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タイトル:特許公報(B2)_植物病害に対する防除能を有する微生物、及び該微生物を用いた植物病害の防除剤
出願番号:2008543079
年次:2012
IPC分類:C12N 1/20,A01N 63/00,C12R 1/38


特許情報キャッシュ

前田 光紀 JP 4883814 特許公報(B2) 20111216 2008543079 20071106 植物病害に対する防除能を有する微生物、及び該微生物を用いた植物病害の防除剤 日本曹達株式会社 000004307 廣田 雅紀 100107984 前田 光紀 JP 2006302263 20061108 20120222 C12N 1/20 20060101AFI20120202BHJP A01N 63/00 20060101ALI20120202BHJP C12R 1/38 20060101ALN20120202BHJP JPC12N1/20 AC12N1/20 EA01N63/00 FC12N1/20 AC12R1:38C12N1/20 EC12R1:38 C12N 1/20 CA/BIOSIS(STN) PubMed COROLER,L. et al.,Pseudomonas rhodesiae sp. nov., a New Species Isolated from Natural Mineral Waters.,System. Appl. Microbiol.,1996年,Vol.19,pp.600-7 Pseudomonas rhodesiae Coroler et al. 1997,JCM Catalogue[online],[retrieved on 2011-7-21],URL,http://www.jcm.riken.go.jp/cgi-bin/jcm/jcm_number?JCM=11940 KANG,S.H. et al.,Two bacterial entophytes eliciting both plant growth promotion and plant defense on pepper (Capsicum annuum L.).,J. Microbiol. Biotechnol.,2007年 1月,Vol.17, No.1,pp.96-103 7 IPOD FERM BP-10912 JP2007071531 20071106 WO2008056653 20080515 26 20090424 幸田 俊希 本発明は、植物病害に対する防除能を有する微生物、該微生物の菌体を含有する植物病害の防除剤、及び、該微生物を用いた植物病害の防除方法に関する。 本出願は、2006年11月8日に出願された日本国特許出願第2006−302263号に基づく優先権を主張して行うものである。 従来から、各種農園芸作物の細菌性病害に対しては、無機及び有機銅剤や、カスガマイシン、ストレプトマイシン、オキシテトラサイクリン等の抗生物質が使用されている。また、合成抗細菌剤としてオキソリニック酸が1989年に登録され、作物増産に大きく寄与してきた。しかし、無機及び有機銅剤は、農園芸作物に対し薬害を発生させ易く、使用時期や使用作物に制限がある。また、抗生物質は使用を続けていると、その抗生物質に対して病原菌が耐性を持つようになるなどの問題がある。オキソリニック酸に関しても近年、耐性菌が発現し、使用制限が設けられている。 そこで、薬害や耐性菌の問題を克服するために、従来の合成殺菌剤に代えて、あるいは併用する手段として、生物農薬への関心が高まっている。生物農薬は、従来の合成殺菌剤に比べて、環境汚染が極めて少なく、生態系に調和し、かつ防除効果も優れているなどの利点を有している。農園芸作物の細菌性病害の防除に用いられる微生物農薬として、例えば、葉菜類や根菜類の軟腐病の防除に特に用いられている非病原性エルビニア カロトボーラ(Erwinia carotovora)や、イネの種子伝染性の細菌性病害であるもみ枯細菌病や苗立枯細菌病の防除に特に用いられているシュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)CAB−02やトリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)などが知られており、該微生物を含有する農園芸用殺菌剤組成物が開発・上市されている。また、特許文献1には、レタスの腐敗病菌であるシュードモナス チコリ(Pseudomonas cichorii)に対し、防除効果を有するシュードモナス フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)G7090株が記載されている。 しかし、微生物農薬は一般的に、対象となる植物病害が限られており、他の植物病害に対してはあまり効果が期待できないことが多い。例えば、非病原性エルビニア カロトボーラは葉菜・根菜類の軟腐病、シュードモナス エスピー CAB−02やトリコデルマ アトロビリデはイネ病害、シュードモナス フルオレセンスはレタスの腐敗病、と対象病害が限られており、他の細菌性病害に対しては、効果がほとんど期待できない。また、非病原性エルビニア カロトボーラは、非病原性エルビニア カロトボーラが産生するバクテリオシンという抗菌性タンパク質によって、病原性エルビニア カロトボーラを防除するものであるため、該抗菌性タンパク質に対する抵抗性の発現が危惧される(例えば非特許文献1)。特開2001−247423号公報拮抗微生物による作物病害の生物防除 III−5 非病原Erwinia carotovoraによる野菜軟腐病の防除、クミアイ化学工業株式会社、65−76:2003 本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、環境に対する負荷が少なく、抵抗性の病原菌の発生する可能性が極めて低く、かつ、多種の植物病害(特に葉菜・根菜類の軟腐病、腐敗病、かんきつのかいよう病、モモの穿孔細菌病など)に対して優れた防除能を有する微生物、該微生物の菌体を含有する植物病害防除剤や、該植物病害防除剤を、植物及び/又は該植物の栽培土壌に処理する植物病害の防除方法を提供することにある。 本発明者らは、上記の課題を解決するため、レタスに常在する微生物に着目し、植物病害に対する防除能を有する微生物の検索を行った。その結果、レタス軟腐病に対して高い防除効果を有する微生物を見い出した。この微生物の菌学的性質及び16SrDNA遺伝子の塩基配列を調べたところ、シュードモナス ロデシア(Pseudomonas rhodesiae)の新株であると推定された。本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。 すなわち本発明は、(1)植物病害に対する防除能を有するシュードモナス ロデシア(Pseudomonas rhodesiae)、(2)植物病害に対する防除能を有するシュードモナス ロデシア FERM BP−10912、(3)シュードモナス ロデシア FERM BP−10912の変異株であって、かつ、植物病害に対する防除能を有する変異株、(4)植物病害が、かいよう病、穿孔細菌病、軟腐病、斑点細菌病、黒斑細菌病、青枯病、褐斑細菌病、茎えそ細菌病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、白葉枯病、腐敗病、及び黒腐病から選ばれる1種又は2種以上の植物の病害である(1)〜(3)のいずれかに記載のシュードモナス ロデシア、シュードモナス ロデシア FERM BP−10912、又はシュードモナス ロデシア FERM BP−10912の変異株、(5)植物病害が、Xanthomonas 属、Erwinia属、Pseudomonas属、Ralstonia属及びBurkholderia属から選ばれる1種又は2種以上の病原菌によって発症する植物の病害である(1)〜(3)のいずれかに記載のシュードモナス ロデシア、シュードモナス ロデシア BP−10912又はシュードモナス ロデシア BP−10912の変異株に関する。 また、本発明は、(6)植物病害に対する防除能を有するシュードモナス ロデシアの菌体を含有する植物病害の防除剤や、(7)シュードモナス ロデシアの菌体が、上記(2)に記載のシュードモナス ロデシア FERM BP−10912の菌体、及び上記(3)に記載のシュードモナス ロデシア FERM BP−10912の変異株の菌体からなる群から選ばれる1種又は2種以上の菌体である上記(6)に記載の植物病害の防除剤や、(8)植物病害が、かいよう病、穿孔細菌病、軟腐病、斑点細菌病、黒斑細菌病、青枯病、褐斑細菌病、茎えそ細菌病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、白葉枯病、腐敗病、及び黒腐病から選ばれる1種又は2種以上の植物の病害である上記(6)に記載の植物病害の防除剤に関する。 さらに、本発明は、(9)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のシュードモナス ロデシア、シュードモナス ロデシア FERM BP−10912又はシュードモナス ロデシア FERM BP−10912の変異株を、植物及び/又は該植物の栽培土壌に処理することを特徴とする植物病害の防除方法に関する。 本発明の植物病害の防除剤及び防除方法は、環境に対する負荷が少なく、抵抗性の病原菌の発生する可能性が極めて低く、かつ、多種の植物病害に対して優れた防除能をより長期間有する。また、植物病害の中でも特に葉菜・根菜類の軟腐病、腐敗病、黒腐病、かんきつのかいよう病、モモの穿孔細菌病などに対して優れた効果を発揮する点で、従来の微生物農薬に比べて特に著しく有利である。16SrDNA遺伝子のヌクレオチド配列に基づいて作成された、本発明のシュードモナス ロデシア 050572I9株(シュードモナス ロデシア FERM BP−10912株)の系統樹を示す図である。<1>本発明の微生物 本発明の微生物は、植物病害に対する防除能を有するシュードモナス ロデシア(Pseudomonas rhodesiae)である限り特に制限されない。ここで、「植物病害に対する防除能を有する」とは、いずれかの植物の病害の病原菌に対して拮抗作用を有していることを意味する。本発明の微生物は、植物病害の病原菌に対して拮抗作用を発揮することにより、その病原菌により引き起こされる植物の病害を予防又は治癒するが、特に、植物の病害を予防する効果に優れている。 ここでいう「植物の病害を予防する」とは、植物病害の病原菌が感染していないか又は病徴が現れていない植物若しくはその栽培土壌に、本発明の微生物を処理すること以外は同じ好適な条件で栽培した場合に、本発明の微生物を処理しなかった植物より、本発明の微生物を処理した植物のその病害の度合いが低いことをいう。また、前述した「植物の病害を治癒する」とは、植物病害の病原菌が感染して病徴が現れている植物を、本発明の微生物を処理すること以外は同じ好適な条件で栽培した場合に、本発明の微生物を処理しなかった植物より、本発明の微生物を処理した植物におけるその病害の度合いが低いことをいう。 「病害の度合いが低い」とは、例えば、発病度(又は率)が低い、防除価が0より大きいことを意味する。防除価は、より大きい値が好ましく、30以上であれば優れており、50以上であればより優れており、60又は70以上であれば特に優れている。 本発明の微生物としては、シュードモナス ロデシア 050572I9株、シュードモナス ロデシア JCM11940株、及びこれらの株の変異株を好ましく挙げることができ、中でも、植物病害の防除剤としてより優れた性質を有していることからシュードモナス ロデシア 050572I9株、及びこの株の変異株をより好ましく挙げることができる。なお、シュードモナス ロデシア 050572I9株は、2006年9月12日付で、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に受託番号FERM P−21025として本出願人によって国内寄託され、その後、2007年9月25日付けで国際受託番号FERM BP−10912として国際寄託されている。また、シュードモナス ロデシア JCM11940株は、独立行政法人 理化学研究所筑波研究所バイオリソースセンター(日本国茨城県つくば市高野台3丁目1番地の1)にJCM11940として寄託されている。 本明細書における「ある菌株Xの変異株」には、その菌株Xと同様の菌学的性質を有し、かつ、植物病害に対する防除能を有する菌株である限り、その菌株Xから誘導されたいかなる変異株も含まれる。変異には、化学的変異剤や紫外線等による人工変異、及び自然変異を含む。ある菌株Xの変異株としては、後述の表1に記載された菌学的性質に関して菌株Xと同一の菌学的性質を有し、かつ、植物病害に対する防除能を有する変異株を好ましく挙げることができる。 本発明の微生物の中でも好ましい微生物であるシュードモナス ロデシア 050572I9株(FERM BP−10912株)の菌学的性質は以下のとおりである。 グラム陰性の桿菌で芽胞は形成せず、細胞の全長は2.0〜2.5μm、全幅は0.7〜0.8μmで、運動性が認められる。肉汁寒天培地上で平滑円形コロニーを呈し、キングB培地で蛍光性色素を産生する。41℃での生育は認められず、カタラーゼ活性は陽性、OF培地テストは酸化、硝酸塩の還元は陰性、インドール産生は陰性、ウレアーゼ活性は陰性、ゼラチンの分解は陽性、β−ガラクトシダーゼ活性は陰性、β−グルコシダーゼ活性は陰性である。また、LOPAT試験に於いて、レバン産生は陽性、ジャガイモ塊茎腐敗は陰性、タバコ過敏感反応は陰性、オキシダーゼ活性は陽性、アルギニンの分解は陽性である。デンプン資化性は陰性であり、糖、有機酸等の炭素化合物の資化性に関しては、D−グルコースは陽性、L−アラビノースは陽性、D−マンノースは陽性、D−マンニトールは陽性、N−アセチル−D−グルコサミンは陽性、マルトースは陰性、グルコン酸カリウムは陽性、n−カプリン酸は陽性、アジピン酸は陰性、dL−リンゴ酸は陽性、クエン酸ナトリウムは陽性、酢酸フェニルは陰性、シュクロースは陽性、トレハロースは陽性、アドニットは陰性、ソルビトールは陽性、酪酸は陽性、プロピオン酸は陽性、プロピレングリコールは陽性である。各項目の測定方法等は、後述の実施例に記載したとおりである。 本発明の微生物は、少なくとも1種の植物病害に対する防除能を有していればよいが、かいよう病、穿孔細菌病、軟腐病、斑点細菌病、黒斑細菌病、青枯病、褐斑細菌病、茎えそ細菌病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、白葉枯病、腐敗病、及び黒腐病から選ばれる1種以上、好ましくは2種以上、より好ましくは上述の全種の植物の病害に対する防除能を有していることが好ましい。また、本発明の微生物は、特に、少なくとも軟腐病、腐敗病、黒腐病、かいよう病、穿孔細菌病、のいずれか一種以上、好ましくは2種以上、より好ましくは全種の病害に対して防除能を有していることが好ましい。 これらの植物病害の病原菌としては、Xanthomonas 属、Erwinia属、Pseudomonas属、Ralstonia属、Burkholderia属などに属する1種又は2種以上の病原菌などが挙げられる。より詳しくは、表1に示すが、本発明に関わる病原菌はこれ等に限られない。 また、本発明の微生物の適用対象となる植物としては、本発明の微生物が防除能を発揮し得る植物である限り特に制限されない。例えば、アブラナ科、ナス科 、ウリ科 、ユリ科、マメ科、キク科、アカザ科、イネ科、バラ科、ナデシコ科、サクラソウ科、ミカン科、ブドウ科、マタタビ科、カキ科、セリ科、ヒルガオ科、又はサトイモ科に属する植物を挙げることができ、中でも、ハクサイ等のアブラナ科に属する植物、レタス等のキク科に属する植物、ジャガイモ等のナス科に属する植物、レモン、ネーブル等のミカン科に属する植物、モモ等のバラ科に属する植物などを好ましく挙げることができる。<2>本発明の植物病害の防除剤 本発明の植物病害の防除剤は、本発明のシュードモナス ロデシアの菌体を含有している限り特に制限されない。本発明の植物病害の防除剤に含有される本発明のシュードモナス ロデシアの菌株の種類は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。 本発明の植物病害の防除剤は、それに含有される本発明のシュードモナス ロデシアの菌体が、植物病害の病原菌に対して拮抗作用を発揮することにより、その病原菌により引き起こされる植物の病害を予防又は治癒する。本発明の植物病害の防除剤は、植物病害の予防剤や植物病害の治療剤として用いることができるが、植物病害の予防剤としての効果に特に優れている。 シュードモナス ロデシアは主として栄養細胞の形態を示すが、本発明におけるシュードモナス ロデシアの菌体は、シュードモナス ロデシアの栄養細胞を始めとする、シュードモナス ロデシアの生菌が示すいずれの形態(例えば休眠細胞)の菌体であってもよい。また、本発明の植物病害の防除剤に用いるシュードモナス ロデシアの菌体の形態の種類は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。 本発明の植物病害の防除剤に用いるシュードモナス ロデシアの菌体は、例えばシュードモナス ロデシア 050572I9株(FERM BP−10912株)の16SrDNA遺伝子の配列(配列番号1参照)及び/又は該菌株の上述の菌学的性質を指標にして単離、入手したシュードモナス ロデシア等の本発明のシュードモナス ロデシアを培養することにより得られる。本発明のシュードモナス ロデシアの培養方法としては、シュードモナス ロデシアの菌体が増殖する方法であれば、培地の種類や培養条件等を問わず、いずれの方法でもよいが、例えば、固体培養の場合、標準寒天培地、普通寒天培地、ポテトデキストロース寒天培地等を用いて20〜35℃で静置培養をする方法を挙げることができ、液体培養の場合、上記寒天培地から寒天を除いた各種液体培地等を用いて20〜35℃で振盪・攪拌培養する方法を挙げることができる。 シュードモナス ロデシアの菌体としては、シュードモナス ロデシアの菌体自体、該菌体を含む懸濁液、該菌体を含む培養液、又はこれらの濃縮物、ペースト状物、乾燥物、希釈物(以下、「シュードモナス ロデシアの菌体等」ということがある。)等のいずれの形態であっても本発明の植物病害の防除剤に用いることができる。 本発明の植物病害の防除剤に含まれるシュードモナス ロデシアの菌体の濃度は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、本発明の植物病害の防除剤を1000〜2000倍に希釈した場合に、菌体濃度に換算して、1×102〜1×1011cfu/ml、好ましくは1×104〜1×109cfu/mlの範囲内とすることを好ましく挙げることができる。 本発明の植物病害の防除剤は、本発明の効果を損なわない限り、本発明のシュードモナス ロデシアの菌体等以外に、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、担体、界面活性剤、分散剤、補助剤等を挙げることができる。また、必要に応じて、酸化防止剤、着色剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防腐剤などを添加することができる。 上記の担体としては、炭酸カルシウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の無機塩類;クエン酸、リンゴ酸、ステアリン酸等の有機酸及びそれらの塩;グルコース、乳糖、ショ糖等の糖類;アルミナ粉、シリカゲル、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、酸化チタン、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、クレー、珪藻土、ベントナイト、ホワイトカーボン、カオリン、バーミキュライト等の固体担体を挙げることができる。 また、上記界面活性剤(分散剤としても使用できる)としては、通常の農園芸用製剤に使用できるものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、以下の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤がある。 非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル(C12〜18)、POEソルビタン脂肪酸エステル(C12〜18)、ショ糖脂肪酸エステルなどの糖エステル型界面活性剤;POE脂肪酸エステル(C12〜18)、POE樹脂酸エステル、POE脂肪酸ジエステル(C12〜18)などの脂肪酸エステル型界面活性剤;POEアルキルエーテル(C12〜18)等のアルコール型界面活性剤;POEアルキル(C8〜12)フェニルエーテル、POEジアルキル(C8〜12)フェニルエーテル、POEアルキル(C8〜12)フェニルエーテルホルマリン縮合物などのアルキルフェノール型界面活性剤;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー;アルキル(C12〜18)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテルなどのポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型界面活性剤;POEアルキルアミン(C12〜18)、POE脂肪酸アミド(C12〜18)などのアルキルアミン型界面活性剤;POE脂肪酸ビスフェニルエーテルなどのビスフェノール型界面活性剤;POAベンジルフェニル(又はフェニルフェニル)エーテル、POAスチリルフェニル(又はフェニルフェニル)エーテルなどの多芳香環型界面活性剤;POEエーテル及びエステル型シリコン及びフッ素系界面活性剤などのシリコン系、フッ素系界面活性剤;POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油などの植物油型界面活性剤;等を挙げることができる。 アニオン性界面活性剤としては、アルキルサルフェート(C12〜18、Na、NH4、アルカノールアミン)、POEアルキルエーテルサルフェート(C12〜18、Na、NH4、アルカノールアミン)、POEアルキルフェニルエーテルサルフェート(C12〜18、NH4、アルカノールアミン)、POEベンジル(又はスチリル)フェニル(又はフェニルフェニル)エーテルサルフェート(Na、NH4、アルカノールアミン)、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート(Na、NH4、アルカノールアミン)などのサルフェート型界面活性剤;パラフィン(アルカン)スルホネート(C12〜22、Na、Ca、アルカノールアミン)、AOS(C14〜16、Na、アルカノールアミン)、ジアルキルスルホサクシネート(C8〜12、Na、Ca、Mg)、アルキルベンゼンスルホネート(C12、Na、Ca、Mg、NH4、アルキルアミン、アルカノール、アミン、シクロヘキシルアミン)、モノ又はジアルキル(C3〜6)ナフタレンスルホネート(Na、NH4、アルカノールアミン、Ca、Mg)、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物(Na、NH4)、アルキル(C8〜12)ジフェニルエーテルジスルホネート(Na、NH4)、リグニンスルホネート(Na、Ca)、POEアルキル(C8〜12)フェニルエーテルスルホネート(Na)、POEアルキル(C12〜18)エーテルスルホコハク酸ハーフエステル(Na)などのスルホネート型界面活性剤;カルボン酸型脂肪酸塩(C12〜18、Na、K、NH4、アルカノールアミン)、N-メチル-脂肪酸サルコシネート(C12〜18、Na)、樹脂酸塩(Na、K)などPOEアルキル(C12〜18)エーテルホスフェート(Na、アルカノールアミン)、POEモノ又はジアルキル(C8〜12)フェニルエーテルホスフェート(Na、アルカノールアミン)、POEベンジル(又はスチリル)化フェニル(又はフェニルフェニル)エーテルホスフェート(Na、アルカノールアミン)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー(Na、アルカノールアミン)、ホスファチジルコリン・ホスファチジルエタノールイミン(レシチン)、アルキル(C8〜12)ホスフェートなどのホスフェート型界面活性剤;等を挙げることができる。 カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド(C12〜18)、メチル・ポリオキシエチレン・アルキルアンモニウムクロライド(C12〜18)、アルキル・N-メチルピリジウムブロマイド(C12〜18)、モノ又はジアルキル(C12〜18)メチル化アンモニウムクロライド、アルキル(C12〜18)ペンタメチルプロピレンジアミンジクロライドなどのアンモニウム型界面活性剤;アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド(C12〜18)、ベンゼトニウムクロライド(オクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド)などのベンザルコニウム型界面活性剤;等を挙げることができる。 両性界面活性剤としては、ジアルキル(C8〜12)ジアミノエチルベタイン、アルキル(C12〜18)ジメチルベンジルベタイン等のベタイン型界面活性剤;ジアルキル(C8〜12)ジアミノエチルグリシン、アルキル(C12〜18)ジメチルベンジルグリシンなどのグリシン型界面活性剤;等を挙げることができる。 界面活性剤及び/又は分散剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。 上記の補助剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、澱粉等を挙げることができる。 本発明の植物病害の防除剤の形態は特に制限されず、通常の農園芸用薬のとり得る形態、例えば、粉剤、水和剤、乳剤、フロアブル剤、粒剤等の形態を採用することができる。 本発明の植物病害の防除剤が適用される植物の病害としては、本発明のシュードモナス ロデシアが防除能を示す病原菌が植物に感染することによって引き起こされる植物の病害であれば特に制限はない。例えば、かいよう病、穿孔細菌病、軟腐病、斑点細菌病、黒斑細菌病、青枯病、褐斑細菌病、茎えそ細菌病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、白葉枯病、腐敗病、及び黒腐病等が挙げられる。 また、本発明の植物病害の防除剤が適用される植物の病害として、かいよう病、穿孔細菌病、軟腐病、斑点細菌病、黒斑細菌病、青枯病、褐斑細菌病、茎えそ細菌病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、白葉枯病、腐敗病、及び黒腐病から選ばれる一種以上、好ましくは2種以上、より好ましくは、全種の植物の病害が挙げられる。特に、少なくとも軟腐病、腐敗病、黒腐病、かいよう病、穿孔細菌病のいずれか一種以上、好ましくは2種以上、より好ましくは全種の病害である。<3>本発明の植物病害の防除方法 本発明の植物病害の防除方法は、本発明の植物病害の防除剤を、植物及び/又は該植物の栽培土壌に処理する方法であれば特に制限されるものではなく、通常の化学農薬を用いる場合と同様に、植物の病害の種類や適用植物の種類等によって適宜選択することができる。例えば、本発明の植物病害の防除剤を、植物に直接塗布又は散布等することによって、本発明の植物病害の防除剤を植物に処理してもよいし、本発明の植物病害の防除剤を、植物を栽培する土壌(植物の栽培土壌)に混和、散布又は潅注等することによって、本発明の植物病害の防除剤を植物の栽培土壌に処理してもよい。ここで、本発明の植物病害の防除剤を植物の栽培土壌に処理する場合、本発明の植物病害の防除剤を土壌に処理してから植物を植えてもよく、また、植物を土壌に植えた後でその土壌に本発明の植物病害の防除剤を処理してもよい。また、特開2001−302407号公報記載のように、施設内に送風する送風装置の送風口付近に本発明の植物病害の防除剤を設置し、送風口から送出される空気とともに農薬を散布することもできる。 本発明の植物病害の防除剤を、植物及び/又は該植物の栽培土壌に処理する際には、本発明の植物病害の防除剤を適当量の水等で希釈して使用することができる。本発明の植物病害の防除剤を植物及び/又は該植物の栽培土壌に処理する量としては、植物病害の種類、適用植物の種類等によって異なるため一概には規定できないが、土壌に散布処理する場合は、シュードモナス ロデシアの菌体濃度に換算して、通常1×102〜1×1011cfu/ml、好ましくは1×104〜1×109cfu/mlの範囲とすることができる。 また、散布回数は、植物の病害の種類や適用植物の種類、病害の程度等によって適宜選択すればよい。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。〔実施例1〕菌の同定及び植物病害防除水和剤組成物の調製1.レタス軟腐病に対する防除能を有する菌株の選抜 圃場で採取したレタスの葉を少量の滅菌水中でホモジナイズし、得られた懸濁液を標準寒天培地(カゼイン製ペプトン0.5%(w/v)、酵母エキス0.25%(w/v)、ブドウ糖0.1%(w/v)、カンテン1.5%(w/v)、滅菌後のpH6.9 〜7.1)(日水製薬社製)上に塗抹し、25℃で2日間培養し、生育した微生物のコロニーを採取して、更に単一のコロニーとなるように分離・取得した。取得した複数の微生物の菌株について、後述の実施例に記載されたレタス軟腐病防除効果試験(室内試験)を行い、レタス軟腐病の病原菌(Erwinia carotovora)に対して防除効果を有する微生物の菌株を選抜した。選抜した菌株について、後述のハクサイ軟腐病防除効果試験(圃場試験)と同様のレタス軟腐病防除効果試験(圃場試験)をさらに実施し、圃場試験においてもレタス軟腐病に対して防除効果を有する050572I9株を選抜した。2.16SrDNA遺伝子の解析 050572I9株について、16SrDNA遺伝子のヌクレオチド配列を解析するために、050572I9株から16SrDNAの単離を試みた。具体的には、まず、常法にしたがって050572I9株からゲノムDNAを単離した。得られたゲノムDNAをテンプレートとし、16SrDNAの単離によく用いられる27Fプライマー(配列番号2)及び1544Rプライマー(配列番号3)を用いてPCR増幅を行った。PCR産物の有無をアガロースゲルを用いた電気泳動によって確認した後、複数種のポリヌクレオチドを含む該PCR産物のそれぞれについてシーケンスを行い、複数種のヌクレオチド配列を決定した。得られた複数種のヌクレオチド配列の情報に基づいてアッセンブルを行い、16SrDNAの全長のヌクレオチド配列を決定した。050572I9株の16SrDNA遺伝子のヌクレオチド配列を配列番号1に示す。 050572I9株の16SrDNA遺伝子のヌクレオチド配列に基づいてBLASTを用いて、相同性検索を行った。また、050572I9株の16SrDNA遺伝子のヌクレオチド配列を、ClustalWを用いて解析し、得られた解析結果をTree Viewを用いて処理することによって、050572I9株に関する系統樹(図1)を作成した。この系統樹によって、050572I9株の分類学的位置付けが明らかになった。その結果、050572I9株は、シュードモナス ロデシアの可能性が強く示唆された。3.菌学的性質の解析 上記2.の16SrDNA遺伝子の配列の解析結果から、050572I9株は、シュードモナス属の微生物、中でも特に、シュードモナス ロデシア又はシュードモナス フルオレセンスである可能性が高いと考えられた。050572I9株の種を確定するために、050572I9株の菌学的性質を、後述の所定の方法にしたがって調べた。050572I9株の菌学的性質は以下のとおりである。グラム陰性の桿菌で芽胞は形成せず、細胞の全長は2.0〜2.5μm、全幅は0.7〜0.8μmで、運動性が認められる。肉汁寒天培地上で平滑円形コロニーを呈し、キングB培地で蛍光性色素を産生する。41℃での生育は認められず、カタラーゼ活性は陽性、OF培地テストは酸化、硝酸塩の還元は陰性、インドール産生は陰性、ウレアーゼ活性は陰性、ゼラチンの分解は陽性、β−ガラクトシダーゼ活性は陰性、β−グルコシダーゼ活性は陰性である。また、LOPAT試験に於いて、レバン産生は陽性、ジャガイモ塊茎腐敗は陰性、タバコ過敏感反応は陰性、オキシダーゼ活性は陽性、アルギニンの分解は陽性である。デンプン資化性は陰性であり、糖、有機酸等の炭素化合物の資化性に関しては、D−グルコースは陽性、L−アラビノースは陽性、D−マンノースは陽性、D−マンニトールは陽性、N−アセチル−D−グルコサミンは陽性、マルトースは陰性、グルコン酸カリウムは陽性、n−カプリン酸は陽性、アジピン酸は陰性、dL−リンゴ酸は陽性、クエン酸ナトリウムは陽性、酢酸フェニルは陰性、シュクロースは陽性、トレハロースは陽性、アドニットは陰性、ソルビトールは陽性、酪酸は陽性、プロピオン酸は陽性、プロピレングリコールは陽性である。これを表にまとめると以下のようになる。 上記表2の項目のうち、硝酸塩の還元、インドール産生、OF培地テスト、アルギニンの分解、ウレアーゼ活性、ゼラチンの分解、β−ガラクトシダ−ゼ活性、β−グルコシダーゼ活性、D−グルコースの資化性、L−アラビノースの資化性、D−マンノースの資化性、D−マンニトールの資化性、N−アセチル−D−グルコサミンの資化性、マルトースの資化性、グルコン酸カリウムの資化性、n−カプリン酸の資化性、アジピン酸の資化性、dL−リンゴ酸の資化性、クエン酸ナトリウムの資化性、酢酸フェニルの資化性については、API20NE(日本ビオメリュー株式会社製)を用いて、付属のプロトコールにしたがって試験を行った。オキシダーゼ活性はOxidase Reagent(日本ビオメリュー株式会社製)カタラーゼ活性はID color Catalase(日本ビオメリュー株式会社製)を用いて試験を行った。また、キングB培地テストに用いたキングB培地については、栄研化学株式会社製のキングB培地を用いて行った。グラム染色については、Color Gram2(日本ビオメリュー株式会社製)を用いて行った。レバン産生試験については、5%シュクロース加用普通寒天培地の平板に菌株を画線移植し、25℃、3日間培養して、白色の粘性のある大きくドーム状に隆起したコロニーを形成するものを陽性と判断した。 ジャガイモ塊茎腐敗試験については、以下のように行った。 皮をむいて7〜8mmの厚さに輪切りしたジャガイモを水洗後アルコールに浸してすぐに火炎消毒してシャーレに入れ、過湿状態に保つ。輪切りにしたジャガイモの切片に濃厚な菌液を塗布し、25℃で2日間培養した。菌を接種した切片の大多数で腐敗が観察されたものを陽性とし、接種箇所がわずかに腐る程度のものは陰性とした。今回は、ジャガイモとして「とかちこがね」を用いた。 タバコ過敏感反応試験については以下のように行った。 タバコ(ホワイトバーレー又はブライトイエロー)の葉肉内へ菌液を注射器で注入する。菌液は、菌濃度が1×108cells/mlのものと、1×109cells/mlのものの2種類を用いた。それぞれの菌液を注入したタバコを5日間栽培し、菌液の浸潤部が脱水症状を起こして、褐色又は暗緑色を呈したものを陽性と判定した。いずれの菌液を注入しても、変化しないか又は黄化する程度のものは陰性と判断した。 デンプンの資化性試験は以下のように行った。まず、普通寒天培地(水1L中に寒天35g及び可溶性デンプン10gを含む)上に菌株を画線移植し、30℃で2〜3日培養した。培養後、Lugolのヨウ素溶液(水30ml中にヨウ素0.1g及びヨウ化カリウム0.2gを含む)を前述の寒天培地上に注ぎ、菌のコロニーの周囲に透明な部分が認められた場合を陽性と判定した。 糖や有機酸等の炭素化合物の資化性は、後述の組成の基礎培地5mlに、炭素化合物(D−グルコース、シュクロース、トレハロース、アドニット、ソルビトール、酪酸、プロピオン酸、プロピレングリコールのいずれか)を0.1重量%又は0.2重量%(D−グルコース、シュクロース、トレハロース、アドニット、ソルビトールについては0.2重量%、酪酸、プロピオン酸、プロピレングリコールについては0.1重量%)添加して培地を作製し、作製した培地上に菌体を植菌し、30℃で2〜3日(酪酸については5日)培養した後に、菌の増殖が認められた場合を陽性と判定した。・基礎培地(1L)の組成・Hutnerの無機塩溶液(1L)の組成 ニトリロ三酢酸を蒸留水に溶かし、水酸化カリウムで中和した後、残りの塩類を加えた。・塩類原液(100mlの組成) 050572I9株がシュードモナス ロデシア、シュードモナス フルオレセンスのいずれであるのかを明らかにするために、公知の菌株であるシュードモナス ロデシアJCM11940株、シュードモナス フルオレセンス NBRC14160株について、上記表2の項目の試験を、上記と同様にして行った。その結果を表2に示す。 また、シュードモナス フルオレセンスは、トマトに対して病原性を発揮してトマト茎えそ細菌病を発症させることが知られているが、050572I9株がトマトに対してそのような病原性を有しているかを調べるために、以下のような試験を行った。 050572I9株をA600(波長600nmの吸光度)が1.0になるまで液体培地で培養し、その培養液を、トマトの苗の葉柄基部を中心とした主茎と葉柄部分に散布接種した。7日間栽培した後、苗を観察したところ、トマト茎えそ細菌病の病徴は見られなかった。14日間栽培した後、及び21日間栽培した後にも苗を観察したが、同様に、トマト茎えそ細菌病の病徴は見られなかった。また、050572I9株の前述の培養液を、トマトの苗に傷をつけた後、その部分に接種して同様の試験を行ったが、同様に、トマト茎えそ細菌病の病徴は見られなかった。さらに、050572I9株の前述の培養液を注射器でトマトの苗の内部に注入接種して同様の試験を行ったが、同様に、トマト茎えそ細菌病の病徴は見られなかった。 表2の結果から、050572I9株が、シュードモナス フルオレセンス NBRC14160株と異なる点は、ゼラチンの分解力、アルギニン酸の分解力、シュクロースの資化性、アドニットの資化性、プロピオン酸の資化性、及びプロピレングリコールの資化性の有無であった。一方、050572I9株が、シュードモナス ロデシア JCM11940株と異なる点は、硝酸塩の還元能力の有無のみであった。 また、菌体の形状観察を行ったところ、050572I9株(細胞全長2.0〜2.5μm、細胞幅0.7〜0.8μm)と、シュードモナス ロデシア JCM11940株(細胞全長2.0〜2.5μm、細胞幅0.7〜0.8μm)はほぼ同じ大きさであるのに対し、シュードモナス フルオレセンス NBRC14160株(細胞全長2.2〜2.7μm、細胞幅0.8〜1.0μm)は、050572I9株に比べて全長、幅共に若干大きかった。 さらに、050572I9株は、シュードモナス フルオレセンスと異なり、トマト茎えそ細菌病を発症させなかった。 以上の結果を総合的に勘案すると、050572I9株はシュードモナス フルオレセンスよりシュードモナス ロデシアに極めて相同性が高いと考えられたので、050572I9株はシュードモナス ロデシアと同定された。本発明者らは、この050572I9株を、シュードモナス ロデシア 050572I9株と命名した。シュードモナス ロデシアはバイオセーフティレベル1の微生物である。 なお、050572I9株のAPI20NEによる解析結果を農業環境技術研究所のデータベースで検索したところ、9%という極めて低い該当率ではあるものの、050572I9株がシュードモナス マージナリス pv. マージナリスである可能性が示唆されたので、その可能性を検証するために、シュードモナス マージナリス pv. マージナリスが病原性を発揮することが知られているハクサイ及びレタスに対して、050572I9株が病原性を示すかどうかを、以下のような試験によって調べた。 050572I9株を液体培養して得られた培養液を遠心分離し、菌体を回収した。回収した菌体を水で懸濁し、その菌体懸濁液のA600が1.0となるように水を添加して調整した。その菌体懸濁液にハクサイの中肋部の切片を浸漬した。菌体懸濁液から切片を取り出し、28℃で4日間インキュベートした。その後、そのハクサイの切片を観察したところ、シュードモナス マージナリス pv. マージナリスが病原菌となるハクサイ腐敗病の病徴(水浸状の緑褐色の斑点を生じる)は全く示さなかった。 同様の試験を、ハクサイに代えてレタスを用いて行ったが、同様に、シュードモナス マージナリス pv. マージナリスが病原菌となるレタス腐敗病の病徴(水浸状の病斑を生じ、葉脈が褐変して拡大)は全く示さなかった。また、上述の表2に示されているように、050572I9株は、ジャガイモの塊茎腐敗も引き起こさなかった。これらのことから、050572I9株は、シュードモナス マージナリス pv. マージナリスではないことが確認できた。4.菌体懸濁液の調製 300ml容三角フラスコに標準液体培地(酵母エキス0.25%,ペプトン0.5%,グルコース0.1%,pH7.0)150mlを入れ、加熱滅菌した。シュードモナス ロデシア 050572I9株(FERM BP−10912株)の前培養物0.1mlを接種し、往復振盪機中30℃、100rpmで3日間培養した。得られた培養液を遠心分離して上清を取り除いて沈殿を水で洗浄し、再度遠心して上清を取り除いて沈殿を水で洗浄した。このようにして、シュードモナス ロデシア 050572I9株の菌体懸濁液を調製した。5.植物病害防除水和剤組成物の製造 上記4.で調製した菌体懸濁液を凍結乾燥した。その乾燥物の生菌数は、1.0×1011cfu/gであった。菌体乾燥物10重量部とナフタレンスルホン酸(ナトリウム)ホルムアルデヒド縮合物9重量部、硫酸カルシウム及びその水和物81重量部を均一に混合し、水和剤組成物を得た。水和剤組成物は、シュードモナス ロデシア 050572I9株を有効成分とした薬剤である。〔試験例1〕 レタス軟腐病防除効果試験(室内試験) 上記4.で得られた菌体懸濁液を水で希釈して処理液(A600=0.1)を調製した。処理液をレタス中肋部の切り取り葉の切り取り口に散布した。比較例として、バイオキーパー(登録商標)水和剤(セントラル硝子株式会社製)の1000倍希釈液を同様に散布処理した。散布処理したそれぞれのレタスを、加湿条件で5時間、28℃でインキュベートした後、レタス軟腐病の病原菌(エルビニア カロトボーラ:Erwinia carotovora)の水懸濁液(A600=0.5)をそれぞれのレタスの切り取り口に接種した。接種処理後28℃で4日間インキュベートした後、以下の基準で発病の程度を調査し、以下の式1及び式2に基づいて発病度と防除価を算出した。 基準0:病変なし 基準1:病変が中肋部の10%未満 基準2:病変が中肋部の10〜50% 基準3:病変が中肋部の50〜75% 基準4:病変が中肋部の75%超 n1〜n4は、基準1〜4のそれぞれに対応する葉数 レタス軟腐病防除効果試験(室内試験)の結果を表3に示す。 表3から明らかなように、シュードモナス ロデシア050572I9株は、防除価72.4とレタス軟腐病に対して高い防除効果を有することが認められた。また、シュードモナス ロデシア050572I9株は、非病原性エルビニア カロトボーラを用いたバイオキーパー(登録商標)水和剤よりも優れた防除価を示した。〔試験例2〕 ハクサイ軟腐病防除効果試験(圃場試験) 上記4.で得られた菌体懸濁液を水で希釈して処理液(A600=0.1)を調製した。処理液を圃場に定植してあるハクサイに散布処理した。比較例として、バイオキーパー(登録商標)水和剤(セントラル硝子株式会社製)の1000倍希釈液、又はカッパーシン(登録商標)水和剤(明治製菓株式会社製)の1000倍希釈液を同様に散布処理した。散布処理は、1週間間隔で2回実施した。また、ハクサイ軟腐病の病源菌(エルビニア カロトボーラ)は、1回目散布処理当日に、その水懸濁液(A600=0.1)を散布接種した。2回目の散布から1週間後に、以下の基準で発病の程度を調査し、以下の式3、式4及び式5に基づいて発病度、発病株率及び防除価を算出した。 基準0:発病なし 基準1:外葉の一部に発病が認められる 基準2:外葉と結球葉の一部に発病が認められる 基準3:結球葉の大部分に発病が認められる n1〜n3は、基準1〜3のそれぞれに対応する株数 ハクサイ軟腐病防除効果試験(圃場試験)の結果を表4に示す。 表4から明らかなように、シュードモナス ロデシア050572I9株は、発病度に対する防除価72.2、発病株率に対する防除価72.3と、ハクサイ軟腐病に対して高い防除効果を有することが認められた。また、シュードモナス・ロデシア050572I9株の防除価は、塩基性塩化銅を主成分とする化学系防除剤であるカッパーシン(登録商標)水和剤と同等の防除価であり、非病原性エルビニア カロトボーラを用いたバイオキーパー(登録商標)水和剤よりも極めて高い防除価であった。 〔試験例3〕 カンキツかいよう病防除効果試験(室内試験) 上記4.で得られた菌体懸濁液を水で希釈して処理液(A600=0.1)を調製した。処理液をメスで傷を付けたカンキツ(レモン)葉に散布した。比較例としてアグレプト(登録商標)水和剤(明治製菓株式会社)の1000倍希釈液を同様に散布処理した。その後、加湿条件で5時間、28℃でインキュベートし、その後、カンキツかいよう病菌(ザントモナス キャンペストリス:Xanthomonas campestris pv. citri)の水懸濁液(A600=0.5)を傷口に接種した。接種処理後28℃で7日間インキュベートし、以下の基準で発病の程度を調査し、以下の式6及び式7に基づいて発病度及び防除価を算出した。 基準0:病斑が認められない 基準1:病斑が僅かに認められる 基準2:病斑が認められる 基準3:病斑が顕著に認められる n1〜n3は、基準1〜3のそれぞれに対応する病斑数 カンキツかいよう病防除効果試験(室内試験)の結果を表5に示す。 表5から明らかなように、シュードモナス ロデシア050572I9株は防除価81.8と、カンキツかいよう病に対して高い防除効果を有することが認められた。シュードモナス ロデシア050572I9株の防除価は、ストレプトマイシン硫酸塩を主成分とする化学系防除剤であるアグレプト(登録商標)水和剤の防除価よりも極めて高かった。〔試験例4〕 カンキツかいよう病防除効果試験(圃場試験) 上記4.で得られた菌体懸濁液を水で希釈して処理液(A600=0.05)を調製した。処理液をネーブル樹木全体に散布処理した。比較例として、カッパーシン(登録商標)水和剤(明治製菓株式会社製)の1000倍希釈液を同様に散布処理した。散布処理は落花から10日後、及びその後2〜3週間ごとに1回、計3回実施した。最終散布から7日後に、以下の基準でネーブルの葉及び果実の発病の程度を調査し、以下の式8、式9、式10及び式11に基づいて発病度、発病葉率、発病幼果率及び防除価を算出した。 基準0:病斑なし 基準1:病斑数が1〜3個 基準2:病斑数が4〜10個 基準3:病斑数が11〜20個 基準4:病斑数が21個以上 n1〜n4は、基準1〜4のそれぞれに対応する葉及び幼果数 発病葉率、発病幼果率に対する防除価も同様に計算した。 カンキツかいよう病防除効果試験(圃場試験)の結果を表6(カンキツ葉)及び表7(カンキツ幼果)に示す。 表6及び表7から明らかなようにシュードモナス ロデシア050572I9株は、葉に対する発病度に対して防除価72.5、発病葉率に対しては防除価67.5と高い防除価が認められた。また、幼果に対する発病度に対して防除価77.5、発病幼果率に対しては防除価60.7と高い防除価が認められた。 〔試験例5〕 レタス軟腐病防除効果試験(室内試験) 上記4.で得られた菌体懸濁液を水で希釈して処理液(A600=0.05)を調製した。また、シュードモナス ロデシア JCM11940を上記4.と同様に培養及び調製した菌体懸濁液を上記5.と同様に製剤調製した水和剤を水で希釈して処理液(A600=0.05)を調製した。さらに、シュードモナス フルオレセンス NBRC14160を上記4.と同様に培養及び調製した菌体懸濁液を水で希釈して処理液(A600=0.05)を調製した。 4.で得られた菌体懸濁液を希釈した上述の処理液をレタス中肋部の切り取り葉の切り取り口に散布した。また、シュードモナス ロデシア JCM11940を含有する菌体懸濁液を希釈した上述の処理液を、レタス中肋部の切り取り葉の切り取り口に、同様に散布した。さらに、比較例として、シュードモナス フルオレセンス NBRC14160を含有する菌体懸濁液を希釈した上述の処理液を、レタス中肋部の切り取り葉の切り取り口に、同様に散布した。 散布処理したそれぞれのレタスを、加湿条件で5時間、25℃でインキュベートした後、レタス軟腐病菌(エルビニア カロトボーラ)の水懸濁液(A600=0.5)を傷口に接種した。接種処理後25℃で5日間インキュベートした後、以下の基準で発病度を調査し、以下の式12及び式13に基づいて発病度及び防除価を算出した。 基準0:病変なし 基準1:病変が中肋部の10%未満 基準2:病変が中肋部の10〜50% 基準3:病変が中肋部の50〜75% 基準4:病変が中肋部の75%超 n1〜n4は、基準1〜4のそれぞれに対応する葉数 レタス軟腐病防除効果試験(室内試験)の結果を表8に示す。 表8から明らかなように、シュードモナス ロデシア JCM11940株は、050572I9株には劣るものの、防除価57.1とレタス軟腐病に対して防除効果を有することが認められた。しかし、シュードモナス ロデシアと近縁種のシュードモナス フルオレセンスは、防除価0.0とレタス軟腐病に対して防除効果を有しないことが確認された。〔試験例6〕レタス腐敗病防除効果試験(室内試験) 上記4.で得られた菌体懸濁液を水で希釈して処理液(A600=0.05)を調製した。処理液にレタス中肋部を中心とした切取り葉片を10分間浸漬処理した。比較例として、ベジキーパー〔登録商標〕水和剤(セントラル硝子株式会社製)の1000倍希釈液を同様に浸漬処理した。薬剤処理したそれぞれのレタス葉を加湿条件で5時間、25℃でインキュベートした後、レタス腐敗病菌(Pseudomonas cichorii PCL2001)の水懸濁液(A600=0.01)を切片の断面両側に20μリットルずつ接種した。処理後、25℃で5日間インキュベートし、下記の基準で発病度を調査した。 基準0:病変なし 基準1:病徴が中肋部の10%未満 基準2:病徴が中肋部の10〜50% 基準3:病徴が中肋部の50〜75% 基準4:病徴が中肋部の75%超 n1〜n4は、基準1〜4のそれぞれに対応する葉数 表9から明らかなように、シュードモナス ロデシア(Pseudomonas rhodesiae)050572I9株 は、防除価87.5とレタス腐敗病に対して高い防除効果を有することが認められた。また、シュードモナス ロデシア(Pseudomonas rhodesiae)050572I9株 は、ベジキーパー〔登録商標〕水和剤よりも優れた防除価を示した。 〔試験例7〕キャベツ黒腐病防除効果試験(室内試験) 上記4.で得られた菌体懸濁液を水で希釈して処理液(A600=0.05)を調製した。処理液にキャベツ葉の葉脈を中心に切り取った葉片を10分間浸漬処理した。比較例として、ベジキーパー(登録商標)水和剤(セントラル硝子株式会社製)の1000倍希釈液を同様に浸漬処理した。薬剤処理したそれぞれのキャベツ葉を加湿条件で5時間、25℃でインキュベートした後、キャベツ黒腐病菌(Xanthomonas campestris pv. campestris CAX303)の水懸濁液(A600=1.0)を切片の断面両側に20μリットルずつ接種した。処理後、25℃で8日間インキュベートし、下記の基準で発病度を調査した。 基準0:病変なし 基準1:病徴が切口の一部のみに発生 基準2:病徴が葉脈の一部にまで発生 基準3:病徴が葉脈全体に発生 基準4:病徴が葉脈全体に発生且つ葉面にまで発生 n1〜n4は、基準1〜4のそれぞれに対応する葉数 表10から明らかなように、シュードモナス ロデシア050572I9株は、防除価60.0とキャベツ黒腐病に対して高い防除効果を有することが認められた。また、シュードモナス ロデシア050572I9株は、ベジキーパー(登録商標)水和剤よりも優れた防除価を示した。〔試験例8〕モモ穿孔細菌病防除効果試験(圃場試験) 上記4.で得られた菌体懸濁液を水で希釈して処理液(A600=0.1)を調製した。処理液をモモ樹木全体に散布処理した。散布処理は、落花直後に1回目を行い、その7日後、22日後、34日後、49日後の計5回実施した。2回目散布から15日後、4回目散布から6日後、最終散布から8日後にGL1m辺りの樹の周囲の新梢葉について健全葉数及び罹病葉数を調査し、防除価を算出した。 表11から明らかなように、シュードモナス ロデシア050572I9株は、生育期のモモに対し、防除価50〜65程度と高いモモ穿孔細菌病防除効果を示した。 植物病害に対する防除能を有するシュードモナス ロデシア FERM BP−10912。 シュードモナス ロデシア FERM BP−10912の変異株であって、かつ、植物病害に対する防除能を有する変異株。 植物病害が、かいよう病、穿孔細菌病、軟腐病、斑点細菌病、黒斑細菌病、青枯病、褐斑細菌病、茎えそ細菌病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、白葉枯病、腐敗病及び黒腐病から選ばれる1種又は2種以上の植物の病害である請求項1又は2に記載のシュードモナス ロデシア FERM BP−10912又はシュードモナス ロデシア FERM BP−10912の変異株。 植物病害が、ザントモナス(Xanthomonas)属、エルビニア(Erwinia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ラルストニア(Ralstonia)属及びバークホルデリア(Burkholderia)属から選ばれる1種又は2種以上の病原菌によって発症する植物の病害である請求項1又は2に記載のシュードモナス ロデシア FERM BP−10912又はシュードモナス ロデシア FERM BP−10912の変異株。 植物病害に対する防除能を有するシュードモナス ロデシア FERM BP−10912又はシュードモナス ロデシア FERM BP−10912の変異株の菌体を含有する植物病害の防除剤。 植物病害が、かいよう病、穿孔細菌病、軟腐病、斑点細菌病、黒斑細菌病、青枯病、褐斑細菌病、茎えそ細菌病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、白葉枯病、腐敗病、及び黒腐病から選ばれる1種又は2種以上の植物の病害である請求項5に記載の植物病害の防除剤。 請求項1又は2に記載のシュードモナス ロデシア FERM BP−10912又はシュードモナス ロデシア FERM BP−10912の変異株を、植物及び/又は該植物の栽培土壌に処理することを特徴とする植物病害の防除方法。配列表


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