで10分間遠心し、上清の可溶性タンパクを等量の2×SDS サンプルバッファー(100mM Tris−HCl pH6.8,12% 2−メルカプトエタノール,2% SDS,20% グリセロール)と懸濁し、95℃で10分間加熱後、SDS−PAGEを行った。タンパクバンドはCBB染色によって検出した。Las−3000(FUJIFILM)を用いて定量マーカー(LMW ELECTROPHORESIS CALIBRATION KIT; Pharmacia Biotech)をもとに検量線を作成し、タンパク質バンドを定量化した。その結果、タマビジン1の50%のタンパク質が消失する温度は、76℃であった。この結果、タマビジン1は、上述のストレプトアビジンと比較して耐熱性が5℃高いことが明らかとなった。また、タマビジン1はビオチンを加えると、耐熱性が極めて強くなり、95℃処理後も、4量体が解離しなくなった。 本発明の固体担体に連結されるタマビジンは、高温域でのタンパク質安定性およびビオチン結合性を保持するため、本発明の固体担体は、高温域での処理を含むアッセイ系に利用可能である。高温域での処理を含むアッセイ系は、特異性の高い物質の分離、濃縮、精製、検出および/または捕捉を可能にするため、一連のプロトコルの迅速化に貢献する。また、タマビジンは、卵白由来のアビジンやストレプトアビジンと比較して生産効率が高いため、本発明の固体担体は、市販のビオチン結合性タンパク質を連結した固体担体と比較してコスト面でも有利である。 固体担体であって、以下: a)配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質; b)配列番号4のアミノ酸配列と、少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質;および c)配列番号3の塩基配列の相補鎖に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質;からなる群より選択される、80℃ないし90℃の加熱処理後もビオチン結合能を保持する、および/または、80℃ないし90℃の加熱条件下においてもビオチン結合能を有する耐熱性ビオチン結合性タンパク質を連結させた、前記固体担体。 固体担体が、セルロース、テフロン、ニトロセルロース、アガロース、デキストラン、キトサン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ナイロン、ポリジビニリデンジフルオライド、ラテックス、シリカ、ガラス、ガラス繊維、金、白金、銀、銅、鉄、ステンレススチール、フェライト、シリコンウエハ、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリ乳酸、樹脂、多糖類、タンパク(アルブミン等)、炭素およびそれらの組合せ、からなる群より選択される材料で主に構成される、請求項1に記載の固体担体。 固体担体が、ビーズ、磁性ビーズ、薄膜、微細管、フィルター、プレート、マイクロプレート、カーボンナノチューブおよびセンサーチップからなる群より選択される、請求項1に記載の固体担体。 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体担体の使用であって、80℃ないし90℃の加熱条件下に暴露することを特徴とする、前記使用。 ビオチンと連結した物質の分離、濃縮、捕捉、精製、および/または検出方法であって、以下の工程: 1)請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体担体とビオチンと連結した物質を接触させて、当該固体担体にビオチンと連結した物質を結合させ; 2)当該固体担体に結合しなかった夾雑物を洗浄し;そして 3)当該固体担体に結合したビオチンと連結した物質を回収することにより当該物質を分離、濃縮、捕捉もしくは精製し、および/または、当該物質を検出する;を含んでなり、ここで、前記工程の少なくとも1つは80℃〜90℃の加熱条件下で行う、前記方法。 加熱条件が、80℃〜85℃である、請求項5に記載の方法。 ビオチンと連結した物質が、ビオチンと連結した核酸である、請求項5に記載の方法。 ビオチンと連結した物質の分離、濃縮、捕捉、精製、および/または検出方法であって、以下の工程: 1)請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体担体とビオチンと連結した物質を接触させて、当該固体担体にビオチンと連結した物質を結合させ; 2)当該固体担体に結合しなかった夾雑物を洗浄し;そして 3)当該固体担体に結合したビオチンと連結した物質を回収することにより当該物質を分離、濃縮、捕捉もしくは精製し、および/または、当該物質を検出する;を含んでなり、ここで、前記工程の少なくとも1)の前に、当該固体担体を80℃〜90℃の加熱条件下で加熱することを含む、前記方法。配列表