タイトル: | 特許公報(B2)_コハク酸イミド化合物の製造方法 |
出願番号: | 2008540922 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07D 207/416 |
小沢 征巳 武蔵 秀樹 JP 5149803 特許公報(B2) 20121207 2008540922 20070926 コハク酸イミド化合物の製造方法 大日本住友製薬株式会社 000002912 日産化学工業株式会社 000003986 萼 経夫 100068618 宮崎 嘉夫 100104145 加藤 勉 100104385 小山 京子 100156889 小野塚 薫 100109690 田上 明夫 100135035 ▲高▼ 昌宏 100131266 森 則雄 100146237 山田 清治 100153475 小沢 征巳 武蔵 秀樹 JP 2006262249 20060927 20130220 C07D 207/416 20060101AFI20130131BHJP JPC07D207/416 C07D 207/416 CA/REGISTRY(STN) 特開平6−192222(JP,A) 特開平5−186472(JP,A) 3 JP2007068667 20070926 WO2008050570 20080502 9 20100721 福井 悟 本発明は、コハク酸イミド化合物の製造方法であって、詳細には、安価で安全かつ短工程で実施可能であり、しかも従来知られていた製造方法よりも高収率でコハク酸イミド化合物を製造することができる方法に関するものである。また、本発明の製造方法により得られる化合物は医薬品等の中間原料として利用される有用な化合物である。 従来、コハク酸イミド化合物を製造する方法としては、シアノ酢酸エステル誘導体をα−ハロ酢酸エステルによりアルキル化し、その後、過酸化水素等で酸化し、イミド化する方法、および、アミノマロン酸エステル誘導体をα−ハロアセトニトリルによりアルキル化し、その後同様に過酸化水素等で酸化し、イミド化する方法が知られている(特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照)。 なお、本明細書にて記述するのと同様の反応形式である、アミノマロン酸誘導体と、ハロアセトアミド誘導体との反応から直接コハク酸イミド化合物を合成する方法に関しては、特許文献1に記載がある。特開平6−192222号公報特開平5−186472号公報J.Med.Chem.(1998),41,p.4118−4129 しかしながら、シアノ酢酸エステル誘導体をα−ハロ酢酸エステルによりアルキル化し、その後、過酸化水素等で酸化し、イミド化する方法やアミノマロン酸エステル誘導体をα−ハロアセトニトリルによりアルキル化し、その後、過酸化水素等で酸化し、イミド化する方法は、工程数が長く、かつ過酸化物を用いることから安全性にも問題のある製造方法であった。 また、ハロアセトアミドから直接コハク酸イミド化合物を製造する既知の方法では、目的物であるイミド化合物の収率が低く(36.5%)、かつ副生成物が多く生成してしまうためカラムクロマトグラフィーによる精製が必須となり、工業的に実用的ではなかった。 そのため、従来法では不可能な、ハロアセトアミドから直接コハク酸イミド化合物を高収率、高純度で製造することができる方法が望まれていた。 本発明者らは、上記の課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、逐次反応および副反応を抑制し、高収率で目的物質を得られる反応条件を見出した。 即ち、本発明は、 第一観点として、式(1)(式中、R1およびR4は、それぞれ独立して直鎖状、枝分かれ状もしくは環状であってよい炭素原子数1ないし12のアルキル基または置換されていてもよい炭素原子数6ないし12の芳香族基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子、直鎖状、枝分かれ状もしくは環状であってよい炭素原子数1ないし12のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2ないし6のアシル基、置換されていてもよい炭素原子数1ないし6のアルコキシカルボニル基、芳香環部が置換されていてもよいベンジル基または芳香環部が置換されていてもよいベンジルオキシカルボニル基を表すか、あるいは、R2およびR3はそれらが結合する窒素原子と一緒になって環を形成する。)で表されるアミノマロン酸エステル化合物と、式(2)(式中、Xはハロゲン原子を表す。)で表される化合物とを溶媒中、塩基存在下で反応させることによる、式(3)(式中、R5は、直鎖状、枝分かれ状もしくは環状であってよい炭素原子数1ないし12のアルキル基または置換されていてもよい炭素原子数6ないし12の芳香族基を表し、R2およびR3は、前記式(1)における定義と同意義である。)で表されるコハク酸イミド化合物の製造方法であって、溶媒としてアルコール、塩基としてアルカリ金属アルコキシドを用いることを特徴とする製造方法、 第二観点として、前記溶媒としてエタノールを用い、かつ前記塩基としてナトリウムエトキシドを用いることを特徴とする第一観点に記載の製造方法、第三観点として、 前記式(1)で表されるアミノマロン酸エステル化合物が、R1およびR4がエチル基を表し、R2が水素原子を表し、R3がベンジルオキシカルボニル基を表す化合物であり、前記式(3)で表されるコハク酸イミド化合物が式(4)(式中、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。)で表される化合物である第一観点又は第二観点に記載の製造方法、に関するものである。 本発明の製造方法によれば、医薬品等の中間原料として有用なコハク酸イミド化合物を安価に短工程かつ安全に製造することができる。 しかも、本発明の製造方法によれば、既知の製造方法よりも高収率でコハク酸イミド化合物を製造することができる。 本発明の置換基の定義は以下に示す通りである。ただし、n−はノルマルを、i−はイソを、sec−はセカンダリーを、t−はターシャリーをそれぞれ表す。 本明細書における直鎖状、枝分かれ状もしくは環状であってよい炭素原子数1ないし12のアルキル基は、1ないし12個の炭素原子からなる直鎖状、枝分かれ状または環状の炭化水素基を表し、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、アダマンチル基等が具体例として挙げられる。 置換されていてもよい炭素原子数6ないし12の芳香族基としては、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1ないし12のアルキルカルボニル基、炭素原子数1ないし12のアルキルオキシ基、ジ(炭素原子数1ないし12のアルキル)アミノ基等から選ばれる同一のまたは相異なった1個以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。 置換されていてもよい炭素原子数2ないし6のアシル基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基等から選ばれる同一または相異なった1個以上の置換基で置換されていてもよいメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、i−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基等が挙げられる。 置換されていてもよい炭素原子数1ないし6のアルコキシカルボニル基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基等から選ばれる同一または相異なった1個以上の置換基で置換されていてもよいメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、i−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、i−ブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。 芳香環部が置換されていてもよいベンジル基としては、芳香族部がハロゲン原子、炭素原子数1ないし12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1ないし12のアルキルカルボニル基、炭素原子数1ないし12のアルキルオキシ基、ジ(炭素原子数1ないし12のアルキル)アミノ基等から選ばれる同一または相異なった1個以上の置換基で置換されていてもよいベンジル基を表す。 芳香環部が置換されていてもよいベンジルオキシカルボニル基としては、芳香族部がハロゲン原子、炭素原子数1ないし12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1ないし12のアルキルカルボニル基、炭素原子数1ないし12のアルキルオキシ基、ジ(炭素原子数1ないし12のアルキル)アミノ基等から選ばれる同一または相異なった1以上の置換基で置換されていてもよいベンジルオキシカルボニル基を表す。 「R2およびR3はそれらが結合する窒素原子と一緒になって環を形成する」とは、R2およびR3が、それらが結合する窒素原子と一緒になって、ピペリジン環、ピロリジン環、コハク酸イミド環、マレイミド環等を形成することを意味する。 次に、好ましい置換基を挙げる。 好ましいR1およびR4としては、それぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基等が挙げられる。 また、好ましいR2としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基等が挙げられる。 また、好ましいR3としては、ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、t−ブチルオキシカルボニル基等が挙げられる。 また、好ましいXとしては、塩素、臭素およびヨウ素等が挙げられる。 以下、更に詳細に本発明を説明する。 即ち、式(1)で表されるアミノマロン酸誘導体と式(2)で表されるα−ハロアセトアミドとを溶媒中で混合しておき、そこへ塩基を加えることで、アミノマロン酸誘導体のα位をアルキル化する。すると系中で速やかに環化が生じ、式(3)で表されるコハク酸イミド化合物を製造することができる。式(3)中のR5は、式(1)中のR1、R4、もしくは、結果的に系中のアルコールとエステル交換したもののいずれかである。なお、R1とR4が異なる置換基である場合には、混合物を与えることがあるため、それを回避する意味では、R1とR4とは同じ置換基であることが好ましい。 α−ハロアセトアミドとしては、たとえば、α−クロロアセトアミド、α−ブロモアセトアミド、α−ヨードアセトアミドを使用することができるが、好ましくはα−ブロモアセトアミド、α−ヨードアセトアミド、より好ましくはα−ヨードアセトアミドが使用される。またこの場合、系中でハロゲン交換により調製したα−ヨードアセトアミドを用いてもよい。 使用する塩基としては、たとえば、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムペントキシド等のアルカリ金属アルコキシドが挙げられるが、好ましくは、ナトリウムエトキシドおよびナトリウムメトキシドが挙げられる。塩基の選択においては、エステル交換が望ましくない場合には、たとえばエチルエステルにはナトリウムエトキシドを選択することが望ましい。 使用する溶媒としては、たとえば、エタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコールが挙げられるが、好ましくは、エタノール、メタノールが挙げられる。溶媒の選択においては、エステル交換が望ましくない場合には、たとえばエチルエステルにはエタノールを選択することが望ましい。また、溶媒は反応に関与しなければ、その他の溶媒(トルエン、ヘキサン、酢酸エチル等)との混合物でもよい。 塩基の使用量は、式(1)で表されるアミノマロン酸エステル化合物に対して1ないし10当量、好ましくは、1.5ないし3当量、より好ましくは1.8ないし2.5当量である。 溶媒の使用量は、式(1)で表されるアミノマロン酸エステル化合物に対して1ないし200質量倍使用することができ、好ましくは3ないし20質量倍の範囲である。 式(2)で表される化合物(α−ハロアセトアミド)の使用量は、式(1)で表されるアミノマロン酸エステル化合物に対して0.5ないし10当量、好ましくは1ないし2当量である。 反応温度は、通常、−20℃から使用する溶媒の沸点までの温度範囲内であり、好ましくは−10ないし20℃の温度範囲内、さらに好ましくは−10ないし10℃の温度範囲内である。 試剤を加える順序は先にあげたものに限定されるものではない。 なお、本発明で限定された塩基と溶媒の組み合わせ以外の条件で類似の反応を行った場合には、逐次反応を抑制することが困難であり、式(5)で表される逐次反応生成物が大量に(多くの場合、式(3)で表される目的物以上に)生成してしまう。 ところが、本発明の反応条件であれば、逐次反応を10%以下、最適条件であれば、2%以下に抑えることができ、高選択的に高収率で目的物の式(3)で表されるコハク酸イミド化合物を得ることができる。 反応によって得られた式(3)で表されるコハク酸イミド化合物は、例えば、反応終了後、酸でクエンチした後に、適当な溶媒により抽出し、水洗いすることにより得ることができ、また必要により、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製することができる。 次に実施例を挙げ、本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 尚、式(4)で表されるコハク酸イミド化合物の定量収率は、逆相系高速液体クロマトグラフィーを用い、p−t−ブチルフェノールを内部標準物質とする定量分析を行うことにより決定した。 カラム :XBridge C18 (ウォーターズ製) 展開溶媒 :水/アセトニトリル/酢酸=58/42/0.1(容積比) オーブン温度:40℃ 検出法 :UV210nm 実施例1:2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−エトキシカルボニルコハク酸イミドの製造 エタノール45gにα−ヨードアセトアミド10.4g(56.2mmol)を加え、2−ベンジルオキシカルボニルアミノマロン酸ジエチルの70%トルエン溶液21.4g(48.2mmol)を加え、0℃に冷却した。そこへナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液33.0g(97.0mmol)を0℃に保ったまま1時間で滴下した。0℃で3時間攪拌し、反応液を定量したところ、2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−エトキシカルボニルコハク酸イミドが13.7g(収率89%)で生成していた。 実施例2:2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−エトキシカルボニルコハク酸イミドの製造 エタノール123kgにヨウ化ナトリウム25.0kg(167mol)、α−クロロアセトアミド14.2kg(152mol)を加え、77℃に昇温し、3時間攪拌した。この懸濁液に、2−ベンジルオキシカルボニルアミノマロン酸ジエチルの69%トルエン溶液58.2kg(130mol)を加え、0℃に冷却した。そこへナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液89.1kg(262mol)を0℃に保ったまま3時間で滴下した。0℃で3時間攪拌した後、酢酸7.9kg、85%リン酸15.1kgを加えてクエンチし、溶媒を減圧留去して、トルエン200kgと水80kgを加えて分液した。有機層を3回水洗いした後に定量分析したところ、2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−エトキシカルボニルコハク酸イミドの収率は87.5%であった。この溶液を濃縮した後、トルエン、エタノールで再結晶して、2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−エトキシカルボニルコハク酸イミドを白色結晶として30kg(収率72%)得た。尚、本例で使用した2−ベンジルオキシカルボニルアミノマロン酸ジエチルは、塩基として炭酸ナトリウムを用い、2−アミノマロン酸ジエチル塩酸塩とベンジルオキシカルボニルクロリドから、常法に従い合成した。 本発明の製造方法は医薬品等の中間原料として有用なコハク酸イミド化合物の高効率な製造方法を提供するものである。 式(1)(式中、R1およびR4は、それぞれ独立して直鎖状、枝分かれ状もしくは環状であってよい炭素原子数1ないし12のアルキル基または置換されていてもよい炭素原子数6ないし12の芳香族基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子、直鎖状、枝分かれ状もしくは環状であってよい炭素原子数1ないし12のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2ないし6のアシル基、置換されていてもよい炭素原子数1ないし6のアルコキシカルボニル基、芳香環部が置換されていてもよいベンジル基または芳香環部が置換されていてもよいベンジルオキシカルボニル基を表すか、あるいは、R2およびR3はそれらが結合する窒素原子と一緒になって環を形成する。)で表されるアミノマロン酸エステル化合物と、式(2)(式中、Xはハロゲン原子を表す。)で表される化合物とを溶媒中、塩基存在下で反応させることによる、式(3)(式中、R5は、直鎖状、枝分かれ状もしくは環状であってよい炭素原子数1ないし12のアルキル基または置換されていてもよい炭素原子数6ないし12の芳香族基を表し、R2およびR3は、前記式(1)における定義と同意義である。)で表されるコハク酸イミド化合物の製造方法であって、溶媒としてアルコール、塩基としてアルカリ金属アルコキシドを用いることを特徴とする製造方法。 前記溶媒としてエタノールを用い、かつ前記塩基としてナトリウムエトキシドを用いることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。 前記式(1)で表されるアミノマロン酸エステル化合物が、R1およびR4がエチル基を表し、R2が水素原子を表し、R3がベンジルオキシカルボニル基を表す化合物であり、前記式(3)で表されるコハク酸イミド化合物が式(4)(式中、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。)で表される化合物である請求項1または2に記載の製造方法。