タイトル: | 特許公報(B2)_アトピー性皮膚炎の治療薬又は予防薬 |
出願番号: | 2008539816 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 31/702,A61P 17/00,C07H 3/06,C07H 7/033,C08B 37/08,A61K 31/728 |
浅利 晃 JP 5457675 特許公報(B2) 20140117 2008539816 20071016 アトピー性皮膚炎の治療薬又は予防薬 株式会社ヒアルロン酸研究所 512044688 奥山 尚一 100099623 有原 幸一 100096769 松島 鉄男 100107319 河村 英文 100114591 中村 綾子 100125380 森本 聡二 100142996 角田 恭子 100154298 田中 祐 100166268 徳本 浩一 100170379 渡辺 篤司 100161001 児玉 真衣 100179154 水島 亜希子 100180231 増屋 徹 100184424 浅利 晃 JP 2006282787 20061017 20140402 A61K 31/702 20060101AFI20140313BHJP A61P 17/00 20060101ALI20140313BHJP C07H 3/06 20060101ALN20140313BHJP C07H 7/033 20060101ALN20140313BHJP C08B 37/08 20060101ALN20140313BHJP A61K 31/728 20060101ALN20140313BHJP JPA61K31/702A61P17/00C07H3/06C07H7/033C08B37/08 ZA61K31/728 C07H 3/06 C07H 7/033 A61K 31/702 A61P 17/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2006−160758(JP,A) 特開2004−307489(JP,A) 特公平04−065047(JP,B2) 国際公開第2002/004471(WO,A1) 特開2004−043645(JP,A) 特開平06−128159(JP,A) 特開平07−138125(JP,A) 特許第4022659(JP,B2) 特開平08−208488(JP,A) 特公平04−062047(JP,B2) Akira Tawada, Takahiro Masa, Yoji Oonuki, Atsushi Watanabe, Yuji Matsuzaki, and Akira Asari,Large-scale preparation, purification, and characterization of hyaluronan oligosaccharides from 4-me,Glycobiology,英国,Oxford University Press,2002年 7月,Vol.12 No.7,pp.421-426,URL,http://glycob.oxfordjournals.org/cgi/reprint/12/7/421 1 JP2007070144 20071016 WO2008047779 20080424 12 20100909 三木 寛 本発明は、低分子量ヒアルロン酸を有効成分とするアトピー性皮膚炎の予防及び/又は治療のための医薬組成物に関する。 アトピー性皮膚炎は、アトピー素因と呼ばれるアレルギー体質、例えばアレルギー喘息、アレルギー性鼻炎、皮膚炎の蕁麻疹を起こしやすい体質の上に、様々な刺激が加わって生じる痒みを伴う慢性の皮膚疾患である。日本皮膚科学会の診断基準では、増悪・寛解を繰り返す、痒みを伴う湿疹を主とする皮膚疾患とアトピー性皮膚炎を定義し、患者の多くはアトピー素因を持つが、アトピー素因を持つことを必要としていない。従って、広義には、接触性皮膚炎なども含めて診断上「アトピー性皮膚炎」とされる場合がある。一般には、広範囲にわたって慢性湿疹の症状を呈し、乾燥して表面が白い粉を吹いたようになり、強い痒みを伴う。患者によっては、赤い湿疹、結節などができ、激しい痒みを伴ったり、湿潤した局面から組織液が浸出して、激しい痛みを伴う。慢性化すると、鳥肌だったようにザラザラしたものができ、皮膚が次第に厚くなったり、しこりのあるイボ状の痒疹ができることもある。 アトピー性皮膚炎は幼児期に発症し、成人に達する前に自然寛解することが多い。しかし、成人まで持ち越す例や、成人してからの発症や再発する例が増加している。アトピー性皮膚炎のアレルギー症状を根本治療する方法はなく、基本的には、ステロイドや抗ヒスタミン剤など、かゆみ止めの薬による対症療法により症状を緩和することを目標としている。外用又は内用ステロイド剤の投与により過剰な免疫を抑制したり、ワセリンなどの保湿剤により乾燥部分を保護する治療が主流である。 しかし、最も治療効果が高いと言われているステロイド剤は、本来の症状よりもさらに強くぶり返すリバウンドと呼ばれる現象を起こしたり、長期連続使用により効果の減弱(タキフィラキシー)を起こすこともある。また、長期に渡ってステロイド外用剤を連用すると皮膚萎縮、皮膚感染症の誘発、毛細血管拡張といった障害が出てくることが知られており、症状に応じたステロイドの投与量や投与期間などのコントロールは困難である。ステロイドに代わる副作用が少ない治療薬の開発が求められてきた。 アトピー性皮膚炎による乾燥を防ぐため、保湿剤としてヒアルロン酸を含む治療剤が開発されている。例えば、特許文献1には、ε-ポリリジンを有効成分とし、ヒアルロン酸を保湿剤として含有するアトピー性皮膚炎の治療薬が開示されている。特許文献2には、ヒアルロン酸と加水分解シルクを絹不織布に含有せしめたシートをアトピー性皮膚炎の予防及び治療補助に使用することが記載されている。特許文献3には、ボリジ種子油と小麦胚芽から抽出された植物性セラミドを主成分とし、ヒアルロン酸を機能性成分として含む皮膚外用製剤が開示されている。特許文献4には、エイコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸と、保湿剤としてヒアルロン酸を含む皮膚外用剤が記載されている。しかし、ヒアルロン酸は、あくまで保湿剤として使用されており、アトピー性皮膚炎の治療における有効成分として含有されているものではない。また、ヒアルロン酸は、いわゆる高分子量のヒアルロン酸(例えば、重量平均分子量900,000程度)であり、低分子量ヒアルロン酸、特にヒアルロン酸4糖を含むものではない。特開2005−035914号公報特開2003−212715号公報特開2002−053428号公報特開2000−095683号公報 本発明は、アトピー性皮膚炎の予防及び/又は治療に際し、ステロイド剤に代替できる治療効果の高い治療薬を提供することを目的とする。 本発明者は、低分子量ヒアルロン酸、特にヒアルロン酸4糖にアトピー性皮膚炎による炎症を抑える効果があり、投与によりアトピー性皮膚炎の症状を軽減することができることを見いだした。 すなわち、本発明は、低分子量ヒアルロン酸を有効成分とするアトピー性皮膚炎の治療又は予防薬を提供する。 さらに、本発明では、低分子量ヒアルロン酸は2糖(分子量約400)、3糖(分子量約600)、4糖(分子量約800)、5糖(分子量約1000)又は6糖(分子量1200)であってもよい。また、低分子量ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸4糖(分子量約800)であることが好ましい。 本発明によれば、アトピー性皮膚炎の予防及び/又は治療に際し、副作用が少ない又は副作用がない、治療効果の高い治療薬が提供できる。実施例1におけるアトピー性皮膚炎モデルマウスの左耳介厚を測定した結果を示すグラフである。実施例1におけるアトピー性皮膚炎モデルマウスの患部を撮影したカラー写真である。実施例1におけるアトピー性皮膚炎モデルマウスの掻痒行動を観察(回/15分間)した結果を示すグラフである。実施例2における患者の患部を撮影したカラー写真である。 ヒアルロン酸は、D−グルクロン酸とN−アセチル−D−グルコサミンとの2糖繰り返し単位から構成されている高分子の長鎖の多糖であり、一方、オリゴ糖も知られている。 本発明の低分子量ヒアルロン酸とは、ヒアルロン酸2糖、3糖、4糖、5糖又は6糖(分子量約400〜約1200)のヒアルロン酸であり、とりわけ、ヒアルロン酸4糖が望ましい。 本発明に係る薬剤に含まれる低分子量ヒアルロン酸としては、基本的にはβ-D-グルクロン酸の1位とβ−D−N-アセチル-グルコサミン−の3位とが結合した2糖単位を少なくとも1個含む2糖以上のものでかつβ-D-グルクロン酸とβ−D−N−アセチル-グルコサミン−とから基本的に構成されるものであれば、2糖単位が1個または複数個結合したものにそれらの要素が結合した糖であってもよく、またこれらの誘導体、例えば、アシル基等の加水分解性保護基を有したもの等も使用し得る。該糖は不飽和糖であってもよく、不飽和糖としては、非還元末端糖、通常、グルクロン酸の4,5位炭素間が不飽和のもの等が挙げられる。 本発明で使用する低分子量ヒアルロン酸としては、具体的には動物等の天然物から抽出されたもの、微生物を培養して得られたもの、化学的もしくは酵素的に合成されたものなどいずれも使用することができる。例えば鶏冠、さい体、皮膚、関節液などの生体組織から公知の抽出法と精製法によって得ることができる。またストレプトコッカス属の細菌等を用いた発酵法によっても製造できる。 本発明においては、上記2糖単位1個からなる2糖およびその誘導体のような低分子量のヒアルロン酸を使用することができる。好ましくは2〜20糖程度の低分子量ヒアルロン酸を挙げることができ、より好ましくは、2〜6糖の低分子量ヒアルロン酸であり(分子量約400〜約1200)、最も好ましくはヒアルロン酸4糖である。 低分子量ヒアルロン酸は、具体的には、酵素分解法、アルカリ分解法、加熱処理法、超音波処理法(Biochem., 33(1994)p6503−6507)等の公知の方法によってヒアルロン酸を低分子化する方法、化学的もしくは酵素的に合成する方法(Glycoconjugate J.,(1993)p435−439、WO93/20827)などで製造することが好ましい。例えば酵素分解法としては、ヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ(睾丸由来)、ヒアルロニダーゼ(Streptomyces由来)、ヒアルロニダーゼSDなど)、コンドロイチナーゼAC、コンドロイチナーゼACII、コンドロイチナーゼACIII、コンドロイチナーゼABCなどのヒアルロナンを分解する酵素をヒアルロナンに作用させてヒアルロナンオリゴ糖を生成する方法(新生化学実験講座「糖質II−プロテオグリカンとグリコサミノグリカン−」p244−248、1991年発行、東京化学同人参照)などが挙げられる。 また、アルカリ分解法としては、例えばヒアルロン酸の溶液に1N程度の水酸化ナトリウム等の塩基を加え、数時間加温して、低分子化させた後、塩酸等の酸を加えて中和して、低分子量ヒアルロン酸を得る方法などが挙げられる。本発明で用いるヒアルロン酸は、薬理学的に許容可能な塩の形態を包含し、製剤上の必要に応じて、その薬学上許容できる塩を用いることができる。例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、トリ(n−ブチル)アミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、アミノ酸塩等のアミン塩などであることができる。 本発明の薬剤は、特定の分子量のヒアルロン酸単独又は異なる分子量のヒアルロン酸を混合物など特に限定することなく使用できる。本発明のアトピー性皮膚炎の治療剤はヒアルロン酸を有効成分とするものであり、その有効量をヒトを含む哺乳動物に投与することによって、生体に悪影響を与えることなくアトピー性皮膚炎の症状を改善又は予防することができる。 本発明の薬剤は、低分子量ヒアルロン酸又はその塩を、そのまままたは必要に応じて担体、賦形剤、その他の添加物と共に患部及びその周囲の皮膚に塗布することができる。あるいは、任意の剤形に製剤化して、組織内投与(注射)、経口投与又は経腸投与することができる。 皮膚に塗布する薬剤の剤形としては、軟膏、ローション剤、クリーム剤が例示できる。これらの皮膚外用剤の基剤としては、一般に外用製剤中に均一に融解、配合又は分散し得る基剤であれば特に限定は無い。例えば、ワセリン、ひまし油、シリコン、スクワラン、アクリル酸ナトリウム、ベヘニルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、ステアリルアルコール、エタノール、バチルアルコール、フェノキシエタノール、1,3−ブチレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸、レシチン、精製水等が例示できるが、これらに限定されない。 また、本発明の薬剤は、必要に応じて、抗酸化剤、防腐剤、湿潤剤、粘稠剤、緩衝剤、吸着剤、溶剤、乳化剤、安定化剤、界面活性剤等の添加剤を加えることができる。 投与量は、低分子ヒアルロン酸を0.05〜5%程度含有する軟膏剤の適量を、患部及びその周辺部に1日数回塗布することができる。例えば、ヒアルロン酸4糖として1%濃度で患部に塗布することができる。アトピー性皮膚炎の予防に用いる場合には、アトピー性皮膚炎の発症しやすい個所に同様に塗布する。 本発明の薬剤は、患部に塗布することによりアトピー性皮膚炎の症状の進行を抑えたり、症状を緩和したりするための治療薬として使用することができ、また、患部の周辺に塗布したり、アトピー素因を持つが発症していない者、アトピー性皮膚炎の患者が家族にいる者などアトピー性皮膚炎が発症する可能性が高い者に塗布したり、アトピー性皮膚炎の再発防止などのために予防薬として使用することができる。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。[実施例1:アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いたHA4の治療効果の確認] NCマウスにPiClによる感作、誘導により左耳介の炎症を作製し、これに対するHA4配合塗布剤の影響を検討した。その結果、炎症に伴う皮膚の乾燥、痂皮形成・出血、脱毛、掻痒行動ならびに耳介厚等の炎症スコアが低減することが認められた。<皮膚炎モデルマウスの作成> 9週齢のNC/Nga Slcマウスの雄12匹を日本エスエルシー株式会社より入手し、受入時に外観の検査を行い全例に異常のないことを確認した後、飼育室へ搬入した。飼育は、温度22±2℃、相対湿度55±15%、換気回数12回/時、明暗時間12時間に設定した飼育室にて、プラスチック製ケージ(14.5×26.0×12.5cm)を用いて1匹ずつ飼育した。飼料は固型飼料ローデンラボダイエットEQ(日本エスルシー株式会社、LotNo. AUG24062)を、飲料水は公共水道水をそれぞれ毎日自由摂取させた。9日間の馴化後、馴化期間中の体重増加、一般状態および操作部位の良好な動物を10匹選び、無作為に5匹ずつの2群に分けた。 全例について、ディスポーザブルツベルクリン用シリンジを用いて5%PiCl/エタノール4:アセトン1溶液を、予めバリカンで除毛したマウスの腹部に一匹当たり0.05mL塗布し、四肢に一肢当たり0.02mL塗布した。さらに、ディスポーザブルツベルクリン用シリンジを用いて、感作4日後より、1%PiClオリーブオイル溶液を、マウスの左耳介部に0.02mL、1週間間隔で3回、左耳介の炎症を確認するまで塗布誘導して、皮膚の炎症モデルを作成した。<被験物質の調製> 被験物質であるHA4は具体的には、Tawadaらの方法(Tawada A, Masa T, Oonuki Y, Watanabe A, Matsuzaki Y, Asari A. Large-scale preparation, purification, and characterization of hyaluronan oligosaccharides from 4-mers to 52-mers. Glycobiology. 2002; 12(7):421-6.)により調製した。また、被験物質であるHA4配合塗布剤は、表1に記載のとおりに配合したものを使用した。対照物質として、HA4を含まない基剤のみの塗布剤を使用した。この薬剤に含まれる成分のうちHA4以外は、一般的な基材であり、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に効果があることは知られていない。<被験物質の投与> 1群には、誘導3回目の誘導1時間前に表1に記載の被験物質であるHA4配合塗布剤(株式会社糖質科学研究所製:LotNo.060607、HA配合量1mg/ml)を1日1回左耳介にディスポーザブルツベルクリン用シリンジを用いて0.02mL塗布投与した。HA4配合塗布剤の投与は、誘導3回目以降5週間にわたって行った。残りの1群は陰性対照として、表1に記載の対照物質(株式会社糖質科学研究所製:Lot No.060607)を投与した(表2)。<評価> 各マウスの一般状態を1日1回以上観察し、感作日、試験終了日およびその他週1回以上体重測定した。さらに、体重及び下記の評価項目のスコアについて、Student−t検定を行った。(1)耳介厚計測 感作前、各誘導塗布前ならびに被験物質投与開始日より週1回の各投与前に、マイクロメーター(Mitutoyo社製)を用いて、マウスの左耳介の厚さを計測した。なお、参考のため右耳介についても計測した。(2)皮膚症状の観察各誘導塗布の直前ならびに被験物質投与開始日より週1回、投与直前に、マウスの左耳介について、以下の項目を観察・評価した。 観察項目:発赤、浮腫、脱毛、乾燥、痂皮形成・出血、潰瘍・組織欠損等 評価スコア:無症状(スコア0)、軽度(スコア1)、中等度(スコア2)、重度(スコア3)(3)掻痒行動の観察 各誘導塗布後1時間ならびに被験物質投与開始日より週1回各投与後1時間から、それぞれ約15分間、塗布部の掻痒行動を観察し、引っ掻き回数をカウントした。試験終了日に全例のマウスの耳介を写真撮影した。<試験結果及び考察> 体重は、対照群に対して被験物質群に有意な差はみられず、対照群及び被験物質群ともにアトピー性皮膚炎症状を示したこと以外に異常は見られなかった。1.耳介厚計測(図1) 左耳介は、対照群及び被験物質群ともに感作後、誘導開始の1週間後には上昇し、2週間後には感作時の厚さに対して両群ともに約2.1倍に達し、アトピー性皮膚炎の症状を呈していた。 HA4の5週間にわたる投与の翌日(投与第36日)には、対照群が同1.48倍、被験物質群同1.39倍となり、被験物質群の左耳介厚は対照群と比べて有意に減少した。なお、投与開始後9、16、23、30日の各測定時点で対照群に比較して被験物質群の左耳介厚は低値を示したが、有意な差はみられなかった。参考として測定した右耳介厚は、投与第35日の翌日に対照群に対して5%水準で被験物質群が低値を示した。2.皮膚症状観察(発赤) 対照群は、左耳介皮膚に第2回誘導時に2/5例、第3回誘導時に全例、投与第9日に対照群の2/5例、軽度の発赤が認められた。 被験物質群は、第2回誘導時に3/5例、第3回誘導時に全例に、軽度の発赤が認められた。投与第9日に被験物質群の1/5例に軽度の発赤が認められ、投与第23日に被験物質群1/5例のそれぞれに軽度の発赤が認められた。(浮腫) 第3回誘導・投与第1日、投与第9日、投与第16日に両群とも全例、軽度の浮腫が認められた。(乾燥) 対照群は、第2回ならびに第3回誘導時に全例に軽度の乾燥が認められ、投与第9日に2/5例、投与第16日、23日に1/5例、軽度の乾燥が認められた。 被験物質群は、第2回誘導時に4/5例、第3回誘導時に全例、投与第9日に1/5例、軽度の乾燥が認められた。(痂皮形成・出血) 第2回誘導時に対照群の全例に軽度、第3回誘導時に1/5例に中等度、3/5例に軽度、投与第9日に4/5例、投与第16日に1/5例、投与第23日に2/5例の軽度の痂皮形成・出血を認めた。 第2回誘導時に被験物質群の全例、第3回誘導時に3/5例、投与第9日に2/5例、投与第16日に1/5例の軽度痂皮形成・出血を認めた。 全例に皮膚の潰瘍・組織の欠損はみられなかった。(脱毛) 第3回誘導時ならびに投与第9日の両群全例に脱毛を認めた。投与第16日の対照群は4/5例、被験物質群は2/5例の脱毛を認め、被験物質群が対照群に対して5%水準で有意に低値を示した。投与第30日における対照群及び被験物質群の典型的な個体の左耳介の写真を図2に示す。 このように、発赤、浮腫、脱毛、乾燥、痂皮形成・出血の各項目で対照群に対して被験物質群が低値を示す例があり、投与第16日の脱毛では有意に低値を示した。なお、全例の炎症部位に潰瘍・組織の欠損はみられなかった。3.掻痒行動の観察 対照群及び被験物質群について掻痒行動の観察結果をまとめたグラフを図3に示す。第1回誘導時の掻痒回数に対して両群とも第2回誘導時には高値を示し、第3回誘導時には被験物質群のみがさらに高値を示した。 投与第9日以降投与第35日までは、投与第30日の対照群の高値を除き、両群ともに掻痒回数は漸次低減した。投与第23日、30日、35日の翌日(36日)の被験物質群は、対照群に対して低値を示したが、有意な差はみられなかった。 以上、NCマウスにPiCl感作・誘導により作製した炎症に対して被験物質を投与することによって脱毛、掻痒行動ならびに耳介厚等の炎症スコアが低減した。これらの結果は、HA4の投与により、アトピー性皮膚炎モデルマウスにおける症状が緩和されることを意味し、HA4はアトピー性皮膚炎の治療に有効であることを強く示唆するものである。 また、被験物質を塗布した反対側である右耳介厚において、対照群と比較して有意に耳介厚が増加したことは、塗布したHA4が皮膚から血中に移行し、全身を巡って反対側へ作用したことを示唆する。このことから、全身症状を呈するアトピー性皮膚炎においての治療に奏功を示すことを強く示唆するものである。[実施例2:アトピー性皮膚炎患者におけるHA4の治療効果の確認] 本発明の薬剤として、表1に記載のHA4配合塗布剤を使用した。 16歳女性(身長169cm、体重50kg)のアトピー性皮膚炎に罹っている患者をボランティアとして、上記クリーム剤を塗布した。この患者は、幼少時にアトピー性皮膚炎と診断されており、完治していない。浸潤性紅斑、痒疹、痂皮、掻破、丘疹、掻痒など軽度慢性病変を呈している。患者に上記クリーム剤を朝と夜の入浴後に肘の内側に1週間塗布した。投与後一週間で、慢性病変及び掻痒が消失した(図4)。ヒアルロン酸4糖以外は一般的な基材であり、アトピー性皮膚炎の治療に効果があることは知られていない。したがって、この効果は、ヒアルロン酸4糖の作用であると考えられ、ヒアルロン酸4糖はアトピー性皮膚炎の治療に有効であることが示唆された。 精製単離されたヒアルロン酸4糖を有効成分とするアトピー性皮膚炎の治療薬又は予防薬。